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特許7635356砥石のドレッシング装置、砥石のドレッシング方法および制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】砥石のドレッシング装置、砥石のドレッシング方法および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/047 20060101AFI20250217BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20250217BHJP
【FI】
B24B53/047
B24B53/12 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023211818
(22)【出願日】2023-12-15
【審査請求日】2024-07-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 孝一
(72)【発明者】
【氏名】藤木 正寛
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-045573(JP,A)
【文献】特開2000-263439(JP,A)
【文献】特開平02-131870(JP,A)
【文献】実開昭49-041388(JP,U)
【文献】実開昭55-120460(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定軸を中心に延び、前記所定軸を中心とする直径が前記所定軸の軸方向において変化する砥石面を有する砥石を保持し、前記砥石を前記所定軸を中心に回転させることが可能な砥石保持部と、
前記砥石をドレッシングするためのドレッサを保持可能なドレッサ保持部と、
前記ドレッサおよび前記砥石が相対的に走査されるように、前記砥石保持部および前記ドレッサ保持部の少なくともいずれか一方を移動させる移動機構部と、
前記ドレッサが前記砥石面の大径部と接触する時、第1速度で前記ドレッサおよび前記砥石が相対的に走査され、前記ドレッサが前記砥石面の小径部と接触する時、前記第1速度よりも大きい第2速度で、前記ドレッサおよび前記砥石が相対的に走査されるように、前記移動機構部を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置による前記移動機構部の制御対象は、単一方向の直線移動である、砥石のドレッシング装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記砥石面に対する前記ドレッサの接触位置が、前記砥石面の大径部から前記砥石面の小径部に移行するように、前記移動機構部を制御する、請求項1に記載の砥石のドレッシング装置。
【請求項3】
ドレッサを用いて、所定軸を中心にして、前記所定軸の軸方向において第1位置および第2位置の間で延び、前記所定軸を中心とする直径が、前記第1位置で最も大きくなり、前記第2位置で最も小さくなり、前記所定軸の軸方向において前記第1位置から前記第2位置に向けて連続的に減少する砥石面を有する砥石をドレッシングする方法であって、
前記砥石を前記所定軸を中心に回転させるステップと、
前記砥石面に対する前記ドレッサの接触位置が、前記第1位置および前記第2位置の間で移行するように、前記ドレッサおよび前記砥石を相対的に走査するステップとを備え、
前記接触位置が前記第1位置から前記第2位置に向けて移行する場合、前記ドレッサおよび前記砥石の走査速度は、前記接触位置が前記第1位置である時に最小となり、前記接触位置が前記第2位置である時に最大となり、前記第1位置から前記第2位置に向けた前記接触位置の移行に伴って連続的に増大し、
前記接触位置が前記第2位置から前記第1位置に向けて移行する場合、前記ドレッサおよび前記砥石の走査速度は、前記接触位置が前記第2位置である時に最大となり、前記接触位置が前記第1位置である時に最小となり、前記第2位置から前記第1位置に向けた前記接触位置の移行に伴って連続的に減少する、砥石のドレッシング方法。
【請求項4】
ドレッサを用いて、所定軸を中心にして、前記所定軸の軸方向において第1位置および第2位置の間で延び、所定軸を中心とする直径が、前記第1位置で最も大きくなり、前記第2位置で最も小さくなり、前記所定軸の軸方向において前記第1位置から前記第2位置に向けて連続的に減少する砥石面を有する砥石をドレッシングするドレッシング装置の制御プログラムであって、
