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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】2つの親水性表面を結合する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20250217BHJP
   H10D 88/00 20250101ALI20250217BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L27/12 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022525410
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 FR2020051888
(87)【国際公開番号】W WO2021084188
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】1912269
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランク・フルネル
(72)【発明者】
【氏名】アズィリ・カルヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ガエル・エルウ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・ラレー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・モラール
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/199117(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0295642(US,A1)
【文献】特開2014-127719(JP,A)
【文献】特表2015-501543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H10D 88/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板(10)及び第2の基板(20)を供給する段階であって、前記第1の基板(10)が第1の親水性表面(11)で覆われ、前記第2の基板(20)が第2の親水性表面(21)で覆われる段階と、
前記第1の親水性表面(11)及び/又は前記第2の親水性表面(21)に、少なくとも1つの原子によって離れている親水性官能基及び塩基性官能基を含む特定の分子(30)を堆積する段階と
前記第1の親水性表面(11)を前記第2の親水性表面(21)と接触させる段階であって、それにより、2つの前記親水性表面(11、21)が互いに結合され、前記第1の基板(10)と前記第2の基板(20)が組み立てられる段階と
を含む、2つの基板(10、20)の直接結合方法。
【請求項2】
前記特定の分子(30)が、前記第1の親水性表面(11)及び/又は前記第2の親水性表面(21)を完全に覆うことを特徴とする、請求項1に記載の結合方法。
【請求項3】
前記特定の分子(30)が、前記第1の親水性表面(11)及び/又は前記第2の親水性表面(21)の0.05%から10%をっていることを特徴とする、請求項1に記載の結合方法。
【請求項4】
前記特定の分子(30)が液体状態で堆積されることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の結合方法。
【請求項5】
前記特定の分子(30)が気体状態で堆積されることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の結合方法。
【請求項6】
前記特定の分子(30)の親水性官能基がアルコール官能基であり、及び/又は、前記塩基性官能基が第一級、第二級又は第三級アミンであることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載の結合方法。
【請求項7】
前記特定の分子(30)のモル質量が、500g/mol以下であることを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載の結合方法。
【請求項8】
前記第1の基板(10)及び/又は前記第2の基板(20)がシリコン基板であることを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の親水性表面及び/又は前記第2の親水性表面が、酸化物で作られていることを特徴とする、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1の基板(10)及び第2の基板(20)を備える組立体であって、
