(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】車両用ランプ
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20250217BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20250217BHJP
F21S 43/237 20180101ALI20250217BHJP
F21S 43/239 20180101ALI20250217BHJP
F21S 43/245 20180101ALI20250217BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20250217BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20250217BHJP
【FI】
F21S2/00 435
F21S43/14
F21S43/237
F21S43/239
F21S43/245
F21W103:00
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2021168150
(22)【出願日】2021-10-13
【審査請求日】2024-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】小泉 浩哉
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 創太
(72)【発明者】
【氏名】藤井 圭佑
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-003864(JP,A)
【文献】特開2017-147105(JP,A)
【文献】国際公開第2006/070746(WO,A1)
【文献】特開2004-253318(JP,A)
【文献】特開2009-231045(JP,A)
【文献】特開2007-053021(JP,A)
【文献】特開2018-181432(JP,A)
【文献】特開2021-115838(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0177405(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0022049(US,A1)
【文献】特開2015-008081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21S 43/14
F21S 43/237
F21S 43/239
F21S 43/245
F21W 103/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デザイン部とシグネチャー部でランプユニットが構成されており、デザイン部は、第1光源と、内部を導光される第1光源の光を反射して所要の発光パターンを形成するための光反射ステップが形成された導光板を備え、シグネチャー部は、第2光源と、この第2光源の光を面状に発光させる発光面を備え、前記導光板は少なくとも一つの鋭角の角部を有する四角形に形成されており、前記鋭角の角部に設けられた光入射面に前記第1光源の光が入射され
、前記光反射ステップは、指向性のある光反射を行う第1光反射ステップと、無指向性で光反射を行う第2光反射ステップを備え、前記第1光反射ステップで反射された光により第1発光パターンが形成され、前記第2光反射ステップで反射された光により第2発光パターンが形成され、前記第2発光パターンは観察位置の違いに関わらず観察されるパターン形状が変化せず、前記第1発光パターンは観察位置の違いに応じて観察されるパターン形状が変化する車両用ランプ。
【請求項2】
前記導光板は平行四辺形に形成されている請求項1に記載の車両用ランプ。
【請求項3】
前記第1光反射ステップは柱状をした凹部で構成され、前記第2光反射ステップは球面状をした凹部で構成される請求項1に記載の車両用ランプ。
【請求項4】
前記導光板の車幅方向の外側に位置されている鋭角の角部に設けられた光入射面に前記第1光源の光が入射され、入射された光が車幅方向の内側に向けて導光される請求項2に記載の車両用ランプ。
【請求項5】
前記導光板の車幅方向の内側に位置されている鋭角の角部に設けられた光入射面に前記第1光源の光が入射され、入射された光が車幅方向の外側に向けて導光される請求項2に記載の車両用ランプ。
【請求項6】
前記第1光反射ステップは少なくとも水平方向の指向性を有しており、当該水平方向の指向性が相違する複数のステップで構成される請求項
1に記載の車両用ランプ。
【請求項7】