前記制御プログラムは、前記ドレッシング装置に、
前記砥石を前記所定軸を中心に回転させるステップと、
前記砥石面に対する前記ドレッサの接触位置が、前記第1位置および前記第2位置の間で移行するように、前記ドレッサおよび前記砥石を相対的に走査するステップとを実行させ、
前記接触位置が前記第1位置から前記第2位置に向けて移行する場合、前記ドレッサおよび前記砥石の走査速度は、前記接触位置が前記第1位置である時に最小となり、前記接触位置が前記第2位置である時に最大となり、前記第1位置から前記第2位置に向けた前記接触位置の移行に伴って連続的に増大し、
前記接触位置が前記第2位置から前記第1位置に向けて移行する場合、前記ドレッサおよび前記砥石の走査速度は、前記接触位置が前記第2位置である時に最大となり、前記接触位置が前記第1位置である時に最小となり、前記第2位置から前記第1位置に向けた前記接触位置の移行に伴って連続的に減少する、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、砥石のドレッシング装置、砥石のドレッシング方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2023-55160号公報(特許文献1)には、電動機により回転駆動される円形の研削砥石と、研削面として機能する研削砥石の外周面をドレッシングするためのダイヤモンドドレッサとを備える研削盤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-55160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示されるように、ワークの研削加工を行なうために砥石が用いられている。このような砥石において、砥石の回転中心軸を中心とする砥石面の直径が、その回転中心軸の軸方向に沿って変化する場合、砥石面の小径部の周速は、砥石面の大径部の周速よりも小さくなる。これにより、砥石面の小径部の切れ味が、砥石面の大径部の切れ味よりも悪くなり、結果、小径部で研削されたワーク表面が粗くなったり、小径部による研削時にびびり振動が発生し易くなったりする。
【0005】
この発明の目的は、砥石面の全体でより均一な切れ味が得られる砥石のドレッシング装置、砥石のドレッシング方法、および、制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った砥石のドレッシング装置は、所定軸を中心に延び、所定軸を中心とする直径が変化する砥石面を有する砥石を保持し、砥石を所定軸を中心に回転させることが可能な砥石保持部と、砥石をドレッシングするためのドレッサを保持可能なドレッサ保持部と、ドレッサおよび砥石が相対的に走査されるように、砥石保持部およびドレッサ保持部の少なくともいずれか一方を移動させる移動機構部と、ドレッサが砥石面の大径部と接触する時、第1速度でドレッサおよび砥石が相対的に走査され、ドレッサが砥石面の小径部と接触する時、第1速度よりも大きい第2速度で、ドレッサおよび砥石が相対的に走査されるように、移動機構部を制御する制御装置とを備える。
【0007】
この発明に従った砥石のドレッシング方法は、ドレッサを用いて、所定軸を中心に延び、所定軸を中心とする直径が変化する砥石面を有する砥石をドレッシングする方法である。砥石のドレッシング方法は、砥石を所定軸を中心に回転させ、ドレッサを砥石面の大径部に接触させつつ、第1速度でドレッサおよび砥石を相対的に走査するステップと、砥石を所定軸を中心に回転させ、ドレッサを砥石面の小径部に接触させつつ、第1速度よりも大きい第2速度で、ドレッサおよび砥石を相対的に走査するステップとを備える。
【0008】
この発明に従った制御プログラムは、ドレッサを用いて、所定軸を中心に延び、所定軸を中心とする直径が変化する砥石面を有する砥石をドレッシングするドレッシング装置の制御プログラムである。制御プログラムは、ドレッシング装置に、砥石を所定軸を中心に回転させ、ドレッサを砥石面の大径部に接触させつつ、第1速度でドレッサおよび砥石を相対的に走査するステップと、砥石を所定軸を中心に回転させ、ドレッサを砥石面の小径部に接触させつつ、第1速度よりも大きい第2速度で、ドレッサおよび砥石を相対的に走査するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0009】
