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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】台車および搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/137 20060101AFI20250217BHJP
   H05K 13/02 20060101ALI20250217BHJP
【FI】
B65G1/137 A
H05K13/02 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023546671
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2021033326
(87)【国際公開番号】W WO2023037498
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 重義
(72)【発明者】
【氏名】川合 英俊
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-091770(JP,A)
【文献】特開平08-091155(JP,A)
【文献】特開平09-011824(JP,A)
【文献】特開平05-265551(JP,A)
【文献】国際公開第2021/144866(WO,A1)
【文献】特開平05-341840(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090108(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00- 1/20
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を載せる荷台および走行用の車輪を有する台車本体と、
前記台車本体の下側に進入した状態の搬送車に対して前記台車本体の左右方向の位置を位置決めするとともに、前記搬送車に対する前記台車本体の姿勢変化を許容しつつ、前記搬送車に対して前記台車本体を牽引可能に連結する連結部と、
前記台車本体の前後方向の正面に設けられ、前記台車本体が前記搬送車に牽引されて搬送目標まで移動するときに、前記搬送目標に設けられた基準面に対して左右方向に離隔した少なくとも二点で当接することにより、前後方向の所定位置に前記台車本体を位置決めするとともに、前記基準面に対して前記台車本体を正対させるバンパー部と、
を備える台車。
【請求項2】
前記台車本体に対して前記バンパー部を前後方向に平行移動可能に支持する支持部と、
前記台車本体に対して前記バンパー部を前方に向けて付勢する弾性部材と、を備える、請求項1に記載の台車。
【請求項3】
前記バンパー部の左右方向の対称位置に配置される複数組の前記支持部および前記弾性部材を備える、請求項2に記載の台車。
【請求項4】
前記バンパー部は、前記搬送車が前記台車本体を牽引して前記搬送目標まで移動したときに、前記弾性部材によって所定の押し付け力で前記基準面に押し付けられる、請求項2または3に記載の台車。
【請求項5】
前記バンパー部が前記基準面に当接したことを検出する検出部を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の台車。
【請求項6】
搬送物を載せる荷台および走行用の車輪を有する台車本体と、
搬送車に対して前記台車本体を牽引可能に連結する連結部と、
前記台車本体に設けられ、搬送目標に設けられた基準面に当接可能なバンパー部と、
前記バンパー部が前記基準面に当接したことを検出する検出部と、を備え
前記バンパー部は、自転自在であって前記基準面に当接可能なコロ部材をもつ、
台車。
【請求項7】
前記連結部は、
前記台車本体の下面および前記搬送車の上面の一方に垂直に設けられた連結ピンと、
前記台車本体の前記下面および前記搬送車の前記上面の他方に設けられ、左右方向および前後方向の少なくとも一方向において、所定の遊び寸法の範囲内で前記連結ピンを相対移動可能に係止する係止部材と、を有して、
前記搬送車に対する前記台車本体の水平方向の姿勢変化を許容する、
請求項1~のいずれか一項に記載の台車。
【請求項8】
前記係止部材を係止位置と非係止位置とに切換える切換機構を有し、
前記係止部材が前記係止位置にあるときは、前記台車本体の下側からの前記搬送車の退出を許容せず、前記係止部材が前記非係止位置にあるときは、前記台車本体の下側からの前記搬送車の退出を許容する、請求項に記載の台車。
【請求項9】
前記連結部は、前記搬送車に対する前記台車本体の鉛直方向の姿勢変化を許容する、請求項1~のいずれか一項に記載の台車。
【請求項10】
搬送物を載せる荷台および走行用の車輪を有する台車本体と、
搬送車に対して前記台車本体を牽引可能に連結する連結部と、
前記台車本体に設けられ、搬送目標に設けられた基準面に当接可能なバンパー部と、
前記バンパー部が前記基準面に当接したことを検出する検出部と、を備え
前記荷台は、
前記搬送物を正面から前後方向に積み降ろしする積み降ろし部と、
前記搬送車の給電コネクタに嵌合して、前記積み降ろし部を駆動する電力を受け取る受電コネクタと、を有する、
台車。
【請求項11】
前記台車本体に設けられ、前記搬送目標に設けられた固定側通信部と正対して通信を行う可動側通信部を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の台車。
【請求項12】
前記搬送目標は、前記搬送物を収容する複数の収容位置、および前記収容位置の各々に対応して設けられた複数の前記固定側通信部を備え、