前記シグネチャー部は所要の長さの導光ロッドを備えており、当該導光ロッドは、前記第2光源の光が長さ方向に導光されかつその周面から出射される構成とされ、前記発光面は当該導光ロッドの長さ方向に沿って配設されている請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用ランプ。
【請求項8】
前記シグネチャー部は、前記第1光源がランプ正面に露呈されないように覆い隠す構成である請求項7に記載の車両用ランプ。
【請求項9】
車両の車体の固定部に配設される固定側ユニットと、車体の可動部に配設される可動側ユニットを備え、これら固定側ユニットと可動側ユニットの少なくとも一方のユニットにデザイン部とシグネチャー部が設けられる請求項1ないし8のいずれかに記載の車両用ランプ。
【請求項10】
自動車のテールランプとして構成され、固定側ユニットは自動車の車体後部パネルに装備れ、可動側ユニットは自動車のトランクリッドに装備される請求項9に記載の車両用ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両に配設されるランプに関し、特に光反射ステップを備える導光体を用いた車両用ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ランプの一つとして、反射ステップを有する導光体を用いたランプが提案されている。このランプは、表面が自動車の車体外面側に向けて配置され、裏面側に所要のパターンの光反射ステップが形成された導光体を備えるランプである。光源の光を導光体の内部に入射すると、導光体の内部を導光される光の一部が光反射ステップにおいて反射され、その反射光が導光体の表面から出射される。これにより、光反射ステップのパターン形状に対応した発光パターンのランプとして機能されることになる。
【0003】
特許文献1には、この種のランプにおいて、導光体の表面に凸レンズを配設し、この凸レンズによる光屈折効果を利用することにより、異なる方向から視認したときに発光パターンが異なる発光パターンが視認されるようにしたランプが提案されており、ランプの意匠的な効果を高めることが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のランプは、いわゆるレンチキュラーレンズを用いた技術であると言え、導光体の表面に凸レンズを形成し、裏面に光反射ステップを形成しているので、導光体の表面と裏面にそれぞれ加工を施す必要があり、構造が複雑になるとともに、その製造が難しくなる。また、光反射ステップは凸レンズに対応した位置に配設する必要があるので光反射ステップの配設位置に制約を受けることになり、光反射ステップにより構成される発光パターンのパターン形状の設計の自由度に制限を受けるとともに、光反射ステップを所定の位置に形成するための設計も難しくなる。
【0006】
そこで、本出願人は、先に特願2021-19456号において、構造が簡易でありながら点灯時における見栄えを改善した意匠性の高いランプを提案している。この先願のランプは、特に異なる光反射形態を有する光反射ステップを混在させることにより、点灯時に立体的(3D)な発光パターンの見栄えを呈することが可能になる。
【0007】
しかし、本出願人の検討によれば、先願の発明において意匠性の高い発光パターンを確保する際に、導光体の形状や、導光体に光を入射する光源の配設位置が限定されることがある。そのため、ランプの発光面の形状や、明るさ等を含む配光特性に制約を受け、またランプを配設する車両の車体形状の違いによってランプの設計に制約を受けることがあり、さらなるランプの意匠性の向上や配光特性を改善することが望まれる。
【0008】
本発明の目的は、意匠性を高めるとともに所望の配光特性を得ることが可能な車両用ランプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用ランプは、デザイン部とシグネチャー部でランプユニットが構成されており、デザイン部は、第1光源と、内部を導光される第1光源の光を反射して所要の発光パターンを形成するための光反射ステップが形成された導光板を備え、シグネチャー部は、第2光源と、第2光源の光を面状に発光させる発光面を備える。
【0010】
本発明において、導光板は少なくとも一つの鋭角の角部を有する四角形に形成されており、鋭角の角部に設けられた光入射面に第1光源の光が入射される。また、光反射ステップは、指向性のある光反射を行う第1光反射ステップと、無指向性で光反射を行う第2光反射ステップを備えており、第1光反射ステップで反射された光により第1発光パターンが形成され、第2光反射ステップで反射された光により第2発光パターンが形成される。そして、第2発光パターンは観察位置の違いに関わらず観察されるパターン形状が変化せず、第1発光パターンは観察位置の違いに応じて観察されるパターン形状が変化する構成とされる。導光板は平行四辺形に形成されることが好ましい。車幅方向の外側又は内側に位置されている鋭角の角部に設けられた光入射面に第1光源の光が入射され、入射された光が車幅方向の内側又は外側に向けて導光される。
