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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】バッテリーモジュール用一体型冷却素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/653 20140101AFI20250217BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20250217BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20250217BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20250217BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20250217BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20250217BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20250217BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20250217BHJP
【FI】
H01M10/653
B29C45/00
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/6551
H01M10/651
H01M10/6568
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021529363
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 EP2019081103
(87)【国際公開番号】W WO2020108988
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】18208973.0
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クナウプ マティアス
(72)【発明者】
【氏名】マルシェヴスキ ジュリアン
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116805(JP,A)
【文献】特開2008-204990(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208423(WO,A1)
【文献】特表2002-528619(JP,A)
【文献】特表2010-540715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/653
B29C 45/00
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6563
H01M 10/6551
H01M 10/651
H01M 10/6568
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの発熱素子(100)のための筺体であって、
筺体壁(200)と、
前記筺体壁(200)に接合した、前記少なくとも1つの発熱素子(100)を収容するホルダー(300)と、
前記筺体壁(200)の側面に配置され、前記筺体壁(200)に接合した冷却体(400)と、
を備え、
ここで、前記ホルダー(300)が前記筺体の内部に配置される一方で、前記冷却体(400)が前記筺体の外側に配置され、
前記筺体壁(200)、前記ホルダー(300)、及び前記冷却体(400)が、一体的な部品として共に存在しており、ここで、前記冷却体(400)が、少なくとも1つの冷媒用流路(500)を有し、前記冷却体(400)の少なくともサブ領域が、ASTM E1461-01に従って求めた熱伝導率が0.2W/(m K)以上である第1の熱可塑性ポリマー組成物からなることを特徴とする、筺体。
【請求項2】
前記第1の熱可塑性ポリマー組成物が、ポリカーボネート、ポリアミド、ABS、PPS、PP、又はこれらのポリマーのうち少なくとも2種の混合物からなる群より選択されるポリマーを含有する、請求項1に記載の筺体。
【請求項3】
前記第1の熱可塑性ポリマー組成物が、ISO 1133-1:2012-03(300℃、1.2kg)に従って求めたメルトボリュームレートMVRが、8cm/(10分)~20cm/(10分)であるポリカーボネートを含有する、請求項2に記載の筺体。
【請求項4】
前記第1の熱可塑性ポリマー組成物が、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化ケイ素、カオリン、タルク、又はこれらのフィラーのうち少なくとも2種の混合物からなる群より選択されるフィラーを含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の筺体。