前記第1の基板(10)が第1の親水性表面(11)で覆われ、前記第2の基板(20)が第2の親水性表面(21)で覆われ、前記第1の親水性表面(11)が前記第2の親水性表面(21)に結合され、
前記第1の親水性表面(11)と前記第2の親水性表面(21)との間に、少なくとも1つの原子によって離れている親水性官能基及び塩基性官能基を含む特定の分子(30)が堆積されている、組立体。
【請求項11】
前記特定の分子(30)の親水性官能基がアルコール官能基であり、及び/又は、前記塩基性官能基が第一級、第二級又は第三級アミンであることを特徴とする、請求項10に記載の組立体。
【請求項12】
前記第1の基板(10)及び前記第2の基板(20)を組み立てた後、500℃以下の温度での結合アニーリング熱処理が適用されることを特徴とする、請求項1に記載の結合方法。
【請求項13】
前記特定の分子(30)が、前記第1の親水性表面(11)及び/又は前記第2の親水性表面(21)の0.05%から1%を覆っていることを特徴とする、請求項3に記載の結合方法。
【請求項14】
前記特定の分子(30)のモル質量が、200g/mol以下であることを特徴とする、請求項7に記載の結合方法。
【請求項15】
前記第1の親水性表面および/または前記第2の親水性表面が、堆積酸化物、熱酸化物及び/又は自然酸化物であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの親水性表面を直接結合する方法、並びに、そのような方法で得られる組立体に関する。
【0002】
本発明は、多くの産業分野、特に、シリコンオンインシュレータ(SOI)の製造、又は、例えば撮像素子の製造に用途がある。
【0003】
本発明は、結合後の低い熱アニーリング収支のために、良好な機械的抵抗を有する組立体を得ることが可能になるので、特に興味深い。
【背景技術】
【0004】
直接結合(ダイレクトボンディング)は、材料を追加しない、特に液体材料又はポリマーの厚い層を追加しない、2つの表面間の自発的な結合である。しかしながら、特に数枚の単層の水が親水性であるが、結合される表面が巨視的に乾燥している場合、結合される表面に数枚の単層の水を吸着させることが可能である。直接結合は、従来、周囲温度及び周囲圧力で行われるが、これは義務ではない。SiO-SiO結合の場合、結合される表面は、通常、180℃で96%の硫酸と30%の酸素飽和水(3:1)とSC1の混合物(70℃でアンモニア30%、酸素飽和水30%、脱イオン水(1:1:5)の混合物)で得られたカロ(Caro)酸塩基を含む溶液で事前に洗浄される。これらの洗浄により、直接結合に非常に有害な有機物及び粒子の汚染を取り除くことができる。あるいは、例えば、オゾンを含む水溶液、又はガス状オゾンの存在下でのUV光への曝露を使用する処理を伴う、他の高度に酸化性の洗浄溶液を使用することが可能である。
【0005】
直接結合は、次の特徴がある:
-結合エネルギー(付着エネルギーとも呼ばれる):これは、2つの結合面を分離するために必要なエネルギーであり、結合エネルギーは、結合後に適用される熱アニーリングに応じて変化する。
-付着エネルギー:これは、自発的な結合を実行するために利用可能なエネルギーである。これは、ファンデルワールス力の助けを借りて、2つの表面を原子スケールで接触させるために2つの表面を変形させることを可能にするエネルギーである。
【0006】
例えば、親水性酸化ケイ素又はシリコンの2つの表面の場合、付着エネルギーは、通常30から100mJ/mの範囲である。クリーンルーム環境で、70℃でカロ(Caro)及びSC1の塩基を使用した化学洗浄で結合する、SiO-SiOの付着エネルギーは、アニーリングなしの結合直後で約140mJ/mである。結合の場合、付着エネルギーは、熱アニーリングの温度に応じて増加する。例えば、結合エネルギーは、ゆっくりと上昇し、500℃で3J/mに達し、その後、800℃まで停滞する(図1)。
【0007】
結合エネルギーを高めるための解決策は、プラズマ処理を行うことである。図1に示されるように、窒素プラズマ(N)を使用すると、酸化物-酸化物結合の場合、300℃のアニーリング温度で結合エネルギーが5J/mに急速に上昇する。
【0008】
しかしながら、プラズマを使用することは、特定の基板と適合しない可能性があり、及び/又は、それを使用することは、方法の時間及び/又はコストを延長し、それらを工業化することをより困難にする。プラズマ処理はまた、数ナノメートル(1から10nm)の厚さにわたって表面を修正する。この修正により、その後のデバイスが妨害される可能性がある。例えば、シリコンプレートの場合、プラズマは、厚さ及び品質の点で制御が難しい酸化物の層を生成する。酸化ケイ素の表面では、Nプラズマなどの特定のプラズマが界面電荷の問題を引き起こし、その後のデバイスの電気的動作を妨げる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服し、プラズマ処理を使用せずに低温(通常、500℃以下、好ましくは、300℃以下)で強い結合エネルギーを得ることができる結合方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、本発明は、