【0011】
本発明において、シグネチャー部は、所要の長さの導光ロッドを備えており、当該導光ロッドは、第2光源の光が長さ方向に導光されかつその周面から出射される構成とされ、発光面は当該導光ロッドの長さ方向に沿って配設されている。このシグネチャー部は、第1光源がランプ正面に露呈されないように覆い隠す構成であることが好ましい。
【0012】
本発明の好ましい形態として、車両の車体の固定部に配設される固定側ユニットと、車体の可動部に配設される可動側ユニットとで構成され、これら固定側ユニットと可動側ユニットの少なくとも一方のユニットにデザイン部とシグネチャー部が設けられる。例えば、自動車のテールランプとして構成され、固定側ユニットは自動車の車体後部パネルに装備れ、可動側ユニットは自動車のトランクリッドに装備される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、デザイン部において意匠性の高い照明が実現でき、シグネチャー部により所望の配光特性が実現でき、意匠性と配光特性の両方の要求を満たした車両用ランプが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明を適用した自動車の一部の概略斜視図。
【
図2】固定側テールランプユニットと可動側テールランプユニットの正面図。
【
図6】指向性光反射ステップと無指向性光反射ステップの模式図。
【
図9】デザイン部の小型化を説明するための概念図。
【
図10】デザイン部の配光特性を説明するための概念的な平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明を車体の後部に配設された左右の各リアコンビネーションランプL-RCL,R-RCLに適用した自動車CARの部分斜視図である。これらのリアコンビネーションランプRCLは左右対称の構成であり、自動車のリアパネルに装着された固定側ランプFLと、上下に開閉されるトランクリッドに装着された可動側ランプMLが左右に配置された構成とされている。
【0016】
固定側ランプFLのランプハウジング内に固定側テールランプユニットFTLとストップランプユニットSLとターンシグナルランプユニットTSLが配設されている。また、可動側ランプMLのランプハウジング内に可動側テールランプユニットMTLとバックアップランプユニットBULが配設されている。ここで、固定側テールランプユニットFTLと可動側テールランプユニットMTLとでテールランプTLが構成される。ターンシグナルランプユニットTSLとストップランプユニットSLとバックアップランプユニットBULについては本発明との関連が少ないのでここでは詳細な説明は省略する。なお、以降において左右方向は、自動車の後方から見た
図1を基準にしている。
【0017】
図2は前記右リアコンビネーションランプR-RCLのテールランプTLを構成する固定側ランプFLと可動側ランプMLの各テールランプユニット、すなわち固定側テールランプユニット(以下、固定側ユニットと称する)FTLと、可動側テールランプユニット(以下、可動側ユニットと称する)MTLの正面図である。これらランプユニットFTL,MTLの基本的な構成はほぼ同じであるので、等価な部位には同一符号を付して説明する。両ユニットFTL,MTLは、それぞれ視認位置の違いによって発光パターンの外観が変化されるデザイン部1と、所要の明るさで面発光されるシグネチャー部2を備えている。
【0018】
図3はデザイン部1の概略斜視図であり、固定側ユニットFTLと可動側ユニットMTLの各デザイン部1は、無色透明な樹脂、例えばPMMA(アクリル)樹脂製の導光板(板状をした導光体)11を備えている。固定側ユニットFTLの導光板(以下、固定側導光板)11Fと、可動側ユニットMTLの導光板(以下、可動側導光板)11Mはそれぞれ主面部12を備えており、この主面部12はランプ正面方向(自動車の後方)から見たときに、側辺が右に傾斜した四角形、ここでは平行四辺形に近い形状に形成されている。この主面部12は、板厚方向についてみると、固定側導光板11Fは自動車CARの車体右後部の曲線形状に倣って幾分湾曲された板状に形成され、可動側導光板11Mは略平面板状に形成されている。ここで、各導光板11F,11Mについて、ランプの正面側に向けられた面を前面とし、その反対側の面を後面とする。
【0019】
