(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】探索画像を用いた術前ボリューム画像データの自動記録
(51)【国際特許分類】
A61B 90/20 20160101AFI20250217BHJP
【FI】
A61B90/20
(21)【出願番号】P 2024540956
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(86)【国際出願番号】 EP2022088028
(87)【国際公開番号】W WO2023135022
(87)【国際公開日】2023-07-20
【審査請求日】2024-08-16
(31)【優先権主張番号】102022100626.3
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502303382
【氏名又は名称】カール ツアイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230514
【氏名又は名称】泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ザウアー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ハウガー
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-38506(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0270690(US,A1)
【文献】国際公開第2021/087433(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0348311(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00―90/98
G02B 21/00―21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 患者(805)を少なくとも部分的に映す少なくとも1つの探索画像(111~113)を記録するためにロボット可視化システム(801)を作動させるステップであって、前記ロボット可視化システムは、少なくとも1つの探索画像シーケンスを記録するために作動され、前記少なくとも1つの探索画像シーケンスのそれぞれは、複数の対応する探索画像を含む、ステップと、
- 前記少なくとも1つの探索画像シーケンスの前記記録中に、前記ロボット可視化システムの位置を何度も変更し、それによってそれぞれの探索画像シーケンスの複数の探索画像によってそれぞれの探索画像シーケンスに割り当てられた探索領域をスキャンできるようにするために、前記ロボット可視化システムの少なくとも1つのモータを作動させるステップであって、第一の探索領域は前記少なくとも1つの探索画像シーケンスの第一の探索画像シーケンスに割り当てられ、第二の探索領域は前記少なくとも1つの探索画像シーケンスの第二の探索画像シーケンスに割り当てられ、前記ロボット可視化システムは、まず、前記第一の探索画像シーケンスを記録するために作動され、その後、前記第二の探索画像シーケンスを記録するために作動される、ステップと、
- 前記第一の探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像を評価するステップと、前記第一の探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像を評価することに基づいて、前記第二の探索画像シーケンスを記録するために使用される、前記ロボット可視化システムの少なくとも1つの画像撮影パラメータの値を特定するステップと、
- 前記少なくとも1つの探索画像(111~113)中の標的領域(131)の配置を特定するステップと、
- 前記少なくとも1つの探索画像(111~113)中の前記標的領域(131)の前記配置に基づいて、深さ分解能を有する測定データを記録するために前記ロボット可視化システム(801)を作動させるステップであって、前記測定データは、前記患者(805)の解剖学的構造のトポグラフィを示し、それによって前記ロボット可視化システムにより記録された画像と前記患者の術前ボリューム画像データとの間の変換仕様の特定が可能となる、ステップと、
を含むコンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記第一の探索画像シーケンスの前記1つ又は複数の探索画像を評価するステップは、前記第一の探索画像シーケンスの前記1つ又は複数の探索画像中の、前記患者に関して定置に固定されたマーカの配置を特定するステップを含み、
前記少なくとも1つの画像撮影パラメータの前記値は、前記患者に関して定置に固定された前記マーカの前記配置に基づいて特定される、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの画像撮影パラメータは、前記第一の探索領域に対する前記第二の探索領域の配置を含む、
請求項1又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの画像撮影パラメータは、前記第一の探索画像シーケンスの探索画像の前記第二の探索画像シーケンスへの再使用を含む、
請求項1
又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの画像撮影パラメータは、前記第二の探索画像シーケンスを記録するための照明パラメータを含む、
請求項1
又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
