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特許7635200制御装置、インバータ、インバータおよび電気機械を有するアセンブリ、インバータおよびコンピュータプログラムを動作させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】制御装置、インバータ、インバータおよび電気機械を有するアセンブリ、インバータおよびコンピュータプログラムを動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20250217BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20250217BHJP
【FI】
H02M7/48 F
H02P27/08
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022506203
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2020071117
(87)【国際公開番号】W WO2021018829
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】102019120439.9
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522447473
【氏名又は名称】ヴァレオ、イーオートモーティブ、ジャーマニー、ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VALEO EAUTOMOTIVE GERMANY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】パナヨティス、マンツァナス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル、キューベリヒ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、デュルバウム
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー、ブッヒャー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー、パベレック
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン、ハゼノール
(72)【発明者】
【氏名】ハーラルト、ホフマン
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-022671(JP,A)
【文献】特開2002-010668(JP,A)
【文献】特開2017-184535(JP,A)
【文献】特開2007-267527(JP,A)
【文献】特開2018-019515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02P 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ(2)のスイッチング素子(12)を駆動するための搬送周波数を有するパルス幅変調スイッチング信号(15)を提供するように構成された、電気機械(3)に給電する前記インバータ(2)のための制御装置(8)であって、
前記電気機械(3)の回転速度およびトルクによって定義される動作点を記述する動作点情報に依存して前記搬送周波数を決定し、
前記回転速度が増加し、かつ、前記トルクの大きさが減少するに従い、下限回転速度(23)がゼロとは異なり、上限回転速度(24)が電力制限動作領域(21)または弱め界磁動作領域にある回転速度間隔内に広がる第1の動作領域(22)内で前記搬送周波数を増加させるように構成され
それぞれの回転速度における前記トルクの前記大きさが、この回転速度における前記第1の動作領域(22)での前記トルクの最大の大きさよりも大きい動作点を含む、前記第1の動作領域(22)と重ならずに定義された第2の動作領域(30)内で、特に前記トルクとは無関係に、回転速度の上昇に伴って前記搬送周波数を増加させるように構成された、
ことを特徴とする、制御装置
【請求項2】
前記第1の動作領域(22)の第1の境界(25)が、前記回転速度が前記下限回転速度(23)に対応する第1の動作点(26)から、前記回転速度が前記下限回転速度(23)よりも大きく、前記トルクの前記大きさが前記第1の動作点(26)の前記トルクの前記大きさよりも大きい第2の動作点(27)まで及び、かつ/または、
前記第1の動作領域の第2の境界(28)が、前記回転速度が前記上限回転速度(24)に対応する第1の動作点(29)から、前記回転速度が前記上限回転速度(29)よりも低く、前記トルクの前記大きさが前記第1の動作点(29)の前記トルクの前記大きさよりも大きい第2の動作点(27)まで延びる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1の境界(25)および前記第2の境界(28)の前記第2の動作点(27)が、
同一であり、かつ/または、