また、各導光板11F,11Mの各主面部12の上辺にはそれぞれ斜め後上方に向けて所要寸法で延長された延出部13が形成されている。この延出部13の一方の端部、すなわち平行四辺形に近い形状をした主面部12の上側の鋭角な角部、すなわち正面視で右上の角部に近接する部位は所要の面取りが施され、この面取りした面が光入射面14として形成されている。
【0020】
そして、この光入射面14には、第1光源15が対向配設されている。この第1光源15は支持基板150に赤色光を発光する赤色LED(発光ダイオード)151が搭載された構成であり、発光した赤色光を当該光入射面14から導光板11F,11Mの延出部13ないし主面部12に導光させるように構成されている。この第1光源15の支持基板140は導光板11F,11Mと共に、後述するユニットボディ3に固定されている。
【0021】
ここで、前記各導光板11F,11Mの主面部12の右上と左下の角部の角度は、対向配置されている前記赤色LED151の光出射角の70度に略等しい角度、ないしはそれよりも幾分小さい角度に形成されている。また、これらの主面部12の後面には、所要の発光パターンPでの発光を行うための光反射ステップ16が形成されている。ここでは、発光パターンPについては一部を省略した簡易図として示している。この光反射ステップ16は、各導光板11F,11Mの裏面に凹設された微小サイズの凹部で構成されている。すなわち、赤色LED151が発光され、各導光板11F,11Mの主面部12まで導光された光は光反射ステップ16において反射され、各導光板11F,11Mの表面から出射されて固定側ユニットFTLと可動側ユニットMTLの照射光とされる。
【0022】
一方、シグネチャー部2は、
図4に部分分解した概略斜視図を示すように、固定側ユニットFTLと可動側ユニットMTLのいずれも、無色透明なPMMA樹脂製の導光ロッド(ロッド状をした導光体)21を備えている。固定側ユニットFTLにおいては、固定側導光板11Fの上辺に沿って水平方向に延長された固定側導光ロッド21Fが設けられ、可動側ユニットMTLにおいては、可動側導光板11Mの上辺から左辺に沿った領域にわたって屈曲延長された可動側導光ロッド21Mが設けられている。
【0023】
固定側ユニットFTLにおいて、固定側導光ロッド21Fの右端部には第2光源22が対向配置されている。第2光源22は支持基板220に搭載されて赤色光を発光する赤色LED221を備えた構成であり、この第2光源22で発光した赤色光は固定側導光ロッド21Fの右端面から入射されてその長さ方向に導光される。固定側導光ロッド21Fの周面の上部には光反射ステップ23が形成されており、導光される光を下方に向けて反射し、固定側導光ロッド21Fの下方に出射させる。
【0024】
さらに、固定側導光ロッド21Fに沿って並設されたリフレクタ24と、このリフレクタ24の正面側に配設された水平方向に長い発光面レンズ25を備えている。リフレクタ24は固定側導光ロッド21Fから出射された光をランプの正面方向に向けて反射する。発光面レンズ25は無色の板状の透光性樹脂で形成され、その後面には所要の光発散ステップが形成される等により、リフレクタ24で反射された光を拡散して所望の配光特性で出射させる。この光発散ステップには、発光面を長さ方向に複数に区画する区画ステップが含まれており、複数の発光面が所要のピッチ寸法で長さ方向に沿って配列した形態で面発光されるように構成されている。
【0025】
可動側ユニットMTLのシグネチャー部2は、基本的には固定側ユニットFTLのシグネチャー部2と同様であるが、赤色LED221を含む第2光源22は、可動側導光ロッド21Mの左下端部に配設され、発光した赤色光を可動側導光ロッド21Mの左下端面から入射し、その長さ方向に導光させる。この第2光源22は、
図4に仮想線で示すように、可動側導光ロッド21Mの右上端部に配設されてもよく、あるいはその両端部に配設されてもよい。可動側導光ロッド21Mの上周面ないし左周面には光反射ステップ23が形成されており、導光される光を下方ないし右方に向けて反射し、可動側導光ロッド21Mの下方ないし右方に出射させる。
【0026】
さらに、可動側導光ロッド21Mに沿って並設されたリフレクタ24と、このリフレクタ24の正面側に配設された屈曲された発光面レンズ25を備えている。リフレクタ24は可動側導光ロッド21Mから出射された光をランプの正面方向に向けて反射する。発光面レンズ25はリフレクタ24で反射された光を所望の配光特性で出射させる。
【0027】
以上の構成のデザイン部1とシグネチャー部2は、
図5に示すユニットボディ3に一体的に組み込まれる。
図5は
図2のV-V線に沿った拡大断面図であり、固定側ユニットFTLを示している。デザイン部1を構成する固定側導光板11Fと第1光源15がユニットボディ3に組み込まれると共に、シグネチャー部2を構成する固定側導光ロッド21Fと第2光源22とリフレクタ24と発光面レンズ25が同じユニットボディ3に一体的に組み込まれている。可動側ユニットMTLについても同様である。
