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特許7635311バックシールドガス供給装置、多重管の溶接方法、及び多重管の製造方法
<図1>
  • 特許-バックシールドガス供給装置、多重管の溶接方法、及び多重管の製造方法 図1
  • 特許-バックシールドガス供給装置、多重管の溶接方法、及び多重管の製造方法 図2
  • 特許-バックシールドガス供給装置、多重管の溶接方法、及び多重管の製造方法 図3
  • 特許-バックシールドガス供給装置、多重管の溶接方法、及び多重管の製造方法 図4
  • 特許-バックシールドガス供給装置、多重管の溶接方法、及び多重管の製造方法 図5
  • 特許-バックシールドガス供給装置、多重管の溶接方法、及び多重管の製造方法 図6
  • 特許-バックシールドガス供給装置、多重管の溶接方法、及び多重管の製造方法 図7
  • 特許-バックシールドガス供給装置、多重管の溶接方法、及び多重管の製造方法 図8
  • 特許-バックシールドガス供給装置、多重管の溶接方法、及び多重管の製造方法 図9
  • 特許-バックシールドガス供給装置、多重管の溶接方法、及び多重管の製造方法 図10
  • 特許-バックシールドガス供給装置、多重管の溶接方法、及び多重管の製造方法 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】バックシールドガス供給装置、多重管の溶接方法、及び多重管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/035 20060101AFI20250217BHJP
   B21C 37/08 20060101ALI20250217BHJP
   B21C 37/06 20060101ALI20250217BHJP
【FI】
B23K9/035 A
B21C37/08 A
B21C37/06 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023121999
(22)【出願日】2023-07-26
(65)【公開番号】P2025018368
(43)【公開日】2025-02-06
【審査請求日】2023-07-31
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄策
(72)【発明者】
【氏名】木坂 有治
(72)【発明者】
【氏名】角 知則
(72)【発明者】
【氏名】矢野 亮
(72)【発明者】
【氏名】岸口 哲也
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-047390(JP,U)
【文献】再公表特許第2011/089909(JP,A1)
【文献】特開平10-034373(JP,A)
【文献】特開平11-325337(JP,A)
【文献】実開昭60-066691(JP,U)
【文献】特開2007-190595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/035
B23K 37/00
B21C 37/06
B21C 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管と前記内管が挿入された一つ以上の外管とを含む多重管であって、前記内管同士が溶接され、かつ、前記外管同士が溶接される前記多重管の一つ以上の層に、バックシールドガスを供給するバックシールドガス供給装置であって、
前記バックシールドガスを前記多重管に供給する供給チューブを備え、
前記供給チューブは、前記内管と前記外管との間に配置され、
着脱部、を更に備え、
前記供給チューブは、前記着脱部により、前記内管に巻き付けられた状態を維持され、
前記着脱部は、前記供給チューブが引っ張られることに応じ、前記状態を解除する、
ことを特徴とするバックシールドガス供給装置。
【請求項2】
前記供給チューブは、前記内管に着脱可能に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のバックシールドガス供給装置。
【請求項3】
前記供給チューブは、前記バックシールドガスを噴出させる噴出口を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のバックシールドガス供給装置。
【請求項4】
前記内管の外周面には周方向の一部が切り欠かれたリング状の台座が設けられており、
前記供給チューブは、前記内管の周方向の一部を通される、
ことを特徴とする請求項1に記載のバックシールドガス供給装置。
【請求項5】
前記内管の外周面には、台座が設けられており、
前記供給チューブは、前記台座の一部であって前記台座の前記一部以外の部分より厚さが薄い一部、を通される、
ことを特徴とする請求項1に記載のバックシールドガス供給装置。
【請求項6】
前記外管の内周面には、第1突条及び第2突条が、前記外管の管軸方向に沿って、設けられ、
前記供給チューブは、前記第1突条と前記第2突条との間を、通される、
ことを特徴とする請求項1に記載のバックシールドガス供給装置。
【請求項7】
前記外管の端部の内周面には、切り欠きが設けられ、
前記供給チューブの端部は、前記内管の位置であって前記切り欠きに対応する位置に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載のバックシールドガス供給装置。
【請求項8】
前記供給チューブは、前記外管に着脱可能に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のバックシールドガス供給装置。
【請求項9】