前記電力制限動作領域(21)もしくは前記弱め界磁動作領域にあり、かつ/または、
それぞれの前記第2の動作点(27)の前記回転速度における前記トルクの最大の大きさから離間している、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第2の動作領域(30)が、完全に前記電力制限動作領域(21)もしくは前記弱め界磁動作領域内に広がり、かつ/または最大全負荷動作(30a)まで及ぶ、
請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
連続パルス幅変調、特に空間ベクトル変調によって前記パルス幅変調スイッチング信号(15)を生成するように構成された、
請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
それぞれの回転速度における前記トルクの前記大きさが、この回転速度における前記第1の動作領域(22)での前記トルクの最大の大きさよりも大きい動作点を含む、前記第1の動作領域(22)と重ならずに定義された第2の動作領域(33)内で、回転速度の低下およびトルクの減少に伴って前記搬送周波数を増加させるように構成された、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項7】
それぞれの回転速度における前記トルクの前記大きさが、この回転速度における前記第1の動作領域(22)での前記トルクの最大の大きさよりも大きい動作点を含む、前記第1の動作領域(22)と重ならずに定義された第3の動作領域(36)内で、回転速度の上昇およびトルクの減少に伴ってまたはトルクとは無関係に、回転速度の上昇に伴って前記搬送周波数を増加させるように構成された、
請求項1、2またはのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記第3の動作領域(36)が、それぞれの回転速度における前記トルクの前記大きさが、前記第2の動作領域(33)にあるこの回転速度における前記トルクの最大の大きさよりも大きい動作点を含む、
請求項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記第1の動作領域(22)および/または前記第2の動作領域(30)が
負荷動作領域(30a)内まで及び、かつ/または、
本回転速度動作領域(20)から前記電力制限動作領域(21)もしくは前記弱め界磁動作領域内まで及ぶ、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項10】
前記第1の動作領域(22)および/または前記第2の動作領域(33)および/または前記第3の動作領域(36)が、
負荷動作領域(30a)内まで及び、かつ/または、
本回転速度動作領域(20)から前記電力制限動作領域(21)もしくは前記弱め界磁動作領域内まで及ぶ、
請求項7または8のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
不連続パルス幅変調、特に一般化された不連続パルス幅変調によって前記パルス幅変調スイッチング信号(15)を生成するように構成された、
請求項1もしくは2に記載の、または請求項7から10のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項12】
スイッチング素子(12)を制御するスイッチング信号に応じて、入力側に存在する電圧を、電気機械(3)を動作させるための交流電流に変換するように構成された前記スイッチング素子(12)と、
請求項1から11のいずれか一項に記載の制御装置(8)と、
を備えた、インバータ(2)。
【請求項13】
請求項12に記載のインバータ(2)と、前記インバータ(2)によって駆動することができる電気機械(3)とを備えたアセンブリ(1)。
【請求項14】
前記搬送周波数の前記決定が以下の関係を表し、
【数1】
【数2】
および
【数3】
式中、
PWM(M,frot)が、トルクMおよび回転速度frotに依存して決定されるべき前記搬送周波数を記述し、
THDが、前記インバータ(2)の出力電圧の全高調波歪みの歪み尺度を記述し、
PWM,minが、事前定義された、または事前定義可能な最小搬送周波数を記述し、
PWM,losses(M,frot)が、最小搬送周波数
【数4】
での前記インバータ(2)の全損失の最大値、前記最小搬送周波数
【数5】
でのスイッチング損失、および導電損失Pを考慮に入れた、前記トルクMおよび前記回転速度frotに依存する搬送周波数を記述し、
【数6】
が、前記最小搬送周波数
【数7】
での前記歪み尺度、および前記損失に依存する前記搬送周波数
【数8】
での前記歪み尺度の最大値を考慮に入れた、前記トルクMおよび前記回転速度frotに依存する搬送周波数を記述し、
【数9】
が、
【数10】

【数11】
およびfPWM,minの、特にシミュレーションまたは測定によって決定された関数を記述する、
請求項13に記載のアセンブリ。
【請求項15】
制御装置(8)によって実行される、電気機械(3)に給電するためのインバータ(2)を動作させるための方法であって、
