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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】接着剤及びそれを含むセパレータ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/42 20210101AFI20250217BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20250217BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20250217BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20250217BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20250217BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20250217BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20250217BHJP
【FI】
H01M50/42
C09J11/04
C09J133/08
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/451
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023569613
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(86)【国際出願番号】 CN2022121652
(87)【国際公開番号】W WO2024065165
(87)【国際公開日】2024-04-04
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】13/F., LKF29, 29 Wyndham Street, Central, Hong Kong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】康 ▲海▼▲楊▼
(72)【発明者】
【氏名】李 雷
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ ▲義▼
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 成▲棟▼
(72)【発明者】
【氏名】▲アイ▼ 少▲華▼
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112259913(CN,A)
【文献】特開2015-185530(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109841779(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113851787(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0133412(KR,A)
【文献】特表2019-526693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40
C09J 133/00
C09J 11/04
C08F 220/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤であって、ポリマーと、シランカップリング剤で改質されたセラミック粒子とを含み、前記ポリマーは、第一類のモノマー、第二類のモノマー及び第三類のモノマーに由来する構造単位を含み、且つ前記第一類のモノマーと、第二類のモノマーと、第三類のモノマーとのモル比は、50~58:40~44:2~6であり、
前記第一類のモノマーは、一つ又は複数の式Iの化合物から選択され、
【化1】
ここで、Rは、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択されるとともに、Rは、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖のC1-15アルキル基、C3-6シクロアルキル基及びイソボルニル基から選択され、置換の場合、置換基は、ヒドロキシル基とC1-6鎖アルキル基から選択され、
前記第二類のモノマーは、一つ又は複数の式IIの化合物から選択され、
【化2】
ここで、Rは、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、
前記第三類のモノマーは、一つ又は複数の式IIIの化合物から選択され、
【化3】
ここで、Rは、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択されるとともに、Rは、水素原子、ヒドロキシC1-6アルキル基及びC1-6アルコキシ基から選択される、接着剤。
【請求項2】
は、水素原子とメチル基から選択され、且つRは、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、置換の場合、置換基は、ヒドロキシル基であり、及び/又はRは、水素原子とメチル基から選択され、及び/又はRは、水素原子とメチル基から選択され、且つRは、水素原子、ヒドロキシC1-4アルキル基及びC1-4アルコキシ基から選択される、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記第一類のモノマーは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピルから選択される一つ又は複数であり、及び/又は
前記第二類のモノマーは、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルであり、及び/又は
前記第三類のモノマーは、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド及びN-ブトキシメタクリルアミドから選択される一つ又は複数である、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項4】
前記第一類のモノマーと、第二類のモノマーと、第三類のモノマーとのモル比は、50~57:41~44:2~6である、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項5】
前記ポリマーの重量平均分子量は、60000~120000であり、選択的に63300~118800である、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項6】
前記シランカップリング剤で改質されたセラミック粒子の平均粒径Dv50は、200nm~980nmであり、さらに選択的に200nm~600nmであり、またさらに選択的に330nm~550nmである、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項7】
前記シランカップリング剤は、式IVの化合物から選択される一つ又は複数であり、
【化4】
ここで、R、RとRは、それぞれ独立して直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、Rは、C2-6アルケニル基とC1-6直鎖アルキル基から選択され、前記C1-6直鎖アルキル基の末端炭素原子上の少なくとも一つの水素原子は、アミノ基、2,3-エポキシプロポキシ基及びメタクリロイルオキシ基から選択される置換基により置換され、
選択的に、R、RとRは、それぞれ独立してメチル基とエチル基から選択され、及び/又はRは、ビニル基、3-アミノプロピル基、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピル基と3-(メタクリロイルオキシ)プロピル基から選択され、
さらに選択的に、前記シランカップリング剤は、ビニルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシランと3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランから選択される一つ又は複数である、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項8】
前記セラミック粒子とシランカップリング剤との重量比は、97.5~99.9:0.1~2.5であり、さらに選択的に98.0~99.9:0.1~2.0であり、またさらに選択的に98.2~99.4:0.6~1.8である、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項9】
前記ポリマーと前記セラミック粒子との重量比は、40~90:10~60であり、選択的に50~80:20~50である、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項10】
