IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャンドン シムセラ バイオファーマシューティカル カンパニー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】抗TNFR2ヒト化抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20250217BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250217BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20250217BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20250217BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250217BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250217BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20250217BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20250217BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250217BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20250217BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250217BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20250217BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20250217BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20250217BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250217BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250217BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250217BHJP
   A61K 35/15 20250101ALI20250217BHJP
   A61K 35/17 20250101ALI20250217BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20250217BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250217BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20250217BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20250217BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N5/0783
C12N5/10
A61P35/00
A61P37/06
A61P35/04
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P25/00
A61P25/02
A61P37/02
A61P21/04
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K48/00
A61K35/15
A61K35/17
A61P37/04
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61K39/395 G
A61K39/395 E
A61K47/68
A61K47/46
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023546194
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 CN2022074228
(87)【国際公開番号】W WO2022161425
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】202110140980.5
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111016307.7
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523287713
【氏名又は名称】シャンドン シムセラ バイオファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG SIMCERE BIOPHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハオ,シャオフェン
(72)【発明者】
【氏名】ル,シークァン
(72)【発明者】
【氏名】カオ,ジュオシァオ
(72)【発明者】
【氏名】タン,レンホン
(72)【発明者】
【氏名】レン,チンシェン
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/089474(WO,A1)
【文献】特許第7378509(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/28
C12N 15/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNFR2に特異的に結合するヒト化抗体又は抗原結合断片であって、前記抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、
(1)前記重鎖可変領域は、配列番号21、22、23、24及び25から選ばれるいずれかに示されるVH配列
を含み、
(2)前記軽鎖可変領域は、配列番号32に示されるVL配列
を含む、ことを特徴とする、
TNFR2に特異的に結合するヒト化抗体又は抗原結合断片。
【請求項2】
ト重鎖定常領域及び/又はヒト軽鎖定常領域を含む、ことを特徴とする、
請求項1に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項3】
記抗体またはその抗原結合断片は、治療剤又はトレーサーと結合している
請求項1に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項4】
少なくとも第1の抗原結合モジュール及び第2の抗原結合モジュールを含み、前記第1の抗原結合モジュールは請求項1記載の抗体又は抗原結合断片を含み、前記第2の抗原結合モジュールはTNFR2以外の他の抗原に特異的に結合するか、又は第1の抗原結合モジュールとは異なるTNFR2エピトープに結合し
記他の抗原は、CD3、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD16、CD16A、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD70、CD74、CD80、CD86、CD126、CD138、B7、PD-1、PD-L1、PD-2、CTLA4、PRVIG、TIGHT、HAS、CLDN18.2、MSLN、MUC、Ia、HLA-DR、テネイシン、EGFR、VEGF、P1GF、ED-Bフィブロネクチン、癌遺伝子産物、IL-2、IL-6、IL-15、IL-21、TRAIL-R1又はTRAIL-R2から選ばれる、ことを特徴とする、
多重特異性抗原結合分子。
【請求項5】
細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含み、前記細胞外抗原結合ドメインは、請求項1~3のいずれか一項に記載のTNFR2ヒト化抗体又は抗原結合断片を含む、ことを特徴とする、
キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項6】
免疫エフェクター細胞であって、前記免疫エフェクター細胞は、請求項に記載のキメラ抗原受容体を含むか、又は請求項に記載のキメラ抗原受容体をコードする核酸断片を含む、ことを特徴とする、
免疫エフェクター細胞。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片をコードする、ことを特徴とする、
単離された核酸断片。
【請求項8】
請求項7に記載の免疫エフェクター細胞をインビトロで調製する方法であって、前記方法は、請求項6に記載のCARをコードする核酸断片を前記免疫エフェクター細胞に導入することを含み、任意に、前記方法は、前記免疫エフェクター細胞による請求項に記載のCARの発現を開始することを更に含む、ことを特徴とする、
方法。
【請求項9】
医薬組成物であって、前記組成物は、請求項1~の何れか1項に記載の抗体又は抗原結合断片、請求項に記載の多重特異性抗原結合分子、請求項に記載のキメラ抗原受容体、請求項に記載の免疫エフェクター細胞、又は請求項に記載の核酸断片を含む、ことを特徴とする、
医薬組成物。
【請求項10】
請求項1~の何れか1項に記載の抗体又は抗原結合断片、請求項に記載の多重特異性抗原結合分子、請求項に記載のキメラ抗原受容体、請求項に記載の免疫エフェクター細胞、又は請求項に記載の核酸断片を含む、免疫異常に関連する疾患を治療及び/又は予防するための薬物であって
記疾患は、癌又は自己免疫疾患である、ことを特徴とする、
薬物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品分野及びバイオエンジニアリング分野に関し、具体的には、抗TNFR2ヒト化抗体又はその抗原結合断片、並びに前記抗TNFR2ヒト化抗体又はその抗原結合断片の医薬組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫は体の防御反応であり、多くの遺伝子、タンパク質、細胞の影響を受ける。免疫異常は、腫瘍、免疫不全(エイズなど)、アレルギー、関節リウマチなどの疾患を含む多くの疾患を引き起こす可能性がある。ここ数年、腫瘍免疫療法は新しい治療法として登場し、腫瘍治療研究分野で大きなホットトピックとなっている。免疫チェックポイントタンパク質を標的とする抗PD-1及び抗CTLA-4モノクローナル抗体などのアンタゴニスト抗体は、複数種の種類の癌の治療に使用されており、且つ悪性腫瘍患者の生存期間を大幅に延長する革命的な結果をもたらしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、免疫チェックポイントタンパク質に対するアンタゴニスト抗体治療に未応答であるか、又は一時的な治療後に抵抗性や耐性を生じる癌患者はまだ多く存在している。そのため、有効性と安全性を更に向上させるために、単独で、又は免疫チェックポイントタンパク質に対するアンタゴニスト抗体を含む他の腫瘍治療法と組み合わせて使用できる、癌治療の新規薬物を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、ヒトTNFR2がヒトTreg及び複数種のヒト腫瘍細胞の表面で過剰発現されることを発見し、ヒトTNFR2が患者の腫瘍発生を促進し、腫瘍微小環境において免疫抑制及び免疫逃避を媒介する可能性を示唆した。TNFR2を介してTreg細胞の機能を調節し、腫瘍の発生を抑制することは、非常に潜在力がある抗腫瘍戦略であると考えられる。本発明者は、1)TNFR2に特異的に結合し、TNFR2とそのリガンドTNFαの結合を遮断することによって、Treg細胞の増殖及びその媒介性の阻害機能を阻害し、エフェクターT細胞の増幅、及びエフェクターT細胞や他の免疫細胞媒介性抗腫瘍機能を促進することができる、2)TNFR2はヒト腫瘍細胞株で高度に発現されるため、この抗体もTNFR2の高発現腫瘍細胞に対する殺傷効果を直接的に媒介することができる、3)既存の抗PD-1/L1と併用するとより良い抗腫瘍効果を持ち、持続的な免疫記憶を形成することができる、TNFR2に対するアンタゴニスト抗体を調製した。前記抗TNFR2に対するアンタゴニスト抗体の説明については、PCT/CN2020/106057を参照されたい(その全体は参照により本願に組み込まれる)。
【0005】
本発明は、抗TNFR2ヒト化抗体又はその抗原結合断片を提供し、並びに前記抗TNFR2ヒト化抗体又はその抗原結合断片の医薬組成物及びその使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】被験抗体とヒトTNFR2組換えタンパク質との結合能を示す。A、B及びCは、それぞれ#001、#219、#224被験抗体のヒト化分子とヒトTNFR2組換えタンパク質との結合能を示し、そのうち、WTはヒト-マウスキメラ野生型分子であり、抗ニワトリ卵白リゾチーム(anti-Hel-WT)アイソタイプ対照抗体は、この実験の陰性対照である。
図2】被験抗体とカニクイザルTNFR2組換えタンパク質との結合能を示す。A、B及びCは、それぞれ#001、#219、#224被験抗体のヒト化分子とカニクイザルTNFR2組換えタンパク質との結合能を示し、そのうち、WTはヒト-マウスキメラ野生型分子であり、抗ニワトリ卵白リゾチーム(anti-Hel-WT)アイソタイプ対照抗体は、この実験の陰性対照である。
図3】被験抗体と、ヒトTNFR2を高度に発現するCHO-TNFR2細胞との結合能を示す。A、B及びCは、それぞれ#001、#219、#224被験抗体のヒト化分子とCHO-TNFR2細胞との結合能を示し、そのうち、anti-Hel-WTは陰性アイソタイプ対照抗体である。
図4】被験抗体とTreg細胞との結合能を示す。A及びBは、それぞれ#001、#219被験抗体のヒト化分子がTregに結合するオーバーレイグラフである。中空ピークはanti-Hel-WTアイソタイプ対照抗体の結合図であり、中実ピークは各抗体とTreg細胞との結合図であり、Anti-human-IgG1-Fc-PE onlyとUnstained(抗体を加えていないブランク細胞対照)はいずれも陰性対照であり、抗体濃度は200ng/mLである。
図5】被験抗体と活性化カニクイザルPBMCにおけるCD8+T細胞との結合を示す。Aは被験抗体がそれぞれ2μg/mL及び0.2μg/mLの濃度でカニクイザルのCD8+Tに結合するオーバーレイグラフである。Bは被験抗体がそれぞれ2μg/mL及び0.2μg/mLの濃度でカニクイザルのCD8+Tに結合する平均蛍光強度の倍数(被験サンプルの結合平均蛍光強度と二次抗体のみを加えた平均蛍光強度との比)である。そのうち、抗ニワトリ卵白リゾチーム(anti-Hel)アイソタイプ対照抗体は、この実験の陰性対照である。