前記インバータ(2)の動作のためのパルス幅変調スイッチング信号(15)の搬送周波数を、回転速度が増加し、トルクの大きさが減少するに従い、下限回転速度(23)がゼロとは異なり、上限回転速度(24)が電力制限動作領域(21)または弱め界磁動作領域にある回転速度間隔内に広がる第1の動作領域(22)内で前記搬送周波数が増加するように、前記電気機械(3)の前記回転速度および前記トルクによって定義される動作点を記述する動作点情報に依存して決定するステップであって、それぞれの回転速度における前記トルクの前記大きさが、この回転速度における前記第1の動作領域(22)での前記トルクの最大の大きさよりも大きい動作点を含む、前記第1の動作領域(22)と重ならずに定義された第2の動作領域(30)内で、特に前記トルクとは無関係に、回転速度の上昇に伴って前記搬送周波数を増加させるステップと、
前記インバータ(2)のスイッチング素子(12)に前記パルス幅変調スイッチング信号(15)を供給するステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、請求項15に記載の方法の、制御装置(8)によって実行されるステップを実行させるコマンドを含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械に給電するインバータのための制御装置であって、インバータのスイッチング素子を駆動するための搬送周波数を有するパルス幅変調スイッチング信号を提供するように構成された制御装置に関する。
【0002】
本発明はさらに、インバータ、インバータおよび電気機械を有するアセンブリ、インバータおよびコンピュータプログラムを動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電動ビークルの重要性の高まりにより、そのような応用分野のためのインバータおよびインバータ関連の制御装置が、産業開発努力の焦点になっている。インバータのスイッチング素子を駆動するための一定の搬送周波数を有するパルス幅変調スイッチング信号を提供するタイプの制御装置は公知である。
【0004】
パルス出力電圧は、そのようなスイッチング動作の状況で発生し、特に低トルクの特定の領域では、電気機械の相電流の高い全高調波歪み(THD)をもたらす可能性がある。しかしながら、結果として、電気機械に望ましくない機械的振動が発生することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、インバータの動作における高調波歪みを低減させるという目的に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明によれば、電気機械の回転速度およびトルクによって定義される動作点を記述する動作点情報に依存して搬送周波数を決定し、回転速度が増加し、トルクの大きさが減少するに従い、下限回転速度がゼロとは異なり、上限回転速度が電力制限動作領域または弱め界磁動作領域にある回転速度間隔内に広がる動作領域内で搬送周波数を増加させるように構成された、最初に述べたタイプの制御装置によって達成される。
【0007】
本発明は、インバータの出力電圧の全高調波歪みが、一方では、増加すると全高調波歪みを減少させる搬送周波数に依存し、他方では、電気機械の動作点に依存する、という認識に基づくものである。(第1の)動作領域では、搬送周波数が一定のままであると仮定される場合には、トルクの大きさに応じて、低いスイッチング損失のみがそれでもなお生じるが、しかしながら、回転速度が上昇し、トルクの大きさが減少するに従い、全高調波歪みの増加が進む。したがって、全高調波歪みを低減または制限するために、一定の搬送周波数で動作する場合と比較して、より高いスイッチング損失を許容することができるため、搬送周波数の増加の余地がある。よって有利には、全高調波歪み、ひいては望ましくない機械的振動が低減される。
【0008】
出力電圧の全高調波歪みは、典型的には、本発明の目的では、インバータの出力電圧の周波数成分の重み付き組み合わせである歪み尺度によって記述される。一般的には、そのような歪み尺度mTHDは、以下の式で表すことができる。
【数1】
【0009】
式中、NACは、電気機械の電気周波数fACとインバータの出力電圧uの基本周波数fとの比を表し、aは、重み係数である。時間tの関数としての出力電圧は、以下の式によって記述される。
【数2】
【0010】
3つの出力位相を有するインバータの特に実際的に関連する事例では、x∈{RS,ST,TR}が、通常の位相識別子R、SおよびTに関連して設定されることになる。
【0011】
本発明がそれに限定されない歪み尺度mTHDの可能な特殊事例として、重み付き全高調波歪み(WTHD)は、周波数成分がそれらの順序に従って重み付けされるものとみなされるべきである。その場合、
【数3】
および
【数4】
である。
【0012】
本発明による制御装置の場合には、下限回転速度が基本回転速度動作領域にあることが好ましい。
【0013】
有利には、本発明による制御装置に関して、動作領域の第1の境界は、その回転速度が下限回転速度に対応する第1の動作点から、その回転速度が下限回転速度よりも大きく、そのトルクの大きさが第1の動作点のトルクの大きさよりも大きい第2の動作点まで延びるものとすることができる。代替的または追加的に、動作領域の第2の境界は、その回転速度が上限回転速度に対応する第1の動作点から、その回転速度が上限回転速度よりも低く、そのトルクの大きさが第1の動作点のトルクの大きさよりも大きい第2の動作点まで延びるものとすることもできる。