前記ポリマーは、前記セラミック粒子を被覆する、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項11】
セパレータであって、前記セパレータは、ベース層と、前記ベース層の少なくとも一つの表面に設置されるコーティング層とを含み、前記コーティング層は、請求項1又は2に記載の接着剤組成物を含む、セパレータ。
【請求項12】
二次電池であって、請求項1に記載の接着剤を含む、二次電池。
【請求項13】
電池モジュールであって、請求項12に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項14】
電池パックであって、請求項13に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項15】
電力消費装置であって、請求項12に記載の二次電池、請求項13に記載の電池モジュール及び請求項14に記載の電池パックから選択される少なくとも一つを含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リチウム電池の技術分野に関し、特に接着剤及びそれを含むセパレータに関する。本出願は、さらに二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池の応用範囲がますます広がるにつれて、二次電池は、水力発電所、火力発電所、風力発電所、太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電動自転車、電動バイク、電気自動車、軍事装備、航空宇宙などの複数の分野に広く用いられる。二次電池の目覚ましい発展により、そのサイクル性能と安全性能などに対する要求がますます高まっている。しかしながら、従来の技術では、接着剤の接着力が悪く、セパレータには、粉落ちが生じ且つ極板との接着効果が悪いなどの問題が発生しやすく、二次電池の性能の発展を制限する。そのため、当分野では、接着性がより良い接着剤とセパレータを必要とする。
【発明の概要】
【0003】
本出願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、接着剤組成物、及びこの組成物を含むセパレータ、二次電池、電池モジュール、電池パック並びに電力消費装置を提供することである。本発明の接着剤組成物は、セラミック粒子とセパレータ基材との間、及びセパレータと極板との間の接着効果を改善できるとともに、二次電池のサイクル性能を改善することができる。
【0004】
上記目的を達成するために、本出願は、接着剤、及びこの組成物を含むセパレータ、二次電池、電池パック並びに電力消費装置を提供する。
【0005】
本出願の第一の態様は、接着剤を提供し、この接着剤は、ポリマーと、シランカップリング剤で改質されたセラミック粒子とを含み、前記ポリマーは、第一類のモノマー、第二類のモノマー及び第三類のモノマーに由来する構造単位を含み、且つ前記第一類のモノマーと、第二類のモノマーと、第三類のモノマーとのモル比は、50~58:40~44:2~6であり、
前記第一類のモノマーは、一つ又は複数の式Iの化合物から選択され、
【化1】
ここで、Rは、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択されるとともに、Rは、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖のC1-15アルキル基、C3-6シクロアルキル基及びイソボルニル基から選択され、置換の場合、置換基は、ヒドロキシル基とC1-6鎖アルキル基から選択され、
前記第二類のモノマーは、一つ又は複数の式IIの化合物から選択され、
【化2】
ここで、Rは、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、
前記第三類のモノマーは、一つ又は複数の式IIIの化合物から選択され、
【化3】
ここで、Rは、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択されるとともに、Rは、水素原子、ヒドロキシC1-6アルキル基及びC1-6アルコキシ基から選択される。本出願の接着剤は、接着力が比較的高く、「粉落ち」現象を減少ひいては回避し、二次電池のサイクル性能を改善する。
【0006】
いずれかの実施の形態では、Rは、水素原子とメチル基から選択され、且つRは、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、置換の場合、置換基は、ヒドロキシル基であり、及び/又はRは、水素原子とメチル基から選択され、及び/又はRは、水素原子とメチル基から選択され、且つRは、水素原子、ヒドロキシC1-4アルキル基及びC1-4アルコキシ基から選択される。
【0007】
いずれかの実施の形態では、前記第一類のモノマーは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピルから選択される一つ又は複数であり、及び/又は前記第二類のモノマーは、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルであり、及び/又は前記第三類のモノマーは、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド及びN-ブトキシメタクリルアミドから選択される一つ又は複数である。さらに上記第一類、第二類と第三類のモノマーを選択することによって、接着剤の接着効果をより効果的に改善し、電池のサイクル容量保持率を向上させることができる。
【0008】
いずれかの実施の形態では、前記第一類のモノマーと、第二類のモノマーと、第三類のモノマーとのモル比は、50~57:41~44:2~6である。上記範囲のモル比を採用し、接着剤の接着性能をさらに改善し、電池のサイクル容量保持率を向上させることができる。
【0009】
いずれかの実施の形態では、前記ポリマーの重量平均分子量は、60000~120000であり、選択的に63300~118800である。ポリマーの重量平均分子量は、上記範囲内にあり、ポリマーは、接着剤の施用中に適切な流動性を有し、接着効果を改善することができる。
【0010】
いずれかの実施の形態では、前記シランカップリング剤で改質されたセラミック粒子の平均粒径Dv50は、200nm~980nmであり、さらに選択的に200nm~600nmであり、またさらに選択的に330nm~550nmである。セラミック粒子の粒径を上記範囲内に制御することにより、セラミック粒子が均一に分布し且つセパレータ基材上に接着されるのに有利であり、且つセパレータ細孔を塞ぎ難い。
【0011】
いずれかの実施の形態では、前記シランカップリング剤は、式IVの化合物から選択される一つ又は複数であり、
【化4】
ここで、R、RとRは、それぞれ独立して直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、Rは、C2-6アルケニル基とC1-6直鎖アルキル基から選択され、前記C1-6直鎖アルキル基の末端炭素原子上の少なくとも一つの水素原子は、アミノ基、2,3-エポキシプロポキシ基及びメタクリロイルオキシ基から選択される置換基により置換され、選択的に、R、RとRは、それぞれ独立してメチル基とエチル基から選択され、及び/又はRは、ビニル基、3-アミノプロピル基、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピル基と3-(メタクリロイルオキシ)プロピル基から選択され、さらに選択的に、前記シランカップリング剤は、ビニルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシランと3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランから選択される一つ又は複数である。上記シランカップリング剤で改質されたセラミック粒子を選択し、接着効果を改善するとともに、さらに容量保持率を改善することができる。
【0012】
いずれかの実施の形態では、前記セラミック粒子とシランカップリング剤との重量比は、97.5~99.9:0.1~2.5であり、さらに選択的に98.0~99.9:0.1~2.0であり、またさらに選択的に98.2~99.4:0.6~1.8である。セラミック粒子とシランカップリング剤との重量比を上記範囲内にすることにより、接着力とサイクル性能を改善するという効果の実現に有利である。
【0013】
いずれかの実施の形態では、前記ポリマーと前記セラミック粒子との重量比は、40~90:10~60であり、選択的に50~80:20~50である。ポリマーとセラミック粒子との重量比が上記含有量範囲内にあり、「粉落ち」が発生しにくく、且つ電池サイクル性能を改善するのに有利である。
【0014】
いずれかの実施の形態では、前記ポリマーは、前記セラミック粒子を被覆する。このように孔の目詰まりを減少又は回避し、改善された耐熱性能と良好な接着効果を実現するのに有利である。
【0015】