内管と前記内管が挿入された一つ以上の外管とを含む多重管の一つ以上の層に、バックシールドガスを供給するバックシールドガス供給装置であって、
前記バックシールドガスを前記多重管に供給する供給チューブ、
を備え、
前記供給チューブは、前記内管と前記外管との間に配置され、
前記供給チューブは、前記バックシールドガスを噴出させる噴出口を含み、
前記供給チューブは、複数の前記噴出口が、前記外管の内周面の周方向に沿って、設けられる、
ことを特徴とするバックシールドガス供給装置。
【請求項10】
前記供給チューブの一部は、前記内管に巻き付けられており、
前記複数の噴出口は、前記内管に巻き付けられた前記供給チューブの一部に設けられる、
ことを特徴とする請求項に記載のバックシールドガス供給装置。
【請求項11】
バックシールドガスを供給可能な供給チューブを内管の外周面に取り付ける取付ステップと、
前記外周面に前記供給チューブが取り付けられた内管を外管に挿入する挿入ステップと、
前記バックシールドガスを前記供給チューブから前記内管と前記外管との間に噴出させる噴出ステップと、
前記外管を溶接する外管溶接ステップと、
前記内管に取り付けられた前記供給チューブを取り外す取り外しステップと、
を備えることを特徴とする多重管の溶接方法。
【請求項12】
前記挿入ステップでは、前記内管及び前記外管のいずれか一方が固定される、
ことを特徴とする請求項11に記載の多重管の溶接方法。
【請求項13】
外管の溶接用であるバックシールドガスを供給可能な供給チューブを内管の外周面に取り付ける取付ステップと、
前記外周面に前記供給チューブが取り付けられた内管を前記外管に挿入する挿入ステップと、
前記バックシールドガスを前記供給チューブから前記内管と前記外管との間に噴出させる噴出ステップと、
を備えることを特徴とする多重管の製造方法。
【請求項14】
バックシールドガスを供給可能な供給チューブが外周面に取り付けられた内管と、前記内管が挿入された外管と、を含み、前記供給チューブが前記内管と前記外管との間に配置される多重管の溶接方法であって、
前記バックシールドガスを前記供給チューブから前記内管と前記外管との間に噴出させる噴出ステップと、
前記外管を溶接する外管溶接ステップと、
を備えることを特徴とする多重管の溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックシールドガス供給装置、多重管の溶接方法、及び多重管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
管部材同士を溶接する際に、管部材の内側にバックシールドガスを充満させる。
特許文献1には、管部材の側面に設けられた穴からガス供給チューブを挿入し、ガス供給チューブの端部に設けられたガス噴射ノズルからバックシールドガスを噴射する技術が開示されている。
特許文献2には、管部材の内部にシール部材を配置することで、管部材の内部にバックシールドガスを充満させる技術が開示されている。
特許文献3には、管部材の内部に発泡剤を充填することで、管部材の内部にバックシールドガスを充満させる技術が開示されている。
特許文献4には、内管と外管とを備える二重管構造の溶接方法において、予め内管同士をレーザ光によって溶接し、その後、外管の開先に溶加材を嵌め込み、内管と外管との間に不活性ガスを流しながら、外管同士をティグ溶接によって溶接する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-146771号公報
【文献】特開2014-97527号公報
【文献】国際公開第2010/150422号
【文献】特開平10-34373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多重管構造の溶接作業における外管同士の溶接時に、溶接部周辺の内管と外管との間にバックシールドガスを充填させたい旨の課題がある。しかしながら、特許文献1~3に係る技術は、単管の溶接を前提としており、多重管に用いることができない。特許文献4に係る技術では、溶接部周辺の内管と外管との間への不活性ガスの具体的な供給方法を明示されていない。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、多重管の外管の溶接時に内管と外管との間にバックシールドガスを充填させることができるバックシールドガス供給装置、多重管の溶接方法、及び多重管の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の態様1に係るバックシールドガス供給装置は、内管と前記内管が挿入された一つ以上の外管とを含む多重管の一つ以上の層に、バックシールドガスを供給するバックシールドガス供給装置であって、前記バックシールドガスを前記多重管に供給する供給チューブを備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、バックシールドガスを多重管に供給する供給チューブを備える。これにより、外管を溶接する際に、供給チューブによって多重管にバックシールドガスを供給することができる。
【0008】
<2>本発明の態様2に係るバックシールドガス供給装置は、態様1に係るバックシールドガス供給装置において、前記供給チューブは、前記内管と前記外管との間に配置されることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、供給チューブは、内管と外管との間に配置される。これにより、外管を溶接する際に、供給チューブによって内管と外管との間にバックシールドガスを供給することができる。
【0010】