この発明に従えば、砥石面に対して均一なドレッシングが可能となる砥石のドレッシング装置、砥石のドレッシング方法、および、制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施の形態におけるドレッシング装置を示す正面図である。
図2図1中のドレッシング装置において、砥石のドレッシング加工に関連する制御系を示すブロック図である。
図3図1中のドレッシング装置におけるドレッシング加工を拡大して示す正面図である。
図4図3中のドレッシング加工におけるドレッシング速度の変化を示すグラフである。
図5】ドレッシング後の砥石(大径部)の砥粒を模式的に示す断面図である。
図6】ドレッシング後の砥石(小径部)の砥粒を模式的に示す断面図である。
図7図3中のドレッシング加工におけるドレッシング速度の変化の変形例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0012】
図1は、この発明の実施の形態におけるドレッシング装置を示す正面図である。図2は、図1中のドレッシング装置において、砥石のドレッシング加工に関連する制御系を示すブロック図である。
【0013】
図1および図2を参照して、ドレッシング装置100は、ワークの研削加工に用いられる砥石12をドレッシング可能な装置である。
【0014】
砥石12は、砥石部16と、シャンク部17とを有する。シャンク部17は、金属製であり、全体として、所定軸160を中心に軸状に延びている。所定軸160は、砥石12の回転中心軸に対応する仮想上の直線である。砥石部16は、砥石としての機能を発揮する高硬度の粒状の砥粒と、砥粒同士を結合する機能を発揮する結合材とから構成されている。砥石部16は、所定軸160に軸方向におけるシャンク部17の一方端部に接続されている。
【0015】
砥石部16は、砥石面21を有する。砥石面21は、砥石12によるワークの研削加工時に、ワークに接触させる砥石部16の表面である。砥石面21は、所定軸160を中心に延びている。所定軸160を中心とする砥石面21の直径は、所定軸160の軸方向に沿って変化する。砥石面21(後述する第1砥石面21Aおよび第2砥石面21Bの各々)は、所定軸160を中心とする円錐面からなる。砥石面21は、所定軸160の軸方向に沿って湾曲しながら延び、所定軸160の半径方向外側に向けて突出する形状を有してもよい。
【0016】
砥石面21は、第1砥石面21Aと、第2砥石面21Bとを含む。第1砥石面21Aおよび第2砥石面21Bは、所定軸160の軸方向に連なっている。第2砥石面21Bは、所定軸160の軸方向において、第1砥石面21Aおよびシャンク部17の間に配置されている。所定軸160を中心とする第1砥石面21Aの直径は、所定軸160の軸方向において第2砥石面21Bから遠ざかるほと小さくなる。所定軸160を中心とする第2砥石面21Bの直径は、所定軸160の軸方向において第1砥石面21Aに近づくほど大きくなる。
【0017】
所定軸160を中心とする砥石面21の直径は、第1砥石面21Aおよび第2砥石面21Bの境界で最大となる。一例として、所定軸160の軸方向における第1砥石面21Aの長さは、所定軸160の軸方向における第2砥石面21Bの長さよりも大きい。第1砥石面21Aおよび第2砥石面21Bの各々は、所定軸160に対して45°傾いている。
【0018】
ドレッシング装置100は、砥石保持部30と、ドレッサ保持部40と、移動機構部70とを有する。砥石保持部30は、砥石12を保持可能である。砥石保持部30は、砥石12を所定軸160を中心に回転させることが可能である。ドレッサ保持部40は、砥石12をドレッシングするためのドレッサ36を保持可能である。移動機構部70は、ドレッサ36および砥石12が相対的に走査されるように、砥石保持部30およびドレッサ保持部40の少なくともいずれか一方を移動させる。
【0019】
本実施の形態では、ドレッシング装置100が、停止するワークに回転する工具を接触させることによって、ワーク加工を行なうミーリング機能と、回転するワークに工具を接触させることによって、ワーク加工を行なう旋削機能との両方が備わった複合加工機101から構成されている。
【0020】
以下、複合加工機101の構成に照らしながら、ドレッシング装置100のより具体的な構成について説明する。
【0021】
複合加工機101は、コンピュータによる数値制御によって、ワーク加工のための各種動作が自動化されたNC(Numerically Controlled)工作機械である。