本出願の第二の態様は、セパレータを提供し、前記セパレータは、ベース層と、前記ベース層の少なくとも一つの表面に設置されるコーティング層とを含み、前記コーティング層は、本出願の第一の態様の接着剤を含む。本出願のセパレータは、化学的及び機械的安定性が良好で、正極極板との間の接着が良好であり、電池のサイクル性能を改善するのに有利である。
【0016】
本出願の第三の態様は、二次電池を提供し、この二次電池は、本出願の第一の態様の接着剤又は本出願の第二の態様によるセパレータを含む。
【0017】
本出願の第四の態様は、電池モジュールを提供し、この電池モジュールは、本出願の第三の態様の二次電池を含む。
【0018】
本出願の第五の態様は、電池パックを提供し、この電池パックは、本出願の第四の態様の電池モジュールを含む。
【0019】
本出願の第六の態様は、電力消費装置を提供し、この電力消費装置は、本出願の第三の態様の二次電池、本出願の第四の態様の電池モジュール又は本出願の第五の態様の電池パックから選択される少なくとも一つを含む。
【0020】
本出願の接着剤は、良好な接着性能を有し、二次電池のサイクル性能を高める。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本出願の一実施の形態の二次電池の概略図である。
図2図1に示す本出願の一実施の形態の二次電池の分解図である。
図3】本出願の一実施の形態の電池モジュールの概略図である。
図4】本出願の一実施の形態の電池パックの概略図である。
図5図4に示す本出願の一実施の形態の電池パックの分解図である。
図6】本出願の一実施の形態の二次電池が電源として使用される電力消費装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を適当に参照しながら、本出願の接着剤、セパレータ、二次電池、電池モジュール、電池パックと電気装置を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。しかしながら、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載されたテーマを限定するものではない。
【0023】
本出願に開示された「範囲」は、下限と上限の形式で限定され、与えられた範囲は、一つの下限と一つの上限を選定することで限定されるものであり、選定された下限と上限は、特定の範囲の境界を限定した。このように限定される範囲は、端値を含むか又は含まないものであってもよく、且つ任意の組み合わせが可能であり、即ち任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60-120と80-110の範囲がリストアップされている場合、60-110と80-120の範囲も想定できると理解される。なお、最小範囲値として1と2がリストアップされており、最大範囲値として3、4及び5がリストアップされている場合1-3、1-4、1-5、2-3、2-4と2-5という範囲がすべて想定できる。本出願では、特に断りのない限り、「a-b」という数値範囲は、a~bの任意の実数の組み合わせの短縮表現を表し、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0-5」は、本明細書においてすでに「0-5」の間のすべての実数をリストアップしたことを表し、「0-5」は、これらの数値の組み合わせの短縮表現だけである。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現すると、このパラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0024】
特に説明しない場合、本出願のすべての実施の形態及び選択的な実施の形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0025】
特に説明しない場合、本出願のすべての技術的特徴及び選択的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0026】
特に説明しない場合、本出願のすべてのステップは、順番に行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順番に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が、順番に行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順番に行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上に言及された前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいことは、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)などを含んでもよい。
【0027】
特に説明しない場合、本出願に言及された「含む」と「包含する」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含する」は、リストアップされていない他の成分をさらに含むか又は包含してもよく、リストアップされている成分のみを含むか又は包含してもよいことを表してもよい。
【0028】
特に説明しない場合、本出願では、用語である「又は」は包含的である。例を挙げると、「A又はB」というフレーズは、「A、B、又はAとBとの両方」を表す。より具体的には、Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)条件と、Aが偽である(又は存在しない)が、Bが真である(又は存在する)条件と、AとBがいずれも真である(又は存在する)条件とのいずれも「A又はB」を満たしている。
【0029】
近年、二次電池の応用範囲がますます広がるにつれて、二次電池は、水力発電所、火力発電所、風力発電所、太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電動自転車、電動バイク、電気自動車、軍事装備、航空宇宙などの複数の分野に広く用いられる。二次電池の目覚ましい発展により、そのエネルギー密度、サイクル性能と安全性能などに対する要求がますます高まっている。二次電池の重要な構成部分の一つとしてのセパレータは、当分野内でも研究と改良の重点となっている。セパレータの耐熱性能を改善するために、現在一般的に採用する方式は、セパレータ基材の表面にセラミック粒子(例えば、酸化物無機粒子、例えば二酸化ケイ素粒子)とポリマー接着剤を含むコーティングを設置して、高温にさらされた時のセパレータの熱収縮を抑制することである。しかしながら、従来のポリマー接着剤は、様々な問題が存在する。セラミック粒子との相溶性が低く、「粉落ち」が発生しやすく、コーティングと基材との間の接着状態が電池の製造と使用期間に長期に効果的に維持できず、且つセパレータと極板との間の接着力が低いことによって、二次電池のサイクル性能に影響を与える。
【0030】
そのため、当分野では、上記問題を改善できる接着剤を必要とする。そのため、本出願は、接着剤組成物を提供し、それは、接着作用を果たすポリマーと、安全性能を改善する、シランカップリング剤で改質されたセラミック粒子とを含み、良好な接着効果を実現し、容量保持率を向上させる。
【0031】
接着剤
本出願の一つの実施の形態では、本出願は、接着剤を提案し、この接着剤は、ポリマーと、シランカップリング剤で改質されたセラミック粒子とを含み、前記ポリマーは、第一類のモノマー、第二類のモノマー及び第三類のモノマーに由来する構造単位を含み、且つ前記第一類のモノマーと、第二類のモノマーと、第三類のモノマーとのモル比は、50~58:40~44:2~6であり、
前記第一類のモノマーは、一つ又は複数の式Iの化合物から選択され、
【化5】
ここで、Rは、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択されるとともに、Rは、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖のC1-15アルキル基、C3-6シクロアルキル基及びイソボルニル基から選択され、置換の場合、置換基は、ヒドロキシル基とC1-6鎖アルキル基から選択され、
前記第二類のモノマーは、一つ又は複数の式IIの化合物から選択され、
【化6】
ここで、Rは、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、
前記第三類のモノマーは、一つ又は複数の式IIIの化合物から選択され、
【化7】
ここで、Rは、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択されるとともに、Rは、水素原子、ヒドロキシC1-6アルキル基及びC1-6アルコキシ基から選択される。
【0032】
本出願の接着剤は、接着力が比較的高く、セラミック粒子の「粉落ち」現象を減少ひいては回避するとともに、セパレータと極板(特に正極極板)との間の接着効果を向上させ、二次電池のサイクル性能を改善する。
【0033】
