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特許7635096画像形成装置及び該装置に用いられる供給手段の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】画像形成装置及び該装置に用いられる供給手段の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/12 20060101AFI20250217BHJP
【FI】
B65H7/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021133459
(22)【出願日】2021-08-18
(65)【公開番号】P2023028023
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 正彦
(72)【発明者】
【氏名】柴山 豪
(72)【発明者】
【氏名】潘 ▲レイ▼涛
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-155015(JP,A)
【文献】特開2015-196563(JP,A)
【文献】特開平08-262822(JP,A)
【文献】特開昭60-077051(JP,A)
【文献】特開2013-049532(JP,A)
【文献】特開2016-108149(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0347563(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを収容する収容手段と、
前記収容手段から前記シートを1枚ずつシート搬送路に供給する供給手段と、
前記シート搬送路上に配置され、前記シートの通過を検知するシート検知手段と、
前記供給手段を制御する制御手段と、
ユーザに対して情報を報知可能な報知部と、を備えた画像形成装置であって、
前記制御手段は、
前記供給手段に前記シートの供給を開始させてから前記シート検知手段が前記シートを検知するまでのシート供給時間が所定の基準値未満である場合において、
シート連れ送りが発生していると判定し、所定の通常待機時間よりも長い所定の延長待機時間が経過するまで待機した後、前記供給手段に後続のシートの供給を実行させ
前記報知部は、前記延長待機時間が経過するまで待機した後、前記供給手段に後続のシートの供給を実行させる供給遅延が所定の回数連続して実行された場合に、ユーザに対して、シート面の方向を逆さにするように促す報知をすること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記シート搬送路上に配置されたレジストローラをさらに備え、
前記供給手段は、駆動力を受けて回転する供給ローラを有し、
前記シート検知手段は、前記レジストローラに対して前記シート搬送路の上流側に配されたレジスト前センサであり、
前記シート供給時間は、前記供給ローラの回転が開始してから前記レジスト前センサが前記シートを検知するまでの時間であり、
前記制御手段は、前記レジストローラの回転開始後に、前記延長待機時間が経過するまで待機した後、前記供給手段に後続のシートの供給を実行させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記シートのサイズを判別するサイズ判別手段をさらに備え、
前記制御手段は、
前記サイズ判別手段により判別された前記シートのサイズに基づいて、前記通常待機時間及び前記延長待機時間を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか1つに記載の画像形成装置であって、
前記収容手段の周辺の温度及び湿度を測定する温湿度測定手段をさらに備え、
前記制御手段は、
前記温湿度測定手段の測定結果に基づいて、前記通常待機時間及び前記延長待機時間を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
シートを1枚ずつシート搬送路に供給する供給手段の制御方法であって、
前記供給手段に前記シートの供給を開始させてから前記シートが前記シート搬送路上の所定の位置を通過するまでの時間が所定の基準値未満である場合において、
シート連れ送りが発生していると判定し、所定の通常待機時間よりも長い所定の延長待機時間が経過するまで待機した後、前記供給手段に後続のシートの供給を実行させ
前記延長待機時間が経過するまで待機した後、前記供給手段に後続のシートの供給を実行させる供給遅延が所定の回数連続して実行された場合に、ユーザに対して、シート面の方向を逆さにするように促す報知をすること
