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特許7635388接着層付き磁石、その製造方法および磁石アセンブリの製造方法
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  • 特許-接着層付き磁石、その製造方法および磁石アセンブリの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】接着層付き磁石、その製造方法および磁石アセンブリの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/025 20190101AFI20250217BHJP
   H02K 15/03 20250101ALI20250217BHJP
【FI】
B32B7/025
H02K15/03
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023540129
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 CN2021126403
(87)【国際公開番号】W WO2022142645
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】202011600678.5
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515173183
【氏名又は名称】北京中科三環高技術股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING ZHONG KE SAN HUAN HI-TECH CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】27/F,Building A,No.66 East Road,Zhong Guan Cun,Haidian District,Beijing 100190,China
(73)【特許権者】
【識別番号】521341477
【氏名又は名称】天津三環楽喜新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】白暁剛
(72)【発明者】
【氏名】于海華
(72)【発明者】
【氏名】潘広麾
(72)【発明者】
【氏名】韓雪
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-052950(JP,A)
【文献】特開2019-182977(JP,A)
【文献】特開2023-065455(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0312995(US,A1)
【文献】特開2019-193413(JP,A)
【文献】特開2007-028725(JP,A)
【文献】特開2020-100043(JP,A)
【文献】特開2008-149607(JP,A)
【文献】特開2016-084470(JP,A)
【文献】特開2017-222155(JP,A)
【文献】特表平11-503482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 1/00-201/10
H02K 1/17,1/27-1/2798,15/00-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石基体と、少なくとも1層の接着層とからなり、第一の前記接着層は前記磁石基体の表面に設けられており、
前記接着層は、熱硬化性接着層と熱可塑性接着層とを含み、前記熱硬化性接着層は、前記熱可塑性接着層よりも前記磁石基体表面の近くにある;
前記熱硬化性接着層が、膨張剤を含有し、
前記熱可塑性接着層が、40℃~90℃の条件で硬化して、非接着性の薄層を形成することを特徴とする接着層付き磁石。
【請求項2】
前記接着層の数は複数であり、複数の前記接着層は、前記磁石基体の表面から外に向かって順に設けられ
ここで、最外層の熱可塑性接着層の厚さと残りの任意の1層の熱可塑性接着層の厚さとの比は、2:1~8:1であることを特徴とする請求項1に記載の接着層付き磁石
【請求項3】
前記接着層の厚さの合計が80~150μmであることを特徴とする請求項1に記載の接着層付き磁石。
【請求項4】
全ての前記熱硬化性接着層の厚みの和と、全ての前記熱可塑性接着層の厚みの和との比が、4:1~10:1であることを特徴とする請求項1に記載の接着層付き磁石。
【請求項5】
前記熱可塑性接着層は、ナノ硫酸バリウム及びナノエチレンワックスを有する第1の助剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の接着層付き磁石。
【請求項6】
前記熱硬化性接着層は、硬化剤、フィラー、第2助剤を含み、
前記硬化剤が、グアニジン、置換グアニジン、芳香族アミン、及びグアニルアミン誘導体の少なくとも1種であり;
前記フィラーは、シリカ、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、およびタルクのうちの少なくとも1つであり;
前記第2助剤が、硬化促進剤、カップリング剤、消泡剤、繊維、ゴム粒子、希釈剤、難燃剤の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の接着層付き磁石
【請求項7】
着層を有する磁石の製造方法であって
調製工程:熱硬化性接着層の原料として熱硬化性接着剤に膨張剤を混入して調製する工程と、
塗布工程:磁石基体の表面から外側に向かって少なくとも1つの接着層を順に塗布する工程と、を含み、