<3>本発明の態様3に係るバックシールドガス供給装置は、態様1又は態様2に係るバックシールドガス供給装置において、前記供給チューブは、前記内管に着脱可能に取り付けられることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、供給チューブは、内管に着脱可能に取り付けられる。これにより、例えば、供給チューブが内管に取り付けられた状態で、内管を外管に挿入することで、供給チューブを内管と外管との間に配置することができる。よって、供給チューブを内管と外管との間に配置しやすくすることができる。
【0012】
<4>本発明の態様4に係るバックシールドガス供給装置は、態様1から態様3のいずれか1つに係るバックシールドガス供給装置において、前記供給チューブは、着脱部により、前記内管に巻き付けられた状態を維持され、前記着脱部は、前記供給チューブが引っ張られることに応じ、前記状態を解除することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、供給チューブは、着脱部により、内管に巻き付けられた状態を維持される。また、供給チューブが引っ張られることに応じ、前記状態は解除される。これにより、外管の溶接後に、供給チューブを内管と外管との間から取り除きやすくすることができる。
【0014】
<5>本発明の態様5に係るバックシールドガス供給装置は、態様1から態様4のいずれか1つに係るバックシールドガス供給装置において、前記供給チューブは、前記バックシールドガスを噴出させる噴出口を含むことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、供給チューブは、バックシールドガスを噴出させる噴出口を含む。これにより、バックシールドガスを迅速に外管の内部に充満させることができる。
【0016】
<6>本発明の態様6に係るバックシールドガス供給装置は、態様5に係るバックシールドガス供給装置において、前記供給チューブは、複数の前記噴出口が、前記外管の内周面の周方向に沿って、設けられることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、供給チューブは、複数の噴出口が、外管の内周面の周方向に沿って、設けられる。これにより、バックシールドガスを外管の内部にむらなく充満させることができる。
【0018】
<7>本発明の態様7に係るバックシールドガス供給装置は、態様5又は態様6に係るバックシールドガス供給装置において、前記供給チューブの一部は、前記内管に巻き付けられており、前記複数の噴出口は、前記内管に巻き付けられた前記供給チューブの一部に設けられることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、供給チューブの一部は、内管に巻き付けられている。複数の噴出口は、内管に巻き付けられた供給チューブの一部に設けられる。これにより、複数の噴出口を、内管の周方向に沿って配置することができる。よって、バックシールドガスを外管の内部によりむらなく充満させることができる。
【0020】
<8>本発明の態様8に係るバックシールドガス供給装置は、態様1から態様7のいずれか1つに係るバックシールドガス供給装置において、前記内管の外周面には周方向の一部が切り欠かれたリング状の台座が設けられており、前記供給チューブは、前記内管の周方向の一部を通されることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、内管の外周面には周方向の一部が切り欠かれたリング状の台座が設けられている。供給チューブは、内管の周方向の切り欠かれた一部を通される。これにより、内管の外周面に台座が設けられた場合であっても、供給チューブを内管と外管との間に配置しやすくすることができる。
【0022】
<9>本発明の態様9に係るバックシールドガス供給装置は、態様1から態様8のいずれか1つに係るバックシールドガス供給装置において、前記内管の外周面には、台座が設けられており、前記供給チューブは、前記台座の一部であって前記台座の前記一部以外の部分より厚さが薄い一部、を通されることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、内管の外周面には、台座が設けられている。供給チューブは、台座の一部であって台座の一部以外の部分より厚さが薄い一部を通される。これにより、内管の外周面に台座が設けられた場合であっても、供給チューブを内管と外管との間に配置しやすくすることができる。
【0024】
<10>本発明の態様10に係るバックシールドガス供給装置は、態様1から態様9のいずれか1つに係るバックシールドガス供給装置において、前記外管の内周面には、第1突条及び第2突条が、前記外管の管軸方向に沿って、設けられ、前記供給チューブは、前記第1突条と前記第2突条との間を、通されることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、外管の内周面には、第1突条及び第2突条が外管の管軸方向に沿って設けられる。供給チューブは、第1突条と第2突条との間を通される。これにより、外管の内周面に第1突条及び第2突条が設けられた場合であっても、供給チューブを内管と外管との間に配置しやすくすることができる。
【0026】
<11>本発明の態様11に係るバックシールドガス供給装置は、態様1から態様10のいずれか1つに係るバックシールドガス供給装置において、前記外管の端部の内周面には、切り欠きが設けられ、前記供給チューブの端部は、前記内管の位置であって前記切り欠きに対応する位置に配置されることを特徴とする。
【0027】
この発明によれば、外管の端部の内周面には、切り欠きが設けられる。供給チューブの端部は、内管の位置であって切り欠きに対応する位置に配置される。これにより、外管における切り欠きが設けられた部分、つまり外管の内周面において第1突条及び第2突条が設けられていない部分に、バックシールドガスを充満させやすくすることができる。