少なくとも1つの探索画像は、前記第一の探索画像シーケンスの一部でもあり、前記第二の探索画像シーケンスの一部でもある、
請求項1
又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
- 前記第二の探索画像シーケンスの前記1つ又は複数の探索画像中の前記患者の皮膚組織を認識するために、前記第二の探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像を評価するステップ
をさらに含み、
前記標的領域(131)の前記配置が前記皮膚組織の認識に基づいて特定される、
請求項1
又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
- 前記ロボット可視化システムに関して並べて設置された追跡システムから追跡データを受信するステップであって、前記追跡データは、前記ロボット可視化システムに対する、前記患者に関して定置に固定されたマーカの配置を記述する、ステップと、
- 前記少なくとも1つの探索画像シーケンスを記録するために使用される前記ロボット可視化システムの少なくとも1つの画像撮影パラメータの値を、前記追跡データに基づいて特定するステップと、
をさらに含む、
請求項1
又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
- 前記少なくとも1つの探索画像シーケンスを記録するために使用される前記ロボット可視化システムの少なくとも1つの画像撮影パラメータの値を、前記ロボット可視化システムに対する前記患者の配置と、前記患者に関して定置に固定されたマーカに対する前記標的領域(131)の配置のうちの少なくとも一方に関する事前の知識とに基づいて特定するステップ
をさらに含む、
請求項1
又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
- 前記少なくとも1つの探索画像シーケンスの前記記録中に、前記少なくとも1つの探索画像シーケンスの、すでに捕捉された探索画像を評価するステップと、
- 前記評価に応じて、前記少なくとも1つの探索画像シーケンスの前記記録を終了する、及び/又は前記少なくとも1つの探索画像シーケンスを記録するために使用される前記ロボット可視化システムの少なくとも1つの画像撮影パラメータの値を調整するステップと、
をさらに含む、
請求項1
又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記標的領域(131)の前記配置は、前記少なくとも1つの探索画像内の1つ又は複数の事前に定義された構造の構造認識に基づいて特定され、
前記1つ又は複数の事前に定義された構造は、皮膚組織、解剖学的特徴を含む群から選択される、
請求項1
又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記ロボット可視化システムの概観画像撮影ユニット及び前記ロボット可視化システム(801)の顕微鏡画像撮影ユニットのうちの少なくとも1つが、前記少なくとも1つの探索画像(111~113)を記録するために作動される、
請求項1
又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記測定データは、以下の群、すなわち立体画像撮影、タイムオブフライト測定、構造化照明、及び非合焦奥行き推定から選択される測定方法により捕捉される、
請求項1
又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項14】
前記測定データは前記少なくとも1つの探索画像の少なくとも1つを含む、
請求項1
又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項15】
- 前記患者の皮膚組織を画像化しないデータ要素を取り除くために、前記測定データをフィルタ処理するステップ(3036)
をさらに含む、請求項1
又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項16】
- 前記少なくとも1つの探索画像(111~113)の前記記録の前に、前記ロボット可視化システム(801)を事前に定義された参照配置に配置するために、前記ロボット可視化システム(801)のモータを作動させるステップ(3005)
をさらに含む、請求項1
又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項17】
- 前記少なくとも1つの探索画像(111~113)の前記記録の前に、前記ロボット可視化システム(801)の少なくとも1つの画像撮影パラメータを事前に定義された値に設定するステップ(3010)
をさらに含む、請求項1
又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項18】
前記方法は、事前に定義された制御スクリプトに基づいて自動的に実行される、
請求項1
又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項19】
前記制御スクリプトは、画像データ又は測定データを評価するための解析モジュールを含み、
前記制御スクリプトは、前記ロボット可視化システムを位置決めするための位置決めモジュールを含み、
前記解析モジュールは1つ又は複数の機械学習アルゴリズムを含み、
前記位置決めモジュールは機械学習アルゴリズムを含まない、
請求項18に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項20】
- 前記測定データに基づいてトポグラフィデータを生成するステップと、
