(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】ロールオン塗布容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/42 20060101AFI20250217BHJP
【FI】
B65D47/42 300
(21)【出願番号】P 2021061864
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-10-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】石塚 徹也
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-249098(JP,A)
【文献】実公昭50-014824(JP,Y1)
【文献】特開2003-311885(JP,A)
【文献】特開2003-192008(JP,A)
【文献】実開平05-044856(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される容器本体と、
前記容器本体の口部に装着される中栓と、
前記中栓を上方から覆うと共に前記容器本体の口部に装着されるキャップと、を備え、
前記中栓は、
前記容器本体の内部と外部とを連通する連通孔を有する複数の保持部と、
複数の前記保持部の内側にそれぞれ転動可能に保持されると共に、一部が前記保持部から上方に露出する複数の塗布ボールと、を備え、
複数の前記保持部のそれぞれは、
前記連通孔が内側に形成されると共に、前記塗布ボールを下方から転動可能に支持する支持筒と、
前記支持筒を上方から覆う天壁部を上下方向に貫通するように形成されると共に、内側に前記支持筒が嵌合する保持孔と、を備え、
前記保持孔の内側において前記支持筒よりも上方に位置する空間は、前記塗布ボールを転動可能に収納する中栓空間とされ、
前記支持筒の上端面には、上方に向けて突出すると共に、前記塗布ボールの外面に下方から接触可能な下環状シール部
が形成され、
前記保持孔における上側部分の内周面は、前記塗布ボールの外面に上方から接触可能な上環状シール部と
され、
前記塗布ボールは、前記
中栓空間内において、前記下環状シール部と前記上環状シール部との間で上下方向に移動可能とされ、
前記キャップは、
前記中栓を上方から覆うキャップ天壁を有するキャップ本体と、
前記キャップ本体よりも軟らかい材質で形成されると共に、前記キャップ天壁の下面に一体成形された軟質シール部と、を備え、
前記軟質シール部は、前記容器本体の口部に対する前記キャップの装着時、複数の前記塗布ボールに対して上方から接触すると共に、前記塗布ボールを下方に向けて押し込むことで、前記塗布ボールを前記下環状シール部に押し付け、
前記キャップの取り外し後、複数の前記塗布ボールが前記上環状シール部側に移動することで、前記塗布ボールの外面と前記上環状シール部との間を通じた
前記中栓空間内から外部への内容物の流出を抑制しながら、前記塗布ボールの外面と前記下環状シール部との間に、前記容器本体内から
前記中栓空間内への内容物の供給を許容する隙間を画成させ、
さらに複数の前記塗布ボールが前記下環状シール部側に移動することで、前記塗布ボールの外面と前記下環状シール部との間を通じた
前記容器本体内から前記中栓空間内への内容物の供給を抑制しながら、前記塗布ボールの外面と前記上環状シール部との間に、
前記中栓空間内から外部への内容物の流出を許容する隙間を画成させ
、
前記中栓空間内には、内容物が貯留可能とされていることを特徴とするロールオン塗布容器。
【請求項2】
請求項1に記載のロールオン塗布容器において、
前記キャップ天壁には、前記キャップ天壁を上下に貫通する連結孔が形成され、
前記軟質シール部は、
前記キャップ天壁の下面に配置されたシール本体と、
前記シール本体に一体に形成されると共に前記連結孔の内側に配置され、上端面が前記キャップ天壁の上面側に露出したシール軸部と、を備え、
前記シール軸部の上端面には、前記軟質シール部の成形時のゲート痕が残り、
前記キャップ天壁には、少なくとも前記シール軸部を上方から覆う閉塞体が設けられている、ロールオン塗布容器。
【請求項3】
請求項2に記載のロールオン塗布容器において、
前記軟質シール部は、前記シール軸部に一体に形成されると共に、前記キャップ天壁の上面に配置されたシール補強部を備え、
前記閉塞体は、さらに前記シール補強部を上方から覆っている、ロールオン塗布容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールオン塗布容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、塗布ボールを備えたロールオン塗布容器が知られている。
