(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】p53におけるR175H又はY220C変異を認識するT細胞受容体
(51)【国際特許分類】
C07K 14/725 20060101AFI20250217BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20250217BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20250217BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20250217BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250217BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250217BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250217BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250217BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250217BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20250217BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20250217BHJP
【FI】
C07K14/725 ZNA
A61K31/713
A61K35/17
A61K38/17
A61P35/00
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12P21/02 C
G01N33/574 A
(21)【出願番号】P 2021576970
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 US2020039785
(87)【国際公開番号】W WO2020264269
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-21
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510002280
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】デニガー、ドリュー シー.
(72)【発明者】
【氏名】マレクザデ、パリサ
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ、スティーヴン エー.
(72)【発明者】
【氏名】パセット、アンナ
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/067243(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/067242(WO,A1)
【文献】DENIGER, Drew C. et al.,Clinical Cancer Research,2018年,Vol. 24, No. 22,p.5562-5573,DOI:10.1158/1078-0432.CCR-18-0573
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトp53
Y220Cのアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する、単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)であって
、配列番号80のアミノ酸配列を含むα鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号81のアミノ酸配列を含むα鎖CDR2、配列番号82のアミノ酸配列を含むα鎖CDR3、配列番号83のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR1、配列番号84のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR2、及び、配列番号85のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR3を含む、TCR。
【請求項2】
(1)配列番号86及び87の両方
;
(2)配列番号156及び157の両方
;
(3)配列番号199及び87の両方;
又は
(
4)配列番号86及び219の両方
;
のアミノ酸配列を含む、請求項1のTCR。
【請求項3】
(1)配列番号88及び89の両方
;
(2)配列番号174及び175の両方
;
(3)配列番号200及び89の両方;
又は
(
4)配列番号88及び220の両方
;
のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2のTCR。
【請求項4】
ヒトp53
Y220Cのアミノ酸配列が配列番号113である、請求項1~3のいずれか1項のTCR。
【請求項5】
TCRが、配列番号112の野生型ヒトp53のアミノ酸配列に対して抗原特異性を有さない、請求項1~
4のいずれか1項のTCR。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項のTCRの機能的部分を含む、単離又は精製されたポリペプチドであって
、該機能的部分が、ヒトp53
Y220C
のアミノ酸配列に対して抗原特異性を有し、且つ、配列番号80のアミノ酸配列を含むα鎖CDR1、配列番号81のアミノ酸配列を含むα鎖CDR2、配列番号82のアミノ酸配列を含むα鎖CDR3、配列番号83のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR1、配列番号84のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR2、及び、配列番号85のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR3
を含む、ポリペプチド。
【請求項7】
(1)配列番号86及び87の両方
;
(2)配列番号156及び157の両方
;
(3)配列番号199及び87の両方;
又は
(
4)配列番号86及び219の両方
;
のアミノ酸配列を含む、請求項
6のポリペプチド。
【請求項8】
(1)配列番号88及び89の両方
;
(2)配列番号174及び175の両方
;
(3)配列番号200及び89の両方;
又は
(
4)配列番号88及び220の両方
;
のアミノ酸配列を含む、請求項
6又は
7のポリペプチド。
【請求項9】
(1)
配列番号80のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR2、及び、配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR3を含むTCRα鎖可変領域を含む第1のポリペプチド鎖
、及び
、配列番号83のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号84のアミノ酸配列を含むCDR2、及び、配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR3を含むTCRβ鎖可変領域を含む第2のポリペプチド鎖を含む、
ヒトp53
Y220C
のアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する単離又は精製されたタンパク質。
【請求項10】
(1)
前記第1のポリペプチド鎖
が配列番号86のアミノ酸配列を含み、及び
、前記第2のポリペプチド鎖
が配列番号87のアミノ酸配列を含む;
(2)
前記第1のポリペプチド鎖
が配列番号156のアミノ酸配列を含み、及び
、前記第2のポリペプチド鎖
が配列番号157のアミノ酸配列を含む;
(3)
前記第1のポリペプチド鎖
が配列番号199のアミノ酸配列を含み、及び
、前記第2のポリペプチド鎖
が配列番号87のアミノ酸配列を含む;
又は
(
4)
前記第1のポリペプチド鎖
が配列番号86のアミノ酸配列を含む、及び
、前記第2のポリペプチド鎖
が配列番号219のアミノ酸配列を含む、請求項
9のタンパク質。
【請求項11】
(1)
前記第1のポリペプチド鎖
が配列番号88のアミノ酸配列を含み、及び
、前記第2のポリペプチド鎖
が配列番号89のアミノ酸配列を含む;
(2)
前記第1のポリペプチド鎖
が配列番号174のアミノ酸配列を含み、及び
、前記第2のポリペプチド鎖
が配列番号175のアミノ酸配列を含む;
(3)
前記第1のポリペプチド鎖
が配列番号200のアミノ酸配列を含む、及び
、前記第2のポリペプチド鎖
が配列番号89のアミノ酸配列を含む;
又は、
(
4)
前記第1のポリペプチド鎖
が配列番号88のアミノ酸配列を含む、及び
、前記第2のポリペプチド鎖
が配列番号220のアミノ酸配列を含む、請求項
9又は
10のタンパク質。
【請求項12】
請求項1~
5のいずれか1項のTCR、請求項
6~
8のいずれか1項のポリペプチド、又は請求項
9~
11のいずれか1項のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、単離又は精製された核酸。
【請求項13】
5’から3’へと、第1の
ヌクレオチド配列及び第2のヌクレオチド配列を含む、単離又は精製された核酸であって、第1及び第2のヌクレオチド配列が、それぞれ、配列番
号86
のアミノ酸配列を含むTCRα鎖可変領域及び
配列番号87
のアミノ酸配列を含むTCRβ鎖可変領域;
配列番号87
のアミノ酸配列を含むTCRβ鎖可変領域及び配列番号86のアミノ酸配列を含むTCRα鎖可変領域;
配列番号156
のアミノ酸配列を含むTCRα鎖可変領域及び
配列番号157
のアミノ酸配列を含むTCRβ鎖可変領域;
配列番号157
のアミノ酸配列を含むTCRβ鎖可変領域及び
配列番号156
のアミノ酸配列を含むTCRα鎖可変領域;
配列番号199
のアミノ酸配列を含むTCRα鎖可変領域及び
配列番号87
のアミノ酸配列を含むTCRβ鎖可変領域;
配列番号87
のアミノ酸配列を含むTCRβ鎖可変領域及び配列番号199
のアミノ酸配列を含むTCRα鎖可変領域;
配列番号86
のアミノ酸配列を含むTCRα鎖可変領域及び
配列番号219
のアミノ酸配列を含むTCRβ鎖可変領域;
又は、
配列番号219
のアミノ酸配列を含むTCRβ鎖可変領域及び配列番号86
のアミノ酸配列を含むTCRα鎖可変領域;をコード
しており、ここで、該TCRα鎖可変領域及びTCRβ鎖可変領域が、ヒトp53
Y220C
のアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する、核酸。
【請求項14】
第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間に挿入された第3のヌクレオチド酸配列を更に含み、前記第3のヌクレオチド配列が切断可能なリンカーペプチドをコードする、請求項
13の単離又は精製された核酸。
【請求項15】
切断可能なリンカーペプチドが、配列番号94のアミノ酸配列を含む、請求項
14の単離又は精製された核酸。
【請求項16】
配列番
号90
及び20
1からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする、請求項
15の単離又は精製された核酸。
【請求項17】
請求項
12~
16のいずれか1項の核酸を含む、組み換え発現ベクター。
【請求項18】
トランスポゾンベクター又はレンチウイルスベクターである、請求項
17の組換え発現ベクター。
【請求項19】
請求項
12~
16のいずれか1項の核酸又は請求項
17若しくは
18のベクターによってコードされる、単離又は精製されたTCR、ポリペプチド、又はタンパク質。
【請求項20】
細胞における請求項
12~
16のいずれか1項の核酸又は請求項
17若しくは
18のベクターの発現から生じる、単離又は精製されたTCR、ポリペプチド、又はタンパク質。
【請求項21】
配列番
号113のペプチドに対して抗原特異性を有するTCRを発現する宿主細胞を製造する方法であって、単離又は精製された細胞を、該細胞へのベクターの導入を可能にする条件下で、請求項
17又は
18のベクターと接触させることを含む、方法。
【請求項22】
請求項
12~
16のいずれか1項の核酸、又は請求項
17若しくは
18の組み換え発現ベクターを含む、単離又は精製された宿主細胞。
【請求項23】
細胞がヒトリンパ球である、請求項
22の宿主細胞。
【請求項24】
細胞が、T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、不変ナチュラルキラーT(iNKT)細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞からなる群から選択される、請求項
22の宿主細胞。
【請求項25】
請求項
22~
24のいずれか1項の宿主細胞を含む、単離又は精製された細胞集団。
【請求項26】
請求項1~
5、
19、若しくは
20のいずれか1項のTCR、請求項
6~
8、
19、若しくは
20のいずれか1項のポリペプチド、又は請求項
9~
11、
19、若しくは
20のいずれか1項のタンパク質を製造する方法であって、TCR、ポリペプチド、又はタンパク質が製造されるように、請求項
22~
24のいずれか1項の宿主細胞、又は請求項
25の、宿主の細胞集団を培養することを含む、方法。
【請求項27】
(a)請求項1~
5、
19、若しくは
20のいずれか1項のTCR、請求項
6~
8、
19、若しくは
20のいずれか1項のポリペプチド、請求項
9~
11、
19、若しくは
20のいずれか1項のタンパク質
、請求項
22~
24のいずれか1項の宿主細胞、又は請求項
25の細胞集団と、(b)薬学的に許容し得る担体とを含む、医薬組成物。
【請求項28】
哺乳動物におけるがん
細胞の存在を検出する方法であって:
(a)がんの細胞を含む試料と、請求項1~
5、
19、若しくは
20のいずれか1項のTCR、請求項
6~
8、
19若しくは
20のいずれか1項のポリペプチド、請求項
9~
11、
19若しくは
20のいずれか1項のタンパク質
、請求項
22~
24のいずれか1項の宿主細胞、請求項
25の細胞の集団、又は請求項
27の医薬組成物とを接触させ、それによって、複合体を形成させること;及び
(b)前記複合体を検出すること、
を含み、
複合体の検出が、哺乳動物におけるがん
細胞の存在を示す、方法。
【請求項29】
請求項1~
5、
19、若しくは
20のいずれか1項のTCR、請求項
6~
8、
19、若しくは
20のいずれか1項のポリペプチド、請求項
9~
11、
19、若しくは
20のいずれか1項のタンパク質、請求項
12~
16のいずれか1項の核酸、請求項
17又は
18の組換え発現ベクター、請求項
22~
24のいずれか1項の宿主細胞、又は請求項
25の細胞集団を含む、哺乳動物におけるがんに対する免疫応答を誘導するための医薬組成物。
【請求項30】
請求項1~
5、
19、若しくは
20のいずれか1項のTCR、請求項
6~
8、
19、若しくは
20のいずれか1項のポリペプチド、請求項
9~
11、
19、若しくは
20のいずれか1項のタンパク質、請求項
12~
16のいずれか1項の核酸、請求項
17又は
18の組換え発現ベクター、請求項
22~
24のいずれか1項の宿主細胞、又は請求項
25の細胞集団を含む、哺乳動物におけるがんを治療又は予防するための医薬組成物。
【請求項31】
細胞集団が哺乳動物に対して自己である、請求項
29又は
30の医薬組成物。
【請求項32】
細胞集団が哺乳動物に対して同種異系である、請求項
29又は
30の医薬組成物。
【請求項33】
がんが上皮がんである、請求項
28の方
法。
【請求項34】
がんが上皮がんである、請求項29~32のいずれか1項の医薬組成物。
【請求項35】
がんが胆管がん、黒色腫、結腸がん、直腸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、神経膠芽細胞腫、子宮頸がん、頭頸部がん、乳がん、膵臓がん、又は膀胱がんである、請求項
28の方
法。
【請求項36】
がんが胆管がん、黒色腫、結腸がん、直腸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、神経膠芽細胞腫、子宮頸がん、頭頸部がん、乳がん、膵臓がん、又は膀胱がんである、請求項29~32のいずれか1項の医薬組成物。
【請求項37】
がんが、ヒトp53におけ
るY220C変異を含むことが知られている、請求項
28、33及び3
5のいずれか1項の方
法。
【請求項38】
がんが、ヒトp53におけるY220C変異を含むことが知られている、請求項29~32、34及び36のいずれか1項の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2019年6月27日に出願された米国仮特許出願番号第62/867,619号(参照によりその全体が本明細書に組込まれる)の利益を主張する。
【0002】
連邦政府支援の研究又は開発に関する陳述
本発明は、連邦政府の支援を受け、プロジェクト番号BC010985の下、米国国立衛生研究所、米国国立がん研究所によりなされた。本発明において、連邦政府は一定の権利を有する。
【0003】
電子的に提出された物件の参照による組込み
本明細書と同時に提出され、以下の通り識別される、コンピューターで読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸の配列表は、参照により、その全体が本明細書に組込まれる:2020年6月23日付けの「749338_ST25.txt」という名前の357,775バイトのASCII(テキスト)ファイル1件。
【背景技術】
【0004】
幾つかのがんは、特に該がんが転移性且つ切除不能になったとき、非常に限られた治療法の選択肢しか有しない場合がある。例えば、外科手術、化学療法、及び放射線療法等の治療法の進歩にもかかわらず、多くのがん、例えば、膵臓、結腸直腸、肺、子宮内膜、卵巣、及び前立腺のがんの予後は不良である場合がある。従って、がんの更なる治療法に対するアンメットニーズが存在する。
【発明の概要】
【0005】
発明の簡単な要旨
本発明の実施形態は、ヒトp53R175H又はヒトp53Y220Cのアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)であって:(1)配列番号3~8の全て;(2)配列番号14~19の全て;(3)配列番号25~30の全て;(4)配列番号36~41の全て;(5)配列番号47~52の全て;(6)配列番号58~63の全て;(7)配列番号69~74の全て;(8)配列番号80~85の全て;又は(9)配列番号131~136の全てのアミノ酸配列を含む、TCRを提供する。
【0006】
本発明の一実施形態においては、TCRは、ヒトp53R175H又はヒトp53Y220Cのアミノ酸配列に対して抗原特異性を有し、ヒトp53R175Hのアミノ酸配列は、配列番号2又は配列番号96である。
【0007】
本発明の一実施形態においては、TCRは、ヒトp53R175H又はヒトp53Y220Cのアミノ酸配列に対して抗原特異性を有し、ヒトp53Y220Cのアミノ酸配列は、配列番号113である。
【0008】
本発明の一実施形態においては、TCRは、配列番号95の野生型ヒトp53のアミノ酸配列に対して抗原特異性を有さない。
【0009】
本発明の一実施形態においては、TCRは、配列番号112の野生型ヒトp53のアミノ酸配列に対して抗原特異性を有さない。
【0010】
本発明の更なる実施形態は、関連するポリペプチド及びタンパク質、並びに関連する核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、及び本発明のTCRに関連する医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明の実施形態は、5’から3’へと、第1の核酸配列及び第2のヌクレオチド配列を含む、単離又は精製された核酸であって、第1及び第2のヌクレオチド配列が、それぞれ、配列番号9及び10;10及び9;20及び21;21及び20;31及び32;32及び31;42及び43;43及び42;53及び54;54及び53;64及び65;65及び64;75及び76;76及び75;86及び87;87及び86;137及び138;138及び137;142及び143;143及び142;144及び145;145及び144;146及び147;147及び146;148及び149;149及び148;150及び151;151及び150;152及び153;153及び152;154及び155;155及び154;156及び157;157及び156;159及び158;158及び159;178及び10;10及び178;181及び21;21及び181;184及び32;32及び184;187及び43;43及び187;190及び54;54及び190;193及び65;65及び193;196及び76;76及び196;199及び87;87及び199;137及び202;202及び137;9及び205;205及び9;20及び207;207及び20;31及び209;209及び31;42及び211;211及び42;53及び213;213及び53;64及び215;215及び64;75及び217;217及び75;86及び219;219及び86;137及び221;221及び137;223及び202;202及び223;223及び221;221及び223;20及び226;226及び20;181及び226;又は226及び181のアミノ配列をコードする、核酸を提供する。
【0012】
本発明の実施形態は、5’から3’へと、第1の核酸配列及び第2のヌクレオチド配列を含む、単離又は精製された核酸であって、第1及び第2のヌクレオチド配列が、それぞれ、配列番号11及び12;12及び11;22及び23;23及び22;33及び34;34及び33;44及び45;45及び44;55及び56;56及び55;66及び67;67及び66;77及び78;78及び77;88及び89;89及び88;139及び140;140及び139;160及び161;161及び160;162及び163;163及び162;164及び165;165及び164;166及び167;167及び166;168及び169;169及び168;170及び171;171及び170;172及び173;173及び172;174及び175;175及び174;176及び177;177及び176;179及び12;12及び179;182及び23;23及び182;185及び34;34及び185;188及び45;45及び188;191及び56;56及び191;194及び67;67及び194;197及び78;78及び197;200及び89;89及び200;139及び203;203及び139;11及び206;206及び11;22及び208;208及び22;33及び210;210及び33;44及び212;212及び44;55及び214;214及び55;66及び216;216及び66;77及び218;218及び77;88及び220;220及び88;139及び222;222及び139;224及び203;203及び224;224及び222;222及び224;22及び227;227及び22;182及び227;又は227及び182のアミノ配列をコードする、核酸を提供する。
【0013】
本発明の一実施形態においては、単離又は精製された核酸は、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間に挿入された第3のヌクレオチド酸配列を更に含み、前記第3のヌクレオチド配列が切断可能なリンカーペプチドをコードする。
【0014】
本発明の一実施形態においては、切断可能なリンカーペプチドは、配列番号94のアミノ酸配列を含む。
【0015】
本発明の一実施形態においては、単離又は精製された核酸は、配列番号13、24、35、46、57、68、79、90、141、180、183、186、189、192、195、198、201、204、225、228、及び229からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする。
【0016】
本発明の一実施形態においては、組換え発現ベクターは、トランスポゾンベクター又はレンチウイルスベクターである。
【0017】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載の核酸又はベクターのいずれかによりコードされる、単離又は精製されたTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を提供する。
【0018】
本発明の別の実施形態は、細胞における本明細書に記載の核酸又はベクターのいずれかの発現から生じる、単離又は精製されたTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を提供する。
【0019】
本発明の別の実施形態は、配列番号2、96又は113のペプチドに対して抗原特異性を有するTCRを発現する宿主細胞を製造する方法であって、細胞を、細胞へのベクターの導入を可能にする条件下で、本明細書に記載のベクターのいずれかと接触させることを含む、方法を提供する。
【0020】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載の核酸又は組換え発現ベクターのいずれかを含む、単離又は精製された宿主細胞を提供する。
【0021】
本発明の一実施形態においては、宿主細胞はヒトリンパ球である。
【0022】
本発明の一実施形態においては、宿主細胞は、T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、不変ナチュラルキラーT(iNKT)細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞からなる群から選択される。
【0023】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のいずれかを製造する方法であって、TCR、ポリペプチド、又はタンパク質が製造されるように、本明細書に記載の宿主細胞、又は宿主の細胞集団のいずれかを培養することを含む、方法を提供する。
【0024】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物におけるがんに対する免疫応答の誘導における使用のための、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、又は医薬組成物のいずれかを提供する。一実施形態においては、本発明は、哺乳動物におけるがんに対する免疫応答を誘導する方法であって、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、又は医薬組成物のいずれかを投与することを含む、方法を提供する。
【0025】
本発明のなお更なる実施形態は、哺乳動物におけるがんの存在を検出する方法、及び哺乳動物におけるがんを治療又は予防する方法を提供する。一実施形態においては、本発明は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、又は医薬組成物のいずれかを投与することを含む、哺乳動物におけるがんを治療又は予防する方法を提供する。一実施形態においては、がんは、胆管がん、黒色腫、結腸がん、直腸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、神経膠芽細胞腫、子宮頸がん、頭頸部がん、乳がん、膵臓がん、又は膀胱がんである。
【0026】
本発明の一実施形態においては、がんは、ヒトp53におけるR175H変異又はY220C変異を含むことが知られている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面のいくつかの観点の簡単な説明
【
図1-1】
図1Aは、実験計画を示す模式図(親ゲートはリンパ球→単一細胞→生(PI陰性)→CD3
+(T細胞)である)である。
【
図1-2】
図1B~1Cは、IVS(TP53-TMG-IVS(B)又はp53-LP-IVS(C))及び4-1BB/OX40濃縮後に検出された4-1BB陽性細胞のパーセンテージを示すグラフである。陽性と見なされる培養物を太字で示す。変異TP53(TMG(黒色丸);LP(黒色四角))及び野生型(WT)対応物(TMG(白色丸);LP(白色四角))に対する応答を示す。
【
図1-3】
図1Dは、WT又は変異(MUT)TP53タンデムミニ遺伝子(TMG)とエレクトロポレーションした自己抗原提示細胞との共培養後の4141-CD8 TP53-TMG-IVS培養物からの代表的なフローサイトメトリープロットを示す。
【
図1-4】
図1Eは、抗原を経験したCD4 T細胞を選別し、変異TP53-TMGとエレクトロポレーションした未成熟樹状細胞でインビトロ刺激した後に測定したインターフェロンガンマ分泌(左軸)又は4-1BBの上方制御(右軸)を示す。次いで、培養物を、変異TP53-TMGとエレクトロポレーションした未成熟樹状細胞と共培養し、翌日、4-1BB
+及び/又はOX40
+細胞を選別し、急速増幅プロトコルによって増幅させた。増幅の12~14日後、培養物(4285-CD4 TP53-TMG-IVS)を、インターフェロンガンマELISPOT(左軸)によってp53-R175H新抗原に対する特異性について、又はフローサイトメトリー(右軸)によって4-1BBの上方制御について試験した。
【
図1-5】
図1Fは、4285-CD4 TP53-TMG-IVSとペプチドをパルスした自己抗原提示細胞との共培養の上清に対するELISAによって測定したインターフェロン-γ分泌を示すグラフである。4285-CD4 TP53-TMG-IVS培養物を、漸減濃度の、25アミノ酸長のWT(白色丸)又は変異(黒色四角)p53-R175ペプチドのいずれかでパルスした未成熟樹状細胞と共培養した。一晩のインキュベーション後、共培養上清を、インターフェロンガンマ分泌について、ELISAにより分析した。データは平均±SEM(n=3テクニカルレプリケート)である。
【
図2-1】
図2Aは、全集団のクローン性を示すグラフであり、これは、試料多様性の正規化された推定値である(1に近い数ほどより多様性が低い)。TCRBシークエンシングを、IVSによる増幅及びLP又はTMGのいずれかによる4-1BB/OX40濃縮の前後にPBLに対して行った。確認したp53新抗原応答を伴う培養物をアスタリスクで強調表示する。
図2Bは、各集団からの生産的で特有のCDR3Bの最大頻度を示すグラフである。TCRBシークエンシングを、IVSによる増幅及びLP又はTMGのいずれかによる4-1BB/OX40濃縮の前後にPBLに対して行った。確認したp53新抗原応答を伴う培養物をアスタリスクで強調表示する。
【
図2-2】
図2Cは、非形質導入T細胞(TCR形質導入T細胞に対するネガティブコントロール)を、漸減濃度の、25アミノ酸長のWT(白色丸)又は変異(黒色四角)p53-R175ペプチドのいずれかでパルスした未成熟樹状細胞と共培養した実験の結果を示すグラフである。一晩のインキュベーション後、共培養上清を、インターフェロンガンマ分泌について、ELISAにより分析した。データは平均±SEM(n=3)である。
図2Dは、4285-PBL-TCR1で形質導入したT細胞を、漸減濃度の、25アミノ酸長のWT(白色丸)又は変異(黒色四角)p53-R175ペプチドのいずれかでパルスした未成熟樹状細胞と共培養した実験の結果を示すグラフである。一晩のインキュベーション後、共培養上清を、インターフェロンガンマ分泌について、ELISAにより分析した。データは平均±SEM(n=3)である。
【
図2-3】
図2Eは、4285-PBL-TCR2で形質導入したT細胞を、漸減濃度の、25アミノ酸長のWT(白色丸)又は変異(黒色四角)p53-R175ペプチドのいずれかでパルスした未成熟樹状細胞と共培養した実験の結果を示すグラフである。一晩のインキュベーション後、共培養上清を、インターフェロンガンマ分泌について、ELISAにより分析した。データは平均±SEM(n=3)である。
図2Fは、4285-PBL-TCR3で形質導入したT細胞を、漸減濃度の、25アミノ酸長のWT(白色丸)又は変異(黒色四角)p53-R175ペプチドのいずれかでパルスした未成熟樹状細胞と共培養した実験の結果を示すグラフである。一晩のインキュベーション後、共培養上清を、インターフェロンガンマ分泌について、ELISAにより分析した。データは平均±SEM(n=3)である。
【
図2-4】
図2Gは、4285-PBL-TCR5で形質導入したT細胞を、漸減濃度の、25アミノ酸長のWT(白色丸)又は変異(黒色四角)p53-R175ペプチドのいずれかでパルスした未成熟樹状細胞と共培養した実験の結果を示すグラフである。一晩のインキュベーション後、共培養上清を、インターフェロンガンマ分泌について、ELISAにより分析した。データは平均±SEM(n=3)である。
図2Hは、4285-PBL-TCR6で形質導入したT細胞を、漸減濃度の、25アミノ酸長のWT(白色丸)又は変異(黒色四角)p53-R175ペプチドのいずれかでパルスした未成熟樹状細胞と共培養した実験の結果を示すグラフである。一晩のインキュベーション後、共培養上清を、インターフェロンガンマ分泌について、ELISAにより分析した。データは平均±SEM(n=3)である。
【
図2-5】
図2Iは、4285-PBL-TCR7で形質導入したT細胞を、漸減濃度の、25アミノ酸長のWT(白色丸)又は変異(黒色四角)p53-R175ペプチドのいずれかでパルスした未成熟樹状細胞と共培養した実験の結果を示すグラフである。一晩のインキュベーション後、共培養上清を、インターフェロンガンマ分泌について、ELISAにより分析した。データは平均±SEM(n=3)である。
図2Jは、4285-PBL-TCR9で形質導入したT細胞を、漸減濃度の、25アミノ酸長のWT(白色丸)又は変異(黒色四角)p53-R175ペプチドのいずれかでパルスした未成熟樹状細胞と共培養した実験の結果を示すグラフである。一晩のインキュベーション後、共培養上清を、インターフェロンガンマ分泌について、ELISAにより分析した。データは平均±SEM(n=3)である。
【
図2-6】
図2K~2Lは、IVS及び4-1BB濃縮プロトコルの前(PBL)及び後(IVS/濃縮)の変異TP53に対する既知の特異性を有するCDR3Bを追跡した後に測定したTCRBクロノタイプのパーセンテージを示すグラフである。P53
R175H特異的クロノタイプをKに示す。P53
R248W特異的クロノタイプをLに示す。
【
図3-1】
図3Aは、COS7サル細胞株の、表示したHLAでのトランスフェクション及び表示した最短p53ペプチド(WT(白色棒);変異(黒色棒))のパルス後に測定した、4-1BB陽性細胞のパーセンテージを示すグラフである。4141-CD8 TP53-TMG-IVS培養物からの結果を示す。TMG-wtR175は、R175Hを除く全ての位置で変異TP53を有した。配列HMTEVVR
RCは配列番号95である。配列HMTEVVR
HCは配列番号96である。
図3Bは、COS7サル細胞株の、表示したHLAでのトランスフェクション及び表示した最短p53ペプチド(WT(白色棒);変異(黒色棒))のパルス後に測定した、IFN-γ量を示すグラフである。4266-CD8 TP53-TMG-IVS培養物からの結果を示す。配列SSCMGGMN
RRは配列番号97である。配列SSCMGGMN
WRは配列番号98である。
【
図3-2】
図3Cは、COS7サル腫瘍細胞株を、患者4285のハプロタイプに対応するHLAプラスミドDNA及び、WT TP53 TMG(R175H位のみ)(WT-R175-TMG;白色棒)又はp53-R175H新抗原を含有する変異TP53-TMG(黒色棒)のいずれかでトランスフェクションした実験の結果を示すグラフである。翌日、4285-CD4 TP53-TMG-IVS培養物を加え、共培養した。一晩のインキュベーション後、共培養上清を、インターフェロンガンマ分泌について、ELISAにより分析した。データは平均±SEM(n=3)である。
【
図3-3】
図3Dは、TC#4266(患者4266からの自己異種移植片;A
*68:01;p53
R248W)と全長p53
R175H遺伝子を過剰発現するSaos2細胞(A
*02:01)との共培養後のTP53-TMG-IVS培養物からのCD8
+T細胞における4-1BBの上方制御を示すフローサイトメトリープロット(左が4266-CD8、右が4141-CD8)を示す。
【
図4】
図4は、COS7サル腫瘍細胞株を、DRA1
*01:01:01及びDRB1
*13:01:01、並びに関係性無し(白色棒)、WT TP53 TMG(R175H位のみ)(WT-R175-TMG;灰色棒)又はp53-R175H新抗原を含有する変異TP53-TMG(黒色棒)のいずれかでトランスフェクションした実験の結果を示すグラフである。翌日、4285-PBL-TCRで形質導入したか、又は非形質導入のT細胞を加え、共培養した。一晩のインキュベーション後、共培養上清を、インターフェロンガンマ分泌について、ELISAにより分析した。データは平均±SEM(n=3)である。
【
図5】
図5は、4259-F1腫瘍断片培養物からCD8
+T細胞を選別した後、限界希釈によりT細胞クローンを調製した実験の結果を示すグラフである。24の培養物を、DMSO(ペプチドビヒクル)、WT p53-Y220ペプチド、又はMUT p53-Y220CペプチドでパルスしたT2腫瘍細胞(HLA-A
*02:01)と共培養した。一晩のインキュベーション後、細胞をCD3、CD8、及び4-1BBについて染色し、次いで、フローサイトメトリーにより分析した。培養物からのCD8
+4-1BB
+T細胞の頻度を表示する。
【
図6】
図6は、4259-F1-TCRをドナー末梢血T細胞に形質導入し、次いで、漸減濃度のWT p53-Y220ペプチド
【0028】
【0029】
又はMUT p53-Y220Cペプチド
【0030】
【0031】
のいずれかでパルスしたT2腫瘍細胞(HLA-A
*02:01)と共培養した実験の結果を示すグラフである。一晩のインキュベーション後、共培養上清を、インターフェロンガンマ分泌について、ELISAにより分析した。データは平均±SEM(n=3)である。
【
図7】
図7は、TCR非発現(非形質導入)か、p53-R175H特異的TCRを発現するか、又は4259-F1-TCRを発現するかのいずれかのT細胞を、腫瘍細胞(HLA-A
*02:01、p53-R175H又はp53-Y220Cの発現有り若しくは無しのいずれか)と共培養した実験の結果を示すグラフである。一晩のインキュベーション後、細胞をCD3、CD8、及び4-1BBについて染色し、次いで、フローサイトメトリーにより分析した。培養物からのCD8
+4-1BB
+T細胞の頻度を表示する。データは平均±SEM(n=3)である。
【
図8】
図8は、9のp53スプライスバリアントのアミノ酸配列のアラインメントを示す。SP|P04637|P53_HUMAN(配列番号1);SP|P04637-2|P53_HUMAN(配列番号114);SP|P04637-3|P53_HUMAN(配列番号115);SP|P04637-4|P53_HUMAN(配列番号116);SP|P04637-5|P53_HUMAN(配列番号117);SP|P04637-6|P53_HUMAN(配列番号118);SP|P04637-7|P53_HUMAN(配列番号119);SP|P04637-8|P53_HUMAN(配列番号120);及びSP|P04637-9|P53_HUMAN(配列番号121)。
【
図9】
図9は、TRBV7-9
*03の配列の一部分のアミノ酸配列とTRBV7-9
*01のそれとのアラインメントを示す。「L36092|TRBV7-9
*01|Homo」は配列番号129である。「AF009663|TRBV7-9
*03|Homo」は配列番号130である。
【
図10】
図10は、患者4141からのTIL(断片培養物12)と、関係性のない変異(TMG-IRR)、WT p53配列(TP53-wt-TMG)、又はR175Hを含む変異p53配列(TP53-mut-TMG)をコードするTMGでトランスフェクションした自己APCとの共培養後に測定した、4-1BB陽性細胞(CD8
+の%)(右のy軸;黒色棒)及びIFN-γ(2x104細胞あたりのスポット)(左のy軸;斜線模様棒)のパーセンテージを示すグラフである。培地のみ、並びにPMA及びイオノマイシンが、それぞれネガティブ及びポジティブコントロールであった。
【
図11】
図11は、患者4141からのTIL(断片培養物12)と、表示したHLA対立遺伝子及び追加遺伝子無し(HLAのみ、白色棒)、WT TP53 TMG(灰色斜線模様棒)、又はp53-R175H配列を含有する変異TP53TMG(黒色棒)のいずれかと共トランスフェクションしたCos7細胞との共培養後に測定した2x104エフェクター細胞あたりのIFN-γ陽性スポットの数を示すグラフである。
【
図12】
図12は、モック(TCR無し)又は4141-TCR1a2を発現するT細胞と、T2腫瘍細胞(HLA-A
*02を発現する)との共培養後に測定したIFN-γの濃度(pg/mL)を示すグラフである。T2細胞を、ペプチドビヒクル(DMSO;灰色棒)又はWT p53-R175ペプチド(斜線灰色模様棒)若しくは変異p53-R175Hペプチド(黒色棒)で構成される精製(HPLCにより>95%)ペプチドでパルスした。培地のみ(白色棒)、並びにPMA及びイオノマイシン(格子模様棒)が、それぞれネガティブ及びポジティブコントロールであった。データは平均±SEM(n=3)である。
【
図13】
図13は、4141-TCR1a2を発現するT細胞と、未操作(陰影無しの棒)か、又は全長p53-R175Hタンパク質を過剰発現するように作製した(陰影有りの棒)かの、いずれかのSaos2細胞(p53-NULL及びHLA-A
*02:01+)との共培養後に、表示したマーカーのうちの1の発現について陽性の細胞のパーセンテージを示すグラフである。データは平均±SEM(n=3)である。統計分析のために、2の細胞株間の各サイトカインに対してスチューデントの両側t検定を行った(
***p<0.001)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
腫瘍タンパク質P53(「TP53」又は「p53」とも称される)は、例えば、細胞分裂を制御することによって腫瘍抑制因子として作用する。p53タンパク質は、細胞の核内に位置し、そこでDNAに直接結合する。DNAが損傷を受けると、p53タンパク質は、DNAを修復するか又は損傷を受けた細胞をアポトーシスさせるかの決定に関与する。DNAを修復することができる場合、p53は他の遺伝子を活性化させて損傷を修復する。DNAを修復することができない場合、p53タンパク質は、細胞が分裂するのを阻止し、該細胞にシグナルを伝達してアポトーシスさせる。変異したか又は損傷を受けたDNAを有する細胞の分裂を停止させることによって、p53は腫瘍の発達を阻止するのに役立つ。WT(正常)全長p53は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0033】
p53タンパク質における変異によって、p53タンパク質の腫瘍抑制因子機能が低下するか又は失われることがある。或いは又は更に、p53変異は、ドミナントネガティブ方式でWTp53に干渉することによる機能獲得型変異であり得る。変異p53タンパク質は、様々なヒトがん、例えば、胆管がん、黒色腫、結腸がん、直腸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、神経膠芽腫、子宮頸がん、頭頸部がん、乳がん、膵臓がん、又は膀胱がんのいずれかで発現し得る。
【0034】
本発明の実施形態は、変異ヒトp53(以後、「変異p53」)に対して抗原特異性を有する単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)を提供する。以後、「TCR」に対する言及は、特に規定のない限り、TCRの機能的部分及び機能的バリアントも指す。p53の変異は、本明細書では、全長WTp53(配列番号1)のアミノ酸配列を参照することによって定義される。p53の変異は、本明細書では、特定の位置に存在するアミノ酸残基、続いて、位置番号、続いて、検討中の特定の変異において該残基に置き換わったアミノ酸を参照することによって記載される。p53のアミノ酸配列(例、p53ペプチド)は、全長のWT p53タンパク質のすべてのアミノ酸残基よりも少ない場合がある。従って、位置番号は、本明細書においては、p53アミノ酸配列の特定の例における対応する残基の実際の位置は異なる場合があることを理解した上で、WT全長p53タンパク質(即ち、配列番号1)を参照することにより定義される。位置が配列番号1によって定義されるので、用語「R175」とは、配列番号1の175位に存在するアルギニンを指し、「R175H」は、配列番号1の175位に存在するアルギニンがヒスチジンに置き換わっていることを示し、一方、「Y220C」は、配列番号1の220位に存在するチロシンがシステインに置き換わっていることを示す。例えば、p53のアミノ酸配列の特定の例が、例、YKQSQHMTEVVRRCPHHERCSDSDG(配列番号110)(配列番号1の連続するアミノ酸残基163~187に対応する例示的なWT p53ペプチド)である場合、配列番号110中に下線で示すアルギニンの実際の位置が13であっても、「R175H」が、配列番号110中に下線で示すアルギニンの、ヒスチジンとの置換を指す。以下、R175H変異を有するヒトp53アミノ酸配列は「R175H」又は「p53R175H」と称される。以下、Y220C変異を有するヒトp53アミノ酸配列は「Y220C」又は「p53Y220C」と称される。本明細書で用いられる場合、「変異p53」は、ヒトp53R175H又はヒトp53Y220Cを指す。
【0035】
P53には、9の既知のスプライスバリアントがある。本明細書に記載のp53変異は、9のp53スプライスバリアント全てに亘って保存されている。9のp53スプライスバリアントのアラインメントを
図8に示す。従って、本発明のTCRは、9のp53スプライスバリアントのいずれかによってコードされる、本明細書に記載の任意の変異p53アミノ酸配列に対して抗原特異性を有し得る。位置は配列番号1によって定義される通りであるため、p53の特定のスプライスバリアントのアミノ酸配列の実際の位置は、配列番号1の対応する位置に相対的に定義され、及び配列番号1によって定義される位置は、特定のスプライスバリアント中における実際の位置とは異なり得る。従って、例えば、変異は、配列番号1の、393アミノ酸の配列の表示された位置に対応する、p53の特定のスプライスバリアントのアミノ酸配列中におけるアミノ酸残基の置換を指し、スプライスバリアント中における実際の位置は異なり得るとの理解である。
【0036】
本発明の一実施形態においては、TCRは、配列番号1によって定義される通り、175位に変異を有するヒトp53に対して抗原特異性を有する。175位でのp53変異は、任意のミスセンス変異であり得る。従って、175位での変異は、175位に存在する天然(WT)アルギニン残基の、アルギニン以外の任意のアミノ酸残基との置換であり得る。本発明の一実施形態においては、TCRは、R175H変異を有するヒトp53に対して抗原特異性を有する。例えば、本発明のTCRは、EVVRHCPHHER(配列番号2)、HMTEVVRHC(配列番号96)、KQSQHMTEVVRHCPH(配列番号100)、QSQHMTEVVRHCPHH(配列番号101)、SQHMTEVVRHCPHHE(配列番号102)、QHMTEVVRHCPHHER(配列番号103)、HMTEVVRHCPHHERC(配列番号104)、MTEVVRHCPHHERCS(配列番号105)、TEVVRHCPHHERCSD(配列番号106)、EVVRHCPHHERCSDS(配列番号107)、VVRHCPHHERCSDSD(配列番号108)、VRHCPHHERCSDSDG(配列番号109)、YKQSQHMTEVVRHCPHHERCSDSDG(配列番号111)から成る群から選択される1以上の変異p53アミノ酸配列に対して抗原特異性を有し得る。
【0037】
本発明の一実施形態においては、TCRは、配列番号1によって定義される通り、220位に変異を有するヒトp53に対する抗原特異性を有する。220位におけるp53変異は、任意のミスセンス変異であり得る。従って、220位における変異は、220位に存在する天然(WT)チロシン残基の、チロシン以外の任意のアミノ酸残基との置換であり得る。本発明の一実施形態においては、TCRは、Y220C変異を有するヒトp53に対して抗原特異性を有する。例えば、本発明のTCRは、
【0038】
【0039】
の変異p53アミノ酸配列に対して抗原特異性を有し得る。
【0040】
本発明の実施形態においては、本発明のTCRは、HLA(ヒト白血球抗原)分子依存的に変異p53を認識することができ得る。「HLA分子依存的に」とは、本明細書で用いるとき、TCRが、該TCRを単離した患者で発現するHLA分子の枠の中で、変異p53に結合したときに免疫応答を惹起することを意味する。本発明のTCRは、適用可能なHLA分子によって提示された変異p53を認識することができ得、変異p53に加えてHLA分子にも結合し得る。
【0041】
本発明の一実施形態においては、本発明のTCRは、HLAクラスII分子によって提示されるR175Hを認識することができる。これに関して、TCRは、HLAクラスII分子の関係でのR175Hへの結合に際して、免疫応答を誘発し得る。本発明のTCRは、HLAクラスII分子により提示されるR175Hを認識することができ、R175Hに加えてHLAクラスII分子に結合し得る。
【0042】
本発明の一実施形態においては、HLAクラスII分子は、HLA-DRヘテロ二量体である。HLA-DRヘテロ二量体は、α鎖及びβ鎖を含む細胞表面受容体である。HLA-DRα鎖はHLA-DRA遺伝子によりコードされる。一実施形態においては、HLAクラスII分子のアルファ鎖は、HLA-DRA1*01:01:01対立遺伝子により発現する。HLA-DRβ鎖は、HLA-DRB1遺伝子、HLA-DRB3遺伝子、HLA-DRB4遺伝子、又はHLA-DRB5遺伝子によってコードされる。HLA-DRB1遺伝子によってコードされる分子の例としては、HLA-DR1、HLA-DR2、HLA-DR3、HLA-DR4、HLA-DR5、HLA-DR6、HLA-DR7、HLA-DR8、HLA-DR9、HLA-DR10、HLA-DR11、HLA-DR12、HLA-DR13、HLA-DR14、HLA-DR15、HLA-DR16、及びHLA-DR17が挙げられ得るが、これらに限定されない。HLA-DRB3遺伝子はHLA-DR52をコードする。HLA-DRB4遺伝子はHLA-DR53をコードする。HLA-DRB5遺伝子はHLA-DR51をコードする。本発明の一実施形態においては、HLAクラスII分子は、HLA-DRB1:HLA-DRAヘテロ二量体である。HLAクラスII分子のベータ鎖は、HLA-DRB1*13:01、HLA-DRB1*13:02、HLA-DRB1*13:03、HLA-DRB1*13:04、HLA-DRB1*13:05、HLA-DRB1*13:06、HLA-DRB1*13:07、HLA-DRB1*13:08、HLA-DRB1*13:09、又はHLA-DRB1*13:10対立遺伝子によって発現し得る。特に好ましい実施形態においては、HLAクラスII分子のベータ鎖は、HLA-DRB1*13:01対立遺伝子によって発現する。
【0043】
本発明の一実施形態においては、本発明のTCRのうちの1は、HLAクラスI分子によって提示されるY220Cを認識することができる。これに関して、TCRは、HLAクラスI分子の関係でのY220Cへの結合に際して、免疫応答を誘発し得る。本発明のTCRは、HLAクラスI分子により提示されるY220Cを認識することができ、Y220Cに加えてHLAクラスI分子に結合し得る。