第一類のモノマーは、アクリレート系モノマーであり、それは、ポリマーの抗膨潤能力を向上できるとともに、分子鎖セグメントにおける柔軟なモノマー鎖セグメントとして、ポリマーのガラス化転移温度を調節し、接着剤の施用時の流動性を改善することができ、良好な接着作用を発揮するのに有利である。第二類のモノマーは、アクリロニトリル類モノマーであり、それは、強い極性のシアノ基を有し、イオン電導率を向上させ、サイクル性能を改善するのに有利である。第三類のモノマーは、アクリルアミド類モノマーであり、分子量を調節する作用を果たす。上記三種類のモノマーのモル比を上記範囲内に制御する必要があり、ポリマーの分子量とガラス化転移温度を制御でき、それによって接着剤の接着性能を改善する。
【0034】
シランカップリング剤がセラミック粒子にしっかりと結合されることによって、無機粒子の有機環境での相溶性を改善する(例えば、分散性が高い)とともに、さらにポリマー及びセパレータベース層材料と架橋でき、接着剤とセパレータ、極板との接着効果を改善する。
【0035】
本明細書では、「シランカップリング剤で改質されたセラミック粒子」は、シランカップリング剤で被覆処理又は表面改質処理を行ったセラミック粒子と呼ばれてもよく、カップリング剤を加水分解した後に生成したヒドロキシル基とセラミック粒子の表面の活性基との間で共有結合又は水素結合を形成することによって、カップリング剤分子とセラミック粒子とを結合させることを意味する。
【0036】
いくつかの実施の形態では、Rは、水素原子とメチル基から選択され、且つRは、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、置換の場合、置換基は、ヒドロキシル基であり、及び/又はRは、水素原子とメチル基から選択され、及び/又はRは、水素原子とメチル基から選択され、且つRは、水素原子、ヒドロキシC1-4アルキル基及びC1-4アルコキシ基から選択される。
【0037】
いくつかの実施の形態では、前記第一類のモノマーは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピルから選択される一つ又は複数である。いくつかの実施の形態では、前記第二類のモノマーは、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルである。いくつかの実施の形態では、前記第三類のモノマーは、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド及びN-ブトキシメタクリルアミドから選択される一つ又は複数である。
【0038】
さらに上記第一類、第二類と第三類のモノマーを選択することによって、接着剤の接着効果をより効果的に改善し、電池のサイクル容量保持率を向上させることができる。
【0039】
いくつかの実施の形態では、前記第一類のモノマーと、第二類のモノマーと、第三類のモノマーとのモル比は、50~57:41~44:2~6である。上記範囲のモル比を採用し、接着剤の接着性能をさらに改善し、電池のサイクル容量保持率を向上させることができる。
【0040】
いくつかの実施の形態では、前記第一類のモノマー、第二類のモノマー及び第三類のモノマーの総モル量を基準として、前記第一類のモノマーのモル百分率含有量は、50-58mol%であり、選択的に50-57mol%であり、選択的に、前記第一類のモノマーのモル百分率含有量は、50mol%、51mol%、52mol%、53mol%、54mol%、55mol%、56mol%、57mol%又は58mol%であり、又は上記数値のうちのいずれか両方からなる範囲内である。いくつかの実施の形態では、前記第一類のモノマー、第二類のモノマー及び第三類のモノマーの総モル量を基準として、前記第二類のモノマーのモル百分率含有量は、40-44mol%であり、選択的に41-44mol%であり、選択的に、前記第二類のモノマーのモル百分率含有量は、40mol%、41mol%、42mol%、43mol%又は44mol%であり、又は上記数値のうちのいずれか両方からなる範囲内にある。いくつかの実施の形態では、前記第一類のモノマー、第二類のモノマー及び第三類のモノマーの総モル量を基準として、前記第三類のモノマーのモル百分率含有量は、2-6mol%であり、選択的に、前記第三類のモノマーのモル百分率含有量は、2mol%、3mol%、4mol%、5mol%又は6mol%であり、又は上記数値のうちのいずれか両方からなる範囲内にある。
【0041】
いくつかの実施の形態では、前記ポリマーの重量平均分子量は、60000~120000であり、選択的に63300~118800である。ポリマーの重量平均分子量は、上記範囲内にあり、ポリマーは、接着剤の施用中に適切な流動性を有し、接着効果を改善することができる。
【0042】
いくつかの実施の形態では、前記セラミック粒子は、当分野の従来の材料から選ばれてもよい。いくつかの実施の形態では、前記セラミック粒子は、酸化アルミニウム、ベーマイト、二酸化チタンと二酸化ケイ素から選択される。これらの材料を選択することにより、セパレータの耐熱性を向上させ、安全性を向上させることができる。
【0043】
いくつかの実施の形態では、前記シランカップリング剤で改質されたセラミック粒子の平均粒径Dv50は、200nm~980nmであり、選択的に、前記平均粒径Dv50は、330nm、460nm、550nm、590nm、780nm又は980nmであり、又はこれらの値のうちのいずれか両方からなる範囲内にある。選択的に、前記平均粒径Dv50は、200nm~600nmであり、さらに選択的に330nm~590nmであり、さらに選択的に330nm~550nmである。セラミック粒子の粒径を上記範囲内に制御することにより、セラミック粒子が均一に分布し且つセパレータ基材上に接着されるのに有利であり、且つセパレータ細孔を塞ぎ難く、接着力が高く、容量保持率がよい。
【0044】
いくつかの実施の形態では、前記シランカップリング剤は、式IVの化合物から選択される一つ又は複数であり、
【化8】
ここで、R、RとRは、それぞれ独立して直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、Rは、C2-6アルケニル基とC1-6直鎖アルキル基から選択され、前記C1-6直鎖アルキル基の末端炭素原子上の少なくとも一つの水素原子は、アミノ基、2,3-エポキシプロポキシ基及びメタクリロイルオキシ基から選択される置換基により置換される。いくつかの実施の形態では、前記C2-6アルケニル基は、末端アルケニル基である。いくつかの実施の形態では、R、RとRは、それぞれ独立して直鎖又は分岐鎖のC1-4アルキル基から選択され、選択的に、R、RとRは、それぞれ独立してメチル基、エチル基、n-プロピル基とイソプロピル基から選択され、さらに選択的に、R、RとRは、それぞれ独立してメチル基とエチル基から選択される。いくつかの実施の形態では、Rは、C2-4アルケニル基とC1-4直鎖アルキル基、選択的にC2-4末端アルケニル基とC1-4直鎖アルキル基から選択されるともに、前記C1-4直鎖アルキル基の末端炭素原子上の一つの水素原子は、アミノ基、2,3-エポキシプロポキシ基及びメタクリロイルオキシ基から選択される置換基により置換される。いくつかの実施の形態では、選択的に、R、RとRは、それぞれ独立してメチル基とエチル基から選択され、Rは、ビニル基、3-アミノプロピル基、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピル基と3-(メタクリロイルオキシ)プロピル基から選択される。上記シランカップリング剤で改質されたセラミック粒子(セラミック粒子に対する被覆処理又は表面改質処理と呼ばれてもよい)を選択し、カップリング剤を加水分解した後に生成したヒドロキシル基とセラミック粒子の表面の活性基との間で共有結合又は水素結合を形成するとともに、シランカップリング剤自体の活性基がポリマーとセパレータ基材と反応し、「ブリッジ結合」作用を果たすことによって、接着効果を改善するとともに、容量保持率を改善することができる。
【0045】
いくつかの実施の形態では、選択的に、R、RとRは、それぞれ独立してメチル基とエチル基から選択され、Rは、ビニル基、3-アミノプロピル基、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピル基と3-(メタクリロイルオキシ)プロピル基から選択される。いくつかの実施の形態では、特に、前記シランカップリング剤は、ビニルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシランと3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランから選択される一つ又は複数であり、良好な接着力と理想的な容量保持率を得ることができる。
【0046】
いくつかの実施の形態では、前記セラミック粒子とシランカップリング剤との重量比は、97.5~99.9:0.1~2.5であり、さらに選択的に98.0~99.9:0.1~2.0であり、またさらに選択的に98.2~99.4:0.6~1.8である。セラミック粒子とシランカップリング剤との重量比を上記範囲内にすることで、セラミック粒子の表面がシランカップリング剤により迅速かつ効果的に被覆されることによって、改善された分散性を有するが、カップリング剤自体が架橋、絮凝することなく、それによって接着力とサイクル性能を改善するという効果の実現に有利である。