例えば下記特許文献1には、内容物が収容される容器本体と、塗布ボールを有すると共に容器本体の口部に装着される中栓と、中栓を上方から覆うと共に容器本体の口部に装着されるキャップと、を備えたロールオン塗布容器が知られている。
中栓には、容器本体の内部と外部とを連通する連通孔と、塗布ボールの下方に配置されたシール部とが少なくとも形成されている。そして、容器本体の口部にキャップを装着することにより、塗布ボールをシール部に押し付けることができ、連通孔を通じた容器本体の内部と外部との連通を遮断して、内容物の漏出を抑制することが可能とされている。
【0003】
さらに従来のロールオン塗布容器として、キャップの装着時、塗布ボールを下方に向けて押圧する押圧突起をキャップ天壁に設ける構成が一般的に知られている。この場合には、押圧突起を利用するだけの簡便な構成で、塗布ボールをシール部に対して適切に押し付けることができ、内容物の漏出を抑制することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のロールオン塗布容器において、内容物の種類や用途等に応じた多様的な使い方をするために、複数の塗布ボールを具備するものが提供されている。複数の塗布ボールを具備する場合には、塗布ボールの数に対応して内容物が流出する連通孔が形成されているので、キャップの装着時、塗布ボールのそれぞれをシール部に押し付けて、連通孔を通じた内容物の露出を抑制することが求められる。
【0006】
一般的なキャップは、ポリプロピレン等の比較的硬質な合成樹脂材料で形成されることが多いため、キャップ天壁に押圧突起を設ける場合、押圧突起を高い成形精度で形成することが難しい傾向にある。
そのため、塗布ボールが1つの場合には、押圧突起をばらつき少なく形成することが可能であり、押圧突起を利用して塗布ボールをシール部に適切に押し付けることで連通孔のシール状態を維持することができるが、塗布ボールが複数の場合には、複数の押圧突起が必要となるため、これら複数の押圧突起をばらつき少なく、高い成形精度で形成することが難しい。従って、全ての塗布ボールをシール部に対して適切に押し付けることが難しく、シール部に対する押し付けが弱い塗布ボールが存在してしまい、連通孔のシール状態を維持することが難しい場合があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、複数の塗布ボールを有しつつも、良好なシール性を維持することができるロールオン塗布容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係るロールオン塗布容器は、内容物が収容される容器本体と、前記容器本体の口部に装着される中栓と、前記中栓を上方から覆うと共に前記容器本体の口部に装着されるキャップと、を備え、前記中栓は、前記容器本体の内部と外部とを連通する連通孔を有する複数の保持部と、複数の前記保持部の内側にそれぞれ転動可能に保持されると共に、一部が前記保持部から上方に露出する複数の塗布ボールと、を備え、複数の前記保持部のそれぞれは、前記連通孔が内側に形成されると共に、前記塗布ボールを下方から転動可能に支持する支持筒と、前記支持筒を上方から覆う天壁部を上下方向に貫通するように形成されると共に、内側に前記支持筒が嵌合する保持孔と、を備え、前記保持孔の内側において前記支持筒よりも上方に位置する空間は、前記塗布ボールを転動可能に収納する中栓空間とされ、前記支持筒の上端面には、上方に向けて突出すると共に、前記塗布ボールの外面に下方から接触可能な下環状シール部が形成され、前記保持孔における上側部分の内周面は、前記塗布ボールの外面に上方から接触可能な上環状シール部とされ、前記塗布ボールは、前記中栓空間内において、前記下環状シール部と前記上環状シール部との間で上下方向に移動可能とされ、前記キャップは、前記中栓を上方から覆うキャップ天壁を有するキャップ本体と、前記キャップ本体よりも軟らかい材質で形成されると共に、前記キャップ天壁の下面に一体成形された軟質シール部と、を備え、前記軟質シール部は、前記容器本体の口部に対する前記キャップの装着時、複数の前記塗布ボールに対して上方から接触すると共に、前記塗布ボールを下方に向けて押し込むことで、前記塗布ボールを前記下環状シール部に押し付け、前記キャップの取り外し後、複数の前記塗布ボールが前記上環状シール部側に移動することで、前記塗布ボールの外面と前記上環状シール部との間を通じた前記中栓空間内から外部への内容物の流出を抑制しながら、前記塗布ボールの外面と前記下環状シール部との間に、前記容器本体内から前記中栓空間内への内容物の供給を許容する隙間を画成させ、さらに複数の前記塗布ボールが前記下環状シール部側に移動することで、前記塗布ボールの外面と前記下環状シール部との間を通じた前記容器本体内から前記中栓空間内への内容物の供給を抑制しながら、前記塗布ボールの外面と前記上環状シール部との間に、前記中栓空間内から外部への内容物の流出を許容する隙間を画成させ、前記中栓空間内には、内容物が貯留可能とされていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るロールオン塗布容器によれば、容器本体の口部にキャップを装着することで、複数の塗布ボールに対して軟質シール部を上方から接触させることができると共に、複数の塗布ボールのそれぞれを下方に向けて押し込むことができる。