(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】オーディオ再生方法、カーオーディオシステム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20250217BHJP
H04S 5/00 20060101ALI20250217BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20250217BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04S5/00
B60R11/02 S
(21)【出願番号】P 2022577170
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(86)【国際出願番号】 CN2022120940
(87)【国際公開番号】W WO2024050880
(87)【国際公開日】2024-03-14
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】202211097006.6
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522237667
【氏名又は名称】エーエーシー テクノロジーズ (ナンジン) カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】AAC Technologies (Nanjing) Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】孫舒遠
(72)【発明者】
【氏名】孟義明
(72)【発明者】
【氏名】張欣
(72)【発明者】
【氏名】イン ハァォ
【審査官】稲葉 崇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/120754(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/089544(WO,A1)
【文献】特開2016-082443(JP,A)
【文献】特表2017-535905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00-3/14
H04S 1/00-7/00
B60R 9/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーオーディオシステムに適用されるオーディオ再生方法であって、
前記カーオーディオシステムは、自動車のコックピット内の異なる位置に設置される複数のスピーカーモジュールを含み、
前記オーディオ再生方法は、
再生しようとするオーディオ信号を取得することと、
前記オーディオ信号を分解して、カテゴリの異なる複数の音源信号を取得することであって、ここで、各前記音源信号はいずれも同じカテゴリにおける複数のサブ音源信号を含むことと、
予め設定された割当原則に基づいて、すべての前記サブ音源信号と前記複数のスピーカーモジュールとの間のルーティングを確立することであって、ここで、前記予め設定された割当原則とは、異なる前記サブ音源信号が異なる前記スピーカーモジュールによって再生される規則を指すことと、
前記ルーティングに基づいて、各前記サブ音源信号をいずれも相応する前記スピーカーモジュールによって再生することと、を含
み、
前記オーディオ信号は、少なくとも1つのチャネルを含み、
前記オーディオ信号を分解して、カテゴリの異なる複数の音源信号を取得することは、
前記オーディオ信号を分解して、すべてのチャネルにおけるカテゴリの異なる複数の音源信号を取得することを含み、
予め設定された割当原則に基づいて、すべての前記サブ音源信号と前記複数のスピーカーモジュールとの間のルーティングを確立することは、
すべての前記チャネル間で同じカテゴリの前記サブ音源信号間の相関性を取得することと、
すべての前記サブ音源信号の周波数を取得することと、
前記相関性と前記周波数を参考に、予め設定された割当原則に基づいてすべての前記サブ音源信号と前記複数のスピーカーモジュールとの間のルーティングを確立することと、を含む、
ことを特徴とするオーディオ再生方法。
【請求項2】
自動車のコックピット内に設けられる制御処理モジュールと、前記制御処理モジュールに接続される複数のスピーカーモジュールとを含み、ここで、前記複数のスピーカーモジュールはそれぞれ前記自動車のコックピット内の異なる位置にあり、前記制御処理モジュールは、
オーディオ再生方法を実行するために
使われ、
前記オーディオ再生方法は、
再生しようとするオーディオ信号を取得することと、
前記オーディオ信号を分解して、カテゴリの異なる複数の音源信号を取得することであって、ここで、各前記音源信号はいずれも同じカテゴリにおける複数のサブ音源信号を含むことと、