前記可動側通信部は、いずれかの前記固定側通信部に正対して通信が可能となることにより、前記台車本体が正対する前記収容位置を確認する、
請求項11に記載の台車。
【請求項13】
前記可動側通信部および前記固定側通信部は、前記基準面に交差する方向に伝搬する光信号を送受信する、請求項11または12に記載の台車。
【請求項14】
請求項1~1のいずれか一項に記載された台車と、
前記台車本体の下側に進入可能な前記搬送車と、
を備える搬送装置。
【請求項15】
前記搬送車は、前記台車を牽引して前記搬送目標まで移動させるときに、前記基準面に正対する方向から減速しつつ接近して、通常時の走行速度よりも低速度で前記バンパー部を前記基準面に当接させる、請求項14に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、搬送物を載せて移動可能な台車、およびこの台車を含んで構成される搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物流や生産の省力化を推進するために、物流倉庫内や生産工場内で搬送物を搬送する無人搬送車の適用が進められている。また、最大積載重量を超過した搬送物や大型で不安定な搬送物などに対応するために、搬送物を載せた台車を牽引しながら走行する無人搬送車が用いられる。この種の牽引タイプの台車および搬送車の一技術例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された部品搬送装置は、トレイが搭載される搭載部および車輪を有するカート(台車)と、連結機構を介してカートと相対移動可能に連結される無人搬送車と、を備える。さらに、相対移動可能な連結機構の一実施形態として、カートに設けられた円形の開口と、無人搬送車に弾性部材を介して設けられたシャフトとを二組備え、開口の内部でシャフトが移動する構成が開示されている。これによれば、多数の部品を保持するトレイを搬送して、部品を適切に管理できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-91770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された部品搬送装置では、無人搬送車の方向転換走行や弾性部材の伸縮などに起因して開口とシャフトの相対位置関係が変化し、カートと無人搬送車の位置関係や姿勢(向き)が一致しない状態で走行することが生じ得る。これによると、無人搬送車が正規の停止位置に正規の姿勢で停止しても、カートの位置や姿勢がずれる場合が発生する。この場合、カート上のトレイは、位置や姿勢のずれにより積み降ろしに支障が生じるおそれがある。
【0006】
それゆえ、本明細書では、停止するときの位置および姿勢を高い精度で管理することができる台車、および、この台車を含んで構成される搬送装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、搬送物を載せる荷台および走行用の車輪を有する台車本体と、前記台車本体の下側に進入した状態の搬送車に対して前記台車本体の左右方向の位置を位置決めするとともに、前記搬送車に対する前記台車本体の姿勢変化を許容しつつ、前記搬送車に対して前記台車本体を牽引可能に連結する連結部と、前記台車本体の前後方向の正面に設けられ、前記台車本体が前記搬送車に牽引されて搬送目標まで移動するときに、前記搬送目標に設けられた基準面に対して左右方向に離隔した少なくとも二点で当接することにより、前後方向の所定位置に前記台車本体を位置決めするとともに、前記基準面に対して前記台車本体を正対させるバンパー部と、を備える台車を開示する。
【0008】
また、本明細書は、上記した台車と、前記台車本体の下側に進入可能な前記搬送車と、を備える搬送装置を開示する。
【発明の効果】
【0009】
開示した台車や搬送装置において、台車本体は、連結された搬送車に対して左右方向の位置が位置決めされるが、搬送車に対する姿勢(向き)が変化し得る。それでも、台車が搬送車に牽引されて搬送目標まで移動するときに、バンパー部の左右方向に離隔した少なくとも二点が基準面に対して当接することにより、台車本体は、前後方向の所定位置に位置決めされ、かつ基準面に対して正対する姿勢となる。したがって、台車が停止するときの位置および姿勢を高い精度で管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の台車を含んで構成される搬送装置の斜視図であり、搬送物を載せた状態が示されている。
図2】実施形態の台車の単体斜視図である。
図3】搬送装置を構成する搬送車の単体斜視図である。
図4】連結部の構成を示す部分透視斜視図である。
図5】台車側の受電コネクタおよび搬送車側の給電コネクタを示す部分斜視図である。
図6】搬送装置の正面図である。
図7】搬送装置の右側面図である。
図8】位置決め部を構成するバンパー部、支持部、弾性部材、および検出部を説明する部分斜視図である。
図9】バンパー部が基準面に当接したことを検出部が検出している状態を示す部分斜視図である。
図10】搬送装置が搬送目標まで走行した状況を示す斜視図である。
図11】固定側通信部および可動側通信部の構成および機能を模式的に説明する平面図である。
図12】台車と搬送車の姿勢が相違して、バンパー部の左前端が基準面に当接したときの作用を模式的に説明する平面図である。
図13】コロ部材をもつバンパー部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.搬送装置1の概要