【0014】
特に、制御装置が、連続パルス幅変調、特に空間ベクトル変調によってパルス幅変調スイッチング信号を生成するように構成されるものとすることができる、本発明の第1の好ましい実施形態を以下で説明する。
【0015】
第1の好ましい実施形態では、第1の境界と第2の境界との第2の動作点は、同一であり、かつ/または電力制限動作領域もしくは弱め界磁動作領域にあり、かつ/またはそれぞれの動作点の回転速度におけるトルクの最大の大きさから離れているものとすることができる。
【0016】
さらに、第1の好ましい実施形態では、制御装置は、それぞれの回転速度におけるそのトルクの大きさが、この回転速度における第1の動作領域でのトルクの最大の大きさよりも大きい動作点を含む、第1の動作領域と重ならずに定義された第2の動作領域内で、特にトルクとは無関係に、回転速度の上昇に伴って搬送周波数を増加させるように構成されるものとすることができる。搬送周波数値が都合よく、第1の動作領域の搬送周波数値に途切れずに隣接している第2の動作領域におけるトルクの全高調波歪みに対する影響は、あるとしても非常に小さいことが確認されている。この点において、第2の動作領域の定義は、全高調波歪みの低減を、電気機械のより高い負荷の動作点、特に全負荷動作まで拡張することを可能にする。この場合の全負荷動作は、本発明の文脈では一般に、それぞれの回転速度に対するトルクの最大の大きさを有する動作点を含む動作モードとして理解することができる。
【0017】
したがって、第2の動作領域は、完全に電力制限動作領域もしくは弱め界磁動作領域内に位置し、かつ/または最大全負荷動作まで及ぶものとすることができる。
【0018】
特に、制御装置が、不連続パルス幅変調、特に一般化された不連続パルス幅変調(GDPWM)によってパルス幅変調スイッチング信号を生成するように構成されるものとすることができる、本発明の第2の好ましい実施形態を以下で説明する。
【0019】
第2の好ましい実施形態では、制御装置が、それぞれの回転速度におけるそのトルクの大きさが、この回転速度における第1の動作領域でのトルクの最大の大きさよりも大きい動作点を含む、第1の動作領域と重ならずに定義された第2の動作領域内で、回転速度の減少およびトルクの減少に伴って搬送周波数を増加させるように構成されれば有利である。
【0020】
代替的または追加的に、第2の好ましい実施形態における本発明による制御装置は、それぞれの回転速度におけるそのトルクの大きさが、この回転速度における第1の動作領域でのトルクの最大の大きさよりも大きい動作点を含む、第1の動作領域と重ならずに定義された第3の動作領域内で、回転速度の上昇およびトルクの減少に伴って、またはトルクとは無関係に回転速度の上昇に伴って搬送周波数を増加させるように構成される。
【0021】
第3の動作領域は、典型的には、それぞれの回転速度におけるそのトルクの大きさが、第2の動作領域にあるこの回転速度におけるトルクの最大の大きさよりも大きい動作点を含む。
【0022】
第2の好ましい実施形態では、第1の動作領域および/または第2の動作領域および/または第3の動作領域は、最大全負荷動作まで及ぶことができ、かつ/または基本回転速度動作領域から電力制限動作領域または弱め界磁動作領域内まで及ぶことができる。
【0023】
本発明による制御装置の有利な発展形態では、さらに、事前定義された、または事前定義可能な最小値を下回る搬送周波数を決定するようには構成されないものとすることができる。低い値の回転速度およびトルクでの搬送周波数が非常に低くなるために、それらと電気機械のそれぞれの相電流の周波数との比が事前定義された最小比を下回る可能性は、このようにして回避される。最小値が指定される動作点も、その程度まで、さらなる動作領域とみなすことができる。
【0024】
特に少ない労力で本発明による制御装置の実装形態を可能にするために、制御装置が、搬送周波数値を回転速度値とトルク値の対に割り当てる特性マップから搬送周波数を選択するように構成されることが好ましい。特性マップは、例えば、ルックアップテーブルによって実現することができる。制御装置は、典型的には、特性マップが格納されたメモリユニットを備える。
【0025】
さらに、特性マップは、それらの対および搬送周波数値の少なくとも区分的線形割り当てを記述するものとすることができる。あるいは、特性マップが個別の対によって定義されること、および制御装置が、個別の対に割り当てられた搬送周波数値の特に線形補間によって搬送周波数を決定するように構成されることも可能である。
【0026】
特性マップの使用の代替形態として、本発明による制御装置を、動作点に依存して搬送周波数を決定することができる解析的計算仕様によって搬送周波数を決定するように構成することもできる。
【0027】
特性マップまたは計算仕様は、例えば、インバータと電気機械との特定の構成についての測定またはシミュレーションによって決定することができる。
【0028】