図6】被験抗体がヒトTNFαとヒトTNFR2組換えタンパク質との相互作用を阻害することを示す。A、B及びCは、それぞれ#001、#219、#224被験抗体のヒト化分子によるTNFα-TNFR2の阻害であり、そのうち、抗ニワトリ卵白リゾチーム(anti-Hel)アイソタイプ対照抗体は、この実験の陰性対照である。
図7】被験抗体がヒトTNFαとCHO-TNFR2細胞によって発現されるヒトTNFR2との相互作用を阻害することを示す。A、B及びCは、それぞれ#001、#219、#224被験抗体のヒト化分子がTNFαとCHO-TNFR2との相互作用を阻害することであり、そのうち、anti-Helは陰性アイソタイプ対照抗体である。
図8】TNFα誘導IκBαの分解に対する被験抗体の阻害効果を示す。Aはこの実験のゲーティング戦略である。BはTNFα誘導IκBαの分解に対する被験抗体の阻害効果を示し、左のグラフは、様々な濃度の抗体対IκBαlowのパーセントの棒グラフであり、右のグラフは、抗体濃度勾配対IκBαlowのパーセントの陰性対照抗体anti-Helの倍数に対する変化である。抗体の試験濃度はそれぞれ0.25、2.5、及び25μg/mLであり、そのうち、cell controlは何も処理していないTreg細胞を指し、TNFは10ng/mLのTNFαで処理したTreg細胞を指し、Rat IgG2b-PEはAnti-IκBα-PE抗体の陰性アイソタイプ対照(anti-Hel)である。被験抗体の各濃度は、陰性アイソタイプ対照anti-Helと比較して統計学的差異を有する(**p<0.01、***p<0.001、Two-Way ANOVA Analysis)。
図9】TNFα誘導Treg細胞増殖に対する被験抗体の阻害を示す。Aは異なる被検抗体と陰性アイソタイプ対照anti-HelがTreg増殖に及ぼす影響のオーバーレイグラフであり、そのうち、破線はanti-Helであり、実線は被験抗体である。BはTNFα誘導Treg増殖に対する異なる抗体の阻害効果を示し、縦軸はTreg増殖パーセントであり、横軸は被験抗体である。そのうち、No treatment(即ち、薬物処置なし)とanti-Helは本実験系の陰性対照である。各抗体の実験濃度は12.5μg/mLである。各被験抗体は、陰性アイソタイプ対照anti-Helと比較して統計学的差異を有する(**p<0.01、***p<0.001、One-Way ANOVA Analysis)。
図10】Tcon細胞増殖に対するTregの阻害活性に対する被験抗体の阻害効果を示す。Aは異なる被検抗体と陰性アイソタイプ対照anti-HelがTcon細胞増殖に対するTregの阻害に及ぼす影響のオーバーレイグラフであり、そのうち、破線はanti-Helであり、実線は被験抗体である。BはTcon細胞増殖を阻害するTregに対する異なる抗体の阻害効果を示し、縦軸はTcon細胞増殖パーセントであり、横軸は被験抗体である。そのうち、No treat(即ち、薬物処置なし)とAnti-Helは本実験系の陰性対照であり、Tcon+beadsはTreg細胞の非存在下でのTcon増殖であり、実験系の陽性対照である。各抗体の実験濃度は12.5μg/mLである。各被験抗体は、陰性アイソタイプ対照anti-Helと比較して統計学的差異を有する(*p<0.05、**p<0.01、One-Way ANOVA Analysis)。
図11】被験抗体のADCC殺傷効果を示す。Aは被験抗体のTregに対するADCC殺傷効果を示す。Bは被験抗体のヒトTNFR2を高度に発現するCHO-TNFR2細胞に対するADCC殺傷効果を示す。そのうち、anti-Helは陰性対照抗体である。
図12A】hTNFR2トランスジェニックマウス(TNFR2 HuGEMM)の血液免疫細胞におけるhTNFR2及びmTNFR2の発現同定を示す。12Aは、TNFR2 HuGEMM(hTNFR2-GEMMとも呼ばれ)マウスの血液中の免疫細胞のFACSゲーティング戦略、及びゲーティングされたCD4+T細胞、CD8+T細胞やTreg細胞におけるmTNFR2とhTNFR2の発現レベル、並びにゲーティングのFMO対照(Fluorescence Minus One control)を示す。
図12B】hTNFR2トランスジェニックマウス(TNFR2 HuGEMM)の血液免疫細胞におけるhTNFR2及びmTNFR2の発現同定を示す。12Bは、TNFR2 HuGEMM及びBalb/c野生型マウスの血液中のCD4+T細胞、CD8+T細胞及びTreg細胞におけるmTNFR2とhTNFR2の発現レベルを示すヒストグラムであり、点線:isotype、破線:BALB/c mouse、実線:TNFR2 HuGEMM。
図12C】hTNFR2トランスジェニックマウス(TNFR2 HuGEMM)の血液免疫細胞におけるhTNFR2及びmTNFR2の発現同定を示す。12Cは、TNFR2 HuGEMM及びBalb/c野生型マウスの血液中のCD4+T細胞、CD8+T細胞及びTreg細胞におけるmTNFR2とhTNFR2の平均蛍光強度の統計グラフである。
図13A】TNFR2抗体が、TNFR2 HuGEMM(図中GEMMと略記)マウスのmTNFα誘導Treg細胞増殖を阻害することを示す。13Aは、GEMMマウス及び野生型WT Balb/cマウスの脾臓におけるヒトTNFR2及びマウスTNFR2を発現するTreg細胞のレベルを示す。
図13B】TNFR2抗体が、TNFR2 HuGEMM(図中GEMMと略記)マウスのmTNFα誘導Treg細胞増殖を阻害することを示す。13B及び13Cは、活性化剤(B)の非存在下又は活性化剤(C)Dynabeads mouse T-activator CD3/CD28の存在下で、被験TNFR2抗体によるGEMMマウス又はWT Balb/cマウスのmTNFα誘導Treg細胞増殖の阻害効果を示す。各抗体の実験濃度は10μg/mLである。各被験抗体は、陰性アイソタイプ対照と比較して統計学的差異を有する(***p<0.001、****p<0.0001、One-Way ANOVA Analysis)。
図13C】TNFR2抗体が、TNFR2 HuGEMM(図中GEMMと略記)マウスのmTNFα誘導Treg細胞増殖を阻害することを示す。13B及び13Cは、活性化剤(B)の非存在下又は活性化剤(C)Dynabeads mouse T-activator CD3/CD28の存在下で、被験TNFR2抗体によるGEMMマウス又はWT Balb/cマウスのmTNFα誘導Treg細胞増殖の阻害効果を示す。各抗体の実験濃度は10μg/mLである。各被験抗体は、陰性アイソタイプ対照と比較して統計学的差異を有する(***p<0.001、****p<0.0001、One-Way ANOVA Analysis)。
図14】抗TNFR2抗体が、TNFR2 HuGEMMマウスの腫瘍成長を用量依存的に阻害することを示す。A及びBはそれぞれ、219-Hu1-mIgG2aと001-Hu3-mIgG2aが、30mg/kg、10mg/kg及び3mg/kgの用量で投与すると、Vehicle対照群と比較して、CT26-hTNFR2 KI腫瘍成長を用量依存的に阻害できることを示す。
図15】抗TNFR2抗体が、TNFR2 HuGEMMマウスの腫瘍成長を阻害する一方で、マウスの体重減少を引き起こさないことを示す。A~Bは異なる用量の219-Hu1-mIgG2a又は001-Hu3-mIgG2aを投与した後のマウスの絶対体重の変化を示す。図C~Dは異なる用量の219-Hu1-mIgG2a又は001-Hu3-mIgG2aを投与した後のマウスの体重の変化率を示す。
図16】抗TNFR2抗体が、ヒトPBMC免疫再構成ヒト化マウス結腸癌腫瘍モデルにおける2つの異なるPBMCドナーで腫瘍成長を有意に阻害することができることを示す。Aはdonor#193において、抗TNFR2抗体219-Hu1が有意な有効性を有することを示す。Bはdonor#272において、腫瘍接種後29日目に、対照抗体群と比較して、001-Hu3、219-Hu1、及びKeytruda群の腫瘍成長がすべて有意に阻害され、統計的差異を有する(****:p<0.0001、vs.isotype、Two Way ANOVA)ことを示す。図C~Dは、donor#193とdonor#272において、対照群と投与群のマウスがすべて体重減少したことを示す。
図17】抗TNFR2抗体が、腫瘍浸潤免疫細胞TILにおけるCD8+T/Treg細胞の比率を顕著に増加することができることを示す。Aは腫瘍浸潤TILにおけるCD4+T、CD8+T、及びTreg細胞のゲーティング戦略を示す。Bはdonor#193において、isotype抗体、001-Hu3抗体、及び219-Hu1抗体で治療した後の腫瘍浸潤白血球(TIL)におけるCD45+細胞に対するCD4+T、CD8+T、及びTregの割合を示す。Cはdonor#193において、isotype抗体、001-Hu3抗体、及び219-Hu1抗体で治療した後のTILにおける腫瘍組織1mg当たりのCD4+T、CD8+T及びTregの絶対数を示す。Dはdonor#193において、isotype抗体、001-Hu3抗体、及び219-Hu1抗体で治療した後のTILにおけるCD8+T/Tregの比率を示す。Eはdonor#272において、isotype抗体、001-Hu3抗体、及び219-Hu1抗体で治療した後のTILにおけるCD45+細胞に対するCD4+T、CD8+T、及びTregの割合を示す。Fはdonor#272において、isotype抗体、001-Hu3抗体、及び219-Hu1抗体で治療した後のTILにおける腫瘍組織1g当たりのCD4+T、CD8+T及びTregの絶対数を示す。Gは、donor#272において、isotype抗体、001-Hu3抗体及び219-Hu1抗体で治療した後の腫瘍浸潤TILにおけるCD8+T/Tregの比率(*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001、unpaired T test)を示す。
図18】hTNFR2 KI-CT26.1C03結腸癌モデルにおける各治療群の腫瘍体積変化曲線を示す。
図19】hTNFR2 KI-CT26.1C03結腸癌モデルにおける各治療群の動物の体重変化曲線を示す。この図は異なる用量の219-Hu1-hIgG1抗体又は併用anti-mPD-L1抗体を投与した後のマウスの絶対体重の変化を示す。
図20】hTNFR2 KI-CT26.1C03結腸癌モデルにおける各治療群の動物の体重変化率の曲線を示す。この図は異なる用量の219-Hu1-hIgG1抗体又は併用anti-mPD-L1抗体を投与した後のマウスの体重変化率を示す。
図21】hTNFR2 KI-CT26.1C03結腸癌モデルにおける各治療群の実験終了点での腫瘍体重変化を示す。この図は異なる用量の219-Hu1-hIgG1抗体又は併用anti-mPD-L1抗体を投与した後、実験終了点で腫瘍を分離して重量を測定する腫瘍重量の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
第1の態様において、本発明は、TNFR2に特異的に結合するヒト化抗体又は抗原結合断片を含み、前記抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、
(1)前記重鎖可変領域は、
a.配列番号19~27から選ばれるいずれかに示されるVH配列、
b.配列番号19~27から選ばれるいずれかの配列と比較して、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するVH配列、又は、
c.配列番号19~27から選ばれるいずれかの配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失及び/又は置換を有するVH配列、
を含み、
(2)前記軽鎖可変領域は、
a.配列番号28~37から選ばれるいずれかに示されるVL配列、
b.配列番号28~37から選ばれるいずれかの配列と比較して、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するVL配列、又は、
c.配列番号28~37から選ばれるいずれかの配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失及び/又は置換を有するVL配列、
を含み、
任意に、前記アミノ酸の挿入、欠失及び/又は置換は、重鎖可変領域又は/及び軽鎖可変領域のFR領域に生じ、
任意に、前記置換は保存的アミノ酸置換である。
【0008】
幾つかの実施形態において、本発明に記載の抗体又は抗原結合断片であって、前記重鎖可変領域は、配列番号19~27のいずれかの配列と比較してCDRが完全に一致し、FRが少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するVH配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号28~37のいずれかの配列と比較してCDRが完全に一致し、FRが少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するVL配列を含む。
幾つかの実施形態において、本発明に記載の抗体又は抗原結合断片に含まれる重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、
(1)配列番号19に示されるVHと配列番号28に示されるVLを有する組み合わせ、
(2)配列番号20に示されるVHと配列番号29に示されるVLを有する組み合わせ、
(3)配列番号19に示されるVHと配列番号30に示されるVLを有する組み合わせ、
(4)配列番号20に示されるVHと配列番号31に示されるVLを有する組み合わせ、
(5)配列番号19に示されるVHと配列番号31に示されるVLを有する組み合わせ、
(6)配列番号21に示されるVHと配列番号32に示されるVLを有する組み合わせ、
(7)配列番号22に示されるVHと配列番号32に示されるVLを有する組み合わせ、
(8)配列番号23に示されるVHと配列番号32に示されるVLを有する組み合わせ、
(9)配列番号24に示されるVHと配列番号32に示されるVLを有する組み合わせ、
(10)配列番号25に示されるVHと配列番号32に示されるVLを有する組み合わせ、
(11)配列番号26に示されるVHと配列番号33に示されるVLを有する組み合わせ、
(12)配列番号27に示されるVHと配列番号34に示されるVLを有する組み合わせ、
(13)配列番号27に示されるVHと配列番号35に示されるVLを有する組み合わせ、
(14)配列番号27に示されるVHと配列番号33に示されるVLを有する組み合わせ、
(15)配列番号27に示されるVHと配列番号36に示されるVLを有する組み合わせ、
(16)配列番号26に示されるVHと配列番号34に示されるVLを有する組み合わせ、
(17)配列番号27に示されるVHと配列番号37に示されるVLを有する組み合わせ、