を特徴とする供給手段の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、複合機、プリンタ、ファクシミリ装置等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においてシート搬送路上のシートジャム(シート詰まり)の発生確率を抑えるための技術として、シートの間隔を調整する制御が知られている。例えば、特許文献1のように、用紙の紙間が狭い場合に搬送ローラ及び給紙ローラを停止させる制御や、特許文献2のように、用紙の搬送の遅れ時間に基づいてピックアップローラの回転タイミングを補正する制御が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-44757号公報
【文献】特開2013-49532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の開示例においては、搬送ローラ及び給紙ローラの停止によって処理効率が低下する虞があるという問題があった。また、上記特許文献2の開示例においては、例えば、ピックアップローラによって複数枚重なった状態でシートが引き出される、所謂、シート連れ送りが発生した場合に、既にピックアップローラから飛び出したシートの供給タイミングをピックアップローラの制御をもって調整することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、シート連れ送りが発生した場合であっても、シートジャムの発生確率を効率的に抑えることができる画像形成装置及び該装置に用いられる供給手段の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願記載の画像形成装置は、シートを収容する収容手段と、前記収容手段から前記シートを1枚ずつシート搬送路に供給する供給手段と、前記シート搬送路上に配置され、前記シートの通過を検知するシート検知手段と、前記供給手段を制御する制御手段と、ユーザに対して情報を報知可能な報知部と、を備えた画像形成装置であって、前記制御手段は、前記供給手段に前記シートの供給を開始させてから前記シート検知手段が前記シートを検知するまでのシート供給時間が所定の基準値未満である場合において、シート連れ送りが発生していると判定し、所定の通常待機時間よりも長い所定の延長待機時間が経過するまで待機した後、前記供給手段に後続のシートの供給を実行させ、前記報知部は、前記延長待機時間が経過するまで待機した後、前記供給手段に後続のシートの供給を実行させる供給遅延が所定の回数連続して実行された場合に、ユーザに対して、シート面の方向を逆さにするように促す報知をすることを特徴とする
【0007】
また、前記画像形成装置において、前記シート搬送路上に配置されたレジストローラをさらに備え、前記供給手段は、駆動力を受けて回転する供給ローラを有し、前記シート検知手段は、前記レジストローラに対して前記シート搬送路の上流側に配されたレジスト前センサであり、前記シート供給時間は、前記供給ローラの回転が開始してから前記レジスト前センサが前記シートを検知するまでの時間であり、前記制御手段は、前記レジストローラの回転開始後に、前記延長待機時間が経過するまで待機した後、前記供給手段に後続のシートの供給を実行させてもよい。
【0009】
また、前記画像形成装置において、前記シートのサイズを判別するサイズ判別手段をさらに備え、前記制御手段は、前記サイズ判別手段により判別された前記シートのサイズに基づいて、前記通常待機時間及び前記延長待機時間を変更してもよい。
【0010】
また、前記画像形成装置において、前記収容手段の周辺の温度及び湿度を測定する温湿度測定手段をさらに備え、前記制御手段は、前記温湿度測定手段の測定結果に基づいて、前記通常待機時間及び前記延長待機時間を変更してもよい。
【0011】
本願記載の供給手段の制御方法は、シートを1枚ずつシート搬送路に供給する供給手段の制御方法であって、前記供給手段に前記シートの供給を開始させてから前記シートが前記シート搬送路上の所定の位置を通過するまでの時間が所定の基準値未満である場合において、シート連れ送りが発生していると判定し、所定の通常待機時間よりも長い所定の延長待機時間が経過するまで待機した後、前記供給手段に後続のシートの供給を実行させ、前記延長待機時間が経過するまで待機した後、前記供給手段に後続のシートの供給を実行させる供給遅延が所定の回数連続して実行された場合に、ユーザに対して、シート面の方向を逆さにするように促す報知をすることを特徴とするものである。