これにより、複数の塗布ボールのそれぞれを環状シール部に対して押し付けることができ、連通孔を通じた容器本体の内部と外部との連通を遮断することができる。
【0010】
特に、キャップ本体については、例えば一般的な硬質の合成樹脂材料で形成しつつ、軟質シール部については、キャップ本体よりも軟らかい材質、例えばエラストマ或いはゴム等の弾性変形可能な軟材質材料で形成することができる。従って、軟質シール部を適宜弾性変形させながら、全ての塗布ボールを適切に下方に向けて押し込むことができる。そのため、キャップ本体及び軟質シール部の成形精度に影響を受け難く、各塗布ボールとの相対位置関係に対応して軟質シール部を弾性変形させながら、全ての塗布ボールを同時に十分な押圧力で押し込むことができる。これにより、連通孔を通じて内容物が露出することを適切に抑制することができる。さらに、容器本体の口部にするキャップの装着を繰り返し行ったとしても、軟質シール部が塑性変形することでへたってしまう現象、いわゆる「なじみ」現象が生じ難い。これにより、キャップ装着時のシール性を長期に亘って安定して維持することができる。
【0011】
(2)前記キャップ天壁には、前記キャップ天壁を上下に貫通する連結孔が形成され、前記軟質シール部は、前記キャップ天壁の下面に配置されたシール本体と、前記シール本体に一体に形成されると共に前記連結孔の内側に配置され、上端面が前記キャップ天壁の上面側に露出したシール軸部と、を備え、前記シール軸部の上端面には、前記軟質シール部の成形時のゲート痕が残り、前記キャップ天壁には、少なくとも前記シール軸部を上方から覆う閉塞体が設けられても良い。
【0012】
この場合には、シール軸部の上端面にゲート痕が残るように成形(例えば射出成形)することで、キャップ本体に対して軟質シール部を一体成形することができる。そのため、キャップ天壁の下面に配置され、複数の塗布ボールに対して接触するシール本体にゲート痕や成形カス等が残ることがないので、例えばシール本体を均一な厚みに形成する等、設計通りに仕上げることができる。従って、シール本体を適切に弾性変形させることができ、複数の塗布ボールを確実に押し込むことができる。
さらに、キャップ天壁に閉塞体が設けられているので、ゲート痕等が残ったシール軸部を覆って隠すことができ、外観の見栄えを良くして、デザイン性、意匠性等を向上することができる。
【0013】
(3)前記軟質シール部は、前記シール軸部に一体に形成されると共に、前記キャップ天壁の上面に配置されたシール補強部を備え、前記閉塞体は、さらに前記シール補強部を上方から覆っても良い。
【0014】
この場合には、シール本体とシール補強部とでキャップ天壁を上下から挟み込むように、キャップ本体に軟質シール部を一体成形することができるので、キャップ本体に対して軟質シール部をより強固に組み合わせることができる。従って、容器本体の口部に対して、例えばキャップを螺着によって装着する場合であっても、キャップの回転操作に伴う回転トルクによって、軟質シール部が意図せずに回転する、或いは取れてしまう等の不都合を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るロールオン塗布容器によれば、複数の塗布ボールを有しつつも、良好なシール性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るロールオン塗布容器の実施形態を示す縦断面図(側面図を含む)である。
【
図2】
図1に示すロールオン塗布容器の中栓周辺を拡大した縦断面図である。
【
図3】
図2に示す状態からキャップを取り外した状態を示す縦断面図である。
【
図4】
図3に示す中栓を上方から見た上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るロールオン塗布容器の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態のロールオン塗布容器1は、内容物が収容される有底筒状の容器本体2と、容器本体2の口部10に装着される中栓3と、容器本体2の口部10に着脱可能に装着される有頂筒状のキャップ4と、を備えている。