【0047】
いくつかの実施の形態では、前記ポリマーと前記セラミック粒子との重量比は、40~90:10~60であり、選択的に50~80:20~50である。ポリマーとセラミック粒子との重量比が上記含有量範囲内にあり、「粉落ち」が発生しにくく、セパレータの耐熱性能がよく且つ電解液に対する浸潤と吸液保液の能力がよく、電池サイクル性能を改善するのに有利である。
【0048】
いくつかの実施の形態では、前記ポリマーは、前記セラミック粒子を被覆する。施用前、ポリマーをセラミック粒子上に被覆し、それによって粒子がセパレータ細孔に落ちて孔の目詰まりを引き起こすことを減少又は回避するとともに、接着剤組成物が基材上に理想的な配合比率で均一に塗布されることを確保して、改善された耐熱性能と良好な接着効果を実現する。
【0049】
セパレータ
本出願の他の態様は、ベース層と、前記ベース層の少なくとも一つの表面に設置されるコーティング層とを含むセパレータを提供し、前記コーティング層は、本出願の接着剤を含む。
【0050】
本出願は、セパレータベース層の材料種類に対して特に限定せず、良好な化学的安定性と機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造ベース層を選択してもよい。
【0051】
いくつかの実施の形態では、セパレータベース層の材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリビニリデンフルオライドのうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、特に限定しない。セパレータが多層複合フィルムである時、各層の材料は同一であっても異なっていてもよく、特に限定しない。
【0052】
二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
本出願の第三の態様は、二次電池を提供し、この二次電池は、本出願の接着剤、及び/又は本出願のセパレータを含む。
【0053】
本出願の第四の態様は、電池モジュールを提供し、この電池モジュールは、上記第三の態様の二次電池を含む。
【0054】
本出願の第五の態様は、電池パックを提供し、この電池パックは、上記第四の態様の電池モジュールを含む。
【0055】
本出願の第六の態様は、電力消費装置を提供し、この電力消費装置は、上記第三の態様の二次電池、第四の態様の電池モジュール及び第五の態様の電池パックから選択される少なくとも一つを含む。
【0056】
また、以下、図面を適切に参照して本出願の二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を説明する。
【0057】
本出願の一つの実施の形態では、二次電池を提供する。いくつかの実施の形態では、前記二次電池は、リチウムイオン二次電池である。
【0058】
一般的には、二次電池は、正極極板と、負極極板と、電解質と、セパレータとを含む。電池の充放電中においては、活性イオンは、正極極板と負極極板との間で往復して吸蔵と離脱される。電解質は、正極極板と負極極板との間でイオンを伝導する作用を果たす。セパレータは、正極極板と負極極板との間に設置され、主に正負極短絡を防止する作用を果たすとともに、イオンを通過させることができる。
【0059】
[正極極板]
正極極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設置される正極膜層とを含み、前記正極膜層は、本出願の第一の態様の正極活物質を含む。
【0060】
例として、正極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一方又は両方に設置される。
【0061】
いくつかの実施の形態では、前記正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層と、高分子材料ベース層の少なくとも一つの表面上に形成される金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することで形成されてもよい。
【0062】
いくつかの実施の形態では、正極活物質は、当分野において電池用の公知の正極活物質を採用してもよい。例として、正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそれぞれの改質化合物、ナトリウム遷移金属酸化物、ポリアニオン型化合物とプルシアンブルー系化合物のうちの少なくとも一つを含んでもよい。しかし、本出願は、これらの材料に限定されるものではなく、電池正極活物質として使用できる他の従来材料を使用してもよい。これらの正極活物質は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、リチウム遷移金属酸化物の例は、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO、LiMn)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM333と略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523と略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25(NCM211と略称されてもよい)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM622と略称されてもよい)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811と略称されてもよい))、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05)及びその改質化合物などのうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限らない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例は、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO(LFPと略称されてもよい))、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO)、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料のうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限らない。
【0063】
いくつかの実施の形態では、ナトリウム遷移金属酸化物において、遷移金属は、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Ti、Zn、V、Zr及びCeのうちの少なくとも一つであってもよい。ナトリウム遷移金属酸化物は、例えばNaであり、ここで、Mは、Ti、V、Mn、Co、Ni、Fe、Cr及びCuのうちの一つ又は複数であり、0<x≦1、0.5<y≦1.5である。いくつかの実施の形態では、正極活物質は、Na0.88Cu0.24Fe0.29Mn0.47を採用してもよい。
【0064】
いくつかの実施の形態では、ポリアニオン型化合物は、ナトリウムイオン、遷移金属イオン及び四面体型(YOn-アニオン単位を有する一種類の化合物であってもよい。遷移金属は、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Ti、Zn、V、Zr及びCeのうちの少なくとも一つであってもよく、Yは、P、S及びSiのうちの少なくとも一つであってもよく、nは、(YOn-の価数を表す。
【0065】
いくつかの実施の形態では、ポリアニオン型化合物は、ナトリウムイオン、遷移金属イオン、四面体型(YOn-アニオン単位及びハロゲンアニオンを有する一種類の化合物であってもよい。遷移金属は、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Ti、Zn、V、Zr及びCeのうちの少なくとも一つであってもよく、Yは、P、S及びSiのうちの少なくとも一つであってもよく、nは、(YOn-の価数を表し、ハロゲンは、F、Cl及びBrのうちの少なくとも一つであってもよい。
【0066】
いくつかの実施の形態では、ポリアニオン型化合物は、ナトリウムイオン、四面体型(YOn-アニオン単位、多面体単位(ZOm+及び選択的なハロゲンアニオンを有する一種類の化合物であってもよい。Yは、P、S及びSiのうちの少なくとも一つであってもよく、nは、(YOn-の価数を表し、Zは、遷移金属を表し、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Ti、Zn、V、Zr及びCeのうちの少なくとも一つであってもよく、mは、(ZOm+の価数を表し、ハロゲンは、F、Cl及びBrのうちの少なくとも一つであってもよい。