【0028】
<12>本発明の態様12に係るバックシールドガス供給装置は、態様1から態様11のいずれか1つに係るバックシールドガス供給装置において、前記供給チューブは、前記外管に着脱可能に取り付けられることを特徴とする。
【0029】
この発明によれば、供給チューブは、外管に着脱可能に取り付けられる。これにより、例えば、内管を外管に挿入しやすくすることができる。
【0030】
<13>本発明の態様13に係る多重管の溶接方法は、バックシールドガスを供給可能な供給チューブを内管に取り付ける取付ステップと、前記供給チューブが取り付けられた内管を外管に挿入する挿入ステップと、前記バックシールドガスを前記供給チューブから噴出させる噴出ステップと、前記外管を溶接する外管溶接ステップと、前記内管に取り付けられた前記供給チューブを取り外す取り外しステップと、を備えることを特徴とする。
【0031】
この発明によれば、供給チューブが取り付けられた内管を外管に挿入する挿入ステップを備える。これにより、供給チューブを内管と外管との間に配置しやすくすることができる。
バックシールドガスを供給チューブから噴出させる噴出ステップを備える。これにより、バックシールドガスを外管の内部に充満させることができる。
内管に取り付けられた供給チューブを取り外す取り外しステップを備える。これにより、外管の溶接後に、供給チューブが内管と外管との間に取り残されないようにすることができる。
【0032】
<14>本発明の態様14に係る多重管の溶接方法は、態様13に係る多重管の溶接方法において、前記挿入ステップでは、前記内管及び前記外管のいずれか一方が固定されることを特徴とする。
【0033】
この発明によれば、挿入ステップでは、内管及び外管のいずれか一方が固定される。これにより、内管を外管に挿入しやすくすることができる。
【0034】
<15>本発明の態様15に係る多重管の製造方法は、バックシールドガスを供給可能な供給チューブを内管に取り付ける取付ステップと、前記供給チューブが取り付けられた内管を外管に挿入する挿入ステップとを備えることを特徴とする。
【0035】
この発明によれば、バックシールドガスを供給可能な供給チューブを内管に取り付ける取付ステップと、供給チューブが取り付けられた内管を外管に挿入する挿入ステップと、を備える。つまり、供給チューブが内管に取り付けられた状態で、内管を外管に挿入する。これにより、供給チューブを内管と外管との間に配置しやすくすることができる。したがって、内管と外管との間にバックシールドガスを供給可能な多重管を製造しやすくすることができる。
【0036】
<16>本発明の態様16に係る多重管の溶接方法は、バックシールドガスを供給可能な供給チューブが取り付けられた内管と、前記内管が挿入された外管と、を含む多重管の溶接方法であって、前記バックシールドガスを前記供給チューブから噴出させる噴出ステップと、前記外管を溶接する外管溶接ステップと、を備えることを特徴とする。
【0037】
この発明によれば、バックシールドガスを供給チューブから噴出させる噴出ステップを備える。つまり、内管と外管との間に配置された供給チューブからバックシールドガスを噴出させる。これにより、外管の溶接時に、内管と外管との間にバックシールドガスを供給しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、多重管の外管の溶接時に内管と外管との間にバックシールドガスを充填させることができるバックシールドガス供給装置、多重管の溶接方法、及び多重管の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】多重管同士の溶接作業の概念図である。
図2図1に示すII-II方向の断面図の第1例である。
図3図1に示すII-II方向の断面図の第2例である。
図4図1に示すIV方向から見た、多重管同士の溶接部周辺の拡大断面図である。
図5】供給チューブを引っ張ることで着脱部が破られた状態を示す図である。
図6】着脱部の位置の第1例である。
図7】着脱部の位置の第2例である。
図8】供給チューブが台座に接触した状態を示す図である。
図9】多重管の変形例同士の溶接作業の概念図である。
図10図9に示すX-X方向の断面図である。
図11図9に示すXI方向から見た、多重管の変形例同士の溶接部周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るバックシールドガス供給装置100、多重管DPの溶接方法、及び多重管DPの製造方法を説明する。
本実施形態に係るバックシールドガス供給装置100は、図1に示すように、内管IPと、内管IPが挿入された一つ以上の外管OPと、を含む多重管DPの端部同士を溶接トーチTによって溶接する際、多重管DPの一つ以上の層にバックシールドガスを供給する。本実施形態において、多重管DPは、内管IPと一つの外管OPとを含む二重管である。すなわち、本実施形態において、バックシールドガス供給装置100は、図1に示す内管IPと外管OPとの間にバックシールドガスを供給する。本実施形態において、バックシールドガスは、例えば、アルゴンガスである。
【0041】
本実施形態において、内管IPの外周面には、図1に示すように、周方向の一部が切り欠かれたリング状の台座IPsが設けられている。台座IPsは、内管IPの長手方向に沿って間隔を空けて複数設けられる。内管IPにおける台座IPs同士の間隔は、例えば、2m~3m程度である。台座IPsは、外管OPの内周面と接する。このことで、台座IPsは、内管IPにおける台座IPsが設けられていない部位において、内管IPの外周面と外管OPの内周面との間の隙間を確保する。なお、内管IPの外周面と外管OPの内周面との間の隙間において、内管IPの外周面に沿うようにSI材(スーパーインシュレーション材)が設けられてもよい。