前記接着層が熱硬化性接着層と熱可塑性接着層からなり、前記熱硬化性接着層が、前記熱可塑性接着層よりも前記磁石基体の表面に近い位置に配置され、前記熱硬化性接着層が、40℃~90℃で表面乾燥処理を施され、前記熱可塑性接着層が、40℃~90℃で硬化処理を施されたことを特徴とする接着層を有する磁石の製造方法
【請求項8】
前記接着層の厚さの合計は、80~150μmであることを特徴とする請求項7に記載の接着層付き磁石の製造方法。
【請求項9】
前記塗布工程において前記接着層を複数層塗布する場合、最外層の熱可塑性接着層の厚さと残りの任意の1層の熱可塑性接着層の厚さとの比は、2:1~8:1であることを特徴とする請求項7に記載の接着層付き磁石の製造方法。
【請求項10】
全ての熱硬化性接着層の厚さの合計と全ての熱可塑性接着層の厚さの合計との比が、4:1~10:1であることを特徴とする、請求項7に記載の接着層付き磁石の製造方法。
【請求項11】
前記塗布工程の前に、前記熱可塑性接着層の原料として、熱可塑性主剤を合成するモノマーと、開始剤と、第1助剤とを蒸留水に混合する、
ことを特徴とする請求項7に記載の接着層付き磁石の製造方法。
【請求項12】
熱硬化性接着層が1層のみの場合には、熱硬化性接着層の原料を複数回塗布することにより熱硬化性接着層を形成、
することを特徴とする請求項7に記載の接着層付き磁石の製造方法。
【請求項13】
前記調製工程の前に、前記膨張剤を熱可塑性主剤を合成するモノマーで前処理する;
調製に際しては、熱硬化性接着剤に前処理後の膨張剤を混入して熱硬化性接着層の原料とする、
ことを特徴とする請求項7に記載の接着層付き磁石の製造方法。
【請求項14】
キャリアと請求項1~6のいずれか一項に記載の接着層付き磁石とを用いて製造される磁石アセンブリの製造方法であって、前記製造方法は:
挿入:前記接着層付き磁石を前記キャリアの収容槽に挿入するステップ;
加熱:前記接着層を加熱して前記膨張剤を膨張させ、前記熱硬化性接着層を架橋硬化させ、前記熱可塑性接着層と前記熱硬化性接着層とをブレンド共重合させ、前記キャリア収容槽の壁と前記磁石基体との間を前記加熱された接着層で充填する。
【請求項15】
請求項14に記載の方法で製造された磁石アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石製造分野に関し、より詳細には、接着層を有する磁石、製造方法及び磁石アセンブリの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石モータは、従来の電機子に比べて構造が簡単で、軽量、小型、低損失、高効率等の特徴を有しており、その応用範囲は極めて広い。磁石埋込型永久磁石モータは、磁石表面貼り型永久磁石モータよりも、高いトルク密度を有する。
【0003】
磁石埋込型永久磁石モータは、モータや発電機の回転子や固定子の収容槽内に磁石を液体接着剤で接着して固定している。液状接着剤を塗布した磁石体を回転子や固定子の収容槽に挿入したり、収容槽の開口部に液状接着剤を塗布し、液状接着剤を収容した収容槽の開口部から磁石体を挿入して、磁石体の表面に液状接着剤を塗布するのが一般的である。その後、ロータまたはステータを乾燥炉に常温放置または放置して、液体接着剤を硬化させて、磁石とロータまたはステータとの接着を図る。
【0004】
しかしながら、上記接着方法では、硬化前の液状接着剤が接着性を有するため、磁石の移動中に収容槽の開口部や内壁に引っかかり易い。すなわち、磁石が収容槽内の所望の位置に到達する前に、収容槽に接着剤が不用意に接触する。また、液状接着剤は硬化前は柔らかいため、収容槽に入る過程で変形したり、磁石体から部分的に剥離したりして、塗布された液状接着剤の大部分が収容槽内部に入り込まず、接着不良を起こすという問題があり、また、かき落としたり、溢れ出た液状接着剤を硬化前に拭き取る作業性が悪いという問題もあった。また、液状バインダーを予め被覆した磁石を運搬、貯蔵して、バインダーの機能を失わないことが課題となっている。
【0005】
上記課題を解決するために、CN110401277Aは、膨張剤を含む接着剤を磁石体表面に塗布した後に、まず第1の加熱工程によって接着剤の一部を先に硬化させて接着剤表面の粘性を低下させるとともに、接着剤中の膨張剤を表面に突出させて接着剤を槽に点接触させ、収容槽内に接着剤が不用意に入り込んだり剥がれたりして接着剤が剥がれる不具合を回避する。
【0006】
特許文献JP2007174872Aでは、常温の固体樹脂を選択し、発泡剤を添加して発泡シートを作製し、これを磁石と収容槽との間の隙間に挿入して加熱すると、発泡シートは膨張して一方の面側が磁石の外表面に接着し、他方の面側が収容槽の内壁面に接着する。これにより、樹脂がモジュール槽から押し出されて漏れることを抑制することができる。
【0007】
接着剤の粘度を下げるか、接着剤に発泡剤を添加することで調製した発泡シートを隙間に直接挿入して使用することにより、接着不良の問題を解決することができる。しかし、低粘度化する方法は、接着層が柔らかいため、長時間の保管や運搬に不便である。接着剤を用いて発泡剤を添加して発泡シートに加工する方法では、磁石や収容槽の大きさによっては、対応性を高めるための加工が必要となり、加工性が悪い。
【0008】
発明の概要
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、接着層を有する磁石の保管、運搬、キャリアとの接着を容易に行うことができる接着層を有する磁石、その製造方法、および磁石アセンブリの製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の一実施例に係る接着層付き磁石は、磁石基体と、前記磁石基体の表面に配置された少なくとも1つの接着層とを含み、前記接着層は、熱硬化性接着層と、熱可塑性接着層とを含み、前記熱硬化性接着層は、前記熱可塑性接着層よりも前記磁石基体の表面に近く、前記熱硬化性接着層は、膨張剤を含む。
