(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】分離工程および閾値に従って得られた粒子の別々の処理を含む、水蒸気分解方法
(51)【国際特許分類】
C10L 5/44 20060101AFI20250217BHJP
B09B 3/45 20220101ALI20250217BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20250217BHJP
【FI】
C10L5/44
B09B3/45 ZAB
B09B5/00 Z
(21)【出願番号】P 2021576621
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(86)【国際出願番号】 FR2020051045
(87)【国際公開番号】W WO2020260799
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-04-04
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】521480477
【氏名又は名称】ユーロペエンヌ ドゥ ビオマス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】デプレ,ジャン-リュック
(72)【発明者】
【氏名】アバ,トマ
(72)【発明者】
【氏名】カンテロ-マルケス,アドゥリアナ
(72)【発明者】
【氏名】マーテル,フレデリック
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-509163(JP,A)
【文献】特表2019-500446(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0333519(US,A1)
【文献】特表2012-512270(JP,A)
【文献】特表2015-527425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/44
B09B 3/45
B09B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース系バイオマスの水蒸気分解のための方法であり、以下を含むことを特徴とする方法:
I)重大度係数4.05~4.15でリグノセルロース系バイオマスを水蒸気分解する
第1の工程
であって、前記水蒸気分解する第1の工程は、酸素の存在下で水蒸気爆発を行い粉末を得る工程を含む、前記第1の工程、
II)閾値を超える
第1のカテゴリーの粒子と
前記閾値未満の
第2のカテゴリーの粒子とを分離するために、水蒸気分解工程の最後に得られた粉末状生成物をスクリーニングする
第2の工程
であって、前記第2のカテゴリーの粒子はペレット化される一方、前記第1のカテゴリーの粒子は除去される、前記第2の工程、および
III)前記第1のカテゴリーの前記除去された粒子を回収し、再利用する第3の工程であって、前記第1のカテゴリーの前記除去された粒子を分離後直ちにもしくは後に、第1の工程の水蒸気分解槽に再導入される、前記第3の工程。
【請求項2】
前記閾値が、
粒子の、質量、寸法、断面積
、密度から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バイオマス
の粒子サイズが不均一である、請求項1
又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、水蒸気分解によって得られる固形バイオ燃料の分野に関する。より詳細には本発明は、水蒸気分解によるリグノセルロースバイオマスの処理方法に関し、得られた粉末は閾値に従って粒子を2つのカテゴリーに分離するために処理され、それぞれのカテゴリーは別々に処理される。
【0002】
〔技術分野〕
再生可能な起源のエネルギー(電気および熱)の生産は、環境(太陽、風、潮、うねり、地熱、水力)またはバイオマスから達成することができる。バイオマス、河川水力、バレージ水力、および地熱を除いて、これらの再生可能エネルギーは、エネルギー貯蔵手段が開発されない限り、断続的である。バイオマスのみが一次エネルギーであり、熱および/または電力への変換の現場まで運ぶことができる。しかしながら、バイオマスは、実際にはあまり高密度ではなく、可変であり、腐敗しやすいエネルギーである。リグノセルロース系バイオマス(木材、農業廃棄物、農業と農業産業との共産物)を、エネルギー密度が高く、輸送可能で、貯蔵が容易な化合物に変えることにより、定常エネルギー産業部門(バイオ燃料油とは対照的である、家庭において固定地点で使用されるバイオ燃料)を開発し、強化し、環境への影響(肥料または植物検疫剤を含まないバイオマスによるCO2化石放出)を低減することが可能になる。