本発明による制御装置は、更新された動作点情報の受け取り時、および/または事前定義された、もしくは事前定義可能な期間が経過した後、および/または電気機械の電気周期の完結後、および/またはそれぞれのスイッチング信号の期間の完了後に更新された搬送周波数を決定するようにさらに構成することができる。よって、搬送周波数を、好都合な時点における瞬時動作点に適合させることができる。
【0029】
さらに、本発明による制御装置は、入力で受け取られたトルク情報および/もしくは入力で受け取られた回転速度情報から、かつ/または入力で受け取られた電気機械に供給する相電流を記述する電流情報に依存して動作点情報を決定し、かつ/またはスイッチング信号を決定するための制御の状況において動作点情報を推定するように構成されることが可能である。トルクは、特に、電流情報から決定することができる。
【0030】
本発明が基づく目的は、スイッチング素子を制御するスイッチング信号に応じて入力側に存在する電圧を電気機械を動作させるための交流電流に変換するように相互接続されたスイッチング素子を備えるインバータと、本発明による制御装置とによってさらに達成される。
【0031】
インバータは、単一のコンデンサ素子として、または並列および/もしくは直列に接続された複数のコンデンサ素子として特に設計されたDCリンクコンデンサをさらに備えることができる。
【0032】
インバータは、アナログ測定信号を電流情報および/または回転速度情報および/またはトルク情報に変換するように設計されたアナログ・デジタル変換器をさらに備えることができる。
【0033】
本発明が基づく目的は、本発明によるインバータと、インバータによって動作することができる電気機械とを備えたアセンブリによってさらに達成される。
【0034】
ここでは、搬送周波数の決定が以下の関係を表す場合が好ましい。
【数5】
【数6】
および
【数7】
【0035】
式中、
PWM(M,frot)は、トルクMおよび回転速度frotに依存して決定されるべき搬送周波数を記述し、
THDは、インバータの出力電圧の全高調波歪みの歪み尺度を記述し、
PWM,minは、事前定義された、または事前定義可能な最小搬送周波数を記述し、
PWM,losses(M,frot)は、最小搬送周波数
【数8】
でのインバータの全損失の最大値、最小搬送周波数
【数9】
でのスイッチング損失、および導電損失Pを考慮に入れた、トルクMおよび回転速度frotに依存する搬送周波数を記述し、
【数10】
は、最小搬送周波数
【数11】
での歪み尺度、および損失に依存する搬送周波数
【数12】
での歪み尺度の最大値を考慮に入れた、トルクMおよび回転速度frotに依存する搬送周波数を記述し、
【数13】
は、
【数14】

【数15】
およびfPWM,minの、特にシミュレーションまたは測定によって決定された関数を記述する。
【0036】
WTHDが歪み尺度として使用される場合、以下を適用することができる。
【数16】
【0037】
本発明が基づく目的は、制御装置によって実行される、インバータの動作のためのパルス幅変調スイッチング信号の搬送周波数を、回転速度が増加し、トルクの大きさが減少するに従い、下限回転速度がゼロとは異なり、上限回転速度が電力制限動作領域または弱め界磁動作領域にある回転速度間隔内に広がる動作領域内で搬送周波数が増加するように、電気機械の回転速度およびトルクによって定義される動作点を記述する動作点情報に依存して決定するステップと、インバータのスイッチング素子にスイッチング信号を供給するステップと、を含む、電気機械に給電するためのインバータを動作させるための方法によってさらに達成することができる。
【0038】
本発明が基づく目的は、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに、制御装置によって実行される本発明による方法のステップを実行させるコマンドを含むコンピュータプログラムによって最終的に達成される。
【0039】
本発明による制御装置、本発明によるインバータ、および本発明によるアセンブリに関するすべての説明は、本発明による方法および本発明によるコンピュータプログラムにも同様に適用することができ、よって、上述の利点もまたこれらにより達成することができる。
【0040】
本発明のさらなる利点および詳細は、以下で説明される例示的な実施形態から、図面に基づいて明らかになる。これらの図面は、以下の概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明によるインバータの例示的な実施形態および本発明による制御装置の例示的な実施形態を備えた本発明によるアセンブリの例示的な実施形態のブロック図である。
図2図1に示されたアセンブリの動作に関する動作領域が描かれたトルク回転速度図である。
図3】先行技術によるアセンブリのWTHDが描かれたトルク回転速度図である。
図4】先行技術のアセンブリのインバータの全損失が描かれたトルク回転速度図である。
図5】本発明によるアセンブリのさらなる例示的な実施形態を動作させるときの搬送周波数値が描かれたトルク回転速度図である。
図6】さらなる例示的な実施形態のWTHDが描かれたトルク回転速度図である。
図7】さらなる例示的な実施形態のインバータの全インバータ損失が描かれたトルク回転速度図である。
図8図1に示されたアセンブリのさらなる例示的な実施形態の動作に関する動作領域が描かれたトルク回転速度図である。