【0010】
本発明の一部の実施形態によれば、接着層の数は、複数の層であり、複数の層の接着層は、磁石基体の表面から外側に連続して配置され;最外層の熱可塑性接着層の厚さと、残りの任意の1層の熱可塑性接着層の厚さとの比は、2:1 ~ 8:1である。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、接着層の厚さの合計は、80 ~ 150μmである。
【0012】
本発明の一部の実施形態によれば、熱可塑性接着層のすべての厚さの合計に対する熱硬化性接着層のすべての厚さの合計の比は、4:1 ~ 10:1である。
【0013】
本発明の幾つかの実施形態によれば、熱可塑性接着層は、ナノ硫酸バリウム及びナノエチレンワックスを含む第1の助剤を含む。
【0014】
本発明の一部の実施形態によれば、熱硬化性接着層は、硬化剤、フィラー、第2の助剤を含み、硬化剤は、グアニジン、置換グアニジン、芳香族アミン、およびグアニルアミン誘導体のうちの少なくとも1つであり;前記フィラーは、シリカ、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アルミナ、炭酸カルシウム、およびタルクのうちの少なくとも1つであり;前記第2助剤が、硬化促進剤、カップリング剤、消泡剤、繊維、ゴム粒子、希釈剤、難燃剤の少なくとも1種である。
【0015】
本発明の一部の実施形態は、熱硬化性接着剤に膨張剤を混合して熱硬化性接着層の原料を調製するステップと、磁石基体の表面から外に向かって少なくとも1つの接着層を順次塗布するステップとを含み、前記接着層は、1つの熱硬化性接着層と1つの熱可塑性接着層とを含み、前記熱硬化性接着層は、前記熱可塑性接着層に対して磁石基体の表面に近接し、前記熱硬化性接着層は、低温表面乾燥処理を行い、前記熱可塑性接着層は、低温硬化処理を行う接着層付き磁石の製造方法を提供する。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、接着層の厚さの合計は、80 ~ 150μmである。
【0017】
本発明の一部の実施形態によれば、前記塗布ステップにおいて前記接着層を複数層塗布する場合、最外層の熱可塑性接着層の厚さと残りの任意の1層の熱可塑性接着層の厚さとの比は、2:1 ~ 8:1である。
【0018】
本発明の一部の実施形態によれば、熱可塑性接着層のすべての厚さの合計に対する熱硬化性接着層のすべての厚さの合計の比は、4:1 ~ 10:1である。
【0019】
本発明の一部の実施形態によれば、前記塗布ステップの前に、前記熱可塑性接着層の原料として、熱可塑性主剤を合成するモノマー、開始剤、第1助剤を蒸留水に混合する。
【0020】
本発明の一部の実施形態によれば、熱硬化性接着層が1つだけの場合、熱硬化性接着層は、熱硬化性接着層の原材料を複数回塗布することによって形成される。
【0021】
本発明の一部の実施形態によれば、前記調製ステップの前に、熱可塑性の主剤を合成するモノマーによって前記発泡剤を前処理するステップと;調製に際しては、熱硬化性接着剤に前処理後の膨張剤を混入して熱硬化性接着層の原料とする。
【0022】
本発明の一実施例は、キャリアと、上記のような接着層付き磁石とを用いて製造される磁石アセンブリの製造方法であって、前記接着層付き磁石を前記キャリアの収容槽に挿入する挿入ステップと、前記キャリアを加熱する加熱ステップと、前記膨張剤が膨張し、前記熱硬化性接着層が架橋硬化され、前記熱硬化性接着層が前記熱可塑性接着層とブレンド共重合され、前記キャリアの収容槽壁と前記磁石基体との間が加熱された接着層で充填される加熱ステップと、を含む磁石アセンブリの製造方法を提供する。
【0023】
本発明の接着層付き磁石は、熱硬化性接着層は低温表面乾燥処理を行うこと、及び熱可塑性接着層は低温キュア処理を行うことによって、貯蔵および輸送が容易になる;かつ長期間の貯蔵後も熱硬化性接着層の膨張剤が本来の膨張能力を維持していることがわかる。熱硬化性接着層を低温表面乾燥処理すること、及び熱可塑性接着層を低温キュアで処理することにより、キャリアの収納槽に柔らかい接着剤を挿入する際に、接着剤が変形したり、接着剤の分布が不均一になることを防止できるので、磁石とキャリアとの接着が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の技術的解決策をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に紹介するが、明らかに、以下の説明における図面は本発明の一部の実施例にすぎず、当業者にとって、他の図面も、本発明の請求範囲を超えることなく、これらの図面から得られる。
図1図1は、本発明の実施例の接着層層付き磁石の模式図1
図2図2は、本発明実施例の接着層付き磁石の模式図2である。
【0025】
具体的な実施形態以下、本発明の実施例における図面を参照して、本発明の技術案を明確且つ完全に説明するが、明らかに、説明された実施例は本発明の一部の実施例であり、全ての実施例ではない。本発明における実施形態に基づいて、発明的な労働をすることなく当業者によって得られる他のすべての実施形態は、本発明の保護範囲に属する。
図1図1に示すように、本発明は、接着層付き磁石を提供する。接着層付き磁石は、磁石基体1と、接着層2とを備える。磁石基体1は、ネオジウム鉄ボロン磁石等の磁性材料からなる。
図2図2に示すように、本発明は、接着層付き磁石を提供する。接着層付き磁石は、磁石基体1と、接着層2とを備える。磁石基体1は、ネオジウム鉄ボロン磁石等の磁性材料からなる。
【0026】
