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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】防音型エンジン駆動作業機の排風部構造
(51)【国際特許分類】
   F02B 63/00 20060101AFI20250217BHJP
   F02B 77/13 20060101ALI20250217BHJP
   F01P 5/06 20060101ALI20250217BHJP
【FI】
F02B63/00 C
F02B77/13 M
F02B63/00 D
F02B77/13 A
F01P5/06 511D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021095457
(22)【出願日】2021-06-07
(65)【公開番号】P2022187425
(43)【公開日】2022-12-19
【審査請求日】2024-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐生 貢
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-224624(JP,A)
【文献】特開2015-007374(JP,A)
【文献】中国実用新案第211429057(CN,U)
【文献】実開昭59-079531(JP,U)
【文献】実開昭63-064551(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1776574(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 63/00
F02B 77/13
F01P 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向に立設された仕切壁によって防音箱の内部を二室に仕切り,一方の室をエンジン及び作業機本体が収容されるエンジン室とし,他方の室を前記仕切壁に設けた連通口を介して前記エンジン室と連通した排風室とし,前記排風室の形成位置におけるトップパネルに機外と連通する排風口を設け,前記エンジン室から前記排風室に向かう冷却風を発生させる冷却ファンを設けると共に,前記仕切壁に設けた連通口の形成位置に前記エンジンのラジエータを配置して,前記排風室から前記排風口に至る部分に,前記ラジエータで熱交換された後の冷却風を機外に排出するための排風部が形成された防音型エンジン駆動作業機において,
前記ラジエータのコアの上端位置と同等以上の高さ位置で該ラジエータの前記排風室側の側面に一辺を接触又は近接させていると共に,前記一辺と対向する他辺を,平面視において前記排風口と一部重なる位置まで延在させた,平面視矩形状の上部邪魔板を,前記排風室内に水平方向に配置し
前記上部邪魔板の下方で,かつ,前記ラジエータの前記コアの高さ方向の中央位置よりも上方の高さ位置で前記ラジエータの前記コアの前記排風室側の側面に一辺を接触又は近接させた平面視矩形状の下部邪魔板を,前記排風室内に水平方向に配置すると共に,
前記下部邪魔板の前記一辺と,該一辺と対向する他辺間の間隔を,前記上部邪魔板の前記一辺と前記他辺間の間隔よりも短く形成したことを特徴とする,防音型エンジン駆動作業機の排風部構造。
【請求項2】
前記下部邪魔板を複数枚設け,上下に間隔を開けて配置すると共に,該下部邪魔板の前記一辺と前記他辺間の間隔を,下方に配置されるもの程,短くしたことを特徴とする請求項記載の防音型エンジン駆動作業機の排風部構造。
【請求項3】
上部邪魔板及び/又は前記下部邪魔板に遮音材を取り付けたことを特徴とする請求項記載の防音型エンジン駆動作業機の排風部構造。
【請求項4】
前記上部邪魔板及び前記下部邪魔板の前記一辺に,上向きに突出するフランジを設けたことを特徴とする請求項2又は3記載の防音型エンジン駆動作業機の排風部構造。
【請求項5】
前記上部邪魔板及び前記下部邪魔板の前記他辺に,下向きに突出するフランジを設けたことを特徴とする請求項2~いずれか1項記載の防音型エンジン駆動作業機の排風部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,圧縮機本体や発電機本体等の作業機本体と,これを駆動するエンジン,及びその他の必要な機器を防音箱内に収容して成る防音型エンジン駆動作業機の排風部構造に関し,より詳細には,防音型エンジン駆動作業機の排風部を介して防音箱内で発生した騒音漏出を低減可能とした,防音型エンジン駆動作業機の排風部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源としてエンジンを備えた圧縮機や発電機等のエンジン駆動作業機は,作動時の騒音が機外に漏出することを防止すると共に,運搬や設置の便を考慮して,防音箱内にエンジンや作業機本体等の構成機器を収容してパッケージ化された防音型の作業機として構成されている。