まず、実施形態の台車2を含んで構成される搬送装置1の概要について、図1を参考にして説明する。搬送装置1は、台車2および搬送車3を含んで構成される。図1の右上の矢印に示されるように、搬送装置1、台車2、および搬送車3の前後左右を便宜的に定める。台車2および搬送車3は、前後方向に延びる中心線に対して概ね左右対称に構成される。台車2は、連結部4(詳細後述)によって搬送車3に連結される。搬送車3は、台車2の下側に後方から進入し、連結された台車2を牽引して移動させ、台車2の後方に退出する。
【0012】
搬送装置1は、複数の搬送目標の間で搬送物Cを搬送する。搬送物Cとして、後側に開口部をもつ収納ケースを例示することができる。この搬送物C(収納ケース)は、開口部から内部に収納する部材の点数が多い場合に重量物となり、搬送車3の最大積載荷重を超過する場合がある。したがって、搬送装置1は、搬送物Cを載せた台車2を搬送車3が牽引する方法により、搬送物Cを搬送する。また、搬送目標として、搬送物Cを収容する収容装置8(詳細後述)を例示することができる。
【0013】
2.台車本体20
実施形態の台車2は、台車本体20、連結部4、および位置決め部5などで構成される。図2等に示されるように、台車本体20は、荷台21、左右の側面部22、左右の脚部23、2個の前車輪24、および2個の後車輪25などで構成される。また、荷台21には、連結部4の一部、位置決め部5、および可動側通信部(71、72)が配置される(これらについては後で別途説明する)。荷台21は、搬送物Cを載せる部位である。荷台21は、平面視で概ね長方形に形成され、床面から離隔して水平に配置される。荷台21は、その上面に積み降ろし部6を有する。
【0014】
積み降ろし部6は、搬送物Cを荷台21の正面から前後方向に積み降ろしする。積み降ろし部6は、主ローラ61、6個の駆動ローラ62、ガイドローラ63、係止機構64、操作パネル66、および図略の駆動モータなどで構成される。3種類のローラは、左右方向に延在する円柱状または円筒状の部材であり、中心軸の回りに自転可能に支持されている。荷台21の前側から後側に向かって、ガイドローラ63、3個の駆動ローラ62、主ローラ61、および3個の駆動ローラ62が記載順に配置される。
【0015】
主ローラ61は、駆動モータの正回転および逆回転によって駆動され、正方向および逆方向に自転する。6個の駆動ローラ62は、図略の伝達ベルトによって主ローラ61に連結され、主ローラ61と同じ回転方向に同じ回転速度で同期して自転する。ガイドローラ63は、駆動力が付与されず、フリーで自転することができる。主ローラ61および駆動ローラ62の正方向の自転により搬送物Cが積まれ、逆方向の自転により搬送物Cが降ろされる。駆動モータの始動および停止の制御、ならびに回転方向の制御は、図略の台車制御部から行われる。
【0016】
係止機構64は、最後部の駆動ローラ62の後方に配置される。係止機構64は、係止フック65を用いて積まれた搬送物Cを係止する。係止フック65は、その前側が上方に屈曲するとともに、弾性部材を用いて上下方向に揺動可能に支持される。搬送物Cが積まれるとき、係止フック65は、一旦下降してから上昇することにより、搬送物Cの後端に設けられた被係止部を自動的に係止する。または、係止フック65は、搬送物Cの底部に設けられた被係止孔に自動的に嵌入する。一方、搬送物Cが降ろされる直前に、係止フック65は、図略の電磁ソレノイドによって下降駆動され、搬送物Cの係止を解除する。電磁ソレノイドは、台車制御部から制御される。
【0017】
上記したように、積み降ろし部6の積み降ろし動作は、主に台車制御部からの制御によって自動で行われる。一方、荷台21の後部に配置された操作パネル66は、積み降ろし部6に係る一部の手動操作に用いられる。例えば、操作パネル66は、積み降ろし部6がエラー停止した場合のエラー解除操作や、積み降ろし部6の非常停止操作に用いられる。積み降ろし部6が安定した積み降ろし動作を行うために、台車2は、搬送目標ごとに設定された停止位置に正確に停止し、かつ搬送目標に正対することが重要となる。
【0018】
左右の側面部22は、荷台21の左縁および右縁から下方に延びるように設けられる。荷台21の下側の左右の側面部22の間に、搬送車3が進入する空間が区画される。側面部22の各々の下側に、前後方向に延在する左右の脚部23が設けられる。脚部23の前側下部に走行用の前車輪24が設けられ、脚部23の後側下部に走行用の後車輪25が設けられる。合計で4個の前車輪24および後車輪25は、走行方向が可変の自在車輪である。また、2個の後車輪25には、ストッパ26が付加されている。
【0019】
荷台21は、さらに受電コネクタ27を有する。受電コネクタ27は、図5に示されるように、荷台21の底板45の上面の後右側に設けられる。受電コネクタ27は、搬送車3側の給電コネクタ37に嵌合される。給電コネクタ37は、電源ケーブル38を用いて搬送車3が内蔵する図略のバッテリに接続されている。したがって、受電コネクタ27は、給電コネクタ37に嵌合して、積み降ろし部6、台車制御部、および電磁ソレノイドを駆動する電力を搬送車3側のバッテリから受け取ることができる。これによれば、台車2は、バッテリが不要となり、軽量化が実現される。
【0020】
3.搬送車3
搬送車3は、図3等に示されるように、車両本体31、2個の駆動車輪32、2個の前車輪34、2個の後車輪35、操作パネル36、前述した給電コネクタ37、テープ検出部39、および図略の走行モータなどで構成される。また、搬送車3は、連結部4の残部が配置される(これについては後で別途説明する)。車両本体31は、概ね前後方向に長い直方体形状で、平面視で四隅に丸みをもつ形状に形成されている。車両本体31は、床面からわずかに離隔して水平に配置される。
【0021】