【0044】
本発明の一実施形態においては、HLAクラスI分子はHLA-A分子である。HLA-A分子は、α鎖及びβ2ミクログロブリンのヘテロ二量体である。HLA-Aα鎖はHLA-A遺伝子によってコードされ得る。β2ミクログロブリンは、アルファ鎖のアルファ1、アルファ2及びアルファ3ドメインに非共有結合して、HLA-A複合体を構築する。HLA-A分子は任意のHLA-A分子であり得る。本発明の一実施形態においては、HLAクラスI分子はHLA-A2分子である。HLA-A2分子は、任意のHLA-A2分子であり得る。HLA-A2分子の例としては、HLA-A*02:01、HLA-A*02:02、HLA-A*02:03、HLA-A*02:05、HLA-A*02:06、HLA-A*02:07、又はHLA-A*02:11が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、HLAクラスI分子は、HLA-A*02:01分子である。
【0045】
養子細胞移入に使用される細胞で発現した場合を含む、本発明のTCRは、多くの利点のいずれか1以上を提供し得る。変異p53は、がん細胞で発現し、正常非がん細胞では発現しない。特定の理論又は機序に縛られるものではないが、本発明のTCRは、有利には、例えば毒性を最小化又は排除することによって、正常非がん細胞の破壊を最小化又は排除すると同時に、がん細胞の破壊を目的とし、それによって、低減すると考えられる。更に、本発明のTCRは、有利には、例えば化学療法、外科手術、又は放射線照射等の他の種類の治療には応答しない変異p53陽性がんを成功裏に治療又は予防することができる。更に、本発明のTCRは、変異p53を高い結合活性で(highly avid)認識することができ、これによって、操作されていない腫瘍細胞(例えば、インターフェロン(IFN)-γで処理されていない、変異p53及び適用可能なHLA分子の一方又は両方をコードしているベクターをトランスフェクションしていない、p53変異を有するp53ペプチドをパルスしていない、又はこれらの組み合わせの腫瘍細胞)を認識する能力が付与され得る。全ての腫瘍のおよそ半分はp53に変異を有し、そのうちの約半分はミスセンス変異である。R175H変異は、すべてのがんの約4.5%で発現しており、HLA-DRB1*13:01対立遺伝子は米国人の集団の約15%で発現している。Y220C変異は、すべてのがんの約1.5%で発生し、HLA-A*02:01対立遺伝子は、米国人の集団の約40%~約50%で発現している。R175H及びY220C変異は多くのがん組織学において生じており、このことは、多様な群の患者が本発明のTCRから利益を得る可能性があることを示唆している。従って、本発明のTCRは、免疫療法による治療の適格性を有する可能性のある患者の数を増加させることができる。
【0046】
語句「抗原特異性」とは、本明細書で用いるとき、TCRが、高い結合活性で変異p53に特異的に結合し、免疫学的に認識できることを意味する。例えば、(a)低濃度の変異p53ペプチド(例えば、約0.05ng/mL~約5ng/mL、0.05ng/mL、0.1ng/mL、0.5ng/mL、1ng/mL、5ng/mL、又は上記値のうちのいずれか2つによって規定される範囲)をパルスした抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞又は(b)標的細胞が変異p53を発現するように変異p53をコードしているヌクレオチド配列を導入した抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞と共培養した際に、TCRを発現している約1×104~約1×105個のT細胞が少なくとも約200pg/mL以上(例えば、200pg/mL以上、300pg/mL以上、400pg/mL以上、500pg/mL以上、600pg/mL以上、700pg/mL以上、1000pg/mL以上、5,000pg/mL以上、7,000pg/mL以上、10,000pg/mL以上、20,000pg/mL以上、又は上記値のうちのいずれか2つによって規定される範囲)のIFN-γを分泌した場合、該TCRが変異p53に対して「抗原特異性」を有するとみなしてよい。本発明のTCRを発現している細胞は、より高濃度の変異p53ペプチドをパルスした抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞と共培養した際にもIFN-γを分泌することができる。
【0047】
或いは又は更に、ネガティブコントロールで発現するIFN-γの量と比較して、(a)低濃度の変異p53ペプチドをパルスした抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞又は(b)標的細胞が変異p53を発現するように変異p53をコードしているヌクレオチド配列を導入した抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞と共培養した際に、TCRを発現しているT細胞が少なくとも2倍のIFN-γを分泌した場合、該TCRが変異p53に対して「抗原特異性」を有するとみなしてよい。ネガティブコントロールは、例えば、(i)(a)同濃度の関係性の無いペプチド(例えば、変異p53ペプチドとは異なる配列を有する幾つかの他のペプチド)をパルスした抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞若しくは(b)標的細胞が関係性の無いペプチドを発現するように該関係性の無いペプチドをコードしているヌクレオチド配列を導入した抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞と共培養した、該TCRを発現しているT細胞、又は(ii)(a)同濃度の変異p53ペプチドをパルスした抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞若しくは(b)標的細胞が変異p53を発現するように変異p53をコードしているヌクレオチド配列を導入した抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞と共培養した、形質導入されていないT細胞(例えば、該TCRを発現しないPBMC由来)であってよい。IFN-γ分泌は、当技術分野において公知の方法、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって測定することができる。
【0048】
或いは又は更に、IFN-γを分泌するネガティブコントロールT細胞の数と比較して、(a)低濃度の変異p53ペプチドをパルスした抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞又は(b)標的細胞が変異p53を発現するように変異p53をコードしているヌクレオチド配列を導入した抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞と共培養した際に、IFN-γを分泌するTCRを発現しているT細胞の数が少なくとも2倍であった場合、該TCRが変異p53に対して「抗原特異性」を有するとみなしてよい。ペプチドの濃度及びネガティブコントロールは、本発明の他の態様に関して本明細書に記載の通りであってよい。IFN-γを分泌する細胞の数は、当技術分野において公知の方法、例えば、酵素免疫スポット(ELISPOT)アッセイによって測定することができる。
【0049】
或いは又は更に、同じ標的細胞と共培養したネガティブコントロールT細胞についてELISPOTによって検出されたスポット数と比較して、(a)低濃度の変異p53ペプチドをパルスした抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞又は(b)標的細胞が変異p53を発現するように変異p53をコードしているヌクレオチド配列を導入した抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞と共培養した際に、TCRを発現しているT細胞についてのELISPOTによって少なくとも2倍のスポットが検出された場合、該TCRが変異p53に対して「抗原特異性」を有するとみなしてよい。ペプチドの濃度及びネガティブコントロールは、本発明の他の態様に関して本明細書に記載の通りであってよい。
【0050】
或いは又は更に、(a)低濃度の変異p53ペプチドをパルスした抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞又は(b)標的細胞が変異p53を発現するように変異p53をコードしているヌクレオチド配列を導入した抗原陰性適用可能なHLA分子陽性の標的細胞と共培養した際に、TCRを発現しているT細胞についてのELISPOTによって約50個を超えるスポットが検出された場合、該TCRが変異p53に対して「抗原特異性」を有するとみなしてよい。ペプチドの濃度は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載の通りであってよい。
【0051】
或いは又は更に、変異p53を発現している標的細胞で刺激した後に例えばフローサイトメトリーによって測定したとき、TCRを発現しているT細胞が4-1BB及びOX40の一方又は両方の発現を上方制御した場合、該TCRが変異p53に対して「抗原特異性」を有するとみなしてよい。
【0052】
本発明の一実施形態は、例えば、TCRのアルファ(α)鎖、TCRのベータ(β)鎖、TCRのガンマ(γ)鎖、TCRのデルタ(δ)鎖、又はこれらの組み合わせ等の2本のポリペプチド(即ち、ポリペプチド鎖)を含むTCRを提供する。本発明のTCRのポリペプチドは、TCRが変異p53に対して抗原特異性を有する限り、任意のアミノ酸配列を含んでいてよい。
【0053】
本発明の実施形態においては、TCRは、TCRの相補性決定領域(CDR)1、CDR2、及びCDR3を含む可変領域をそれぞれ含む、2本のポリペプチド鎖を含む。本発明の実施形態においては、TCRは、α鎖のCDR1(CDR1α)、α鎖のCDR2(CDR2α)、及びα鎖のCDR3(CDR3α)を含む第1のポリペプチド鎖と、β鎖のCDR1(CDR1β)、β鎖のCDR2(CDR2β)、及びβ鎖のCDR3(CDR3β)を含む第2のポリペプチド鎖とを含む。本発明の実施形態においては、TCRは、(1)配列番号3~8の全て;(2)配列番号14~19の全て;(3)配列番号25~30の全て;(4)配列番号36~41の全て;(5)配列番号47~52の全て;(6)配列番号58~63の全て;(7)配列番号69~74の全て;(8)配列番号80~85の全て;又は(9)配列番号131~136の全てのアミノ酸配列を含む。この段落における上述の9のアミノ酸配列のコレクションのそれぞれ1つは、変異ヒトp53に対して抗原特異性を有する9の異なるTCRのそれぞれの6のCDR領域を示す。各コレクションにおける6のアミノ酸配列は、それぞれ、CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β、及びCDR3βに対応する。
【0054】
本発明の実施形態においては、TCRは、合わせて上記CDRのコレクションのうちの1つを含む、α鎖可変領域のアミノ酸配列及びβ鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。これに関して、該TCRは、例えば、配列番号9、10、20、21、31、32、42、43、53、54、64、65、75、76、86、87、137、138、142-159、178、181、184、187、190、193、196、199、202、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、及び226のいずれか1のアミノ酸配列を含む。例えば、該TCRは、(1)配列番号9及び10の両方;(2)配列番号20及び21の両方;(3)配列番号31及び32の両方;(4)配列番号42及び43の両方;(5)配列番号53及び54の両方;(6)配列番号64及び65の両方;(7)配列番号75及び76の両方;(8)配列番号86及び87の両方;(9)配列番号137及び138の両方;(10)配列番号142及び143の両方;(11)配列番号144及び145の両方;(12)配列番号146及び147の両方;(13)配列番号148及び149の両方;(14)配列番号150及び151の両方;(15)配列番号152及び153の両方;(16)配列番号154及び155の両方;(17)配列番号156及び157の両方;(18)配列番号159及び158の両方;(19)配列番号178及び10の両方;(20)配列番号181及び21の両方;(21)配列番号184及び32の両方;(22)配列番号187及び43の両方;(23)配列番号190及び54の両方;(24)配列番号193及び65の両方;(25)配列番号196及び76の両方;(26)配列番号199及び87の両方;(27)配列番号137及び202の両方;(28)配列番号9及び205の両方;(29)配列番号20及び207の両方;(30)配列番号31及び209の両方;(31)配列番号42及び211の両方;(32)配列番号53及び213の両方;(33)配列番号64及び215の両方;(34)配列番号75及び217の両方;(35)配列番号86及び219の両方;(36)配列番号137及び221の両方;(37)配列番号223及び202の両方;(38)配列番号223及び221の両方;(39)配列番号20及び226の両方;又は(40)配列番号181及び226の両方のアミノ酸配列を含み得る。この段落における上述の47のアミノ酸配列のコレクションのそれぞれ1つは、変異ヒトp53に対して抗原特異性を有する47の異なるTCRのそれぞれの2の可変領域を示す。各コレクションにおける2のアミノ酸配列は、それぞれ、TCRのα鎖の可変領域及びβ鎖の可変領域に対応する。
【0055】
本発明のTCRは、定常領域を更に含み得る。定常領域は、例えばヒト又はマウス等の任意の好適な種に由来していてよい。本発明の実施形態においては、TCRは、マウスの定常領域を更に含む。本明細書で用いるとき、用語「マウス」又は「ヒト」は、本明細書に記載のTCR又はTCRの任意の構成要素(例えば、相補性決定領域(CDR)、可変領域、定常領域、アルファ鎖、及び/又はベータ鎖)に言及するとき、それぞれマウス又はヒト由来のTCR(又はその構成要素)、即ち、それぞれマウスT細胞又はヒトT細胞を起源とするか又は該細胞によってかつて発現されたTCR(又はその構成要素)を意味する。本発明の実施形態においては、TCRは、マウスα鎖定常領域及びマウスβ鎖定常領域を含み得る。マウスα鎖定常領域は、改変されていてもよく、改変されていなくてもよい。改変マウスα鎖定常領域は、例えば米国特許第10,174,098号に記載の通り、例えば、システイン置換されていてもよく、LVL改変されていてもよく、又はシステイン置換及びLVL改変の両方が行われていてもよい。マウスβ鎖定常領域は、改変されていてもよく、改変されていなくてもよい。改変マウスβ鎖定常領域は、例えば米国特許第10,174,098号に記載の通り、例えば、システイン置換されていてよい。本発明の実施形態においては、TCRは、配列番号91又は92のアミノ酸配列を含むシステイン置換LVL改変マウスα鎖定常領域を含む。本発明の実施形態においては、TCRは、配列番号93のアミノ酸配列を含むシステイン置換マウスβ鎖定常領域を含む。
【0056】
本発明の実施形態においては、本発明のTCRは、TCRのα鎖及びTCRのβ鎖を含み得る。TCRのα鎖は、α鎖の可変領域及びα鎖の定常領域を含み得る。この種のα鎖は、TCRの任意のβ鎖と対合し得る。β鎖は、β鎖の可変領域及びβ鎖の定常領域を含み得る。
【0057】
いくつかの実施形態においては、本明細書に開示されるα鎖及び/又はβ鎖のいずれかのアミノ酸配列は、C末端にアミノ酸配列RAKR(配列番号230)を更に含む。
【0058】
本発明の実施形態においては、TCRは、配列番号11、12、22、23、33、34、44、45、55、56、66、67、77、78、88、89、139、140、160-177、179、182、185、188、191、194、197、200、203、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、及び227のいずれか1のアミノ酸配列を含む。例えば、TCRは、(1)配列番号11及び12の両方;(2)配列番号22及び23の両方;(3)配列番号33及び34の両方;(4)配列番号44及び45の両方;(5)配列番号55及び56の両方;(6)配列番号66及び67の両方;(7)配列番号77及び78の両方;(8)配列番号88及び89の両方;(9)配列番号139及び140の両方;(10)配列番号160及び161の両方;(11)配列番号162及び163の両方;(12)配列番号164及び165の両方;(13)配列番号166及び167の両方;(14)配列番号168及び169の両方;(15)配列番号170及び171の両方;(16)配列番号172及び173の両方;(17)配列番号174及び175の両方;(18)配列番号176及び177の両方;(19)配列番号179及び12の両方;(20)配列番号182及び23の両方;(21)配列番号185及び34の両方;(22)配列番号188及び45の両方;(23)配列番号191及び56の両方;(24)配列番号194及び67の両方;(25)配列番号197及び78の両方;(26)配列番号200及び89の両方;(27)配列番号139及び203の両方;(28)配列番号11及び206の両方;(29)配列番号22及び208の両方;(30)配列番号33及び210の両方;(31)配列番号44及び212の両方;(32)配列番号55及び214の両方;(33)配列番号66及び216の両方;(34)配列番号77及び218の両方;(35)配列番号88及び220の両方;(36)配列番号139及び222の両方;(37)配列番号224及び203の両方;(38)配列番号224及び222の両方;(39)配列番号22及び227の両方;又は(40)配列番号182及び227の両方のアミノ酸配列を含み得る。この段落における上述のアミノ酸配列のコレクションのそれぞれ1つは、変異ヒトp53に対して抗原特異性を有する、異なるTCRのそれぞれのα鎖及びβ鎖を示す。各コレクションにおける2のアミノ酸配列は、それぞれ、TCRのα鎖及びβ鎖に対応する。
【0059】
本明細書に記載の本発明のTCRの機能的バリアントは、本発明の範囲に含まれる。用語「機能的バリアント」とは、本明細書で用いるとき、親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質に対して実質的な又は著しい配列の同一性又は類似性を有するTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を指し、該機能的バリアントは、該バリアントがそのバリアントであるTCR、ポリペプチド、又はタンパク質の生物活性を保持している。機能的バリアントは、例えば、親のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質と同様の程度、同一程度、又はより高程度、親TCRが抗原特異性を有するか又は親のポリペプチド若しくはタンパク質が特異的に結合する変異p53に特異的に結合する能力を保持している、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質(親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質)のバリアントを包含する。親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質に関連して、機能的バリアントは、例えば、それぞれ親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質に対してアミノ酸配列が少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又はそれ以上同一であってよい。
【0060】
機能的バリアントは、例えば、少なくとも1の保存的アミノ酸置換を有する親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。保存的アミノ酸置換は、当技術分野において公知であり、特定の物理的及び/又は化学的特性を有するあるアミノ酸が、同じ化学的又は物理的特性を有する別のアミノ酸に交換されるアミノ酸置換を含む。例えば、保存的アミノ酸置換は、酸性アミノ酸の別の酸性アミノ酸(例えば、Asp又はGlu)による置換、非極性側鎖を有するアミノ酸の、別の非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Val等)による置換、塩基性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸(Lys、Arg等)による置換、極性側鎖を有するアミノ酸の、別の極性側鎖を有するアミノ酸(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyr等)による置換等であってよい。
【0061】
或いは又は更に、機能的バリアントは、少なくとも1の非保存的アミノ酸置換を有する親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換が、機能的バリアントの生物活性に干渉もせず、阻害もしないことが好ましい。好ましくは、非保存的アミノ酸置換は機能的バリアントの生物活性を増強し、その結果、機能的バリアントの生物活性が、親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質と比べて増大する。
【0062】
TCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、本明細書に記載の指定のアミノ酸配列(複数可)から本質的になっていてよく、その結果、該TCR、ポリペプチド、又はタンパク質の他の構成要素、例えば、他のアミノ酸が、該TCR、ポリペプチド、又はタンパク質の生物活性を実質的に変化させることはない。
【0063】
また、本明細書に記載のTCRのいずれかの機能的部分を含むポリペプチドが本発明によって提供される。用語「ポリペプチド」は、本明細書で用いるとき、オリゴペプチドを含み、そして、1以上のペプチド結合によって連結された一本鎖のアミノ酸を指す。
【0064】
本発明のポリペプチドに関して、機能的部分は、変異p53に特異的に結合する限り、該機能的部分がその一部であるTCRの連続アミノ酸を含む任意の部分であってよい。用語「機能的部分」は、TCRに関連して使用されるとき、本発明のTCRの任意の部分又は断片であって、該部分又は断片がその一部であるTCR(親TCR)の生物活性を保持している部分又は断片を指す。機能的部分は、例えば、親TCRと同様の程度、同一程度、又はより高程度、(例えば、適用可能なHLA分子依存的に)変異p53に特異的に結合するか又はがんを検出、治療、若しくは予防する能力を保持しているTCRの部分を包含する。親TCRに関連して、機能的部分は、例えば、親TCRの約10%、約25%、約30%、約50%、約68%、約80%、約90%、約95%、又はそれ以上を構成し得る。
【0065】
機能的部分は、該部分のアミノ若しくはカルボキシ末端又は両末端に、親TCRのアミノ酸配列にはみられない追加のアミノ酸を含んでいてもよい。望ましくは、追加のアミノ酸は、例えば、変異p53に特異的に結合する、及び/又はがんを検出する、がんを治療若しくは予防する能力を有する等の機能的部分の生物学的機能に干渉しない。より望ましくは、追加のアミノ酸は、親TCRの生物活性と比較して生物活性を増強する。
【0066】
ポリペプチドは、本発明のTCRのα鎖及びβ鎖のいずれか又は両方の機能的部分、例えば、本発明のTCRのα鎖及び/又はβ鎖の可変領域(複数可)のCDR1、CDR2、及びCDR3のうちの1以上を含む機能的部分を含み得る。本発明の実施形態においては、該ポリペプチドは:(1)配列番号3~8の全て;(2)配列番号14~19の全て;(3)配列番号25~30の全て;(4)配列番号36~41の全て;(5)配列番号47~52の全て;(6)配列番号58~63の全て;(7)配列番号69~74の全て;(8)配列番号80~85の全て;又は(9)配列番号131~136の全てのアミノ酸配列を含む機能的部分を含み得る。
【0067】
本発明の実施形態においては、本発明のポリペプチドは、例えば、上記CDR領域の組み合わせを含む本発明のTCRの可変領域を含み得る。これに関して、該ポリペプチドは、例えば:(1)配列番号9及び10の両方;(2)配列番号20及び21の両方;(3)配列番号31及び32の両方;(4)配列番号42及び43の両方;(5)配列番号53及び54の両方;(6)配列番号64及び65の両方;(7)配列番号75及び76の両方;(8)配列番号86及び87の両方;(9)配列番号137及び138の両方;(10)配列番号142及び143の両方;(11)配列番号144及び145の両方;(12)配列番号146及び147の両方;(13)配列番号148及び149の両方;(14)配列番号150及び151の両方;(15)配列番号152及び153の両方;(16)配列番号154及び155の両方;(17)配列番号156及び157の両方;(18)配列番号159及び158の両方;(19)配列番号178及び10の両方;(20)配列番号181及び21の両方;(21)配列番号184及び32の両方;(22)配列番号187及び43の両方;(23)配列番号190及び54の両方;(24)配列番号193及び65の両方;(25)配列番号196及び76の両方;(26)配列番号199及び87の両方;(27)配列番号137及び202の両方;(28)配列番号9及び205の両方;(29)配列番号20及び207の両方;(30)配列番号31及び209の両方;(31)配列番号42及び211の両方;(32)配列番号53及び213の両方;(33)配列番号64及び215の両方;(34)配列番号75及び217の両方;(35)配列番号86及び219の両方;(36)配列番号137及び221の両方;(37)配列番号223及び202の両方;(38)配列番号223及び221の両方;(39)配列番号20及び226の両方;又は(40)配列番号181及び226の両方のアミノ酸配列を含み得る。