接着層2は、熱硬化性接着層21と熱可塑性接着層22とからなる。熱硬化性接着層21は、熱硬化性接着剤を主成分とし、熱硬化性接着層21内には、膨張剤21aが含有されており、一定温度で熱硬化性接着層21内の膨張剤21aが膨張し、熱硬化性接着層21の接着剤が硬化する。熱可塑性接着層22は、低温で硬化しやすい熱可塑性接着剤である。各接着層2において、熱硬化性接着層21は、熱可塑性接着層22よりも磁石基体1の表面に近い。
【0027】
接着層2の数は、少なくとも1層である。第1の接着層は、磁石基体1の表面に設けられる。接着層2が1層の場合は、第1層の接着層が全体の接着層となり、熱硬化性接着層21が磁石基体1の表面に設けられ、熱可塑性接着層22が熱硬化性接着層21の上に設けられて、接着層付き磁石が形成される。
【0028】
本発明の接着層付き磁石は、磁石基体の表面から外側に順に、少なくとも1層の接着層を設け、熱可塑性接着層を40 ~ 90℃の条件で硬化させて非接着性の薄層を形成し、熱硬化性接着層を保護し、常温での保存や運搬を容易にすることができる。接着層付き磁石体を150 ~ 200℃に加熱すると、熱可塑性接着層が軟化し、未硬化の熱硬化性接着層中の膨張剤が膨張し、徐々に膨張された熱硬化性接着層中のバインダーが熱可塑性接着層を破裂し、破裂された熱可塑性接着層を包み込むようになった。150 ~ 200℃下に、熱硬化性接着層中のバインダーが自己架橋硬化し、同時に熱可塑性接着層と共重合して安定な架橋構造を形成する。
【0029】
本発明の代替的な実施形態によれば、接着層2の数が複数の場合、複数の接着層2は、磁石基体1の表面から外側に向かって順に配置される。本願の複層とは、2層以上を意味する。
【0030】
多層接着層2は、磁石磁石基体1の表面から外側に向かって、熱硬化性接着層21と熱可塑性接着層22とが交互に配置されている。熱硬化性接着層21を塗布した後、熱可塑性接着層22を塗布し、さらに熱硬化性接着層21を塗布した後、熱可塑性接着層22を塗布する等である。
【0031】
接着層2は、図2に示すように、接着層2の数は2層であり、磁石基体1の表面に第1層の熱可塑性接着層21が位置し、第1層の熱可塑性接着層21上に第1層の熱可塑性接着層22が位置し、第1層の熱可塑性接着層22上に第2層の熱可塑性接着層21が位置し、第2層の熱可塑性接着層22上に第2層の熱可塑性接着層22が位置する。
【0032】
接着層2の数が複数層の場合、すなわち熱硬化性接着層と熱可塑性接着層の数がともに複数層の場合、各層の熱硬化性接着層の厚さは等しく、最外層の熱可塑性接着層を除く残りの熱可塑性接着層の厚さは等しく、最外層の熱可塑性接着層の厚さと残りの任意の熱可塑性接着層の厚さとの比は2:1 ~ 8:1である。例えば、熱硬化性接着層が2層であり、熱可塑性接着層が2層である場合、磁性基体表面から外側に数えて、第2層の熱可塑性接着層の厚さは、第1層目の熱可塑性接着層の厚さの2 ~ 8倍である。最外層の熱可塑性接着層の厚みをを高め、内部の各接着層の保護を容易にする。
【0033】
本発明の代替的な実施形態によれば、接着層の厚さは、設置設計に適合される。接着層の厚さの合計は、80 ~ 150μmであることができ、接着剤の無駄な消費を回避しながら接着性能を満たす。
【0034】
本発明の代替的な一実施形態によれば、熱可塑性接着層の全ての厚さの合計に対する熱硬化性接着層の全ての厚さの合計の比は、4 ~ 10:1である。
【0035】
本発明の別の態様によれば、熱可塑性接着層の熱可塑性接着剤は、熱可塑性主剤を含み、熱可塑性主剤はアクリル樹脂であり、アクリル樹脂を合成するモノマーはアクリル酸及びその誘導体であり、アクリル酸誘導体は、ウレタン変性エチルメタクリレート、ウレタン変性メチルメタクリレート、ウレタン変性エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレートなどである。アクリル樹脂の合成に用いられる開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシル酸エステル、t-アミルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
【0036】
熱可塑性接着剤は、熱可塑性主剤に加えて、第1の助剤を含み、第1の助剤は、ナノ硫酸バリウムと、ナノエチレンワックスとを含む。このうち、ナノ硫酸バリウムは、熱可塑性接着層の堅さを向上させることができ、ナノエチレンワックスは、熱可塑性接着層の平滑性及び耐ブロッキング性を改善することができると共に、熱可塑性接着層における硫酸バリウムの分散性を向上させることができる。
【0037】
あるいは、熱可塑性接着剤の原料の配合比は、アクリル酸20 ~ 30重量%、アクリル酸誘導体20 ~ 30重量%、開始剤5 ~ 18重量%、ナノ硫酸バリウム0.5 ~ 1重量%、及びナノエチレンワックス0.5 ~ 1重量%であり、残りは蒸留水である。熱可塑性接着剤ーの成分及び配合割合は、必要に応じて適宜調整することができる。
【0038】
本発明の別の態様によれば、熱硬化性接着層の熱硬化性接着剤は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、変性アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂である熱硬化性主剤を含む。熱硬化性樹脂層には、複数の樹脂が含まれていてもよい。エポキシ樹脂が好ましく、環状、脂肪族、脂環式、芳香族であってもよい。好適なエポキシ樹脂は、ビスフェノールA系のエポキシ樹脂、ビスフェノールF系のエポキシ樹脂、ビスフェノールS系のエポキシ樹脂、フェノールノボラック系のエポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂(例えばナフタレン骨格含有エポキシ樹脂)が好ましい。
【0039】