2個の駆動車輪32は、車両本体31の下側の前後方向の中間位置に、左右方向に並んで配置される(図6図7参照)。駆動車輪32の各々は、走行モータの正回転および逆回転によって駆動される。2個の駆動車輪32は、互いに異なる回転速度や、互いに異なる回転方向での回転が可能となっている。これにより、搬送車3の前進、後退、および方向転換が自在とされる。走行モータの始動、停止および回転方向の制御、ならびに走行モータが出力する走行駆動力の調整は、図略の搬送車制御部から行われる。当然ながら、走行駆動力の増減にしたがい、駆動車輪32の回転速度および搬送車3の走行速度は変化する。
【0022】
2個の前車輪34は、車両本体31の下側の前寄り位置に、左右に離隔して配置される。2個の後車輪35は、車両本体31の下側の後寄り位置に、左右に離隔して配置される。合計で4個の前車輪34および後車輪35は、走行方向を変更することができる自在車輪である。前車輪34および後車輪35は、2個の駆動車輪32の回転状況に追従して従動回転する。図6に示されるように、左右の車輪間の距離すなわちトレッド幅は、駆動車輪32で最大とされ、前車輪34で最小とされ、後車輪35で中間値とされている。駆動車輪32のトレッド幅が最大であることにより、搬送車3の良好な操舵性能が確保される。
【0023】
テープ検出部39は、車両本体31の下側の中心線上の前寄り位置および後寄り位置に、前後一対の形態で設けられる(図6参照)。テープ検出部39は、床面に設けられた経路表示テープ3A(図10参照)を検出して、検出結果を搬送車制御部に出力する。経路表示テープ3Aは、搬送車3の走行経路を表示するものである。搬送車制御部は、搬送車3が経路表示テープ3Aに沿って走行するように制御する。経路表示テープ3Aとして、磁気表示方式や光学表示方式のテープを用いることができる。テープ検出部39は、経路表示テープ3Aの表示方式に対応する検出方式とされる。
【0024】
また、テープ検出部39は、経路表示テープ3Aによって示される走行経路の分岐点3Bを検出することができる。搬送車3が分岐点3Bを通過した後の走行経路は、搬送車制御部によって選択される。搬送車制御部は、テープ検出部39による経路表示テープ3Aの検出結果と、駆動車輪32の制御量とを用いて、搬送車3の現在位置、姿勢(向き)、および走行速度を演算推定し、これらに基づいて以降の搬送車3の走行を制御する。
【0025】
上記したように、搬送車3の走行は、主に搬送車制御部からの制御によって自動で行われる。一方、車両本体31の上面の後部に配置された操作パネル36は、搬送車3に係る一部の手動操作に用いられる。例えば、操作パネル36は、搬送車3がエラー停止した場合のエラー解除操作や、搬送車3の非常停止操作に用いられる。
【0026】
4.連結部4
連結部4は、図4に示されるように、荷台21の下部の底板45と搬送車3の上面の間に配置される。連結部4は、台車本体20の下側に進入した状態の搬送車3に対して、台車本体20を牽引可能に連結する。連結部4は、搬送車3の上面に設けられた3個の連結ピン、荷台21の底板45に設けられた前側係止部材46および左右一対の切換機構4Aなどで構成される。なお、図4において、底板45が透視されている。
【0027】
図3および図4に示されるように、搬送車3の上面の左右方向の中央の前寄り位置に、前側連結ピン41が立てて設けられる。前側連結ピン41は、金属性の丸棒の外周側に円筒形のウレタンゴムが嵌められて形成される。また、搬送車3の上面の右後部の位置および左後部の位置に、左右一対の後側連結ピン42が立てて設けられる。後側連結ピン42は、前側連結ピン41と同一材質で同一形状に形成される。後側連結ピン42は、搬送車3の上面にスペーサ43を介して取り付けられ、前側連結ピン41よりも高く配置される。
【0028】
一方、荷台21の底板45は、前縁および後縁が下方に折り曲げられている。底板45の下面の左右方向の中央の前寄り位置に、前側係止部材46が設けられる。前側係止部材46は、平面視でクランク形状に形成されており、後方に開口する収容部をもつ。前側係止部材46の収容部は、概ね中間高さに最狭部をもちつつ上下では拡がったテーパ形状の内壁面をもつ。前側係止部材46の最狭部における開口幅寸法は、前側連結ピン41の直径に概ね等しいか、または負の公差を許容して等しく設定される。
【0029】
搬送車3が台車本体20の下側に進入するとき、前側係止部材46の収容部内に向かって前側連結ピン41が後方から進入する。前側連結ピン41は、前側係止部材46の最狭部に内接し、最狭部以外の内壁面には殆ど接しない。また、前側連結ピン41が最狭部に内接するとき、外周側のウレタンゴムの微小な変形が許容される。これにより、前側係止部材46の収容部は、前側連結ピン41を係止して左右方向の移動を許容しない。したがって、搬送車3に対する台車本体20の左右方向の位置が位置決めされる。一方、前側係止部材46の収容部は、前側連結ピン41の左右方向および前後方向の倒れを許容する。したがって、搬送車3に対する台車本体20の左右方向および前後方向の相対的な傾きが許容されるので、床面にうねりが生じていたとしても、搬送車3および台車2はスムーズに走行することができる。また、前側連結ピン41は、前側係止部材46の収容部内を前後方向に相対移動可能となっている。
【0030】
さらに、底板45の下側に、左右一対の棒形状または板形状のガイド部材47が設けられる。左右一対のガイド部材47は、荷台21の後側から前側に進むにつれて前側係止部材46の収容部に徐々に接近するように斜めに配置される。ガイド部材47は、搬送車3が台車本体20の下側に進入する際に両者の中心線がずれていた場合に、前側連結ピン41を前側係止部材46の収容部に向かって案内する。
【0031】
また、底板45の後縁は、その中央部分がクランク形状に切り欠かれたクランク縁部48、および切り欠かれていない左右の後縁部49からなる。左右の後縁部49の各々に、切換機構4Aが設けられる。左右一対の切換機構4Aの各々は、機構本体4B、後側係止部材4C、および操作ノブ4Dなどで構成される。