図9】先行技術によるさらなるアセンブリのWTHDが描かれたトルク回転速度図である。
図10】先行技術によるさらなるアセンブリの全インバータ損失が描かれたトルク回転速度図である。
図11】本発明によるアセンブリのさらなる例示的な実施形態を動作させるときの搬送周波数値が描かれたトルク回転速度図である。
図12】さらなる例示的な実施形態のWTHDが描かれたトルク回転速度図である。
図13】さらなる例示的な実施形態のインバータの全インバータ損失が描かれたトルク回転速度図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、インバータ2の例示的な実施形態と、部分的または完全に電動式であり得るビークルを駆動するように構成された電気機械3とを備えた、アセンブリ1の例示的な実施形態のブロック図である。アセンブリ1は、本例では高電圧バッテリとして設計されるDC電圧源4をさらに備える。
【0043】
インバータ2は、本例ではEMCフィルタとして設計されるフィルタ装置5と、DCリンクコンデンサ6と、パワーユニット7と、制御装置8の例示的な実施形態と、第1の測定装置9と、第2の測定装置10と、アナログ・デジタル変換装置11とを備える。
【0044】
パワーユニット7は、半導体スイッチング素子、例えば、IGBTやパワーMOSFETとして設計された複数のスイッチング素子12を備える。スイッチング素子12は、対で接続されてハーフブリッジを形成する。駆動回路14は、それぞれのスイッチング素子12の制御入力13の前に接続される。明確にするために、ここでは1つのスイッチング素子12および1つの駆動回路14のみに符号が付されている。駆動回路14は、電気機械3に給電するための電圧がハーフブリッジのそれぞれのタップで供与されるように提供される、制御装置8からのパルス幅変調スイッチング信号15を受け取る。したがって、パワーユニット7は、スイッチング信号15に応じて、DCリンクコンデンサ6によって平滑化されたDCリンク電圧を、この場合は3相を有する電圧に変換する。
【0045】
第1の測定装置9は、相電流を取得し、第1の測定装置9のアナログ測定信号をデジタル電流情報16に変換するアナログ・デジタル変換装置11に測定信号を提供するように構成される。したがって、第2の測定装置10は、電気機械3の回転速度を取得し、第2の測定装置10のアナログ測定信号をデジタル回転速度情報17に変換するアナログ・デジタル変換装置11に測定信号を提供するように構成される。制御装置8は、その入力で電流情報16および回転速度情報17を受け取る。
【0046】
制御装置8は、電流情報16および回転速度情報17に基づいて、電気機械3の回転速度およびトルクによって定義される動作点を記述する動作点情報を決定する。制御装置8は、パルス幅変調スイッチング信号15の搬送周波数を決定するように構成される。このために、制御装置8は、回転速度値とトルク値の対に搬送周波数値を割り当てる特性マップが格納されるメモリユニット18を備える。制御装置8は、動作点情報に基づいて、特性マップから対応する搬送周波数値を選択する。
【0047】
図2は、図1に示されるアセンブリを動作させるときの動作領域が描かれたトルク回転速度図であり、トルクはMで示され、回転速度はfrotで示されている。この例示的な実施形態では、スイッチング信号15は、連続空間ベクトル変調(SVM)によって決定されている。
【0048】
この図は、各対と搬送周波数値との間の関連付けを記述する特性マップを示している。図2には、基本回転速度動作領域20から電力制限動作領域21内または弱め界磁動作領域内に移行するときの最大トルクの大きさを記述する、コーナ動作点19が最初に示されている。搬送周波数値の選択された等値線は、一点鎖線で示されている。
【0049】
第1の動作領域22は、下限回転速度23がゼロとは異なり、上限回転速度24が電力制限動作領域21または弱め界磁動作領域にある回転速度間隔内に広がる。第1の動作領域22の第1の境界25は、その回転速度が下限回転速度23に対応する基本回転速度動作領域にある第1の動作点26から、その回転速度が下限回転速度23よりも大きく、そのトルクの大きさが第1の動作点26のトルクの大きさよりも大きい第2の動作点27まで延びる。第2の動作点27は、電力制限動作領域21または弱め界磁動作領域にあり、第2の動作点27の回転速度におけるトルクの最大振幅から離間している。
【0050】
第1の動作領域22の第2の境界28は、その回転速度が上限回転速度に対応する第1の動作点29から、第1の境界25の第2の動作点27と同一の第2の動作点まで延びる。
【0051】
制御装置8は、回転速度の上昇およびトルクの大きさの減少に伴って、第1の動作領域22内の搬送周波数を増加させるように構成される。これは、この図以降では、矢印によって表されている。
【0052】
第1の動作領域22と重ならないように定義された第2の動作領域30は、それぞれの回転速度におけるそのトルクの大きさが、第1の動作領域にあるこの回転速度におけるトルクの最大の大きさよりも大きい動作点を含む。第2の動作領域30は、完全に電力制限動作領域21または弱め界磁動作領域内に位置し、それぞれの回転速度に対してトルクの可能な最大の大きさが存在する特性マップに線で記述された全負荷動作30aまで及ぶ。制御装置8は、トルクとは無関係に、回転速度の上昇に伴って第2の動作領域30内で搬送周波数を増加させるように構成される。