【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シートジャムの発生確率を効率的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1における画像形成装置の構成を示す概略断面図である。
図2】実施形態1における画像形成装置の制御構成の一部を示すブロック図である。
図3】実施形態1における制御部による処理手順の一部を示すフローチャートである。
図4】実施形態1の一実施例における制御部による処理内容の一部を示すテーブルである。
図5】シートカセット内において各シートのバリが上を向くように複数枚のシートが積載されている状態を示す概略図である。
図6】シートカセット内において各シートのバリが下を向くように複数枚のシートが積載されている状態を示す概略図である。
図7】実施形態2における画像形成装置の制御構成の一部を示すブロック図である。
図8】実施形態3における画像形成装置の制御構成の一部を示すブロック図である。
図9】実施形態3における補正テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各実施形態の間で同一の構成要素には同一の符号を付し、それら構成要素について重複する説明は省略する。
【0015】
(実施形態1)
-画像形成装置の全体の構成-
先ず、実施形態1における画像形成装置Aの全体の構成について説明する。
【0016】
図1は、実施形態1における画像形成装置Aの構成を示す概略断面図である。図2は、実施形態1における画像形成装置Aの制御構成の一部を示すブロック図である。なお、図において、符号Xは、幅方向(奥行き方向)を示しており、-X方向(マイナスX方向)を前方向とし、+X方向(プラスX方向)を後方向とする。符号Yは、幅方向Xに直交する左右方向Yを示しており、-Y方向(マイナスY方向)を左方向とし、+Y方向(プラスY方向)を右方向とする。符号Zは、上下方向を示しており、-Z方向(マイナスZ方向)を下方向とし、+Z方向(プラスZ方向)を上方向とする。これらの設定は、以降の実施形態においても同様である。
【0017】
画像形成装置Aは、電子写真方式の画像形成装置であり、フルカラー画像を印字可能な中間転写方式のカラー複合機である。画像形成装置Aは、画像読取部1と、画像形成部2と、中間転写体3と、二次転写部4と、定着装置5と、シート収容部6と、シートローラ群7と、レジスト前センサ70と、シート排出部71と、を有している(図1参照)。画像形成装置Aには、シートが搬送されるシート搬送路Sが設けられている。本実施形態において、画像形成装置Aによる印字には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色のトナーが用いられる。
【0018】
画像読取部1は、原稿から画像を読み取るものであり、画像形成装置Aの上部に設けられている。画像読取部1は、原稿読取装置10と、原稿載置台11と、自動原稿処理装置12と、を有している(図1参照)。
【0019】
原稿読取装置10は、原稿に光を照射し、その反射光に基づいて原稿から画像を読み取るものである。原稿読取装置10には、例えば、原稿に光を照射する光源と、レンズやイメージセンサと、原稿の反射光をレンズに導くミラー等と、が内蔵されている。レンズを介してイメージセンサに入射された原稿の反射光がイメージセンサによって光電変換されることにより、画像データが生成される。
【0020】
原稿載置台11は、ユーザによって原稿が載置される部分であり、原稿読取装置10の上側に設けられている。原稿載置台11は、透明ガラスから形成されている。自動原稿処理装置12は、ユーザによって差し込まれた原稿を原稿読取装置10へ自動的かつ連続的に搬送するものであり、原稿載置台11の上側に設けられている。原稿の画像は、原稿載置台11上に載置された状態で、あるいは、自動原稿処理装置12によって原稿読取装置10へ搬送された状態で、原稿読取装置10によって読み取られる。
【0021】
画像形成部2は、画像データに基づいてトナー像を形成するものであり、露光装置20と、現像装置21と、像担持体22と、帯電器23と、クリーニングユニット24と、を有している(図1参照)。なお、画像データは、画像読取部1によって生成されたものでもよいし、外部装置から供給されたものでもよい。
【0022】
露光装置20は、帯電器23によって帯電された像担持体22の表面を、各色に応じて露光することにより、各色に応じた静電潜像を像担持体22上に形成するものである。露光装置20には、レーザビームを出射する光源と、レーザビームを走査して反射するポリゴンミラーと、反射されたレーザビームのレーザ光を像担持体22に導くための光学要素(例えば、レンズやミラー等)と、が内蔵されている。