【0003】
このような防音型エンジン駆動作業機300の構成例を図9に示す。
【0004】
図9に示す防音型エンジン駆動作業機300の防音箱310は,エンジン351や,エンジン351によって駆動される圧縮機本体や発電機本体等の作業機本体352,その他のエンジン駆動作業機の構成機器を載置する基台320と,これらの構成機器を載置した基台320上を覆う防音ケース330によって構成されており,防音ケース330内に,エンジン駆動作業機の構成機器を収容する空間が形成されている。
【0005】
この防音ケース330内の空間は,基台320上に垂直方向に立設された仕切壁312によって防音箱310の長手方向の前後に仕切られており,このうちの一方の室をエンジン351や作業機本体352を収容するエンジン室330aと成すと共に,他方の室を,トップパネル334に設けた排風口335を介して機外と連通する排風室330bとしている。
【0006】
そして,前述の仕切壁312の中央部分に設けた連通口(図示せず)でエンジン室330aと排風室330bとを連通すると共に,この連通口の部分にエンジン351のラジエータ354を配置し,このラジエータ354に対し冷却風を導入する冷却ファン355を設けることにより,この冷却ファン355によってエンジン室330aから排風室330bに向かう冷却風を生じさせると,ラジエータ354を通過した冷却風が排風室330bに導入されると共に,排風室330bに導入された冷却風がトップパネル334に設けられた排風口335を介して機外に排出されるように構成されている。
【0007】
また,防音ケース330のサイドパネル333には外気を導入するための吸気口327が設けられていて、冷却ファン355を回転させてエンジン室330aから排風室330bに向かう冷却風の流れを生じさせると,エンジン室330a内は負圧となるため,吸気口327からエンジン室330a内へ冷却風として機外より外気を導入するようになっている。
【0008】
このように,防音型エンジン駆動作業機300のサイドパネル333やトップパネル334には吸気口327や排風口335が設けられており,防音箱310の内の空間が機外と連通していることから,防音箱310内で発生した騒音は,この吸気口327や排風口335等の開口部を介して機外に漏出し得る。
【0009】
そのため,防音箱310内で発生した騒音が,このような開口部を介して機外へ漏出することを防止するための各種の防音構造が提案されている。
【0010】
このような防音構造として,後掲の特許文献1には,防音箱310のサイドパネル333に設けた吸気口327の内側に,図10に示すダクト360を取り付けることにより,吸気口327を介した防音箱310内への外気の導入を確保しつつ,エンジン室330a内で生じた騒音が吸気口327を介して直接機外に漏出できないようにしている。
【0011】
また,後掲の特許文献2には,図11に示すように排風室330bと機外とを連通する排風口335を防音箱310のリヤパネル332に設け,この排風口335にルーバ361を取り付けることにより,排風口335を介して機外に漏出する騒音を低減すると共に,排風口335を介した雨水の浸入を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2009-121409号公報
【文献】特開2011―241695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述のように,防音箱310に設けた吸気口327や排風口335等の開口部に対する防音対策として,ダクト360やルーバ361を取り付けることが提案されている。
【0014】
しかし,前述の排風室330bに連通した排風口335にダクト360やルーバ361を設けると,排風口335にダクト360やルーバ361を設けていない構成に比較して冷却風の抜けが悪くなることで,ラジエータ354を通過する冷却風の風量が減少し,その結果,エンジン351の冷却性能が低下する等,防音型エンジン駆動作業機300のヒートバランスに影響を与えてしまう。
【0015】
そのため,排風室330bに連通して設けられている排風口335に対しては,ダクト360やルーバ361の取付による防音対策を行うことなく,騒音の低減は,主として防音ケース330の二重化や,エンジン351の消音器の大型化などの方法での対処するのが一般的となっている。