【0053】
制御装置8は、最終的に、事前定義された最小値を下回る搬送周波数を決定しないように構成される。この点に関して、最小値が指定されたさらなる動作領域31が描かれている。さらなる動作領域31は、第1の境界25の低回転速度側の動作点、および第2の動作領域30の境界28aを含む。
【0054】
要約すると、動作領域22、30、31の特性マップは、以下の関係を形成する。
【数17】
【数18】
および
【数19】
【0055】
式中、
PWM(M,frot)は、トルクMおよび回転速度frotに依存して決定されるべき搬送周波数を記述し、
WTHDは、インバータ2の出力電圧の全高調波歪みの例示的な歪み尺度としての重み付き全高調波歪みを記述し、
PWM,minは、最小搬送周波数を記述し、
PWM,losses(M,frot)は、最小搬送周波数
【数20】
での全損失の最大値、最小搬送周波数
【数21】
でのスイッチング損失、および導電損失Pを考慮に入れた、トルクMおよび回転速度frotに依存する搬送周波数を記述し、
PWM,WTHD(M,frot)は、最小搬送周波数
【数22】
での重み付き全歪み、および損失に依存する搬送周波数
【数23】
での重み付き全歪みの最大値を考慮に入れた、トルクMおよび回転速度frotに依存する搬送周波数を記述する。
【0056】
制御装置8は、搬送周波数を定期的に更新するように構成される。これは、例えば、更新された動作点情報の受け取り時、事前定義された、もしくは事前定義可能な期間が経過した後、電気機械3の電気周期の完結後、またはそれぞれのスイッチング信号15の期間の完了後に行われる。上記の更新イベントの組み合わせも可能である。
【0057】
図3および図4は、SVMが使用される先行技術による図1に対応するアセンブリに関する。しかしながら、このアセンブリでは、搬送周波数がトルク回転速度図のすべての動作点に対して一定の10kHzに指定されるものとする。
【0058】
図3は、先行技術によるアセンブリのWTHDが描かれたトルク回転速度図である。WTHDは、図3に、WTHDの値がパーセント単位で与えられる等値線で示されている。WTHDは、基本的に回転速度の増加と共に上昇し、大きさが低いトルクで特に顕著であることが分かる。ここで、高い値のWTHDは、電気機械3に不必要な振動を引き起こす可能性がある。
【0059】
図4は、先行技術によるアセンブリのインバータの全損失が描かれたトルク回転速度図である。全損失は、図4に、全損失の値がkW単位で与えられる等値線で示されている。大雑把には、10kHzの一定の搬送周波数での全損失は、トルクの大きさが増加するに従って増加し、回転速度とはほとんど無関係である。
【0060】
図5図6および図7は、上述の図1および図2の例示的な実施形態に対応するアセンブリ1のさらなる例示的な実施形態に関する。アセンブリ1の具体的な設計は、ここでは、最大12000min-1の回転速度まで及び、約-250~250Nmのトルクをカバーする特性マップで示されている。搬送周波数の決定は動作点に依存する。スイッチング信号15は、SVMによって決定される。
【0061】
図5は、さらなる例示的な実施形態の動作中の搬送周波数値が描かれたトルク回転速度図である。特性マップは、ここでは実験的に基づいて、またはシミュレーションによって決定されている。動作領域22、30、31、およびコーナ動作点19が示されている。
【0062】
図6は、WTHDが描かれたトルク回転速度図であり、図は図3に対応する。図6図3との比較より、動作点に依存して搬送周波数を決定することによって、1.3%の最大WTHD値が達成され、これは、先行技術による一定の搬送周波数仕様での3.0%を超える最大WTHD値よりも著しく低いことが分かる。
【0063】
図7は、インバータ2の全損失が描かれたトルク回転速度図であり、図は図4に対応する。図7図4との比較より、一定の搬送周波数仕様で高いWTHD値が発生する領域における全損失は、先行技術の前損失をわずかに上回って増加することが分かる。しかしながら、最大全損失は、スイッチング素子12の熱耐久性が特にこれに向けられなければならないため、特に注目に値する。これらは実質的に不変であることが有利である。よって、動作点に依存した搬送周波数仕様は、電気機械3の広い動作領域にわたって全高調波歪みを大幅に低減させることを可能にし、それによって最大全損失を増加させることはない。
【0064】
図8は、図1に示されたアセンブリ1のさらなる例示的な実施形態の動作に関する動作領域が描かれたトルク回転速度図である。この例示的な実施形態では、スイッチング信号15は、一般化された不連続パルス幅変調(GDPWM)によって、すなわち不連続変調方式を使用して決定される。
【0065】
図8には、回転速度の上昇およびトルクの大きさの減少に伴って搬送周波数がその範囲内で増加し、下限回転速度23と、電力制限動作領域21または弱め界磁動作領域にある上限回転速度24との間に広がる第1の動作領域22が再度示されている。第1の動作領域22の第1の境界25は、その回転速度が下限回転速度23に対応する基本回転速度動作領域20にある第1の動作点26から、その回転速度が下限回転速度23よりも大きく、そのトルクの大きさが第1の動作点26のトルクの大きさよりも大きい第2の動作点27まで延びる。しかしながら、第2の動作点27もまた基本回転速度動作領域20にあり、第1の境界27は全負荷動作領域30a内まで延びる。