【0028】
固定側ユニットFTLと可動側ユニットMTLのいずれにおいても、デザイン部1とシグネチャー部2がユニットボディ3に組み込まれたときには、デザイン部1の導光板11の延出部13及び第1光源15は、シグネチャー部2の後側、ここではリフレクタ24及び発光面レンズ25の後側に配置される。この延出部13は主面部12の上辺から斜め後上方に延長されているので、主面部12と発光面レンズ25をユニットボディ3内のほぼ同じ立面位置に配設した場合でも、延出部13及び第1光源15がシグネチャー部2と干渉することが防止される。これと同時に、これら延出部13と第1光源15はシグネチャー部2によって覆い隠されてランプの正面方向に露呈されることはなく、ランプの外観上の見栄えが低下されることはない。
【0029】
ここで、導光板11(11F,11M)の主面部12にそれぞれ形成されている光反射ステップ16について説明する。この光反射ステップ16は、先願(特願2021-19456号)と同様に第1光反射ステップ161と第2光反射ステップ162で構成されている。
【0030】
第1光反射ステップ161は、
図6(a)に示すように、柱軸を水平方向ないし水平方向に対して所要の角度θAで傾斜された略半円柱状をした凹部、換言すればシリンドリカル(かまぼこ)状の凹部として形成されている。導光されてきた光Lが投射されたときには、第1光反射ステップ161の周面において柱軸と垂直な方向Vにはある程度の発散状態で光反射するが、柱軸の方向Hには光Lの発散が抑制された指向性のある光反射する構成である。すなわち、少なくとも水平方向Hに指向性を有する光反射を行なう指向性光反射ステップとして形成されている。なお、第1光反射ステップ161は水平方向に指向性のある反射を行なう構成であれば、水平方向と鉛直方向の両方に指向性のある光反射を行う三角柱や四角柱の凹部として形成されてもよい。
【0031】
一方、第2光反射ステップ162は、
図6(b)に示すように、全方向、すなわち水平方向及び鉛直方向にそれぞれ発散状態で光反射を行なうステップ、ここでは球面状の凹部として形成されている。この球面状の凹部からなる第2反射光ステップ162は、導光されてきた光Lが投射されたときには、その球面において鉛直方向Vと水平方向Hのそれぞれに発散状態で光反射する構成である。すなわち、指向性がない光反射を行う無指向性光反射ステップとして形成されている。なお、第2光反射ステップ32は、鉛直方向Vと水平方向Hのそれぞれに発散状態で光反射する構成であれば円錐状の凹部として形成されてもよい。
【0032】
主面部12において形成される発光パターンPは固定側導光板11Fと可動側導光板11Mとで一部の形状を相違させているが基本的なパターン形状はほぼ同じである。
図2を参照して両導光板11F,11Mの発光パターンPをまとめて説明すると、無指向性光反射ステップである第2光反射ステップ162によって四角形や三角形をした複数の主パターンPmが形成される。複数の主パターンPmは縦横にそれぞれ枡目状に整列した状態に形成されている。また、指向性光反射ステップである第1光反射ステップ161によって、前記主パターンPmの一方の側に奥行き感を持たせるための副パターンPsが形成されている。
【0033】
図7は発光パターンPの一部を拡大した模式図であり、主パターンPmは、多数の球面状の凹部からなる第2光反射ステップ162が三角形や四角形を形成するように面状に配列されている。副パターンPsはシリンドリカル状の凹部からなる第1光反射ステップ161が配列されている。この副パターンPsは逆L字型に配列されたパターン(以下、逆Lパターン)が複数列に配列されている。ここでは3列の例を示しているが、複数の逆LパターンPs1,Ps2,Ps3は主パターンPmから徐々に遠くなるように配列されている。そして、副パターンPsを構成している第1光反射ステップ161のシリンドリカル状の凹部の長手方向の軸(柱軸)の傾き、すなわち水平線H(水平方向に延びる線に対してなす傾斜角度は、主パターンPmに近い逆LパターンPs1から遠くなる逆LパターンPs3に向けて徐々に大きくなるように構成されている。
【0034】
以上の構成のテールランプTLの点灯動作について説明する。固定側ユニットFTL及び可動側ユニットMTLの各デザイン部1では、第1光源15が発光され、赤色光が各導光板11F,11Mに入射されると、赤色光は各導光板11F,11Mの内部を導光される。導光された光は各導光板11F,11Mの後面に形成されている第1光反射ステップ161と第2光反射ステップ162において反射され、反射された光は各導光板11F,11Mの前面から出射される。
【0035】