【0023】
現像装置21は、それぞれの像担持体22の表面に形成された静電潜像をトナーカートリッジTから供給される各色(Y,M,C,K)のトナーにより顕像化(可視化)してトナー像を形成するものである。現像装置21がトナーを像担持体22に飛翔させることにより、像担持体22の表面に形成された静電潜像に対してトナーが供給され、像担持体22の表面にトナー像が形成される。
【0024】
像担持体22は、その表面に静電潜像が形成されるものであり、図示しないメインモータの駆動によって、所定の方向に回転駆動される。像担持体22の回転駆動によって、像担持体22上に顕像化されたトナー像が、中間転写体3へと搬送される。
【0025】
帯電器23は、像担持体22の表面を所定の電位に均一に帯電させるものである。
【0026】
クリーニングユニット24は、現像、画像転写後における像担持体22上の表面に残留したトナーを除去、回収するものである。
【0027】
中間転写体3は、像担持体22の上方に配置されており、像担持体22の表面に形成された各色のトナー像が一旦転写されるものである。中間転写体3は、中間転写ベルト30と、駆動ローラ31と、従動ローラ32と、一次転写ローラ33と、を有している(図1参照)。
【0028】
中間転写ベルト30は、所定の方向に回転される無端状のベルトであり、駆動ローラ31と従動ローラ32とに懸架されている。中間転写ベルト30の外表面は、像担持体22と接触している。像担持体22にそれぞれ顕像化された各色のトナー像は、中間転写ベルト30上に順次重ねて転写される。中間転写ベルト30上に転写されたトナー像は、中間転写ベルト30の回転によって、二次転写部4へと搬送される。中間転写ベルト30は、例えば、厚さ100μm~150μm程度のフィルムから形成されている。
【0029】
駆動ローラ31は、図示しないベルトモータの駆動によって、所定の方向に回転駆動されるローラであり、中間転写体3の右端側に設けられている。駆動ローラ31の回転駆動によって、中間転写ベルト30が回転される。
【0030】
従動ローラ32は、中間転写ベルト30に沿って回転自在に設けられたローラである。従動ローラ32は、中間転写ベルト30の回転に従って回転される。
【0031】
一次転写ローラ33は、それぞれ、中間転写ベルト30を介して像担持体22に対応するように列設されている。以下、像担持体22に形成された各色のトナー像が中間転写ベルト30上に転写されることを、「一次転写」と称す。
【0032】
二次転写部4は、中間転写ベルト30上に一次転写された各色のトナー像をシート上に転写するものである。二次転写部4は、シートと中間転写ベルト30とが対向する転写部位に設けられた二次転写ローラ40を有している。以下、中間転写ベルト30上に転写された各色のトナー像がシートに転写されることを、「二次転写」と称す。
【0033】
定着装置5は、シート上に二次転写されたトナー像を加熱溶融してシート上に固着させることにより、トナー像をシート上に定着させるものであり、シート搬送路Sにおいて二次転写部4の上流側に設けられている。
【0034】
シート収容部6は、画像形成装置Aの下部に配置されており、画像形成に使用するシートを収容するシートカセット60を有している。本実施形態において、シートカセット60は、請求項に記載の「収容手段」に相当する。
【0035】
シートローラ群7は、ピックアップローラ7aと、供給ローラ7bと、分離ローラ7cと、搬送ローラ7d~7fと、レジストローラ7gと、を含む。
【0036】
ピックアップローラ7aは、シートカセット60のシート束の最上層のシートを引き出すものである。供給ローラ7bは、シートをシート搬送路Sに送りだすものである。分離ローラ7cは、複数枚重なった状態で引き出されたシートを1枚ずつ分離するものである。供給ローラ7bは、供給モータ90(図2参照)から駆動力を受けて回転し、ピックアップローラ7a及び分離ローラ7cは、供給ローラ7bの回転に従動して回転する。本実施形態において、ピックアップローラ7a、供給ローラ7b及び分離ローラ7cは、請求項に記載の「供給手段」を構成している。
【0037】
搬送ローラ7d~7fは、シートをシート搬送路Sに沿って搬送するものである。レジストローラ7gは、シート収容部6から搬送されてくるシートを一旦停止させて、シートの先端を揃えるものである。搬送ローラ7d~7f及びレジストローラ7gは、搬送モータ91(図2参照)から駆動力を受けて回転する。
【0038】