【0032】
機構本体4Bは、後縁部49に固定される。後側係止部材4Cは、山形状に折り曲げられた板状の部材である。後側係止部材4Cは、左右方向にスライド移動可能に(図4の矢印A1参照)機構本体4Bに支持される。換言すると、後側係止部材4Cは、機構本体4Bから中心線の方向に突出した係止位置と、機構本体4Bに収納された非係止位置との間を移動可能に支持される。切換機構4Aの初期状態において、後側係止部材4Cは、非係止位置に位置する。操作ノブ4Dは、機構本体4Bに設けられる。操作ノブ4Dの回転操作により、後側係止部材4Cが非係止位置と係止位置との間を移動する。
【0033】
後側係止部材4Cは、非係止位置にあるときに後側連結ピン42の前後方向の通過を許容して、台車本体20の下側への搬送車3の進入および退出を許容する。図4に示されるように、搬送車3が台車本体20の下側に進入して前側連結ピン41が前側係止部材46に係止されたとき、左右一対の後側連結ピン42は、クランク縁部48のクランク形状の内部まで進入し、かつクランク縁部48よりも上方まで突出する。
【0034】
ここで、作業者が操作ノブ4Dを回転操作することにより、後側係止部材4Cは、非係止位置から係止位置にスライド移動して、後側連結ピン42の後方に位置する。後側係止部材4Cは、係止位置にあるときに後側連結ピン42の後方への通過を阻止して、台車本体20の下側からの搬送車3の退出を許容しない。
【0035】
この状態において、後側連結ピン42とクランク縁部48の間、および、後側連結ピン42と後側係止部材4Cの間に、前後方向の遊び寸法に相当する隙間が生じる。つまり、クランク縁部48および後側係止部材4Cは、所定の遊び寸法の範囲内で後側連結ピンを前後方向に相対移動可能に係止する。したがって、前側連結ピン41および後側連結ピン42は、ともに前後方向に相対移動可能となっている。これによれば、搬送車3に対する台車本体20の前後方向の位置は、位置決めされない。
【0036】
一方、後側連結ピン42とクランク縁部48の間には、左右方向の遊び寸法に相当する隙間が生じる。つまり、クランク縁部48は、左右方向の遊び寸法の範囲内で後側連結ピン42を相対移動可能に係止する係止部材として機能する。これによれば、台車本体20は、前側連結ピン41を回転中心として、その後部が左右方向に回転し得る。換言すると、台車本体20は、搬送車3に対する姿勢変化が許容されている。
【0037】
この後、受電コネクタ27と給電コネクタ37の嵌合操作が行われて、台車2と搬送車3との連結処理が終了する。搬送車3が台車2を牽引しながら前進する場合、前側連結ピン41が前側係止部材46を押動する。搬送車3が台車2を牽引しながら後退する場合、後側連結ピン42が後側係止部材4Cを押動する。搬送車3の前進や後退、および方向転換の際などに、搬送車3に対する台車2の前後方向の位置および姿勢は、随時変化する可能性がある。
【0038】
また、前側連結ピン41が前側係止部材46に対して鉛直方向に所定の変位量だけ変位しても、前側係止部材46は前側連結ピン41を係止し続ける。同様に、後側連結ピン42がクランク縁部48および後側係止部材4Cに対して鉛直方向に所定の変位量だけ変位しても、クランク縁部48および後側係止部材4Cは後側連結ピン42を係止し続ける。上記した機能を実現できるように、前側連結ピン41および後側連結ピン42や、その他の部材の寸法および形状が設計される。
【0039】
これによれば、連結部4は、搬送車3に対する台車本体20の鉛直方向の姿勢変化を許容する。つまり、搬送車3に対して台車本体20が上下動することが許容される。さらに、搬送車3が水平姿勢であるときに台車本体20が前後方向や左右方向に傾斜する傾斜姿勢であることや、逆に搬送車3が傾斜姿勢で台車本体20が水平姿勢であることが許容される。したがって、走行する床面に起伏や多少の段差があっても、搬送車3は、台車2を牽引しながら走行し続けることができる。
【0040】
5.位置決め部5
位置決め部5は、図8に示されるように台車本体20の荷台21の前部に設けられる。位置決め部5は、台車本体20を搬送目標に設けられた基準面に正対させる部位である。位置決め部5は、バンパー部51、支持部53、弾性部材55、および検出部56などで構成される。
【0041】
バンパー部51は、荷台21の前後方向の正面に設けられて左右方向に延在する(図2、6、7参照)。バンパー部51は、例えば、機械的強度が大きな金属や硬質樹脂などを用いて、水平配置される直線状の棒形状に形成される。バンパー部51の前面の両端には、面取りに類似する丸みが形成されている。
【0042】
バンパー部51は、荷台21の前端よりも後方に位置する。それでも、バンパー部51は、荷台21が搬送目標に衝突する以前に、搬送目標に設けられた基準面に当接する。このとき、バンパー部51は、左右方向に離隔した少なくとも二点で基準面に当接することが可能である。バンパー部51は、その後面の左側および右側の対称位置から後方に延びる左右一対の支持ロッド52をもつ。支持ロッド52として、例えば、金属や硬質樹脂などで形成された丸棒を用いることができる。
【0043】
一方、台車本体20の荷台21の正面には、左右一対の支持部53が設けられる(図8参照)。支持部53は、前後方向に貫通する支持孔をもち、この支持孔を用いて支持ロッド52を前後方向に移動可能に支持する。換言すると、支持部53は、台車本体20に対してバンパー部51を前後方向に平行移動可能に支持する。支持ロッド52は、支持部53を突き抜けた後側に当て板54をもつ。当て板54は、支持孔の外径よりも大型に形成されており、支持ロッド52が支持部53から前側へ抜け出ることを防止する。
【0044】