第1の基板及び第2の基板を供給する段階であって、第1の基板が第1の親水性表面で覆われ、第2の基板が第2の親水性表面で覆われる段階と、
第1の基板の第1の親水性表面及び/又は第2の基板の第2の親水性表面に特定の分子を堆積する段階であって、特定の分子が、少なくとも1つの原子によって離れている親水性官能基及び塩基性官能基を含む段階と、
第1の親水性表面を第2の親水性表面と接触させる段階であって、それにより、第1の基板及び第2の基板が、第1の親水性表面及び第2の親水性表面の結合によって組み立てられる段階と、
任意に、好ましくは500℃以下、さらにより好ましくは300℃以下の温度での結合アニーリング熱処理を適用する段階と、
を含む、2つの基板の直接結合の方法を提案する。
【0011】
本発明は、親水性官能基及び塩基性官能基を含む特定の分子を使用することにより、従来技術とは基本的に区別される。親水性官能基により、結合される親水性表面に特定の分子を容易に化学吸着させることができる。塩基性官能基は、吸着された水の単層のpHを上げることを可能にする。この分子の存在は、得られる結合エネルギーを実質的に増加させる。
【0012】
「親水性表面」とは、少なくとも1%の相対湿度を有する空気中の大気圧(すなわち、約1バール)で、少なくとも1つの単層の水がその表面に吸着されることを意味する。水滴の角度が90°未満、好ましくは50°未満、さらにより好ましくは5°未満である場合、表面は親水性であると言われる。
【0013】
好ましくは、第1の親水性表面及び第2の親水性表面は、酸化物で作られている。これは、堆積された酸化物の薄層、熱処理によって得られた酸化物の薄層(熱酸化物とも呼ばれる)、及び/又は、化学処理によって得られた酸化物の薄層(自然酸化物又は化学酸化物とも呼ばれる)であり得る。
【0014】
第1の有利な代替実施形態によれば、特定の分子は、第1の基板の第1の親水性表面及び/又は第2の基板の第2の親水性表面を完全に覆う。有利には、親水性表面上に1から5層の特定の分子が存在する。有利には、唯一の単層がある。
【0015】
第2の有利な代替実施形態によれば、特定の分子は、第1の基板の第1の親水性表面及び/又は第2の基板の第2の親水性表面の0.05%から10%、好ましくは0.05%から1%を覆う。
【0016】
第1の有利な実施形態の代替案によれば、特定の分子は、液体状態で堆積される。
【0017】
第2の有利な実施形態の代替法によれば、特定の分子は、気体状態で堆積される。
【0018】
有利には、特定の分子の親水性官能基は、アルコール官能基であり、及び/又は、塩基性官能基は、第一級、第二級又は第三級アミンである。
【0019】
有利には、特定の分子のモル質量は、500g/mol以下であり、好ましくは、200g/mol以下である。
【0020】
有利には、第1の基板及び/又は第2の基板は、シリコン基板である。1つ又は複数の基板は、酸化ケイ素の薄層で覆われている。酸化物の層は、堆積層、熱酸化物の層又は自然酸化物の層であり得る。
【0021】
結合の方法には多くの利点がある:
-表面処理は、液体又は気体状態の特定の分子を使用して行われる。この方法は、実装が簡単であるため、簡単に工業化することができる。
-強力な結合を確保するために、少量の特定の分子で十分である。
-この方法は、多くの材料に適用でき、安価である。
-分子を使用しても付着エネルギーが低下しない。
-熱処理後においても結合界面に気泡の形成、剥離及び/又は欠陥はない。
-結合温度は、多くの用途及び/又は多くの基板と互換性がある(その性質及び/又は電子及び/又は光電子部品の存在は、低い熱収支を必要とする)。
-この方法は、結合後に良好な機械的抵抗を有し、スマートカットなどの後の方法、及び/又は、例えば機械的薄化などの、アセンブリに機械的応力を生成する任意の方法と互換性のある組み立てられた構造をもたらす。
【0022】
本発明はまた、第1の基板及び第2の基板を含む組立体であって、第1の基板が第1の親水性表面で覆われ、第2の基板が第2の親水性表面で覆われ、第1の基板の第1の親水性表面と第2の基板の第2の親水性表面との間に特定の分子が配され、特定の分子が親水性官能基及び塩基性官能基を含み、特定の分子の2つの官能基が少なくとも1つの原子によって離れている組立体に関連する。
【0023】
有利には、特定の分子の親水性官能基は、アルコール官能基であり、及び/又は、塩基性官能基は、第一級、第二級又は第三級アミンである。
【0024】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の補足説明から明らかになるものである。