【0018】
なお、容器本体2内に収容される内容物としては、特に限定されるものではないが、例えば人体の頭皮、皮膚等に塗布する育毛剤、薬剤、化粧料等の液体が挙げられる。ただし、内容物は人体用に限定されるものではなく、人体以外に塗布する液体でも構わない。
【0019】
図1において、容器本体2及びキャップ4は、それぞれの中心軸線が共通軸上に配置されている。以下、この共通軸を容器軸Oといい、容器軸Oに沿ったキャップ4側を上方、その反対側である容器本体2側を下方という。また、容器軸O方向から見た平面視において、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0020】
(容器本体)
容器本体2は、口部10、肩部11、胴部12及び底部13が上側から順に連設された有底筒状に形成されている。図示の例では、胴部12が上下方向に沿ってストレート状に延びた長尺の円筒状に形成されている。ただし、容器本体2の形状は、この場合に限定されるものではなく、種々の形状を採用して構わない。
【0021】
容器本体2の口部10は、肩部11の上端開口部から上方に向けて延びるように形成されている。
本実施形態の口部10は、下方から上方に向かって外径が段階的に縮径した二段筒状に形成されている。具体的には、口部10は、容器本体2のうち口部10以外の部位(肩部11、胴部12及び底部13)よりも外径が小さく形成された第1口部15と、第1口部15よりも上方に配置され、第1口部15よりも外径がさらに小さく形成された第2口部16と、を備えている。
【0022】
第1口部15の外周面には、第1ねじ部(例えば雌ねじ)17が形成されている。第2口部16の外周面には、径方向の外側に向けて突出すると共に、周方向に沿って延びる第1係合突起18が形成されている。なお、第1係合突起18は、第2口部16の全周に亘って環状に形成されていても構わないし、周方向に間隔をあけて複数形成されていても構わない。
ただし、第1係合突起18を形成する場合に限定されるものではなく、例えば第2口部16の外周面に第1係合突起18に代えて雌ねじを形成しても構わない。
【0023】
(中栓)
図2及び
図3に示すように、中栓3は、容器本体2の内部と外部とを連通する連通孔21を有する複数の保持部20と、複数の保持部20の内側にそれぞれ転動可能(回転可能)に保持されると共に、一部が保持部20から上方に露出する複数の塗布ボール22と、を備えている。
本実施形態では、3つの塗布ボール22を具備する構成、すなわち3つの保持部20の内側に塗布ボール22がそれぞれ転動可能に保持された構成を例に挙げて説明する。
【0024】
図4に示すように、3つの保持部20及び塗布ボール22は、容器軸Oを中心として周方向に等間隔をあけて並ぶように配置されている。すなわち、3つの保持部20及び塗布ボール22は、容器軸Oを中心として120度の角度毎に配置されている。
【0025】
図2及び
図3に示すように、中栓3は、容器本体2の第2口部16に装着された第1中栓30と、第1中栓30の上方に配置されると共に第1中栓30に対して組み合わされた第2中栓40と、を備えている。なお、第1中栓30及び第2中栓40は、例えば低密度ポリエチレン等の合成樹脂製とされ、射出成形等によってそれぞれ形成されている。
【0026】
第1中栓30は、容器本体2の第2口部16を径方向の外側から囲む装着筒31と、装着筒31の上端部から径方向の内側に向けて突出すると共に、第2口部16の上端開口縁上に接触する環状のフランジ部32と、フランジ部32の内周縁部から下方に向けて突出すると共に、第2口部16の内側に嵌合したシール筒33と、フランジ部32から上方に向けて突出する連結筒34と、連結筒34の上端開口部を塞ぐ頂壁部35と、を備えている。
【0027】
装着筒31は、第2口部16に対してアンダーカット嵌合されている。具体的には、装着筒31の下端部における内周面には、第2口部16に形成された第1係合突起18に係合する第2係合突起36が径方向の内側に向けて突出するように形成されている。そして、第2係合突起36が第1係合突起18に対してアンダーカット嵌合されている。
なお、第2係合突起36は、第1係合突起18に対してアンダーカット嵌合可能とされていれば、環状に形成されていても構わないし、周方向に間隔をあけて複数形成されていても構わない。
【0028】
第1中栓30は、第1係合突起18に対して第2係合突起36がアンダーカット嵌合することで、容器本体2の第2口部16に対して嵌合固定されている。これにより、容器本体2の第2口部16に第1中栓30を装着することができ、両者を一体に組み合わせている。