本実施形態に係る多重管DPにおいて、台座IPsは、内管IP及び外管OPの端部から少なくとも300mm以上離れた部位に設けられることが好ましい。詳細は、後述する着脱部20の配置場所と併せて説明する。
【0042】
本実施形態において、台座IPsは、図2に示すように、内管IPの周方向において一部が切り欠かれている。以下、切り欠かれた台座IPsの一部を切欠部IPscという。又は、台座IPsは、図3に示すように、台座IPsの一部であって台座IPsの一部以外の部分より厚さが薄い一部を備える。以下、台座IPsにおける厚さが薄い一部を、薄肉部IPstという。
本実施形態において、切欠部IPscの切り欠き代、つまり図2に示す切欠部IPscの内管IPにおける周方向の寸法Aは、例えば、30mm程度である。薄肉部IPstの幅、つまり図3に示す薄肉部IPstの内管IPにおける周方向の寸法Bは、例えば、30mm程度である。
【0043】
切欠部IPsc又は薄肉部IPstは、内管IPの長手方向に沿って複数設けられた台座IPsの全てに設けられる。また、複数の台座IPsにおいて、切欠部IPsc又は薄肉部IPstは、直線状に並ぶように配置される。これにより、切欠部IPsc又は薄肉部IPstに、後述する供給チューブ10を配置できるようにする。多重管DPの溶接作業時において、切欠部IPsc、又は薄肉部IPstは、図2及び図3に示すように、上方に位置することが好ましい(詳細は後述する)。
【0044】
バックシールドガス供給装置100は、図1に示すように、供給チューブ10を備える。供給チューブ10は、内管IPと外管OPとの間に配置される管である。供給チューブ10は、一方の端部が多重管DP同士の接続部に配置され、他方の端部が不図示のガスタンク等に接続されている。供給チューブ10には、不図示のガスタンク等からバックシールドガスが供給される。これにより、供給チューブ10は、バックシールドガスを多重管DPの内管IPと外管OPとの間に供給する。供給チューブ10の外径は、例えば、内管IPと外管OPとの間の隙間の寸法の80%以下であることが好ましい。供給チューブ10の内径は、例えば、供給チューブ10の長さが100mである場合に、バックシールドガスの流量を0.6L/min以上に保つことができる程度の径であることが好ましい。
【0045】
本実施形態において、供給チューブ10は、図4に示すように、一方の端部が、内管IPに巻き付けられた状態とされる。供給チューブ10の一部は、多重管DPの溶接作業時において、内管IPの外周面に沿って巻き付けられた状態を維持される。
本実施形態において、供給チューブ10は、内管IPに着脱可能に取り付けられる。具体的には、供給チューブ10は、図4に示すように、着脱部20により、内管IPに巻き付けられた状態を維持される。着脱部20は、例えば、アルミテープである。供給チューブ10の一方の端部を内管IPに巻き付けることで形成された輪を、着脱部20であるアルミテープによって固定する。
【0046】
着脱部20は、供給チューブ10が引っ張られることに応じ、供給チューブ10が内管IPに巻き付けられた状態を解除する。具体的には、供給チューブ10の他方の端部を、供給チューブ10の一方の端部から離れる方向に引っ張ることで、図5に示すように、着脱部20が破れる。これにより、供給チューブ10が内管IPに巻き付けられた状態が解除される。これにより、供給チューブ10は、内管IPに着脱可能とされる。
【0047】
上述のように、供給チューブ10は、引っ張られることで内管IPから取り外される。このため、供給チューブ10は、引っ張られる力に対して十分な耐力を有することが好ましい。すなわち、供給チューブ10の材質は、例えば、ポリウレタンチューブが好ましく、ナイロンチューブが用いられてもよい。
【0048】
供給チューブ10は、図4に示すように、バックシールドガスを噴出させる噴出口10nを含む。具体的には、供給チューブ10は、複数の噴出口10nが、外管OPの内周面の周方向に沿って、設けられる。言い換えれば、複数の噴出口10nは、内管IPに巻き付けられた供給チューブ10の一部に設けられる。
【0049】
噴出口10nは、例えば、供給チューブ10にキリ等で径0.5mm程度の貫通孔を設けることで形成される。このとき、噴出口10nは、内管IPに巻き付けられていない状態の供給チューブ10において、供給チューブ10の長さ方向に沿って20mm程度の間隔を空けて複数設けられることが好ましい。なお、上記寸法はあくまで一例であり、その他任意の寸法としてもよい。
【0050】
(供給チューブ10の配置場所)
次に、供給チューブ10の、内管IPと外管OPとの間における具体的な配置場所について説明する。まず、供給チューブ10の、内管IPに巻き付けられた一部以外の部分の配置場所について説明する。
すなわち、供給チューブ10は、図2又は図3に示すように、台座IPsに設けられた切欠部IPsc又は薄肉部IPstを通されるようにして配置される。
【0051】
ここで、多重管DPの下方において、内管IPの重さによって、内管IPの外周面と外管OPの内周面との間の隙間の寸法が小さくなることがある。このとき、台座IPsの切り欠かれた一部、又は台座IPsの厚さが薄い一部が、多重管DPの下方に位置していると、供給チューブ10が内管IPの外周面と外管OPの内周面との間に挟まれ、供給チューブ10を取り外すために引っ張ることができなくなることがある。このため、上述のように、台座IPsの切り欠かれた一部、又は台座IPsの厚さが薄い一部は、多重管DPにおいて上方に位置することが好ましい。
【0052】
次に、供給チューブ10の内管IPに巻き付けられた一部の配置場所について説明する。