弾性部材55は、バンパー部51と支持部53の間に設けられ、支持ロッド52の外周面を取り囲む。弾性部材55には、円筒状のコイルばねが用いられる。弾性部材55は、前後方向に伸縮する弾性を有し、圧縮状態で組み付けられる。つまり、弾性部材55は、台車本体20に対してバンパー部51を前方に向けて付勢する。これにより、通常時に当て板54が支持部53に当接した状態が維持される。弾性部材55は、バンパー部51が基準面に当接するときにさらに圧縮されて、ショックを和らげる緩衝材の役割を果たす。
【0045】
検出部56は、バンパー部51が基準面に当接したことを検出する。検出部56は、センサドッグ57および遮光検出センサ58などで構成される。センサドッグ57は、屈折された板材で形成されており、当て板54の後面に取り付けられる。センサドッグ57は、当て板54の後面から上方に延在し、さらに前側に屈折している。遮光検出センサ58は、支持部53の上側に設けられる。遮光検出センサ58は、上下方向に離隔する投光部および受光部を有し、上下方向に投射する検出光が遮光されているか否かを検出する。
【0046】
図8に示されるように、通常時に当て板54が支持部53に当接している状態において、センサドッグ57は、遮光検出センサ58の投光部と受光部の間に入り込む。したがって、遮光検出センサ58は、遮光状態を検出する。本実施形態において、遮光検出センサ58が検出する遮光状態は、バンパー部51が基準面に当接していないことを表す。
【0047】
一方、台車2が牽引されてバンパー部51が基準面に当接するとき、搬送車3から台車2に走行駆動力が付与される。この走行駆動力により、バンパー部51が基準面に押し付けられ、弾性部材55が圧縮される。これにより、図9に示されるように、バンパー部51、支持ロッド52、当て板54、およびセンサドッグ57は、台車本体20に対して相対的に後退する。そしてこのとき、センサドッグ57は、遮光検出センサ58の投光部と受光部の間から抜け出る。したがって、遮光検出センサ58は、受光状態を検出する。本実施形態において、遮光検出センサ58が検出する受光状態は、バンパー部51が基準面に当接していることを表す。
【0048】
遮光検出センサ58は、検出結果を台車制御部に出力する。したがって、台車制御部は、バンパー部51が基準面に当接した状態を認識することができる。なお、上述したように、台車2は、バンパー部51の左右方向の対称位置に配置される二組の支持部53および弾性部材55を備える。これにより、台車本体20に対するバンパー部51の相対的な後退動作が円滑化される。また、検出部56は、左右一対の形態で設けられてバンパー部51の左右非対称動作に対応することが好ましいが、左右いずれか片側だけに簡略化されてもよい。
【0049】
6.収容装置8等
次に、搬送目標の一例である収容装置8について、図10および図11を参考にして説明する。収容装置8は、概ね直方体形状の装置であり、2個の搬送物Cを収容することができる。収容装置8は、第1収容位置81、第2収容位置82、基準面84、第1固定側通信部85、および第2固定側通信部86を有する。図10および図11において、台車2および搬送車3は、第2収容位置82の後方で基準面84に正対している。なお、「正対する」とは、台車2や搬送車3の中心線が基準面84に正確に直交することを指し示す。
【0050】
第1収容位置81は、収容装置8の左側上部に区画されて後方に開口する直方体形状の収容空間が相当する。第2収容位置82は、収容装置8の右側上部に区画されて後方に開口する直方体形状の収容空間が相当する。第1収容位置81および第2収容位置82の内部の下側に、それぞれローラコンベア83が設けられる。ローラコンベア83は、台車2側の積み降ろし部6と概ね同じ高さに配置される。ローラコンベア83は、収容制御部(図略)から制御される駆動モータ(図略)により駆動される。ローラコンベア83は、積み降ろし部6と協調して動作し、搬送物Cを積み降ろしする。
【0051】
基準面84は、第1収容位置81および第2収容位置82の後端よりも後方の下側に設けられる。基準面84は、台車2側のバンパー部51の高さを含んで鉛直方向に起立して配置され、かつ左右方向に長く延在する。基準面84が第1収容位置81および第2収容位置82よりも後方に設けられることにより、台車2の荷台21が第1収容位置81および第2収容位置82に到達する以前に、バンパー部51が基準面84に当接する。これにより、収容装置8と台車2の適正な位置関係が確保される。
【0052】
なお、基準面84に傾斜を設け、バンパー部51の前面にも傾斜を設けて、バンパー部51が基準面84に当接したときに、基準面84からバンパー部51に下向きの反力が作用するように構成してもよい。これによれば、台車2が前進してバンパー部51が基準面84に当接したときに、台車2が後退しにくくなる。
【0053】
第1固定側通信部85は、基準面84の下側の左端付近の位置に、後向きに設けられる(図10、11参照)。第1固定側通信部85は、第1収容位置81に対応して、その下方に設けられたものである。第2固定側通信部86は、基準面84の下側の右端付近の位置に、後向きに設けられる(図11参照)。第2固定側通信部86は、第2収容位置82に対応して、その下方に設けられたものである。第1固定側通信部85および第2固定側通信部86は、収容制御部から制御される。なお、基準面84の下側の中央付近の位置は、図略の構造物が障害となり、固定側通信部を設けることができない。
【0054】
一方、図6に示されるように、台車本体20(荷台21)には、第1可動側通信部71および第2可動側通信部72が設けられる。第1可動側通信部71は、台車本体20の前面の左寄りのバンパー部51よりも低い位置に、前向きに配置される。第2可動側通信部72は、台車本体20の前面の右寄りのバンパー部51よりも低い位置に、前向きに配置される。第1可動側通信部71および第2可動側通信部72は、台車制御部から制御される。