(18)前記(1)~(17)のいずれかの配列の組み合わせと比較して、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するVHとVLの組み合わせ、
(19)前記(1)~(17)のいずれかの配列の組み合わせと比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失及び/又は置換を有するVHとVLの組み合わせ、又は、
(20)前記(1)~(17)のいずれかの配列の組み合わせと比較して、CDRが完全に一致し、FRが少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するVHとVLの組み合わせ、
から選ばれ、
任意に、前記アミノ酸の挿入、欠失及び/又は置換は、重鎖可変領域又は/及び軽鎖可変領域のFR領域に生じ、
任意に、前記置換は保存的アミノ酸置換である。
【0009】
幾つかの実施形態において、本発明に記載の抗体又は抗原結合断片であって、前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号1、7又は13から選ばれるCDR1-VHと、配列番号2、8又は14から選ばれるCDR2-VHと、配列番号3、9又は15から選ばれるCDR3-VHと、配列番号4、10又は16から選ばれるCDR1-VLと、配列番号5、11又は17から選ばれるCDR2-VLと、及び配列番号6、12又は18から選ばれるCDR3-VLと、を含む。
【0010】
幾つかの実施形態において、本発明に記載の抗体又は抗原結合断片は、ヒトTNFR2に対する結合について7nM以下の解離定数(KD)を有し、カニクイザルTNFR2に対する結合について5nM以下の解離定数(KD)を有する。
【0011】
幾つかの実施形態において、本発明に記載の抗体又は抗原結合断片は、重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域を含むか又は含まなく、好ましくは、前記重鎖定常領域は、全長重鎖定常領域又はその断片を含み、前記断片はCH1ドメイン、Fcドメイン又はCH3ドメインから選ばれてもよく、好ましくは、前記重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域は、ヒト重鎖定常領域及び/又はヒト軽鎖定常領域であり、好ましくは、前記重鎖定常領域は、IgG1重鎖定常領域、IgG2重鎖定常領域、IgG3重鎖定常領域又はIgG4重鎖定常領域などのIgG重鎖定常領域から選ばれてもよく、好ましくは、前記重鎖定常領域は、ヒトIgG1重鎖定常領域、ヒトIgG2重鎖定常領域、ヒトIgG3重鎖定常領域又はヒトIgG4重鎖定常領域である。
【0012】
幾つかの実施形態において、本発明に記載の抗体又は抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、天然抗体、工学操作された抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、一価抗体、多価抗体、全長抗体、抗体断片、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、scFv又は二重抗体(diabody)から選ばれる。
【0013】
幾つかの実施形態において、本発明に記載の抗体又は抗原結合断片は、別の分子をリンカー(linker)を介して又は介さずに結合させ、好ましくは、前記別の分子は治療剤又はトレーサーから選ばれてもよく、好ましくは、前記治療剤は放射性同位体、化学療法剤又は免疫調節剤から選ばれ、前記トレーサーは放射線造影剤、常磁性イオン、金属、蛍光標識、化学発光標識、超音波造影剤又は光増感剤から選ばれる。
【0014】
幾つかの実施形態において、本発明に記載の抗体又は抗原結合断片は、以下の特性を有する。
(1)細胞表面にTNFR2を発現する細胞に特異的に結合すること、(2)Treg細胞に特異的に結合すること、(3)TNFαとTNFR2タンパク質の結合を阻害すること、(4)TNFαと細胞表面に発現するTNFR2の結合を阻害すること、(5)TNFα媒介Treg増殖及び/又はTreg機能を阻害すること、(6)TNFα媒介IκBαの分解を阻害すること、(7)TregによるTcon細胞増殖の阻害を阻害すること、(8)TNFR2発現細胞に対するADCC機能を媒介すること、(9)腫瘍浸潤免疫細胞TILにおけるCD8+T/Treg細胞の比率を増加させること、又は/及び(10)腫瘍の成長を阻害することである。
【0015】
第2の態様において、本発明は、少なくとも第1の抗原結合モジュール及び第2の抗原結合モジュールを含む多重特異性抗原結合分子を含み、前記第1の抗原結合モジュールは本発明に記載の抗体又は抗原結合断片を含み、前記第2の抗原結合モジュールはTNFR2以外の他の抗原に特異的に結合するか、又は第1の抗原結合モジュールとは異なるTNFR2エピトープに結合し、好ましくは、前記他の抗原は、CD3、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD16、CD16A、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD70、CD74、CD80、CD86、CD126、CD138、B7、PD-1、PD-L1、PD-2、CTLA4、PRVIG、TIGHT、HAS、CLDN18.2、MSLN、MUC、Ia、HLA-DR、テネイシン、EGFR、VEGF、P1GF、ED-Bフィブロネクチン、癌遺伝子産物、IL-2、IL-6、IL-15、IL-21、TRAIL-R1又はTRAIL-R2から選ばれ、好ましくは、前記多重特異性抗体は、「二重特異性」、「三重特異性」又は「四重特異性」である。
第3の態様において、本発明は、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を含み、前記細胞外抗原結合ドメインは、本発明の第1の態様に記載のTNFR2ヒト化抗体又は抗原結合断片を含むか、又は本発明の第2の態様に記載の多重特異性抗原結合分子を含む。
第4の態様において、本発明は、本発明の第3の態様に記載のキメラ抗原受容体を含むか又は本発明の第3の態様に記載のキメラ抗原受容体をコードする核酸断片を含む免疫エフェクター細胞を含み、好ましくは、前記免疫エフェクター細胞はT細胞、NK細胞(natural killer cell)、NKT細胞(natural killer cell)、単核細胞、マクロファージ、樹状細胞又はマスト細胞から選ばれ、前記T細胞は、炎症性T細胞、細胞毒性T細胞、制御性T細胞(Treg)又はヘルパーT細胞から選ばれてもよく、好ましくは、前記免疫エフェクター細胞は、同種異系免疫エフェクター細胞又は自己免疫細胞である。
第5の態様において、本発明は、本発明の第1の態様に記載のTNFR2ヒト化抗体又は抗原結合断片、第2の態様に記載の多重特異性抗原結合分子、又は第3の態様に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離された核酸断片を含む。
第6の態様において、本発明は、第5の態様に記載の核酸断片を含むベクター(vector)を含む。
第7の態様において、本発明は、第6の態様に記載のベクターを含む宿主細胞を含み、好ましくは、前記細胞は、細菌(大腸菌)、真菌(酵母)、昆虫細胞又は哺乳動物細胞(CHO細胞株又は293T細胞株)等の原核細胞又は真核細胞であり、好ましくは、前記細胞はフコシルトランスフェラーゼを欠き、より好ましくは、前記フコシルトランスフェラーゼはFUT8である。
【0016】
第8の態様において、本発明は、本発明のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合断片、又は本発明に記載の多重特異性抗原結合分子を調製するための方法を含み、前記方法は、第7の態様に記載の細胞を培養すること、及び前記細胞によって発現される抗体若しくは抗原結合断片又は多重特異性抗原結合分子を単離することを含む。
第9の態様において、本発明は、免疫エフェクター細胞を調製するための方法を含み、前記方法は、前記CARをコードする核酸断片を前記免疫エフェクター細胞に導入することを含み、任意に、前記方法は、前記免疫エフェクター細胞による前記CARの発現を開始することを更に含む。
【0017】
第10の態様において、本発明は、本発明に記載の抗体又は抗原結合断片、本発明に記載の多重特異性抗原結合分子、本発明に記載のキメラ抗原受容体、本発明に記載の免疫エフェクター細胞、本発明に記載の核酸断片、本発明に記載のベクター、本発明に記載の細胞、及び本発明に記載の方法によって調製された生成物を含む医薬組成物を含み、好ましくは、前記組成物は、薬学的に許容されるキャリア(carrier)、希釈剤又はアジュバントを更に含み、好ましくは、前記組成物は、追加の抗腫瘍剤、免疫治療剤又は免疫抑制剤を更に含み、好ましくは、前記追加の抗腫瘍剤は、PD-1抗体、PD-L1抗体又はCTLA-4抗体から選ばれる。
第11の態様において、本発明は、免疫異常に関連する疾患を治療及び/又は予防するための薬物の調製における前記抗体又は抗原結合断片、前記多重特異性抗原結合分子、前記キメラ抗原受容体、前記免疫エフェクター細胞、前記核酸断片、前記ベクター、前記細胞、前記方法によって調製された生成物、及び前記医薬組成物の使用を含み、好ましくは、前記免疫異常に関連する疾患は、Treg細胞及び/又はMDSC機能に関連する疾患であり、好ましくは、前記疾患は、癌又は自己免疫疾患であり、好ましくは、前記癌は、卵巣癌、進行性表皮T細胞リンパ腫、ステージIII/IV転移性結腸直腸癌、トリプルネガティブ乳癌、膵臓癌、非小細胞肺癌、及び/又は転移性黒色腫などのCTLA-4とPD-1療法に対して耐性を有する進行固形腫瘍から選ばれ、好ましくは、前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性硬化症、視神経脊髄炎スペクトラム障害、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、IgG4関連疾患から選ばれてもよい。
第12の態様において、本発明は、免疫異常に関連する疾患を治療及び/又は予防するための方法を含み、前記方法は、本発明に記載の抗体又は抗原結合断片、前記多重特異性抗原結合分子、前記キメラ抗原受容体、前記免疫エフェクター細胞、前記核酸断片、前記ベクター、前記細胞、前記方法によって調製された生成物、及び前記医薬組成物の有効量を受検者に投与することを含み、好ましくは、前記免疫異常に関連する疾患は、Treg細胞及び/又はMDSC機能に関連する疾患であり、好ましくは、前記疾患は、癌又は自己免疫疾患であり、好ましくは、前記癌は、卵巣癌、進行性表皮T細胞リンパ腫、ステージIII/IV転移性結腸直腸癌、トリプルネガティブ乳癌、膵臓癌、非小細胞肺癌、及び/又は転移性黒色腫などのCTLA-4とPD-1療法に対して耐性を有する進行固形腫瘍から選ばれ、好ましくは、前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性硬化症、視神経脊髄炎スペクトラム障害、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、IgG4関連疾患から選ばれてもよい。
第13の態様において、本発明はまた、追加の抗腫瘍治療を前記対象に投与することを含み、例えば、抗PD-1/PD-L1抗体などのPD-1/PD-L1治療、抗CTLA-4抗体などの抗CTLA-4治療剤を含む、化学療法剤、標的治療剤及び免疫治療剤であり、好ましくは、前記追加の抗腫瘍治療はPD-1/PD-L1治療から選ばれ、好ましくは、前記PD-1/PD-L1治療はPD-L1抗体から選ばれる。
第14の態様において、本発明は、TNFR2を含有する疑いのあるサンプルを本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片と接触させることを含む、インビトロでTNFR2を検出する方法を含む。
【0018】
(用語の定義及び説明)
特に明記しない限り、本明細書に使用される用語は、当業者に通常理解されている意味を有する。本明細書で明確に定義された用語について、その用語の意味はその定義が優先する。
本明細書に使用されるように、「TNFR2」という用語は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1B(TNFRSF1B)又はCD120bとしても知られる腫瘍壊死因子受容体2を指し、これは腫瘍壊死因子-α(TNFα)に結合する膜受容体である。前記TNFR2は、好ましくはヒトTNFR2である。
【0019】
本明細書に使用されるように、「抗-腫瘍壊死因子受容体2抗体」、「腫瘍壊死因子受容体2抗体」、「抗TNFR2抗体」、「TNFR2抗体」、「抗-TNFR2抗体部分」及び/又は「抗-TNFR2抗体断片」という用語は、TNFR2に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子の少なくとも一部(例えば重鎖若しくは軽鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)又はそのリガンド結合部分、重鎖若しくは軽鎖可変領域、重鎖若しくは軽鎖定常領域、フレームワーク領域又はそれらの任意の部分であるが、これらに限定されない)を含むタンパク質又はペプチド含有分子を指す。TNFR2抗体には、抗体CDRと構造的及び溶媒露出度に類似するBC、DE及びFG構造ループを含有する抗体様タンパク質足場(第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)など)も含まれる。10Fn3ドメインの三次構造は、IgG重鎖可変領域の三次構造と類似しており、且つ10Fn3のBC、DE及びFGループの残基をTNFR2モノクローナル抗体からのCDR-H1、CDR-H2又はCDR-H3領域の残基で置換することにより、当業者は、例えば、TNFR2モノクローナル抗体のCDRをフィブロネクチン足場にグラフトすることができる。
本明細書に使用されるように、「抗体」(Ab)という用語は、抗体のポリクローナル、モノクローナル、遺伝子操作、及び他の修飾形態(キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト化抗体、異種結合抗体(例えば、二重特異性抗体、三重特異性抗体及び四重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディ)、抗体複合体を含むが、これらに限定されない)、並びに抗体の抗原結合断片(例えば、Fab’、F(ab’)2、Fab、Fv、rIgG、及びscFv断片を含む)を含む、標的抗原に特異的に結合するか又は免疫反応性を有する免疫グロブリン分子を指す。また、特に明記しない限り、「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、標的タンパク質に特異的に結合することができる完全な抗体分子、及び不完全な抗体断片(例えばFabやF(ab’)2断片で、完全抗体のFc断片を欠き(動物サイクルからより迅速に除去される)、従って、Fc媒介性エフェクター機能(effector function)を欠く(Wahl et al、J.Nucl.Med.24:316、1983を参照、その内容は参照により本明細書に組み込まれる))を含むことを意味する。