【0016】
しかし,このような防音ケース330の二重化や,消音器の大型化による防音対策は,非常に大がかりでコストがかかることから,このような防音対策を講じれば,防音型エンジン駆動作業機の市場における価格競争力を低下させてしまうことになる。
【0017】
そのため,より簡単な構造であり,低コストで防音効果を高めることができるものでありながら,防音型エンジン駆動作業機の冷却性能を低下させない,又は,冷却性能を改善することができる防音対策が要望されている。
【0018】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたもので,比較的簡単な構造であり,低コストで実現することができ,しかも,防音型エンジン駆動作業機の冷却性能を低下させることなく,又は冷却性能を改善することができるものでありながら,防音箱のトップパネルに排風室と連通して設けられた排風口を介した騒音の漏出を低減することができる,防音型エンジン駆動作業機の排風部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と,発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0020】
上記目的を達成するために,本発明の防音型エンジン駆動作業機1の排風部構造は,
垂直方向に立設された仕切壁12によって防音箱10の内部を二室に仕切り,一方の室をエンジン51及び作業機本体(図示せず)が収容されるエンジン室30aとし,他方の室を前記仕切壁12に設けた連通口(図示せず)を介して前記エンジン室30aと連通した排風室30bとし,前記排風室30bの形成位置におけるトップパネル34に機外と連通する排風口35を設け,前記エンジン室30aから前記排風室30bに向かう冷却風を発生させる冷却ファン55を設けると共に,前記仕切壁12に設けた連通口の形成位置に前記エンジン51のラジエータ54を配置して,前記排風室30bから前記排風口35に至る部分に,前記ラジエータ54で熱交換された後の冷却風を機外に排出するための排風部40が形成された防音型エンジン駆動作業機において,
前記ラジエータ54のコア54bの上端位置Tと同等以上の高さ位置で該ラジエータ54の前記排風室30b側の側面に一辺61aを接触又は近接させていると共に,前記一辺61aと対向する他辺61bを,平面視において前記排風口35と一部重なる位置まで延在させた,平面視矩形状の上部邪魔板61を,前記排風室30b内に水平方向に配置し
前記上部邪魔板61の下方で,かつ,前記ラジエータ54の前記コア54bの高さ方向の中央位置Mよりも上方の高さ位置で前記ラジエータ54の前記コア54bの前記排風室30b側の側面に一辺621a,622aを接触又は近接させた平面視矩形状の下部邪魔板62(621,622)を,前記排風室30b内に水平方向に配置すると共に,
前記下部邪魔板62(621,622)の前記一辺621a,622aと,該一辺621a,622bと対向する他辺621b,622b間の間隔(W2a,W2b)を,前記上部邪魔板61の前記一辺61aと前記他辺61b間の間隔W1よりも短く形成したことを特徴とする(請求項1:図1~5参照)。
【0022】
前記下部邪魔板62(621,622)を複数枚設け,上下に間隔を開けて配置すると共に,該下部邪魔板62(621,622)の前記一辺621a,622aと前記他辺621b,622b間の間隔W2a,W2bを,下方に配置されるもの程,短くするものとしても良い(請求項図4参照)。
【0023】
前記上部邪魔板61及び/又は前記下部邪魔板62(621,622)には,発泡ウレタン等の遮音材(図示せず)を取り付けることが好ましい(請求項)。
【0024】
前記上部邪魔板61及び前記下部邪魔板62(621,622)の前記一辺61a,621a,622aには,上向きに突出するフランジ63を設けることが好ましい(請求項図4参照)。
【0025】
更に,前記上部邪魔板61及び前記下部邪魔板62(621,622)の前記他辺61b,621b,622bには,下向きに突出するフランジ64を設けることが好ましい(請求項図4参照)。
【発明の効果】
【0026】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の排風部構造を備えた防音型エンジン駆動作業機1では,防音型エンジン駆動作業機1の冷却性能を低下させることなく,排風口35を介した騒音の漏出を抑制することができた。
【0027】