発泡剤としては、物理発泡剤、化学発泡剤のいずれも使用でき、特に、発泡性の微小中空球が好ましい。膨張性中空微小球は、熱可塑性材料からなる殻と、殻に封入された低沸点炭化水素とから構成されていてもよい。さらに、膨張剤の殻材は、熱可塑性接着層剤原料中の熱可塑性主剤を合成するモノマー材料と同一である。好ましい化学膨張剤は、膨張黒鉛、ポリリン酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド、及びナノシリカ吸着N-アミノエチルピペラジン( ATP )であり得る。
【0040】
熱硬化性接着層の熱硬化性接着剤は、硬化剤、フィラー、第2の助剤をさらに含む。
【0041】
硬化剤は、グアニジン、置換グアニジン、芳香族アミン、又はグアニルアミン誘導体の少なくとも1種であってもよい。硬化剤は、化学量論量で硬化反応に関与し、触媒的に活性であってもよい。置換グアニジンは、メチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ジメチルイソビグアニド、テトラメチルイソビグアニド、シアノグアニジンから選択することができ、シアノグアニジンが好ましい。
【0042】
前記フィラーが、シリカ、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アルミナ、炭酸カルシウム、タルクの少なくとも1種である。
【0043】
前記第2助剤が、硬化促進剤、カップリング剤、消泡剤、繊維、ゴム粒子、希釈剤、難燃剤の少なくとも1種である。このうち、硬化促進剤としては、イミダゾール誘導体(例えば2-エチル-2-メチルイミダゾール、N-ブチルイミダゾール)、3級アミン(例えば2-ジメチルアミノエタノール、N-置換ピペラジン)を用いることができる。ゴムは、ニトリルゴム粒子から選択されてもよく、接着層の亀裂のリスクをさらに低減する。繊維は、炭素繊維、金属繊維、ガラス繊維、ポリエステル繊維などから選択することができ、接着層の強度及び靱性を高めることができる。
【0044】
熱硬化性接着層を合成するための原料は、70 ~ 80 wt%の熱硬化性主剤と、1 ~ 5wt%の発泡剤と、1 ~ 3 wt%の硬化剤と、2 ~ 6 wt%のフィラーと、残部の第2助剤とからなる。膨張剤の含有量を調整することにより、接着層の膨張率を調整することができる。
【0045】
また、熱硬化性接着層の熱硬化性接着剤には、適量の溶剤を添加してもよい。溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサノン等である。
【0046】
本発明は、また、前記の接着層付き磁石の製造方法を提供し、それは:
S110、調製工程:熱硬化性接着層の原料として熱硬化性接着剤に膨張剤を混合する。
【0047】
S120、塗布工程:接着層を、磁石基体の表面から順次外側に1層以上塗布する。前記接着層は、熱硬化性接着層と、該熱硬化性接着層の上層に設けられた熱可塑性接着層とを有し、前記熱硬化性接着層は、前記熱可塑性接着層よりも前記磁石基体の表面側に配置され、前記熱硬化性接着層は、低温表面乾燥処理が施され、前記熱可塑性接着層は、低温キュア処理が施されている。
【0048】
接着層は、熱硬化性接着層と熱可塑性接着層を塗布して形成される。接着層の数は、1層でも複数層でもよい。
【0049】
接着層が1層の場合は、磁石基体の表面に熱硬化性の接着層を塗布し、さらに熱硬化性の接着層の表面に熱可塑性の接着層を塗布して接着層を形成する。
【0050】
接着層が複数層の場合は、磁石基体の表面から外側に向けて熱硬化性接着層と熱可塑性接着層とを交互に塗布して多層接着層を形成する。熱硬化性接着層と熱可塑性接着層とを交互に複数層塗布することにより、熱硬化性接着層と熱可塑性接着層との相溶性を向上させる一方で、接着層自体の接着強度を向上させることができる。
【0051】
熱硬化性接着層に低温表面乾燥処理を施す。低温表面乾燥処理とは、熱可塑性接着層の塗布を容易にするために、熱硬化性接着層の表面を40 ~ 90℃で乾燥させることをいう。熱可塑性接着層はいずれも低温硬化処理を行った。低温硬化処理とは、40 ~ 90℃で熱可塑性接着層を硬化させることをいう。
【0052】
本発明の代替的な一実施形態によれば、接着層の厚さの合計は80 ~ 150μmである。
【0053】
本発明の代替的な実施形態によれば、接着層を複数層塗布する場合、最外層の熱可塑性接着層の厚さと残りの任意の層の熱可塑性接着層の厚さとの比は、2:1 ~ 8:1である。
【0054】
本発明の代替的な一実施形態によれば、熱硬化性接着層の全ての厚さの合計と熱可塑性接着層の全ての厚さの合計との比は、4:1~ 10:1であり、徐々に膨張された熱硬化性接着層は熱可塑性接着層を破裂し、破裂された熱可塑性接着層を包み込むようになった。
【0055】
本発明の代替的な実施形態によれば、熱硬化性接着層の数が1層だけである場合、熱硬化性接着層の厚さが比較的大きい可能性があり、原料を複数回塗布して形成することができる。熱硬化性接着層の塗布の際に、熱硬化性接着層の厚さが厚すぎることがなく、熱硬化性接着層に多量の水分や溶剤が混入して熱硬化性樹脂接着層の硬化に悪影響を与えることがない。
【0056】
具体的には、熱硬化型接着層の原料を塗布し、第1の熱硬化型接着層の原料を低温表面乾燥処理した後、第2の熱硬化型接着層の原料を低温表面乾燥処理し、熱硬化型接着層の厚さが所定の値になるまで行う。
【0057】
本発明の別の態様によれば、塗布工程の前に、熱可塑性接着層の原料として、熱可塑性主剤を合成するモノマーと、開始剤と、第1助剤とを蒸留水に混合する。
【0058】
本発明の代替的な一態様によれば、調製ステップの前に、熱可塑性主剤を合成するモノマーによって膨張剤を前処理する。具体的には、
膨張剤が物理膨張剤の場合、膨張剤の殻材と熱可塑性接着層の熱可塑性主剤とが異なる場合は、調製工程の前に、熱可塑性主剤のモノマーで膨張剤を改質処理する。
【0059】
変性処理は、熱可塑性主剤のモノマーを用いて、膨張剤のシェル材料を化学基グラフト変性する工程である。