予め設定された割当原則に基づいて、すべての前記サブ音源信号と前記複数のスピーカーモジュールとの間のルーティングを確立することであって、ここで、前記予め設定された割当原則とは、異なる前記サブ音源信号が異なる前記スピーカーモジュールによって再生される規則を指すことと、
前記ルーティングに基づいて、各前記サブ音源信号をいずれも相応する前記スピーカーモジュールによって再生することと、を含み、
前記オーディオ信号は、少なくとも1つのチャネルを含み、
前記オーディオ信号を分解して、カテゴリの異なる複数の音源信号を取得することは、
前記オーディオ信号を分解して、すべてのチャネルにおけるカテゴリの異なる複数の音源信号を取得することを含み、
予め設定された割当原則に基づいて、すべての前記サブ音源信号と前記複数のスピーカーモジュールとの間のルーティングを確立することは、
すべての前記チャネル間で同じカテゴリの前記サブ音源信号間の相関性を取得することと、
すべての前記サブ音源信号の周波数を取得することと、
前記相関性と前記周波数を参考に、予め設定された割当原則に基づいてすべての前記サブ音源信号と前記複数のスピーカーモジュールとの間のルーティングを確立することと、を含む、
ことを特徴とするカーオーディオシステム。
【請求項3】
前記制御処理モジュールは、演算処理モジュールと、記憶モジュールと、を含み、前記記憶モジュールは、少なくとも1つのプログラムを記憶するために使われ、かつ、前記少なくとも1つのプログラムが前記演算処理モジュールによって実行されるときに、前記演算処理モジュールは
前記オーディオ再生方法を実行する、
ことを特徴とする請求項
2に記載のカーオーディオシステム。
【請求項4】
前記制御処理モジュールは、オーディオバスをさらに含み、前記オーディオバスは、再生しようとするオーディオ信号を前記演算処理モジュールに伝送するために使われる、
ことを特徴とする請求項
3に記載のカーオーディオシステム。
【請求項5】
前記制御処理モジュールは、デジタルアナログ変換モジュールをさらに含み、前記デジタルアナログ変換モジュールは、前記演算処理モジュールから出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換するために使われる、
ことを特徴とする請求項
3に記載のカーオーディオシステム。
【請求項6】
前記制御処理モジュールは、パワーアンプモジュールをさらに含み、前記パワーアンプモジュールは、前記デジタルアナログ変換モジュールから出力されたアナログ信号を電力増幅して前記複数のスピーカーモジュールに伝送するために使われる、
ことを特徴とする請求項
5に記載のカーオーディオシステム。
【請求項7】
前記制御処理モジュールは、電源管理モジュールをさらに含み、前記電源管理モジュールは、前記演算処理モジュール、前記記憶モジュール、前記デジタルアナログ変換モジュール、前記パワーアンプモジュール及び前記複数のスピーカーモジュールの電力供給管理を行うために使われる、
ことを特徴とする請求項
6に記載のカーオーディオシステム。
【請求項8】
前記スピーカーモジュールは、1つまたは複数のスピーカーを備える、
ことを特徴とする請求項
2に記載のカーオーディオシステム。
【請求項9】
前記スピーカーモジュールは、超低音スピーカーモジュール、低音スピーカーモジュール及び中高音スピーカーモジュールを含む、
ことを特徴とする請求項
2に記載のカーオーディオシステム。
【請求項10】
実行可能な命令が記憶されており、前記実行可能な命令が実行された時に、請求項
1に記載のオーディオ再生方法を実行する、
ことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はオーディオ信号の処理と応用の技術分野に関し、特にオーディオ再生方法、カーオーディオシステム及び記憶媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーオーディオシステムは車載エンターテインメントの重要な構成要素であり、自動車のコックピット内でオーディオを再生することで、ユーザーに優れた没入型運転体験をもたらすことができる。カーオーディオシステムにおけるスピーカー数の発展歴史から見ると、ガソリン車時代には少なくとも4つのスピーカーが搭載されているが、現在のスマートコックピット時代になると、カーオーディオシステムには通常20個以上のスピーカーが搭載されている。このことから、ユーザーの音声に対する追求が最初の単純な音質向上から現在の音場エフェクトへの切望に発展してきたことが分かる。では、カーオーディオシステムのマルチスピーカーアーキテクチャの下で、より良くて没入感のより高いサラウンド体験が特に重要となっている。
【0003】
従来技術では、ほとんどの車載ホスト、ユーザー端末などはデュアルチャネルの音源しか提供できないため、サラウンドサウンドの処理に際して、カーオーディオシステムはデュアルチャネルの音源を通じて簡単なアップミックスとスピーカーのルーティングでしか実現できない。もちろん、一部のハイエンドやフラッグシップモデルの場合、両耳間クロストークキャンセルのサウンドエフェクト処理でサラウンド感を増やしているかもしれないが、デュアルチャネルの音源を簡単にアップミックス・スピーカールーティングするにしても、両耳間クロストークキャンセルのサウンドエフェクト処理でサラウンド感を高めても、優れたサラウンド体験をうまく創り出すことができず、音質に悪影響を及ぼす可能性さえあり、カーオーディオシステム全体の音響体験効果が悪くなる。