特に,下部邪魔板62を設けた構成,より好ましくは下部邪魔板62(621,622)を複数枚設け,下側にいくほど,下部邪魔板621,622の一辺621a,622aと他辺621b,622b間の間隔W2a,W2bを短くした構成では,ラジエータ54の上側と下側を通過する冷却風の風量の偏りを是正して均一化することで,防音型エンジン駆動作業機1の冷却性能を改善することができた。
【0028】
上部邪魔板61及び/又は下部邪魔板62(621,622)に発泡ウレタン等の遮音材(図示せず)を取り付けた構成では,騒音の漏出防止効果をより一層,高めることができた。
【0029】
なお,前述した上部邪魔板61,下部邪魔板62(621,622)を設けることで,防音型エンジン駆動作業機1の停止時,排風口35より吹き込んだ雨水がラジエータ54のコア54bに降りかかり難くなっており,その結果,ラジエータ54のコア54bに設けたフィン間の隙間を通過した雨水がエンジン室30aに浸入することについても好適に抑制することができるものとなっている。
【0030】
この場合,上部邪魔板61,及び下部邪魔板62(621,622)の一辺61a,621a,622aに上向きに突出するフランジ63を設けることで,上部邪魔板61,下部邪魔板62(621,622)上に降り落ちた雨水が,ラジエータ54のコア54b側に落下することを好適に防止することができた。
【0031】
また,上部邪魔板61,及び下部邪魔板62(621,622)の他辺61b,621b,622bに下向きに突出するフランジ64を設けることで,上部邪魔板61,及び下部邪魔板62(621,622)の強度を向上させることができるだけでなく,上部邪魔板61及び下部邪魔板62(621,622)上に降り落ちた雨水を,上部邪魔板61及び下部邪魔板62(621,622)上に溜めることなく,他辺61b,621b,622b側より落下させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の排風部構造を備えた防音型エンジン駆動作業機の斜視図。
図2】本発明の排風部構造を備えた防音型エンジン駆動作業機の(A)は側面図,(B)は排風口部分の平面図。
図3】防音型エンジン駆動作業機の排風部の説明図。
図4】上部邪魔板,下部邪魔板の説明図。
図5】上部邪魔板,下部邪魔板を備えた邪魔板ユニットの斜視図。
図6】本発明の排風部構造における遮音効果の説明図であり,(A)は騒音源NSからの直進音に対する遮音効果,(B)はラジエータを通過した騒音に対する遮音効果の説明図。
図7】排風部における冷却風の流れを説明した説明図であり,(A)は上部邪魔板,下部邪魔板が設けられていない排風部,(B)は上部邪魔板,下部邪魔板を備えた排風部。
図8】本発明の排風部による雨水浸入防止効果の説明図。
図9】防音型エンジン駆動作業機の構成例を示す説明図(従来)。
図10】防音型エンジン駆動作業機の吸気口に設けるダクトの説明図〔特許文献1の図9(C)に対応〕。
図11】防音型エンジン駆動作業機の排風口の防音構造(ルーバによる防音)の説明図(特許文献2の図5に対応)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に,添付図面を参照しながら本発明の排風部構造を備えた防音型エンジン駆動作業機1の構成について説明する。
【0034】
〔防音型エンジン駆動作業機の全体構成〕
図1及び図2中の符号1は,本発明の排風部構造を備えた防音型エンジン駆動作業機を示す。
【0035】
この防音型エンジン駆動作業機1は,エンジン51や作業機本体(図示せず)などの構成機器を防音箱10内に収容してパッケージ化したものであり,これにより防音箱10内で生じた騒音の漏出が低減されていると共に,運搬や設置を容易に行うことができるように構成されている。
【0036】
防音型エンジン駆動作業機1の構成機器を収容する前述の防音箱10は,エンジン51や作業機本体,その他の構成機器を載置する平面視矩形の基台20と,構成機器を載置した状態の前記基台20上を覆う防音ケース30によって構成されている。
【0037】
このうちの防音ケース30は,フロントパネル31,リヤパネル32,サイドパネル33,及びトップパネル34から成る箱型のケースであり,この防音ケース30を基台20上に載置することで,防音ケース30内に基台20上に載置された構成機器を収容する収容空間が形成されている。
【0038】
なお,図1及び図2の防音ケース30において,紙面手前側のサイドパネル33の一部は取り外された状態にある。
【0039】