【請求項5】
前記第1の熱可塑性ポリマー組成物の、ISO 527-1/-2に従って求めた弾性率が、2000MPa以上3500MPa以下であり、及び/又は、ISO 180/Aに従って23℃で求めたアイゾット衝撃靭性が、5kJ/m以上60kJ/m以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の筺体。
【請求項6】
a)前記少なくとも1つの冷媒用流路(500)が、周囲に対して開放した流路であり、冷媒が空気であるか、又はb)前記少なくとも1つの冷媒用流路(500)が、閉流路であり、冷媒が液体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の筺体。
【請求項7】
前記筺体の材料が、前記第1の熱可塑性ポリマー組成物とは異なり、前記第1の熱可塑性ポリマー組成物が存在しない該筺体の領域に存在する第2の熱可塑性ポリマー組成物を追加で含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の筺体。
【請求項8】
前記第2の熱可塑性ポリマー組成物が、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、又はこれらのポリマーのうち少なくとも2種の混合物を含有する、請求項7に記載の筺体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の筺体を製造する方法であって、射出成形法によって、前記筺体壁(200)、前記ホルダー(300)、及び前記冷却体(400)を一体的な部品として作製する工程を含む、方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の筺体と、該筺体の前記ホルダー(300)内に収容された発熱素子とを備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの発熱素子のための筺体であって、筺体壁と、筺体壁に接合した、少なくとも1つの発熱素子を収容するホルダーと、ホルダーとは反対側の筺体壁の側面に配置され、筺体壁に接合した冷却体とを含む筺体に関する。発熱素子は、好ましくは、電気エネルギーの貯蔵所である。本発明は、同様に、かかる筺体を有する車両、好ましくは電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車において使用されるようなバッテリーモジュールが動作する際、バッテリーモジュールは熱くなり得る。そのため、寿命を延ばし、効率を向上させるために、バッテリーモジュールを冷却する。
【0003】
バッテリーモジュール内では、バッテリーセルが、セルホルダーとして知られるものに配置され、固定されている。このセルホルダーは、例えば、プラスチック製とすることができる。セルの下では、従来、アルミニウム製のプレート状熱交換器によって冷却を行うことが普通である。よって、通常、セルホルダーにセルが固定された上部と、冷却を実現する下部とが存在する。熱伝達領域は、最終的には、プレート状である。個々の部分は、クランプされ、バッテリー筺体に一体化されている。
【0004】
セルホルダーと筺体とを一体的に作製し、その下で従来通りアルミニウム製のプレート状熱交換器によって冷却を行うバリエーションもある。
【0005】
特許文献1は、電気的に接続された多数のバッテリーセルを有するバッテリーモジュールであって、個々のバッテリーセルの温度を熱伝達流体によって制御する、バッテリーモジュールに関する。熱伝達流体が流れる流路システムは、バッテリーセル同士の間を走っており、この流路システムは、脱ガスシステムによってバッテリーセルから分離されている。
【0006】
特許文献2には、複数のバッテリーセル、特に、リチウムイオンバッテリーセルを収容するための筺体であって、該筺体、特に、プラスチック製の筺体が、バッテリーセル冷却用空気流のための入口位置及び出口位置を有する冷却装置を含む、筺体が開示されている。この筺体は、該筺体と一体化された冷却装置と共に、一体的な部品として構成されており、冷却装置は、全てのバッテリーセルが、バッテリーセル間に空気導通中間空間を有して収容されるように配置するスペーサを追加で有している。その結果、空気流は、バッテリーセル間の空気流路によって提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第102014201165号
【文献】独国特許出願公開第102014221684号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、製造が簡便な発熱素子のための筺体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、請求項1に係る筺体によって、上記目的が達成される。本発明は、同様に、請求項12に係る方法及び請求項13に係るシステムを提供する。従属項において、有利な更なる発展形態が示される。これらは、文脈が明確に反対を示していない限り、任意のやり方で互いに組み合わせることができる。筺体に関連して説明した実施の形態は、方法及びシステムにも適用可能である。