本明細書に使用されるように、「モノクローナル抗体」という用語は、抗体の産生方法に限定されることなく、単一のクローン(任意の真核生物、原核生物、又はファージクローンを含む)に由来する抗体を指す。
本明細書に使用されるように、「抗原結合断片」及び「抗体断片」という用語は交換可能であり、標的抗原に特異的に結合する能力を保持する1つ又は複数の抗体断片を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって実行することができる。抗体断片は、Fab、F(ab’)2、scFv、SMIP、ダイアボディ、トリアボディ、アフィボディ(affibody)、ナノボディ、アプタマー又はドメイン抗体であり得る。抗体の「抗原結合断片」という用語を包含する結合断片の実例は、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab)2断片、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(V)VH及びVLドメインを含むdAb、(vi)VHドメインからなるdAb断片(Wardら、Nature 341:544-546、1989)、(vii)VH又はVLドメインからなるdAb、(viii)単離された相補性決定領域(CDR)、及び(ix)任意選択で合成リンカーによって連結されていてもよい2つ以上の単離されたCDRの組み合わせを含むが、これらに限定されない。また、Fv断片の2つのドメインVL及びVHは別々の遺伝子でコードされるが、これら2つのドメインは、そのうちのVL領域とVH領域がペアになって一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)と呼ばれ、例えば、Bird et al.Science 242:423-426、1988及びHuston et al、Proc.Natl.Acad.Sci USA 85:5879-5883、1988を参照)を形成することができるリンカーを介して、組換え法を使用して連結することができる。これらの抗体断片は、当業者に知られている通常の技術により得られ、且つ、これらの断片は完全な抗体と同じ方法で使用するためにスクリーニングされる。抗原結合断片は、組換えDNA技術、完全な免疫グロブリンの酵素的又は化学的切断、或いは幾つかの実施形態では当技術分野で知られている化学的ペプチド合成手順によって生成することができる。
【0020】
本明細書に使用されるように、「相補性決定領域」(CDR)という用語は、軽鎖及び重鎖可変ドメインの両方に見られる超可変領域を指す。可変ドメインにおけるより保守性の高い部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。当技術分野で理解されているように、抗体の超可変領域を表すアミノ酸位置は、文脈や当技術分野で知られている様々な定義に従って変化し得る。可変ドメイン内の幾つかの位置は、これらの位置が基準のセット(IMGT又はKABATなど)の中の超可変領域内にあると考えられ、異なる基準のセット(KABAT又はIMGTなど)の中の超可変領域外にあると考えられるため、ハイブリッド超可変位置と見なすことができる。これらの位置の1つ又は複数は、拡張された超可変領域でも見つけることができる。本発明は、これらのハイブリッド超可変位置に修飾を含む抗体を含む。天然の重鎖及び軽鎖可変ドメインはそれぞれ、ラメラ構造を接続するループを形成し、場合によってはラメラ構造の一部を形成する3つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)によって連結された主にラメラ構造をとる4つのフレームワーク領域を含む。各鎖のCDRは、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の配列でFR領域によってしっかりと保持され、且つ他の抗体鎖からのCDRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al、Sequences of Proteins of Immunological Interest、National Institute of Health、Bethesda、Md.1987を参照、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)。例えば、本明細書では、CDR1-VH、CDR2-VH、及びCDR3-VHは、それぞれ重鎖可変領域(VH)の第1のCDR、第2のCDR、第3のCDRを指し、これらの3つのCDRは重鎖(又はその可変領域)のCDR組み合わせ(VHCDR組み合わせ)を構成し、CDR1-VL、CDR2-VL、及びCDR3-VLは、それぞれ軽鎖可変領域(VL)の第1のCDR、第2のCDR、第3のCDRを指し、これらの3つのCDRは軽鎖(又はその可変領域)のCDR組み合わせ(VLCDR組み合わせ)を構成する。
【0021】
本明細書に使用されるように、「Kabat番号付けシステム」という用語は、一般に、Elvin A.Kabatによって提案された免疫グロブリンアラインメント及び番号付けシステムを指す(例えば、Kabat et al、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda,Md.,1991を参照)。
【0022】
本明細書に使用されるように、「VH」という用語は、抗体の免疫グロブリン重鎖(Fv、scFv又はFabの重鎖を含む)の可変領域を指す。「VL」という用語は免疫グロブリン軽鎖(Fv、scFv、dsFv又はFabの軽鎖を含む)の可変領域を指す。
本明細書における「重鎖定常領域」という用語は、抗体と抗原の結合に直接関与しないが、Fc受容体との相互作用などのエフェクター機能を示す、抗体重鎖のカルボキシ末端部分を指し、抗体の可変ドメインと比較して、より保存的アミノ酸配列を持っていることを意味する。「重鎖定常領域」は、少なくともCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの変異体若しくは断片を含む。「重鎖定常領域」には「全長重鎖定常領域」と「重鎖定常領域断片」が含まれ、前者は天然抗体定常領域と基本的に類似した構造を有し、後者は「全長重鎖定常領域の一部」のみを含む。例示的に、典型的な「全長抗体重鎖定常領域」は、CH1ドメイン-ヒンジ領域-CH2ドメイン-CH3ドメインからなり、抗体がIgEである場合、またCH4ドメインも含み、抗体が重鎖抗体である場合、CH1ドメインは含まない。例示的に、典型的な「重鎖定常領域断片」は、CH1、Fc、又はCH3ドメインから選ばれてもよい。
本明細書における「軽鎖定常領域」という用語は、抗体と抗原の結合に直接関与しない、抗体軽鎖のカルボキシ末端部分を指し、前記軽鎖定常領域は、定常κドメイン又は定数λドメインから選ばれてもよい。
本明細書における「Fc」という用語は、完全な抗体のパパイン加水分解によって得られる抗体のカルボキシ末端部分を指し、典型的には抗体のCH3及びCH2ドメインを含む。Fc領域は、例えば天然配列Fc領域、組換えFc領域及び変異体Fc領域を含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は、わずかに変化することができるが、ヒトIgG重鎖のFc領域は通常、位置Cys226でのアミノ酸残基から、又はPro230から、そのカルボキシ末端まで延びるように定義される。Fc領域のC末端リジン(EUKabat番号付けシステムの残基447に基づくもの)は、例えば抗体の生産又は精製期間、又は抗体重鎖をコードする核酸に対して組換え操作を行うことによって除去することができるから、Fc領域はLys447を含んでも含まなくてもよい。
【0023】
本明細書に使用されるように、「パーセント(%)配列一致性」及び「パーセント(%)配列同一性」という用語は交換可能であり、最大パーセント配列一致性を達成するために配列をアラインし、(必要に応じて)ギャップを導入した(例えば、最適なアラインメントのために、候補配列と参照配列の一方又は両方にギャップを導入することができ、比較の目的のために、非相同配列を無視することができる)後、候補配列のアミノ酸(又はヌクレオチド)残基が、参照配列のアミノ酸(又はヌクレオチド)残基と同一であるパーセントを指す。パーセント配列一致性を決定するという目的のために、当業者に周知の種々の方法でアラインメントを実現させることができ、例えば、BLAST、ALIGN、又はMegalign(DNASTAIi)ソフトウェアなどの公衆に取得可能なコンピュータソフトウェアを用いてもよい。当業者は、比較される配列の全長範囲内に最大アラインメントを実現する必要がある任意のアルゴリズムを含み、測定アラインメントに用いられる適当なパラメータを決定することができる。例えば、候補配列との比較のためにアラインされた参照配列は、候補配列が候補配列の全長又は候補配列の連続するアミノ酸(又はヌクレオチド)残基の選択された部分にわたって50%~100%の配列同一性を呈することを示すことができる。比較目的でアラインされた候補配列の長さは、例えば、参照配列の長さの少なくとも30%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%)であってもよい。候補配列中の位置が、参照配列中の対応する位置と同じアミノ酸(又はヌクレオチド)残基によって占められている場合、これらの分子は、その位置で同一である。
【0024】
本明細書における「保存的アミノ酸」という用語は、一般に同じクラスに属するアミノ酸、又は類似する特徴(例えば、電荷、側鎖の大きさ、疎水性、親水性、主鎖の配座や剛性など)を有するアミノ酸を指す。例示的に、以下の各グループ内のアミノ酸は互いの保存的アミノ酸残基に属し、グループ内のアミノ酸残基の置換は保存的アミノ酸置換に属する。
(1)酸性アミノ酸:Asp(D)及びGlu(E)、
(2)塩基性アミノ酸:Lys(K)、Arg(R)及びHis(H)、
(3)親水性無電荷アミノ酸:Ser(S)、Thr(T)、Asn(N)及びGln(Q)、
(4)脂肪族無電荷アミノ酸:Gly(G)、Ala(A)、Val(V)、Leu(L)及びIle(I)、
(5)非極性無電荷アミノ酸:Cys(C)、Met(M)及びPro(P)、
(6)芳香族アミノ酸:Phe(F)、Tyr(Y)及びTrp(W)。
本明細書に使用されるように、「特異的結合」という用語は、例えば抗体又はその抗原結合断片によって特異的に認識されるタンパク質及び他の生体分子の不均一なグループにおける抗原の存在を決定する結合反応を指す。抗原に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片は、100nM未満のKDで抗原に結合する。例えば、抗原に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片は、100nM(例えば、1pM~100nMの間)までのKDで抗原に結合する。特定の抗原又はそのエピトープへの特異的結合を示さない抗体又はその抗原結合断片は、その特定の抗原又はそのエピトープに対して100nMより大きい(例えば、500nM、1μM、100μM、500μM又は1mMより大きい)KDを示す。特定のタンパク質又は炭水化物と特異的に免疫反応する抗体は、様々なイムノアッセイを使用して選択することができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質又は炭水化物と特異的に免疫反応する抗体を選択するために日常的に使用されている。Harlow&Lane、Antibodies、Alaboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、NewYork(1988)及びHarlow&Lane、Using Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、NewYork(1999)を参照し、これには特異的免疫反応性を決定するために使用できるイムノアッセイと条件が記載されている。
【0025】
本明細書に使用されるように、「多重特異性抗体」という用語は、少なくとも2つの抗原結合部位を有することを指し、前記少なくとも2つの抗原結合部位の各抗原結合部位は、同じ抗原の異なるエピトープ又は異なる抗原の異なるエピトープと結合する。従って、「二重特異性」、「三重特異性」、「四重特異性」などの用語は、抗体/抗原結合分子が結合できる異なるエピトープの数を指す。「二重特異性抗体」という用語は、少なくとも2つの異なる抗原に対してモノクローナル結合特異性を有する抗体であり、通常はヒト又はヒト化抗体である。本発明では、結合特異性の一方をTNFR2の抗原エピトープに対して検出することができ、他方をTNFR2の別の抗原エピトープ又は任意の他の抗原に対して、例えば細胞表面タンパク質、受容体、受容体サブユニット、組織特異的抗原、ウイルス由来タンパク質、ウイルスコード化エンベロープタンパク質、細菌由来タンパク質又は細菌表面タンパク質などに対して検出することができる。
本明細書に使用されるように、「価」という用語は、抗体/抗原結合分子における所定数の結合部位の存在を示す。従って、「一価」、「二価」、「四価」及び「六価」という用語は、抗体/抗原結合分子中の1つの結合部位、2つの結合部位、4つの結合部位及び6つの結合部位の存在をそれぞれ示す。
本明細書に使用されるように、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体との配列相同性を高めるためにアミノ酸配列が修飾された、遺伝子操作された非ヒト抗体を指す。一般的に言えば、ヒト化抗体のCDR領域の全部又は一部は、非ヒト抗体(ドナー抗体)に由来し、非CDR領域の全部又は一部(例えば、可変領域FR及び/又は定常領域)は、ヒト免疫グロブリン(受容体抗体)に由来する。ヒト化抗体は通常、抗原特異性、親和性、反応性、免疫細胞活性を増強する能力、免疫応答を増強する能力などを含むが、これらに限定されないドナー抗体の予想される特性を保持するか、又は部分的に保持する。
本明細書に使用されるように、「キメラ抗体」という用語は、ある供給元の生物(例えば、ラット又はマウス)の免疫グロブリンに由来する可変配列及び異なる生物(例えば、ヒト)の免疫グロブリンに由来する定常領域を有する抗体を指す。キメラ抗体を生産する方法は、本分野で既知の内容である。例えば、Morrison,1985,Science 229(4719):1202-7、Oi et al,1986,BioTechniques 4:214-221、Gillies et al,1985 J Immunol Methods 125:191-202を参照し、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書に使用されるように、「抗体複合体」という用語は、抗体分子が直接又は連結リンカーを介して別の分子に化学的に結合することによって形成されるコンジュゲート/複合体を指す。前記別の分子は、治療剤又はトレーサーであってもよく、好ましくは、前記治療剤は放射性同位体、化学療法剤又は免疫調節剤から選ばれ、前記トレーサーは放射線造影剤、常磁性イオン、金属、蛍光標識、化学発光標識、超音波造影剤又は光増感剤から選ばれる。「抗体複合体」は、例えば、薬物分子が前記別の分子である抗体-薬物複合体(ADC)である。