ここで、上述のように、内管IPに巻き付けられた供給チューブ10の一部には、間隔を空けて複数の噴出口10nが設けられている。このことで、供給チューブ10の他方の端部から供給されたバックシールドガスを、噴出口10nを介して内管IPの外周面の周りに満遍なく充填させる。
【0053】
多重管DPの外管OP同士を溶接する際、内管IPと外管OPとの間には、供給チューブ10によってバックシールドガスが充填された状態とされる。ここで、外管OPの溶接部、つまり外管OPの端部と、供給チューブ10の内管IPに巻き付けられた一部と、の距離が近いと、外管OPの溶接作業中に供給チューブ10が溶融するおそれがある。
このため、例えば、供給チューブ10がポリウレタンチューブである場合、溶接時に供給チューブ10が受ける輻射熱によって上昇する表面温度を、ポリウレタンチューブの融点である200℃以下にすることが望ましい。この要件を満たすために、図4に示すように、供給チューブ10の内管IPに巻き付けられた一部と、外管OPの端部との距離Dは、50mm以上とすることが好ましい。
【0054】
(着脱部20の配置場所)
次に、供給チューブ10を固定する着脱部20の配置場所について説明する。上述のように、供給チューブ10は、着脱部20によって内管IPに固定される。着脱部20は、供給チューブ10が引っ張られることで破れる。このことで、着脱部20は、供給チューブ10を内管IPに着脱可能とする。このため、着脱部20は、供給チューブ10を引っ張った時に破れやすい位置に配置されることが好ましい。
【0055】
ここで、供給チューブ10の内管IPに巻き付けられる一部は、次のように配置される。すなわち、例えば、図4又は図5に示すように、多重管DPの両端部のうち溶接される側の端部から見て、供給チューブ10の内管IPに巻き付けられる一部のうち他方の端部に近い側から、供給チューブ10の一方の端部に向かうにつれて、供給チューブ10が内管IPの軸を中心に反時計回りに移動する軌道を辿るように配置される。
【0056】
このとき、供給チューブ10のうち、着脱部20から最も近い位置に位置する台座IPsを通過する部分は、例えば、図2図4に示すように、供給チューブ10の一方の端部の側から見て、少なくとも台座IPsの切欠部IPsc又は薄肉部IPstと距離Cを確保する位置に配置されることが好ましい。また、着脱部20は、図7に示すように、供給チューブ10の一方の端部の側から見て、多重管DPの上端から、時計回りの方向に10°~30°程度移動した位置に配置されることがより好ましい。
【0057】
ここで、供給チューブ10を引っ張った時、図8に示すように供給チューブ10と台座IPsとが接触すると、供給チューブ10によって着脱部20を破る方向に力を加えることが難しくなる。このため、供給チューブ10を引っ張った時に着脱部20をより破れやすくするため、例えば、図4に示すように、供給チューブ10の内管IPに巻き付けられた一部と、台座IPsとの距離Eは、250mm以上とすることが好ましい。
また、上述のように、供給チューブ10の内管IPに巻き付けられた一部と、外管OPの端部との距離Dは、50mm以上とすることが好ましい。
【0058】
これらを満たすために、内管IP及び外管OPの端部と台座IPsとの距離F(図4参照)は、少なくとも300mm以上とすることが好ましい。つまり、上述のように、台座IPsは、内管IP及び外管OPの端部から少なくとも300mm以上離れた部位に設けられることが好ましい。
【0059】
(多重管DPの溶接方法)
次に、本実施形態に係る多重管DPの溶接方法について説明する。すなわち、バックシールドガスを供給可能な供給チューブ10が取り付けられた内管IPと、内管IPが挿入された外管OPと、を含む多重管DPの溶接方法について説明する。
本実施形態に係る多重管DPの溶接方法は、取付ステップと、挿入ステップと、内管溶接ステップと、噴出ステップと、外管溶接ステップと、取り外しステップと、を備える。
【0060】
(取付ステップ)
取付ステップは、バックシールドガスを供給可能な供給チューブ10を内管IPに取り付ける工程である。すなわち、まず、噴出口10nが設けられた供給チューブ10の一方の端部を、内管IPに巻き付ける。次に、アルミテープである着脱部20を供給チューブ10に巻き付けることで、供給チューブ10を内管IPに固定する。そして、供給チューブ10の内管IPに巻き付けられた一部以外の部分を、内管IPの軸方向に沿って配置された台座IPsの切欠部IPsc又は薄肉部IPstに配置する。
【0061】
(挿入ステップ)
挿入ステップは、供給チューブ10が取り付けられた内管IPを外管OPに挿入する工程である。挿入ステップでは、まず、内管IP及び外管OPのいずれか一方が固定される。この状態で、内管IP及び外管OPのいずれか他方を、固定された内管IP及び外管OPのいずれか一方に向けて移動させる。このことで、内管IPを外管OPに挿入する。
【0062】
(内管溶接ステップ)
内管溶接ステップは、多重管DPの内管IP同士を溶接する工程である。内管溶接ステップにおいて、内管IP同士は、例えば、ティグ溶接により溶接される。内管溶接ステップによって内管IP同士を接続した後、以下の工程によって外管OP同士を溶接する。
【0063】
(噴出ステップ)
噴出ステップは、バックシールドガスを供給チューブ10から噴出させる工程である。これにより、内管IPと外管OPとの間の隙間にバックシールドガスを充填する。噴出ステップの時点で、外管OPの端部同士は、互いに密着していることが好ましい。なお、内管IPの外周面にSI材が設けられている場合、外管OPの溶接部直下に位置するSI材を保護するために、噴出ステップの前にSI材の周囲にアルミテープを巻き付けてもよい。
【0064】
(外管溶接ステップ)
外管溶接ステップは、外管OPを溶接する工程である。外管溶接ステップにおいて、外管OP同士は、例えば、ティグ溶接により溶接される。これにより、多重管DP同士を接続する。