【0010】
少なくとも1つの発熱素子のための筺体は、筺体壁と、筺体壁に接合した、少なくとも1つの発熱素子を収容するホルダーと、ホルダーとは反対側の筺体壁の側面に配置され、筺体壁に接合した冷却体とを備える。筺体壁、ホルダー、及び冷却体は、一体的な部品として共に存在している。冷却体は、少なくとも1つの冷媒用流路を有する。その結果、冷却体は、筺体壁上に成形された構造体を有する。本発明の目的のため、「筺体壁の反対側に配置される」とは、ホルダーが筺体の内部に配置される一方で、冷却体が筺体の外側に配置されることを意味する。少なくとも冷却体の材料は、ASTM E1461-01に従って求めた熱伝導率が0.2W/(m K)以上である第1の熱可塑性ポリマーを含む。本出願中で「熱伝導率」について話す場合、面貫通熱伝導率を常に意味する。本発明の目的のため、「ポリマー」は「ポリマー組成物」と同義である。よって、冷却体の少なくとも1つのサブ領域が、ASTM E1461-01に従って求めた熱伝導率が0.2W/(m K)以上である熱可塑性ポリマー組成物からなる。冷却体全体がこの第1の熱可塑性ポリマー組成物からなることが好ましい。
【0011】
筺体壁、ホルダー、及び冷却体は、一体的に共に存在しているため、射出成形によって筺体を容易に製造することができる。第1の熱可塑性ポリマー組成物の熱伝導率は、0.2W/(m K)以上20W/(m K)以下の範囲、より好ましくは0.3W/(m K)以上16W/(m K)以下の範囲、特に好ましくは0.4W/(m K)以上8W/(m K)以下の範囲であることが好ましい。
【0012】
一体型筺体要素は、同じ材料から形成することができるが、一体型筺体を得るために、異なる材料を使用して、次いで、これらを物質間結合(substance-to-substance bonding)によって互いに接合させることも可能である。熱を除去するため、少なくとも冷却体の材料が、上述の熱伝導性熱可塑性ポリマー組成物を含む。
【0013】
本発明による筺体を製造する方法は、射出成形法によって、前記筺体壁、前記ホルダー、及び前記冷却体を一体的な部品として作製する工程を含む。ここでも、種々の材料又は全体的に同じ材料(第1の熱可塑性ポリマー組成物)を使用することができる。
【0014】
製造に関しては、全ての関連する部品を、好ましくは、2ショット又は更には1ショットのみから製造することができる。これにより、モジュールの組み立て及び製造が簡便になる。
【0015】
或るシステムは、本発明による筺体と、該筺体の前記ホルダー内に収容された発熱素子とを備える。前記発熱素子は、電気エネルギーの電気化学貯蔵所又は電気エネルギーの電気化学源であることが好ましい。特に好適な貯蔵所は、スーパーキャパシタ/ウルトラキャパシタ、又は充電式リチウムポリマーバッテリー等の充電式バッテリーであり、特に好適な電気化学源は、固体高分子型燃料電池及び直接メタノール燃料電池等の燃料電池である。
【0016】
一実施の形態においては、前記第1の熱可塑性ポリマー組成物のポリマーは、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、又はこれらのポリマーのうち少なくとも2種の混合物の中から選択される。
【0017】
熱伝達に関与する全ての要素が、ポリカーボネート系材料からなることが好ましい。これにより、従来の冷却と比較して、熱伝達面の大幅な増加を達成することができる。類似の材料の使用は、接合部における類似の熱膨張係数と関連する。これにより、材料同士を直接接触させることが可能となり、これにより既知の従来技術と比較して熱伝達抵抗を低減することができる。長期安定性に関しては、ポリカーボネートの有する寸法精度も有利である。
【0018】
好ましいポリカーボネートは、芳香族ポリカーボネート、芳香族アルコールに由来する複数の構造単位を有するポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、及びこれらのポリカーボネートを主成分として含むブレンドである。ポリカーボネートは、好ましくは、22000g/mol~29000g/molの重量平均分子量Mwを有する。ここで、Mw値は、溶離液としてジクロロメタンを使用してビスフェノールAポリカーボネート標準に対して較正したゲル浸透クロマトグラフィーによって求められる。ポリカーボネートは、好ましくは、ビスフェノール化合物と、炭酸化合物、特に、ホスゲンとの反応によって、又はジフェニルカーボネート若しくはジメチルカーボネートを用いた溶融エステル交換法によって調製する。
【0019】
ここで、ビスフェノールAに基づくホモポリカーボネート、並びに単量体であるビスフェノールA及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンに基づくコポリカーボネート、例えば、Covestro Deutschland AG社製のApec(商標)が特に好ましい。