【0068】
本発明の実施形態においては、本発明のポリペプチドは、上記本発明のTCRの定常領域を更に含み得る。これに関して、該ポリペプチドは、例えば、(i)配列番号91~93のうちの1又は(ii)配列番号93及び配列番号91及び92のうちの1のアミノ酸配列を含み得る。
【0069】
本発明の実施形態においては、本発明のポリペプチドは、本発明のTCRのα鎖及びβ鎖を含み得る。これに関して、該ポリペプチドは、例えば:(1)配列番号11及び12の両方;(2)配列番号22及び23の両方;(3)配列番号33及び34の両方;(4)配列番号44及び45の両方;(5)配列番号55及び56の両方;(6)配列番号66及び67の両方;(7)配列番号77及び78の両方;(8)配列番号88及び89の両方;(9)配列番号139及び140の両方;(10)配列番号160及び161の両方;(11)配列番号162及び163の両方;(12)配列番号164及び165の両方;(13)配列番号166及び167の両方;(14)配列番号168及び169の両方;(15)配列番号170及び171の両方;(16)配列番号172及び173の両方;(17)配列番号174及び175の両方;(18)配列番号176及び177の両方;(19)配列番号179及び12の両方;(20)配列番号182及び23の両方;(21)配列番号185及び34の両方;(22)配列番号188及び45の両方;(23)配列番号191及び56の両方;(24)配列番号194及び67の両方;(25)配列番号197及び78の両方;(26)配列番号200及び89の両方;(27)配列番号139及び203の両方;(28)配列番号11及び206の両方;(29)配列番号22及び208の両方;(30)配列番号33及び210の両方;(31)配列番号44及び212の両方;(32)配列番号55及び214の両方;(33)配列番号66及び216の両方;(34)配列番号77及び218の両方;(35)配列番号88及び220の両方;(36)配列番号139及び222の両方;(37)配列番号224及び203の両方;(38)配列番号224及び222の両方;(39)配列番号22及び227の両方;又は(40)配列番号182及び227の両方のアミノ酸配列を含み得る。
【0070】
本発明は、更に、本明細書に記載のポリペプチドのうちの少なくとも1つを含むタンパク質を提供する。「タンパク質」とは、1本以上のポリペプチド鎖を含む分子を意味する。実施形態においては、本発明のタンパク質は:(1)配列番号3~5の全てのアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号6~8の全てのアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(2)配列番号14~16の全てのアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号17~19の全てのアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(3)配列番号25~27の全てのアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号28~30の全てのアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(4)配列番号36~38の全てのアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号39~41の全てのアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(5)配列番号47~49の全てのアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号50~52の全てのアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(6)配列番号58~60の全てのアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号61~63の全てのアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(7)配列番号69~71の全てのアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号72~74の全てのアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(8)配列番号80~82の全てのアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号83~85の全てのアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;又は(9)配列番号131~133の全てのアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号134~136の全てのアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖を含み得る。
【0071】
本発明の実施形態においては、該タンパク質は:(1)配列番号9のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号10のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(2)配列番号20のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号21のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(3)配列番号31のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号32のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(4)配列番号42のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号43のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(5)配列番号53のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号54のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(6)配列番号64のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号65のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(7)配列番号75のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号76のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(8)配列番号86のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号87のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(9)配列番号137のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号138のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(10)配列番号142のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号143のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(11)配列番号144のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号145のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(12)配列番号146のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号147のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(13)配列番号148のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号149のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(14)配列番号150のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号151のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(15)配列番号152のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号153のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(16)配列番号154のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号155のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(17)配列番号156のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号157のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(18)配列番号158のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号159のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(19)配列番号178のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号10のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(20)配列番号181のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号21のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(21)配列番号184のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号32のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(22)配列番号187のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号43のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(23)配列番号190のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号54のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(24)配列番号193のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号65のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(25)配列番号196のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号76のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(26)配列番号199のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号87のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(27)配列番号137のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号202のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(28)配列番号9のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号205のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(29)配列番号20のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号207のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(30)配列番号31のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号209のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(31)配列番号42のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号211のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(32)配列番号53のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号213のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(33)配列番号64のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号215のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(34)配列番号75のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号217のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(35)配列番号86のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号219のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(36)配列番号137のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号221のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(37)配列番号223のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号202のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(38)配列番号223のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号221のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(39)配列番号20のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号226のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;又は(40)配列番号181のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号226のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖を含む。
【0072】
本発明の実施形態においては、該タンパク質は:(1)配列番号11のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号12のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(2)配列番号22のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号23のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(3)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号34のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(4)配列番号44のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号45のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(5)配列番号55のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号56のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(6)配列番号66のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号67のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(7)配列番号77のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号78のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(8)配列番号88のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号89のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(9)配列番号139のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号140のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(10)配列番号160のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号161のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(11)配列番号162のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号163のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(12)配列番号164のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号165のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(13)配列番号166のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号167のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(14)配列番号168のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号169のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(15)配列番号170のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号171のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(16)配列番号172のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号173のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(17)配列番号174のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号175のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(18)配列番号176のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号177のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(19)配列番号179のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号12のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(20)配列番号182のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号23のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(21)配列番号185のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号34のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(22)配列番号188のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号45のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(23)配列番号191のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号56のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(24)配列番号194のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号67のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(25)配列番号197のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号78のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(26)配列番号200のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号89のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(27)配列番号139のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号203のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(28)配列番号11のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号206のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(29)配列番号22のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号208のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(30)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号210のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(31)配列番号44のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号212のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(32)配列番号55のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号214のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(33)配列番号66のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号216のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(34)配列番号77のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号218のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(35)配列番号88のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号220のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(36)配列番号139のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号222のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(37)配列番号224のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号203のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(38)配列番号224のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号222のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(39)配列番号22のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号227のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;又は(40)配列番号182のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号227のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖を含む。