【0065】
(取り外しステップ)
取り外しステップは、内管IPに取り付けられた供給チューブ10を取り外す工程である。すなわち、供給チューブ10を引っ張ることで着脱部20を破り、内管IPと外管OPとの間から供給チューブ10を抜き取る。
以上の各工程により、多重管DPを溶接する。
【0066】
(多重管DPの製造方法)
次に、本実施形態に係る多重管DPの製造方法について説明する。多重管DPの製造方法は、取付ステップと、挿入ステップと、を備える。
取付ステップは、バックシールドガスを供給可能な供給チューブ10を内管IPに取り付ける工程である。取付ステップは、多重管DPの溶接方法において説明した工程と同じである。
挿入ステップは、供給チューブ10が取り付けられた内管IPを外管OPに挿入する工程である。挿入ステップは、多重管DPの溶接方法において説明した工程と同じである。
以上の各工程により、多重管DPを製造する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係るバックシールドガス供給装置100によれば、バックシールドガスを多重管DPに供給する供給チューブ10を備える。これにより、外管OPを溶接する際に、供給チューブ10によって多重管DPにバックシールドガスを供給することができる。
【0068】
また、供給チューブ10は、内管IPと外管OPとの間に配置される。これにより、外管OPを溶接する際に、供給チューブ10によって内管IPと外管OPとの間にバックシールドガスを供給することができる。
【0069】
また、供給チューブ10は、内管IPに着脱可能に取り付けられる。これにより、例えば、供給チューブ10が内管IPに取り付けられた状態で、内管IPを外管OPに挿入することで、供給チューブ10を内管IPと外管OPとの間に配置することができる。よって、供給チューブ10を内管IPと外管OPとの間に配置しやすくすることができる。
【0070】
また、供給チューブ10は、着脱部20により、内管IPに巻き付けられた状態を維持される。また、供給チューブ10が引っ張られることに応じ、前記状態は解除される。これにより、外管OPの溶接後に、供給チューブ10を内管IPと外管OPとの間から取り除きやすくすることができる。
【0071】
また、供給チューブ10は、バックシールドガスを噴出させる噴出口10nを含む。これにより、バックシールドガスを迅速に外管OPの内部に充満させることができる。
【0072】
また、供給チューブ10は、複数の噴出口10nが、外管OPの内周面の周方向に沿って、設けられる。これにより、バックシールドガスを外管OPの内部にむらなく充満させることができる。
【0073】
また、供給チューブ10の一部は、内管IPに巻き付けられている。複数の噴出口10nは、内管IPに巻き付けられた供給チューブ10の一部に設けられる。これにより、複数の噴出口10nを、内管IPの周方向に沿って配置することができる。よって、バックシールドガスを外管OPの内部によりむらなく充満させることができる。
【0074】
また、内管IPの外周面には周方向の一部が切り欠かれたリング状の台座IPsが設けられている。供給チューブ10は、内管IPの周方向の切り欠かれた一部を通される。これにより、内管IPの外周面に台座IPsが設けられた場合であっても、供給チューブ10を内管IPと外管OPとの間に配置しやすくすることができる。
【0075】
また、内管IPの外周面には、台座IPsが設けられている。供給チューブ10は、台座IPsの一部であって台座IPsの一部以外の部分より厚さが薄い一部を通される。これにより、内管IPの外周面に台座IPsが設けられた場合であっても、供給チューブ10を内管IPと外管OPとの間に配置しやすくすることができる。
【0076】
また、本実施形態に係る多重管DPの溶接方法によれば、供給チューブ10が取り付けられた内管IPを外管OPに挿入する挿入ステップを備える。これにより、供給チューブ10を内管IPと外管OPとの間に配置しやすくすることができる。
バックシールドガスを供給チューブ10から噴出させる噴出ステップを備える。これにより、バックシールドガスを外管OPの内部に充満させることができる。
内管IPに取り付けられた供給チューブ10を取り外す取り外しステップを備える。これにより、外管OPの溶接後に、供給チューブ10が内管IPと外管OPとの間に取り残されないようにすることができる。
【0077】
また、挿入ステップでは、内管IP及び外管OPのいずれか一方が固定される。これにより、内管IPを外管OPに挿入しやすくすることができる。
【0078】
また、本実施形態に係る多重管DPの製造方法によれば、バックシールドガスを供給可能な供給チューブ10を内管IPに取り付ける取付ステップと、供給チューブ10が取り付けられた内管IPを外管OPに挿入する挿入ステップと、を備える。つまり、供給チューブ10が内管IPに取り付けられた状態で、内管IPを外管OPに挿入する。これにより、供給チューブ10を内管IPと外管OPとの間に配置しやすくすることができる。したがって、内管IPと外管OPとの間にバックシールドガスを供給可能な多重管DPを製造しやすくすることができる。
【0079】
また、バックシールドガスを供給チューブ10から噴出させる噴出ステップを備える。つまり、内管IPと外管OPとの間に配置された供給チューブ10からバックシールドガスを噴出させる。これにより、外管OPの溶接時に、内管IPと外管OPとの間にバックシールドガスを供給しやすくすることができる。
【0080】
(多重管DPの変形例)
次に、本実施形態に係る多重管DPの変形例を、図9図10図11を参照して説明する。
なお、この変形例においては、上述の実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