主パターンPmを構成している無指向性の第2光反射ステップ162で反射された光は、ランプ正面方向の広い角度領域に向けて出射される。一方、副パターンPsを構成している指向性の第1光反射ステップ161で反射された光は、ランプ正面の水平方向のそれぞれ所定の狭い角度に向けて出射される。これにより、自動車CARの後方からは、所要の配光特性を満たす角度領域において四角形や三角形の主パターンPmが視認され、所要の角度位置において副パターンPsの一部が視認される。
【0036】
すなわち、
図8に示すように、視認者Mが自動車の後方の異なる左右方向に存在し、あるいは存在位置が変化すると、観察される主パターンPmは変化しないが、副パターンPsは変化される。自動車の真後ろに近い位置に視認者M1が存在するときには、主パターンPmとこれに近い副パターン(例えばPs1)が視認される。視認者M2,M3のように自動車の真後ろから右方向に所要の角度に存在するときには、主パターンPmは変化しないが、副パターンPsは順次主パターンPmから遠い副パターン(例えばPs2,Ps3)が視認される。このように視認される副パターンPsが変化することにより、主パターンPmの陰となる部分の長さが変化され、発光パターンPの立体感(奥行き感)が得られる。自動車が移動しているときには、視認者が静止していても、同様に発光パターンPの奥行き感が変化したような視認性が得られる。これにより、視認者に対するテールランプTLの視認性が高められるとともに、テールランプTLの意匠性が高められる。
【0037】
一方、テールランプの点灯により、固定側ユニットFTLと可動側ユニットMTLの各シグネチャー部2では、第2光源22が発光され、赤色光が各導光ロッド21F,21Mに入射されると、赤色光は各導光ロッド21F,21Mの内部を長さ方向に導光される。導光された光は各導光ロッド21F,21Mの光反射ステップ23で反射され各導光ロッド21F,21Mの周面から出射される。出射された光はリフレクタ24で反射され、発光面レンズ25を透してランプの正面方向に向けて出射される。
【0038】
このように、テールランプTLのデザイン部1では、複数の発光パターンPが枡目状に配列された外観のテールランプとして点灯され、シグネチャー部2ではデザイン部1の上辺から一方の側辺に沿ってライン状をした外観のテールランプとして点灯される。したがって、テールランプTLはデザイン部1とシグネチャー部2の両者における光照射により所要の光量での配光特性が得られる。
【0039】
この配光特性について、デザイン部1においては、光反射ステップ16により発光パターンPを形成した発光形態とされている。すなわち、多数の点状の発光を集合させて、所要の配光パターンPを形成している。また、デザイン部1においては、第1光反射ステップ161によってランプを見る角度の違いによって発光パターンPに立体感を持たせている。そのため、導光板11の内部を導光される光には導光方向の単一性が要求され、第1光源15は単一光源として構成される必要がある。すなわち、一つのLEDで構成される必要があり、これが理由でデザイン部1の光量を増やすことが制限され、テールランプTLに要求される光量での配光特性を満たすことが難しくなる。
【0040】
これに対し、シグネチャー部2においては、第2光源22の設定は任意であり、例えば複数のLEDで構成することができる。すなわち、導光ロッド21から出射される光の光量の調整は容易であり、導光ロッド21から出射される光による発光面レンズ25での光量を増大することは可能である。したがって、デザイン部1で不足する光量をシグネチャー部2での光量で補填することにより、所要の光量での配光特性を有するテールランプTLが構成できる。
【0041】
また、デザイン部1において、発光パターンPの視認性、特に立体感のある視認性を得るためには、導光板11に入射された光が全ての光反射ステップ16にまで導光されて反射される必要がある。ここでは、
図9(a)に示すように、第1光源15は導光板11の鋭角の角部に設けられた光入射面14から入射される。第1光源15のLED151の光出射角度θLは70~80度程度であり、導光板11の角部の角度もほぼ同じ角度であるので、導光板11の主面部12の略全域に向けて導光される。したがって、導光板11に形成されている第1光反射ステップ161と第2光反射ステップ162の全てに光が導光されて発光パターンPでの光照射が実現される。また、これに伴い第1光源15と導光板11までの距離が最短にでき、デザイン部1の小型化が実現できる。
【0042】
因みに、
図9(b)に示すように、第1光源15の光を導光板11の一つの辺、例えば上辺から入射させる構成を採用した場合には、導光板11の全領域に導光させるためには第1光源15を導光板11から離れた位置、すなわち第1光源15から出射された光が導光板11の上辺の全長にわたる領域に入射させる構成とする必要がある。そのため、第1光源15から導光板11までの距離が長くなり、延出部13を設けた場合には導光板11の高さ寸法が長くなり、デザイン部1の小型化を図ることは難しい。