【0020】
好ましいポリアミドは、PA-6,1、PA-6,T、PA-6,6、PA-6,6/6T、PA-6,6/6,T/6,1コポリアミド、PA-6,T/2-MPMDTコポリアミド、PA-9,T、PA-4,6、及びこれらの混合物又はコポリアミドである。
【0021】
更なる実施の形態においては、前記第1の熱可塑性ポリマー組成物は、ISO 1133-1:2012-03(300℃、1.2kg)に従って求めたメルトボリュームレートMVRが、8cm/(10分)~20cm/(10分)であるポリカーボネートを含有する。このMVRは、15cm/(10分)~20cm/(10分)であることが好ましい。
【0022】
更なる実施の形態においては、前記第1の熱可塑性ポリマー組成物は、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化ケイ素、カオリン、タルク、又はこれらのフィラーのうち少なくとも2種の混合物からなる群より選択されるフィラーを含有する。かかるフィラーは、ポリマー組成物の熱伝導率を高める働きをする。当然、第1の熱可塑性ポリマー組成物は、安定剤、流動性向上剤、離型剤、UV吸収剤、難燃剤等の更なる添加剤を含有することができる。添加剤を含有するこのようなポリマーも、全体として「第1の熱可塑性ポリマー」と見なすことができる。すなわち、高分子と添加剤との間に人為的な違いは必ずしもなく、「ポリマー」と「ポリマー組成物」は、本明細書では同じ意味を有する。好ましい組み合わせは、ポリカーボネートと窒化ホウ素、ポリカーボネートとカオリン、又はポリカーボネートとタルクである。
【0023】
使用する窒化ホウ素は、立方晶窒化ホウ素、六方晶窒化ホウ素、非晶質窒化ホウ素、部分結晶性窒化ホウ素、乱層構造(turbostratic)窒化ホウ素、ウルツ鉱構造(wurtzitic)窒化ホウ素、菱面体窒化ホウ素、及び/又は、更なる同質異形(allotropic)の形態とすることができるが、六方晶の形態であることが好ましい。
【0024】
上述の熱伝導性フィラーの、レーザー光散乱によって求められる凝集粒度(D(0.5)値)は1μm~100μm、好ましくは3μm~60μm、特に好ましくは5μm~30μmであることが好ましい。レーザー光散乱では、分散粒子試料を通過するレーザービームの散乱光の強度の角度依存性を測定することによって、粒度分布が求められる。本明細書で、粒度分布は、光散乱のミー理論を使用して計算する。D(0.5)値は、検査対象の材料に存在する全ての粒子の50体積%が、示された値よりも小さいことを意味する。
【0025】
本発明による筺体が、例えば、電気自動車における充電式バッテリー用の筺体としての使用中に、外的影響によって損傷を受ける可能性がある場合、材料が非常に低い伝導率を有すると、安全性が高まる。筺体が破損又は変形した場合、筺体の導電性要素によって、充電式バッテリーが短絡する可能性がある。そのため、更なる実施の形態においては、第1の熱可塑性ポリマー組成物は導電性フィラーを含まない。避けるべきフィラーは、特に、カーボンブラック、グラフェン、フラーレン、及びカーボンナノチューブである。
【0026】
更なる実施の形態においては、第1の熱可塑性ポリマー組成物の、ISO 527-1/-2に従って求めた弾性率が、2000MPa以上3500MPa以下(好ましくは2500MPa以上3000MPa以下)であり、及び/又は、ISO 180/Aに従って23℃で求めたアイゾット衝撃靭性が、5kJ/m以上60kJ/m以下(好ましくは10kJ/m以上50kJ/m以下、より好ましくは20kJ/m以上40kJ/m以下)である。このような機械的性質を有するポリカーボネートは、特に、衝突応力下又は衝撃応力下で有利である。一時的な応力ピークがかかる場合、材料は脆性的に突然劣化するのではなく、塑性的に劣化する。これは、過度に応力をかけた後の要素が構造的に一体性を有することに貢献する。脆い挙動を示し、破損により劣化する材料とは対照的に、靭性のあるポリカーボネートは単に変形するだけである。
【0027】
以下、本発明を、添付の図面を用いて更に説明するが、それらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明によるシステムを示す図である。
図2】本発明による更なるシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に、対応するホルダー300内に発熱素子100、例えば、充電式バッテリーを収容した本発明による筺体を有する本発明によるシステムを概略的に示す。図1の下部には、システムを平面図で示し、図1の上部には、下部の図で引いたD-D線に沿った断面図を示す。
【0030】