【0060】
膨張剤が化学膨張剤の場合は、熱可塑性主剤のモノマーと膨張剤を乳化物にする。乳化剤は、熱可塑性主剤を前処理したモノマーと膨張剤を混合し、通常の乳化剤、例えばモノグリセリド、脂肪酸エステル等を添加して機械的撹拌により分散性及び安定性の良好な乳化物を形成することにより調製される。
【0061】
調製に際しては、熱硬化性接着剤に前処理後の膨張剤を混入して熱硬化性接着層の原料とする。
【0062】
膨張剤の前処理により、膨張剤による熱硬化性接着剤と熱可塑性接着剤との界面相溶性の向上に有利となる。
【0063】
膨張剤の殻材と熱可塑性接着層の熱可塑性主剤とが同じであれば、前処理工程を省略する。
【0064】
本発明の接着層付き磁石は、磁石を設置する組立場所に接着剤を塗布することなく、保管および/または塗布場所から接着場所への搬送を行うことができ、部品製造場所での液状接着剤の使用を不要とし、接着剤の不足である接液や汚染の問題を回避することができる。
【0065】
本発明は、磁石アセンブリの製造方法をさらに提供する。磁石アセンブリは、キャリアと、上記のような接着層付き磁石とを用いて作製される。キャリアは、磁石の収容槽槽を備える。任意選択で、キャリアは、モータのロータまたはステータである。調製方法は、以下を含む:
S210:キャリアの収容槽に接着層付き磁石を挿入した。
【0066】
S220:キャリアを150 ~ 200℃に加熱し、膨張剤を膨張させて熱硬化性接着層を架橋硬化させると共に、熱可塑性接着層と混合共重合させ、加熱した接着層でキャリア収容槽の壁と磁石基体との間を充填する。
【0067】
この150 ~ 200℃の温度では、熱可塑性接着層は柔らかくなる。徐々に膨張された熱硬化性接着層は熱可塑性接着層を破裂し、破裂された熱可塑性接着層を包み込むようになった。この150 ~ 200℃の温度条件下で熱硬化性接着剤は、それ自体で架橋硬化するだけでなく、熱可塑性接着剤との配合共重合によって安定な架橋構造を形成する。特に、磁石をキャリア収納槽に入れ、熱硬化性接着剤を膨張させた後、槽の内壁に当てて還流し、内層の熱硬化性接着剤が外層の熱可塑性接着剤を包む現象が顕著になり、磁石とキャリアの接合が確実になる。
【0068】
単語解釈:
本願において「粘着性」とは、接着層が硬化する前に、重力または組立関連の操作によって生じる力の影響下で、キャリア上に配置された磁石構造が滑り落ちるまたは脱落することがないような性質を有することを意味する。
【0069】
ここで、「膨潤率」とは、熱を加えると膨潤し、膨潤率(% ) = (膨潤後粘着層厚-膨潤前粘着層厚) /膨潤前粘着層厚)により、粘着層の体積が増加することを意味する。
【0070】
本願において、「収縮率」とは、高温条件下で、膨張後の粘着層の厚さが部分的に収縮することを意味し、膨張後の粘着層の高温に対する耐性を試験するために、一定の高温条件下での膨張後の粘着層の前後の厚さの変化によって特徴付けられ、収縮率(% ) = (膨張後粘着層の厚さ-一定の高温処理後の粘着層の厚さ) /膨張後粘着層の厚さである。
【0071】
実施例における熱硬化性接着層原料と熱可塑性接着層原料の配合比は、以下の通りである:
表1熱硬化性接着層原料( 100重量% )
表2熱可塑性接着層原料( 100重量% )
ここで、膨張剤の殻材は、熱可塑性主剤と同一である。
【0072】
実施例1
以下のステップを含む磁石および磁石アセンブリの製造方法::
調製工程:表1に基づいて熱硬化性接着層原料A-1を調製し、表2に基づいて熱可塑性接着層原料B-1を調製した。
【0073】
塗布工程:
磁石基体の表面に熱硬化性接着層原料A-1を塗布し、40℃で表面乾燥処理処理を施した後、熱硬化性接着層上に熱可塑性接着層原料B-1を塗布し、40℃で硬化して、表面に接着層を有する磁石を得た。ここで、熱硬化性接着層の厚さは80μm、熱可塑性接着層の厚さは20μm、接着層の厚さは100μmである。
【0074】
接着層付き磁石は、モータロータの収容槽内に挿入される。
【0075】
キャリアを150℃に加熱して膨張剤を膨張させ、熱硬化性接着層を架橋硬化させ、熱可塑性接着層とブレンド共重合させた。
【0076】
実施例2
以下のステップを含む磁石および磁石アセンブリの製造方法:
1、表1に基づいて熱硬化性接着層原料A-1を調製し、表2に基づいて熱可塑性接着層原料B-1を調製した。
【0077】
2、磁石基体の表面に熱硬化性接着層原料A-1を塗布して40℃で表面乾燥し、40μmの第1層の熱硬化性接着層を形成して、第1層の熱硬化性接着層原料の表面に再び熱硬化性接着層原料A-1を塗布して40℃で表面乾燥し、40μmの第2層熱硬化性接着層を形成して、その後、20μmの熱可塑性接着層原料B-1を塗布して40℃で硬化して、表面に接着層を有する磁石を得た。ここで、40μmの第1層の熱硬化性接着層と40μmの第2層熱硬化性接着層を含む熱硬化性接着層の総厚みは80μm、熱可塑性接着層の厚みは20μm、接着層の厚みは100μmである。
【0078】
3、接着層付き磁石は、モータロータの収容槽内に挿入される。
【0079】
4、キャリアを150℃に加熱して膨張剤を膨張させ、熱硬化性接着層を架橋硬化させ、熱可塑性接着層とブレンド共重合させた。
【0080】
実施例3
以下のステップを含む磁石および磁石アセンブリの製造方法:
1、表1に基づいて熱硬化性接着層原料A-1を調製し、表2に基づいて熱可塑性接着層原料B-1を調製した。
【0081】