レジスト前センサ70は、シートを検知するものであり、レジストローラ7gに対して前記シート搬送路Sの上流側に配されている(図1参照)。本実施形態において、レジスト前センサ70は、請求項に記載の「シート検知手段」に相当する。
【0039】
シート排出部71は、画像形成装置Aの上部に設けられており、印字済みのシートをフェイスダウンで載引するものである。
【0040】
上記の構成に加えて、画像形成装置Aには、ユーザによる入力操作等に応じて上記説明した各構成要素の制御を実行する制御部8が設けられている。制御部8は、請求項に記載の「制御手段」に相当する。制御部8の構成については、後述する。
【0041】
上記のような画像形成装置Aによって、次の通りシートに対する印字が実行される。先ず、画像形成部2が、画像読取部1によって生成された、あるいは外部装置から供給された画像データに基づいてトナー像を形成する。このトナー像が中間転写体3の中間転写ベルト30上に一次転写される。この間、シートがピックアップローラ7aによってシートカセット60から引き出され、搬送ローラ7dによってレジストローラ7gまで搬送され、レジストローラ7gによって二次転写部4に搬送される。続いて、二次転写部4が、中間転写ベルト30上に一次転写されたトナー像をシートに二次転写する。定着装置5が、シート上に二次転写されたトナー像をシートに定着させる。その後、シートが、搬送ローラ7dによって搬送され、シート排出部71上に排出されることをもって、シートに対する印字が完了するようになっている。
【0042】
なお、シートは、手差しトレイ61から手差しでシート搬送路Sに供給されてもよい。
【0043】
-制御部-
ところで、シートがピックアップローラ7aによってシートカセット60から引き出されるときに、複数枚重なった状態でシートが引き出される、所謂、「シート連れ送り」が発生することがある。連れ送りされた複数枚のシートのうち、最上層の1枚のシートは、分離ローラ7c及び供給ローラ7bによってシート搬送路Sに送り出されるが、残りのシートは、ピックアップローラ7aから飛び出したままの状態となる。このようなシート連れ送りが発生すると、シート連れ送りが発生していない場合と比較して、シートの間隔が狭くなり、ひいては、シート搬送路S上のシートジャムの発生確率が高くなってしまう。
【0044】
そこで、制御部8は、シートジャムの発生確率を効率的に抑えるために、シート連れ送りが発生しているか否かを判定し、シート連れ送りが発生していると判定した場合において、所定の通常待機時間よりも長い所定の延長待機時間が経過するまで待機した後、供給ローラ7bに後続のシートの供給を実行させる。以下、制御部8の構成及び処理について詳しく説明する。
【0045】
<制御部の構成>
制御部8は、処理部80と、記憶部81と、入力部82と、出力部83と、を有しており(図2参照)、これらは図示しないバス線により相互に接続されている。入力部82には、レジスト前センサ70が通信可能に接続されており、出力部83には、供給モータ90と、搬送モータ91と、が通信可能に接続されている。
【0046】
処理部80は、CPU(Central Processing Unit)等を含む。処理部80は、シート連れ送りが発生しているか否かを判定する連れ送り判定部800を有している(図2参照)。
【0047】
本実施形態において、連れ送り判定部800は、処理部80が供給モータ90を介して供給ローラ7bを回転して供給ローラ7bにシートの供給を開始させてから、レジスト前センサ70がシートを検知するまでの「シート供給時間」に基づいて、シート連れ送りが発生しているか否かを判定する。シート連れ送りが発生している場合、ピックアップローラ7aから飛び出したシートがレジスト前センサ70によって検知されるタイミングは、シート連れ送りが発生していない場合と比較して、早まる傾向にある。このため、連れ送り判定部800は、シート供給時間が後述の供給時間基準値811以上である場合にシート連れ送りが発生していないと判定し、シート供給時間が供給時間基準値811未満である場合にシート連れ送りが発生していると判定するようになっている。
【0048】
記憶部81は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを含む。記憶部81には、制御プログラム810及び供給時間基準値811が記憶されている。制御プログラム810は、記憶部81のROMに記憶されている。処理部80の制御によって、ROMに記憶されている制御プログラム810が読み出され、RAM上にロードされることにより、制御プログラム810が実行される。なお、制御プログラム810は、上記に限られず、HDD等の記録媒体から読み込まれてもよいし、LAN(Local Area Network)等のネットワークからダウンロードされてもよい。