【0067】
いくつかの実施の形態では、ポリアニオン型化合物は、例えばNaFePO、Na(PO、NaM’POF(M’は、V、Fe、Mn及びNiのうちの一つ又は複数である)及びNa(VO(PO3-2y(0≦y≦1)のうちの少なくとも一つである。
【0068】
いくつかの実施の形態では、プルシアンブルー系化合物は、ナトリウムイオン、遷移金属イオン及びシアンイオン(CN)を有する一種類の化合物であってもよい。遷移金属は、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Ti、Zn、V、Zr及びCeのうちの少なくとも一つであってもよい。プルシアンブルー系化合物は、例えばNaMeMe’(CN)であり、ここで、Me及びMe’は、それぞれ独立してNi、Cu、Fe、Mn、Co及びZnのうちの少なくとも一つであり、0<a≦2、0<b<1、0<c<1である。
【0069】
いくつかの実施の形態では、正極膜層は、さらに選択的に接着剤を含む。例として、前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0070】
いくつかの実施の形態では、正極膜層は、さらに選択的に導電剤を含む。例として、前記導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0071】
いくつかの実施の形態では、以下の方式により正極極板を製造してもよい:上記正極極板を製造するための成分、例えば正極活物質、導電剤、接着剤といずれかの他の成分を溶媒(例えばN-メチルピロリドン)に分散させ、正極スラリーを形成、正極スラリーを正極集電体上にコーティングし、乾燥、冷間プレスなどの工程を経てた後、正極極板を得ることができる。
【0072】
[負極極板]
負極極板は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一つの表面上に設置される負極膜層とを含み、前記負極膜層は、負極活物質を含む。
【0073】
例として、負極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一方又は両方上に設置される。
【0074】
いくつかの実施の形態では、前記負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、銅箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層と、高分子材料基材の少なくとも一つの表面上に形成される金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することで形成されてもよい。
【0075】
いくつかの実施の形態では、負極活物質は、当分野において公知の電池用の負極活物質を採用してもよい。例として、負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコーン系材料、スズ系材料とチタン酸リチウムなどのうちの少なくとも一つを含んでもよい。前記シリコーン系材料は、シリコーンモノマー、シリコーン酸化物、シリコーン炭素複合体、シリコーン窒素複合体及びシリコーン合金のうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。前記スズ系材料は、モノマースズ、スズ酸化合物及びスズ合金のうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。しかし、本出願は、これらの材料に限定されるものではなく、電池負極活物質として使用できる他の従来材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0076】
いくつかの実施の形態では、負極膜層は、さらに選択的に接着剤を含む。前記接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。
【0077】
いくつかの実施の形態では、負極膜層は、さらに選択的に導電剤を含む。導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。
【0078】
いくつかの実施の形態では、負極膜層は、さらに選択的に他の助剤、例えば増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などを含む。
【0079】
いくつかの実施の形態では、以下の方式により負極極板を製造してもよい:上記負極極板を製造するための成分、例えば負極活物質、導電剤、接着剤といずれかの他の成分を溶媒(例えば脱イオン水)に分散させ、負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体上にコーティングし、乾燥、冷間プレスなどの工程を経た後、負極極板を得ることができる。
【0080】
[電解質]
電解質は、正極極板と負極極板との間でイオンを伝導する作用を果たす。本出願は、電解質の種類に対して具体的に限定せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、液体、ゲル状又は全固体であってもよい。
【0081】
いくつかの実施の形態では、前記電解質として、電解液を採用する。前記電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0082】
いくつかの実施の形態では、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF)、ヘキサフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF)、NaN(SOF)(NaFSIと略称)、NaClO、NaAsF、NaB(C(NaBOBと略称)、NaBF(C)(NaDFOBと略称)、NaN(SOとNaN(SOF)(SO)のうちの一つ又は複数から選ばれてもよく、ここで、Rは、C2b+1を代表し、bは、1-10範囲内の整数であり、選択的に1-3範囲内の整数であり、さらに選択的に、Rは、-CF、-C又は-CFCFCFである。
【0083】
いくつかの実施の形態では、溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン及びジエチルスルホンのうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。
【0084】
いくつかの実施の形態では、前記電解液は、さらに選択的に添加剤を含む。例えば、添加剤は、負極膜形成添加剤、正極膜形成添加剤を含んでもよく、さらに、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温又は低温性能を改善する添加剤などを含んでもよい。
【0085】
いくつかの実施の形態では、正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリに製造されることができる。
【0086】
[外装体]
いくつかの実施の形態では、二次電池は、正極極板、負極極板と電解質をパッケージングするための外装体を含んでもよい。一例として、正極極板、負極極板とセパレータは、積層又は捲回によって積層構造電池コア又は捲回構造電池コアを形成してもよく、電池コアは、外装体内にパッケージングされ、電解質は、本出願の第一の態様に記載の電解液を採用し、電解液は、電池コアに浸潤される。二次電池における電池コアの数は、一つ又は複数であってもよく、需要に応じて調節することができる。
【0087】
一つの実施の形態では、本出願は、電極アセンブリを提供する。いくつかの実施の形態では、正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリに製造されることができる。外装体は、上記電極アセンブリ及び電解質をパッケージングするために用いられてもよい。
【0088】
いくつかの実施の形態では、二次電池の外装体は、パウチ、例えば袋状パウチであってもよい。パウチの材質は、プラスチックであってもよく、例えばポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などのうちの一つ又は複数を含んでもよい。いくつかの実施の形態では、二次電池の外装体は、硬質ケース、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼製ケースなどであってもよい。
【0089】
本出願は、二次電池の形状に対して特に限定せず、それは、円筒型、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、図1は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0090】