【0022】
本明細書においては、複合加工機101の構成を説明する便宜上、ワークの回転軸に平行で、水平方向に延びる軸を「Z軸」といい、Z軸に直交し、水平方向に延びる軸を「Y軸」といい、上下方向に延びる軸を「X軸」という。
【0023】
複合加工機101は、ワーク主軸41と、工具主軸(上刃物台)31と、図示しない刃物台(下刃物台)とを有する。ワーク主軸41、工具主軸31および刃物台(不図示)は、工作エリア105に配置されている。工作エリア105は、ワークの加工が行なわれる空間であり、ワーク加工に伴う切屑または切削油等の異物が工作エリア105の外側に漏出しないようにカバー体(不図示)により密閉されている。
【0024】
ワーク主軸41は、ワークを保持可能である。ワーク主軸41は、モータにより、Z軸方向に延びる回転中心軸110を中心に回転駆動する。
【0025】
ワーク主軸41は、チャック42を有する。チャック42は、ワークを着脱可能に保持する。チャック42は、チャック本体部43と、複数の爪部44とを有する。チャック本体部43は、回転中心軸110を中心とする円柱形状を有する。チャック本体部43は、端面43aを有する。端面43aは、回転中心軸110と直交する平面からなる。
【0026】
複数の爪部44は、回転中心軸110の周方向に互いに間隔を開けて、チャック本体部43に取り付けられている。複数の爪部44は、端面43aからZ軸方向に突出している。各爪部44は、油圧等によって、回転中心軸110の半径方向にスライド駆動する。複数の爪部44は、回転中心軸110の半径方向内側にスライドすることによって、ワークの外周面を把持したり、回転中心軸110の半径方向外側にスライドすることによって、ワークの内周面を把持したりする。
【0027】
ワーク主軸41は、ドレッサ36を保持している。本実施の形態では、ドレッサ保持部40が、ワーク主軸41により構成されている。
【0028】
ドレッサ36は、ドレッサ取り付け台37を介して、チャック本体部43に取り付けられている。ドレッサ取り付け台37は、チャック本体部43の端面43aに取り付けられている。ドレッサ取り付け台37は、複数の爪部44よりも回転中心軸110の半径方向外側に配置されている。
【0029】
ドレッサ36は、半円状に湾曲加工された先端部を有するポイントドレッサからなる。ドレッサ36は、たとえば、ダイヤモンド製である。ドレッサ36は、第1ドレッサ36Aと、第2ドレッサ36Bとを含む。第1ドレッサ36Aは、ドレッサ取り付け台37から回転中心軸110の半径方向外側に向けて突出している。第2ドレッサ36Bは、ドレッサ取り付け台37からZ軸方向に沿って突出している。第1ドレッサ36Aは、第1砥石面21Aのドレッシングに用いられる。第2ドレッサ36Bは、第2砥石面21Bのドレッシングに用いられる。
【0030】
なお、複合加工機101は、Z軸方向においてワーク主軸41と対向する位置に、対向ワーク主軸をさらに備えてもよい。ドレッサ36は、ワーク主軸41に限られず、たとえば、対向ワーク主軸により保持されてもよいし、工作エリア105を取り囲むカバー体により保持されてもよいし、刃物台(不図示)により保持されてもよい。
【0031】
工具主軸31は、工具を保持可能である。工具主軸31は、モータにより、後述する基準姿勢においてX軸に平行な回転中心軸120を中心に回転駆動する。工具主軸31には、工具を着脱可能に保持するためのクランプ機構(不図示)が内蔵されている。
【0032】
工具主軸31は、さらに、Y軸に平行な旋回中心軸130を中心に旋回可能に設けられている(B軸旋回)。旋回中心軸130は、回転中心軸120と交差する。工具主軸31の旋回範囲は、たとえば、工具主軸31の主軸端面31aが下方を向く基準姿勢を基準にして±120°の範囲である。図1中には、基準姿勢から、旋回中心軸130を中心に時計回りに45°旋回した工具主軸31が示されている。
【0033】
工具主軸31は、さらに砥石12を保持可能である。本実施の形態では、ドレッサ保持部40が、工具主軸31により構成されている。シャンク部17が工具主軸31に内蔵されるクランプ機構によりクランプされることによって、砥石12が工具主軸31により保持される。砥石12が工具主軸31により保持された場合に、回転中心軸120および所定軸160が、一直線に延びる。
【0034】