【0004】
したがって、上記のカーオーディオシステムのオーディオ再生方式を改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、カーオーディオシステム全体の音響体験効果が悪くなるという従来技術の問題を解決するためのオーディオ再生方法、カーオーディオシステム及び記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の実施例の第1態様では、カーオーディオシステムに適用されるオーディオ再生方法を提供し、前記カーオーディオシステムは、自動車のコックピット内の異なる位置に設置される複数のスピーカーモジュールを含み、前記オーディオ再生方法は、再生しようとするオーディオ信号を取得することと、前記オーディオ信号を分解して、カテゴリの異なる複数の音源信号を取得することであって、ここで、各前記音源信号はいずれも同じカテゴリにおける複数のサブ音源信号を含むことと、予め設定された割当原則に基づいて、すべての前記サブ音源信号と前記複数のスピーカーモジュールとの間のルーティングを確立することであって、ここで、前記予め設定された割当原則とは、異なる前記サブ音源信号が異なる前記スピーカーモジュールによって再生される規則を指すことと、前記ルーティングに基づいて、各前記サブ音源信号をいずれも相応する前記スピーカーモジュールによって再生することと、を含む。
【0007】
本発明の実施例の第2態様では、カーオーディオシステムを提供し、自動車のコックピット内に設けられる制御処理モジュールと、前記制御処理モジュールに接続される複数のスピーカーモジュールとを含み、ここで、前記複数のスピーカーモジュールはそれぞれ前記自動車のコックピット内の異なる位置にあり、前記制御処理モジュールは、本発明の実施例の第1態様に記載のオーディオ再生方法を実行するために使われる。
【0008】
本発明の実施例の第3態様では、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供し、実行可能な命令が記憶されており、前記実行可能な命令が実行された時に、本発明の実施例の第1態様に記載のオーディオ再生方法を実行する。
【発明の効果】
【0009】
上記の説明から、従来技術と比べて、本願の利点は下記の通りである。
まず、再生しようとするオーディオ信号を取得する。次に、オーディオ信号を分解して、カテゴリの異なる複数の音源信号(例えば、弦鳴楽器音信号)を取得する。ここで、各音源信号はいずれも同じカテゴリにおける複数サブ音源信号(例えば、弦鳴楽器音信号は二胡音信号、バイオリン音信号、チェロ音信号などを含む)を含む。その後、予め設定された割当原則に基づいて、すべてのサブ音源信号と複数スピーカーモジュールとの間のルーティングを確立する。ここで、予め設定された割当原則とは、異なるサブ音源信号が異なるスピーカーモジュールによって再生する規則を指す。最後に、ルーティングに基づいて、各サブ音源信号を相応するスピーカーモジュールによって再生する。以上からわかるように、本願では、音源のカテゴリに基づいて、入力されたオーディオ信号をカテゴリの異なる複数の音源信号(各音源信号はいずれも同じカテゴリにおける複数のサブ音源信号を含む)に分解し、さらに予め設定された割当原則を参考にして、異なるサブ音源信号を自動車のコックピット内の異なる位置にあるスピーカーモジュールによって再生する。これによって、より正確で没入性のより高い車載用マルチチャネルサラウンド繰り返し再生(繰り返し再生とは、異なるサブ音源信号を異なるスピーカーモジュールによって再生することを指す)を提供し、カーオーディオシステム全体の音響体験効果を効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
関連技術または本願の実施例における技術案をより明確に説明するために、以下、関連技術または本願の実施例の説明に必要な図面を簡単に説明し、明らかに、以下説明された図面は、本願のいくつかの実施例に過ぎず、すべての実施例ではなく、当業者であれば、進歩的な労働をしなくても、これらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【
図1】
図1は、本願の実施例に係るオーディオ再生方法のフローチャートである。
【
図2】
図2は、本願の実施例に係るカーオーディオシステムのモジュールブロック図である。
【
図3】
図3は、本願の実施例に係るカーオーディオシステムの実例図である。
【
図4】