【0003】
水蒸気分解によるバイオマスの熱処理は、正確なパラメータ条件、特に、サイズ等級、温度、および滞留時間に従って、バイオマスを水蒸気分解粉末に均質化することにより、エネルギーの高密度化を可能にする。次いで、粉末は、その輸送、貯蔵および使用を容易にするためにペレット化される。
【0004】
したがって、水蒸気分解法が、一定の生成物、すなわち、品質に関して安定である出力粉末を保証することができ、所望の用途のために方法の下流で変換または使用できることを保証することが問題である。この粉末は、燃焼に使用するのに適した発熱量および組成を有し、ペレット化することができる。
【0005】
今日、水蒸気分解の最善の結果を保証するための最善の解決策は、同じ品質のバイオマスの定期的かつ制御された供給を行うことである。しかしながら、固体バイオ燃料の生産の目的のために、バイオマスの処理量を増加させる観点から、不均一なバイオマスを処理できることにも関心があるように思われる。
【0006】
水蒸気分解処理のパラメータは重要であり、異なる選択肢の比較を容易にするために、プロセスの動力学が一次であり、アレニウスの法則に従うという仮説に基づくモデルが開発され、反応(R0)の縦座標を開発することを可能にした:
【0007】
【0008】
式中、Trは反応温度(℃)であり、Tbは基準温度(大気圧での水の沸点:100℃)であり、tは滞留時間(分)であり、14.75は、一般的な方法が加水分解性であり、かつ、一般的な転化率が一次であると仮定して、従来の活性化エネルギーである。反応の縦座標のlog10値は、バイオマスに対する水蒸気爆発の影響を表すために使用される重大度係数(または重大度)を与える:
重大度 = log10 (R0)
不均一なバイオマスを処理する際に遭遇する問題は、得られる粉末自体が不均一であり、ペレット化の問題を引き起こすことである。実際に、最初のバイオマスの性質および適用される状態に応じて、水蒸気分解は、材料の分解に関して同じ効果を有さない。したがって、投入材料が不均一である場合、ペレット化に悪影響を及ぼす、耐性が最も低い材料を全体的に破壊しないように、重大度条件を調整しなければならない。耐性の低いバイオマスに基づいて重大度条件を調整すると、水蒸気分解は、耐性の高いバイオマスに由来する残留粒子を生成し、これもペレット化プロセスを妨害する。
【0009】
最終品質およびペレット化仕様に関する失敗は、大きな粒子を残す処理によるか、または過度に激しく、ペレット化時の生成物およびその挙動を劣化させる処理により、致命的であり得る。
【0010】
したがって、制御された品質の黒色ペレットの製造のために、不均一なバイオマスの処理に適した水蒸気分解プロセスにアクセスする必要がある。
【0011】
水蒸気分解は、水溶液分留、加溶媒分解、熱水分解、または熱水処理とも呼ばれる水熱前処理がリグノセルロースマトリックスの崩壊および分離を促進するために高温高圧で水を使用することからなる点で、水熱前処理とは異なる。この技術は、得られる生成物が大部分液体であるため、黒色ペレットの製造には適していない。
【0012】
熱分解は、酸素の非存在下での強力な加熱による有機化合物の化学分解である。熱分解後に得られる化合物は、それらの特性の点で、水蒸気分解によって得られるものとは異なる。水蒸気分解は、それが水蒸気爆発を使用し、酸素の存在下で実施されるという点で、熱分解技術に類似していない。
【0013】
また、100~300℃の熱化学処理により特徴づけられ、それにより、水を除去しながら、繊維を破壊するために有機材料の一部を改質することを可能にする焙焼プロセスを区別することも必要である。
【0014】
〔従来技術〕
中国特許CN102 949 969Aは、デュベットミキサーおよび触媒伝熱流体ヒーターを使用して、固体炭素材料または粘性が増大した材料を熱分解するためのシステム、および反応器システムを使用するための方法を開示している。この方法は、固体/固体または固体/液体分離器をさらに含み、使用された触媒伝熱流体から固体または液体の熱分解生成物を分離することを可能にする。
【0015】
米国特許出願公開第2012/260563A1号明細書は、液体生成物を得るための、水素化熱分解(固体触媒の存在下での、水素との従来の熱分解液体反応)によるバイオマスの熱化学的変換のためのプロセスを記載している。この方法は、特に慣性分離装置を含む。
【0016】