【0049】
供給時間基準値811は、シート供給時間の基準となる値であり、連れ送り判定部800から参照される値である。本実施形態において、供給時間基準値811は、固定値として設定されている。
【0050】
<処理モード>
本実施形態において、制御部8は、所定の通常待機時間が経過するまで待機した後供給ローラ7bに後続のシートの供給を開始させる通常モードと、通常待機時間よりも長い所定の延長待機時間が経過するまで待機した後供給ローラ7bに後続のシートの供給を開始させる供給遅延モードと、を有している。制御部8は、所定のシート数毎に、本実施形態においてはシート1枚毎に、シート連れ送りが発生しているか否かに基づいて通常モード又は供給遅延モードを択一的に実行する。具体的には、次の通りである。
【0051】
処理部80の連れ送り判定部800が、シート連れ送りが発生していないと判定した場合、制御部8の処理部80は、所定の通常待機時間が経過するまで待機した後、供給モータ90を介して供給ローラ7bを回転して供給ローラ7bに後続のシートの供給を開始させる通常モードを実行する。一方で、連れ送り判定部800が、シート連れ送りが発生していると判定した場合、処理部80は、通常待機時間よりも長い所定の延長待機時間が経過するまで待機した後、供給モータ90を介して供給ローラ7bを回転して供給ローラ7bに後続のシートの供給を開始させる供給遅延モードを実行する。これにより、シート連れ送りの発生状況に応じて後続のシートの供給が開始されるタイミングが遅延され、シート連れ送りによって狭くなったシートの間隔が適宜広げられることから、シートジャムの発生確率を効率的に抑えることができる。
【0052】
また、本実施形態において、処理部80は、搬送モータ91を介してレジストローラ7gの回転を開始させた後に、供給遅延モードを実行するようになっている。これにより、先行のシートがレジストローラ7gによって搬送された後に、供給ローラ7bに後続のシートの供給を開始させることから、先行のシートがレジストローラ7gで一旦停止した場合であっても、シートの間隔を確実に広げることができる。
【0053】
<処理手順>
続いて、制御部8による上記処理モードの処理手順を説明する。
【0054】
図3は、実施形態1における制御部8による処理手順の一部を示すフローチャートである。図3に示す一連の処理は、処理されるシートの枚数に応じて繰り返される。なお、図において、説明の便宜上、レジストローラ7gの回転のステップは省略している。
【0055】
先ず、ステップS1において、制御部8の処理部80は、供給モータ90を介して供給ローラ7bを回転して、供給ローラ7bにシートの供給を開始させる。ここで、処理部80は、供給ローラ7bにシートの供給を開始させた供給開始時間をシート供給時間として記憶部81に格納する。
【0056】
次に、ステップS2において、処理部80は、レジスト前センサ70から、レジスト前センサ70がシートを検知したシート検知時間を取得する。
【0057】
続いて、ステップS3において、処理部80は、上記のシート検知時間及びシート供給時間の差分から、シート供給時間を算出する。
【0058】
ステップS4において、処理部80の連れ送り判定部800は、上記算出されたシート供給時間が供給時間基準値811未満か否かを判定する。シート供給時間が供給時間基準値811以上である場合、処理部80は、ステップS5の通常モードへと進み、通常待機時間が経過するまで待機した後、供給ローラ7bに後続のシートの供給を開始させる(ステップS1)。一方で、シート供給時間が供給時間基準値811未満である場合、処理部80は、ステップS6の供給遅延モードへと進み、延長待機時間が経過するまで待機した後、供給ローラ7bに後続のシートの供給を開始させる(ステップS1)。
【0059】
(実施形態1の実施例)
以下、上記実施形態1の実施例について説明する。
【0060】
図4は、実施形態1の一実施例における制御部8による処理内容の一部を示すテーブルである。図において、矢印は、シート供給時間とそれに基づいて後続のシートの供給の開始まで処理部80が待機した時間との対応関係を示している。
【0061】
図4において、項目「No.」は、シートの番号を示す列であり、項目「シート供給時間」は、各シートに対応するシート供給時間を示す列であり、項目「シート間」は、各シートの先端と、各シートに先行する先行シートの後端との距離を示す列であり、項目「供給開始待機時間」は、各シートの供給の開始まで制御部8の処理部80が待機した時間を示す列であり、項目「CPM」は、1分あたりのシートの処理枚数を示すCPM(Copies Per Minute)を示す列である。なお、本実施例において、供給時間基準値811は、550msに設定されており、通常待機時間は、858msに設定されており、延長待機時間は、919msに設定されている。