図4は、本願の実施例に係るコンピュータ読み取り可能な記憶媒体のモジュールブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願の目的、技術案及び利点をより明確にかつ理解しやすくするために、以下では、本願の実施例及び対応する図面を組み合わせて本願を明確かつ完全に説明する。ここで、最初から最後まで同一又は類似の符号が同一又は類似の要素又は同一又は類似の機能を有する要素を表す。以下に説明する本願の様々な実施例は、本願を説明するためだけに使用され、本願を限定するために使用されないこと、すなわち、本願の様々な実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を行うことなく取得した他の実施例は、本願の保護範囲に属することを理解すべきである。また、以下に説明する本願の様々な実施例に係る技術的特徴は、互いに衝突が形成されていない限り互いに組み合わされてもよい。
【0012】
図1は本願の実施例に係るオーディオ再生方法のフローチャートであり、
図1に示すように、前記オーディオ再生方法は、自動車のコックピット内の異なる位置に設置される複数のスピーカーモジュールを含むカーオーディオシステムに適用され、下記のステップ101~104を含む。
【0013】
ステップ101:再生しようとするオーディオ信号を取得する。
【0014】
本願の実施例では、カーオーディオシステムでオーディオ再生を行う場合、まず再生しようとするオーディオ信号を取得する必要があり、取得されたオーディオ信号に対応する音源はモノラル音源、デュアルチャネル音源、マルチチャンネル音源を含むが、これらに限定されるものではなく、さらに車載ホストまたは携帯電話及びタブレットなどのユーザー端末からのものであってもよい。
【0015】
ステップ102、オーディオ信号を分解して、カテゴリの異なる複数の音源信号を取得する。
【0016】
本願の実施例では、再生しようとするオーディオ信号を取得した後、カテゴリの異なる複数の音源信号を得るために、音源の種類に応じてオーディオ信号を分解する必要がある。ここで、各音源信号はいずれも同じカテゴリにおける複数のサブ音源信号を含んでいる。なお、音源信号は、オーディオ信号に対応する音源に予め配置されたモノトラックまたはマルチトラック音源信号であってもよく、左チャンネルトラック、右チャンネルトラック、センターチャンネルトラック、サラウンドチャンネルトラックを含むが、これらに限定されるものではない。音源信号は、ステップ102によってオーディオ信号から分離して抽出したモノトラックやマルチトラック音源信号であってもよく、人間音源信号、楽器音源信号、バックグラウンド環境音源信号を含むが、これらに限定されるものではない。
【0017】
また、オーディオ信号はシングルチャンネルを有してもよく、複数のチャンネルを有してもよい。オーディオ信号が複数のチャンネルを有した場合、ステップ102によるオーディオ信号の分解結果は、すべてのチャンネルにおける異なるカテゴリの複数の音源信号を得ることである。オーディオ信号がデュアルチャネルであると仮定すると、ステップ102によるオーディオ信号の分解結果は、左チャンネルにおける異なるカテゴリの複数の音源信号と、右チャンネルにおける異なるカテゴリの複数の音源信号を得ることである。
【0018】
ステップ103、予め設定された割当原則に基づいて、すべてのサブ音源信号と複数のスピーカーモジュールとの間のルーティングを確立する。
【0019】
本願の実施例では、オーディオ信号からカテゴリの異なる複数の音源信号を分離抽出した後、予め設定された割当原則に基づいて、すべてのサブ音源信号と複数のスピーカーモジュールとの間のルーティングを確立する必要がある。ここで、予め設定された割当原則とは、異なるサブ音源信号が異なるスピーカーモジュールによって再生される規則を指す。
【0020】
具体的には、ステップ103を実行する時に、すべてのチャンネル間で同じカテゴリのサブ音源信号間の相関性とすべてのサブ音源信号の周波数を取得することができる。その後、取得された相関性と周波数を参考に、予め設定された割当原則に基づいてすべてのサブ音源信号と複数のスピーカーモジュールとの間のルーティングを確立する。以下の実施例では、これについて詳しく説明する。
【0021】
ステップ104、ルーティングに基づいて、各サブ音源信号をいずれも相応するスピーカーモジュールによって再生する。
【0022】
本願の実施例では、すべてのサブ音源信号と複数のスピーカーモジュールとの間のルーティングを確立した後、確立されたルーティングに基づいて、各サブ音源信号をいずれも相応するスピーカーモジュールによって再生する必要がある。
【0023】
以上からわかるように、本願の実施例では、音源のカテゴリに基づいて、入力されたオーディオ信号をカテゴリの異なる複数の音源信号(各音源信号はいずれも同じカテゴリにおける複数のサブ音源信号を含む)に分解し、さらに予め設定された割当原則を参考にして、異なるサブ音源信号を自動車のコックピット内の異なる位置にあるスピーカーモジュールによって再生し、これによって、より正確で没入性のより高い車載用マルチチャネルサラウンド繰り返し再生(繰り返し再生とは、異なるサブ音源信号を異なるスピーカーモジュールによって再生することを指す)を提供し、カーオーディオシステム全体の音響体験効果を効果的に高めることができる。