- 前記トポグラフィデータセットと前記術前ボリューム画像データとの位置合わせを実行するステップと、
- 前記位置合わせに基づいて前記変換仕様を特定するステップと、
をさらに含む、請求項1
又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項21】
- 患者を少なくとも部分的に映す少なくとも1つの探索画像を記録するためにロボット可視化システムを作動させるステップであって、前記ロボット可視化システムは、少なくとも1つの探索画像シーケンスを記録するために作動され、前記少なくとも1つの探索画像シーケンスのそれぞれは、複数の対応する探索画像を含む、ステップと、
- 前記少なくとも1つの探索画像シーケンスの前記記録中に、前記ロボット可視化システムの位置を何度も変更し、それによってそれぞれの探索画像シーケンスの複数の探索画像によってそれぞれの探索画像シーケンスに割り当てられた探索領域をスキャンできるようにするために、前記ロボット可視化システムの少なくとも1つのモータを作動させるステップであって、第一の探索領域は前記少なくとも1つの探索画像シーケンスの第一の探索画像シーケンスに割り当てられ、第二の探索領域は前記少なくとも1つの探索画像シーケンスの第二の探索画像シーケンスに割り当てられ、前記ロボット可視化システムは、まず、前記第一の探索画像シーケンスを記録するために作動され、その後、前記第二の探索画像シーケンスを記録するために作動される、ステップと、
- 前記第一の探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像を評価するステップと、前記第一の探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像を評価することに基づいて、前記第二の探索画像シーケンスを記録するために使用される、前記ロボット可視化システムの少なくとも1つの画像撮影パラメータの値を特定するステップと、
- 前記少なくとも1つの探索画像中の標的領域(131)の配置を特定するステップと、
- 前記少なくとも1つの探索画像中の前記標的領域(131)の前記配置に基づいて、深さ分解能を有する測定データを記録するために前記ロボット可視化システムを作動させるステップであって、前記測定データは、前記患者の解剖学的構造のトポグラフィを示すそれによって前記ロボット可視化システムにより記録された画像と前記患者の術前ボリューム画像データとの間の変換仕様の特定が可能となる、ステップと、
を実行するように構成されたデータ処理ユニット(910)。
【請求項22】
請求項21に記載のデータ処理ユニットであって、請求項1
又は2に記載の方法を実行するように構成される、データ処理ユニット(910)。
【請求項23】
- 請求項2
1に記載のデータ処理ユニットと、
- ロボット可視化システムと、
を含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
各種の例は、標的領域の深さ分解能を持つ測定データを捕捉するための技術に関し、深さ分解能を持つ測定データにより、ロボット可視化システムにより捕捉された画像データと術前ボリューム画像データとの間の変換仕様を特定することができる。
【背景技術】
【0002】
マイクロ手術におけるナビゲーション応用で、手術中に例えば術前ボリューム画像データ(例えば、コンピュータ断層撮影画像、すなわちCT、又は磁気共鳴画像、すなわちMRI)を患者の解剖学的空間上に正確に重ねることができるようにするために、手術中に患者の位置に関して術前画像データの位置合わせを行うことが必要であり、すなわち、術前画像データを、空間的に正確に患者と重ね合わせることができるようにするためにどのように変換しなければならないかを説明する変換仕様が特定される。
【0003】
変換仕様を特定するには、手術室内で術前ボリューム画像データ内の点と患者からの点を対応させる必要がある。変換仕様は、手術室内のロボット可視化システムにより捕捉された画像を術前ボリューム画像データにマッピングし、及び/又はその逆を行う。
【0004】
幾つかの例では、この目的のために物理的マーカが患者に取り付けられ、これは術前ボリューム画像データと手術室内の可視化システムの画像データの両方において見える。この方式の欠点は、物理的マーカを患者に取り付けなければならないことであり、これはエラーを生じやすく、労力を要する。さらに、術前ボリューム画像データの記録のためにも、実際の手術の前にも、物理的マーカを患者に、又は患者に関して定置に取り付ける必要がある。
【0005】
他の例では、マーカを用いない方式が取られる。この場合、患者の標的領域の表面幾何構造(解剖学的構造のトポグラフィ)は、手術室で捕捉された深さ分解能を有する測定データと術前画像データとの両方において見える。
【0006】
例えば、手持ち式ポインタ器具を使って、頭蓋骨の幾何構造の重要点(耳の基部、頬、鼻等)にタッチすることができ、このようにして得られた測定データの対応する測定点(するとこれらは3次元空間内で画定される)をナビゲーションシステムに転送できる。これによって、術前データセットから得られた表面に関して位置合わせされた頭蓋骨表面のスパースサンプリングが可能となる。このような技術では、また別のハードウェアが必要であり、また、ポインタ器具の操作によって測定データを捕捉するための特定の時間経過が生じる。
【0007】