【0026】
本明細書における「抗原キメラ受容体(CAR)」という用語は、免疫エフェクター細胞上で発現するように操作され、抗原に特異的に結合する人工免疫エフェクター細胞表面受容体を指し、少なくとも(1)抗体の可変重鎖又は軽鎖などの細胞外抗原結合ドメイン、(2)CARを免疫エフェクター細胞にアンカリングする膜貫通ドメイン、及び(3)細胞内シグナル伝達ドメインを含む。CARは、細胞外抗原結合ドメインを使用して、MHC非制限様式で、T細胞及び他の免疫エフェクター細胞を癌細胞などの選択された標的にリダイレクトすることができる。
本明細書に使用されるように、「制御性T細胞」又は「Treg」という用語は、サプレッサーT細胞(suppressor T cells)とも呼ばれ、自己抗原に対する耐性を維持し、過度の免疫反応を制御し、正常細胞に対する免疫損傷を回避し、自己免疫疾患の発生を防止するために、生体免疫反応を負に制御するリンパ球のグループである。Tregは、CD4、FOXP3、及びCD25というバイオマーカーを発現し、ナイーブCD47細胞と同じ系統に由来すると考えられている。Tregは腫瘍の発生に非常に重要な役割を果たしており、多くの研究によると、メラノーマ、卵巣癌、乳癌、結腸癌、肺癌、膵臓癌など、腫瘍微小環境におけるTreg細胞の数が著しく増加すること、Treg細胞の数が腫瘍患者の生存率と密接に関係していることが分かる。また、腫瘍細胞は腫瘍浸潤性Treg細胞の増殖を誘導し、増殖したTreg細胞はTGF-βなどの免疫抑制因子を大量に分泌し、CD8+T細胞などの免疫細胞の機能を阻害し、腫瘍に対する免疫細胞の殺傷効果を妨げ、多くの固形腫瘍及び血液腫瘍で免疫療法が失敗する重要な薬剤耐性機構となる。最近の研究では、PD-1/PD-L1などの免疫療法患者の免疫寛容もTregと密接に関係していることが分かる。
【0027】
本明細書に使用されるように、「ベクター」という用語は、DNAベクター(プラスミドなど)、RNAベクター、ウイルス又は他の適切なレプリコン(例えば、ウイルスベクター)などの核酸ベクターを含む。外来タンパク質をコードするポリヌクレオチドを原核細胞又は真核細胞に送達するための様々なベクターが開発されている。本発明の発現ベクターは、ポリヌクレオチド配列と、例えばタンパク質の発現及び/又はこれらのポリヌクレオチド配列を哺乳動物細胞のゲノムに組み込むための追加の配列要素とを含む。本発明の抗体及び抗体断片を発現させるために使用できる特定のベクターには、遺伝子の転写を指示する調節配列(プロモーター及びエンハンサー領域など)を含むプラスミドが含まれる。抗体及び抗体断片を発現させるための他の有用なベクターは、これらの遺伝子の翻訳速度を高めるか、又は遺伝子の転写によって生産されたmRNAの安定性や核出力を改善するポリヌクレオチド配列を含む。これらの配列要素には、発現ベクターに保持される遺伝子の効率的な転写を指示するために、例えば5’及び3’非翻訳領域、内部リボソーム進入部位(IRES)、及びポリアデニル化シグナル部位が含まれる。本発明の発現ベクターはまた、当該ベクターを含む細胞を選択するための標識をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。適切な標識の実例には、抗生物質(アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン又はノーセオトリシンなど)に対する耐性をコードする遺伝子が含まれる。
【0028】
本明細書に使用されるように、「受検者」、「対象」及び「患者」という用語は、本明細書に記載される特定の疾患又は病症(癌又は感染症など)に対する治療を受けている生体を指す。対象及び患者の実例には、疾患又は病症(例えば、癌又は感染症などの細胞増殖性疾患)に対する治療を受けている、ヒト、霊長類、ブタ、ヤギ、ウサギ、ハムスター、ネコ、イヌ、モルモット、ウシ科のメンバー(家畜のウシ、バイソン、バッファロー、シフゾウ、ヤクなど)、ウシ、ヒツジ、馬、バイソンなどの哺乳動物が含まれる。
本明細書に使用されるように、「治療」という用語は、対象における望ましくない生理的変化又は病変、例えば細胞増殖性疾患(癌又は感染症など)の進行を予防、減速(低減)することを目的とする、外科手術又は薬物処置(surgical or therapeutic treatment)を指す。有益又は望ましい臨床結果には、症状の軽減、疾患程度の低下、安定した疾患状態(即ち、悪化しないこと)、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的寛解でも全体的寛解でも)を含むが、これらに限定されず、検出可能か検出不能かを問わない。治療を必要とする対象には、すでに病症又は疾患を患っている対象、及び病症又は疾患を患いやすい対象、或いは病症又は疾患を予防すべき対象が含まれる。減速、軽減、低下、緩和、寛解などの用語に言及する場合、解消、消失、非発生などの状況も意味として含まれる。
本明細書に使用されるように、「有効量」という用語は、細胞、組織、又は対象に単独で、又は別の治療剤と組み合わせて投与された場合に、疾患の病症又はこの疾患の進行を予防又は寛解するのに有効な治療剤の量を指す。「有効量」はまた、症状を寛解する、例えば、関連する医学的状態を治療、治癒、防止若しくは寛解する、又はそのような状態の速度増加を治療、治癒、防止若しくは寛解するのに十分な化合物の量を指す。活性成分を単独で個体に投与する場合、治療有効用量とは当該成分の量だけである。組み合わせが使用される場合、治療有効用量とは、組み合わせ投与、連続投与又は同時投与に関係なく、治療効果を生じさせる活性成分の組み合わせ用量を指す。
【実施例
【0029】
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明を更に説明するが、本発明の利点及び特徴は、説明するにつれて明らかになる。実施例において具体的な条件が明記されていない場合、一般的な条件又はメーカーが推奨する条件を用いる。使用される試薬又は機器は、生産メーカーが明記されていない場合、いずれも市販されている一般的な製品であってもよい。
本発明の実施例は単に例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の技術案の詳細と形態を修正又は置換することができるが、これらの修正及び置換はすべて本発明の保護範囲内にあることを当業者は理解すべきである。
【0030】
実施例1 抗TNFR2ヒト化モノクローナル抗体の発現及び精製
1.1 抗TNFR2抗体のヒト化
「CDRs移植」法を用いて抗体のヒト化を行い、つまり、最も相同性の高いヒト抗体を配列に基づいて選択して抗体骨格領域(FRs)を提供し、標的抗体におけるKabatの命名法に基づく抗原結合断片の相補性決定領域(CDRs)を、前者に移植してFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の配列のヒト化抗体可変領域配列を形成した。次に、抗体の活性と親和性を効果的に維持するために、抗体構造モデリング(MOEソフトウェア)に基づき、以下の選択基準で潜在的な復帰突然変異点を選択した。1).VH-VL界面に位置する、CDRsに近接するか又はCDRsと直接相互作用する抗体骨格領域のアミノ酸残基を選択して復帰突然変異を行い、このようなアミノ酸残基はCDRs領域の配座を維持するのに比較的重要なものでり、2).免疫原性を考慮すると、できるだけタンパク質に埋め込まれたアミノ酸を選択して復帰突然変異を行い、3).抗体の安定性や発現レベルを考慮すると、分子エネルギーが低下した突然変異が好ましいことである。マウス抗体と同等以上の親和性、抗体の特徴付け及び活性機能を持つヒト化抗体を、異なる突然変異を含むヒト化抗体の、ヒトTNFR2に対する親和性及びTNFR2を表面に発現する細胞への結合について試験することによってスクリーニングした。
そのうち、TNFR2抗体のKabat命名法の抗原結合断片の相補性決定領域(CDRs)を表1に示し、表2はヒト化抗体分子のVHとVL配列を示し、表3はヒト化抗TNFR2抗体のVHとVL配列のペアリング状況を示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
1.2 抗TNFR2ヒト化抗体の発現
トランスフェクションの前日、ExpiCHO-S細胞を計数し、2.5~4(106細胞/mLの密度で新しく予熱したExpiCHO発現培地(Invitrogen、A291002)に接種し、一晩培養した。トランスフェクション当日、一晩培養したExpiCHO-S細胞懸濁液を計数すると、細胞濃度は約7~10(106細胞/mLであり、トランスフェクション用細胞生存率は95%より大きかった。トランスフェクションの数に応じて、必要な数の細胞を取り、それらをExpiCHO発現培地で最終濃度6(106細胞/mLに希釈し、後で使用するために37℃、8%CO2、100rpmのシェーカーに置いた。トランスフェクションの準備:プラスミドをOptiPROTM SFM培地(Invitrogen、12309019)で希釈し、遠心分離管を軽く振ってよく混ぜた。よく混ぜたExpiFectamineTM CHO試薬(Invitrogen、A29129)をプラスミド希釈液に加え、遠心分離管を軽く振ってよく混ぜ、室温で2分間静置した。前記のプラスミド/ExpiFectamineTM CHO試薬複合物をトランスフェクトする細胞懸濁液にゆっくりと滴下し、滴下中にフラスコを振った。トランスフェクション後、トランスフェクトされた細胞を37℃、8%CO2、100rpmのシェーカーで培養した。トランスフェクション後1日目に、トランスフェクトされた細胞に0.6%ExpiFectamineTM CHO Enhancer(Invitrogen、A29129)と16%ExpiCHOTM Feed(Invitrogen、A29129)を追加し、追加中にフラスコを軽く振り、細胞を32℃、5%CO2、100rpmのシェーカーに移して培養した。トランスフェクション後5日目に、トランスフェクトされた細胞に16%ExpiCHOTM Feedを追加し、追加中にフラスコを軽く振った。トランスフェクション後12日目に、細胞上清を回収し、4000gで10分間遠心分離して上清を吸引し、抗体を更に精製した。
【0035】
1.3 抗TNFR2ヒト化抗体の精製
高速遠心分離により回収した細胞培養上清を、0.45+0.22(Mのメンブレンフィルタで濾過し、Akta Avant 150(Cytiva)を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより第一段階の精製を行った。クロマトグラフィー媒体は、Fcと相互作用するProtein AフィラーであるMabselect PrismA(Cytiva、カタログ番号:17549803)であり、平衡化バッファーはPBS(2.5g/L Na2HPO4 12H2O、0.408g/L NaH2PO4、8.76g/L NaCl、pH7.2)であり、カラム容量の4倍に平衡化した後、細胞上清をローディングして結合させ、サンプルがカラム上に5min以上の時間保持されるように流速を制御した。ローディング終了後、A280の紫外吸収がベースラインに低下するまでカラムをPBS(pH7.2)で洗浄した。次に、20mM PB+1M NaCl(3.752g/L Na2HPO4・12H2O、1.314g/L NaH2PO4、58.44g/L NaCl pH6.2)でカラム容量の2倍量で濯いた。A280の紫外吸収とコンダクタンスがベースラインに達するまで、カラムをPBS(pH7.2)で更に洗浄した。最後に、20mMクエン酸(2.184g/Lクエン酸、1.086g/Lクエン酸ナトリウム、pH3.4)の溶出バッファーでクロマトグラフィーカラムを洗浄し、A280の紫外吸収ピークに従って溶出ピークを収集し、収集した溶出サンプルを1M Tris(121.14g/L Tris)で中和し、pHメーターSeven2Go(Mettler-Toledo)で中性まで検出した。収集した抗体は、SEC-HPLCによって純度が95%より大きいことが同定され、その後の研究に使用した。
【0036】
実施例2 ELISAによるTNFR2ヒト化抗体とヒト及びカニクイザルTNFR2タンパク質との特異的結合の検出
ヒトTNFR2(Human TNFR2-His、Sino 10417-H08H)又はカニクイザルTNFR2(Cynomolgus TNFR2-His、Sino 90102-C08H)を100μL/ウェル、0.5μg/mLでELISAプレートに予め被包し、被験抗TNFR2ヒト化抗体(実施例1に記載の可変領域をIgG-Fcに連結して構成され、WTキメラ抗体もIgG-Fc構造を取る)を3.33倍段階希釈し、100μL/ウェルで加え、室温で振とうしながら1.5時間インキュベートし、プレート洗浄後、マウス抗ヒト(mouse anti-human)IgG Fc-HRP標準溶液(1:10000希釈)を加え、100μL/ウェルで加え、室温で振とうしながら1.0時間インキュベートし、プレートを再度洗浄し、HRPの基質であるTMBを加えて発色させ、停止液を加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(MD I3)で吸光度を読み取った。抗体濃度を横軸、対応するOD値を縦軸として抗体の結合曲線をプロットし、4パラメータフィッティング(GraphPad Prism9)を行い、EC50値を算出した。EC50値が小さいほど、抗体がヒト/カニクイザルTNFR2に結合する能力が強いことを示した。ヒト化抗体の結合効果を、対応するヒト-マウスキメラ抗体WT(配列については配列番号38~43を参照)に正規化し、パーセント値が高いほど、ヒト化抗体の結合効果が良好であることを示した。抗TNFR2抗体とヒトTNFR2タンパク質との結合結果を図1及び表4に、カニクイザルTNFR2との結合結果を図2及び表4に示した。データによると、すべての被験抗体がヒト又はサルTNFR2タンパク質に特異的に結合することができ、且つヒト化抗体の結合能力が基本的にヒト-マウスキメラ抗体の結合能力と同じであることが分かる。
【0037】
【表4】
【0038】
001-WT VHアミノ酸配列(配列番号38):
EVQLQESGGGLVQPGGSLNLSCAASGFAFSTYDLSWVRQTPEKRLEWVAYINNGGISTYYSDTVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLKSEDTAMYYCVRGPFYGSANYFDYWGQGTTVTVSS
001-WT VLアミノ酸配列(配列番号39):