この防音ケース30内の空間は,基台20上より垂直方向に立設された仕切壁12によって防音箱10の長手方向前後に二室に分割され,フロントパネル31側にエンジン51や作業機本体等が収容されるエンジン室30aが,リヤパネル32側に排風室30bがそれぞれ形成される。
【0040】
前述のエンジン室30aと排風室30bは,仕切壁12の中央部分に設けた連通口(図示せず)を介して連通されており,また,排風室30bは,図1及び図2に示すようにトップカバー34に設けた排風口35を介して機外と連通している。
【0041】
防音ケース30内の空間を仕切る仕切壁12に設けた連通口(図示せず)の形成部分には,図3に示すようにアッパータンク54a,ロアータンク54c,及びコア54bから成るエンジン51のラジエータ54が配置されている。
【0042】
仕切壁12に対するラジエータ54の配置は,仕切壁12に設けた前述の連通口内にラジエータ54を取り付けるものであっても良く,又は,仕切壁12に形成された連通口にラジエータ54のコア54bの部分が対向するよう,ラジエータ54を仕切壁12のエンジン室30a側,又は排風室30b側に取り付けるものとしても良く,後述する冷却ファン55で発生させた冷却風が,仕切壁12の連通口とラジエータ54のコア54bを通過してエンジン室30aから排風室30bに流入し得るように構成されていればその構成は特に限定されない。
【0043】
防音箱10のエンジン室30a内には,図1及び図2に示すように前述のラジエータ54に向かう冷却風を発生させる冷却ファン55が配置されており,冷却ファン55を作動させて冷却風を発生させると,エンジン室30a内の空気がラジエータ54のコア54bを通過して熱交換された後,排風室30bに導入され,排風口35を介して機外に排出されるように構成されている。
【0044】
このように,上記構造の防音型エンジン駆動作業機1では,排風室30bから排風口35の部分にかけて,ラジエータ54を通過して熱交換された後の冷却風を機外に排出するための排風部40が形成されている。
【0045】
〔上部邪魔板及び下部邪魔板〕
以上のように構成された防音箱10の排風室30b内には,ラジエータ54の排風室30b側の面から防音ケース30のリヤパネル32側に向かって,上部邪魔板61,好ましくは上部邪魔板61と共に下部邪魔板62(621,622)が水平方向に設けられている。
【0046】
この上部邪魔板61と下部邪魔板62(621,622)は,いずれも防音ケース30のサイドパネル33,33の内壁間を架橋するように排風室30b内に取り付けることができるよう,サイドパネル33の内壁間の間隔に略対応する長さL(図5参照)を有する平面視矩形状に形成されている。
【0047】
このうちの上部邪魔板61は,幅方向の一端を成す一辺61aを,ラジエータ54のコア54bの上端位置T(図3参照)と同等以上の高さ位置,図示の実施形態ではラジエータ54のコア54bの上端位置Tと同一の高さ位置でラジエータ54の排風室側の側面に接触又は近接させた状態(図示の実施形態では近接させた状態)で排風室30b内に水平方向に取り付けられており,これにより,前記一辺61aと対向する他辺61bが,平面視において前記排風口35と一部重なる位置まで延在するよう,前記一辺61aと他辺61b間の間隔W1が設定されている。
【0048】
また,下部邪魔板62(621,622)は,その幅方向の一端を成す一辺621a,622aを,上部邪魔板61の下方で,かつ,前記ラジエータ54のコア54bの高さ方向中央位置Mよりも上方の高さ位置で前記ラジエータ54の前記コア54bの前記排風室30b側の側面に接触又は近接させた状態(図示の実施形態では近接させた状態)で排風室30b内に水平方向に取り付けられている。
【0049】
この下部邪魔板62(621,622)の前記一辺621a,622aと,該一辺621a,622aと対向する他辺621b,622b間の間隔W2a,W2bは,前述した上部邪魔板61の前記一辺61aと他辺61b間の間隔W1よりも短く形成されている(図4参照)。
【0050】
図示の実施形態では,下部邪魔板62(621,622)を複数枚(図示の実施形態では2枚)設け,この下部邪魔板62(621,622)を高さ方向に間隔を開けて取り付けている。
【0051】
このように複数枚の下部邪魔板621,622を設ける場合,上側の下部邪魔板621の一辺621aと他辺621b間の間隔W2aに対し,下側に配置される下部邪魔板622の一辺622aと他辺622b間の間隔W2bを短く形成する。
【0052】