【0024】
図2を参照すると、
図2は本願の実施例に係るカーオーディオシステムのモジュールブロック図である。
【0025】
図2に示すように、本願の実施例には、カーオーディオシステムがさらに提供され、当該カーオーディオシステムは、自動車のコックピット内に設けられる制御処理モジュールと、制御処理モジュールに接続される複数のスピーカーモジュールとを含み、ここで、複数のスピーカーモジュールはそれぞれ自動車のコックピット内の異なる位置にあり、制御処理モジュールは、本願の実施例に係る前記オーディオ再生方法を実行するために使われる。本願の実施例において、複数のスピーカーモジュールは、超低音用スピーカーモジュール、低音用スピーカーモジュールと中高音用スピーカーモジュールなど、様々な種類を備えることができる。スピーカーモジュールは、1つのスピーカーを備えてもよいし、複数のスピーカーを備えてもよい。以下、1つのスピーカーを備える形態を例として説明する。
【0026】
具体的には、制御処理モジュールは、演算処理モジュール27と、記憶モジュール28と、オーディオバス26と、デジタルアナログ変換モジュール(図示せず)と、パワーアンプモジュール30と、電源管理モジュール29と、を含む。ここで、オーディオバス26は、再生しようとするオーディオ信号を演算処理モジュール27に伝送するために使われる。記憶モジュール28は、少なくとも1つのプログラムを記憶するために使われ、かつ、少なくとも1つのプログラムが演算処理モジュール27によって実行されるときに、演算処理モジュール27は本願の実施例に係る前記オーディオ再生方法を実行する。デジタルアナログ変換モジュールは、演算処理モジュール27から出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換するために使われる。パワーアンプモジュール30は、デジタルアナログ変換モジュールから出力されたアナログ信号を電力増幅して複数のスピーカーに伝送するために使われる。電源管理モジュール29は、演算処理モジュール27、記憶モジュール28、デジタルアナログ変換モジュール、パワーアンプモジュール30及び複数のスピーカーモジュールの電力供給管理を行うために使われる。
【0027】
具体的には、パワーアンプモジュール30は、複数の入力インターフェースと複数の出力インターフェースとを備え、1つの入力インターフェースと1つの出力インターフェースとは1つの伝送チャンネルを構成し、伝送チャンネルの数量はスピーカーの数量と同じである。このように設計する目的は、電力増幅された各サブ音源信号をいずれも相応するスピーカーに伝送して再生することを容易にすることにある。
【0028】
本願の実施例に記載されるカーオーディオシステム及びそのオーディオ再生方法をより明確に理解するために、以下、
図3に示す24チャンネル(24個のスピーカーを含むことを意味する)のカーオーディオシステムを例に、本願の実施例に記載されるカーオーディオシステム及びそのオーディオ再生方法について、詳しく説明する。
【0029】
スピーカー1は、自動車のセンターコンソールに位置し、スピーカー2、3は、自動車のセンターコンソールの左、右側に位置し、スピーカー4~11は、自動車の右フロントドア、左フロントドア、右バックドア、左バックドアに位置し、スピーカー12~19は、自動車の運転席、助手席、右側後部座席、左側後部側席のヘッドレストに位置し、スピーカー20~23は、自動車の天井の右前、左前、右後、左後に位置し、スピーカー24は自動車のトランクに位置する。ここで、スピーカー5、9、7、11は低音用スピーカーで、180Hz以下の音声を繰り返し再生するために使われ、スピーカー24は超低音用スピーカーで、60Hz以下の音声を繰り返し再生するために使われ、残りのスピーカーは中高音用スピーカーで、180Hz以上の音声を繰り返し再生するために使われる。スピーカー1~24は、オーディオハーネスによって制御処理モジュール25に接続される。
【0030】
制御処理モジュール25は、オーディオバス26を介して、オリジナルオーディオ信号(すなわち再生しようとするオーディオ信号)を取得する。デュアルチャネルのオリジナルオーディオ信号を例に、オリジナルオーディオ信号はそれぞれ左チャンネルをL(t)と示し、右チャンネルをR(t)と示すことができる。オリジナルオーディオ信号のオーディオコンテンツオブジェクト(即ち、音源信号)を分解することで、左チャンネルがL(t)、右チャンネルがR(t)を下記の形で示すことができる。
【0031】
ここで、
などは、オリジナル音源のうち、カテゴリの異なるオーディオコンテンツオブジェクトを示し、
などは、異なるオーディオコンテンツオブジェクトに含まれる要素(即ち、サブ音源信号)の個数を示す。本願の実施例では、オリジナルオーディオ信号を人声、管楽器音(竹笛、銅管など)、撥弦楽器音(琵琶、ギターなど)、弦弾き楽器音(二胡、バイオリン、チェロなど)、打楽器音(太鼓音、ベルシンバル、ゴングなど)、バックグラウンド音(風声、拍手、雨声など)を含む6種類の異なるオーディオコンテンツオブジェクトに分解しているが、製品の設計ニーズによって分解してもよい。ここではこれについて限定しない。管楽器音を例にとると、相応するサブ音源信号は竹笛、銅管などの信号である。