筺体は、筺体壁200と、複数のホルダー300と、冷却体400とを一体的な部品として備える。ホルダー300は、発熱素子100を、その上部領域及び下部領域で囲むことによって、発熱素子100を所定の位置に固定する。冷却体400は、ホルダー300とは反対側の筺体壁200の側面、この場合は筺体の下側に配置されている。一体的であるという性質のために、選択領域において、ホルダー300が筺体壁200に入り込み、筺体壁200が冷却体400に入り込むという設計は同等である。
【0031】
冷却体400は、少なくとも1つの冷媒用流路500を有する。a)少なくとも1つの冷媒用流路500が、周囲に対して開放した流路であり、冷媒が空気であることが好ましい。これは、図1に示している。よって、流路500の側壁を、冷却フィンとして説明することもできる。代替的には、b)少なくとも1つの流路500が閉流路であり、冷媒が液体である。例えば、水冷はこのようにして実現することができる。
【0032】
図2に示す更なる実施形態においては、冷却体400は、2つの部分にあり、第1の熱可塑性組成物から構成されるサブ領域と、第2の熱可塑性組成物から構成されるサブ領域とを有する。第1の熱可塑性組成物から構成されるサブ領域は、ホルダー300から遠い方の側面が平面であり、この平面側面は、第2の熱可塑性組成物600から構成される領域と物質間結合によって接合されている。
【0033】
更なる実施形態において、筺体の材料は、該筺体の総重量に対して、前記第1の熱可塑性ポリマーを90重量%以上含む。ポリマーの配合に組み込まれている、又はすでに組み込まれているフィラー及び他のポリマー添加剤は、ポリマー(「ポリマー組成物」)のこの重量比に含まれる。この重量比は、筺体の総重量に対して、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。よって、筺体は「1成分型筺体」として特徴付けることができる。1つの材料のみを使用することで、製造工程を削減することができる。
【0034】
更なる実施形態において、筺体の材料は、前記第1の熱可塑性ポリマー組成物とは異なり、前記第1の熱可塑性ポリマー組成物が存在しない筺体の区域に存在する第2の熱可塑性ポリマー組成物を更に含む。第1のポリマー組成物に関して述べた事は、原則として、第2の熱可塑性ポリマー組成物にも当てはまる。第2の熱可塑性ポリマー組成物のポリマーは、第1の熱可塑性ポリマー組成物のポリマーと同じであるが、熱伝導性フィラーの量が少ないか、又は除去されていることが好ましい。このような「2成分型筺体」では、射出成形法で異なる流れ方をする熱可塑性物質を、良好な熱伝導率の重要性がより低い筺体上の場所で使用することによって、通常、製造要件を満たすことができる。第1の熱可塑性ポリマー組成物と、第2の熱可塑性ポリマー組成物とは、伴ってそれらの界面で物質間結合を形成する。
【0035】
更なる実施形態において、前記第2の熱可塑性ポリマー組成物のポリマーは、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、又はこれらのポリマーのうち少なくとも2種の混合物の中から選択される。繰り返しを避けるために、第1のポリマー組成物に関して上で述べたことを参照することができる。
【0036】
更なる実施形態において、前記第2の熱可塑性ポリマー組成物は難燃剤を含有する。好適な難燃剤は、特に、BDP(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート))等のホスフェートである。更に好適な難燃剤は、式(I)及び式(II)の環状ホスファゼン及び鎖状ホスファゼン等のホスファゼンである:
【化1】
(式中、R、Rは、同一であるか又は異なり、各々、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアルキルアリールであり、R、Rは、同一であるか又は異なり、各々、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアルキルアリールであり、Rは、-N=P(OR、-N=P(OR、-N=P(O)OR、又は-N=P(O)ORであり、Rは、-N=P(OR、-N=P(OR、-N=P(O)(OR、又は-N=P(O)(ORであり、aは3~25の範囲の整数であり、bは3~10000の範囲の整数である)。
【0037】
本発明に従って使用される式(I)の環状ホスファゼン中、式(I)中のaが3~8の範囲の整数、特に好ましくは3~5の範囲内の整数であるものを使用することが好ましい。
【0038】
本発明に従って使用される式(II)の鎖状ホスファゼン中、bが3~1000の範囲、特に好ましくは3~100の範囲、特に好ましくは3~25の範囲の整数であるものを使用することが好ましい。
【0039】
例えば、日本の香川県の株式会社伏見製薬所から、Rabitle(商標)FP110(CAS番号1203646-63-2)の商品名で入手できるような環状フェノキシホスファゼンを使用することが特に好ましく、又は、aが3の場合であれば、2,2,4,4,6,6-ヘキサヒドロ-2,2,4,4,6,6-ヘキサフェノキシトリアザトリホスホリン(CAS番号1184-10-7)を使用することが特に好ましい。
図1
図2