IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7635374フォームフィルムの製造用のフォームパネルを製造する方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】フォームフィルムの製造用のフォームパネルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/56 20060101AFI20250217BHJP
【FI】
B29C44/56
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023526368
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 EP2021078108
(87)【国際公開番号】W WO2022089931
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】20204645.4
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス ゴールトマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス リヒター
(72)【発明者】
【氏名】マティアス アレクサンダー ロス
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジ マヌエル ピント
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-503519(JP,A)
【文献】国際公開第2010/047274(WO,A1)
【文献】英国特許出願公告第2448610(GB,A)
【文献】特表2011-530426(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2653287(EP,A1)
【文献】国際公開第94/04604(WO,A1)
【文献】特公昭56-030180(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0287321(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも100℃のガラス転移温度T、規格ASTM D 3576に従って測定される20μm~250μmの平均セル直径及び1mあたり20個未満の直径260μm超を有するセル及びASTM D 638に従って測定される4%~13%のフォームパネルの破断伸びを有するポリマーからなるフォームフィルムの製造用のフォームパネルを製造する方法であって、
A)フォームブロックのフォームスキンを除去し、かつ
B)フォームブロックの残りの部分を、60~135mmの厚さを有するフォームパネルへカットする
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記ポリマーが、少なくとも140℃のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーが、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ(メタ)アクリルイミド、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート並びにそれらの混合物及びコポリマーからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記フォームパネルの平均セル直径が、50μm~220μm、好ましくは80μm~200μmである、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
セル直径260μm超を有するセルが、フォームパネル1mあたり15個未満存在する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記フォームパネルの破断伸びが、ASTM D 638に従って測定して、5%~10%である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程A)において前記フォームブロックの前記フォームスキンが、3mmの厚さを有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程B)において前記フォームパネルを、バンドナイフ又はバンドソーを用いてカットする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規格ASTM D 3576に従って測定される平均セル直径が20μm~250μmであり、かつ直径>260μmを有するセルが1mあたり20個未満存在し、かつフォームの破断伸びが、ASTM D 638に従って測定して、4%~13%であることを特徴とする、少なくとも100℃のガラス転移温度Tを有するポリマーからなるフォームフィルムの製造用のフォームパネルを製造する方法に関する。