EIVMTQSPASLSLSVGETVTITCRTSESIYSNLPWYQQKQGKSPQLLVYDATKLAEGVPSRFSGSESGTQYSLKINSLQSEDFGTYYCQHFWVTPWTFGGGTKLEIK
219-WT VHアミノ酸配列(配列番号40):
EVQLQESGAELVRPGASVKLSCKASGYSFTNYWMNWVKQRPGQGLEWIGMIHPSDTETRLNQNFKDKATLTVDKSSSTSYMQLSSPTSEDSAVYYCARGEGLGAARSVSMDYWGQGTTVTVSS
219-WT VLアミノ酸配列(配列番号41):
DILMTQSPSSLSASLGDRVTISCRASQDISNYLNWYQQKPDGTVKVLIYYTAILHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPWTFGGGTKLEIK
224-WT VHアミノ酸配列(配列番号42):
EVQLQESGPEIVKPGASVKLSCTASGFNNKDIYMHWVKQRPEQGLEWIGRIDPATGNTKHDPKFQDKATLSSDTSSNTAYLQFSSLTSEDTAVYYCAHSPYGDFGAMDYWGQGTTVTVSS
224-WT VLアミノ酸配列(配列番号43):
DIQMTQSPAIMSASLGERVTMTCTASSSVSSNYLHWYQQKPGSSPKLWIYSTSNLPSGVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCHQYHRSPWTFGGGTKLEIK
【0039】
実施例3 BIAcoreによるTNFR2ヒト化抗体とヒト及びカニクイザルTNFR2タンパク質との親和性の検出
BIAcoreにより被験抗TNFR2抗体とヒト及びカニクイザルTNFR2タンパク質との特異的結合を検出した。この実験は、Protein Aチップを使用し、結合抗原を飽和させることができるRmaxが50RUとなるように、チップが希釈された抗体を捕捉するのに必要な時間をマニュアル操作(manual run)で測定した。ヒト(Human TNFR2-His、Sino 10417-H08H)とカニクイザル(Cynomolgus TNFR2-His、Sino 90102-C08H)TNFR2の両方を、32、16、8、4、2nMに段階希釈した。抗原に対する抗体の親和性は、マルチサイクル速度論を使用して測定された。各サイクルで、抗体を注入した後、TNFR2タンパク質を勾配濃度で注入し、抗原と抗体の結合及び解離プロセスを生じさせた。各サイクルの後、Glycine pH1.5を使用してProtein Aチップの再生(チップ上のタンパク質を除去する)を行った。BIAcore T200解析ソフトウェアを使用して、抗体抗原の親和性KDをフィッティングした。表5の結果から、すべての被験抗TNFR2抗体とヒト又はカニクイザルTNFR2タンパク質との間に特異的結合があり、親和性レベルが比較的高いことが分かる。
【0040】
【表5】
【0041】
実施例4 FACSによるTNFR2抗体とCHO-TNFR2細胞表面ヒトTNFR2との結合の検出
ヒトTNFR2高発現プラスミドをトランスフェクトしたCHO-K1安定細胞(CHO-TNFR2と命名)を取り、トランスフェクトしたヒトTNFR2全長プラスミドはSino Biological(カタログ番号:HG10417-UT、NCBI Ref Seq:NM_001066.2)から購入され、細胞密度が80%を超えないときに実験を行った。細胞培地を捨て、PBSで洗浄し、1mLのトリプシンを加えて2分間消化し、10%FBSを含むHam’s F12完全培地で消化を停止して細胞懸濁液を作った。計数後、適量の細胞懸濁液を取り、350×gで遠心分離し、上清を捨て、1×107細胞/mLの密度で、対応する量のブロッキング溶液(10%FBS+PBS)を加えて細胞を再懸濁し、4℃で30分間インキュベートした。インキュベート終了後、350×gで遠心分離して上清を除去し、細胞を染色バッファー(2%FBS+PBS)で2×106細胞/mLの密度に再懸濁し、96ウェルプレートに広げ、各ウェルに50μLの細胞懸濁液を加え、後で使用するようにした。PBSを使用して抗体を最高濃度の20μg/mL(2倍濃度)から10倍段階希釈し、希釈した抗体を既に50μLの細胞懸濁液を含むウェルに加え、マイクロプレートシェーカーに置き、500rpmで1分間振とうし、抗体と細胞を完全に混合させ、4℃で1hインキュベートした。インキュベート終了後、細胞を染色バッファー100μL/ウェルで2回洗浄し、350×gで5分間遠心分離して上清を捨てた。PE goat anti-Human IgG Fc抗体(ebioscience、カタログ番号:12-4998-82)を染色バッファーで250倍希釈し、洗浄した細胞ウェルに1ウェルあたり100μLの量で加え、よく混合し、4℃で30分間染色した。染色終了後、同様に染色バッファーで2回洗浄し、最後に200μLの染色バッファーで細胞を再懸濁し、フローサイトメーターでシグナルを検出し(Thermo Attune NxT)、シグナルが強いほど、TNFR2に対する抗体の結合能が強いことを示した。抗体濃度を横軸、対応する平均蛍光強度MFIの倍数を縦軸として抗体の結合曲線をプロットし、4パラメータフィッティング(GraphPad Prism9)を行い、EC50値を算出した。EC50値が小さいほど、抗体がCHO-TNFR2細胞に結合する能力が強いことを示した。ヒト化抗体の結合効果を、対応するヒト-マウスキメラWT抗体に正規化し、パーセント値が高いほど、ヒト化抗体の結合効果が良好であることを示した。図3及び表6に示すように、すべての被験抗TNFR2抗体はCHO-TNFR2細胞表面ヒトTNFR2に結合することができ、且つヒト化抗体の結合能力は基本的にヒト-マウスキメラWT抗体の結合能力と同じである。
【0042】
【表6】
【0043】
実施例5 FACSによる抗体とヒト制御性T細胞(Treg細胞)表面TNFR2との結合の検出実験
ヒトTreg細胞は、選別キット(Stemcell、カタログ番号:18063)を使用してヒトPBMCから単離し、Dynabeads Human Treg Expander(Gibco、カタログ番号:11129D)によってインビトロで15日間刺激及び増幅を行い、その後個別包装して凍結保存した。インビトロで単離増輻したTreg細胞を取り、一晩回復し、翌日300×gで5分間遠心分離し、DPBSで再懸濁して細胞懸濁液を得、計数した。実験に必要な数の細胞を遠心分離管に入れ、300×gで5min遠心分離し、上清を除去し、染色バッファーで細胞密度を2×106/mLに調整し、96ウェルプレートに1ウェルあたり50μLで広げた。すべての被験抗体と対照抗体anti-Hel isotype(それぞれPBSで200ng/mLに希釈し、総量は100μLとした)を取った。各サンプルを各ウェルに50μL/ウェルで添加した。細胞懸濁液と抗体を加えたプレートをマイクロプレートシェーカーに置き、500rpmの速度で1min振とうし、細胞と抗体を十分に混合した。混合後、プレートを4℃の冷蔵庫に入れ、60minインキュベートした。インキュベート終了後、各ウェルに100μLの染色バッファーを加え、350×gで5min遠心分離し、上清を捨て、また、各ウェルに200μLの染色バッファーを加えて細胞を再懸濁し、350×gで5min遠心分離し、上清を捨てた。染色バッファーを、250:1(染色バッファー:蛍光染色抗体)の割合でPE goat anti-Human IgG Fcに加え、染色液を作成し、よく混合して1ウェルあたり100μLで細胞ウェルに加え、プレートをマイクロプレートシェーカーに置き、500rpmの速度で1min振とうし、細胞と染色液を十分に混合した。混合後、4℃の冷蔵庫に入れ、30minインキュベートした。細胞を2回洗浄し、最後に200μLのPBSを各ウェルに加えて細胞を再懸濁し、フローサイトメーターでシグナルを検出した(Thermo Attune NxT)。図4は、すべての抗TNFR2ヒト化抗体が効果的にヒトTreg細胞に結合できることを示す。
【0044】
実施例6 FACSによる抗体と活性化されたカニクイザルPBMC細胞との結合の検出実験
凍結保存したカニクイザルPMBC細胞を回復させた後、完全培地(RPMI1640-Glutamax+10%FBS+1×P/S+1×ITS+50μMPMメルカプトエタノール)に再懸濁して細胞懸濁液を得、計数した。計数結果に従い、細胞を5×106/mLの密度に再懸濁し、96ウェルU底プレートに1ウェルあたり100μLの細胞懸濁液を広げた。20%濃度のT細胞活性化試薬Immunocult T cell(Stemcell、1:50)activator+rhIL-2(R&D、200IU)を調製し、20%濃度の活性化試薬を1ウェルあたり100μLで細胞に加え、よく混合して37℃、5%CO2のインキュベーターで3日間培養した。活性化された細胞を収集して計数し、染色バッファー(2%FBSを含むDPBS溶液)を使用して細胞密度を4×106/mLに調整し、96ウェルV底プレートに1ウェルあたり50μLで広げた。すべての被験抗体とanti-Hel対照抗体(それぞれ染色バッファーで0.4μg/mL、4μg/mLに希釈した)を取り、各サンプルを各ウェルに50μL/ウェルで添加した。細胞懸濁液と抗体を加えたプレートをマイクロプレートシェーカーに置き、500rpmの速度で1min振とうし、細胞と抗体を十分に混合した。混合後、プレートを4℃の冷蔵庫に入れ、30minインキュベートした。インキュベート終了後、各ウェルに100μLの染色バッファーを加え、350×gで5min遠心分離し、上清を捨て、また、各ウェルに200μLの染色バッファーを加えて細胞を再懸濁し、350×gで5min遠心分離し、上清を捨てた。抗体Anti-Human CD8-FTIC(BD-555366、1μL/test)とPE goat anti-Human IgG Fc(Invitrogen-124998-82、0.5μL/test)を加え、プレートをマイクロプレートシェーカーに置き、500rpmの速度で1min振とうし、細胞と染色液を十分に混合した。混合後、4℃の冷蔵庫に入れ、30minインキュベートした。細胞を2回洗浄し、最後に200μLの染色バッファーを各ウェルに加えて細胞を再懸濁し、フローサイトメーターでシグナルを検出した(Thermo Attune NxT)。図5は、anti-Hel陰性アイソタイプ対照抗体がカニクイザルCD8T細胞に結合せず、すべての被験抗TNFR2ヒト化抗体が活性化カニクイザルPBMCにおけるCD8+T細胞に効果的に結合できることを示す。
【0045】
実施例7 ELISAにより抗TNFR2抗体がTNFαとTNFR2の結合を遮断するのを検出すること
ヒトTNFR2(Novoprotein、カタログ番号C830)を100μL/ウェル、1μg/mLでELISAプレートに予め被包し、すべての被験TNFR2抗体を最高濃度の30μg/mLから2.5倍段階希釈し、希釈した抗体をそれぞれ15ng/mLのヒトTNFα-Biotin(Acro Biosystem、カタログ番号TNA-H82E3)となど量混合し、100μL/ウェルでELISAプレートに加え、室温で振とうしながら2.0時間インキュベートし、プレート洗浄後、Streptavidin-HRP標準溶液(1:10000希釈)を100μL/ウェルで加え、室温で振とうしながら40分間インキュベートし、プレートを再度洗浄し、HRPの基質であるTMBを加えて発色させ、停止液を加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(MD I3)で吸光度を読み取った。抗体濃度を横軸、対応するOD値を縦軸として抗体の阻害曲線をプロットし、4パラメータフィッティング(GraphPad Prism9)を行い、IC50値を算出した。IC50値が小さいほど、抗体がヒトTNFαとヒトTNFR2の結合を阻害する能力が強いことを示した。ヒト化抗体の遮断効果を、対応するヒト-マウスキメラ抗体WTに正規化し、パーセント値が高いほど、ヒト化抗体の阻害効果が良好であることを示した。被験抗体の遮断曲線を図6に、阻害活性を表7に示す。図6及び表7から、すべての被験抗体がヒトTNFαとヒトTNFR2タンパク質の結合を有意に阻害でき、且つヒト化抗体の阻害能力が基本的にヒト-マウスキメラWT抗体の阻害能力と同じであることが分かる。
【0046】
【表7】
【0047】
実施例8 抗TNFR2抗体がヒトTNFR2を高度に発現するCHO細胞上でのTNFR2とTNFαの結合を遮断すること
ヒトTNFR2を高度に発現するCHO安定細胞(実施例4のCHO-TNFR2と同じ)を用いて実験を行った。CHO-TNFR2細胞を消化した後、DPBSで2回洗浄し、Live/Dead(L/D)で染色し(室温で20分間)、その後、1×105細胞/50μL/ウェルでプレートに広げ、染色バッファーで被験抗TNFR2抗体を6μg/mLに希釈して初期濃度とし、3.33倍段階希釈して合計7点の濃度ポイントを設定し、希釈した抗体を50μL/ウェルで播種した細胞に加え、穏やかに吹き混ぜて4℃で30分間インキュベートした。その後、100ng/mLに希釈したヒトTNFα-biotinを100μL/ウェルで加え、穏やかに吹き混ぜて、混合後4℃で30分間インキュベートした。染色バッファーで2回洗浄した後、PE-streptavidin(BioLegend、カタログ番号405204)を100μL/ウェル、0.12μg/mLで加え、4℃で30分間インキュベートした。染色バッファーで2回洗浄した後、150μLで再懸濁し、フローサイトメーターで検出した(Thermo Attune NxT)。抗体濃度を横軸、対応するMFI値を縦軸として抗体の阻害曲線をプロットし、4パラメータフィッティング(GraphPad Prism9)を行い、IC50値を算出した。IC50値が小さいほど、抗体がヒトTNFαとヒトTNFR2の結合を阻害する能力が強いことを示した。ヒト化抗体の遮断効果を、対応するヒト-マウスキメラWT抗体に正規化し、パーセント値が高いほど、ヒト化抗体の阻害効果が良好であることを示した。被験抗体の遮断曲線を図7に、阻害活性を表8に示す。図7及び表8から、すべての被験抗体がTNFαとCHO-TNFR2細胞上でのTNFR2の結合を有意に阻害できることが分かる。
【0048】
【表8】
【0049】
実施例9 FACSによる、TNF(誘導ヒトTreg細胞IκBαの分解に対する抗体の阻害の検出実験