【0073】
本発明のタンパク質は、TCRであってよい。或いは、該タンパク質の第1の及び/又は第2のポリペプチド鎖(複数可)が、他のアミノ酸配列、例えば免疫グロブリン又はその一部分をコードしているアミノ酸配列を更に含む場合、本発明のタンパク質は、融合タンパク質であってもよい。これに関して、本発明は、また、少なくとも1の他のポリペプチドと共に、本明細書に記載の本発明のポリペプチドのうちの少なくとも1つを含む融合タンパク質を提供する。他のポリペプチドは、融合タンパク質の別々のタンパク質として存在してもよく、又は本明細書に記載の本発明のポリペプチドのうちの1つとインフレームで(タンデムに)発現するポリペプチドとして存在してもよい。他のポリペプチドは、免疫グロブリン、CD3、CD4、CD8、MHC分子、CD1分子、例えば、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d等が挙げられるがこれらに限定されない、任意のペプチド性若しくはタンパク質性の分子、又はこれらの一部分をコードしていてよい。
【0074】
融合タンパク質は、1コピー以上の本発明のポリペプチド及び/又は1コピー以上の他のポリペプチドを含み得る。例えば、融合タンパク質は、1、2、3、4、5、又はそれ以上のコピーの本発明のポリペプチド及び/又は他のポリペプチドを含み得る。融合タンパク質を作製する好適な方法は、当技術分野において公知であり、例えば、組み換え法が挙げられる。
【0075】
本発明の幾つかの実施形態においては、本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、α鎖及びβ鎖を連結するリンカーペプチドを含む単一のタンパク質として発現し得る。これに関して、本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、リンカーペプチドを更に含み得る。リンカーペプチドは、有利には、宿主細胞における組み換え体のTCR、ポリペプチド、及び/又はタンパク質の発現を促進し得る。リンカーペプチドは、任意の好適なアミノ酸配列を含み得る。例えば、リンカーペプチドは、配列番号94のアミノ酸配列を含み得る。リンカーペプチドを含むコンストラクトが宿主細胞によって発現されたら、リンカーペプチドを切断してもよく、その結果、分離されたα鎖及びβ鎖が得られる。本発明の実施形態においては、TCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、全長α鎖、全長β鎖、及びα鎖とβ鎖との間に位置するリンカーペプチドを含むアミノ酸配列を含み得る。
【0076】
いくつかの実施形態においては、本明細書に開示されるTCR、ポリペプチド又はタンパク質は、シグナルペプチドを含む、本明細書に開示される通りのα鎖及び/又はβ鎖を含む。いくつかの実施形態においては、本明細書に開示されるα鎖及び/又はβ鎖のいずれかのシグナルペプチドの配列は、2位の野生型残基と置換されたアラニン又はヒスチジン残基を含む。
【0077】
いくつかの実施形態においては、本明細書に開示されるTCR、ポリペプチド又はタンパク質は、シグナルペプチドを欠く、本明細書に開示される通りのα鎖及び/又はβ鎖の成熟型を含む。
【0078】
本発明のタンパク質は、本明細書に記載の本発明のポリペプチドのうちの少なくとも1つを含む、組み換え抗体又はその抗原結合部分であってよい。本明細書で用いるとき、「組み換え抗体」とは、本発明のポリペプチドのうちの少なくとも1つ、及び抗体のポリペプチド鎖又はその抗原結合部分を含む組み換え(例えば、遺伝的に操作された)タンパク質を指す。抗体のポリペプチド又はその抗原結合部分は、抗体の重鎖、軽鎖、重鎖若しくは軽鎖の可変領域若しくは定常領域、単鎖可変領域(scFv)、又はFc、Fab、若しくはF(ab)2’の断片であってよい。抗体のポリペプチド鎖又はその抗原結合部分は、組み換え抗体の別々のポリペプチドとして存在してよい。或いは、抗体のポリペプチド鎖又はその抗原結合部分は、本発明のポリペプチドとインフレームで(タンデムに)発現するポリペプチドとして存在してもよい。抗体のポリペプチド又はその抗原結合部分は、本明細書に記載の抗体及び抗体断片のいずれかを含む、任意の抗体又は任意の抗体断片のポリペプチドであってよい。
【0079】
本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、その生物活性、例えば、変異p53に特異的に結合する能力、哺乳動物におけるがんを検出する能力、又は哺乳動物におけるがんを治療若しくは予防する能力等を保持している限り、任意の長さであってよい、即ち、任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、ポリペプチドは、約50~約5000アミノ酸長の範囲、例えば、50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000又はそれ以上のアミノ酸長であってよい。これに関して、本発明のポリペプチドは、オリゴペプチドも含む。
【0080】
本発明の本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、1以上の天然に存在するアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含んでいてもよい。このような合成アミノ酸は、当技術分野において公知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-及びトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリンβ-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リシン、N’,N’-ジベンジル-リシン、6-ヒドロキシリシン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、及びα-tert-ブチルグリシンが挙げられる。
【0081】
本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質を、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、例えばジスルフィド架橋を介して環化、又は酸付加塩に変換、及び/又は任意で二量体化若しくは多量体化、又はコンジュゲートしてもよい。
【0082】
本発明のTCR、ポリペプチド、及び/又はタンパク質は、当技術分野において公知の方法、例えば、デノボ合成によって得ることができる。また、ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組み換え法を使用し、本明細書に記載の核酸を用いて組み換え的に生成することができる。例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照。或いは、例えば、Synpep(Dublin,CA),Peptide Technologies Corp.(Gaithersburg,MD)、及びMultiple Peptide Systems(San Diego,CA)等の企業が、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、及び/又はタンパク質を商業的に合成することもできる。これに関して、本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、合成であってもよく、組み換え体であってもよく、単離されていてもよく、及び/又は精製されていてもよい。
【0083】
本発明の実施形態は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のいずれかをコードしているヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。「核酸」は、本明細書で用いるとき、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、及び「核酸分子」を含み、一般的に、DNA又はRNAのポリマーを意味し、これらは、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、天然の、非天然の、又は改変されたヌクレオチドを含有していてもよく、そして、改変されていないオリゴヌクレオチドのヌクレオチド間にみられるホスホジエステルの代わりに、天然の、非天然の、又は改変されたヌクレオチド間結合、例えば、ホスホロアミデート結合又はホスホロチオエート結合を含有していてもよい。実施形態においては、核酸は、相補的DNA(cDNA)を含む。核酸は、任意の挿入、欠失、逆位、及び/又は置換を含まないことが一般に好ましい。しかし、幾つかの例では、本明細書で論じた通り、核酸が1以上の挿入、欠失、逆位、及び/又は置換を含むことが好適である場合もある。
【0084】
好ましくは、本発明の核酸は、組み換え体である。本明細書で用いるとき、用語「組み換え体」とは、(i)天然若しくは合成の核酸セグメントを生細胞で複製可能な核酸分子に連結させることによって生細胞の外部で構築される分子、又は(ii)上記(i)に記載されているものの複製によって得られる分子を指す。本明細書における目的のために、複製は、インビトロ複製であってもインビボ複製であってもよい。
【0085】
核酸は、当技術分野において公知の手順を用いて、化学合成及び/又は酵素ライゲーション反応に基づいて構築され得る。例えば、Green及びSambrookら、前記を参照。例えば、核酸は、天然に存在するヌクレオチド、又は分子の生物学的安定性を増大させるか若しくはハイブリダイゼーションの際に形成される二本鎖の物理的安定性を増大させるために設計された様々に修飾されたヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチド)を用いて、化学的に合成することができる。核酸を作製するために用いることができる修飾ヌクレオチドの例としては、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルキュェオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-置換アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルキュェオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キュェオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、及び2,6-ジアミノプリンが挙げられるが、これらに限定されない。或いは、本発明の核酸のうちの1以上は、Macromolecular Resources(Fort Collins,CO)及びSynthegen(Houston,TX)等の企業から購入することができる。
【0086】
本発明の実施形態においては、核酸は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のいずれかをコードしている、コドン最適化されたヌクレオチド配列を含む。特定の理論又は機序に縛られるものではないが、ヌクレオチド配列のコドン最適化は、mRNA転写物の翻訳効率を増大させると考えられる。ヌクレオチド配列のコドン最適化は、ネイティブなコドンを、同じアミノ酸をコードしているが細胞内でより容易に利用可能なtRNAによって翻訳され得る別のコドンで置換し、それによって、翻訳効率を増大させることを伴い得る。また、ヌクレオチド配列の最適化は、翻訳に干渉するmRNAの二次構造を低減し、それによって、翻訳効率を増大させることもできる。
【0087】
また、本発明は、本明細書に記載の核酸のいずれかのヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列、又は本明細書に記載の核酸のいずれかのヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0088】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列は、好ましくは、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。「高ストリンジェンシー条件」とは、ヌクレオチド配列が、非特異的ハイブリダイゼーションよりも検出可能に多い量で、標的配列(本明細書に記載の核酸のいずれかのヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシー条件は、正確な相補的配列を有するポリヌクレオチド又は幾つかの散在している不一致しか含有していないものを、該ヌクレオチド配列に一致している幾つかの小さな領域(例えば、3~10塩基)を偶然有するランダム配列と識別する条件を含む。このような相補的な小さな領域は、14~17又はそれ以上の塩基の全長相補体よりも容易に融解するので、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションによって容易に識別可能になる。比較的高ストリンジェンシー条件は、例えば、約0.02~0.1M NaCl又は等価物、約50~70℃の温度によって提供されるもの等の低塩及び/又は高温条件を含む。このような高ストリンジェンシー条件は、ヌクレオチド配列とテンプレート又は標的鎖との間の(もし存在するとしても)わずかな不一致しか許容せず、本発明のTCRのいずれかの発現を検出するのに特に好適である。一般的に、漸増量のホルムアミドを添加することによって、条件をよりストリンジェントにすることができると理解される。
【0089】
また、本発明は、本明細書に記載の核酸のいずれかと少なくとも約70%以上、例えば、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。これに関して、核酸は、本明細書に記載のヌクレオチド配列のいずれかから本質的になっていてよい。
【0090】
本発明の核酸は、組み換え発現ベクターに組み込むことができる。これに関して、本発明は、本発明の核酸のいずれかを含む組み換え発現ベクターを提供する。本発明の実施形態においては、組み換え発現ベクターは、α鎖、β鎖、及びリンカーペプチドをコードしているヌクレオチド配列を含む。
【0091】
本明細書における目的のために、用語「組み換え発現ベクター」は、コンストラクトがmRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドをコードしているヌクレオチド配列を含み、宿主細胞内で該mRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドを発現させるのに十分な条件下でベクターを該細胞と接触させたときに、該細胞に該mRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドを発現させる、遺伝的に改変されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドのコンストラクトを意味する。本発明のベクターは、全体としては天然に存在しない。しかし、ベクターの一部が天然に存在していてもよい。本発明の組み換え発現ベクターは、DNA及びRNAが挙げられるがこれらに限定されない任意の種類のヌクレオチドを含んでいてよく、該DNA及びRNAは、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、合成されても天然源から部分的に入手されてもよく、天然の、非天然の、又は改変されたヌクレオチドを含有していてもよい。組み換え発現ベクターは、天然に存在するヌクレオチド間結合、天然には存在しないヌクレオチド間結合、又は両方の種類の結合を含んでいてよい。好ましくは、天然には存在しないか又は改変されたヌクレオチド又はヌクレオチド間結合は、ベクターの転写も複製も妨げない。
【0092】
本発明の組み換え発現ベクターは、任意の好適な組み換え発現ベクターであってよく、任意の好適な宿主細胞を形質転換又はトランスフェクションするために用いることができる。好適なベクターとしては、プラスミド及びウイルス等、伝播及び増殖用、若しくは発現用、又は両方のために設計されたものが挙げられる。ベクターは、トランスポゾン/トランスポゼースシリーズ、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences)、pBluescriptシリーズ(Stratagene,LaJolla,CA)、pETシリーズ(Novagen,Madison,WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech,Uppsala,Sweden)、及びpEXシリーズ(Clontech,Palo Alto,CA)からなる群から選択され得る。λGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4、及びλNM1149等のバクテリオファージベクターを用いてもよい。植物発現ベクターの例としては、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121、及びpBIN19(Clontech)が挙げられる。動物発現ベクターの例としては、pEUK-Cl、pMAM、及びpMAMneo(Clontech)が挙げられる。好ましくは、組み換え発現ベクターは、トランスポゾンベクター又はウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクターである。
【0093】
本発明の組み換え発現ベクターは、例えば、Green及びSambrookら、前記に記載されている標準的な組み換えDNA技術を用いて調製することができる。円形又は線形である発現ベクターのコンストラクトは、原核又は真核の宿主細胞において機能する複製系を含有するように調製することができる。複製系は、例えば、ColEl、2μプラスミド、λ、SV40、ウシパピローマウイルス等に由来していてよい。
【0094】
望ましくは、組み換え発現ベクターは、制御配列、例えば、必要に応じて、そして、ベクターがDNAベースであるかRNAベースであるかを考慮して、ベクターが導入される宿主細胞の種類(例えば、細菌、真菌、植物、又は動物)に特異的な転写及び翻訳の開始及び終止のコドンを含む。
【0095】
組み換え発現ベクターは、形質転換又はトランスフェクションされた宿主細胞の選別を可能にする1以上のマーカー遺伝子を含んでいてよい。マーカー遺伝子は、殺生物剤耐性、例えば、抗生物質、重金属等に対する耐性、原栄養性を与えるための栄養要求性宿主における補完等を含む。本発明の発現ベクターに好適なマーカー遺伝子は、例えば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、及びアンピシリン耐性遺伝子を含む。
【0096】
組み換え発現ベクターは、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質をコードしているヌクレオチド配列に、又はTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質をコードしているヌクレオチド配列に相補的であるか若しくはハイブリダイズするヌクレオチド配列に作動可能に連結しているネイティブ又は非ネイティブのプロモータを含んでいてよい。例えば、強い、弱い、誘導性、組織特異的、及び発生段階特異的なプロモータの選択は、当業者の技能の範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列とプロモータとの組み合わせも当業者の技能の範囲内である。プロモータは、非ウイルスプロモータ、例えば、ヒト伸長因子-1αプロモータであってもよく、ウイルスプロモータ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ、SV40プロモータ、RSVプロモータ、及びマウス幹細胞ウイルスの末端反復配列にみられるプロモータであってもよい。
【0097】
本発明の組み換え発現ベクターは、一過的発現用、安定的発現用、又は両方のために設計することができる。また、組み換え発現ベクターは、構成的発現用又は誘導性発現用に作製することができる。
【0098】
更に、組み換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように作製してもよい。本明細書で用いるとき、用語「自殺遺伝子」とは、自殺遺伝子を発現している細胞を死に至らしめる遺伝子を指す。自殺遺伝子は、該遺伝子が発現する細胞に対して剤、例えば薬物に対する感受性を付与し、そして、該細胞が該剤と接触したとき又は該剤に曝露されたときに該細胞を死に至らしめる遺伝子であってよい。自殺遺伝子は、当技術分野において公知であり、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、及びニトロレダクターゼを含む。
【0099】
本発明の別の実施形態は、更に、本明細書に記載の組み換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を提供する。本明細書で用いるとき、用語「宿主細胞」とは、本発明の組み換え発現ベクターを含有し得る任意の種類の細胞を指す。宿主細胞は、真核細胞、例えば、植物、動物、真菌、又は藻類であってもよく、原核細胞、例えば、細菌又は原生動物であってもよい。宿主細胞は、培養細胞又は初代細胞、即ち、生物、例えばヒトから直接単離された細胞であってよい。宿主細胞は、接着細胞又は懸濁細胞、即ち、懸濁液中で成長する細胞であってよい。好適な宿主細胞は、当技術分野において公知であり、例えば、DH5α大腸菌細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞等が挙げられる。組み換え発現ベクターを増幅又は複製する目的の場合、宿主細胞は、好ましくは、原核細胞、例えばDH5α細胞である。組み換え体のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を生成する目的の場合、宿主細胞は、好ましくは、哺乳動物細胞である。最も好ましくは、宿主細胞は、ヒト細胞である。宿主細胞は、任意の細胞型であってよく、任意の種類の組織に由来していてよく、任意の発生段階であってよいが、宿主細胞は、好ましくは、末梢血リンパ球(PBL)又は末梢血単核細胞(PBMC)である。より好ましくは、宿主細胞は、T細胞である。
【0100】
本明細書における目的のために、T細胞は、任意のT細胞、例えば、培養T細胞、例えば初代T細胞、又は培養T細胞株由来のT細胞、例えばJurkat、SupT1等、又は哺乳動物から得られたT細胞であってよい。哺乳動物から得られる場合、T細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺、又は他の組織若しくは流体を含むがこれらに限定されない多数の供給源から得ることができる。また、T細胞は、濃縮又は精製されていてもよい。好ましくは、T細胞は、ヒトT細胞である。T細胞は、任意の種類のT細胞であってよく、任意の発生段階であってよく、CD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、例えば、Th1及びTh2細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、メモリーT細胞(例えば、セントラルメモリT細胞及びエフェクタメモリT細胞)、ナイーブT細胞等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
また、本明細書に記載の少なくとも1の宿主細胞を含む細胞の集団が本発明によって提供される。細胞の集団は、組み換え発現ベクターのいずれも含まない少なくとも1の他の細胞、例えば宿主細胞(例えば、T細胞)、又はT細胞以外の細胞、例えばB細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋肉細胞、脳細胞等に加えて、記載される組み換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を含む不均質な集団であってよい。或いは、細胞の集団は、組み換え発現ベクターを含む(例えば、から本質的になる)宿主細胞を主に含む、実質的に均質な集団であってもよい。また、集団は、該集団の全ての細胞が、組み換え発現ベクターを含む1の宿主細胞のクローンであり、その結果、該集団の全ての細胞が組み換え発現ベクターを含む、細胞のクローン集団であってもよい。本発明の一実施形態においては、細胞の集団は、本明細書に記載の組み換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0102】