ただし、容器本体2の第2口部16に対する第1中栓30の装着方法は、アンダーカット嵌合に限定されるものではない。例えば、先に述べたように、第2口部16の外周面に雌ねじ部を形成した場合には、装着筒31の内周面に雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を形成することで、螺着によって第2口部16に対して第1中栓30を装着しても構わない。
【0029】
シール筒33は、第2口部16の内側に対して例えば密に嵌合されている。これにより、シール筒33は、容器本体2を適切に密封している。
連結筒34は、フランジ部32の内周縁部から上方に向けて延びるように形成されている。連結筒34は、装着筒31の外径よりも小さい外径で形成されている。なお、連結筒34の内径は、シール筒33の内径と同径とされている。
連結筒34の外周面には、径方向の外側に向けて突出すると共に、周方向に沿って延びる第3係合突起37が形成されている。なお、第3係合突起37は、連結筒34の全周に亘って環状に形成されていても構わないし、周方向に間隔をあけて複数形成されていても構わない。
【0030】
頂壁部35は、連結筒34の上端部に連設されている。頂壁部35には、該頂壁部35を上下方向に貫通すると共に、容器本体2の内部と外部とを連通する連通孔21が形成されている。
連通孔21は、容器軸Oを中心として周方向に等間隔をあけて並ぶように3つ形成されている。すなわち、3つの連通孔21は、容器軸Oを中心として120度の角度毎に配置されている。なお、連通孔21の中心を上下方向に貫く中心線を塗布軸線Cという。
【0031】
さらに頂壁部35には、上方に向けて延びる3つの支持筒38が塗布軸線Cと同軸に形成されている。これにより、支持筒38の内側は、連通孔21を通じて容器本体2内に連通している。なお、支持筒38の一部は、連結筒34と一体に形成されている。
3つの塗布ボール22は、これら支持筒38の上方にそれぞれ配置され、支持筒38によって下方から転動可能に支持される。
【0032】
支持筒38の上端面には、上方に向けて突出すると共に、塗布ボール22の外面に対して下方から接触可能な下環状シール部(本発明に係る環状シール部)39が形成されている。下環状シール部39は、周方向の全周に亘って塗布ボール22の外面に密に接触することが可能とされている。
なお、支持筒38は、塗布ボール22の直径と同径、或いは塗布ボール22の直径よりも僅かに大きい外径で形成されている。
【0033】
第2中栓40は、第1中栓30を上方から覆うように、該第1中栓30に対して組み合わされる。第2中栓40は、第1中栓30の連結筒34を径方向の外側から囲む外郭筒41と、3つの支持筒38を含む頂壁部35の全体を上方から覆う天壁部42と、を備えている。
【0034】
外郭筒41は、外径が装着筒31の外径と同径になるように形成されている。外郭筒41は、連結筒34対してアンダーカット嵌合されている。具体的には、外郭筒41の下端部における内周面には、連結筒34に形成された第3係合突起37に係合する第4係合突起43が径方向の内側に向けて突出するように形成されている。そして、第4係合突起43が第3係合突起37に対してアンダーカット嵌合されている。
これにより、第2中栓40は、第1中栓30に対してアンダーカット嵌合によって一体に組み合わされている。
【0035】
天壁部42の外周縁部は、下方から上方に向かうにしたがって漸次縮径するように丸みを帯びた形状とされている。さらに天壁部42のうち、3つの支持筒38に対して上下方向に対向する部分には、該天壁部42を上下方向に貫通すると共に、3つの支持筒38のそれぞれを内部に収納する3つの保持孔44が塗布軸線Cと同軸に形成されている。
【0036】
保持孔44の下側部分の内径は、支持筒38の外径と同径とされている。これにより、支持筒38は、保持孔44の内側に密に嵌合されている。保持孔44の内側において、支持筒38よりも上方に位置する空間は、塗布ボール22を転動可能に収納する中栓空間45とされている。
中栓空間45は、支持筒38の内側に連通している。これにより、容器本体2の内部は、連通孔21、支持筒38の内側及び中栓空間45を通じて外部に連通している。
【0037】
保持孔44のうち、支持筒38よりも上方に位置する上側部分の内径は、上方に向かうに従い漸次、縮径している。これにより、保持孔44における上側部分の内径は、塗布ボール22の直径よりも縮径している。そのため、保持孔44の中栓空間45内に、上方への抜け止めをした状態で塗布ボール22を転動可能に保持することが可能とされている。
これにより、支持筒38及び保持孔44は、塗布ボール22を転動可能に保持する保持部20として機能する。
【0038】