米国特許出願公開第2014/298716A1号明細書は、リグノセルロース系バイオマスの乾燥および焙焼のための方法に関する。乾燥および焙焼設備は、2つの回路を含む。第2の回路は、全ての大きな揮発性粒子を除去することを可能にするサイクロン分離器を含む。
【0017】
最後に、米国特許出願公開第2016/251611A1号明細書は、水蒸気爆発の工程を経たリグノセルロース供給原料から得られた加水分解組成物の存在下で微生物を培養することを含む、微生物を増殖させるための方法を開示している。処理されたリグノセルロースバイオマスは、繊維のサイズ等の閾値に応じて繊維を分離する工程をさらに含む。
【0018】
〔従来技術の欠点〕
従来技術の解決策は、技術を使用するか、または非粉末製品を使用するので、完全に満足のいくものではない。実際、これらは、以下の技術である:
水蒸気分解によって得られるものとは異なる化合物を得ることにつながる熱分解。
【0019】
許容可能な収率(10%~20%の損失)を有する技術であるが、コストは依然として極めて高く、技術として成熟していない、焙焼。
【0020】
〔発明の開示〕
この必要性を満たすために、本発明者らは、閾値を超える粒子と前記閾値を下回る粒子とを分離するために粉状生成物を処理する工程と、第1のカテゴリーの粒子と第2のカテゴリーの粒子とを別々に処理する工程とを含むことを特徴とする、所定の重大度係数を有する水蒸気分解のためのプロセスを開発した。
【0021】
前記方法は、一方では、耐性粒子が除去された均質な粉末をペレット化することを可能にし、他方では、水蒸気分解槽への戻り、または別の後の処理により、劣化の少ない材料のオーバーフローを処理することを可能にする。
【0022】
本発明はまた、粒子セパレータを含む、この処理を実施するための水蒸気分解設備に関する。
【0023】
〔発明の利点〕
したがって、本発明は、ペレット化可能な粉末から劣化しにくい耐性粒子を分離するためのスクリーニング、またはペレット化可能な粉末から粒度が極めて微細な粉末を分離するためのスクリーニングを実施することにある。
【0024】
この方法の主な利点は、任意のタイプのバイオマスから、特に不均一なバイオマスから、一定品質の黒色ペレットを製造できるようにすることである。実際に、ペレット化される粉末から劣化の少ない粒子を除去することは、ペレットの品質を改善し、したがって、ペレットはより凝集性であり、より疎水性であり、より高いエネルギーである。
【0025】
この方法は、品質および品質の恒常性の点で、ペレット化プロセス全体の仕様と、最終製品の仕様とを適合させることができる。
【0026】
この方法は、劣化の少ない粒子を回収し、それらを再利用することを可能にする。それらを2回水蒸気分解処理にかけること、またはそれらを他の目的に使用することという問題が生じ得る。
【0027】
また、ペレットを製造する目的で、スクリーニングによりペレット化が不十分な最も微細な粉末を除去し、目詰まりが可能な粉末のみを保持することも可能である。例えば、生体内変換プロセスにおいて、最も微細な粉末を使用することを想定することができる。
【0028】
処理の重大度の増大が、粗いままの粒子の問題を克服しようとする場合、これは、より不安定な木材粒子の劣化をもたらし、また、重合体形態の分子の揮発性化合物への過度に進んだ劣化(例えば、温度および滞留時間に最も感受性のあるヘミセルロース)のために、物質の喪失を増大させることに留意されたい。したがって、プロセスのヘッドに、水蒸気分解スクリーニング後の粉末のオーバーフローをリサイクルすることは、重大度を増大させること、または、実際に、単独もしくは共にグループ化された方法で、より適当な重大度条件にそれらを曝すことよりも有利である。
【0029】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、第1に、リグノセルロース系バイオマスの水蒸気分解のための方法に関するものであり、閾値を超える粒子と前記閾値を下回る粒子とを分離するために、粉状生成物を処理する工程と、第1のカテゴリーの粒子と第2のカテゴリーの粒子とを別々に処理する工程とを含むことを特徴とする。
【0030】
本発明の方法は、以下の工程を含む:
リグノセルロース系バイオマスを水蒸気分解する工程、
閾値を超える粒子(「第1のカテゴリー」という。)と、当該閾値を下回る粒子(「第2のカテゴリー」という。)と、を分離するために、水蒸気分解により得られた粉状生成物をスクリーニングする工程、
第1のカテゴリーの粒子および第2のカテゴリーの粒子を別々に処理する工程。
【0031】