【0062】
図4に示すように、シートNo.2においては、給紙時間が供給時間基準値811以上であることから、処理部80の連れ送り判定部800は、シート連れ送りが発生していないと判定する。従って、処理部80は、通常モードを実行する。処理部80は、通常待機時間が経過するまで待機した後、供給ローラ7bに後続のシート、すなわち、シートNo.3の供給を開始させる。続いて、シートNo.3においては、給紙時間が供給時間基準値811未満であることから、連れ送り判定部800は、シート連れ送りが発生していると判定する。従って、処理部80は、供給遅延モードを実行する。処理部80は、延長待機時間が経過するまで待機した後、供給ローラ7bに後続のシート、すなわち、シートNo.4の供給を開始させる。
【0063】
このように、シート連れ送りの発生状況に応じて後続のシートの供給が開始されるタイミングを遅延させることより、項目「シート間」に示すようにシート連れ送りによって狭くなったシートの間隔を適宜広げることができる。また、所定のシート数毎に、シート連れ送りが発生しているか否かに基づいて通常モード又は供給遅延モードを択一的に実行することから、項目「CPM」に示すように、処理効率を維持することができる。
【0064】
なお、上記実施形態1は、シート収容部6のシートカセット60からのシートの供給の制御に限定されず、手差しトレイ61及び自動原稿処理装置12のいずれからのシートの供給の制御にも適用可能である。
【0065】
また、供給時間基準値811は、所定の条件下で変動する変動値であってもよい。
【0066】
また、通常待機時間及び延長待機時間は、予め設定された固定値であってもよいし、所定の条件下で変動する変動値であってもよい。
【0067】
(実施形態2)
以下、実施形態2について、上記実施形態1とは異なる点についてのみ説明する。
【0068】
図5は、シートカセット60内において各シートのバリが上を向くように複数枚のシートが積載されている状態を示す概略図である。図6は、シートカセット60内において各シートのバリが下を向くように複数枚のシートが積載されている状態を示す概略図である。
【0069】
ところで、供給遅延モードが所定の回数連続して実行された場合、次のような事象が想定され得る。一般的に、シートは、裁断加工されてなるため、図5及び図6に示すように、端部にバリを有している。図5に示すように、シートカセット60内において、シートの引き出し方向の反対側における各シートのバリが上を向くように複数枚のシートが積載されている場合、最上層の1枚のシートがシートカセット60外に引き出されるときにそのシートのバリが下層のシートに干渉しにくいことから、シート連れ送りが発生しにくい。一方で、図6に示すように、シートの引き出し方向の反対側における各シートのバリが下を向くように複数枚のシートがシートカセット60内で積載されている場合、最上層の1枚のシートがシートカセット60外に引き出されるときにそのシートのバリが下層のシートに干渉してしまい、シート連れ送りが発生しやすくなる。供給遅延モードが所定の回数連続して実行された場合、すなわち、連れ送り判定部800が、シート連れ送りが発生していると所定の回数連続して判定した場合、複数枚のシートが図6に示すような状態になっている事象が想定され得る。そこで、実施形態2における制御部8は、シート連れ送りの発生確率を抑えるために、以下の技術的な特徴を有している。
【0070】
図7は、実施形態2における画像形成装置Aの制御構成の一部を示すブロック図である。
【0071】
実施形態2において、制御部8は、ユーザに対して情報を報知可能な報知部84をさらに有している(図7参照)。処理部80は、供給遅延モードが連続して実行された回数をカウントするカウント部801をさらに有している。
【0072】
制御部8の処理部80は、カウント部801のカウント値が所定の値以上である場合、すなわち、延長待機時間が経過するまで待機した後供給ローラ7bに後続のシートの供給を実行させる供給遅延モードが所定の回数連続して実行された場合に、報知部84でユーザに対するアラートを報知する。具体的には、報知部84は、音声の出力や図示しない表示部での文字画像等の表示を用いて、ユーザに対してシート面の方向を逆さにするように促すよう報知する。これにより、シート連れ送りの発生頻度を抑えることができる。
【0073】
(実施形態3)