なお、保持孔44における上側部分の内周面は、塗布ボール22の外面に対して径方向の外側及び上方から接触可能な上環状シール部46とされている。上環状シール部46は、周方向の全周に亘って、塗布ボール22の外面に密に接触することが可能とされている。
【0039】
塗布ボール22は、3つの保持部20のそれぞれに転動可能に保持されている。すなわち、各塗布ボール22は、支持筒38によって下方から支持された状態で、保持孔44における中栓空間45内に転動可能に配置されている。塗布ボール22は、塗布軸線Cを中心とする球状に形成され、例えば金属製とされている。
塗布ボール22の上端部は、保持孔44の上端開口部よりも上方に突出し、外部に露出している。これにより、塗布ボール22のうち外部に露出している部分を利用して、内容物を塗布することが可能とされている。
【0040】
なお、3つの塗布ボール22は、第1中栓30に対して第2中栓40を上方から組み合わせることで、各支持筒38の下環状シール部39上に載置され、且つ上方への抜け止めがされた状態で保持孔44の中栓空間45内に配置される。さらに塗布ボール22は、中栓空間45内において、下環状シール部39と上環状シール部46との間で上下方向に移動可能とされている。
【0041】
(キャップ)
図2に示すように、キャップ4は、中栓3を上方から覆う有頂筒状のキャップ本体50と、キャップ本体50よりも軟らかい材質で形成され、キャップ本体50に一体成形された軟質シール部60と、を備えている。
【0042】
キャップ本体50は、中栓3及び容器本体2の口部10(第1口部15及び第2口部16)を径方向の外側から囲むキャップ周壁51と、キャップ周壁51の上端開口部を塞ぐと共に、中栓3を上方から覆うキャップ天壁52と、を備えている。
さらに本実施形態のキャップ本体50は、キャップ天壁52からさらに上方に延びるように形成された化粧筒53と、を備えている。図示の例では、化粧筒53は、キャップ周壁51と同等の外径を有するように形成されている。
【0043】
キャップ周壁51の下端部側の内周面には、容器本体2の第1口部15に形成された第1ねじ部17に螺合する第2ねじ部(例えば雄ねじ部)54が形成されている。これにより、キャップ4の全体は、第1ねじ部17に対する第2ねじ部54の螺着によって、容器本体2の口部10に着脱可能に装着されている。
ただし、容器本体2の口部10に対するキャップ4の装着方法は、螺着(ねじ結合)に限定されるものではなく、例えば第1口部15に対してキャップ周壁51をアンダーカット嵌合させることで、装着しても構わない。
【0044】
キャップ天壁52は、第2中栓40よりも上方に飛び出している3つの塗布ボール22に対して間隔をあけた状態で、塗布ボール22よりも上方に配置されている。キャップ天壁52における中央部分には、キャップ天壁52を上下方向に貫通する連結孔55が形成されている。連結孔55は、例えば平面視円形状に形成され、容器軸Oと同時に配置されている。
ただし、連結孔55の形成位置は、容器軸Oと同軸である必要はなく、容器軸Oから径方向にずれた位置に形成されていても構わない。
【0045】
上述のように構成されたキャップ本体50は、例えば一般的な硬質の合成樹脂材料(例えばポリプロピレン等)によって成形された成形品とされている。
軟質シール部60は、先に述べたように、キャップ本体50よりも軟らかい材質、例えばエラストマ或いはゴム等の弾性変形可能な軟質材料で形成され、キャップ本体50に対して一体成形されている。具体的には、軟質シール部60は、一次成形品であるキャップ本体50に対して、例えばインサート成形等により一体成形されることで形成される。
【0046】
軟質シール部60は、キャップ天壁52の下面に配置されたシール本体61と、シール本体61に一体に形成されると共に、連結孔55の内側に配置され、上端面がキャップ天壁52の上面側に露出したシール軸部62と、シール軸部62に一体に形成されると共に、キャップ天壁52の上面に配置されたシール補強部63と、を備えている。
【0047】
シール本体61は、3つの塗布ボール22を上方から覆うことが可能な円板状に形成され、容器軸Oと同軸に配置されている。シール本体61は、容器本体2の口部10に対するキャップ4の装着時に、3つの塗布ボール22に対して上方から接触する厚みで形成されている。これにより、シール本体61は、3つの塗布ボール22を下方に向けて押し込むことが可能とされている。
【0048】
シール軸部62は、キャップ天壁52よりも上方に突出しており、その上端面には軟質シール部60の成形時のゲート痕(成形カス等も含む)64が残っている。シール補強部63は、シール軸部62と一体に形成され、シール本体61よりも大きいサイズの円板状に形成されている。
上述のように軟質シール部60は、シール本体61とシール補強部63とでキャップ天壁52を上下から挟み込むように、キャップ本体50に対して一体成形されている。