【0032】
したがって、オリジナルオーディオ信号は下記のように示すことができる。
【0033】
ここで、
は左、右チャンネルオリジナル音源からそれぞれ分離された人声コンテンツオブジェクトを示し、
は左、右チャンネルオリジナル音源からそれぞれ分離された管楽器音のコンテンツオブジェクトを示し、
は左、右チャンネルオリジナル音源からそれぞれ分離された撥弦楽器コンテンツオブジェクトを示し、
は左、右チャンネルオリジナル音源からそれぞれ分離された打楽器音コンテンツオブジェクトを示し、
は左、右チャンネルオリジナル音源からそれぞれ分離された弦弾き楽器音コンテンツオブジェクトを示し、
は左、右チャンネルオリジナル音源からそれぞれ分離されたバックグラウンド音コンテンツオブジェクトを示す。
【0034】
オリジナル音源に対するオーディオコンテンツオブジェクトのコンテンツ分解が完了した後、各オーディオコンテンツオブジェクトに対してコンテンツ解析を行い、一定の割当原則に基づいて、異なるオーディオコンテンツオブジェクトを異なるパワーアンプモジュールの入力側にルーティングする必要があり、この部分の処理作業は演算処理モジュール27で行われるものである。割当原則について、人間の耳の空間オーディオに対する多面的で多角的な主観知覚の基本特性に基本的に従い、人間の耳の聴覚常識に反して不快な聴感を起こさないようにする一方で、製品定義の設計要求に応じてある程度のマッチング・最適化を行う必要がある。
【0035】
オリジナル音源から分解されたオーディオコンテンツオブジェクトに対して、まずオリジナル左、右チャンネル音源のうち、同じカテゴリ要素間の相関性が高いオーディオコンテンツオブジェクトを分析し、例えば左、右チャンネルのオリジナル音源のうち、人声カテゴリオブジェクトの相関性rsq
vocalを計算する。
【0036】
ここで、RSQ[]は2つの変数間のピアソン積率相関係数の二乗値計算を示し、rsq≧0.8の場合、両者の間に高い相関があり、rsq<0.8の場合、両者の間には低い相関があると考えられる。これにより、オリジナルオーディオ信号の左チャンネル音源のオーディオコンテンツオブジェクトを分解して、下記のように示すことができる。
【0037】
は左チャンネルオーディオのうち、右チャンネルとの相関が高い部分を示し、
は左チャンネルオーディオのうち、右チャンネルとの相関が低い部分を示し、それぞれ下記のように示すことができる。
【0038】
同様に、オリジナルオーディオ信号における左チャンネル音源のオーディオコンテンツオブジェクトを分解して、下記のように示すことができる。
【0039】
【0040】
オリジナル音源から分解されたオーディオコンテンツオブジェクトに対して、オリジナルの左、右チャンネル音源のうち、同じカテゴリの要素間の相関が高いオーディオコンテンツオブジェクトを分析した後、異なる低音用スピーカー、中音用スピーカーと高音用スピーカーにマッチングするように、オーディオコンテンツオブジェクトの周波数成分も考慮する必要がある。例えば左チャンネル音源の打楽器カテゴリオブジェクト
には、太鼓、ベルシンバル、ゴングなどのオーディオコンテンツ要素が含まれており、明らかなように、太鼓音の周波数は低く、ベルシンバルの周波数は高いため、この2種類のオーディオコンテンツオブジェクトはそれぞれ低音用スピーカーと中高音用スピーカーに伝送されてオーディオの繰り返し再生を行う必要がある。
【0041】
オーディオコンテンツオブジェクトの周波数成分分析は、下記のように行うことができる。例えば、左チャンネル音源の打楽器カテゴリオブジェクトのうち、左、右チャンネルの相関が大きい部分
に対して周波数成分分析を行うことができる。
【0042】
ここで、FFT[]は高速フーリエ変換であり、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する基本的なデジタル信号処理方法であり、fdrumsは変換後の周波数成分、ampdrumsは変換後の振幅値を示す。
【0043】
本願の実施例では、すべてのオーディオコンテンツオブジェクトを、それぞれ<60Hz、60Hz~180Hz、>180Hzという3つの周波数範囲に分けて処理する。なお、オーディオコンテンツオブジェクトをいくつかの周波数領域に分けて処理する場合、カースピーカーアーキテクチャに応じて設計変更を行うこともできる。例えば、カースピーカーアーキテクチャに、動作周波数帯域が2000Hz以上の高音ユニットを駆動するための単独のチャンネルが含まれている場合、オーディオコンテンツオブジェクトも2000Hz未満の部分と2000Hz超過の部分を区別する必要がある。
【0044】
【0045】
オーディオコンテンツオブジェクトのコンテンツ解析が完了した後、演算処理モジュール27によって、異なるオーディオコンテンツオブジェクトを異なるパワーアンプモジュールの入力端に割り当てる。そうすると、