表面をより広範囲に、より迅速に、追加のハードウェアを必要とせずに捕捉するために、ロボット可視化システム(例えば、手術用顕微鏡)の立体画像データを使って、そこから患者の頭部の表面を特定する方法が提案されている。例えば、米国特許第7561733B2号明細書又は独国特許出願公開第102014210051A1号明細書を参照されたい。しかしながら、これらの方法は、ロボット可視化システムと患者とのアラインメントがすでに取られていることを前提としており、それによって立体画像データは、位置合わせを可能にする標的領域を画像化する。しかしながら、これは通常の場合では当てはまらず、なぜならこの情報は患者の位置合わせ後にしか入手できないからである。したがって、マニュアルでのアラインメントが必要であり、今度はそれが労力を要し、エラーを生じやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ロボット可視化システムにより捕捉された画像と患者の術前ボリューム画像データとの間の変換仕様を特定することを可能にする、改良された技術が求められている。特に、これまでに知られていた技術の上述の欠点と限界を排除又は低減させる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、独立特許請求項の特徴により達成される。従属特許請求項の特徴は実施形態を定義する。
【0010】
患者の迅速で効率的な位置合わせは、本明細書に記載の技術により可能となる。これは、変換仕様を高い信頼性で、且つ自動的に特定できることを意味する。このようにして、変換仕様を特定するために深さ分解能を有する測定データが捕捉される標的領域を、自動的に見つけ、認識することができる。
【0011】
このように、本明細書に記載の技術によって、ロボット可視化システムにより捕捉された画像に関連付けられる参照座標系の中で術前ボリューム画像データを位置合わせすることが可能となる。
【0012】
コンピュータ実装方法は、少なくとも1つの探索画像をこのように記録するためにロボット可視化システムを作動させることを含む。少なくとも1つの探索画像は、患者を少なくとも部分的に画像化する。さらに、この方法はまた、少なくとも1つの探索画像中の標的領域の配置を特定することも含む。さらに、方法は、少なくとも1つの探索画像中の標的領域の配置に基づいて、深さ分解能を有する測定データを記録するためにロボット可視化システムを作動させることを含む。この場合、測定データは患者の解剖学的構造のトポグラフィを示す。測定データによって、ロボット可視化システムにより記録された画像と患者の術前画像データとの間の変換仕様を特定することが可能となる。
【0013】
標的領域は、患者の、その領域に関する術前ボリューム画像データが入手可能な領域を指すことができる。術前ボリューム画像データはそれゆえ、患者の解剖学的構造の、標的領域の区域のトポグラフィも示すことができる。例えば、標的領域は、計画された手術の介入区域を示すことができる。標的領域は、例えば患者の頭部を含む。標的領域は、患者の頭部の一部を含むことができる。
【0014】
標的領域の配置は、標的領域の位置及び/又は向き及び/又は形状及び/又は大きさを指すことができる。
【0015】
ロボット可視化システムにより少なくとも1つの探索画像を記録することによって、それゆえ、標的領域を探索し、認識することが可能となる。
【0016】
例えば、ロボット可視化システムのマニュアルでの位置付け等、標的領域を手作業で見つけることを回避することができる。ロボット可視化システムの自動アラインメントは、それにより測定データを患者の解剖学的構造の標的領域におけるトポグラフィのオブザーバブルとして捕捉することができるが、少なくとも1つの探索画像中の標的領域の特定された配置に基づいて実行可能となる。
【0017】
術前ボリューム画像データは、例えばCT画像データ又はMR画像データとすることができる。これらはまた、ポジトロン放出断層撮影画像データとすることもできる。
【0018】
例えば、個々の探索画像がロボット可視化システムにより捕捉されるようにすることが考えられる。特に、例えば概観画像は、拡大機能のない、又は倍率が比較的低いレンズを使用する概観画像撮影ユニットの対応するカメラによって捕捉することができる。このような場合、探索画像は、標的領域及びそれ以外に周囲の区域を画像化することができる。例えば、患者の頭部の区域内の典型的な手術では、患者の頭部は胸部まで、又は胴若しくは腰部まで撮影され得る。
【0019】
他の例では、複数の探索画像を記録することも考えられ、各探索画像は異なる区域を画像化する。探索画像のグリッドを捕捉することができる。
【0020】
例えば、少なくとも1つの探索画像シーケンスを記録するようにロボット可視化システムを作動させることができる。少なくとも1つの探索画像シーケンスの各々は、複数の対応する探索画像を含むことができる。
【0021】
これは、探索画像を、例えば1段階又は2段階で1つ又は2つの(又はそれ以上の)シーケンスとして撮影することができることを意味する。
【0022】
例えば、それぞれの探索画像シーケンスにそれぞれ関連付けられる探索画像は、探索画像シーケンスごとに調整し、特に精密化することができる。例えば、異なる探索画像シーケンスの複数の探索画像は、異なる分解能を有することができる。例えば、異なる探索画像シーケンスの複数の探索画像の倍率を増大させることができる。
【0023】
例えば、探索画像シーケンスの複数の探索画像により、対応する探索領域をスキャンすることができる。この目的のために、少なくとも1つの探索画像シーケンスの記録中にロボット可視化システムの少なくとも1つのモータを作動させることによって、ロボット可視化システムの位置を何度も変更することができる。
【0024】
例えば、探索画像を撮影するために使用される画像撮影ユニットの対応する光学系及びカメラは、手術用顕微鏡の顕微鏡ヘッドに取り付けることができ、顕微鏡ヘッドは、例えば並進及び/又は回転のための1つ又は複数の可動軸を有するスタンドにより、空間内で位置付けることができる。
【0025】