【0066】
第1の動作領域22の第2の境界28は、その回転速度が上限回転速度24に対応する第1の動作点29から、ただし、基本回転速度動作領域20および全負荷動作領域30a内にあり、第1の境界25の第2の動作点27よりも高い回転速度を有する第2の動作点32まで延びる。
【0067】
図8は、それぞれの回転速度におけるそのトルクの大きさが、第1の動作領域22にあるこの回転速度におけるトルクの最大の大きさよりも大きい動作点を含む、第1の動作領域22と重ならないように定義された特性マップの第2の動作領域33をさらに示している。第2の動作領域33は、第1の動作領域22に直接隣接している。第2の動作領域33の一方の境界34は、電力制限動作領域21または弱め界磁動作領域にある上限回転速度35から、最大、基本回転速度動作領域20内の全負荷動作領域30aまで延びる。制御装置8は、回転速度の低下およびトルクの減少に伴って第2の動作領域33内で搬送周波数を増加させるように構成される。
【0068】
特性マップでは第3の動作領域36も定義され、それぞれの回転速度におけるそのトルクの大きさが、動作領域22、33にあるこの回転速度におけるトルクの最大の大きさよりも大きい動作点を含む。第3の動作領域36は、第2の動作領域33の境界34を越えて、基本回転速度動作領域20と、電力制限動作領域21または弱め界磁動作領域とにある。制御装置8は、回転速度の上昇およびトルクの減少に伴って、または代替として、トルクとは無関係に、回転速度の上昇に伴って第3の動作領域36内で搬送周波数を増加させるように構成される。
【0069】
他の点では、この例示的な実施形態は、図1および図2を参照して説明されたように、第1の例示的な実施形態に対応する。
【0070】
図9および図10は、先行技術による図1に対応するアセンブリに関する。しかしながら、このアセンブリでは、搬送周波数がトルク回転速度図のすべての動作点に対して一定の15.9kHzに指定され、GDPWMが使用されるものとする。
【0071】
図9は、先行技術によるアセンブリのWTHDが描かれたトルク回転速度図である。WTHDは、図9に、WTHDの値がパーセント単位で与えられる等値線で示されている。異なるタイプの変調に起因して、WTHDは、図3によるSVMが使用される場合とは異なって分布することが分かる。近似として、ここでは、WTHDは小さな値のトルクに対してより高い値を用いると規定することができる。しかしながら、WTHDの全域的最大値は、電力制限動作領域または弱め界磁動作領域において0Nmのトルクで存在する。
【0072】
図10は、先行技術によるアセンブリのインバータの全損失が描かれたトルク回転速度図である。全損失は、図10に、全損失の値がkW単位で与えられる等値線で示されている。全損失の分布は、図4によるSVMによる分布にほぼ対応する。
【0073】
図11図12および図13は、上述の図1および図8の例示的な実施形態に対応するアセンブリ1のさらなる例示的な実施形態に関する。アセンブリ1の具体的な設計は、ここでもやはり、最大12000min-1の回転速度まで及び、約-250~250Nmのトルクをカバーする特性マップで示されている。搬送周波数の決定は動作点に依存する。スイッチング信号15は、GDPWMによって決定される。
【0074】
図11は、さらなる例示的な実施形態の動作中の搬送周波数値が描かれたトルク回転速度図である。特性マップは、ここでは実験的に基づいて、またはシミュレーションによって決定されている。動作領域22、31、33、36、およびコーナ動作点19が示されている。
【0075】
図12は、WTHDが描かれたトルク回転速度図であり、図は図9に対応する。図12図9との比較より、動作点に依存して搬送周波数を決定することによって、0.9%の最大WTHD値が達成され、これは、先行技術による一定の搬送周波数仕様での2.5%を超える最大WTHD値よりも著しく低いことが分かる。
【0076】
図13は、インバータ2の全損失が描かれたトルク回転速度図であり、図は図10に対応する。図13図10との比較より、図4および図7を参照して説明された利点は、GDPWMの使用によっても達成されることが分かる。
【0077】
以下のさらなる例示的な実施形態は、前述の例示的な実施形態のいずれかに基づくものとすることができ、制御装置8のさらなる例示的な実施形態によれば、特性マップは個別の対によって定義され、制御装置8は、個別の対に割り当てられた搬送周波数値の補間、特に線形補間によって搬送周波数を決定するように構成される。さらなる例示的な実施形態によれば、制御装置8は、特性マップに基づく代わりに動作点に依存して搬送周波数を決定することができる解析的計算仕様によって搬送周波数を決定するように構成される。さらなる例示的な実施形態によれば、トルク情報は、電流情報16を参照して得られるのではなく、スイッチング信号15を決定するための制御の状況において制御装置8によって推定または測定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13