このように,下部邪魔板62(621,622)の一辺621a,622aと他辺621b,622b間の間隔W2a,W2bを下側に配置されるもの程短く形成する場合,図3中に一点鎖線で示すように,側面視において上部邪魔板61の他辺61bと下部邪魔板621,622の他辺621b,622bの全てが,いずれも同一の直線上に配置されるように構成するものとしても良い。
【0053】
前述の上部邪魔板61及び下部邪魔板62(621,622)の各辺のうち,ラジエータ54に接触,又は近接配置される前述の一辺61a,621a,622aには,それぞれ上向きに突出するフランジ63を設け,排風口35を介して排風室30b内に降り込んだ雨水が上部邪魔板61や下部邪魔板62(621,622)の上面に落下した際,この雨水がラジエータ54側に落下できないようにすることで,このような雨水がラジエータ54のコア54bを通過してエンジン室30a側に入り込まないようにしている。
【0054】
また,上部邪魔板61及び下部邪魔板62(621,622)の各辺のうち,前記一辺61a,621a,622aと対向する他辺61b,621b,622bには,それぞれ下向きに突出するフランジ64を設け,このフランジ64によって上部邪魔板61及び下部邪魔板62(621,622)を補強すると共に,上部邪魔板61及び下部邪魔板62(621,622)の上に落下した雨水を溜めることなく,他辺61b,621b,622b側より下方に落下させることができるように構成されている。
【0055】
このように構成された上部邪魔板61及び下部邪魔板62(621,622)には,発泡ウレタン等の既知の遮音材を取り付けることが好ましい。
【0056】
以上のように構成された上部邪魔板61及び下部邪魔板62(621,622)は,それぞれ独立して別個に防音ケース30のサイドパネル33の内面間を架橋するように取り付けるものとしても良いが,本実施形態では,前述の上部邪魔板61と下部邪魔板62(621,622)を,二枚の側板65,65間に架設すると共に,上部邪魔板61と上側の下部邪魔板621間,上側の下部邪魔板621と下側の下部邪魔板622間を仕切板66で連結して形成した,邪魔板ユニット70を予め形成しておき,この邪魔板ユニット70を排風室30b内に取り付けることにより,前述したラジエータ54との位置関係となるように,上部邪魔板61と下部邪魔板62(621,622)を排風室30b内に取り付けることができるように構成することで,組み立て時の作業性を向上させている。
【0057】
〔作用等〕
(1)騒音の低減
以上のように構成された排風部40を備えた防音型エンジン駆動作業機1において,エンジン室30a内で生じた騒音は,仕切壁12に設けた連通口及びラジエータ54のコア54bに設けられたフィンとフィンの間の隙間を介して排風室30b内に至り,排風口35を介して機外に漏出する。
【0058】
ここで,図6(A)中の符号NSで示した位置をエンジン室30a内の騒音源であると仮定すると,この騒音源NSからの直進音が,ラジエータ54のコア54bを通過して直接,排風口35に到達し得る進路は,騒音源NSとラジエータ54のコアの上端Tを結ぶ線ND1と,騒音源NSとリヤパネル32寄りの排風口35の端縁35bを結ぶ線ND2間に挟まれた範囲となる。
【0059】
しかし,この線ND1とND2間の間隔は,図6(A)に示したように,上部邪魔板61と下部邪魔板62(621,622)によって塞がれている。
【0060】
そして,図6(A)中に示した騒音源NSを上下に移動させた場合を想定しても,上部邪魔板61と下部邪魔板62(621,622)は,騒音源NSからの直進音の進路を塞ぐ位置にあることから,上部邪魔板61と下部邪魔板62(621,622)を設けることにより,騒音源NSからの直進音の全部又は一部が上部邪魔板61や下部邪魔板62(621,622)に衝突することなく排風口35に到達することができないようになっている。
【0061】
また,騒音源NSからの直進音に限らず,エンジン室30a内で反射した反射音も含め,ラジエータ54のコア54bを通過した騒音が直接,排風口35に到達し得る進路は,図6(B)に示すようにラジエータ54側の排風口の端縁35aとラジエータ54のコア54bの上端位置Tとを結ぶ線NL1と,リヤパネル32側の排風口35の端縁35bとラジエータ54のコア54bの下端位置Bとを結ぶ線NL2間に挟まれた範囲となる。
【0062】
しかし,図6(B)から明らかなように,この線NL1とNL2間の間隔についても,その一部が上部邪魔板61と下部邪魔板62(621,622)によって塞がれており,ラジエータ54を通過した騒音のうち,図6(B)中に破線の斜線で示した範囲を進行するもの,すなわちエンジン室30aで生じた反射音の一部のみしか排風口35に直接到達し得ないようになっている。
【0063】