2、磁石基体の表面に熱硬化性接着層原料A-1を塗布して40℃で表面乾燥し、40μmの第1層の熱硬化性接着層を形成し;第1層の熱硬化性接着層上に熱可塑性接着層原料B-1を塗布して、40℃で硬化させ、5μmの第1層の熱可塑性接着層を形成し;第1層の熱可塑性接着層上に熱硬化性接着層原料A-1を塗布し、40℃で表面乾燥処理して、40μmの第2層熱硬化性接着層を形成し;第2層の熱硬化性接着層上に、熱可塑性接着層原料B-1を塗布して、40℃で硬化して、15μmの第2層の熱可塑性接着層を形成する;表面に接着層を有する磁石を得た。ここで、40μmの第1層の熱硬化性接着層と40μmの第2層熱硬化性接着層を含む熱硬化性接着層の総厚みは80μm、5μmの第1層の熱可塑性接着層と15μmの第2層の熱可塑性接着層を含む熱可塑性接着層の厚みは20μm、接着層の厚みは100μmである。
【0082】
3、接着層付き磁石は、モータロータの収容槽内に挿入される。
【0083】
4、キャリアを150℃に加熱して膨張剤を膨張させ、熱硬化性接着層を架橋硬化させ、熱可塑性接着層とブレンド共重合させた。
【0084】
実施例4
以下のステップを含む磁石および磁石アセンブリの製造方法:
1、表1に基づいて熱硬化性接着層原料A-2を調製し、表2に基づいて熱可塑性接着層原料B-2を調製した。
【0085】
2、磁石基体の表面に熱硬化性接着層原料A-2を塗布し、60℃で表面乾燥し、35μm の第1層の熱硬化性接着層を形成し;第1層の熱硬化性接着層の原料の表面に再度、熱硬化性接着層原料A-2を塗布し、60℃で表面乾燥した後、35μmの第二層の熱硬化性接着層を形成し;第二層の熱硬化性接着層の上に熱可塑性接着層原料B-2を塗布し、60℃で硬化して、10μmの熱可塑性接着層を形成し;表面に接着層を有する磁石を得た。ここで、35μm の第1層の熱硬化性接着層と35μmの第二層の熱硬化性接着層を含む熱硬化性接着層の総厚みは70μm、熱可塑性接着層の厚みは10μm、接着層の厚みは80μmである。
【0086】
3、接着層付き磁石は、モータロータの収容槽内に挿入される。
【0087】
4、キャリアを180℃に加熱して膨張剤を膨張させ、熱硬化性接着層を架橋硬化させ、熱可塑性接着層とブレンド共重合させた。
【0088】
実施例5
以下のステップを含む磁石および磁石アセンブリの製造方法:
1、表1に基づいて熱硬化性接着層原料A-2を調製し、表2に基づいて熱可塑性接着層原料B-2を調製した。
【0089】
2、磁石基体の表面に熱硬化性接着層原料A-2を塗布して90℃で表面乾燥し、60μmの第1層の熱硬化性接着層を形成し;第1層の熱硬化性接着層の原料の表面に熱硬化性接着層原料A-2を再度塗布して90℃で表面乾燥した後、60μmの第2層の熱硬化性接着層を形成し;2層の熱硬化性接着層の上に熱可塑性接着層原料B-2を塗布して90℃で硬化して、30μmの熱可塑性接着層を形成し;表面に接着層を有する磁石を得た。ここで、60μmの第1層の熱硬化性接着層と60μmの第2層の熱硬化性接着層を含む熱硬化性接着層の総厚みは120μm、熱可塑性接着層の厚みは30μm、接着層の厚みは150μmである。
【0090】
3、接着層付き磁石は、モータロータの収容槽内に挿入される。
【0091】
4、200℃に加熱して発泡剤を発泡させ、熱硬化性接着層を架橋硬化させ、熱可塑性接着層とブレンド共重合させた。
【0092】
実施例6
以下のステップを含む磁石および磁石アセンブリの製造方法:
1、表1に基づいてウレタン変性エチルアクリレートとATPを混合してモノジグリセライドを添加して機械的に攪拌してエマルジョンとした後に熱硬化性接着剤に混入した熱硬化性接着層原料A-3を調製し、表2に基づいて熱可塑性接着層原料B-3を調製した。
【0093】
2、磁石基体の表面に熱硬化性接着層原料A-3を塗布し、50℃で表面乾燥し、45μmの第1層の熱硬化性接着層を形成し;第1層の熱硬化性接着層上に熱可塑性接着層原料B-3を塗布し、50℃で硬化し、4μmの第1層の熱可塑性接着層を形成し;第1層の熱可塑性接着層上に熱硬化性接着層原料A-3を塗布し、50℃で表面乾燥処理し、45μmの第2層の熱硬化性接着層を形成し;第2層の熱硬化性接着層上に、熱可塑性接着層原料B-3を塗布し、50℃で硬化して、16μm第2層の熱可塑性接着層を形成し;表面に接着層が付いた磁石を得た。ここで、45μmの第1層の熱硬化性接着層及び45μmの第2層の熱硬化性接着層を含む熱硬化性接着層の総厚みは90μm、4μmの第1層の熱可塑性接着層及び16μm第2層の熱可塑性接着層を含む熱可塑性接着層の厚みは20μm、接着層の厚みは110μmである。
【0094】
3、接着層付き磁石は、モータロータの収容槽内に挿入される。
【0095】
4、熱硬化性接着層は、160℃で加熱して膨張剤を膨張させ、架橋硬化させ、熱可塑性接着層とブレンド共重合させた。
【0096】
実施例7
以下のステップを含む磁石および磁石アセンブリの製造方法:
1、表1に基づいてウレタン変性エチルアクリレートとATPを混合してモノジグリセライドを添加して機械的に攪拌してエマルジョンとした後に熱硬化性接着剤に混入した熱硬化性接着層原料A-3を調製し、表2に基づいて熱可塑性接着層原料B-3を調製した。
【0097】
2、磁石基体の表面に熱硬化性接着層原料A-3を塗布し、50℃で表面乾燥し、30μmの第1層の熱硬化性接着層を形成し;第1層の熱硬化性接着層上に熱可塑性接着層原料B-3を塗布し、50℃で硬化させ、2μmの第1層の熱可塑性接着層を形成し;第1層の熱可塑性接着層上に熱硬化性接着層原料A-3を塗布し、50℃で乾燥する、30μmの第2層の熱硬化性接着層を形成し;第2層の熱硬化性接着層上に、熱可塑性接着層原料B-3を塗布し、50℃で硬化させ、2μmの第2層の熱可塑性接着層を形成し;第2層の熱可塑性接着層上に熱硬化性接着層原料A-3を塗布し、50℃で乾燥する、30μmの第3層の熱硬化性接着層を形成し;第3層の熱硬化性接着層上に、熱可塑性接着層原料B-3を塗布し、50℃で硬化させて、16μmの第3層の熱可塑性接着層を形成する工程;表面に接着層が付いた磁石を得た。ここで、30μmの第1層の熱硬化性接着層、30μmの第2層の熱硬化性接着層、及び30μmの第3層の熱硬化性接着層を含む熱硬化性接着層の総厚みは90μm、熱可塑性接着層の厚みは20μm、接着層の厚みは110μmである。