スピーカー1に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
スピーカー2に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
スピーカー3に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0046】
スピーカー4に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0047】
スピーカー5に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0048】
ここで、
はオリジナル右チャンネル音源のうち、周波数成分が60Hz~180Hzのすべてのオーディオコンテンツオブジェクトを示す。
【0049】
スピーカー6に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0050】
スピーカー7に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0051】
ここで、
はオリジナルの左チャンネル音源の周波数成分が60Hz~180Hzのすべてのオーディオコンテンツオブジェクトを示す。
【0052】
スピーカー8に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0053】
スピーカー9に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0054】
ここで、
はオリジナル右チャンネル音源のうち、周波数成分が60Hz~180Hzのすべてのオーディオコンテンツオブジェクトを示す。
【0055】
スピーカー10に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0056】
スピーカー11に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0057】
ここで、
はオリジナル左チャンネル音源のうち、周波数成分が60Hz~180Hzのすべてのオーディオコンテンツオブジェクトを示す。
【0058】
スピーカー12に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0059】
スピーカー13に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0060】
スピーカー14に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0061】
スピーカー15に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0062】
スピーカー16に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0063】
スピーカー17に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0064】
スピーカー18に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0065】
スピーカー19に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0066】
スピーカー20に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0067】
スピーカー21に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0068】
スピーカー22に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0069】
スピーカー23に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0070】
スピーカー24に対応するパワーアンプモジュールの入力側は下記の通りである。
【0071】
ここで、
、
はオリジナル左、右チャンネル音源のうち、周波数成分が60Hz以下のすべてのオーディオコンテンツオブジェクトを示す。
【0072】
オーディオコンテンツオブジェクトに対するルーティングが完了した後、演算処理モジュール27では、他のデジタル信号処理を行うこともできる。前記デジタル信号処理は遅延調整、ゲイン調整、位相調整、等化調整などを含むが、これらに限定されるものではない。処理が完了した後、デジタルアナログ変換と電力増幅を行い、相応するスピーカーチャンネルに伝送してオーディオ繰り返し再生を行う。この部分の作業はパワーアンプモジュール30で行われる。
【0073】
図4を参照すると、
図4は、本願の実施例に係るコンピュータ読み取り可能な記憶媒体のモジュールブロック図である。
【0074】