【0002】
従来技術
硬質フォーム、例えば製品名Rohacell(登録商標)で市販されているポリメタクリルイミドは、他のフォームと同様に、種々の方法によりカットすることができる。Rohacell(登録商標)の場合にカットする標準方法は、ソーイングによる。これは、バンドソーを用いる厚いフォームブロックの水平分割を含み、そのため、かなりの量のソーダストを発生する。そのうえ、この方法により、該硬質フォームから薄い又は極めて薄いシート又はフィルムを得ることはほとんど不可能である。そうでなくても、該ソーブレードの厚さ及びソーイングの過程でカットされうる硬質フォームの領域での比較的高い機械的応力のために、極めて薄いフィルムは達成できない。そしてまた、3~10mmの厚さを有する薄いシートは、大きな材料損失及びかなりのダスト形成を伴ってのみ可能である、それというのも、ソーイングにおいて使用されるソーブレードは、少なくとも2mmのかなりの厚さを有し、そのため、相応した材料損失が生じるからである。そしてまた、該ソーブレードが特に薄い場合には、前記ブレードがたわんで、かつそのカット製品の大きい厚さ差をまねく及び/又はフィルムのカットを事実上不可能にする。10mmを超える厚さを有するより厚いシートが分割されうる場合には、ソーイングの過程で問題が同様に生じる、それというのも、該ソーブレードの厚さにより引き起こされる、カットされうる領域の曲がりは、該分割中にその破壊をまねくかもしれないからである。これは、殊に、極めて硬質の、ひいてはある程度もろい、フォームの場合に起こる問題である。
【0003】
軟質フォーム、例えば軟質ポリウレタンフォームは、バンドナイフの使用によりカットすることもでき、その際に廃棄物としてソーダストを生じない。
多くのフォーム(硬質及び軟質フォーム)は、付加的に、加熱された張ったワイヤを用いてカットすることができる。しかしながら、ここでは、前記の熱いワイヤの結果として材料が熱損傷する可能性がある。さらに、該ワイヤの有限の厚さの結果として、ここでは、材料損失又は薄いシートの破壊の問題もある。
【0004】
フィルム又は薄いシートを得るのに適している、硬質フォームを平面分割する方法は、米国特許第10556357号明細書(US 10,556,357)に記載されている。この方法は、該硬質フォームが、最初に柔軟化され、ついでナイフを用いてカットされることにより特徴付けられる。この知的財産権に記載されたフォームフィルムは、多数のピンホールのために不十分な破断伸びを示す。
【0005】
課題
したがって、検討した従来技術の背景に対して、本発明により扱われる課題は、フォームパネルを製造する方法であって、該フォームパネルから、小さいセル直径を有し、かつピンホールをほとんど有していない、少なくとも100℃のガラス転移温度Tを有するポリマー製の薄いフォームフィルムを提供することを可能にする方法を提供することであった。
該フォームパネルの製造方法は、3mm未満の厚さのこれらのフォームパネルからフォームフィルムを製造するのに特に適しているものとする。フォームパネルの分割は、チップを形成することなく行われるものとする。
【0006】
本明細書に明示的に議論されないその他の課題は、従来技術、明細書、請求の範囲又は例示的な実施態様から得ることができる。
【0007】
解決手段
この課題は、少なくとも100℃のガラス転移温度T、規格ASTM D 3576に従って測定される20μm~250μmの平均セル直径及び1mあたり20個未満の直径>260μmを有するセル及びASTM D 638に従って測定される4%~13%のフォームパネルの破断伸びを有するポリマーからなるフォームフィルムの製造用のフォームパネルを製造する方法であって、
A)該フォームブロックのフォームスキンを除去し、かつ
B)該フォームブロックの残りの部分を、10~135mmの厚さを有するフォームパネルへカットする
ことにより特徴付けられる、方法を提供することによって解決された。
【0008】
本発明によるフォームパネルは、DIN EN ISO 11357-2に従って測定して、少なくとも100℃、好ましくは少なくとも140℃のガラス転移温度Tを有するポリマーから製造される。プラスチックのための規格DIN EN ISO 11357-2(2014年07月発行)は、示差走査熱量測定(DSC)―第2部:ガラス転移温度及びガラス転移活性化エネルギーの測定を記載する。
【0009】