水蒸気分解工程に適用される重大度係数は、処理されるバイオマスに応じて決定される。それは、反応の縦座標のLog10の値から決定される。
【0032】
重大度 = log10 (R0)
これは、水蒸気分解法に固有の特徴であり、当業者は、どのように測定し、適応させるかを知っている。典型的には、重大度係数は、4.0~4.02であり、より正確には4.05~4.15である。
【0033】
本方法は、別々の処理を目的として、水蒸気分解粒子を2つのカテゴリーに分離することを目的とするスクリーニングを実施する。閾値は、例えば、粒子の質量、寸法、断面積、または密度であり得るだけでなく、それらの空気力学的挙動、または閾値と比較して、極めて微細である、極めて大きい、極めて高密度である等の、粒子を分離することを可能にする任意の他の基準であり得る。
【0034】
好ましい実施形態では、2つの粒子のカテゴリーのうちの1つは、黒色ペレットの調製のためにペレット化される。
【0035】
特定の実施形態では、ペレット化される粒子は、閾値を超える粒子のカテゴリーに相当する。最大の、および/または最も高密度な、および/または最も耐性の粒子を除去することが問題となる。
【0036】
別の実施形態では、ペレット化される粒子は、閾値を超える粒子のカテゴリーに相当する。極めて微細でペレット化できない粒子を除去することが問題となる。
【0037】
耐水性、機械的強度、および高発熱量のような他の予期される品質の中で、黒色ペレットは、一般的な方法で、500μmより小さいサイズの主構成(>80%)の粒子、および1ミリメートルより大きい、すなわち実際には数ミリメートルの数パーセントの粒子により認定され得る。
【0038】
水に対するペレットの耐性は、浸漬によって評価することができ、すなわち、製品は、浸漬中に多くの水を吸収してはならず、製品の機械的強度等の品質は、浸漬後に変化してはならない。ペレットの機械的強度は、耐衝撃性および機械的耐久性に関連する。
【0039】
ペレットの発熱量は、初期バイオマスの発熱量に対して増加しなければならない。
【0040】
水蒸気分解工程の重大度係数は、バイオマスの性質および収集することが望まれる粉末の種類に応じて固定される。
【0041】
除去された粒子は、ペレット化とは異なる処理を受け、回収され、例えば、分離後直ちにもしくは後に、水蒸気分解槽に再導入すること、または他のプロセスにおいて再利用されることにより、リサイクルされる。
【0042】
除去された粒子の処理には、本発明の特定の実施形態と同数の、多くの異なる可能性がある。
【0043】
特定の実施形態では、閾値を超える粒子(例えば、耐性がある、極めて大きい、および/または極めて高密度である)は、連続工程内で再度処理されるために、水蒸気分解槽内に直接的に再導入される。
【0044】
他の特定の実施形態では、閾値を上回るまたは下回る粒子が、後の方法で、再循環されるために回収される。次いで、それらは、異なる重大度条件下で水蒸気分解槽に再導入することができ、または他のプロセスで再利用することができる。ペレット化するには極めて微細な粒子は、例えば、バイオテクノロジープロセスおよびグリーンケミストリー等の生体内変換反応の基質として、使用することができる。極めて大きい粒子は、ボイラー内での局所燃焼の手段により再利用することができ、または生物材料に組み込むことができる。
【0045】
したがって、このプロセスは、不均一なバイオマスを処理し、このバイオマスのすべてを再利用することを可能にする。
【0046】
前記不均一なバイオマスは、若い木材と古い木材との混合物、異なる種に由来する木材の混合物、廃棄木材等で構成され得る。
【0047】
本発明は、第2に、少なくとも1つの水蒸気分解部と、閾値に従って2つのカテゴリーに粒子を分離するセパレータと、分離された粒子を搬送するための手段とを備える水蒸気分解設備に関する。
【0048】
水蒸気分解設備は、水蒸気分解槽の出口に設けられた粉体回収装置までの要素に関して、慣用的な設備である。粒子セパレータは、任意のタイプのものであってもよく、スクリーニングのために選択された基準に依存する。したがって、スクリーニング手段は、回転スクリーニング、穿孔もしくは傾斜振動テーブル等のサイズ選択による分離、弾道スクリーン等の動的密度測定分離、または遠心効果であり得る。
【0049】
粒子の別々の輸送のための手段により、オーバーフローした粉末を、即時の処理の部位へ、または後の処理のための貯蔵部位へ輸送することが可能となる。この種の輸送手段は、コンベヤ、シュート、スクリュー、チェーンコンベヤ、空気圧装置等であってもよい。
【0050】
設備はさらに、前記オーバーフローの処理に関連する設備の項目を下流に含むことができる。