【0049】
キャップ天壁52には、シール軸部62及びシール補強部63を上方から覆う化粧キャップ(本発明に係る閉塞体)70が設けられている。化粧キャップ70は、容器軸Oと同軸に配置された有頂筒状に形成され、化粧筒53における上端部の内側に嵌合されている。これにより、化粧キャップ70は、化粧筒53の上端開口部を閉塞していると共に、シール軸部62及びシール補強部63を上方から覆って隠す役割を果たしている。
【0050】
(ロールオン塗布容器の作用)
次いで、上述のように構成されたロールオン塗布容器1を使用する場合について説明する。
はじめに、
図1及び
図2に示すように、容器本体2の口部10にキャップ4が装着されている状態では、塗布ボール22は軟質シール部60によって下方に押し込まれ、これによって下環状シール部39に押し付けられた状態となっている。
【0051】
そして内容物を塗布する場合には、
図1及び
図2に示すように、容器本体2の口部10が上方を向いた正立姿勢の容器本体2の口部10からキャップ4を取り外す。これにより、
図3に示すように、塗布ボール22は、軟質シール部60による下方への押込みが解除された状態となり、上方への移動が許容される。
【0052】
次いで、容器本体2の口部10が下方を向くように、
図3に示す容器本体2を傾倒姿勢或いは倒立姿勢とすることにより、中栓空間45内で塗布ボール22を上環状シール部46側に移動させることができ、下環状シール部39から離間させることができる。これにより、下環状シール部39と塗布ボール22の外面との間に、容器本体2内と中栓空間45内とを連通する隙間を画成することができ、隙間を通じて容器本体2内から中栓空間45内に内容物を供給することができる。
【0053】
この際、塗布ボール22の外面と上環状シール部46とを例えば密接させることができ、塗布ボール22の外面と上環状シール部46との間を通じて、中栓空間45内から外部に向けて内容物が流出することを抑制することができる。
【0054】
次いで、塗布ボール22のうち、中栓3よりも外部に露出している部分を、図示しない塗布対象物に押し当てることで、中栓空間45内で塗布ボール22を下環状シール部39側に移動させることができ、上環状シール部46と塗布ボール22の外面との間に中栓空間45内に連通する隙間を画成することができる。そして、塗布対象物に塗布ボール22を押し当てながら、塗布対象物に沿って容器本体2を移動させることで、塗布ボール22を中栓空間45内で転動(回転)させることができる。これにより、中栓空間45内の内容物を、塗布ボール22の回転に伴って、上環状シール部46と塗布ボール22の外面との間に画成された隙間を通じて中栓3の外部に流出させることができる。その結果、塗布ボール22の外面に伝わった内容物を塗布対象物に対して塗布することができる。
【0055】
なお、塗布対象物に塗布ボール22を押し付けている状態では、塗布ボール22が下環状シール部39に押し付けられて、連通孔21がシールされた状態が維持される。従って、容器本体2内から中栓空間45内に内容物が過剰に供給されることを抑制することができる。
【0056】
以上のことにより、塗布ボール22を利用して、塗布対象物に対して内容物を塗布することができる。特に本実施形態では、3つの塗布ボール22を具備しているので、1回の塗布操作で、塗布対象物に対して内容物を広範囲に効果的に塗布することができ、多様な使い方を行える。
なお、例えば中栓空間45内に内容物が貯留されている場合には、容器本体2を傾倒姿勢或いは倒立姿勢にすることなく、正立姿勢のまま内容物を塗布することも可能である。
【0057】
次いで、内容物の塗布が終了した場合には、
図1及び
図2に示すように容器本体2の口部10に対して螺着によってキャップ4を装着する。
これにより、3つの塗布ボール22に対して、軟質シール部60のシール本体61を上方から接触させることができると共に、3つの塗布ボール22のそれぞれを下方に向けて押し込むことができる。従って、3つの塗布ボール22のそれぞれを下環状シール部39に対して押し付けることができ、連通孔21を通じた容器本体2の内部と外部との連通を遮断することができる。
【0058】
特に、軟質シール部60については、キャップ本体50よりも軟らかい、弾性変形可能な軟材質材料で形成しているため、軟質シール部60におけるシール本体61を適宜弾性変形させながら、全ての塗布ボール22を適切に下方に向けて押し込むことができる。そのため、キャップ本体50及び軟質シール部60の成形精度に影響を受け難く、各塗布ボール22との相対位置関係に対応して軟質シール部60のシール本体61を弾性変形させながら、全ての塗布ボール22を同時に十分な押圧力で押し込むことができる。
【0059】