該ポリマーは、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ(メタ)アクリルイミド、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート並びにそれらの混合物及びコポリマーからなる群から選択される。
用語ポリ(メタ)アクリルイミド(P(M)I)は、以下に、ポリメタクリルイミド(PMI)、ポリアクリルイミド(PI)又はそれらの混合物を意味するものとして理解すべきである。同様のことは、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレートに当てはまる。それに応じて、用語ポリメチル(メタ)アクリレートは、ポリメチルメタクリレートだけではなく、ポリメチルアクリレート及びそれらの混合物も意味するものとして理解すべきである。
該フォームコア用の材料は、好ましくはP(M)I、特に好ましくはPMIである。そのようなP(M)Iフォームは、硬質フォームとも呼ばれ、かつ特有の強さを示す。P(M)Iフォームの製造は、例えば欧州特許出願公開第3221101号明細書(EP 3221101)に記載されている。該P(M)Iフォームは、通常、2段法において製造される:a)注型用ポリマーの製造及びb)この注型用ポリマーの発泡。
該注型用ポリマーは、主成分として、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリロニトリルを、好ましくは2:3~3:2のモル比で含むモノマー混合物を最初に製造することにより製造される。そのうえ、さらなるコモノマー、例えばアクリル酸又はメタクリル酸のエステル、スチレン、マレイン酸又はイタコン酸又はそれらの無水物又はビニルピロリドンを使用することが可能である。しかしながら、該コモノマーの割合は、30重量%以下であるべきである。少量の架橋性モノマー、例えばアリルアクリレートを使用することも可能である。しかしながら、該量は好ましくは、多くとも0.05~2.0重量%であるべきである。
【0010】
該共重合用の混合物はさらに、分解又は蒸発されて約150℃~250℃の温度で気相を形成する発泡剤を含有する。該重合は、この温度を下回るので、該注型用ポリマーは、潜発泡剤を含有する。該重合は有利に、2枚のガラスプレート間のブロックの形で行われる。フォームシートの製造のためには、これに続いて、ついで、従来技術に従って、第2工程において適切な温度で該注型用ポリマーが発泡される。これらのP(M)Iフォームの製造は、原則的に当業者に公知であり、かつ例として、欧州特許出願公開第1444293号明細書(EP 1 444 293)、欧州特許出願公開第1678244号明細書(EP 1 678 244)又は国際公開第2011/138060号(WO 2011/138060)に見出すことができる。PMIフォームの例は、特に、Evonik Industries AG、ドイツからのROHACELL(登録商標)ラインを含む。アクリルイミドフォームは、製造及び加工に関して該PMIフォームに類似するとみなすことができる。しかしながら、毒性学的理由のために、これらは、他のフォーム材料に比較して、事実上より好ましくない。
【0011】
該硬質フォーム材料の密度は、比較的自由に選択することができる。P(M)Iフォームは、例えば20~320kg/m、好ましくは25~250kg/mの密度範囲内で使用されてよい。30~200kg/mの密度を有するPMIフォームを使用することが特に好ましい。
【0012】
本明細書に記載されるフォームは、フォームブロックにおいて製造される。これらのフォームブロックは、使用されるポリマー及び達成される密度に従って多様な厚さを有する。
【0013】
該フォームブロックの特定の領域からのフォームのみを使用することが、特に有利であることが見出された。該フォームブロックのフォームスキン/表面を除去することが、非常に優れた機械的性質を有するフォームパネルを生じることが見出された。
【0014】
該フォームブロックの表面/フォームスキンの3mm、特に好ましくは5mm、極めて特に好ましくは10mm及び殊に好ましくは15mmが除去される場合が好ましい。その残りの材料は、セルサイズと破断伸びとのより良好な均質性、ひいてはフォームパネルへの加工のための適性を有する。
【0015】
該フォームブロックの残りの部分は、10~135mm、好ましくは60~125mm、特に好ましくは75mmの厚さを有するフォームパネルへカットされる。
【0016】
フォームブロックからフォームパネルをカットするための多様な方法は、公知である。カットは、好ましくは、レーザー、バンドナイフ又はバンドソーを用いて行われる。
【0017】
本発明により製造されるフォームパネルは、フォームフィルムを製造するのに殊に適している。
【0018】
該フォームパネルは、特に少ない厚さのフォームフィルムを製造するのに使用することができる。0.05~3mmの厚さを有する薄いフォームフィルムが製造できる。0.15~1mmのフォームフィルム厚さを得ることが好ましい。