【0025】
言うまでもなく、この補足説明は、本発明の目的を説明する目的でのみ提供されており、いかなる場合でも、この目的の限定として解釈されてはならない。
【0026】
本発明は、情報提供のみを目的として、非限定的な方法で与えられた実施形態の説明を、添付の図面を参照して読むときに、よりよく理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、プラズマ活性化の有無にかかわらず、直接結合後に行われる熱アニーリング温度による結合エネルギーを示すグラフであり、各熱アニーリングは、従来技術によれば、約2時間続く。
図2図2は、本発明の特定の実施形態による、直接結合によって組み立てられる2つの基板を断面として概略的に示し、基板の1つは特定の分子によって覆われている。
図3図3は、本発明の特定の実施形態による、基板の1つの酸化物の層の表面が特定の分子によって飽和されたときに、結合後に行われる熱アニーリングによる結合エネルギーを示すグラフである。
図4図4は、本発明の特定の実施形態による、基板の1つの酸化物の層の表面が特定の分子によって部分的に覆われているときに、結合後に行われる熱アニーリングによる結合エネルギーを示すグラフである。
図5図5は、本発明の特定の実施形態による、特定の分子溶液の異なる体積希釈について、結合後に行われる熱アニーリングによる結合エネルギーを示すグラフである。
図6図6は、本発明の特定の実施形態による、800℃での熱アニーリング後における、特定の分子を実装する結合の走査型音響顕微鏡法(SAM)によって得られた画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図を読みやすくするために、図に示されている様々な部分は、必ずしも均一な縮尺で示されているわけではない。
【0029】
様々な可能性(代替案及び実施形態)は、互いに排他的ではなく、共に組み合わせることができると理解すべきである。
【0030】
また、以下の説明では、構造物が図に示すように配向していることを考慮して、構造物の「上」、「下」などの配向に依存する用語を適用する。
【0031】
これは決して制限ではないが、本発明は、特にSOI及び撮像素子の製造の分野での用途を有する。
【0032】
この方法は、2つの基板10、20を直接結合する方法であり、より具体的には、例えば酸化物を用いて2つの親水性表面を直接結合する方法である。
【0033】
この方法は、
(a)第1の基板10及び第2の基板20を供給する段階であって、第1の基板10が第1の親水性表面11で覆われ、第2の基板20が第2の親水性表面21で覆われる段階と、
(b)第1の基板の第1の親水性表面及び/又は第2の基板の第2の親水性表面に特定の分子30を付ける段階であって、特定の分子30が親水性官能基及び塩基性官能基を含み、特定の分子の2つの官能基が少なくとも1つの原子によって離れている段階と、
(c)第1の親水性表面11を第2の親水性表面21と接触させる段階であって、それにより、2つの親水性表面11、21が互いに結合され、第1の基板10と第2の基板20が組み立てられる段階と、
を含む。
【0034】
段階(a)で提供される各基板10、20は、互いに平行な2つの主面を含む。各基板の主面の少なくとも1つは、親水性表面11、21で覆われている(図2)。
【0035】
第1の基板10及び/又は第2の基板20は、シリカ、金属、金属合金又は半導体材料で作ることができる。
【0036】
好ましくは、第1の基板10及び/又は第2の基板20は、Si、Ge、InP、AsGa、Al、SiO、Si、SiC、GaN、LNO、LTO、Cu、Ti、Niから選択される材料で作られる。第1の基板及び第2の基板は、同一の性質のものでも、異なる性質のものでもよい。
【0037】
第1の基板10及び第2の基板20は、親水性表面11、21で覆われている、すなわち、それらの表面に吸着された水の少なくとも1つの単層がある。
【0038】
好ましくは、第1の基板10は、第1の親水性表面を形成するように第1の酸化物薄層で覆われ、第2の基板20は、第2の親水性表面を形成するように第2の酸化物薄層で覆われる。
【0039】
例えば、第1の基板10及び第2の基板20は、自然酸化物の層又は熱酸化物の層によって覆われている。
【0040】
第1の代替実施形態によれば、基板の1つは、自然酸化物の層によって覆われ得、他方は、熱酸化物の層によって覆われ得る。
【0041】
別の代替実施形態によれば、2つの基板は、熱酸化物の層によって覆われ得る。
【0042】
別の代替実施形態によれば、2つの基板は、自然酸化物の層によって覆われ得る。
【0043】
これらの全ての代替案において、熱酸化物の層は、酸化物の堆積層で置き換えることができる。
【0044】