いくつかの実施の形態では、図2を参照すると、外装体は、ケース51とカバープレート53とを含んでもよい。ここで、ケース51は、底板と底板に接続される側板を含んでもよく、底板と側板は囲んで収容キャビティ形成する。ケース51は、収容キャビティと連通する開口を有し、カバープレート53は、前記収容キャビティを密閉するように前記開口に蓋設されることが可能である。正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容キャビティ内にパッケージングされる。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤される。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、一つ又は複数であってもよく、当業者は、実際の需要に応じて選択することができる。
【0091】
いくつかの実施の形態では、二次電池は、電池モジュールに組み立てられることが可能であり、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの応用と容量に応じて選択することができる。
【0092】
図3は、一例としての電池モジュール4である。図3を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並べて設置されてもよい。無論、他の任意の方式で並べてもよい。さらに締結具によってこれらの複数の二次電池5を固定することができる。
【0093】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は、この収容空間に収容される。
【0094】
いくつかの実施の形態では、上記電池モジュールは、さらに電池パックに組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池パックの応用と容量に応じて選択することができる。
【0095】
図4図5は、一例としての電池パック1である。図4図5を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと電池ボックスに設置される複数の電池モジュール4が含まれもよい。電池ボックスは、上部筐体2と下部筐体3とを含み、上部筐体2は、下部筐体3に蓋設され、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ボックスに並べられてもよい。
【0096】
また、本出願は、電力消費装置をさらに提供し、前記電力消費装置は、本出願による二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも一つを含む。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として用いられてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電力消費装置は、移動体機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、これらに限らない。
【0097】
前記電力消費装置として、その使用需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0098】
図6は、一例としての電力消費装置である。この電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置の二次電池の高パワーと高エネルギー密度に対する需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0099】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。この装置は、一般的には薄型化が要求され、二次電池を電源として採用することができる。
【0100】
実施例
以下、本出願の実施例を説明する。以下に記述される実施例は、例示的なものであり、本出願を解釈するためのものに過ぎず、本出願に対する制限と理解されるべきではない。実施例では特定の技術又は条件が明記されていない場合、当分野内の文献に記述された技術又は条件に従って、又は製品仕様書に従って行う。使用される試剤又は器具は、メーカーが明記されておらず、いずれも市販で入手できる通常の製品である。
【実施例
【0101】
1.ポリマーの製造
製造例1
室温で、モル比50:44:6に従って、アクリル酸メチル60.92g、アクリロニトリル33.04g及びアクリルアミド6.04gを秤量し、メカニカルスターラー、温度計及び凝縮パイプが入れられた500mLの四つ口フラスコに加え、そして3gのラウリル硫酸ナトリウム乳化剤、1gの過硫酸アンモニウム開始剤及び120gの脱イオン水を加え、1600rpmの回転数で30min攪拌して乳化させ、そして窒素気保護下で75℃まで昇温して4h反応させ、pH値を6~8に調節し、即座に40℃以下まで降温して排出し、ポリマー1を得た。
【0102】
製造例2~5
製造例2~5の製造ステップは、製造例1と同じであるが、相違点は、三種類のモノマーのモル比がそれぞれ51:43:6、52:42:6、53:41:6及び54:40:6であり、且つ三種類のモノマーの合計質量が100gであり、ポリマー2~5を得ることである。
【0103】
製造例6~10
製造例6において、室温で、モル比51:44:5に従って、アクリル酸n-ブチル69.71g、アクリロニトリル24.90g及びN-メチロールアクリルアミド5.39gを秤量し、他のステップは、製造例1と同じであり、ポリマー6を得た。
【0104】
製造例7~10では、上記三種類のモノマーのモル比は、それぞれ52:43:5、53:42:5、54:41:5、55:40:5であり、且つ三種類のモノマーの合計質量は、100gであり、他のステップは、製造例1と同じであり、ポリマー7~10を得た。
【0105】
製造例11~15
製造例11において、室温で、モル比52:44:4に従って、メタクリル酸エチル68.42g、アクリロニトリル26.91g及びN-メチロールアクリルアミド4.66gを秤量し、他のステップは、製造例1と同じであり、ポリマー11を得た。
【0106】
製造例12~15では、上記三種類のモノマーのモル比は、それぞれ53:43:4、54:42:4、55:41:4、56:40:4であり、且つ三種類のモノマーの合計質量は、100gであり、他のステップは、製造例1と同じであり、ポリマー12~15を得た。
【0107】
製造例16~20
製造例16において、室温で、モル比53:44:3に従って、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル67.94g、メタクリロニトリル29.08g及びN-ブトキシメタクリルアミド2.99gを秤量し、他のステップは、製造例1と同じであり、ポリマー16を得た。
【0108】
製造例17~20では、上記三種類のモノマーのモル比は、それぞれ54:43:3、55:42:3、56:41:3、57:40:3であり、且つ三種類のモノマーの合計質量は、100gであり、他の製造ステップは、製造例1と同じであり、ポリマー17~20を得た。
【0109】
製造例21~25
製造例21において、室温で、モル比54:44:2に従って、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル70.44g、メタクリロニトリル26.71g及びN-ブトキシメタクリルアミド2.85gを秤量し、他の製造ステップは、製造例1と同じであり、ポリマー21を得た。
【0110】
製造例22~25では、上記三種類のモノマーのモル比は、それぞれ55:43:2、56:42:2、57:41:2、58:40:2であり、且つ三種類のモノマーの合計質量は、100gであり、他の製造ステップは、製造例1と同じであり、ポリマー22~25を得た。
【0111】
製造例26
製造例26において、室温で、モル比52:42:6に従って、アクリル酸シクロヘキシル75.13g、アクリロニトリル20.88g、アクリルアミド4.00gを秤量し、他の製造ステップは、製造例1と同じであり、ポリマー26を得た。
【0112】
製造例27
製造例27において、室温で、モル比57:40:3に従って、メタクリル酸イソボルニル80.07g、メタクリロニトリル16.95g、N-ブトキシメタクリルアミド2.98gを秤量し、他の製造ステップは、製造例1と同じであり、ポリマー27を得た。
【0113】
比較製造例1
室温で、モル比60:32:8に従って、アクリル酸メチル69.50g、アクリロニトリル22.85g及びアクリルアミド7.65gを秤量し、他のステップは、製造例1と同じであり、ポリマーC1を得た。
【0114】
比較製造例2
室温で、モル比60:40に従って、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル74.42g及びメタクリロニトリル25.58gを秤量し、他のステップは、製造例1と同じであり、ポリマーC2を得た。
【0115】
ゲル浸透クロマトグラフを採用して、上記製造例と比較製造例で得られたポリマー1-26と比較ポリマー1の重量平均分子量を測定した。
【0116】
表1は、上記製造例1-25と比較製造例1-2におけるモノマーとそのモル比、及び最終的に得られたポリマーの重量平均分子量を示す。
【0117】
【表1】