図4に示すように、本願の実施例は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体400をさらに提供し、当該コンピュータ読み取り可能な記憶媒体400には、実行可能な命令410が記憶されており、当該実行可能な命令410が実行された時に、本願の実施例に係るオーディオ再生方法を実行する。
【0075】
本願で開示した実施例に記載された方法またはアルゴリズムのステップは、直接、ハードウェア、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュール、または両者の組み合わせで実施することができる。ソフトウェアモジュールは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、メモリ、読み出し専用メモリ(ROM)、電気的プログラマブルROM、電気的消去可能プログラマブルROM、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD-ROM、または技術分野で周知される他のいかなる形態の記憶媒体に格納することができる。
【0076】
上記実施例において、全部または一部は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせによって実現することができる。ソフトウェアを用いて実現する場合、その全部または一部はコンピュータプログラム製品の形で実現してもよい。コンピュータプログラム製品には、1つまたは複数のコンピュータ命令が含まれる。コンピュータに前記コンピュータプログラム命令をロード・実行する時、本願に記載するフローまたは機能を全面的または部分的に生成する。コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、コンピュータネットワーク、または他のプログラマブル装置であってもよい。コンピュータ命令は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶してもよく、あるいは、あるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体から他のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に伝送してもよい。例えば、コンピュータ命令は、あるウェブサイト、コンピュータ、サーバ、またはデータセンターから、有線(例えば、同軸ケーブル、光ファイバ、デジタルユーザーケーブルなど)または無線(例えば、赤外線、無線、マイクロ波など)によって、他のウェブサイト、コンピュータ、サーバ、またはデータセンターに伝送することができる。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータがアクセス可能な任意の利用可能な媒体であってもよいし、1つまたは複数の利用可能な媒体で統合されたサーバ、データセンターなどのデータ記憶デバイスであってもよい。利用可能な媒体は、磁気媒体(例えば、フロッピーディスク、ハードディスク、磁気テープ)、光学メディア(例えば、DVD)、又は半導体メディア(例えば、ソリッドステートディスクSolid State Disk)などであってもよい。
【0077】
なお、本願の内容における各実施例は、漸進的に説明され、各実施例が他の実施例と異なる点を重点的に説明しており、各実施例の間の同じ類似部分は互いに参照すればよい。製品クラスの実施例については、方法クラスの実施例と類似しているため、説明は比較的簡単であり、関連点は方法クラスの実施例の一部の説明を参照すればよい。
【0078】
また、本願の内容において、第1および第2などの関係用語は、必ずしもこれらのエンティティまたは操作間にそのような実際の関係または順序が存在することを要求または暗示することなく、1つのエンティティまたは操作を別のエンティティまたは操作と区別するためにのみ使用されることを説明する必要がある。さらに、用語「備える」、「含む」、またはその他の任意の変形は、非独占的包含をカバーすることを意図しており、これによって、一連の要素を含むプロセス、方法、物品、または機器は、それらの要素だけでなく、明示的にリストされていない他の要素、または、そのようなプロセス、方法、部品、または機器に固有の要素も含む。これ以上の制限がない場合、文句「1つの……を備える」によって限定された要素は、その要素を含むプロセス、方法、部品、または機器に別の同じ要素が存在することを除外しない。
【0079】
開示された実施例の上記の説明は、当業者が本願の内容を実現または使用できるようにする。これらの実施例の様々な変更は、本願コンテンツにおいて定義される一般的な原理が、本願コンテンツの精神または範囲から逸脱することなく他の実施例において実現され得ることが当業者には明らかであろう。したがって、本願コンテンツは、本願コンテンツに示されるこれらの実施例に限定されることはなく、本願コンテンツに開示されている原理および新規な特徴と一致する最も広い範囲に適合しなければならない。