工具主軸31は、移動機構部70によって、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能である。移動機構部70は、各種の送り機構、案内機構およびサーボモータ(図2中の工具主軸送りモータ62)により構成されている。
【0035】
刃物台(不図示)は、工具を保持可能である。刃物台は、いわゆるタレット形であり、複数の工具が放射状に取り付けられ、旋回割り出しを行なう。刃物台は、各種の送り機構、案内機構およびサーボモータによって、Z軸方向およびX軸方向に移動可能である。このため、刃物台によってドレッサ36が保持される場合には、ドレッサ36をZ軸-X軸平面内で移動させることが可能である。
【0036】
複合加工機101は、ワークの研削加工を行なう研削装置としても機能する。研削加工の一例として、工具主軸31を、基準姿勢から旋回中心軸130を中心に時計回りに45°旋回させることで、ワーク主軸41に保持された円柱状ワークの外周面を、第1砥石面21Aを用いて研削する。工具主軸31を、基準姿勢から旋回中心軸130を中心に反時計回りに45°旋回させることで、ワーク主軸41に保持された円柱状ワークの端面を、第2砥石面21Bを用いて研削する。
【0037】
複合加工機101(ドレッシング装置100)は、制御装置51をさらに有する。制御装置51は、複合加工機101の動作を制御する。
【0038】
制御装置51の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コンピュータプロセッサなどの演算器、メモリまたはストレージといった記憶装置、ならびに、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアとによって実現されている。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、または、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。
【0039】
制御装置51は、プログラム記憶部52と、プログラム実行部53と、工具主軸制御部54と、ワーク主軸制御部55とを有する。
【0040】
プログラム記憶部52には、複合加工機101の作業者によって作成されたワーク加工のための実行プログラム(複合加工機101の制御プログラム)が記憶されている。プログラム記憶部52は、一例として、フラッシュメモリである。
【0041】
プログラム実行部53は、プログラム記憶部52に記憶された実行プログラムを実行する。プログラム実行部53は、実行プログラムの命令を読み取って、工具主軸制御部54およびワーク主軸制御部55の各々に制御信号を出力する。
【0042】
工具主軸制御部54は、プログラム実行部53からの制御信号に従って、工具主軸31をB軸旋回させるための工具主軸旋回モータ61と、工具主軸31をX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の各方向に移動させるための工具主軸送りモータ62と、工具主軸31を回転中心軸120を中心に回転させるための工具主軸回転モータ63とを制御する。ワーク主軸制御部55は、プログラム実行部53からの制御信号に従って、ワーク主軸41を回転中心軸110を中心に回転させるためのワーク主軸回転モータ64を制御する。
【0043】
図3は、図1中のドレッシング装置におけるドレッシング加工を拡大して示す正面図である。図4は、図3中のドレッシング加工におけるドレッシング速度の変化を示すグラフである。
【0044】
なお、本発明において、ドレッシング速度とは、ドレッサおよび砥石を相対的に走査させる速度を意味している。本実施の形態では、ドレッシング速度が、Z軸方向における工具主軸31(砥石12)の送り速度に対応している。
【0045】
図1から図4を参照して、制御装置51は、ドレッサ36が砥石面21の大径部210と接触する時、第1速度でドレッサ36および砥石12が相対的に走査され、ドレッサ36が砥石面21の小径部220と接触する時、第1速度よりも大きい第2速度で、ドレッサ36および砥石12が相対的に走査されるように、移動機構部70を制御する。
【0046】
また、本実施の形態における砥石のドレッシング方法は、砥石12を所定軸160を中心に回転させ、ドレッサ36を砥石面21の大径部210に接触させつつ、第1速度でドレッサ36および砥石12を相対的に走査するステップと、砥石12を所定軸160を中心に回転させ、ドレッサ36を砥石面21の小径部220に接触させつつ、第1速度よりも大きい第2速度で、ドレッサ36および砥石12を相対的に走査するステップとを備える。