【0118】
2.シランカップリング剤で改質された二酸化ケイ素粒子の製造
水:エチルアルコール:シランカップリング剤の質量比8:72:20で混合液を製造し、そして二酸化ケイ素粒子をスターラーに加えて60~70℃まで加熱し、上記混合液をゆっくりと滴下し、最終的に二酸化ケイ素粒子と混合液の質量比が以下の表2に示すようになった。滴下完了後、2~3h攪拌を続け、混合材を得た。混合材を120℃で2h乾燥処理し、シランカップリング剤で改質された二酸化ケイ素粒子を得た。
【0119】
レーザー粒度分析装置を採用し、脱イオン水を分散剤として、シランカップリング剤で改質された二酸化ケイ素粒子の平均粒径Dv50を測定し、以下の表2に示す。
【0120】
3.接着剤組成物の製造及び性能テスト
実施例1
1.接着剤組成物の製造
ポリマーとシランカップリング剤で改質された二酸化ケイ素粒子との75:25の質量比に従って、製造例1で得た750gのポリマー1に250gのシランカップリング剤で改質された二酸化ケイ素粒子と1kgの脱イオン水を加え、室温条件下で1時間攪拌し、噴霧及び乾燥を経て、ポリマーが改質された二酸化ケイ素粒子を被覆し、ボールミル粉砕し、接着剤を得た。用いられたシランカップリング剤は、ビニルトリエトキシシランであり、製造したシランカップリング剤で改質された二酸化ケイ素粒子の平均粒径Dv50は、460nmである。
【0121】
2.セパレータの製造
厚さが20μm、平均孔径が80nmの市販のPP-PE共重合体微細孔フィルム(卓高電子科技公司から、型番20)を基材として採用する。以上に製造したコーティング組成物をN-メチルピロリドン(NMP)において均一に攪拌混合し、スラリー(固形分が20%である)を得た。スラリーを基材の二つの表面上に均一に塗布し、有機溶媒を乾燥させて除去し、コーティング組成物の基材上の塗布密度が0.5g/mであり、セパレータを得た。
【0122】
3.正極極板の製造
ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、リン酸鉄リチウム(LFP)、導電剤カーボンブラック、N-メチルピロリドン(NMP)を質量比1.2:58.38:0.42:40で、十分に均一に攪拌混合した後に正極スラリーを製造した。この正極スラリーを200g/mの担持量で正極集電体アルミニウム箔上に均一にコーティングし、その後に、乾燥、冷間プレス、スリットを経て、正極極板を得た。
【0123】
4.負極極板の製造
人造黒鉛、導電剤アセチレンブラック、接着剤スチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を質量比96.2:1.0:1.6:1.2で脱イオン水に加え、十分に均一に攪拌混合した後、負極スラリー(固形分が63%である)を製造した。この負極スラリーを98g/mの担持量で負極集電体銅箔上にコーティングし、その後に、乾燥、冷間プレス、スリットを経て、負極極板を得た。
【0124】
5.電解液の製造
25℃で、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で混合して混合溶媒を得、そしてLiPFを上記混合溶媒に溶解し、電解液を得、ここで、LiPFの濃度が1mol/Lである。
【0125】
6.二次電池の製造
上記正極極板、セパレータ、負極極板を順番に積層して捲回し、予備プレス成形し(この期間にセパレータが極板と接着し)、電極アセンブリを得、電極アセンブリを外装体に入れ、上記製造した電解液を加え、パッケージング、静置、化成、エージングなどの工程を経た後、二次電池を得た。
【0126】
実施例2
以下の表2に示すように、ポリマーとシランカップリング剤で改質された二酸化ケイ素との60:40の質量比に従って、600gの製造例11のポリマーに400gの改質された二酸化ケイ素粒子と1kgの脱イオン水を加え、室温条件下で1時間攪拌し、噴霧及び乾燥を経て、ボールミル粉砕し、接着剤を得た。実施例2他のステップは、実施例1と同じである。
【0127】
実施例3~5
以下の表2に示すように、実施例3~5におけるポリマーは、それぞれ製造例24、26と27で得られたポリマー24、26と27であり、これ以外の他のステップは、実施例1と同じである。
【0128】
実施例6~8
以下の表2に示すように、実施例6~8におけるシランカップリング剤は、それぞれ3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシランと3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランであり、他のステップは、実施例1と同じである。
【0129】
実施例9~13
以下の表2に示すように、実施例9~13における二酸化ケイ素粒子とシランカップリング剤ビニルトリエトキシシランとの質量比は、それぞれ99.9:0.1、99.4:0.6、98.2:1.8、98.0:2.0、97.6:2.4であり、シランカップリング剤で改質された二酸化ケイ素粒子の平均粒径Dv50は、順に、780nm、550nm、330nm、590nm、980nmであり、他のステップは、実施例2と同じである。
【0130】
実施例14~17
以下の表2に示すように、実施例14~17におけるポリマーとシランカップリング剤で改質された二酸化ケイ素との質量比は、それぞれ40:60、50:50、80:20、90:10であり、他のステップは、実施例3と同じである。
【0131】
比較例1
表2に示すように、比較例1と実施例2の区別は、接着剤組成物にシランカップリング剤が含まれないことであり、他のステップは、実施例2と同じである。
【0132】
比較例2~3
表2に示すように、比較例2~3と実施例1の区別は、ポリマーがそれぞれ比較製造例1と2で得られたポリマーC1とC2であることであり、他のステップは、実施例1と同じである。
【0133】
2.テスト方法:
(1)セパレータと正極極板の接着力テスト
電池正極板をセパレータと重ね合わせ、ホットプレスに置き、ホットプレスのパラメータを温度25℃、圧力10t、時間30sに設定し、加圧して接着されたセパレータ/正極板サンプルを製造し、セパレータ/極板サンプルを150×20mmの矩形サンプルストリップに切断した。両面テープで上記矩形サンプルストリップの正極板の片面を鋼板上に粘着し、矩形サンプルストリップの一端においてセパレータと正極板を長手方向に沿って2cmの長さ分離し、テスト試験片を製造した。
【0134】
鋼板を水平に維持し且つ万能試験機(協強器具製造(上海)有限公司、型番CTM2100)の下部治具で固定し、以上に記載のセパレータの剥離端部を万能試験機の上部治具で固定し、引張機に接続した。テスト条件を引張速度20mm/minに設定し、水平に10cm引いた。引張力が安定した後、引張力の値を記録し、引張力の値とサンプル幅との比により、セパレータと極板の接着力を得た。テスト結果を表2に示す。
【0135】
(2)電池サイクル性能/容量保持率テスト
実施例1を例とし、電池容量保持率テストプロセスは、以下のとおりである。25℃下で、実施例1において製造して得られた電池を1/3Cの定電流で4.3Vまで充電し、そして4.3Vの定電圧で電流0.05Cまで充電し、5min放置し、1/3Cで2.8Vまで放電し、得られた放電容量を初期容量Cとし、上記同一の電池に対して以上のステップを繰り返し、同時にn回目サイクルした後の電池の放電容量Cを記録し、毎回サイクルした後の電池容量保持率Pは、=(C/C)×100%である。即ち特定のサイクル回数での電池容量保持率を用いて、サイクル性能の差異を反映できる。
【0136】
表2において、実施例1に対応する電池容量保持率データは、上記テスト条件で100回サイクルした後にテストしたデータである。比較例及び他の実施例のテストプロセスは上記と同様である。テスト結果を表2に示す。
【0137】
【表2】
【0138】
以上の表2における実施例1-17と比較例1-3の比較から分かるように、本出願の接着剤組成物は、良好な接着性を有し、二次電池の電池容量保持率を改善するのに有利である。
【0139】
説明すべきこととして、本出願は、上記実施の形態に限らない。上記実施の形態は、例示であり、本出願の技術案の範囲内に技術的思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用効果を奏する実施の形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれる。なお、本出願の趣旨を逸脱しない範囲内で、実施の形態に対して当業者が想到できる様々な変形を加え、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構成された他の方式も、本出願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0140】
1 電池パック
2 上部筐体
3 下部筐体
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ケース
52 電極アセンブリ
53 カバープレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6