本発明の実施形態においては、集団内の細胞数を、急速に増幅させることができる。T細胞数の増幅は、例えば、米国特許第8,034,334号、同第8,383,099号、米国特許出願公開第2012/0244133号、Dudley et al.,J.Immunother.,26:332-42(2003)、及びRiddell et al.,J.Immunol.Methods,128:189-201(1990)に記載されている通り、当技術分野において公知の多数の方法のいずれかによって実現することができる。実施態様においては、T細胞数の増幅は、該T細胞をOKT3抗体、IL-2、及びフィーダーPBMC(例えば、放射線照射された同種PBMC)と共に培養することによって実行される。
【0103】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、及び宿主細胞(その集団を含む)は、単離及び/又は精製されてもよい。用語「単離された」は、本明細書で用いるとき、その天然環境から取り出されていることを意味する。用語「精製された」は、本明細書で用いるとき、純度が増大したことを意味し、「純度」は相対的な用語であり、必ずしも絶対純度と解釈される訳ではない。例えば、純度は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%であってもよく、約100%であってもよい。
【0104】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、及び宿主細胞(その集団を含む)(以後、これらの全てをまとめて「本発明のTCR材料」と称する)は、医薬組成物等の組成物に製剤化してもよい。これに関して、本発明は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、及び宿主細胞(その集団を含む)のいずれかと、薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物を提供する。本発明のTCR材料のいずれかを含有する本発明の医薬組成物は、1つを超える本発明のTCR材料、例えばポリペプチド及び核酸、又は2つ以上の異なるTCRを含んでいてもよい。或いは、医薬組成物は、別の薬学的活性剤(複数可)又は薬物(複数可)、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン等の化学療法剤と組み合わせて、本発明のTCR材料を含んでいてもよい。
【0105】
好ましくは、担体は、薬学的に許容し得る担体である。医薬組成物に関して、担体は、検討中の具体的な本発明のTCR材料に従来使用されているもののいずれかであってよい。投与可能な組成物を調製する方法は、当業者に公知であるか又は明らかであり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Ed.,Pharmaceutical Press(2012)により詳細に記載されている。薬学的に許容し得る担体は、使用条件下で有害な副作用も毒性も有しないものであることが好ましい。
【0106】
担体の選択は、具体的な本発明のTCR材料によって、並びに本発明のTCR材料を投与するために使用される具体的な方法によって部分的に決定される。従って、本発明の医薬組成物の様々な好適な製剤が存在する。好適な製剤は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、腫瘍内、又は腹腔内に投与するためのもののいずれかを含み得る。1つを超える経路を用いて本発明のTCR材料を投与してよく、特定の例では、特定の経路が別の経路よりも即時且つより有効な応答を提供し得る。
【0107】
好ましくは、本発明のTCR材料は、例えば静脈内に注射することによって投与される。本発明のTCR材料が、本発明のTCRを発現している宿主細胞であるとき、注射用の細胞のための薬学的に許容し得る担体としては、任意の等張担体、例えば、通常生理食塩水(水中約0.90%w/v NaCl、水中約300mOsm/L NaCl、又は水1リットルあたり約9.0g NaCl)、NORMOSOL R電解質溶液(Abbott,Chicago,IL)、PLASMA-LYTE A(Baxter,Deerfield,IL)、水中約5%デキストロース、又は乳酸リンゲル液を挙げることができる。実施形態においては、薬学的に許容し得る担体にヒト血清アルブミンを補給する。
【0108】
本発明の目的のために、投与される本発明のTCR材料の量又は用量(例えば、本発明のTCR材料が1以上の細胞である場合は細胞数)は、好適な時間枠にわたって被験体又は動物において効果、例えば治療的又は予防的応答をもたらすのに十分でなければならない。例えば、本発明のTCR材料の用量は、投与時点から約2時間以上、例えば、12~24時間又はそれ以上の期間、がん抗原(例えば、変異p53)に結合するか又はがんを検出、治療、若しくは予防するのに十分でなければならない。特定の実施形態においては、期間は更に長くてもよい。用量は、具体的な本発明のTCR材料の有効性及び動物(例えば、ヒト)の状態、並びに治療される動物(例えば、ヒト)の体重によって決定される。
【0109】
投与される用量を決定するための多くのアッセイが、当技術分野において公知である。本発明の目的のために、それぞれ異なる用量のT細胞を与えた哺乳動物のセット間で、所与の用量の本発明のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を発現しているT細胞を哺乳動物に投与した際に標的細胞が溶解するか又はこのようなT細胞によってIFN-γが分泌される程度を比較することを含むアッセイを用いて、哺乳動物に投与する開始用量を決定することができる。特定の用量を投与した際に標的細胞が溶解する又はIFN-γが分泌される程度は、当技術分野において公知の方法によってアッセイすることができる。
【0110】
本発明のTCR材料の用量は、具体的な本発明のTCR材料の投与に付随する可能性のある任意の有害な副作用の存在、性質、及び程度によっても決定される。典型的には、主治医が、様々な要因、例えば、年齢、体重、全体的な健康状態、食生活、性別、投与される本発明のTCR材料、投与経路、及び治療されるがんの重篤度を考慮して、各個々の患者を治療するための本発明のTCR材料の投与量を決定する。本発明のTCR材料が細胞の集団である実施形態においては、注入1回あたりに投与される細胞数は、例えば、約1×106~約1×1012細胞又はそれ以上で変動し得る。特定の実施形態においては、1×106細胞未満を投与してもよい。
【0111】
当業者は、本発明のTCR材料を任意の数の方法で修飾してよく、その結果、該修飾を通して本発明のTCR材料の治療又は予防の有効性が増大することを容易に理解するであろう。例えば、本発明のTCR材料を、直接又は架橋を介して間接的に化学療法剤にコンジュゲートしてもよい。化合物の化学療法剤へのコンジュゲートの実施は、当技術分野において公知である。当業者は、架橋及び/又は化学療法剤が本発明のTCR材料に結合した時点で本発明のTCR材料の機能、即ち、変異p53に結合するか又はがんを検出、治療、若しくは予防する能力には干渉しない限り、本発明のTCR材料の機能に必須ではない本発明のTCR材料の部位が、架橋及び/又は化学療法剤を結合させるのに理想的な部位であることを認識する。
【0112】
本発明の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、又は細胞の集団は、がんを治療又は予防する方法において使用できることが企図される。特定の理論に縛られるものではないが、本発明のTCRは変異p53に特異的に結合し、その結果、TCR(又は関連する本発明のポリペプチド若しくはタンパク質)は、細胞によって発現されたとき、変異p53を発現している標的細胞に対する免疫応答を媒介することができると考えられる。これに関して、本発明の実施形態は、哺乳動物におけるがんを治療又は予防する方法であって、本明細書に記載の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれか、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードしているヌクレオチド配列を含む任意の核酸若しくは組み換え発現ベクター、又は本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれかをコードしている組み換えベクターを含む任意の宿主細胞若しくは細胞の集団を、哺乳動物におけるがんを治療又は予防するのに有効な量、該哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0113】
本発明の実施形態は、哺乳動物におけるがんの治療又は予防において用いるための、本明細書に記載の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれか、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードしているヌクレオチド配列を含む任意の核酸若しくは組み換え発現ベクター、又は本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれかをコードしている組み換えベクターを含む任意の宿主細胞若しくは細胞の集団を提供する。
【0114】
用語「治療する」及び「予防する」、並びにそれから派生する語は、本明細書で用いるとき、必ずしも100%、即ち、完全な治療又は予防を意味するものではない。どちらかといえば、当業者が潜在的な利点又は治療効果を有すると認識する、様々な程度の治療又は予防が存在する。これに関して、本発明の方法は、哺乳動物における任意の量の任意のレベルのがんの治療又は予防を提供することができる。更に、本発明の方法によって提供される治療又は予防は、治療又は予防されるがんの1以上の病態又は症状の治療又は予防を含み得る。例えば、治療又は予防は、腫瘍の退縮を促進することを含み得る。また、本明細書における目的のために、「予防」は、がん又はその症状若しくは病態の発生を遅らせることを包含し得る。或いは又は更に、「予防」は、がん又はその症状若しくは病態の再発を防ぐ又は遅らせることを包含し得る。
【0115】
また、哺乳動物におけるがんの存在を検出する方法も本発明の実施形態によって提供される。該方法は、(i)本明細書に記載の本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、細胞の集団、又は医薬組成物のいずれかを、哺乳動物由来の1以上の細胞を含む試料と接触させ、それによって、複合体を形成させることと、該複合体を検出することとを含み、該複合体の検出が、該哺乳動物におけるがんの存在を示す。
【0116】
哺乳動物におけるがんを検出する本発明の方法に関して、細胞の試料は、全細胞、その溶解物、又は全細胞溶解物の画分、例えば、核若しくは細胞質の画分、全タンパク質画分、又は核酸画分を含む試料であってよい。
【0117】
本発明の検出方法の目的のために、接触は、哺乳動物に対してインビトロ又はインビボで行ってよい。好ましくは、インビトロで接触させる。
【0118】
また、複合体の検出は、当技術分野において公知の任意の数の方法を通して行うことができる。例えば、本明細書に記載の本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、又は細胞の集団を、検出可能な標識、例えば、放射性同位体、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ)、及び元素粒子(例えば、金粒子)等で標識してよい。
【0119】
宿主細胞又は細胞の集団が投与される本発明の方法の目的のために、細胞は、哺乳動物にとって同種又は自己である細胞であってよい。好ましくは、細胞は、哺乳動物にとって自己である。
【0120】
本発明の方法に関して、がんは、例えば、急性リンパ球性がん、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫、骨がん、脳がん、乳がん、肛門、肛門管、又は肛門直腸のがん、眼のがん、肝内胆管のがん、関節のがん、頸部、胆嚢、又は胸膜のがん、鼻、鼻腔、又は中耳のがん、口腔のがん、膣のがん、外陰部のがん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、子宮頸がん、消化管カルチノイド腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、肝臓がん、肺がん、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、中咽頭のがん、卵巣がん、陰茎のがん、膵臓がん、腹膜、網、及び腸間膜のがん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎がん、皮膚がん、小腸がん、軟組織がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮のがん、尿管がん、並びに膀胱がんのいずれかを含む任意のがんであってよい。好ましい実施形態においては、がんは、変異p53を発現するがんである。がんは、配列番号1により定義される175位及び220位のうちの一方又は両方に変異を有するp53を発現し得る。がんは、以下のヒトp53変異のうちの一方又は両方を有するp53を発現し得る:R175H及びY220C。好ましくは、該がんは、上皮がん、又は胆管がん、黒色腫、結腸がん、直腸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、神経膠芽腫、子宮頸がん、頭頸部がん、乳がん、膵臓がん、又は膀胱がんである。
【0121】
本発明の方法において言及される哺乳動物は、任意の哺乳動物であってよい。本明細書で用いるとき、用語「哺乳動物」とは、げっ歯目の哺乳動物、例えばマウス及びハムスター、並びにウサギ目の哺乳動物、例えばウサギを含むがこれらに限定されない任意の哺乳動物を指す。哺乳動物は、ネコ及びイヌを含む食肉目の哺乳動物であることが好ましい。哺乳動物は、ウシ及びブタを含む偶蹄目、又はウマを含む奇蹄目の哺乳動物であることがより好ましい。哺乳動物は、霊長目、サル目(Ceboids又はSimoids)(サル)、又は真猿亜目(ヒト及び類人猿)の哺乳動物であることが最も好ましい。特に好ましい哺乳動物は、ヒトである。
【実施例】
【0122】
以下の実施例は、本発明を更に説明するが、無論、いかなる方法でもその範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0123】
実施例1~7に記載の実験においては、以下の材料及び方法を用いた。
【0124】
被験体及び試料
白血球アフェレーシス産物及び腫瘍試料を、国立がん研究所(NCI)の施設内審査委員会(IRB)によって承認された国立衛生研究所プロトコルNCT01174121に登録された、転移性上皮がんを有する個人から得た。患者は、治療前の白血球アフェレーシス及びTILスクリーニング結果の利用可能性に基づいて選択され、標準治療に従って前治療(手術、化学療法、放射線療法)を受けていた(Malekzadeh et al.,J.Clin.Invest.129(3): 1109-14(2019);Deniger et al.,Clin.CancerRes.,24(22):5562-73(2018))。Ficoll-Hypaqueを用いて白血球アフェレーシスからPBLを単離し、細胞を、将来用いるために凍結保存した。研究した全ての患者は、以前に記載(Malekzadeh et al.,J.Clin.Invest.129(3):1109-14(2019))の通りの、臨床プロトコルに沿った全エクソームシークエンシングによって確認されたTP53変異を有した。
【0125】
抗体及びFACS
蛍光標識抗体フローサイトメトリーを表1に詳述する。フローサイトメトリー分析は、FLOWJOソフトウェア(TreeStar,Ashland,OR)による分析により、FACS CANTO II system(BD Biosciences,San Jose,CA)で行った。全ての細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色された細胞を排除することによって、リンパ球及び生細胞によりゲートした。FACS ARIA II cell sorter(BD Biosciences)で、IVS及び4-1BB/OX40について細胞を選別した。4-1BB+及び/又はOX40+細胞を、CD3+CD4+CD8-(CD4)及びCD3+CD4-CD8+(CD8)ゲートを介して別々に選別した。共培養物を、TCR遺伝子を同定するための単一細胞PCR用に、SH800S cell sorter(Sony Biotechnology)によって選別した。
【0126】
【0127】
TP53「ホットスポット」変異スクリーニング試薬
TILスクリーニングのために、WT(TMG-WT-TP53)及び変異TP53(TMG-MUT-TP53)のTMGコンストラクトを以前に記載(Malekzadeh et al.,J.Clin.Invest.129(3):1109-14(2019))の通りに作製した。簡単に言うと、各TP53「ホットスポット」変異(R175H、Y220C、G245S、G245D、R248L、R248Q、R248W、R249S、R273C、R273H、R273L、及びR282W)を、中央に変異コドン、上流及び下流に12個の正常コドンがあるミニ遺伝子に構成し、ミニ遺伝子をTMGに連結した。WT配列に対応する類似配列も導出した。TMGをDNAとして合成し、LAMPシグナル配列及びDC-LAMP局在化配列にインフレームでクローン化し、次いで、製造業者の指示(Thermo-Fisher;Waltham、MA)に従って、mMESSAGE mMACHINE T7 UltraKitを用いてインビトロでmRNAに転写した。更に、WT及び変異ペプチドをp53R175H、p53R248W、及びp53Y220Cについて合成し、高速液体クロマトグラフィー(Genscript;Piscataway,NJ)によって>95%に精製した。全てのペプチドをDMSO中で再構成した。
【0128】
抗原提示細胞
単球由来の未成熟樹状細胞(DC)を、接着法によって生成した(Tran et al.,Science,350(6266):1387-90(2015))。簡単に言うと、PBLを、DNase(Genentech Inc.,San Francisco,CA)を含有するAIM-V培地(Life Technologies,Waltham,MA)にプレーティングし、37℃で1.5~2時間インキュベーションした。非接着細胞を取り出し、フレッシュで、又は凍結保存して用いた。接着細胞をAIM-Vで洗浄し、37℃で1時間インキュベーションし、培地をDC培地(5%ヒト血清、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、アンフォテリシンB、800IU/mL顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)及び200U/mLインターロイキン-4(IL-4)(Peprotech,RockyHill,NJ)を含む、RPMI-1640、2mM L-グルタミン)に交換した。細胞を2~3日ごとに栄養摂取させ、5~6日目に回収した。
【0129】
IVS、変異体TP53共培養、4-1BB/OX40濃縮及びREP
抗原経験の選別を行うために、前処理PBLを以前に記載(Cafri et al.,Nat.Commun.,10(1):449(2019))の通り処理した。凍結保存したアフェレーシス試料を解凍し、洗浄し、DNaseを含有するAIM-V培地で5~10x106細胞/mlに設定し、1.75~2x108の生細胞をT175フラスコ(Corning Inc.,Corning,NY)ごとにプレーティングし、37℃、5%CO2で90分間インキュベーションした。90分後、非接着性の単球が枯渇したPBLを回収し、遠心分離し、50/50培地(AIM-V培地、RPMI-1640培地(Lonza,Walkersville,MD)、5%ヒトAB血清、100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシン(Life Technologies)、2mM L-グルタミン(Life Technologies)、10μg/mLゲンタマイシン(Quality Biological Inc.,Gaithersburg,MD),12.5mM HEPES (Life Technologies))中37℃及び5%CO2で一晩インキュベーションした。接着性の単球を、上記の通り未成熟DCに分化させた。非接着細胞を一晩静置した後、細胞を回収し、1~2x108細胞を、CD3、CD8、CD4、CD62L、CD45RO抗体を含む50μlの染色バッファー(PBS、0.5%BSA、2mM EDTA)に再懸濁した。細胞を4℃で30分間インキュベーションし、取得前に2回洗浄した。選別集団を決定するために、生細胞(ヨウ化プロピジウム陰性)、単一細胞、CD3+T細胞、次いで抗原経験細胞(CD62L-CD45RO+、CD62L+CD45RO+、CD62L-CD45RO-)でゲートを行い、更にCD4+又はCD8+に細かく分けた。CD8+及びCD4+の抗原経験メモリーT細胞を別々に選別し、回集し、計数し、濃度60ng/mLのインターロイキン-21(IL-21)を含有する50/50培地に再懸濁した。自己DCを、FACS選別の日の18~24時間前にTMG-MUT-TP53とエレクトロポレーションするか、当該日に患者特異的変異体p53-LPで2~4時間パルスした。標的細胞(DC)を50/50培地で2回洗浄し、サイトカインを含まない50/50培地中に再懸濁した。DCの添加後、最終濃度30ng/mlのIL-21で、1:3~1:6の比率(DC:T細胞)の共培養でインビトロ刺激(IVS)を行った。以前に記載(Cafri et al.,Nat.Commun.,10(1):449(2019))の通り、14日間の増殖及びIL-21及びインターロイキン-2(IL-2;アルデスロイキン)の3回の摂取後、自己DCを、再度、TMG-MUT-TP53と、又は変異ロングペプチド(LP)で、それぞれエレクトロポレーション又はパルスし、IVS培養物を37℃及び5%CO2で18~24時間共培養した。並行して、4-1BB/OX40濃縮選別時のネガティブコントロール用に、IVS培養物を、関係性のないTMGとエレクトロポレーションしたDC又はDMSOでパルスしたDCと共培養した。共培養後、細胞を回収し、CD3、CD4、CD8、4-1BB及びOX40抗体を含有する50μlの染色バッファー(PBS、0.5%BSA、2mM EDTA)中に再懸濁し、4℃で30分間インキュベーションし、取得前に2回洗浄した。選別した4-1BB+/OX40+を濃縮したT細胞を、放射線照射したPBLフィーダー、30ng/mL OKT3抗体((Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)、及び50/50培地中3,000IU/mLのIL-2を用いて、REPにより増幅した。急速増幅(REP)培養物を3回栄養摂取させ、14日目に反応性について試験、又は凍結保存した。
【0130】
共培養
IVS及び濃縮T細胞のスクリーニングを、TIL断片をスクリーニングするために用いられるのと同一の戦略によって達成した(Malekzadehら、J.Clin.Inbest.129(3):1109-14(2019))。簡単に言うと、自己DCをTMG(105細胞/ウェル)とエレクトロポレーションし、一晩静置又はペプチド若しくはDMSOで2~4時間パルス(8x104細胞/ウェル)した。標的細胞を2回洗浄し、50/50培地中に再懸濁し、インターフェロン-γ(IFNγ)のEnzyme-Linked ImmunoSpot(ELISPOT)plates(EMD Millipore,Burlington,MA)中で2x104T細胞と共培養した。ホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA)及びイオノマイシン(Thermo Fisher)をポジティブコントロールとして使用し、培地のみがネガティブコントロールであった。ELISPOTプレートを製造業者の指示に従って処理しながら、共培養した細胞を取り出し、染色し、上記の通りフローサイトメトリーで分析した。腫瘍細胞株を、共培養前に凍結保存されたストックから少なくとも1週間増殖させた。それらの作製は他で説明される(Malekzadeh et al.,J.Clin.Invest.129(3):1109-14(2019))。腫瘍細胞を、丸底96ウェルプレート中においてT細胞(合計2x105細胞)と1:1の比率で一晩共培養した。共培養上清を回収して酵素結合免疫吸着測定法(ELISA;ThermoFisher)によりIFNγ分泌を評価した後、共培養細胞をフローサイトメトリーで分析した。
【0131】
最短ペプチドアッセイ及びHLA拘束性マッピング(HLA restriction mapping)
以前に記載された同様の方法を用いて、最短ペプチドを同定し、HLA拘束性を決定した(Malekzadeh et al.,J.Clin.Invest.129(3):1109-14(2019))。手短に言うと、peptide binding affinity algorithm(v3.4)を用いて(Lundegaard et al.,Bioinformatics、24(11):1397-8(2008))、HLAクラスI対立遺伝子についてのネオエピトープを予測した。候補の9~11アミノ酸を上記の通り共培養した。CD4+最短新抗原を調査するために、14アミノ酸が重なり合う15アミノ酸ペプチドを上記の通り共培養した。HLA拘束性を決定するために、COS7腫瘍細胞を、平底96ウェルプレート中のRPMI-1640、2mM L-グルタミン及び10%ウシ胎児血清に2.5x104細胞/ウェルでプレーティングし、37℃で一晩インキュベーションした。DNAプラスミド(pcDNA3.1骨格)の、患者特異的な個々のHLAクラスI対立遺伝子(300ng/ウェル)又はHLAクラスIIα鎖とβ鎖の両方(それぞれ150ng/ウェル)を、LIPOFECTAMINE2000 transfection reagentで、製造業者の指示(ThermoFisher)に従ってトランスフェクションした。TMGをHLAと共トランスフェクションした場合、HLAの濃度を、クラスIについては150ng/ウェルに、クラスIIについては100ng/ウェルに低減した。これらの実験のために用いたWT TMGは、目的の位置、例、R175H、でのみWTに復帰させたTMG-MUT-TP53であった。24時間のインキュベーション後、トランスフェクション培地を除去し、ペプチド又はDMSOを50/50培地中において2~4時間パルスし、ウェルを50/50培地で2回洗浄し、105T細胞を一晩インキュベーションした。共培養上清をELISAによってIFNγ分泌について分析し、細胞を4-1BBの上方制御について染色し、フローサイトメトリーによって分析した。