有利には、段階(b)の前に、1つ又は複数の前処理、例えば、機械的及び/又は化学的な前処理を行うことができる。例えば、シリコン及びその酸化物の場合、有利には、180℃で96%の硫酸と30%の酸素飽和水(3:1)とSC1の混合物(70℃でアンモニア30%、酸素飽和水30%、脱イオン水(1:1:5)の混合物)で得られるカロ酸の塩基を用いて、例えば70℃の温度で化学的洗浄が使用される。他の洗浄を検討することができる。
【0045】
基板10、20は、好ましくは、ウェハである。
【0046】
段階(b)の間に、結合を改善するために特定の分子30が堆積される。
【0047】
特定の分子30は有機分子である。それは、少なくとも1つの原子によって離れている親水性官能基及び塩基性官能基を含む。言い換えると、2つの官能基は、同じ原子上にはなく、例えば、同じ炭素原子上にはない。
【0048】
「塩基性官能基」とは、特定の分子30がプロトン化することができる基を含むことを意味する。好ましくは、塩基性基は、第一級アミン、第二級アミン又は第三級アミンである。それはまた、酸性官能基のイオン化、例えばスルホン酸基SOHに由来する官能基のイオン化であり得、-SO3をもたらす。この基本的な機能のためにアルコラート基(R-O-)を持つことも可能である。
【0049】
親水性官能基は、例えば、ヒドロキシル官能基、エーテル、アミド、エステル又はケトンである。
【0050】
親水性官能基は、好ましくは、ヒドロキシル官能基(アルコール官能基とも呼ばれる)である。これは、第一級、第二級又は第三級アルコールであり得る。
【0051】
さらにより好ましくは、親水性官能基は、ヒドロキシル官能基であり、塩基性官能基は、第一級、第二級又は第三級アミンである。
【0052】
特定の分子30は、いくつかの酸性官能基及び/又はいくつかの塩基性官能基を含むことができる。
【0053】
好ましくは、この分子は、塩基性官能基及び少なくとも1つのヒドロキシル官能基を含む。例えば、それは、塩基性官能基と、1つ、2つ又は3つの親水性官能基とを含む。
【0054】
特定の分子30は、環状又は非環状であり得る。好ましくは、それは非環状である。分子が開いた炭素鎖を含む場合、炭素鎖は、線状又は分岐状であり得る。それは、好ましくは、1から10個の炭素原子、さらにより好ましくは、1から6個の炭素原子を含む。
【0055】
有利には、特定の分子30の分子量は、500g/mol以下であり、好ましくは、200g/mol以下である。それは、有利には、40g/molより大きい。
【0056】
説明の目的で、かつ非限定的な方法で、特定の分子30は、N、N-ジエチル-2-アミノ-エタノール(CAS:100-37-8)、ジメチルアミノエタノール又はDMAE(CAS:108-01-0)、ジエチルエタノールアミン又はDEAE(CAS:100-37-8)、モノエタノールアミン(CAS:141-43-5)、N-メチルジエタノールアミン、又は、MDEA(CAS:105-59-9)、アミノメタノール(CAS:3088-27-5)、N-メチルヒドロキシルアミン(CAS:593-77-1)、ジエタノールアミン又はDEA(CAS:111-42-2)、ジメタノールアミン(CAS:7487-32-3)、トリエタノールアミン(CAS:102-71-6)及びトリメタノールアミン(CAS:14002-32-5)から選択される。
【0057】
特定の分子30を、
-第1の基板10の親水性表面11上に、又は
-第2の基板20の親水性表面12上に、又は
-第1の基板10の親水性表面11及び第2の基板20の親水性表面21の両方の上に、
堆積させることができる。
【0058】
特定の分子30は、液体状態及び/又は気体状態で堆積させることができる。
【0059】
特定の分子の純粋な溶液又は特定の分子の希釈溶液を使用することができる。
【0060】
有利には、pHを上げるために溶液に塩基を加えることが可能である。例えば、KOH、NaOH、NaCO又はNHOHを使用することができる。
【0061】
特定の分子30を液体状態で堆積させるために、任意の液体堆積技術、例えば、コーティング、噴霧、スピンコーティング堆積を使用することができる。好ましくは、スピンコーティング堆積が使用される。
【0062】
気体状態の特定の分子30を堆積させるために、基板は、密閉された囲いの中に置かれ、そこで、受容器は、特定の分子の溶液(純粋な、又は希釈された)を含むように配置される。次に、溶液を密閉反応器内で蒸発させるために放置する。
【0063】
特定の分子30は、それが堆積する表面を完全に又は部分的に覆うことができる。
【0064】
堆積される量は、親水性表面上に連続的な単層が形成されるような量であり得る(表面の飽和)。表面に複数の単層を配置することも可能であり、例えば、表面に最大5つの単層を配置することができる。
【0065】
「部分的に」とは、特に50%未満、好ましくは10%未満を意味する。さらにより好ましくは、特定の分子は、結合される表面の1%未満、さらには0.1%未満を覆う。有利には、それは、結合される表面の少なくとも0.05%を覆う。特に有利な実施形態によれば、それは、結合される表面の0.05%から1%、さらにより好ましくは0.05%から0.1%を覆う。