【0047】
また、本実施の形態における制御プログラムは、複合加工機101(ドレッシング装置100)に、砥石12を所定軸160を中心に回転させ、ドレッサ36を砥石面21の大径部210に接触させつつ、第1速度でドレッサ36および砥石12を相対的に走査するステップと、砥石12を所定軸160を中心に回転させ、ドレッサ36を砥石面21の小径部220に接触させつつ、第1速度よりも大きい第2速度で、ドレッサ36および砥石12を相対的に走査するステップとを実行させる。
【0048】
図3中には、第1ドレッサ36Aを用いて、砥石部16の第1砥石面21Aをドレッシングする加工が示されている。以下では、第1ドレッサ36Aを用いた第1砥石面21Aのドレッシング加工を例にして、本実施の形態における砥石のドレッシング方法について説明する。
【0049】
図3に示されるように、第1砥石面21Aが、所定軸160の軸方向において、第1位置Paおよび第2位置Pbの間で延びている。第1位置Paは、所定軸160を中心とする第1砥石面21Aの直径が最も大きくなる位置であり、第2位置Pbは、所定軸160を中心とする第1砥石面21Aの直径が最も小さくなる位置である。第1砥石面21Aが所定軸160の軸方向において2分割され、そのうち、第1位置Paを含む領域が、大径部210として示され、第2位置Pbを含む領域が、小径部220として示されている。所定軸160を中心とする大径部210の直径は、所定軸160を中心とする小径部220の直径よりも大きい。
【0050】
図1から図4に示されるように、第1砥石面21Aのドレッシング加工においては、まず、工具主軸制御部54が、工具主軸31が基準姿勢から旋回中心軸130を中心に時計回りに45°旋回した姿勢となるように、工具主軸旋回モータ61を制御する。
【0051】
次に、工具主軸制御部54は、第1ドレッサ36Aの先端部が第1砥石面21Aの第1位置Paに対して近接するように、工具主軸送りモータ62を制御する。工具主軸制御部54は、砥石12が所定軸160を中心に回転するように工具主軸回転モータ63を制御する。次に、工具主軸制御部54は、砥石12がZ軸方向に移動するように工具主軸送りモータ62を制御する。砥石12が所定軸160を中心に回転し、第1ドレッサ36Aが第1砥石面21Aと接触しながら、第1ドレッサ36Aの先端部が第1砥石面21Aの第1位置Paから第2位置Pbまで移動することによって、第1砥石面21Aがドレッシングされる。(以下、ドレッサ36が砥石面21と接触する位置を「ドレッシング位置」ともいう。)
このとき、工具主軸制御部54は、第1ドレッサ36Aが第1砥石面21Aの小径部220と接触する時のドレッシング速度(Z軸方向における工具主軸31の送り速度)が、第1ドレッサ36Aが第1砥石面21Aの大径部210と接触する時のドレッシング速度(Z軸方向における工具主軸31の送り速度)よりも大きくなるように、工具主軸送りモータ62を制御する。
【0052】
図4に示されるように、本実施の形態では、ドレッシング位置が大径部210における第1位置Paである時のドレッシング速度が、Vaであり、ドレッシング位置が小径部220における第2位置Pbである時のドレッシング速度が、Vaよりも大きいVbである。ドレッシング速度は、ドレッシング位置が第1位置Paから第2位置Pbに移るに従って増加している。
【0053】
続いて、大径部210および小径部220の間でドレッシング速度に上記の大小関係を設けたことによる作用効果について説明する。図5は、ドレッシング後の砥石(大径部)の砥粒を模式的に示す断面図である。図6は、ドレッシング後の砥石(小径部)の砥粒を模式的に示す断面図である。
【0054】
所定軸160を中心とする小径部220の直径は、所定軸160を中心とする大径部210の直径よりも小さいため、砥石12を用いたワークの研削加工時、小径部220の周速は、大径部210の周速よりも小さくなる。これにより、小径部220の切れ味が、大径部210の切れ味よりも悪くなる。
【0055】
これに対して、本実施の形態では、第1ドレッサ36Aが小径部220と接触する時のドレッシング速度が、相対的に大きく設定されている。図5に示されるように、ドレッシング速度が大きい場合、ドレッサ36によって砥石12の砥粒91に成形される切れ刃形状の間隔Hおよび高さTが相対的に大きくなるため、砥石12の切れ味はよくなる一方、研削時の加工精度は悪くなる。
【0056】