これにより、連通孔21を通じて内容物が露出することを適切に抑制することができる。さらに、容器本体2の口部10に対するキャップ4の装着を繰り返し行ったとしても、軟質シール部60が塑性変形することでへたってしまう現象、いわゆる「なじみ」現象が生じ難い。これにより、キャップ4の装着時のシール性を長期に亘って安定して維持することができる。
【0060】
なお、シール本体61の厚み(上下方向に沿った厚み)としては、例えば0.5mm以上、2mm以下とすることが好ましい。
シール本体61の厚みが0.5mmより薄い場合には、塗布ボール22に対する押付力の維持が困難になり易い。その反対にシール本体61の厚みが2mmを超える場合には、シール本体61自身の弾性復元力が過剰になり易い。従って、シール本体61の厚みとしては、上記範囲(0.5mm以上、2mm以下)内とすることが好ましい。
さらにシール本体61と塗布ボール22との締め代(オーバーラップ量)としては、例えばシール本体61の厚みの30%~40%の範囲内とすることが好ましい。本実施形態では、シール本体61の厚みを1mmとし、上記締め代を0.3mmとしている。
【0061】
以上説明したように、本実施形態のロールオン塗布容器1によれば、3つの塗布ボール22を有しつつも、良好なシール性を維持することができる。従って、商品流通時、未使用時或いは保管時等において、内容物が意図せずに漏出することを抑制することができると共に、内容物の劣化等を招くことなく、適切に保管することができる。
【0062】
さらに、シール本体61とシール補強部63とでキャップ天壁52を上下から挟み込むように、キャップ本体50に軟質シール部60を一体成形することができるので、キャップ本体50に対して軟質シール部60をより強固に組み合わせることができる。従って、容器本体2の口部10に対して、キャップ4を螺着によって装着する場合であっても、キャップ4の回転操作に伴う回転トルクによって、軟質シール部60が意図せずに回転する、或いは取れてしまう等の不都合を抑制することができる。
【0063】
さらに、シール軸部62の上端面にゲート痕64が残るように成形(例えば射出成形)することで、キャップ本体50に対して軟質シール部60を一体成形することができる。そのため、キャップ天壁52の下面に配置され、3つの塗布ボール22に対して接触するシール本体61にゲート痕や成形カス等が残ることがないので、例えばシール本体61を均一な厚みに形成する等、設計通りに仕上げることができる。従って、シール本体61を適切に弾性変形させることができ、3つの塗布ボール22を確実に押し込むことができる。
【0064】
さらに、キャップ天壁52に化粧筒53を設け、化粧筒53の内側に化粧キャップ70を嵌合させているので、ゲート痕64が残ったシール軸部62及びシール補強部63を上方から覆って隠すことができる。従って、ロールオン塗布容器1の外観の見栄えを良くすることができ、デザイン性、意匠性等を向上することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。本実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが可能であることに加え、各実施形態における変形例を適宜組み合わせてもよい。さらに、本実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0066】
例えば上記実施形態では、3つの塗布ボール22を具備する構成としたが、塗布ボール22の数は3つに限定されるものではなく、例えば2つでも構わないし、4つ以上具備する構成としても構わない。この場合には、塗布ボール22の数に対応して、連通孔21及び保持部20を設ければ良い。
【0067】
さらに上記実施形態では、第1中栓30と第2中栓40とを組み合わせることで中栓3を構成する場合を例に挙げて説明したが、例えば塗布ボール22を転動可能に保持する3つの保持筒を有する中栓を単体で形成しても構わない。
さらに上記実施形態では、化粧筒53の内側に化粧キャップ70を嵌合させることで、シール軸部62及びシール補強部63を上方から覆って隠す構成としたが、この場合に限定されるものではない。例えば、キャップ天壁52の上面に化粧キャップを直接取り付けることで、シール軸部62及びシール補強部63を上方から覆って隠す構成としても構わない。
【符号の説明】
【0068】
1…ロールオン塗布容器
2…容器本体
3…中栓
4…キャップ
10…容器本体の口部
20…保持部
21…連通孔
22…塗布ボール
39…下環状シール部(環状シール部)
50…キャップ本体
55…連結孔
60…軟質シール部
61…シール本体
62…シール軸部
64…ゲート痕
63…シール補強部
70…化粧キャップ(閉塞体)