ヒトTreg細胞は、選別kit(Stemcell、カタログ番号:18063)を使用してヒトPBMCから単離し、Dynabeads Human Treg Expander(Gibco、カタログ番号:11129D)によってインビトロで15日間刺激及び増幅を行い、その後個別包装して凍結保存した。インビトロで単離増幅したTreg細胞を取り、一晩回復し、翌日300×gで5分間遠心分離し、AIM-V培地(ブランドGibco、カタログ番号31035025)で培養して計数し、細胞の計数結果に従って細胞密度を6×106細胞/mLに調整し、96ウェルプレートに1ウェルあたり25μLで広げた。すべての被験抗体とanti-Hel対照抗体(それぞれAIM-V培地で40%濃度に希釈し、1μg/mL、10μg/mL、100μg/mLとした)を取った。各濃度の抗体を対応する細胞ウェルに1ウェルあたり25μLで加えた。マルチチャンネルピペットで混合した後、37℃、5%CO2のインキュベーターに入れ、30minプレインキュベートした。AIM-V培地を使用してTNFα(ブランドNovoprotein、カタログ番号C008)を作業濃度の2倍である20ng/mLに希釈し、TNFα活性化を必要とするウェルに50μLのTNFαを、非活性化対照ウェルに50μLのAIM-V培地を、抗体の最終濃度が1倍となり、TNFαの最終濃度が10ng/mLとなるように加え、ピペットで吹き混ぜて、培養プレートを37℃のインキュベーターに入れて10minインキュベートした。インキュベート終了後、培養プレートを取り出し、100μLの予冷したDPBSを加え、4℃、300gで5min遠心分離した。次に、細胞について、1×live/dead violet(予冷したDPBSで500倍希釈)100μLを使用して、氷上で20min反応させた。各ウェルに100μLの染色バッファーを加え、4℃、300gで5min遠心分離した。各ウェルに1×fix-perm buffer(ブランドBD、カタログ番号554714)を100μLずつ加えてよく混ぜ、4℃で30min固定した。固定終了後、各ウェルに100μLの1×perm bufferを加えて固定を停止させ、400gで5min遠心分離し、上清を捨てた。次に、各ウェルに200μLの1×perm bufferを加えて、細胞を2回洗浄した。100μLのIκBα染色液(1×perm bufferで100倍希釈)を実験ウェルに加え、1μLのRat IgG2b kappa Isotype Control抗体を対照ウェルに加え、よく混ぜ、4℃で30minインキュベートした。インキュベート終了後、各ウェルに100μLの1×perm bufferを加えて固定を停止させ、400gで5min遠心分離し、上清を捨てた。次に、各ウェルに200μLの1×perm bufferを加えて、細胞を2回洗浄した。フローサイトメーターで検出した(Thermo Attune NxT)。生細胞中のIκBαlowのパーセント又は全ての生細胞のIκBαのMFIをフローサイトメトリーにより分析した。IκBαlowの割合が低いほど、抗TNFR2抗体がTNFα誘導IκBαの分解を阻害する能力が強くなった。図8の結果から、陰性対照抗体anti-HelはIκBαの発現に影響を及ぼさないが、被験抗TNFR2ヒト化抗体はいずれもTNFα誘導IκBαの分解を阻害することができることが分かる。
【0050】
実施例10 TNFα及びIL-2誘導Treg細胞の増殖に対するTNFR2抗体の阻害
TNFR2抗体の存在下でのTNFα及びIL-2誘導Treg細胞の増殖を測定することにより、TNFα及びIL-2誘導Treg細胞の増殖に対するこの抗体の阻害効果を判断した(Zaragoza B et al.,Nat Med.2016 Jan;22(1):16-7)。インビトロで増輻単離してから凍結保存したTreg細胞を取り、一晩回復し、翌日400×gで5分間遠心分離し、培地で再懸濁して細胞懸濁液を得、計数した。TregをCellTrace Violet cell proliferation kit(Thermo カタログ番号C34557)で染色し、1×107細胞あたり1μLの保存液を用いて1mLの染色液を調製した。37℃で20min染色し、少なくとも5倍量の完全培地で反応を中和し、5min静置し、400×gで5min遠心分離した。培地で細胞を再懸濁して1回洗浄し、再度遠心分離して上清を取った。96ウェルプレートに1ウェルあたり1×105細胞の密度で広げ、1×105細胞あたり50μLの培地の密度で細胞を再懸濁し、96ウェルプレートに移し替えた。抗体の最終濃度が12.5μg/mLになるように、各ウェルに50μLの被験抗体を加え、インキュベーターで30分間インキュベートした。その後、IL-2(最終濃度300IU)及びTNFα(最終濃度50ng/mL)を含む培地50μLと、anti-CD3/CD28 Dynabeads(Gibco、カタログ番号:11129D、beads/Treg細胞比1:20)を含む培地50μLを各ウェルに加え、各ウェルの最終容量を200μLとした。条件毎に2つの平行なウェルを設定し、前記のプレートを混合し、37℃のインキュベーターに入れて3日間培養してFACS検出(Thermo Attune NxT)を行った。TNFα及びIL-2誘導Treg増殖に対する本抗体の阻害効果は、Treg増殖の割合で判断した。その結果を図9に示すが、対照anti-Hel抗体と比較して、すべての抗TNFR2ヒト化抗体は、いずれもTNFα及びIL-2誘導Treg細胞の増殖を効果的に阻害でき、且つ有意差があった。
【0051】
実施例11 Treg機能に対する抗TNFR2抗体の阻害
抗TNFR2抗体を含む条件下でエフェクター(responder)T細胞に対するTreg細胞の阻害機能を測定することにより、Treg細胞の阻害機能に対する抗体の阻害効果を判断した。実験に必要なTreg(CD4+CD25+FoxP3+T細胞)とConventional T細胞(Tcon)エフェクター細胞(CD4+CD25-T細胞)を取り、一晩回復し、翌日400×gで5分間遠心分離し、完全培地(RPMI1640-Glutamax+10%FBS+1×P/S+1×ITS+50μMPMメルカプトエタノール)に再懸濁して細胞懸濁液を得、計数した。Tcon細胞をCellTrace Violet cell proliferation kit(Thermo カタログ番号C34557)で染色し、1×107細胞あたり1μLの保存液を用いて1mLの染色液を調製した。37℃で20min染色し、少なくとも5倍量の完全培地で反応を中和し、5min静置し、400×gで5min遠心分離した。培地で細胞を再懸濁して1回洗浄し、再度遠心分離して上清を捨てた。96ウェルプレートに1ウェルあたり1×105細胞の密度で広げ、1×105細胞あたり50μLの培地の密度で細胞を再懸濁し、50mLの遠心分離管に移し替えた。同時にTreg細胞を準備し、Treg細胞とTcon細胞を1:1の比率で共培養した。Tcon細胞の数に応じて、対応するanti-CD3/CD28 Dynabeads(Gibco、カタログ番号:11129D)を1/10の比率で準備した。1ウェルあたり50μLの容量でTreg及びTconの培地に加えた。抗体の最終濃度が12.5μg/mLになるように、各ウェルに被験抗体を加えた。条件毎に3つの平行なウェルを設定し、前記のプレートを混合し、37℃のインキュベーターに入れて4日間培養してフローサイトメーターで検出を行った。Tcon増殖の割合が高いほど、抗体がTregを阻害する能力が強くなった。阻害結果を図10に示すが、3つの被験抗TNFR2ヒト化抗体は、いずれもTcon細胞に対するTregの阻害効果を有意に阻害し、Tconの増殖を促進することができ、且つ統計的差異を有した。
【0052】
実施例12 FACSによる抗TNFR2抗体媒介抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性の検出
PBMCと凍結保存したTreg細胞を完全培地(RPMI1640-Glutamax+10%FBS+1×P/S+1×ITS+50μMPMメルカプトエタノール)で1日前に培養し、そのうち、PBMCはIL-2を100IU/mL添加する必要があった。実験当日、分離キット(Stemcell、カタログ番号17955)の要件に従ってPBMCからNK細胞を分離し、完全培地(IL-2を含まない)で0.8×106/mLの密度で再懸濁した。標的細胞であるTreg細胞又はCHO-TNFR2細胞をCell Trace violet試薬で標識し、標識後に密度を0.4×106/mLに調整した。被験抗体を完全培地で最終濃度の4倍に段階希釈し、後で使用するようにした。実験用プレートの分布図に従って標的細胞を1ウェルあたり50μLで細胞プレートに播種し、希釈した薬物を対応するウェルに広げ、標的細胞とともに37℃で30分間インキュベートした。インキュベート終了後、エフェクター細胞を添加する必要のあるウェルにエフェクター細胞懸濁液を100μL添加し、エフェクター細胞を添加する必要のないウェルに培地を100μL補充し、37℃で4hインキュベートした。反応終了後、各ウェルに1μLのPI色素を加え、機器で検出した。標的細胞におけるPIの陽性の割合が高いほど、より顕著なADCC効果を示した。ADCC実験の結果を図11に示すが、anti-Hel陰性対照抗体には作用標的がないため、ADCC殺傷効果がなく、3つの被験ヒト化抗体は、標的細胞であるTreg又はCHO-TNFR2細胞の両方でいずれもADCC活性を示した。
【0053】
実施例13 TNFR2トランスジェニックヒト化マウス(TNFR2 HuGEMM)におけるhTNFR2及びmTNFR2発現の検出
中美冠科生物技術有限公司との協力により、CRISPR/Cas9技術を用いて相同組換えにより、hTNFRSF1B-WPRE-PA発現枠をTnfrsf1b遺伝子のexon2部位にノックインし、Tnfrsf1b遺伝子がhTNFRSF1B-WPRE-PAにノックインされたヘテロ接合性BALB/cマウスを得て、次に繁殖によりヒトTnfrsf1b(TNFR2)遺伝子を発現するホモ接合性トランスジェニックマウス(TNFR2 HuGEMM)を得た。6~8週齢の雌BALB/cマウス(北京維通利華実験動物技術有限公司から)及びTNFR2 HuGEMMマウスから末梢血を採取し、ACK(Gibco、カタログ番号A1049201)を使用して赤血球を除去し、FACSの免疫表現型検査を実施し、マウス末梢血中のCD4+T細胞、CD8+T細胞、及びCD4+CD25+Foxp3+Treg細胞におけるmTNFR2及びhTNFR2の発現を検出し、すべての細胞集団のゲーティングはいずれもFMO対照を基準とした(図12A)。その結果、TNFR2 HuGEMMマウスはmTNFR2を発現せず、CD4+T細胞、CD8+T細胞、Treg細胞の表面におけるhTNFR2の発現プロファイル/発現レベルはBALB/cバックグラウンドマウスのmTNFR2と一致し、TNFR2 HuGEMMマウスがhTNFR2によるmTNFR2の置換を完了したことが示された(図12B~12C)。
【0054】
実施例14 TNFα誘導TNFR2 HuGEMMのTreg細胞増殖に対する抗TNFR2抗体の阻害
TNFR2抗体の存在下でTNFα誘導TNFR2 HuGEMMマウスのTreg細胞増殖を測定することにより、遺伝子改変後のTNFR2 HuGEMMマウスにおいてTNFR2シグナル伝達経路と対応する機能が保存されていることが確認され、改変後のトランスジェニックマウスが候補抗TNFR2抗体の体内薬効評価に使用できることが確保された。TNFR2 HuGEMMマウス5匹と野生型Balb/cマウス5匹を用意し、安全キャビネット内でマウスの脾臓を無菌的に取り出して粉砕し、粉砕した細胞懸濁液をすべて15mL遠心分離管に移し替えて遠心分離(320g、7分間、4℃)した。上清を捨てた。約2~3mLのACK赤血球溶解バッファー(Gibco、カタログ番号A1049201)を加えてよく混ぜ、赤血球が完全に溶解するまで3~5分間室温で放置し、6~8mLのRPMI1640培地を加えて溶解を停止させ、反転してよく混ぜた。遠心分離(200g、8分間、4℃)した。遠心分離後、上清を捨て、EasySep bufferで細胞を再懸濁し、40μmメンブレンフィルタで細胞を濾過し、細胞の計数を行った。次に、Mouse CD4+CD25+Regulatory T kit(ブランドStemcell、カタログ番号18783A)の説明書に従って、Treg細胞を選別した。選別したTreg細胞をCellTrace Violet cell proliferation kit(Thermo カタログ番号C34557)で染色し、1×107細胞あたり1μLの保存液を用いて1mLの染色液を調製した。37℃で20min染色し、少なくとも5倍量の完全培地で反応を中和し、5min静置し、400×gで5min遠心分離した。培地で細胞を再懸濁して1回洗浄し、再度遠心分離して上清を取った。96ウェルプレートに1ウェルあたり1×105細胞の密度で広げ、1×105細胞あたり50μLの培地の密度で細胞を再懸濁し、96ウェルプレートに移し替えた。各ウェルに50μLの被験抗体(3つのヒト化TNFR2抗体、1つの抗マウスTNFR2置換抗体Surrogate antibody clone#75-54.7(BioXcell、BE0247)及びアイソタイプ対照抗体であるanti-Hel-mIgG1を含む)を加え、抗体の最終濃度が10μg/mLであり、インキュベーターで30分間インキュベートした。その後、マウスIL-2(ブランド義翹神州、カタログ番号51061-MNAE、最終濃度300IU)及びマウスTNFα(ブランド義翹神州、カタログ番号20180502、最終濃度50ng/mL)を含む培地50μLと、Dynabeads mouse T-activator CD3/CD28(Gibco、カタログ番号:11452D、beadsとTreg細胞比1:20)を含まないか又は含む培地50μLを各ウェルに加え、各ウェルの最終容量を200μLとした。同時に、Treg細胞+マウスIL-2のみ、Treg細胞+マウスTNFαのみ、及びTreg細胞+マウスIL-2とヒトTNFαの対照ウェルを設定した。条件毎に2つの平行なウェルを設定し、前記のプレートを混合し、37℃のインキュベーターに入れて3日間培養してFACS検出(Thermo Attune NxT)を行った。TNFα誘導Treg増殖に対する本抗体の阻害効果は、Treg増殖の割合で判断した。図13Aは、TNFR2 HuGEMMマウスのTreg細胞がヒトTNFR2を発現するがマウスTNFR2を発現しないことと、WT Balb/cマウスのTreg細胞がマウスTNFR2のみを発現することを示す。図13B及び13Cは、システムにDynabeads mouse T-activator CD3/CD28アゴニストが存在するかどうかに関係なく、mIL-2及びmTNFα又はhTNFαを添加すると、TNFR2 HuGEMM Tregの増殖が著しく増加したことを示すが、TNFR2 HuGEMMマウスの遺伝子改変後にTNFR2媒介シグナルが保存されていると考えられる。一方、WT balb/cでは、mIL-2とmTNFαの添加でのみ増殖が増加したが、hTNFαは増殖に影響を与えなかったことから、hTNFαはmTNFR2に結合しないことが示唆された。TNFR2 HuGEMM Tregについて、mIL-2とmTNFαの存在下で抗TNFR2ヒト化抗体を添加すると、陰性対照anti-Hel-mIgG1と比較して、001-Hu3-mIgG1及び219-Hu1-mIgG1はTNFR2 HuGEMM Tregの増殖を有意に阻害することができた、且つ統計的差異(***p<0.001)を有する一方で、抗マウスTNFR2置換抗体TR75-54.7には阻害効果がなく、WT Balb/c Tregについて、mIL-2とmTNFαの存在下で抗TNFR2抗体を添加すると、陰性対照Hamster IgGと比較して、抗マウスTNFR2置換抗体TR75-54.7はWT Balb/c Tregの増殖を有意に阻害することができ、且つ統計的差異(*** p<0.001)を有する一方で、001-Hu3-mIgG1及び219-Hu1-mIgG1には阻害効果がなかった。