また、第1ドレッサ36Aが大径部210と接触する時のドレッシング速度が、相対的に小さく設定されている。図6に示されるように、ドレッシング速度が小さい場合、ドレッサ36によって砥石12の砥粒91に成形される切れ刃形状の間隔hおよび高さtは、相対的に小さくなるため(h<H、t<T)、砥石12の切れ味は悪くなる一方、研削時の加工精度はよくなる。
【0057】
したがって、第1ドレッサ36Aが小径部220と接触する時のドレッシング速度を、第1ドレッサ36Aが大径部210と接触する時のドレッシング速度よりも大きくすることによって、小径部220における砥石12の切れ味が大径部210における砥石12の切れ味よりも増すように、第1砥石面21Aをドレッシングすることが可能になる。そのような砥石12を用いてワークの研削加工を実行することで、上記の砥石面21の周速の差に起因した切れ味のばらつきを抑制し、第1砥石面21Aの全体で均一な切れ味を得ることができる。
【0058】
また、本実施の形態では、上記のドレッシング加工時、砥石12と接触する第1砥石面21Aの位置(ドレッシング位置)を、大径部210から小径部220に移行させている。このような構成によれば、大径部210をドレッシング加工の開始直後のドレッサ36と接触させることが可能となるため、研削加工においてワークと接触する頻度が高い大径部210で、所望のドレッシング効果を優先的に得ることができる。
【0059】
図7は、図3中のドレッシング加工におけるドレッシング速度の変化の変形例を示すグラフである。図5を参照して、本変形例では、ドレッシング位置が第1位置Paから第2位置Pbに移る間に、ドレッシング速度が段階的に増大されている。ドレッシング速度は、2段階以外の複数段階に増大されてもよい。
【0060】
なお、工具主軸31を、基準姿勢から旋回中心軸130を中心に反時計回りに旋回させ、工具主軸31をX軸方向に移動させることによって、第2ドレッサ36Bによる第2砥石面21Bのドレッシングが可能である。この場合においても、第2ドレッサ36Bが第2砥石面21Bの小径部と接触する時のドレッシング速度が、第2ドレッサ36Bが第2砥石面21Bの大径部と接触する時のドレッシング速度よりも大きくなるように、工具主軸31の送り速度を制御すればよい。
【0061】
本実施の形態では、ドレッシング装置100が、複合加工機101から構成される場合を説明したが、これに限られない。本発明におけるドレッシング装置は、たとえば、ドレッシング専用の装置から構成されてもよいし、ドレッシング機能を備えた研削装置から構成されてもよい。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
12 砥石、16 砥石部、17 シャンク部、21 砥石面、21A 第1砥石面、21B 第2砥石面、30 砥石保持部、31 工具主軸、31a 主軸端面、36 ドレッサ、36A 第1ドレッサ、36B 第2ドレッサ、37 ドレッサ取り付け台、40 ドレッサ保持部、41 ワーク主軸、42 チャック、43 チャック本体部、43a 端面、44 爪部、51 制御装置、52 プログラム記憶部、53 プログラム実行部、54 工具主軸制御部、55 ワーク主軸制御部、61 工具主軸旋回モータ、62 工具主軸送りモータ、63 工具主軸回転モータ、64 ワーク主軸回転モータ、70 移動機構部、91 砥粒、100 ドレッシング装置、101 複合加工機、105 工作エリア、110,120 回転中心軸、130 旋回中心軸、160 所定軸、210 大径部、220 小径部。
【要約】
【課題】砥石面の全体でより均一な切れ味が得られる砥石のドレッシング装置、砥石のドレッシング方法、および、制御プログラム、を提供する。
【解決手段】ドレッシング装置は、砥石12を回転させることが可能な砥石保持部30と、砥石12をドレッシングするためのドレッサ36を保持可能なドレッサ保持部40と、ドレッサ36および砥石12が相対的に走査されるように、砥石保持部30およびドレッサ保持部40の少なくともいずれか一方を移動させる移動機構部70と、ドレッサ36が砥石面21の大径部210と接触する時、第1速度でドレッサ36および砥石12が相対的に走査され、ドレッサ36が砥石面21の小径部220と接触する時、第1速度よりも大きい第2速度で、ドレッサ36および砥石12が相対的に走査されるように、移動機構部70を制御する制御装置51とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7