その結果,本発明の排風部構造を備えた防音型エンジン駆動作業機1では,機外に漏出する騒音を大幅に低減できるものとなっており,特に,上部邪魔板61と下部邪魔板62(621,622)に発泡ウレタン等の遮音材を取り付けることで,より効果的に騒音の漏出を低減することが可能となる。
【0064】
一例として,図1及び図2に示した構成の防音型エンジン駆動作業機1において,上部邪魔板61及び下部邪魔板62(621,622)を設けていない構成の音響パワーレベル(Lw)は103dBであったが,図3~5に示した構成の上部邪魔板61と下部邪魔板62(621,622)を備えた邪魔板ユニット70(上部邪魔板61と下部邪魔板621,622にそれぞれ遮音材として発泡ウレタンを取り付けた構造のもの)を取り付けたところ,音響パワーレベル(Lw)を102dBにまで,―1dB低下させることができた。
【0065】
(2)冷却性能の維持又は向上
従来技術として説明したように防音箱の開口部にダクトやルーバを設ける構成では,機外への騒音の漏出の低減と引き換えに,冷却風の風量を減少させてしまうものとなっていたが,本発明の排風部構造を備えた防音型エンジン駆動作業機1では,前述したように騒音を低減する効果が得られるものでありながら,ラジエータ54の熱交換効率を低下させることなく,従って防音型エンジン駆動作業機の冷却性能を低下させることなく,騒音を低減させることができた。
【0066】
特に,図1~5を参照して説明した実施形態の構成では,上部邪魔板61や下部邪魔板62(621,622)を設ける前の防音型エンジン駆動作業機1に比較して,冷却性能を向上することができた。
【0067】
このような冷却性能の向上が得られる理由については必ずしも明らかではないが,以下のような理由で冷却性能の向上が得られたものと推察される。
【0068】
・冷却風の流速の均一化
排風室30bのトップパネル34に排風口35を設けた構成では,ラジエータ54の下部側に対し,上部側の方が排風口35に近い位置にある。
【0069】
そのため,図7(A)に示すように,上部邪魔板61及び下部邪魔板62(621,622)を設けていない構成では,排風口35に近い,ラジエータ54のコア54bの上部側を通過した冷却風が排風口35に向かう流れを形成すると,ラジエータ54のコア54bの下部側を通過した冷却風は,この上部側の流れによって進行を阻まれることとなる。
【0070】
そのため,上部邪魔板61や下部邪魔板62(621,622)を設けていない構成では,ラジエータ54のコア54bの下部側を流れる冷却風の風速(風量)が低下してしまい,ラジエータ54の下部側が熱交換に十分に貢献できていなかったものと考えられる。
【0071】
これに対し,本発明の構成では,ラジエータ54のコア54bの上側を通過した冷却風は,上部邪魔板61と上側の下部邪魔板621間,上側の下部邪魔板621と下側の下部邪魔板622間の間の間隔を通過する際に抵抗を受けることで流速が低下することで,ラジエータ54のコア54bの上側を通過する冷却風の流速と,下側を通過する冷却風の流速を近付けることができるものとなっている。
【0072】
しかも,上部邪魔板61及び下部邪魔板62(621,622)は,下方に行くほど幅W1,W2a,W2bが狭くなることから,ラジエータ54のコア54bの上部側を通過する冷却風はより大きな抵抗を受ける一方,下側(中央位置M側)に行くほど冷却風が受ける抵抗は小さくなる。
【0073】
その結果,ラジエータ54の高さ方向のいずれの位置を通過するかに拘わらず,冷却風の風速,従って,ラジエータ54を通過する冷却風の風量が均一化されることで,ラジエータ54の高さ方向の全体で偏りなく熱交換が行われることで,ラジエータ54の熱交換効率が向上して防音型エンジン駆動作業機の冷却性能が向上したものと推察される。
【0074】
・整流効果
また,排風室30b内に設けられた上部邪魔板61と下部邪魔板62(621,622)は,ラジエータ54のコア54bを通過した冷却風に対し,整流板として機能すると共に,上部邪魔板61の一辺61aと他辺61b間の間隔W1よりも下部邪魔板62(621,622)の一辺621a,622aと他辺621b,622b間の間隔W2a,W2bを短くしたこと,上側の下部邪魔板621の一辺621aと他辺621b間の間隔W2aに対し,下側の下部邪魔板622の一辺622aと他辺622b間の間隔W2bを短くしたことで,図7(B)に示すように,ラジエータ54のコア54bの下部側を通過した冷却風は,上部邪魔板61や下部邪魔板62(621,622)によってその進行を遮られることなく,排風口35に向かうことができるようになっている。