【0066】
段階(c)の間に、結合される表面(すなわち、親水性表面11、21)が接触され、それによって、それらの親水性表面11、21で互いに結合された2つの基板10、20を含む組立体が得られる。段階(c)は、好ましくは、周囲温度(すなわち、約20℃の温度)で行われる。
【0067】
特定の分子30は、親水性表面11、21に付着したままであり、結合界面で囲まれている。それは、組立体に閉じ込められており、蒸発することはできない。
【0068】
このようにして得られた組立体は、それぞれが親水性表面11、21で覆われる2つの基板10、20を含み、上記で定義されたような特定の分子30が2つの親水性表面の間に配置される。
【0069】
この方法は、結合後に熱アニーリングが行われる段階中に後の段階を含むことができる。結合後の熱アニーリングにより、段階(c)で得られた直接結合を強化することができる。熱アニーリングの温度は、例えば、100℃から1200℃の範囲である。好ましくは、この温度は、100℃から500℃の範囲であり、さらにより好ましくは100℃から300℃の範囲である。
【0070】
アニーリング後の組立体の結合エネルギーは、熱アニーリングの温度に応じて600mJから5000mJの範囲である。例えば、300℃の温度の場合、結合エネルギーは、3500mJから4000mJの範囲である。
【0071】
(一実施形態の例示的かつ非限定的な例)
説明する様々な実施形態では、プレートは、直径200mm、厚さ725μmのシリコンプレートである。それらは、表面上に145nmの厚さの酸化ケイ素膜を得るために熱酸化された。次に、オゾン水とSC1、続いてSC2(塩酸30%、飽和酸素水30%及び水の混合物1:1:5)で洗浄して、それえらの表面を親水性にする。
【0072】
ここでの結合の特定の分子は、N、N-ジエチル-2-アミノ-エタノール(CAS:100-37-8)である。
【0073】
(例1:表面の飽和)
約50又は100Lの容量の反応器に、10mLの純粋な特定の分子(希釈されていない)を含むビーカーを置く。この溶液を放置し、密閉反応器内で1時間30分間蒸発させる。次に、2枚のシリコンプレートをこの雰囲気に3分間置き、その後、それらが結合する。結合波は約8秒で200mmを通過し、これは、この分子がない場合の結合に相当する。
【0074】
この結合は、アニーリングされ、付着エネルギーは、様々な温度で測定される。特定の分子で得られる結合エネルギーは、特定の分子がない場合よりも実質的である(図3)。一方、表面が急速に飽和するため、露光時間に依存しない:30秒間、8分間又は15分間の露光時間でも同じ結果が得られる。
【0075】
(例2:表面の部分飽和)
容量が約50又は100Lの反応器に、1mLの水と0.02mLの特定の分子を入れたビーカーを置く。この溶液を放置し、密閉反応器内で1時間30分間蒸発させる。次に、2枚のシリコンプレートをこの雰囲気に1分間置き、その後、それらが結合する。結合波は約8秒で200mmを通過し、これは、この分子がない場合の結合に相当する。
【0076】
この結合は、アニーリングされ、付着エネルギーは、様々な温度で測定される。図4に示すように、表面が部分的に飽和している場合に得られる結合エネルギーは、表面が完全に飽和している場合よりも大きくなる。希釈溶液の飽和蒸気圧が低いために濃度が低くなると、全温度範囲でより良い結合エネルギーを得ることができる。
【0077】
図5は、特定の分子の溶液の希釈による結合エネルギーを示す。
【0078】
(例3:溶液による表面の部分飽和)
スピンコーティング堆積は、プレートの表面に1体積%の特定の分子を含む溶液を堆積するために使用される:水と生成物の混合物の流れは表面に生成され、表面全体が覆われるまで30rpmで回転する。次いで、生成物の分注を停止し、余剰分を取り除くために2000rpmで30秒間回転させる。次いで、2つのプレートが結合される。結合波は約8秒で200mmを通過し、これは、この分子がない場合の結合に相当する。
【0079】
この結合は、アニーリングされ、付着エネルギーは。様々な温度で測定され、同じ結果が例2に関して得られる。
【0080】
走査型音響顕微鏡(SAM)で観察すると、結合部に欠陥がないことが確認される(図6)。
【0081】
比較のために、以下の試験を実施した:
-プレートをイソプロピルアルコール蒸気で洗浄した。
-プレートをイソプロピルアルコール蒸気で洗浄し、次いで、それらを結合する前に、2%に希釈したアンモニアを加えた。
【0082】
結合エネルギーに目に見える影響は観察されなかった。
【符号の説明】
【0083】
10 第1の基板
20 第2の基板
11 第1の親水性表面
21 第2の親水性表面
30 特定の分子
図1
図2
図3
図4
図5
図6