【0019】
フォームフィルムの製造における特有の問題は、ピンホールである。これに関連して、用語ピンホールは、該フィルムの表面で生じ、かつ強さの減少を生じる比較的大きなセルをいう。極端な場合には該セルサイズは、該フィルムの厚さよりも大きく、そのため、該フィルム中にホールが生じる。
【0020】
本発明によれば、該フォームフィルムは、規格ASTM D 3576に従って測定して、20μm~250μm、好ましくは50μm~220μm、特に好ましくは80~200μmの該フォームの平均セル直径を有する。規格ASTM D 3576(2015年版)は、ハードフォームのセルサイズを決定するのに使用される。
【0021】
所望の機械的性質、特に破断伸びを得るために、直径>260μmを有するセルが、1mあたり20個未満のみ存在する。セル直径>260μmを有するセルが1mあたり15個未満のみ存在する場合が好ましい。
【0022】
好ましいのは、ASTM D 638(2014年版)に従って測定して、4%~30%、特に好ましくは5%~10%の破断伸びを有するフォームフィルムである。ASTM D 638は、ISO 527-1に対応し、かつプラスチックの引張特性を求める標準試験方法である。
【0023】
具体的には、高い剛性及び脆性を有する特に硬質なフォーム、例えば硬質P(M)Iフォームは、そのスラブがカッティングの過程で、殊にブレードのくさび形の断面の結果として、破壊する問題に苦しむことがある。
【0024】
特別な特性、例えば高い破断伸び及びセル構造を有するフォームは、薄層へ分割するのに適している。硬質フォームの分割は、例えばスマートフォン用のスピーカーにおいて使用される薄層を製造するのに極めて効率的な方法である。該分割方法の機械的要求(カッターバーでのカットフィルムのたわみ)のために、該フォームの高い破断伸びは、方法安定性及び達成できる層厚にとって有利である。該カットフォームフィルムは、アルミニウムはくの極めて薄い層に接着結合され、該はくを通じて、比較的粗大で不均質なセルが見えるようになることがあるので、できる限り微細で均質なセル構造が必要とされる。
【0025】
該方法の一変法において、加熱されたままの硬質フォームの分割が、乾燥器又は加熱プレス中での発泡操作の直後に実施される。
該ナイフの配列に関しても、多様な実施態様がある。
【0026】
好ましい実施態様において、該硬質フォームスラブは、該ナイフのカット表面に直角で運動されるのに対し、該ナイフは、該硬質フォームスラブの輸送方向に直角でのみ運動する。あるいは、より好ましくないが、該カット操作における該ナイフは、固定された硬質フォームに沿って運動される。該ナイフと該硬質フォームとが、反対の運動方向を有することも可能であり、その場合に、後者2つの変法における該ナイフは、該カット操作のサポートに加えて該硬質フォームに直角で効果的に運動することができる。
直角での該ナイフの運動の場合に、再び2つの変法がある。最初に、該ナイフは、前後に運動することができる。しかしながら、バンドナイフを使用することが好ましい。そのようなバンドナイフは、カッティング方向に直角で一方向で一周して運動され、かつ一般に、少なくとも2本の案内ローラーによって案内され、かつ駆動される。バンドナイフシステムは、商業的に入手可能である。
【0027】
特別な実施態様において、例えばフィルム又は薄いシートの形の、幾つかの片は、該硬質フォームから、連続して配列された多数のナイフによって一つの動きでカットされる。これらは、殊に、直列に配列された幾つかのバンドナイフであってよい。こうして、多数のワークピースを1個のブロックから一操作で極めて効率的な方法においてカットすることを可能にする。
【0028】
選択的に又は付加的に、該フィルムは、引き続き、少なくとも1つの外層でカバーされてよい。これらの外層は、例えば、複合材料、金属又は木材であってよい。このことは、例えば、軽量構造物において使用されるサンドイッチ材料を実現することを可能にする。あるいは、該外層は単純に、単に再び除去することができる保護フィルム又は装飾層であってよい。殊に、極めて薄いアルミニウムはくの適用が重要である。
【0029】
本発明の大きな利点は、硬質フォームのカット中のソーダストの形の廃棄物の発生が、事実上回避されることと、該硬質フォーム表面の熱損傷が排除されることである。このことは、材料損失を限定することを可能にし、かつ該方法は、従来技術の方法よりも完全に経済的である。
【0030】
前記の薄いフォームフィルムは原則的に、極めて幅広い適用分野を有する。フォームフィルムは、例えばメンブランとして、特にスピーカー、モバイルミュージックプレーヤー又はヘッドフォンにおいて、使用することができる。装飾目的のため、例えば物品の表面仕上げのためのそれらの使用も考えられる。