【0043】
さらに、この実施形態では、
図3に示すように、光入射面14に隣接する延出部13の縁部に三角波状をした光内面反射ステップ17が形成されている。光入射面14から入射された第1光源15の光の一部が、延出部13の縁部から外部に洩れ出ようとした光は、この光内面反射ステップ17により内面反射されて洩れ出ることが防止される。光入射面14が形成されている角部の角度を、第1光源15から出射される光の出射角と同じないしはそれよりも小さい角度、あるいは大きい角度に形成し、全ての光反射ステップ16にまで光が導光されるように構成した場合でも、第1光源15の光の一部が縁部から洩れ出ることが防止される。これにより、第1光源15の光が延出部13から主面部12に導光され、光反射ステップ16で反射されてデザイン部1としての照射光となる際の利用効率を高めることができる。
【0044】
このように、テールランプTLでは、デザイン部1にシグネチャー部2を一体化させることにより、デザイン部1での意匠的効果を高めた上で、シグネチャー部2により所望の光量の配光特性を得ることができる。シグネチャー部2の発光面は均一な明るさであるので、デザイン部1での発光パターンでの発光による意匠的効果を一層高める上でも有効になる。さらに、シグネチャー部2では、デザイン部1の発光パターンPの縦横の配列ピッチに対応して複数の矩形の発光面が長さ方向に区画された外観とされる。これにより、デザイン部1とシグネチャー部2の意匠の共通性が得られ、デザイン部1とシグネチャー2部が一体化された意匠性の高いテールランプTLとして構成されることになる。
【0045】
ここで、
図10(a)にデザイン部1の平面構成の概念図を示すように、デザイン部1では第1光源15が導光板11の右上角部、すなわち自動車の車幅方向の外側に配設されている。導光板11に入射された光は車幅方向の内側に向けて導光され、光反射ステップ16で反射されて出射される。そのため、車幅方向の外側に向けて反射される光は内側に向けて反射される光よりも少なくなり易く、所要の配光特定を得ることが難しい場合が生じる。固定側導光板11Fでは湾曲の度合いが相対的に大きいのに対し、可動側導光板11Mはランプ正面に対してほぼ平行な平面に近い形状であるので、このようなことが生じ易い。
【0046】
そこで、
図11に変形例の概略の斜視図を示すように、可動側ユニットMTLのデザイン部1については、可動側導光板11Mの左下角部、すなわち車幅方向の内側の角部に第1光源15を配設してもよい。ここでは当該左下角部に延出部13を設けて第1の光源15の光を入射させる構成とされている。これにより、
図10(b)に示すように、可動側導光板11Mに入射されて光反射ステップ16で反射され、車幅方向の外側に向けて反射される光の光量を増加することが容易になり、所要の配光特性を得ることができる。
【0047】
この変形例においては、延出部13の縁に光内面反射ステップ17が形成されてもよい。なお、このように構成したときには、
図1に示したように、可動側導光板11Mの下側に配設される延出部13や第1光源15を、可動側ユニットMTLの下側に配設されているストップランプSLやバックアップランプBULにより覆い隠すようにすれば、外観上の見栄えが低下されることはない。したがって、シグネチャー部は実施形態と同様に構成でき、シグネチャー部を設計変更する必要はない。
【0048】
本発明は実施形態に記載したテールランプに適用することに限られるものではなく、導光板を用いたランプであれば適用できる。例えば、点滅させてウェルカムランプとしても良い。この場合、人が車に近づくと点滅して見え方が変化する新しい見せ方ができる。また、実施形態のように固定ユニットと可動ユニットで構成される場合には、いずれか一方のユニットにおいてデザイン部とシグネチャー部を配設する構成としてもよい。さらに、デザイン部とシグネチャー部の具体的な構成、特にランプ正面から見たときの形状は任意に構成できる。
【符号の説明】
【0049】
1 デザイン部
2 シグネチャー部
3 ユニットボディ
11(11F,11M) 導光板
12 主面部
13 延出部
14 光入射面
15 第1光源
16 光反射ステップ
17 光内面反射ステップ
21(21F,21M) 導光ロッド
22 第2光源
23 光反射ステップ
24 リフレクタ
25 発光面レンズ
161 第1光反射ステップ(指向性光反射ステップ)
162 第2光反射ステップ(無指向性光反射ステップ)
TL テールランプ
FTL 固定側テールランプユニット(固定側ユニット)
MTL 可動側テールランプユニット(可動側ユニット)