【0132】
TCRBシークエンシング
TCRBサーベイシークエンシングを、ゲノムDNAから、Adaptic Biotechnologies(Seattle,WA)によって行った。シークエンシングのために、最小限の5x104個の細胞を送付した。生産的なTCR再構成の分析を、IMMUNOSEQ ANALYZER 3.0 tool(Adaptive Biotechnologies)を用いて行った。
【0133】
TCRの同定及び再構築
以前の研究(Pasetto et al.,Cancer Immunol.Res.,doi 10.1158/2326-6066.CIR-16-0001 (2016);Deniger et al.,Clin.CancerRes.,23(2):351-62(2017))と同様に、p53新抗原を発現するT細胞及びDCの共培養物を単一ウェルに選別し、続いてTCR遺伝子の単一細胞逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって、TCRを同定した。PCR産物は、TCRα及びTCRβを別々に維持し、サンガーシークエンシングによって分析した。これらの部分的なTCR配列を、正確なCDR3及びJ又はD/J領域並びに最も可能性の高いTRAV及びTRBVファミリーを同定する、IMGT/V-Quest(imgt.org/IMGT)及びIGBLAST(ncbi.nlm.nih.gov/igblast)ウェブサイトにより分析した。他の研究で行われた通り、ヒトの全長可変配列をマウスの定常鎖に融合させた(Deniger et al.,Clin.CancerRes.,23(2):351-62(2017);Cohen et al.,J.Clin.Invest.,125(10):3981-91(2015)。マウス化されたTCRα及びTCRβ遺伝子を、RAKR-SGSG(配列番号128)及びP2Aリボソームスリップ配列と連結させ、単一シストロンにおけるTCRの化学量論的発現をもたらした。この配列は、一過性のレトロウイルス上清の作製のために合成し、MSGV1ベクターにクローン化した。
【0134】
TCR形質導入
PBLドナーを、50ng/mlの可溶性OKT3及び300IU/mlのIL-2を添加した50/50培地中で3x106細胞/mlに調整し、レトロウイルス形質導入の前に2日間接着低減プレート上で活性化した。変異特異的TCRをコードするpMSGV1プラスミド(1.5μg/ウェル)及びエンベロープをコードするプラスミドRD114(0.75μg/ウェル)を、LIPOFECTAMINE 2000 transfection reagent(LifeTechnologies)を用いて、6ウェルポリ-D-リシンコーティングプレートの106HEK293GP細胞/ウェルに共トランスフェクションした。トランスフェクションの2日後にレトロウイルス上清を回収し、DMEM培地で1:1に希釈し、2000xg、32℃で2時間、RETRONECTIN reagent(10μg/ウェル、Takara,Rockville,MD)でコーティングした非組織培養処理6ウェルプレート上に2回遠心分離した。上清を吸引し、2x106の刺激T細胞を、300IU/mL IL-2を含む50/50培地中、5x105細胞/mLで各ウェルに加えた。T細胞を、RETRONECTIN reagentでコーティングしたプレート上に、300xgで10分間遠心分離した。培地は3~4日後に300IU/mL IL-2と交換し、形質導入細胞を、形質導入の10~14日後にアッセイした。
【0135】
実施例1
本実施例は、TP53変異を有する抗原経験末梢血T細胞のIVSを実例で示す。
【0136】
PBLからの抗原経験T細胞を、TP53変異腫瘍を有する7人の結腸がん患者、1人の直腸がん患者及び1人の卵巣がん患者において評価した(表2)。患者4217(p53
R175H)、4213(p53
R248Q)、4257(p53
R248W)及び4254(p53
R273H)は、p53新抗原に対するTIL応答を示さなかった。対照的に、TILは患者4141(p53
R175H)、4285(p53
R175H)、4149(p53
Y220C)、4266(p53
R248W)及び4273(p53
R248W)の自己TP53変異に反応した(Malekzadeh et al.,J.Clin.Invest.129(3):1109-14(2019);Deniger et al.,Clin.CancerRes.,24(22):5562-73(2018))。凍結保存したアフェレーシス(任意のACT前)を用いて、PBLから抗原を経験したCD4
+又はCD8
+T細胞を選別した(
図1A左)。選別したCD4
+又はCD8
+T細胞を、変異TP53-TMG mRNA(TP53-TMG-IVS)を発現するDCでインビトロ刺激したか、患者特異的変異p53-LP(p53-LP-IVS)でパルスした。IL-21及びIL-2の存在下で12日培養した後、インビトロ刺激したCD4
+及びCD8
+メモリー細胞を、TP53-TMG-IVSの場合は、変異TP53-TMG mRNAとエレクトロポレーションしたDCと共培養し、p53-LP-IVSの場合は、患者特異的変異p53-LPと共培養して、翌日、T細胞活性化マーカー4-1BB及び/又はOX40の発現に基づいて選別した(
図1A中央)。TP53-TMG-IVS及びp53-LP-IVS後の細胞収量は、CD4
+及びCD8
+T細胞の両方について同等で、0.3x10
7~15.6x10
7のT細胞から開始して、0.9x10
7~18.3x10
7細胞の範囲であった(表3)。CD4
+ 4-1BB
+/OX40
+及びCD8
+ 4-1BB
+/OX40
+T細胞の一部分は、実験の完全性と等価性のために全ての集団から選別され、2x10
2~1.7x10
5細胞、親CD4又はCD8のゲートの0.1%~6.9%の範囲であった(表3)。選別したT細胞はREPを経て、14日の急速増幅後に分析した。最終的な細胞収量は7x10
6~4.2x10
8T細胞の範囲であり、REPへのインプット細胞数の影響を受けた可能性がある(表3)。
【0137】
【0138】
【0139】
実施例2
本実施例は、p53新抗原に対する腫瘍内TIL応答を伴う患者のPBL中に、TP53変異反応性T細胞が存在したことを実証する。
【0140】
分析スクリーニングを、IVS、4-1BB/OX40濃縮及びREP後の実施例1の培養物で行い、ここで、反応性を、フローサイトメトリーにより、細胞表面マーカー4-1BBの上方制御によって評価し、及びELISPOTアッセイを用いて、IFNγ分泌によって評価した(
図1A右)。末梢血T細胞は、患者4213、4217、4254、及び4257中のp53新抗原に反応しなかった。これは、TILスクリーニングの結果を裏付けている(表2)。これらの患者は、HLA及びp53のネオエピトープの免疫原性の組み合わせを有していなかった可能性がある。対照的に、TILによる変異TP53に対する腫瘍内T細胞応答を示した5人の患者(4141及び4285:p53
R175H、4149:p53
Y220C、4266及び4273:p53
R248W)のPBLからの抗原経験T細胞中で、TP53変異特異的T細胞が同定された(
図1B~1C及び表2)(Malekzadeh et al.,J.Clin.Invest.129(3):1109-14(2019))。TP53-TMG-IVSは4141-CD8、4285-CD4、4149-CD4及び4266-CD8培養においてp53新抗原特異的T細胞をもたらし(
図1B)、p53-LP-IVSは4285-CD4及び4273-CD4培養物においてp53新抗原特異的T細胞をもたらした(
図1C)。変異TP53に対する応答(
図1B~1Cの塗りつぶし図形)の特異性は、WTの対応物に対する応答(
図1B~1Cの白抜き図形)の欠如によって説明された。TP53変異反応性細胞の最高頻度は、p53
R175Hに対する4141-CD8 TP53-TMG-IVS培養物中において78%であった(
図1D)。T細胞が変異体のTMG-MUT-TP53及びp53
R175H LPに反応したが、WT TMG-MUT-TP53(関係性のないTMG)、DMSO(ペプチドビヒクル)又はWT p53
R175 LPに対してはしなかった(
図1E)ので、4285-CD4 TP53-TMG-IVS培養により、IFNγ分泌スクリーニングの肯定的結果が例示された。p53
R175H LPは、アミノ酸配列YKQSQHMTEVVR
HCPHHERCSDSDG(配列番号111)を有していた。WT p53
R175 LPは、アミノ酸配列YKQSQHMTEVVR
RCPHHERCSDSDG(配列番号110)を有していた。選択した培養物を、4-1BBの上方制御及び/又はIFNγ分泌に基づいて反応性であると見なし、更に研究した(表4A~4B)。4285-CD4 TP53-TMG-IVS培養物は、10ng/mLまでのペプチド濃度で、同族のp53
R175H LPの特異的認識を示した(
図1F)。従って、IVS及び4-1BB/OX40の濃縮により、公開されているTP53変異を標的とする非常に特異的なCD8
+及びCD4
+T細胞を同定することができた。
【0141】
【0142】
【0143】
実施例3
本実施例は、TCRB追跡により、PBLからのp53新抗原反応性T細胞の濃縮が実証されたことを実例で示す。
【0144】
各患者のTP53変異反応性T細胞集団に関するTCR多様性を更に特性解析し、IVS及び4-1BB/OX40濃縮がT細胞レパートリーを変化させたか否かを決定することが望まれた。これを達成するために、TCRBディープシークエンシング(Pasetto et al.,Cancer Immunol.Res.,4(9):734-43(2016))を行い、特有のCDR3B配列と全体的な試料クローン性に基づいて、生産的なT細胞クロノタイプ頻度を測定した。これは、より多くのオリゴクローナル試料が1に近づく集団多様性の正規化測定値である(Boyd et al.,Sci.Transl.Med.,1(12):12ra23)(2009);Howie et al.,Sci.Transl.Med.,7(301):301ra131(2015))。TCRBのクローン性は、IVS前のPBLと比較して、全ての患者のPBL試料から生成されたTP53-TMG-IVS及びp53-LP-IVS培養物において有意に増加した(
図2A)。同様に、各TP53-TMG-IVS及びp53-LP-IVS試料中において最も頻度の高い特有のTCRBクロノタイプは、IVS前のPBL中よりも頻度が高かった(
図2B)。p53新抗原反応性TCRB配列の順位付けは、最終的なp53-LP-IVS又はTP53-TMG-IVS培養物中においては1~167の範囲であったが、初代PBL中においては、検出されなかったか、又は順位5,020であった(表5)。増加したクローン性又は最大TCRBクロノタイプ頻度は、p53新抗原に対するT細胞応答を伴う培養に限定されなかった(
図2A~2B;アスタリスクは陽性培養物を示す)。これにより、IVS及び4-1BB/OX40濃縮を介して偏りが生じたT細胞レパートリーがあったことが示唆されたが、培養物の変異TP53に対する応答を予測するには、最高頻度及びクローン性の評価では不十分であった。
【0145】
【0146】
実施例4
本実施例は、p53新抗原反応性TCRの単離及びTCRBシークエンシングによる追跡を実例で示す。
【0147】
次いで、潜在的な治療及び研究用途のために、及び培養期間中のTCRBクロノタイプを追跡して、TP53変異反応性T細胞濃縮の程度を評価するために、p53新抗原反応性IVS集団からTCRを同定した。TCRを、以前の研究(Pasetto et al.,CancerImmunol.Res.,4(9):734-43(2016))と同様に、反応性IVS培養物の同族のp53新抗原(TMG又はLP)との共培養、4-1BB+T細胞の選別、及びTCRアルファ及びベータ遺伝子の単一細胞RT-PCRを受けて同定した。TCRペアを再構築し、レトロウイルスベクターにクローン化し、ドナーPBLに形質導入した。非常に効率的な翻訳のためのより強力なコザック配列を有するよう、2番目のアミノ酸残基をアラニン(A)に変更した。TCRα鎖定常領域を、システイン置換、LVL改変マウスα鎖定常領域に置き換えた。TCRβ鎖定常領域を、システイン置換マウスβ鎖定常領域に置き換えた。
【0148】
p53
R175H(患者4141及び4285)及びp53
R248W(患者4266及び4273)新抗原を標的とする合計11個のTCRを同定した(表5)。患者4149についてのTCRは、利用可能なT細胞が限られているために決定できなかった。それぞれp53
R175H/HLA-A
*02:01、p53
R248W/HLA-A
*68:01、p53
R248W/HLA-DPB1
*02:01を標的とする、TILからの同一のp53新抗原反応性TCR(Malekzadeh et al.,J.Clin.Invest.129(3):1109-14(2019))を、患者4141、4266及び4273におけるIVS及び4-1BB/OX40濃縮後のPBL中において同定した。これらの患者においては、更なるTP53変異反応性T細胞は同定されなかった。対照的に、患者4285からの、TIL研究においては存在しなかった、7の特有のp53
R175H新抗原特異的TCRを、PBLから同定し、TILに由来するTCRは、PBL集団には見られなかった。PBL由来のTCR(4285-PBL-TCR)の機能的アビディティは、TIL由来のTCR(4285-TIL-TCR)と同等であり、p53
R175H LPは10ng/mLまで認識され、WT p53
R175 LPには応答しなかった(
図2C~2J)。患者4141及び4285からのp53
R175H新抗原特異的TCRBクロノタイプの追跡により、開始PBLと比較した、IVS及び4-1BB/OX40濃縮後の指数関数的増幅が示された(
図2K)。更に、患者4285からのCDR3B配列は、バルクPBLにおける検出限界(2x10
5リードから<0.001%)未満であったが、IVS及び4-1BB/OX40濃縮後、CDR3Bクロノタイプ全体の上位10のうち4のTCRを含む十分な頻度であった(表5)。患者4266からのp53
R248W新抗原特異的TCRも、PBLにおける検出限界未満であったが、4266-CD8 TP53-TMG-IVS培養物中においては2.6%(4266-PBL-TCR3)及び7.5%(4266-PBL-TCR2)であった(
図2L)。p53
R248W新抗原に特異的なTCRは、4273-CD4 p53-LP-IVS培養において0.002%から0.017%に濃縮された(
図2L)。まとめると、データにより、PBLが、腫瘍内TCRと同一又は同等の、公開されているTP53変異に反応性のTCRの、ソースになり得ることが実証された。
【0149】
実施例5
本実施例は、一般的なHLA拘束性要素及びp53ネオエピトープが免疫原性であることを実証した。
【0150】
次いで、認識した最短のp53ネオエピトープ及び対応するHLA拘束性を評価した。HLAマッピングを、以前の報告(Malekzadeh et al.,J.Clin.Invest.129(3):1109-14(2019);Deniger et al.,Clin.Cancer Res.,24(22):5562-73(2018))と同様に、患者の個々のHLA対立遺伝子のそれぞれに対応するDNAプラスミドをCOS7サル細胞株(HLAを欠く)にトランスフェクションし、ペプチドをパルスするか、TMGと共トランスフェクションすることによって達成した。4141-CD8 TP53-TMG-IVS培養物は、4-1BB発現によって測定したところ、HLA-A
*02:01(米国人集団において非常に頻繁なHLA)の関係でp53
R175H HMTEVVR
HC(配列番号96)ネオエピトープに特異的であった(Gonzales et al.,Hisp.Health Care Int.,15(4):180-8(2017))(
図3A)。HLA-A
*68:01は、IFNγ分泌によって測定したところ、CD8 TP53-TMG-IVS培養物によって認識されたp53
R248WネオエピトープSSCMGGMN
WR(配列番号98)を拘束した(
図3B)。このことは、患者4141及び4266におけるTILからのTCRが、これらのIVS培養物中において発見され、最短のネオエピトープ及びHLA制限要素が既に確立されていたため、予期されていた(Malekzadeh et al.,J.Clin.Invest.129(3):1109-14(2019))。同様に、4273-PBL-TCRは、4273-CD4 p53-LP-IVS培養物中において発見され、TIL研究から公知のp53
R248W及びHLA-DPB1
*02:01との組み合わせがあった。患者4285についてのPBLとTILの間で、TCRが異なっているとしても、4285-CD4 TP53-TMG-IVS培養物は、TIL中において発見した、同一のp53
R175H及び、HLA-DBR1
*13:01の組み合わせに特異的であった(
図3C)。更に、全ての4285-PBL-TCRはp53
R175H及びHLA-DBR1
*13:01に特異的であり、TCRBシークエンシングにより、全て、4285-CD4 TP53-TMG-IVS培養物に存在していた(表5;
図4)。14アミノ酸が重なり合う、15アミノ酸のp53
R175Hペプチドを患者4285からのDCにパルスし、TCR形質導入T細胞と共培養し、コアペプチドEVVR
HCPHHER(配列番号2)が、HLA-DRB1
*13:01の関係で4285-PBL-TCRによって認識される共通配列であると決定した(表6)。まとめると、同一のHLA及び最短p53ネオエピトープを認識するPBL中のTILから、同一のTCRを3ケースにおいて発見し、1ケースにおいては、腫瘍内T細胞と同一のp53新抗原特異性を有する更なるTCRを発見した。
【0151】
【0152】
実施例6
本実施例は、腫瘍細胞が、IVS後のPBL由来T細胞によって認識される、HLA上のp53ネオエピトープをプロセシング及び提示することを実証する。
【0153】
腫瘍細胞表面上に発現した、自然にプロセシングされ提示された抗原を認識する能力について、TP53変異反応性T細胞を評価した。Saos2-R175H骨肉腫腫瘍細胞株(HLA-A
*02:01且つ全長p53
R175Hを過剰発現)及びTC#4266ヒト異種移植腫瘍細胞株(p53
R248W且つHLA-A
*68:01:02結腸がん)をモデルとして用いた。一晩共培養後、4141-CD8 TP53-TMG-IVS及び4266-CD8 TP53-TMG-IVS培養物からのCD8
+T細胞は、それぞれSaos2-R175H及びTC#4266細胞株に応答して4-1BBを上方制御した(クロスマッチ細胞株の活性化は僅かであった(
図3D))。従って、PBLからのTP53変異特異的T細胞は、自然にプロセシングされ提示されたp53ネオエピトープを持つ腫瘍細胞を認識できる。
【0154】
実施例7
本実施例は、実施例4において構築され、表6のヘッダー中に名付けられたTCRのアミノ酸配列を示す。これらのTCRのTCRアルファ鎖及びベータ鎖の可変領域のアミノ酸配列を表7に示す。CDRを下線で示す。
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
患者4285から単離したTCR 4285-PBL-TCR1の配列を直上に示す。アミノ末端から開始して、最初の下線の領域がCDR1ベータ(配列番号6)であり、2番目の下線領域がCDR2ベータ(配列番号7)であり、3番目の下線領域がCDR3ベータ(配列番号8)であり、第4の下線領域がCDR1アルファ(配列番号3)であり、5番目の下線領域がCDR2アルファ(配列番号4)であり、第6の下線領域がCDR3アルファ(配列番号5)である。太字の領域はリンカー(配列番号94)である。アミノ末端から開始して、第1の斜体領域がベータ鎖定常領域(配列番号93)であり、第2の斜体領域がアルファ鎖定常領域(配列番号91)である。ベータ鎖可変領域(配列番号10)は、アミノ末端から始まり、ベータ鎖定常領域の開始の直前に終わる配列を含む。アルファ鎖可変領域(配列番号9)は、リンカーの直後に始まり、アルファ鎖定常領域の開始の直前に終わる配列を含む。全長ベータ鎖(配列番号12)は、アミノ末端から始まり、リンカーの開始の直前に終わる配列を含む。全長アルファ鎖(配列番号11)は、リンカーの直後に始まり、カルボキシル末端で終わる配列を含む。
【0164】
野生型アルファ鎖シグナルペプチドを有する4285-PBL-TCR1のバリアントを、配列番号180に示す。バリアントは、配列番号178に記載の通りに(野生型シグナルペプチドを有する)アルファ鎖可変領域を含む。バリアントの全長アルファ鎖を、配列番号179に示す。
【0165】
4285-PBL-TCR1の別のバリアントは、配列番号205に記載の通りのベータ鎖可変領域(野生型シグナルペプチドを有する)を含む。バリアントの全長ベータ鎖を、配列番号206に示す。
【0166】
N末端シグナルペプチドを有さない、4285-PBL-TCR1アルファ鎖及びベータ鎖の予測可変領域成熟配列を表7に示す。N末端シグナルペプチドを有さない成熟配列について予測されるアルファ鎖可変領域を配列番号142に示す。N末端シグナルペプチドを有さない、予測全長アルファ鎖(アルファ鎖可変領域及び定常領域を含む)を配列番号160に示す。N末端シグナルペプチドを有さない予測ベータ鎖可変領域を配列番号143に示す。N末端シグナルペプチドを有さない予測全長ベータ鎖(ベータ鎖可変領域及び定常領域を含む)を、配列番号161に示す。
【0167】
【0168】
患者4285から単離したTCR 4285-PBL-TCR2の配列を直上に示す。アミノ末端から開始して、最初の下線の領域がCDR1ベータ(配列番号17)であり、2番目の下線領域がCDR2ベータ(配列番号18)であり、3番目の下線領域がCDR3ベータ(配列番号19)であり、第4の下線領域がCDR1アルファ(配列番号14)であり、5番目の下線領域がCDR2アルファ(配列番号15)であり、第6の下線領域がCDR3アルファ(配列番号16)である。太字の領域はリンカー(配列番号94)である。アミノ末端から開始して、第1の斜体領域がベータ鎖定常領域(配列番号93)であり、第2の斜体領域がアルファ鎖定常領域(配列番号91)である。ベータ鎖可変領域(配列番号21)は、アミノ末端から始まり、ベータ鎖定常領域の開始の直前に終わる配列を含む。アルファ鎖可変領域(配列番号20)は、リンカーの直後に始まり、アルファ鎖定常領域の開始の直前に終わる配列を含む。全長ベータ鎖(配列番号23)は、アミノ末端から始まり、リンカーの開始の直前に終わる配列を含む。全長アルファ鎖(配列番号22)は、リンカーの直後に始まり、カルボキシル末端で終わる配列を含む。
【0169】
野生型アルファ鎖シグナルペプチドを有する4285-PBL-TCR2のバリアントを、配列番号183に示す。バリアントは、配列番号181に記載の通りに(野生型シグナルペプチドを有する)アルファ鎖可変領域を含む。バリアントの全長アルファ鎖を、配列番号182に示す。
【0170】
4285-PBL-TCR2の別のバリアントは、配列番号207に記載の通りのベータ鎖可変領域(野生型シグナルペプチドを有する)を含む。バリアントの全長ベータ鎖を、配列番号208に示す。
【0171】
N末端シグナルペプチドを有さない、4285-PBL-TCR2アルファ鎖及びベータ鎖の予測可変領域成熟配列を表7に示す。N末端シグナルペプチドを有さない成熟配列について予測されるアルファ鎖可変領域を配列番号144に示す。N末端シグナルペプチドを有さない、予測全長アルファ鎖(アルファ鎖可変領域及び定常領域を含む)を配列番号162に示す。N末端シグナルペプチドを有さない予測ベータ鎖可変領域を配列番号145に示す。N末端シグナルペプチドを有さない予測全長ベータ鎖(ベータ鎖可変領域及び定常領域を含む)を、配列番号163に示す。
【0172】
【0173】
患者4285から単離したTCR 4285-PBL-TCR3の配列を直上に示す。アミノ末端から開始して、最初の下線の領域がCDR1ベータ(配列番号28)であり、2番目の下線領域がCDR2ベータ(配列番号29)であり、3番目の下線領域がCDR3ベータ(配列番号30)であり、第4の下線領域がCDR1アルファ(配列番号25)であり、5番目の下線領域がCDR2アルファ(配列番号26)であり、第6の下線領域がCDR3アルファ(配列番号27)である。太字の領域はリンカー(配列番号94)である。アミノ末端から開始して、第1の斜体領域がベータ鎖定常領域(配列番号93)であり、第2の斜体領域がアルファ鎖定常領域(配列番号91)である。ベータ鎖可変領域(配列番号32)は、アミノ末端から始まり、ベータ鎖定常領域の開始の直前に終わる配列を含む。アルファ鎖可変領域(配列番号31)は、リンカーの直後に始まり、アルファ鎖定常領域の開始の直前に終わる配列を含む。全長ベータ鎖(配列番号34)は、アミノ末端から始まり、リンカーの開始の直前に終わる配列を含む。全長アルファ鎖(配列番号33)は、リンカーの直後に始まり、カルボキシル末端で終わる配列を含む。
【0174】
野生型アルファ鎖シグナルペプチドを有する4285-PBL-TCR3のバリアントを、配列番号186に示す。バリアントは、配列番号184に記載の通りに(野生型シグナルペプチドを有する)アルファ鎖可変領域を含む。バリアントの全長アルファ鎖を、配列番号185に示す。
【0175】
4285-PBL-TCR3の別のバリアントは、配列番号209に記載の通りのベータ鎖可変領域(野生型シグナルペプチドを有する)を含む。バリアントの全長ベータ鎖を、配列番号210に示す。