変形例に係る多重管DPは、内管IPの外周面と外管OPの内周面との間の隙間を確保するための構造が、上述の実施形態と異なる。
【0081】
すなわち、変形例に係る多重管DPにおいて、外管OPの内周面には、図9に示すように、突条OPpが外管OPの管軸方向に沿って設けられている。突条OPpは、図10に示すように、外管OPの内周面において、外管OPの周方向に間隔をあけて複数設けられている。突条OPpの先端は、内管IPの外周面に接する。このことで、突条OPp以外の部位において、内管IPの外周面と外管OPの内周面との間の隙間を確保する。
【0082】
変形例に係る多重管DPにおいて、供給チューブ10は、上述のように複数設けられた突条OPpの1つである第1突条OPp1と、第1突条OPp1の隣に位置する突条OPpである第2突条OPp2との間を通されるように配置される。多重管DPの溶接作業時において、このとき、供給チューブ10が配置される第1突条OPp1と第2突条OPp2との間の部位は、上方に位置することが好ましい。
【0083】
図11に示すように、変形例に係る外管OPの端部の内周面には、切り欠きOPcが設けられる。切り欠きOPcとは、外管OPの端部において、突条OPpが切り欠かれた部分のことをいう。切り欠きOPcは、外管OPの端部を座繰り加工することで、外管OPの端部に設けられた突条OPpを削り取ることで形成される。
多重管DPの変形例において、供給チューブ10の端部は、内管IPの位置であって切り欠きOPcに対応する位置に配置される。
【0084】
以上説明したように、変形例に係る多重管DPによれば、外管OPの内周面には、第1突条OPp1及び第2突条OPp2が外管OPの管軸方向に沿って設けられる。供給チューブ10は、第1突条OPp1と第2突条OPp2との間を通される。これにより、外管OPの内周面に第1突条OPp1及び第2突条OPp2が設けられた場合であっても、供給チューブ10を内管IPと外管OPとの間に配置しやすくすることができる。
【0085】
また、外管OPの端部の内周面には、切り欠きOPcが設けられる。供給チューブ10の端部は、内管IPの位置であって切り欠きOPcに対応する位置に配置される。これにより、外管OPにおける切り欠きOPcが設けられた部分、つまり外管OPの内周面において第1突条OPp1及び第2突条OPp2が設けられていない部分に、バックシールドガスを充満させやすくすることができる。
【0086】
(供給チューブ10の取り付けの変形例)
次に、本実施形態に係る供給チューブ10の取り付けの変形例を説明する。
なお、この変形例においては、上述の実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
供給チューブ10の取り付けの変形例において、供給チューブ10は、外管OPに着脱可能に取り付けられる。
【0087】
具体的には、外管OPの内周面に、供給チューブ10の両端をテープ等で貼りつけるようにして取り付ける。このとき、供給チューブ10の両端の間に張力が発生した状態とすることで、供給チューブ10の両端以外の部分が弛まないにする。
このように、予め外管OPの内周面に供給チューブ10を取り付けた場合は、上述の挿入ステップの後に、取付ステップを行う。すなわち、予め供給チューブ10が取り付けられた外管OPに内管IPを挿入した後、外管OPに供給チューブ10を取り付けていたテープを取り外す。そして、供給チューブ10の一方の端部を内管IPに巻き付けて、着脱部20によって固定する。
上述した供給チューブ10の取り付けの変形例は、本実施形態において上述した多重管DPと、多重管DPの変形例と、のいずれにも適用可能である。
【0088】
以上説明したように、変形例に係る供給チューブ10の取り付けによれば、供給チューブ10は、外管OPに着脱可能に取り付けられる。これにより、例えば、内管IPを外管OPに挿入しやすくすることができる。
【0089】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、着脱部20は、アルミテープ以外に接着剤、面ファスナー、チューブ継手を用いて固定してもよい。
供給チューブ10には、ポリウレタンチューブ及びナイロンチューブ以外の任意の管部材を用いてもよい。
【0090】
また、供給チューブ10の内管IPに巻き付けられる一部は、多重管DPの両端部のうち溶接される側の端部から見て、供給チューブ10の内管IPに巻き付けられる一部のうち他方の端部に近い側から、供給チューブ10の一方の端部に向かうにつれて、供給チューブ10が内管IPの軸を中心に時計回りに移動する軌道を辿るように配置されてもよい。
このとき、着脱部20は、例えば、供給チューブ10の一方の端部の側から見て、少なくとも台座IPsの切欠部IPsc又は薄肉部IPstと重なる位置に配置されることが好ましく、供給チューブ10の一方の端部の側から見て、多重管DPの上端から、反時計回りの方向に10°~30°程度移動した位置に配置されることがより好ましい。
本実施形態において、多重管DPは、内管IPと一つの外管OPとを含む二重管であると説明したが、本実施形態に係るバックシールドガス供給装置100を用いて、三重管あるいは更に多くの層を備えた多重管にバックシールドガスを供給してもよい。
【0091】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10 供給チューブ
10n 噴出口
20 着脱部
100 バックシールドガス供給装置
A、B 寸法
C、D、E、F 距離
DP 多重管
IP 内管
IPs 台座
IPsc 切欠部
IPst 薄肉部
OP 外管
OPc 切り欠き
OPp 突条
OPp1 第1突条
OPp2 第2突条
T 溶接トーチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11