【0098】
3、接着層付き磁石は、モータロータの収容槽内に挿入される。
【0099】
4、170℃に加熱して発泡剤を発泡させ、熱硬化性接着層を架橋硬化させ、熱可塑性接着層とブレンド共重合させた。
【0100】
〔実施例8〕
以下のステップを含む磁石および磁石アセンブリの製造方法:
1、表1に基づいて熱硬化性接着層原料A-4を調製し、表2に基づいて熱可塑性接着層原料B-4を調製した。
【0101】
2、磁石基体の表面に熱硬化性接着層原料A-4を塗布し、40℃で表面乾燥し、50μm の第1層の熱硬化性接着層を形成し;第1層の熱硬化性接着層原料の表面に再度、熱硬化性接着層原料A-4を塗布し、40℃で表面乾燥した後、50μmの第2層の熱硬化性接着層を形成し;第2層の熱硬化性接着層の上に熱可塑性接着層原料B-4を塗布し、40℃で硬化して、10μmの熱可塑性接着層を形成し;表面に接着層を有する磁石を得た。ここで、50μm の第1層の熱硬化性接着層及び50μmの第2層の熱硬化性接着層を含む熱硬化性接着層の総厚みは100μm、熱可塑性接着層の厚みは10μm、接着層の厚みは110μmである。
【0102】
3、接着層付き磁石は、モータロータの収容槽内に挿入される。
【0103】
4、キャリアを150℃に加熱して膨張剤を膨張させ、熱硬化性接着層を架橋硬化させ、熱可塑性接着層とブレンド共重合させた。
【0104】
比較例1
以下のステップを含む磁石および磁石アセンブリの製造方法:
1、表2に基づいて実施例1の膨張剤を熱可塑性接着層原料B-1に同質量比で混入し、接着層原料とした。
【0105】
2、磁石基体の表面に接着層原料を塗布し、40℃で硬化し、20μmの接着層を形成し;この接着層の原料の表面に再度接着層原料を塗布し、40℃で硬化させ、20μmの接着層を形成するすることを5回繰り返して、表面に熱可塑性の接着層を有する磁石を得た。熱可塑性接着層の総厚さは100μmであった。
【0106】
3、接着層を有する磁石は、モータの回転子の収容槽に挿入される。
【0107】
4、キャリアを150℃に加熱して膨張剤を膨張させた。
【0108】
比較例2
以下のステップを含む磁石および磁石アセンブリの製造方法:
1、表1に基づいて熱硬化性接着層原料A-1を調製した。
【0109】
2、磁石基体の表面に熱硬化性接着層原料A-1を塗布し、40℃で表面乾燥し、80μmの第1層熱硬化性接着層を形成し;第1層熱硬化性接着層原料の表面に再度熱硬化性接着層原料A-1を塗布し、40℃で表面乾燥して、20μmの第2層熱硬化性接着層を形成し。表面に熱硬化性接着層を有する磁石体を得た。80μmの第1層熱硬化性接着層及び20μmの第2層熱硬化性接着層を含む熱硬化性接着層の厚さは100μmであった。
【0110】
3、熱硬化性接着層を有する磁石は、モータの回転子の収容槽内に挿入される。
【0111】
4、キャリアを150℃に加熱して膨張剤を膨張させた。
【0112】
実施例と比較例とで接着層の加熱膨張後の特性を比較するために行った性能試験を行い、その結果を表3に示す:
項目1:接着層付き磁石50枚を縦方向に48時間重ねた。
【0113】
項目2:接着層付き磁石を半年放置した後、180℃で30分間加熱して接着層の膨れ率(% )を求めた。
【0114】
項目3:接着層付き磁石を180℃で30分間加熱して接着層を膨張させた後、180℃で196時間焼付けた後の接着層の収縮率。
【0115】
項目4:モータの収容槽に粘着剤付き磁石を入れ、180℃で30分間加熱して粘着剤層を膨潤させ、常温で槽壁からの粘着剤層の剥離力( N/mm )を測定した。
【0116】
5:モータの収容槽に粘着剤付き磁石を入れ、180℃で30分間加熱して粘着剤層を膨潤させ、160℃で槽壁からの粘着剤層の剥離力( N/mm )を測定した。
【0117】
項目6:中性塩水噴霧試験( h )。
【0118】
項目7:PCT試験(高圧加速劣化寿命試験) ( h )試験条件は、温度120℃、相対湿度100%、圧力2atmである。
【0119】
表3の試験結果
表3の項目1において、接着なしは磁石同士の接着なしを意味し、磁石表面に接着なしを示す;僅かな接着は、磁石表面の僅かな粘着性を示す磁石間の僅かな接着を意味し;スティッキングが激しいということは、磁石間のスティッキングが激しいことを意味し、適用を考慮しないので、次の試験は行わなかった。
【0120】
上記の試験結果を解析した結果、接着層の膨張後の体積に影響を及ぼす主要因は、膨張剤であることが分かった。熱硬化性接着層を複数回に分けて塗布したり、熱硬化性接着層と熱可塑性接着層とを交互に複数回繰り返して塗布したりして得られる接着層は、その膨張効率が高く、接着層自体の接着強度や、磁性基体や収容槽壁との接着強度が高い。本発明で製造された磁石は、P CT実験において200hを測定した後、持ち出したが、磁石表面の接着層に変化はなかったが、比較例1の磁石は80hを測定した後、磁石表面の接着層に発泡現象が発生し、本発明で製造された磁石は、耐高温及び腐食防止性能に優れていることが示された。また、試験結果は、磁石とキャリア部材との接着性に優れ、本発明で作製した接着層の180℃における収縮率が5%未満であり、使用温度による接着層の膨潤挙動への影響が少ないことを示している。
【0121】
以上、本発明実施例について詳細に説明した。本発明の原理及び実施形態は、本明細書に具体的な例を適用して述べられるが、以上の実施例の説明は、本発明の技術案及びその核心思想の理解を助けるためのものに過ぎない。したがって、当業者が本発明の思想に基づいて本発明を実施する際、本発明の具体的な実施形態及び応用範囲において変更または変形させたものも本発明の権利範囲に属する。上記のことから、本明細書の内容は、本願を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2