【0075】
このように,ラジエータ54のコア54bを通過した後の冷却風を,円滑に排風口35に到達させることができることで,ラジエータ54を通過する冷却風量が増大し,これによりラジエータ54の熱交換効率が改善されたことも,冷却性能の向上が得られた一因と考えられる。
【0076】
(3)雨水の浸入防止
なお,本発明の排風部構造を備えた防音型エンジン駆動作業機1では,前述したように,冷却性能の維持又は向上と,騒音の低減が同時に得られるだけでなく,更に,排風口35より排風室30b内に入り込んだ雨水が,ラジエータ54のコア54bを通過してエンジン室30aに浸入することも好適に防止することができるものとなっている。
【0077】
すなわち図8に示すように,排風口35を介して雨水が一点鎖線の矢印で示すように排風室30b内に入り込んだ場合であっても,この雨水は,上部邪魔板61や下部邪魔板62(621,622)の上面に衝突することで,ラジエータ54のコア54bに直接到達することができないようになっている。
【0078】
このように,上部邪魔板61や下部邪魔板62(621,622)に雨水の浸入を防止させる機能を持たせる場合,上部邪魔板61及び下部邪魔板62(621,622)の四辺のうち,ラジエータ54側に配置される一辺61a,621a,622aに,上方に向かって突出するフランジ63(図4参照)を設け,上部邪魔板61や下部邪魔板62(621,622)の上面に落下した雨水が,ラジエータ54側に流れ落ちないように構成する。
【0079】
この場合,上部邪魔板61及び下部邪魔板62(621,622)上に落下した雨水が上部邪魔板61及び下部邪魔板62(621,622)の上面に溜まることがないよう,前記一辺61a,621a,622aと対向する他辺61b,621b,622bには,下方に向かって突出するフランジ64を設け,他辺61b,621b,622bより雨水が落下するように構成するものとしても良い。
【0080】
なお,このようなフランジ63,64の形成により,上部邪魔板61及び下部邪魔板62(621,622)の強度についても向上させることができる。
【0081】
このように,本発明の防音型エンジン駆動作業機1では,排風室30b内に上部邪魔板61と下部邪魔板62(621,622)を設けるという比較的簡単な構造改変により,騒音の低減,冷却性能の維持又は向上,及び排風口35を介して浸入した雨水がラジエータ54のコア54bを介してエンジン室30aに浸入することを防止するという効果を複合的に得ることができるものとなっている。
【符号の説明】
【0082】
1 防音型エンジン駆動作業機
10 防音箱
12 仕切壁
20 基台
30 防音ケース
30a エンジン室
30b 排風室
31 フロントパネル
32 リヤパネル
33 サイドパネル
34 トップパネル
35 排風口
35a,35b 端縁(排風口35の)
40 排風部
51 エンジン
54 ラジエータ
54a アッパータンク
54b コア
54c ロアータンク
55 冷却ファン
61 上部邪魔板
61a 一辺(上部邪魔板の)
61b 他辺(上部邪魔板の)
62 下部邪魔板
621 下部邪魔板(上側)
621a 一辺(下部邪魔板621の)
621b 他辺(下部邪魔板621の)
622 下部邪魔板(下側)
622a 一辺(下部邪魔板622の)
622b 他辺(下部邪魔板622の)
63 フランジ(上向き)
64 フランジ(下向き)
65 側板
66 仕切板
70 邪魔板ユニット
300 防音型エンジン駆動作業機
310 防音箱
312 仕切壁
320 基台
327 吸気口
330 防音ケース
330a エンジン室
330b 排風室
332 リヤパネル
333 サイドパネル
334 トップパネル
335 排風口
351 エンジン
352 作業機本体
354 ラジエータ
355 冷却ファン
360 ダクト
361 ルーバ
T ラジエータのコアの上端位置
M ラジエータのコアの高さ方向中央位置
B ラジエータのコアの下端位置
W1 上部邪魔板61の一辺61aと他辺61bの間隔
W2a 下部邪魔板621の一辺621aと他辺621bの間隔
W2b 下部邪魔板622の一辺622aと他辺622bの間隔
L 上部邪魔板及び下部邪魔板の長さ
NS 騒音源
ND1 騒音源NSとラジエータコアの上端部Tを結ぶ線
ND2 騒音源NSと排風口35の端縁35bを結ぶ線
NL1 ラジエータコアの上端部Tと排風口35の端縁35aを結ぶ線
NL2 ラジエータコアの下端部Bと排風口35の端縁35bを結ぶ線

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11