【0055】
実施例15 TNFR2 HuGEMMマウス腫瘍モデルにおける抗TNFR2抗体の薬効評価
百奥賽図基因生物技術有限公司との協力により、同社がCRISPR/Cas9に基づいて開発したEGEシステムを使用して、遺伝子ノックアウトを目的としてマウスCT26細胞株のmTNFR2遺伝子のExon2及びExon3の一部をPuroR cassetteに置換し、マウス内因性mTNFR2の発現を破壊し、そして、マウス細胞内領域、及び膜貫通領域をヒト細胞外領域キメラタンパク質のCDSに挿入し、hTNFR2遺伝子のみを発現するCT26細胞株(CT26-hTNFR2 KI)を作製した。TNFR2 HuGEMMを使用して、hTNFR2遺伝子をノックインしたCT26-hTNFR2 KI細胞株結腸癌動物モデルを確立し、抗TNFR2抗体の薬効実験を行った。
セルバンクからCT26-hTNFR2 KI細胞を1個取り出し、完全1640培地(1640(Gibco、61870-036)+10%FBS(Gibco、10099-141C)+1%P/S(Gibco、15140-122)+1%NEAA(Gibco、11140-050)+1%Sodium Pyruvate(Gibco、11360-070)+16μg/mL puromycin(Gibco、A11138-03))で細胞を回復させ、回復した細胞を細胞培養フラスコに入れ(フラスコの壁に細胞の種類、世代、日付、培養者の名前などを記載)、CO2インキュベーター(インキュベーター温度37℃、CO2濃度5%)で培養し、細胞が培養フラスコの底部の80%~90%を覆った後、継代し、継代後の細胞をCO2インキュベーターで培養を続け、細胞数が体内薬効実験の要件を満たすまでこのプロセスを繰り返し、その後、細胞懸濁液を調製し、全自動セルカウンター(BECKMAN、Vi-Cell XR)で計数し、計数結果に従い、PBS(HyClone、SH30256.01)溶液で細胞を再懸濁し、細胞懸濁液(密度2×106/mL)を調製した。前記の細胞懸濁液をマウスの右側皮下に100μL/匹で接種し、腫瘍体積が約100mm3に達した時点で、腫瘍体積が中程度のマウスを選択して群に入れ、腫瘍体積に応じてEXCELの乱数に基づいた無作為群分け法を用いて、動物を8つの実験群に割り当て、群分けを表9に示し、同日(Day 0と表記)から投与を開始し、投与量は10mL/kg、溶媒はPBSとし、3日に1回、腹腔内注射により、合計4回投与した。腫瘍体積と体重を週3回、決まった時間に測定した。腫瘍体積の計算式:腫瘍体積(mm3)=長さ(mm)×幅(mm)×幅(mm)/2、腫瘍抑制率の計算式:TGI(%)=[1-T/C]×100%、いずれもTwo-way ANOVAの統計的手法を用いて実験データを分析した。投与後11日目に、対照群と比較して、実験した抗TNFR2抗体群の各用量群は、PBS対照群と比較していずれも統計的差異を有し、有効性は明らかであり、また、同じ抗体の異なる用量群間にも用量依存関係があり、同時に、陽性薬anti-mPD-1(BioXcell、BE0146)の10mpkでの有効性は、3mpk(mg/kg)の用量で実験した抗TNFR2抗体219-Hu1-mIgG2aと001-Hu3-mIgG2aの有効性と同等であり、これらの結果から、実験した抗TNFR2ヒト化抗体がインビボで有意な腫瘍増殖阻害効果を有し、用量依存関係があることを示した(図14A及び図14B、表10)。同時に、各群の実験動物は、投与期間中に活動及び摂食の状態が良好であり、体重と体重変化率はいずれもある程度増加したから、実験した抗TNFR2ヒト化抗体のインビボでの安全性リスクが低いことを示した(図15A~D)。
【0056】
【表9】
【0057】
【表10】
【0058】
実施例16 ヒトPBMC免疫再構成ヒト化マウス結腸腫瘍モデルにおける抗TNFR2抗体の薬効評価
7~9週齢のNOG雌マウス(北京維通利華実験動物技術有限公司から購入)を選択し、皮下に3.5×106個のHT-29細胞を接種し(実験0日目とする)、当日に腹腔内に7×106個のヒト末梢血単核細胞(PBMC、donor#193及びdonor#272、中美冠科生物技術(太倉)有限公司によりSOP-CP-042に従ってスクリーニングしたドナーの全血から抽出)を注射し、PBMCヒト化結腸癌モデルを確立した。腫瘍体積が95mm3に達した時点で、腫瘍体積が中程度のマウスを選択して群に入れ、腫瘍体積に応じてStudy DirectorTM(バージョン番号3.1.399.19、供給者Studylog System,Inc.、S.San Francisco、CA、USA)を用いて無作為に群分けして、動物を5つの実験群(G1はPBS対照群、G2は対照抗体anti-Hel hIgG1群、G3は抗TNFR2抗体001-Hu3-hIgG1群、G4は抗TNFR2抗体219-Hu1-hIgG1群、G5はKeytruda群)に割り当て、2つのドナーで各群に5~7匹が割り当てられ、体内薬力学の研究に使用された。群分け(13日目)の同日に投与を開始した。投与量はいずれも10mg/kgで、週2回、腹腔内注射で投与した。腫瘍体積と体重を週2回、決まった時間に測定した。腫瘍体積(tumor volume、TV)の計算式は、V=1/2×a×b2である。そのうち、aとbはそれぞれ長さ、幅を示す。donor#193において、腫瘍接種後29日目に、対照抗体群と比較して、219-Hu1群の腫瘍成長は有意に阻害され、統計的差異を有し(p<0.0001)、他の群は対照抗体群と比較して統計的差異がなかった。donor#193において、抗TNFR2抗体219-Hu1が有意な有効性を有することを示した(図16A)。donor#272において、腫瘍接種後29日目に、対照抗体群と比較して、001-Hu3、219-Hu1、及びKeytruda群の腫瘍成長はすべて有意に阻害され、統計的差異を有した(p<0.0001)。donor#272において、Keytrudaと抗TNFR2抗体001-Hu3、219-Hu1はいずれも有効性を有することを示した(図16B)。
実験中、対照群と投与群のマウスはいずれも体重が減少し、且ついずれもマウスが死亡し、獣医の剖検結果によると、マウスはPBMCの注射によって引き起こされた宿主免疫拒絶反応(GvHD)が原因で死亡したと推測された。被験薬001-Hu3、219-Hu1及び陽性薬Keytrudaの被験用量10mg/kgでは、動物は明らかな薬物毒性を示さず、治療に耐えることができた(図16C~D)。
最後の投与から48h後に、それぞれG2対照抗体群、G3抗TNFR2抗体001-Hu3群、及びG4抗TNFR2抗体219-Hu1群のマウスを選択して、腫瘍浸潤免疫細胞(TIL)を単離し(Miltenyi、カタログ番号130-095-929)、FACSの免疫表現型検査を実施し、そして123 count eBeads(eBioscience、カタログ番号01-1234-42)を絶対細胞計数のために加え、すべての細胞集団のゲーティングはいずれもFMO対照を基準とした(図17A)。実験結果は、対照抗体群と比較して、donor#193抗TNFR2抗体治療群のCD4+T細胞の割合が減少したが、数に有意差はなく、donor#272抗TNFR2抗体治療群のCD4+T細胞の割合と数に有意差はなく(図17B~C、E~F)、対照抗体群と比較して、donor#193抗TNFR2抗体治療群のCD8+T細胞の割合が増加したが、数に有意差はなく、CD8+T細胞の割合に有意差はなく、しかし、001-Hu3抗体治療群のCD8+T細胞の数は有意に増加し(図17B~C、E~F)、2つのdonorの結果は、抗TNFR2抗体治療群のTreg(CD4+CD25+Foxp3+細胞)細胞の割合と数が対照抗体群よりも有意に低く、有意差があり(図17B~C、E~F)、同時に、抗TNFR2抗体治療群のTreg細胞数に対するCD8+T細胞の総数の比率(CD8+T/Treg)も、対照抗体群よりも有意に高く、統計的差異を有した(図17D、G)ことを示した。以上のデータから、抗TNFR2抗体の投与により、TILのCD8+T/Treg比を有意に増加させ、腫瘍の成長を抑制できることが分かる。
【0059】
実施例17 TNFR2ヒト化BALBcマウスモデルにおける219-Hu1-hIgG1モノクローナル抗体と抗マウスPD-L1モノクローナル抗体の併用効果の検出
ヒトTNFR2遺伝子改変CT26.1C03結腸癌細胞(hTNFR2 KI-CT26)をヒトTNFR2発現遺伝子改変BALB/cマウス(TNFR2 HuGEMM)に皮下接種する動物モデルにより、219-Hu1-hIgG1抗体と抗マウスPD-L1(anti-mPD-L1、BioXcell、BE0101)の併用効果を評価した。マウスの右側皮下に5×105のCT26.1C03結腸癌細胞を接種した(実験0日目とする)。腫瘍体積が100mm3に達した時点で、腫瘍体積が中程度のマウスを選択して群に入れ、腫瘍体積に応じてEXCELの乱数に基づいた無作為群分け法を用いて、動物を5つの実験群(G1は対照群、G2はanti-mPD-L1 10mg/kg抗体群、G3は219-Hu1-hIgG1 10mg/kg抗体群、G4は219-Hu1-hIgG1 30mg/kg抗体群、G5は219-Hu1-hIgG1 10mg/kg+anti-mPD-L1 10mg/kg抗体併用群)に割り当て、各群に10匹の動物が割り当てられ、体内薬力学の研究に使用され、群分け(10日目)の同日に投与を開始した。週2回、腹腔内注射で投与した。腫瘍体積と体重を週3回、決まった時間に測定した。
腫瘍接種後18日目(即ち、投与8日目)に、対照群(G1)と比較して、G2 anti-mPD-L1 10mg/kg群、G3 219-Hu1-hIgG1 10mg/kg群及びG4 219-Hu1-hIgG1 30mg/kg群のTGITV値は、それぞれ35.1%、28.2%、63.8%であり、腫瘍体積の増加は、これら3つの治療群で有意に抑制され(G2 vs.G1、p値<0.0001;G3 vs.G1、p値=0.0002;G4 vs.G1、P値<0.0001)、219-Hu1-hIgG1 10mg/kg群とanti-mPD-L1 10mg/kg群のTGITV値は同等であり、しかし、219-Hu1-hIgG1 30mg/kg群のTGITV値は219-Hu1-hIgG1 10mg/kg群とanti-mPD-L1 10mg/kg群よりも有意に高かった(G2 vs.G4、P値=0.0002;G3 vs.G4、P値<0.0001)。前記の結果は、219-Hu1-hIgG1が10~30mg/kgの用量範囲で用量依存的な効果を示し、用量の増加とともに腫瘍体積が減少したことを示す。詳細は、表11及び図18に示す。
腫瘍接種後18日目に、対照群(G1)と比較して、G5 219-Hu1-hIgG1 10mg/kg+anti-mPD-L1 10mg/kg併用群では、腫瘍体積の増加も有意に抑制され(TGITV値=66.5、vs.G1、P値<0.0001)、そして、G5 219-Hu1-hIgG1 10mg/kg+anti-mPD-L1 10mg/kg併用群の平均腫瘍体積も、G3 219-Hu1-hIgG1 10mg/kg及びG2 anti-mPD-L1 10mg/kgの単剤群よりも有意に小さく(TGITV G5 vs.G3 vs.G2=66.5% vs.28.2% vs.35.1%;P値G5 vs.G2<0.0001、P値G5 vs.G3<0.0001)、これは、219-Hu1-hIgG1抗体とanti-mPD-L1抗体を併用すると、2つの単剤群と比較して、腫瘍成長をより抑制でき、統計的差異を有すること(****、p<0.0001、単剤群vs.併用群)を示した。具体的には表11、図18に示す。
【0060】
【表11】
【0061】
注記:
a.平均値±SD。
b.相対腫瘍増殖率T/C%=TRTV/CRTV×100%(TRTV:治療群の平均RTV、CRTV:陰 性対照群の平均RTV)。相対腫瘍体積(relative tumor volume、RTV )は、腫瘍測定の結果に従って計算され、計算式はRTV=Vt/V0であり、そのうち、V0は 群分けして投与した時(即ちPO-D0)に測定した腫瘍体積であり、Vtはある時に測定した腫 瘍体積である。
c.TGITV(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100%計算(Ti:投与i日目の 治療群の平均腫瘍体積、T0:投与0日目の治療群の平均腫瘍体積、Vi:投与i日目の溶媒対照 群の平均腫瘍体積、V0:投与0日目の溶媒対照群の平均腫瘍体積)。
d.データは、Two-way ANOVAによって分析され、vs.G1 Veh、p<0.05は 有意差があることを意味し、***:p<0.001、****:p<0.0001。
e.データは、Two-way ANOVAによって分析され、vs.G5併用群、p<0.05は有 意差があることを意味し、****:p<0.0001。
f.データは、Two-way ANOVAによって分析され、vs.G4 219-Hu1-hIgG1 30mpk、p<0.05は有意差があることを意味し、***:p<0.001、****:p<0.0001。
【0062】
各群の実験動物は、投与期間中に、活動及び摂食の状態が良好であり、体重には一定の程度の上昇が認められた。実験期間中の観察において、各群には動物の精神状態、活動状態、及び体表観察の悪化はいずれも認められず、動物は薬物毒性を示さず、安全性は良好であり、219-Hu1-hIgG1抗体及び219-Hu1-hIgG1+anti-mPD-L1抗体の併用は高い安全性を有することを示した。詳細は、図19~20及び表12に示す。
【0063】
【表12】
【0064】
腫瘍接種後18日目に、各群の動物を安楽死させた後、腫瘍を分離して重量を測定し、対照群(G1)と比較して、G2 anti-mPD-L1 10mg/kg群の腫瘍重量は有意に減少し(TGITW=37.3%、P値0.0087)、G3 219-Hu1-hIgG1 10mg/kg群の腫瘍重量は対照群よりも低かったが、統計的差異はなく(TGITW=25.9%、P値0.0830)、G4 219-Hu1-hIgG1 30mg/kg群の腫瘍重量も対照群よりも有意に低く(TGITW=47.9%、P値0.0013)、G5 219-Hu1-hIgG1 10mg/kg+anti-mPD-L1 10mg/kg併用群の腫瘍重量も対照群よりも有意に低く(TGITW=43.0%、P値0.0042)、219-Hu1-hIgG1の2つの用量での腫瘍重量は用量依存的な効果を示し、腫瘍重量は用量の増加とともに減少し、併用群の腫瘍重量は各単剤群(G2、G3)の腫瘍重量よりも小さかったが、統計的差異はなかった(図21、表13)。
【0065】
【表13】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【配列表】
0007635401000001.app