【0176】
N末端シグナルペプチドを有さない、4285-PBL-TCR3アルファ鎖及びベータ鎖の予測可変領域成熟配列を表7に示す。N末端シグナルペプチドを有さない成熟配列について予測されるアルファ鎖可変領域を配列番号146に示す。N末端シグナルペプチドを有さない、予測全長アルファ鎖(アルファ鎖可変領域及び定常領域を含む)を配列番号164に示す。N末端シグナルペプチドを有さない予測ベータ鎖可変領域を配列番号147に示す。N末端シグナルペプチドを有さない予測全長ベータ鎖(ベータ鎖可変領域及び定常領域を含む)を、配列番号165に示す。
【0177】
【0178】
患者4285から単離したTCR 4285-PBL-TCR5の配列を直上に示す。アミノ末端から開始して、最初の下線の領域がCDR1ベータ(配列番号39)であり、2番目の下線領域がCDR2ベータ(配列番号40)であり、3番目の下線領域がCDR3ベータ(配列番号41)であり、第4の下線領域がCDR1アルファ(配列番号36)であり、5番目の下線領域がCDR2アルファ(配列番号37)であり、第6の下線領域がCDR3アルファ(配列番号38)である。太字の領域はリンカー(配列番号94)である。アミノ末端から開始して、第1の斜体領域がベータ鎖定常領域(配列番号93)であり、第2の斜体領域がアルファ鎖定常領域(配列番号91)である。ベータ鎖可変領域(配列番号43)は、アミノ末端から始まり、ベータ鎖定常領域の開始の直前に終わる配列を含む。アルファ鎖可変領域(配列番号42)は、リンカーの直後に始まり、アルファ鎖定常領域の開始の直前に終わる配列を含む。全長ベータ鎖(配列番号45)は、アミノ末端から始まり、リンカーの開始の直前に終わる配列を含む。全長アルファ鎖(配列番号44)は、リンカーの直後に始まり、カルボキシル末端で終わる配列を含む。
【0179】
野生型アルファ鎖シグナルペプチドを有する4285-PBL-TCR5のバリアントを、配列番号189に示す。バリアントは、配列番号187に記載の通りに(野生型シグナルペプチドを有する)アルファ鎖可変領域を含む。バリアントの全長アルファ鎖を、配列番号188に示す。
【0180】
4285-PBL-TCR5の別のバリアントは、配列番号211に記載の通りのベータ鎖可変領域(野生型シグナルペプチドを有する)を含む。バリアントの全長ベータ鎖を、配列番号212に示す。
【0181】
N末端シグナルペプチドを有さない、4285-PBL-TCR5アルファ鎖及びベータ鎖の予測可変領域成熟配列を表7に示す。N末端シグナルペプチドを有さない成熟配列について予測されるアルファ鎖可変領域を配列番号148に示す。N末端シグナルペプチドを有さない、予測全長アルファ鎖(アルファ鎖可変領域及び定常領域を含む)を配列番号166に示す。N末端シグナルペプチドを有さない予測ベータ鎖可変領域を配列番号149に示す。N末端シグナルペプチドを有さない予測全長ベータ鎖(ベータ鎖可変領域及び定常領域を含む)を、配列番号167に示す。
【0182】
【0183】
患者4285から単離したTCR 4285-PBL-TCR6の配列を直上に示す。アミノ末端から開始して、最初の下線の領域がCDR1ベータ(配列番号50)であり、2番目の下線領域がCDR2ベータ(配列番号51)であり、3番目の下線領域がCDR3ベータ(配列番号52)であり、第4の下線領域がCDR1アルファ(配列番号47)であり、5番目の下線領域がCDR2アルファ(配列番号48)であり、第6の下線領域がCDR3アルファ(配列番号49)である。太字の領域はリンカー(配列番号94)である。アミノ末端から開始して、第1の斜体領域がベータ鎖定常領域(配列番号93)であり、第2の斜体領域がアルファ鎖定常領域(配列番号91)である。ベータ鎖可変領域(配列番号54)は、アミノ末端から始まり、ベータ鎖定常領域の開始の直前に終わる配列を含む。アルファ鎖可変領域(配列番号53)は、リンカーの直後に始まり、アルファ鎖定常領域の開始の直前に終わる配列を含む。全長ベータ鎖(配列番号56)は、アミノ末端から始まり、リンカーの開始の直前に終わる配列を含む。全長アルファ鎖(配列番号55)は、リンカーの直後に始まり、カルボキシル末端で終わる配列を含む。
【0184】
野生型アルファ鎖シグナルペプチドを有する4285-PBL-TCR6のバリアントを、配列番号192に示す。バリアントは、配列番号190に記載の通りに(野生型シグナルペプチドを有する)アルファ鎖可変領域を含む。バリアントの全長アルファ鎖を、配列番号191に示す。
【0185】
4285-PBL-TCR6の別のバリアントは、配列番号213に記載の通りのベータ鎖可変領域(野生型シグナルペプチドを有する)を含む。バリアントの全長ベータ鎖を、配列番号214に示す。
【0186】
N末端シグナルペプチドを有さない、4285-PBL-TCR6アルファ鎖及びベータ鎖の予測可変領域成熟配列を表7に示す。N末端シグナルペプチドを有さない成熟配列について予測されるアルファ鎖可変領域を配列番号150に示す。N末端シグナルペプチドを有さない、予測全長アルファ鎖(アルファ鎖可変領域及び定常領域を含む)を配列番号168に示す。N末端シグナルペプチドを有さない予測ベータ鎖可変領域を配列番号151に示す。N末端シグナルペプチドを有さない予測全長ベータ鎖(ベータ鎖可変領域及び定常領域を含む)を、配列番号169に示す。
【0187】
【0188】
患者4285から単離したTCR 4285-PBL-TCR7の配列を直上に示す。アミノ末端から開始して、最初の下線の領域がCDR1ベータ(配列番号61)であり、2番目の下線領域がCDR2ベータ(配列番号62)であり、3番目の下線領域がCDR3ベータ(配列番号63)であり、第4の下線領域がCDR1アルファ(配列番号58)であり、5番目の下線領域がCDR2アルファ(配列番号59)であり、第6の下線領域がCDR3アルファ(配列番号60)である。太字の領域はリンカー(配列番号94)である。アミノ末端から開始して、第1の斜体領域がベータ鎖定常領域(配列番号93)であり、第2の斜体領域がアルファ鎖定常領域(配列番号91)である。ベータ鎖可変領域(配列番号65)は、アミノ末端から始まり、ベータ鎖定常領域の開始の直前に終わる配列を含む。アルファ鎖可変領域(配列番号64)は、リンカーの直後に始まり、アルファ鎖定常領域の開始の直前に終わる配列を含む。全長ベータ鎖(配列番号67)は、アミノ末端から始まり、リンカーの開始の直前に終わる配列を含む。全長アルファ鎖(配列番号66)は、リンカーの直後に始まり、カルボキシル末端で終わる配列を含む。
【0189】
野生型アルファ鎖シグナルペプチドを有する4285-PBL-TCR7のバリアントを、配列番号195に示す。バリアントは、配列番号193に記載の通りに(野生型シグナルペプチドを有する)アルファ鎖可変領域を含む。バリアントの全長アルファ鎖を、配列番号194に示す。
【0190】
4285-PBL-TCR7の別のバリアントは、配列番号215に記載の通りのベータ鎖可変領域(野生型シグナルペプチドを有する)を含む。バリアントの全長ベータ鎖を、配列番号216に示す。
【0191】
N末端シグナルペプチドを有さない、4285-PBL-TCR7アルファ鎖及びベータ鎖の予測可変領域成熟配列を表7に示す。N末端シグナルペプチドを有さない成熟配列について予測されるアルファ鎖可変領域を配列番号152に示す。N末端シグナルペプチドを有さない、予測全長アルファ鎖(アルファ鎖可変領域及び定常領域を含む)を配列番号170に示す。N末端シグナルペプチドを有さない予測ベータ鎖可変領域を配列番号153に示す。N末端シグナルペプチドを有さない予測全長ベータ鎖(ベータ鎖可変領域及び定常領域を含む)を、配列番号171に示す。
【0192】
【0193】
患者4285から単離したTCR 4285-PBL-TCR9の配列を直上に示す。アミノ末端から開始して、最初の下線の領域がCDR1ベータ(配列番号72)であり、2番目の下線領域がCDR2ベータ(配列番号73)であり、3番目の下線領域がCDR3ベータ(配列番号74)であり、第4の下線領域がCDR1アルファ(配列番号69)であり、5番目の下線領域がCDR2アルファ(配列番号70)であり、第6の下線領域がCDR3アルファ(配列番号71)である。太字の領域はリンカー(配列番号94)である。アミノ末端から開始して、第1の斜体領域がベータ鎖定常領域(配列番号93)であり、第2の斜体領域がアルファ鎖定常領域(配列番号91)である。ベータ鎖可変領域(配列番号76)は、アミノ末端から始まり、ベータ鎖定常領域の開始の直前に終わる配列を含む。アルファ鎖可変領域(配列番号75)は、リンカーの直後に始まり、アルファ鎖定常領域の開始の直前に終わる配列を含む。全長ベータ鎖(配列番号78)は、アミノ末端から始まり、リンカーの開始の直前に終わる配列を含む。全長アルファ鎖(配列番号77)は、リンカーの直後に始まり、カルボキシル末端で終わる配列を含む。
【0194】
野生型アルファ鎖シグナルペプチドを有する4285-PBL-TCR9のバリアントを、配列番号198に示す。バリアントは、配列番号196に記載の通りに(野生型シグナルペプチドを有する)アルファ鎖可変領域を含む。バリアントの全長アルファ鎖を、配列番号197に示す。
【0195】
4285-PBL-TCR9の別のバリアントは、配列番号217に記載の通りのベータ鎖可変領域(野生型シグナルペプチドを有する)を含む。バリアントの全長ベータ鎖を、配列番号218に示す。
【0196】
N末端シグナルペプチドを有さない、4285-PBL-TCR9アルファ鎖及びベータ鎖の予測可変領域成熟配列を表7に示す。N末端シグナルペプチドを有さない成熟配列について予測されるアルファ鎖可変領域を配列番号154に示す。N末端シグナルペプチドを有さない、予測全長アルファ鎖(アルファ鎖可変領域及び定常領域を含む)を配列番号172に示す。N末端シグナルペプチドを有さない予測ベータ鎖可変領域を配列番号155に示す。N末端シグナルペプチドを有さない予測全長ベータ鎖(ベータ鎖可変領域及び定常領域を含む)を、配列番号173に示す。
【0197】
実施例8
本実施例は、患者4259からの腫瘍試料からのT細胞と、変異p53-Y220Cペプチドとの共培養後に検出したCD8+4-1BB+T細胞の頻度を実例で示す。
【0198】
4259-F1腫瘍断片培養物からのCD8+T細胞の選別後、限界希釈によって、T細胞クローンを調製した。24培養物を、DMSO(ペプチドビヒクル)、WT p53-Y220ペプチド
【0199】
【0200】
又はMUTp53-Y220Cペプチド
【0201】
【0202】
でパルスしたT2腫瘍細胞(HLA-A
*02:01)と共培養した。一晩のインキュベーション後、細胞をCD3、CD8、及び4-1BBについて染色し、次いでフローサイトメトリーで分析した。培養物からのCD8
+4-1BB
+T細胞の頻度を
図5に示す。
図5に示す通り、反応性T細胞クローンが得られた。
【0203】
実施例9
本実施例は、p53-Y220C新抗原反応性T細胞受容体4259-F1-TCRの単離を実例で示す。
【0204】
p53-Y220C及びHLA-A
*02:01(実施例8の患者4259の断片培養物F1から)に特異性を有するTCRの配列を決定することは困難であった。該配列は、古典的な単一細胞PCR技術を用いて決定することができなかった。単一細胞PCR技術の2の限界は、(1)それによりシークエンシングするのは超可変CDR3領域を取り巻くTCR遺伝子の短い部分のみである(これにより研究者がTCRのより多型性が少ない領域、例、可変ファミリー、を用いて残りのTCRを推測できるようになる)こと、及び(2)サンガーシークエンシング法による機能的シークエンシングリードアウト得るために存在できる配列は1つだけであることである。これらの問題を、T細胞クローンを、希釈を抑制することによって作製すること、次いで5’RACEによって、全長TCRアルファ及びTCRベータ遺伝子を、発現したmRNA転写産物としてシークエンシングすることにより回避した。次いで、p53-Y220C及びHLA-A
*02:01に特異性を有するT細胞クロノタイプが、2のTCRアルファ鎖及び2のTCRベータ鎖を発現することを判定した。これは、1のTCRアルファ及び1のTCRベータのみを発現する殆どのT細胞とは対照的である。TCRベータ鎖の1方のみが機能的であり、これは、もう1方にフレームシフトが有り、未成熟終止コドンがもたらされるためである。更に、このTCRベータ鎖(単一細胞PCR及びTRBV7-9ファミリーの(低解像度)Adaptive BiotechnologiesTCRBサーベイシークエンシングによって報告された)は、TRBV7-9
*01ファミリーではなく、TRBV7-9
*03ファミリーのものであった。該2可変鎖間には非保存的アミノ酸置換(26位のN又はD)が有り、このことはTRBV7-9
*03の選択が有用であったことを示している(
図9を参照)。同定された2の機能的TCRアルファ鎖が有り、そのうちの1方のみが機能的TCRベータと正しく対形成し、p53-Y220C及びHLA-A
*02:01に対する特異性が付与された。
【0205】
TCR対を再構築し、レトロウイルスベクターにクローン化した。非常に効率的な翻訳のための、より強力なコザック配列を有するように、2番目のアミノ酸残基をアラニン(A)に変更した。TCRα鎖定常領域を、システイン置換、LVL改変マウスα鎖定常領域に置換した。TCRβ鎖定常領域を、システイン置換マウスβ鎖定常領域に置換した。
【0206】
【0207】
患者4259から単離したp53-Y220C新抗原反応性のTCR 4259-F1-TCRの配列を直上に示す。アミノ末端から開始して、最初の下線の領域がCDR1ベータ(配列番号83)であり、2番目の下線領域がCDR2ベータ(配列番号84)であり、3番目の下線領域がCDR3ベータ(配列番号85)であり、第4の下線領域がCDR1アルファ(配列番号80)であり、5番目の下線領域がCDR2アルファ(配列番号81)であり、第6の下線領域がCDR3アルファ(配列番号82)である。太字の領域はリンカー(配列番号94)である。アミノ末端から開始して、第1の斜体領域がベータ鎖定常領域(配列番号93)であり、第2の斜体領域がアルファ鎖定常領域(配列番号91)である。ベータ鎖可変領域(配列番号87)は、アミノ末端から始まり、ベータ鎖定常領域の開始の直前に終わる配列を含む。アルファ鎖可変領域(配列番号86)は、リンカーの直後に始まり、アルファ鎖定常領域の開始の直前に終わる配列を含む。全長ベータ鎖(配列番号89)は、アミノ末端から始まり、リンカーの開始の直前に終わる配列を含む。全長アルファ鎖(配列番号88)は、リンカーの直後に始まり、カルボキシル末端で終わる配列を含む。
【0208】
野生型シグナルペプチドを有するアルファ鎖を含む4259-F1-TCRのバリアントを、配列番号201に示す。バリアントは、配列番号199に記載の通りに(野生型シグナルペプチドを有する)アルファ鎖可変領域を含む。バリアントの全長アルファ鎖を、配列番号200に示す。
【0209】
4259-F1-TCRの別のバリアントは、配列番号219に記載の通りのベータ鎖可変領域(野生型シグナルペプチドを有する)を含む。バリアントの全長ベータ鎖を、配列番号220に示す。
【0210】
N末端シグナルペプチドを有さない、4259-F1-TCRのアルファ鎖及びベータ鎖の可変領域のアミノ酸配列を表8に示す。CDRを下線で示す。N末端シグナルペプチドを有さない、予測全長アルファ鎖(アルファ鎖可変領域及び定常領域を含む)を配列番号174に示す。N末端シグナルペプチドを有さない予測全長ベータ鎖(ベータ鎖可変領域及び定常領域を含む)を、配列番号175に示す。
【0211】
【0212】
実施例10
本実施例は、実施例9の4259-F1-TCRが、変異p53-Y220Cペプチドを特異的に認識し、対応するWTペプチドはしないことを実証する。
【0213】
実施例9の4259-F1-TCRをドナー末梢血T細胞に形質導入し、次いで、漸減濃度の、WT p53-Y220ペプチド
【0214】
【0215】
又はMUT p53-Y220Cペプチド
【0216】
【0217】
のいずれかでパルスした、T2腫瘍細胞(HLA-A
*02:01)と共培養した。一晩のインキュベーション後、共培養上清をELISAによってインターフェロンガンマ分泌について分析した。結果を
図6に示す。
【0218】
実施例11
本実施例は、4259-F1-TCRがp53-Y220C(HLA-A*02:01によって提示)を発現する腫瘍細胞を特異的に認識することを実証する。
【0219】
TCRを発現しない(非形質導入)、p53-R175H特異的TCRを発現する、又は実施例9の4259-F1-TCRを発現するいずれかのT細胞を、HLA-A
*02:01、p53-R175H又はp53-Y220Cの発現の有り若しくは無しのいずれかで、腫瘍細胞と共培養した。一晩のインキュベーション後、細胞をCD3、CD8、及び4-1BBについて染色し、次いでフローサイトメトリーにより分析した。培養物からのCD8
+4-1BB
+T細胞の頻度を
図7に示す。
【0220】
実施例12
本実施例は、患者4141からのTCRの単離及び特異的反応性を実例で示す。
【0221】
p53変異反応性TILを有する患者の治療のまとめを表9に示す。
【0222】
【0223】
自己APCを、関係性のない変異、WT p53配列、又はR175Hを含む変異p53配列をコードするTMGでトランスフェクションした。培地のみ、並びにPMA及びイオノマイシンが、それぞれネガティブ及びポジティブコントロールであった。翌日、患者4141(断片培養物12)からのTILを、TMGをトランスフェクションしたAPCと37℃で一晩共培養した。IFN-γの分泌を、ELISPOTによって評価した。4-1BBの発現を、リンパ球→生細胞(PI陰性)→CD3+(T細胞)→CD4
-CD8
+についてゲートした後のフローサイトメトリーにより評価した。結果を
図10に示す。
【0224】
Cos7細胞(ウェルあたり2.5x10
4)を平底96ウェルプレートのウェルにプレーティングした。翌日、細胞を患者4141からの個々のHLA対立遺伝子と、追加遺伝子無し、WT TP53 TMG、又はp53-R175H配列を含有する変異TP53TMGのいずれかで、共トランスフェクションした。患者4141(断片培養物12)からのp53-R175Hに特異性を有するTILを、翌日、トランスフェクションしたCos7細胞と共培養し、37℃で一晩インキュベーションした。IFN-γの分泌をELISPOTにより評価した。結果を
図11に示す。
【0225】
モック(TCR無し)又は4141-TCR1a2を発現するT細胞を、T2腫瘍細胞(HLA-A
*02:01を発現する)と共培養した。T2細胞を37℃で2時間、ペプチドビヒクル(DMSO)又はWT p53-R175ペプチドHMTEVVRRC(配列番号95)又は変異p53-R175HペプチドHMTEVVRHC(配列番号96)で構成される精製(HPLCで>95%)ペプチドでパルスした。培地のみ、並びにPMA及びイオノマイシンが、それぞれネガティブ及びポジティブコントロールであった。共培養は37℃で一晩行った。IFN-γの分泌をELISAで評価した。結果を
図12に示す。
【0226】
4141-TCR1a2を発現するT細胞を、未操作か、又は全長p53-R175Hタンパク質を過剰発現するように作製したかの、いずれかのSaos2細胞(p53-NULL及びHLA-A
*02:01+)と37℃で一晩共培養した。分泌阻害剤(モネンシン及びブレフェルジンA)を共培養物に加えて、T細胞内にサイトカインをトラップした。6時間の共培養後、細胞を固定して透過処理し、次いでIL-2、CD107a、IFN-γ、腫瘍壊死因子-α(TNFα)について染色した。フローサイトメトリーを用いて、リンパ球のゲートに基づいて共培養物を分析した。結果を
図13に示す。
【0227】
患者4141から単離されたTCR 4141-TCR1a2の配列を以下に示す。アミノ末端から開始して、1番目の下線の領域がCDR1アルファ(配列番号131)であり、2番目の下線の領域がCDR2アルファ(配列番号132)であり、3番目の下線の領域がCDR3アルファ(配列番号133)であり、4番目の下線の領域がCDR1ベータ(配列番号134)であり、5番目の下線の領域がCDR2ベータ(配列番号135)であり、6番目の下線の領域がCDR3ベータ(配列番号136)である。太字の領域はリンカー(配列番号94)である。アミノ末端から開始して、1番目の斜体領域がアルファ鎖定常領域(配列番号91)であり、2番目の斜体領域がベータ鎖定常領域(配列番号93)である。アルファ鎖可変領域(配列番号137)は、アミノ末端から開始し、アルファ鎖定常領域の開始直前に終了する配列を含む。ベータ鎖可変領域(配列番号138)は、リンカーの直後に開始し、ベータ鎖定常領域の開始の直前に終了する配列を含む。全長アルファ鎖(配列番号139)は、アミノ末端から開始し、リンカーの開始の直前で終了する配列を含む。全長ベータ鎖(配列番号140)は、リンカーの直後に開始し、カルボキシ末端で終了する配列を含む。
【0228】
がん反応性T細胞を、以下に記載の通り同定した。TCRは、以下に記載の通り単離した。
TCR名:4141-TCR1a2
p53変異の認識:R175H
スクリーニング方法:p53「ホットスポット」変異ユニバーサルスクリーニング
TCRを同定するための共培養:4141注入バッグのTILの、p53mutTMGとの共培養そしてCD8+41BB+ T細胞の選別
TCRを同定する方法:アルファ鎖用の、単一細胞RT-PCR、次いでTA TOPOクローニングキット(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)
TCRオリエンテーション:アルファ-ベータ
発現ベクター:SBトランスポゾン
【0229】
【0230】
野生型シグナルペプチドを有するベータ鎖を含む4141-TCR1a2のバリアントを、配列番号204に示す。バリアントは、配列番号202に記載の通りに(野生型シグナルペプチドを有する)ベータ鎖可変領域を含む。バリアントの全長ベータ鎖を、配列番号203に示す。
【0231】
野生型シグナルペプチドを有するアルファ鎖を含む4141-TCR1a2の別のバリアントを、配列番号225に示す。該バリアントは、配列番号221に記載の通りのベータ鎖可変領域を含む。バリアントの全長ベータ鎖を、配列番号222に示す。該バリアントは、配列番号223に記載の通りに(野生型シグナルペプチドを有する)アルファ鎖可変領域を含む。バリアントの全長アルファ鎖を、配列番号224に示す。
【0232】
N末端シグナルペプチドを有さない、4141-TCR1a2アルファ鎖及びベータ鎖の可変領域のアミノ酸配列を表10に示す。CDRを下線で示す。N末端シグナルペプチドを有さない、予測全長アルファ鎖(アルファ鎖可変領域及び定常領域を含む)を配列番号176に示す。N末端シグナルペプチドを有さない予測全長ベータ鎖(ベータ鎖可変領域及び定常領域を含む)を、配列番号177に示す。
【0233】
【0234】
患者4141からの4141-TCR1a2の統計値を、以下の表11に示す。
【0235】
【0236】
TCR 4141-TCR1a2を単離し、T細胞中において発現させ、関連抗原に対して試験した。結果のまとめを表12に示す。
【0237】
【0238】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書に引用した全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組込まれることが個々に且つ具体的に示されているのと同程度及びその全体が本明細書に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書に組込まれる。
【0239】
本発明の説明に関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書に特記しないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。1以上の事項の列挙の後での用語「少なくとも1」の使用(例えば、「A及びBのうち少なくとも1」)は、本明細書に特記しないか又は文脈と明らかに矛盾しない限り、列挙した事項から選択された1の事項(A若しくはB)又は列挙した事項のうち2以上の任意の組合せ(A及びB)を意味すると解釈すべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、特記しない限り、オープンエンドの用語(即ち、「~を含むがそれらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書の値の範囲の記述は、本明細書に特記しない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書に個々に記述されているかのように本明細書に組込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書に特記しないか又は文脈と特に明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施できる。本明細書に提供される任意の及び全ての例又は例示的語句(例、「等(such as)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書の全ての語句は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0240】
発明を実施するための、発明者が知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載される。これらの好ましい実施形態のバリエーションは、上述の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜用いることを予期しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載の主題の全ての改変及び均等物を含む。更に、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組合せが、本明細書に特記しないか又は文脈と特に明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【配列表】