以下、実施形態3について、上記実施形態1とは異なる点についてのみ説明する。
【0074】
図8は、実施形態3における画像形成装置Aの制御構成の一部を示すブロック図である。図9は、実施形態3における補正テーブル812の一例を示す図である。
【0075】
実施形態3において、画像形成装置Aは、シートのサイズを判別するサイズ判別手段9aと、収容手段に相当するシートカセット60の周辺の温度及び湿度を測定する温湿度測定手段9bと、をさらに備えている(図8参照)。サイズ判別手段9aには、例えば、反射型光センサ等の光電センサが用いられる。温湿度測定手段9bには、例えば、温湿度センサが用いられる。
【0076】
また、実施形態3において、制御部8の記憶部81には、通常待機時間及び延長待機時間の補正に参照される演算テーブルである補正テーブル812が記憶されている(図8図9参照)。
【0077】
補正テーブル812は、所定の補正条件と各補正条件に対応する補正量とを互いに関連付けるものである。補正テーブル812の項目「処理モード」は、制御部8の処理モードの条件を示す列であり、項目「サイズ」は、シートサイズの条件を示す列であり、項目「温湿度」は、シートカセット60の周辺の温湿度の条件を示す列であり、項目「補正量(ms)」は、項目「処理モード」、項目「サイズ」及び項目「温湿度」が示す各条件を満たした場合に、処理モードに応じた通常待機時間又は延長待機時間の補正量を示す列である(図9参照)。項目「サイズ」において、「LT」とはレターサイズのことを示す。また、項目「温湿度」において、「N」とはシートカセット60の周辺の温湿度が所定の閾値未満である場合を示し、「H」とはシートカセット60の周辺の温湿度が所定の閾値以上である場合を示す。
【0078】
処理部80は、補正テーブル812を参照して、サイズ判別手段9aにより判別されたシートのサイズに基づいて、通常待機時間及び延長待機時間を変更する。また、処理部80は、補正テーブル812を参照して、温湿度測定手段9bの測定結果に基づいて、通常待機時間及び前記延長待機時間を変更する。例えば、サイズ判別手段9aによってシートのサイズがLT(レターサイズ)であると判別され、温湿度測定手段9bによって測定されたシートカセット60の周辺の温湿度が所定の閾値以上である場合であって、処理部80が通常モードを実行している場合は、通常待機時間が+α(ms)だけ補正される(図9中の上から3列目、左から4列目参照)。同様に、サイズ判別手段9aによってシートのサイズがLT(レターサイズ)以外であると判別され、温湿度測定手段9bによって測定されたシートカセット60の周辺の温湿度が所定の閾値以上である場合であって、処理部80が供給遅延モードを実行している場合は、通常待機時間が+β+δ(ms)だけ補正される(図9中の上から9列目、左から4列目参照)。
【0079】
上記のように、処理部80がシートのサイズに基づいて通常待機時間及び延長待機時間を変更することにより、シートのサイズに応じて適切にシートの間隔を調整することができる。
【0080】
また、上記のように、処理部80が温湿度測定手段9bの測定結果、すなわち、シートカセット60の周辺の温湿度に基づいて通常待機時間及び延長待機時間を変更することにより、温度及び湿度の上昇によりシート同士がくっつきやすくなりシート連れ送りが発生しやすくなった場合であっても、シートの間隔が適宜広げられることから、シートジャムの発生確率を効率的に抑えることができる。
【0081】
なお、補正テーブル812は、シートサイズの条件及びシートカセット60の周辺の温湿度の条件のそれぞれと補正量とを互いに関連付ける別々の補正テーブルから構成されていてもよい。
【0082】
上記の実施形態及び実施例はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態及び実施例のみにより解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0083】
A 画像形成装置
1 画像読取部
2 画像形成部
3 中間転写体
4 二次転写部
5 定着装置
6 シート収容部
7a ピックアップローラ
7b 供給ローラ
7c 分離ローラ
7g レジストローラ
70 レジスト前センサ
8 制御部
8 制御部
80 処理部
800 連れ送り判定部
801 カウント部
81 記憶部
810 制御プログラム
811 供給時間基準値
812 補正テーブル
82 入力部
83 出力部
84 報知部
9a サイズ判別手段
9b 温湿度測定手段
90 供給モータ
91 搬送モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9