【0055】
図10および図11に示されるように、台車2が第2収容位置82の後方に位置するとき、第2固定側通信部86と第2可動側通信部72とが正対する。したがって、第2固定側通信部86および第2可動側通信部72は、基準面84に直交する方向に伝搬する光信号を用いた送受信が可能となる。これにより、第2可動側通信部72および台車制御部は、台車2が第2収容位置82の後方に位置すると確認することができる。一方、第2固定側通信部86および収容制御部は、第2収容位置82の後方に台車2が到着したと確認することができる。なお、このとき、第1固定側通信部85および第1可動側通信部71は、正対する通信相手が存在しない。
【0056】
また、台車2が第1収容位置81の後方に位置するとき、第1固定側通信部85と第1可動側通信部71とが正対する。したがって、第1固定側通信部85および第1可動側通信部71は、基準面84に直交する方向に伝搬する光信号を用いた送受信が可能となる。これにより、第1可動側通信部71および台車制御部は、台車2が第1収容位置81の後方に位置すると確認することができる。一方、第1固定側通信部85および収容制御部は、第1収容位置81の後方に台車2が到着したと確認することができる。なお、このとき、第2固定側通信部86および第2可動側通信部72は、正対する通信相手が存在しない。
【0057】
光信号を用いた確認により、収容制御部および台車制御部は、台車2の到着位置および到着時期を正確かつ迅速に確認することができる。これにより、収容制御部は、2組のローラコンベア83のうち台車2が到着した側を間違いなく動作させることができる。加えて、収容制御部および台車制御部の協調制御により、ローラコンベア83と積み降ろし部6とが協調して動作するので、効率的に搬送物Cを積み降ろしすることができる。
【0058】
仮に、障害となる構造物が無く、図11に破線で示されるように第2固定側通信部86を基準面84の下側の中央付近の位置に設けることができる場合、第2可動側通信部72を省略することができる。この態様では、第1可動側通信部71に対して第1固定側通信部85が通信可能である場合に、台車2が第1収容位置81の後方に位置したと確認することができ、第1可動側通信部71に対して第2固定側通信部86が通信可能である場合に、台車2が第2収容位置82の後方に位置したと確認することができる。
【0059】
7.搬送装置1および台車2の動作、作用
次に、搬送装置1および台車2の動作、作用について、台車2が収容装置8まで移動して停止する場合を例にして説明する。この場合、搬送車3は、連結部4によって連結された台車2を牽引しながら経路表示テープ3Aに沿って走行し、収容装置8の基準面84に正対する方向から接近する。この時点で、台車2の左右方向の位置が定まっており以降は変化しない。
また、搬送車3は、基準面84に接近した後に走行駆動力を一定にして、一定速度でバンパー部51を基準面84に当接させる。このときの一定速度は、搬送車3の通常時の走行速度でもよいし、それよりも低速度であってもよい。バンパー部51が基準面84に当接するとき、台車2は、いつも搬送車3と同じ姿勢(向き)であるとは限らず、換言すると、台車2は、基準面84に正対しているとは限らない。
【0060】
例えば、図12に示される例では、台車2の姿勢が搬送車3に対して右向きに傾いており、台車2の左側が前方に出ている。ここで、図12の右上の矢印に示されるように、搬送車3の右方向をX軸方向とし、前方向をY軸方向とする。この場合、基準面84は、X軸に平行して延在する。また、図12において、台車2の姿勢の自動修正の作用を見易く説明するために、台車2の姿勢の傾きが誇張して描かれている。
【0061】
図示されるように、台車2が搬送車3に対して右向きに傾いた姿勢の場合、バンパー部51の左前端59が基準面84に最初に当接する。このとき、搬送車3の前側連結ピン41が台車2の前側係止部材46を押動する走行駆動力F1は、台車本体20から弾性部材55を介してバンパー部51に作用する。この走行駆動力F1は、左前端59に向かう斜め左前方向の分力F2と、斜め右前方向に向かう分力F3とに分けて考えることができる。さらに、分力F2は、Y軸方向の分力F2Yと、X軸マイナス方向の分力F2Xとに分けて考えることができる。
【0062】
分力F2Yは、基準面84からの反力と釣り合って相殺される。分力F2Xの作用により、バンパー部51の左前端59は、基準面84に摺接しながら左方に移動する。一方、分力F3のX軸方向成分は、前車輪24および後車輪25の接地摩擦抵抗と釣り合って相殺される。また、分力F3のY軸方向成分の作用により、台車2は、Y軸方向に駆動される。したがって、台車2は、バンパー部51の左前端59が左方に移動しながら、X軸方向(左右方向)に移動せずにY軸方向に前進する。
【0063】
これにより、台車2は、前側連結ピン41を回転中心として図12の反時計回りに徐々に姿勢が変化して、搬送車3に平行する姿勢へと自動的に修正されてゆく。この結果、台車2は、搬送車3に平行する姿勢となり、バンパー部51の左前端59および右前端を含む前面の全体が基準面84に当接する。つまり、台車2は、バンパー部51が基準面84に対して左右方向に離隔した少なくとも二点で当接することにより、基準面84に対して台車本体20を正対させることができる。したがって、台車2は、基準面84に正対する。
【0064】
さらに、台車2の前進に伴い、弾性部材55が圧縮される。最終的に、搬送車3からの走行駆動力F1と、弾性部材55の圧縮による反力とが釣り合う状態で、台車2および搬送車3が所定位置に停止する。この停止状態は、検出部56の遮光検出センサ58によって検出され、台車制御部によって認識される。
【0065】
ここで、毎回の停止時に走行駆動力F1を一定とするので、バンパー部51は、弾性部材55によって所定の押し付け力で基準面84に押し付けられることになる。これによれば、弾性部材55の圧縮量が一定となり、台車2の前後方向の停止位置が安定化される。以上説明したように、台車2を基準面84に対して正対させることができ、さらに、台車2の停止位置を安定化することができる。
【0066】
なお、走行駆動力F1を大きめの一定値に設定すると、台車2が停止する所定位置は基準面84に近づき、走行駆動力F1を小さめの一定値に設定すると、所定位置は基準面84から遠ざかる。また、バンパー部51が基準面84に当接するときのショックの大小は、走行駆動力F1に依存して変化する。このため、走行駆動力F1の大きさは、搬送目標の種類や形状、搬送物Cの耐ショック性能などに基づいて、適正な一定値に設定される。
【0067】
実施形態の台車2や搬送装置1において、台車本体20は、連結された搬送車3に対して左右方向の位置が位置決めされるが、搬送車3に対する姿勢(向き)が変化し得る。それでも、台車2が搬送車3に牽引されて収容装置8まで移動するときに、バンパー部51の左右方向に離隔した少なくとも二点が基準面84に対して当接することにより、台車本体20は、前後方向の所定位置に位置決めされ、かつ基準面84に対して正対する姿勢となる。したがって、台車2が停止するときの位置および姿勢を高い精度で管理することができる。
【0068】
8.応用例のバンパー部5A
次に、応用例のバンパー部5Aについて、図13を参考にして説明する。応用例のバンパー部5Aは、そのサイズが実施形態のバンパー部51と同程度であり、2個のコロ部材5Bをもつ点が実施形態と相違する。コロ部材5Bは、バンパー部5Aの左前端の位置および右前端の位置にそれぞれ配置される。
【0069】
コロ部材5Bは、鉛直軸5Cを中心とする円柱形状または円筒形状に形成される。かつコロ部材5Bは、鉛直軸5Cの周りに自転自在となるようにバンパー部5Aに取り付けられる。コロ部材5Bの一部分は、バンパー部5Aの左前端の外面および右前端の外面から前方に突出しており、基準面84に当接可能となっている。
【0070】
応用例において、図12を用いて説明した台車2の姿勢の自動修正の作用が、同様に発生する。また、バンパー部5Aは、基準面84に沿って左右方向に移動する場合に、コロ部材5Bが基準面84に接する。このため、バンパー部5Aの左右方向の移動に際して、摺動摩擦抵抗よりも小さな転がり摩擦抵抗で済むため、円滑な移動が可能となる。この結果、台車2の姿勢の自動修正の作用は、より確実なものとなる。
【0071】
9.変形例の位置決め部
変形例の位置決め部では、バンパー部51またはバンパー部5Aを用い、支持ロッド52の後端を直接的に台車本体20に固定する。この変形に伴い、支持部53、当て板54、弾性部材55、および検出部56は省略される。変形例では、弾性部材55が省略されるため、バンパー部51が基準面84に当接するときのショックに起因する台車2の位置ずれおよび姿勢変化の懸念に対して対策を行う。
【0072】
具体的には、搬送車3は、台車2を牽引して収容装置8まで移動させるときに、基準面84に正対する方向から減速しつつ接近して、通常時の走行速度よりも低速度でバンパー部(51、5A)を基準面84に当接させる。これにより、前記したショックを軽減して、前記した懸念を解消することができる。
【0073】
変形例において、図12を用いて説明した台車2の姿勢の自動修正の作用が、同様に発生する。また、省略された弾性部材55の圧縮量を考慮する必要が無いため、搬送車3は、毎回の停止時に低速度であればよく、一定速度とする必要がない。それでも、バンパー部(51、5A)の左右方向に離隔した少なくとも二点が基準面84に当接した状態で台車2が停止するので、台車2の停止位置および停止姿勢が安定化される。
【0074】
10.実施形態の変形および応用
なお、バンパー部(51、5A)は、実施形態で説明した直線状の棒形状に限定されない。例えば、バンパー部は、左前端および右前端が前方に突出して中央部分が後方にへこんだ曲線形状でもよく、あるいは、左右に分離された分離型であってもよい。また、バンパー部(51、5A)を含む位置決め部5の構成は、搬送車3の後側や前側に連結される台車に適用することが可能である。
【0075】
さらに、連結部4を構成する前側連結ピン41および後側連結ピン42を台車2側に設け、前側係止部材46および切換機構4Aを搬送車3側に設けてもよい。また、搬送車3の走行経路は、経路表示テープ3A以外により定められてもよい。また、第1可動側通信部71および第2可動側通信部72は、台車2でなく搬送車3に設けられてもよい。実施形態は、他にも様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1:搬送装置 2:台車 20:台車本体 21:荷台 24:前車輪 25:後車輪 27:受電コネクタ 3:搬送車 31:車両本体 32:駆動車輪 37:給電コネクタ 4:連結部 41:前側連結ピン 42:後側連結ピン 45:底板 46:前側係止部材 48:クランク縁部 4A:切換機構 4C:後側係止部材 5:位置決め部 51:バンパー部 53:支持部 55:弾性部材 56:検出部 57:センサドッグ 58:遮光検出センサ 5A:バンパー部 5B:コロ部材 6:積み降ろし部 71:第1可動側通信部 72:第2可動側通信部 8:収容装置 84:基準面 85:第1固定側通信部 86:第2固定側通信部 C:搬送物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13