比較的大きい探索領域は、スキャンによってカバーすることができる。しかも、それと同時に比較的高い倍率も使用することができ、それによって標的領域を高い信頼度で認識することができる。
【0026】
例えば、第一の探索領域を、少なくとも1つの探索画像シーケンスの第一の探索画像シーケンスに割り当てることができ、第二の探索領域を、少なくとも1つの探索画像シーケンスの第二の探索画像に割り当てることができる。
【0027】
第二の探索領域は、第一の探索領域に含めることができる。第二の探索領域はまた、第一の探索領域とは部分的に異なるようにすることもできる。
【0028】
ロボット可視化システムは、したがって、まず、第一の探索画像シーケンスを記録し、その後、第二の探索画像シーケンスを記録することができる。
【0029】
方法は、第一の探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像を評価することを含むことができる。この評価に基づいて、第二の探索画像シーケンスを記録するために使用される、ロボット可視化システムの少なくとも1つの画像撮影パラメータの値を特定することが可能となる。
【0030】
一般的に、画像撮影パラメータとは、ロボット可視化システムの対応する画像を捕捉するために使用される画像撮影ユニットの空間配置、及び/又は画像撮影チェーンのパラメータ設定(ズーム、フォーカス、光、露出パラメータ等)を意味することができる。したがって、画像撮影パラメータは、画像の見え方及び/又は画像の視野に影響を与えるパラメータとすることができる。
【0031】
したがって、このような技術によって少なくとも1つの画像撮影パラメータの値を個々の状況に合わせて調整することが可能となる。それぞれの患者の可視化に関連する特定の状況に応じて、少なくとも1つの画像撮影パラメータの値を、第二の探索画像シーケンスの探索画像によって高い信頼度で見つけることができる。
【0032】
例えば、第一の探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像を評価することは、探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像中の、患者に関して定置に固定されたマーカの配置を特定することを含むことができる。少なくとも1つの画像撮影パラメータの値を、患者に関して定置に固定されたマーカの配置に基づいて特定することができる。
【0033】
例えば、第一の探索領域に関する第二の探索領域の配置は、第二の探索領域の探索画像の視野を設定することによって特定できる。例えば、標的領域に関するマーカの相対的配置は、基本的に事前にわかる。マーカは、例えばクランプ又はその他の固定手段によって、標的領域に関してオフセットさせて患者に取り付けることができる。このオフセットを知ることができる。すると、第二の探索領域を第一の探索領域又は第一の探索領域の探索画像内で見つけられるマーカと相関させて配置することができる。
【0034】
第一の探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像の評価のまた別の例示的実装は、例えば第二の探索画像シーケンスを記録するための1つ又は複数の照明パラメータの値を確認することを含むことができる。これに関して、例えば第一の探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像の明度ヒストグラムを評価し、その後、第二の探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像を記録するための露出時間及び/又は照明の明度を、第二の探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像の明度ヒストグラムが標的の事前定義に対応するように設定することが考えられるであろう。このようにして、第二の探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像の中の、例えば特定の解剖学的特徴又は皮膚組織の画像化に使用されるコントラストが、標的領域を見つけるための詳細部を確実に画像化するようにすることができる。
【0035】
他の例では、第一の探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像を評価することを、第一の探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像が第二の探索画像シーケンスにも再使用可能か否かを特定するための根拠とすることも考えられる。
【0036】
例えば、第二の探索画像シーケンスの第二の探索領域が、それが第一の探索画像シーケンスの第一の探索領域との重複部分を有するように特定された場合、対応する重複区域では、第一の探索画像シーケンスのためにすでに記録された探索画像を第二の探索画像シーケンスにも再使用することができる。このようにして、その探索画像を捕捉するのに必要な時間を短縮することができる。
【0037】
一般的に言えば、少なくとも1つの探索画像が第一の探索画像シーケンスの一部であり、且つ第二の探索画像シーケンスの一部でもあるようにすることが考えられる。
【0038】
例えば、第二の探索画像シーケンスを評価して、第二の探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像内で患者の皮膚組織を認識することが考えられるであろう。すると、標的領域の配置を皮膚組織の認識に基づいて特定することができる。
【0039】
患者は典型的に、ほとんどの部分が例えば手術用ドレープにより覆われる。標的領域及びそのすぐ周囲の区域だけが露出され得る。したがって、標的領域は、皮膚組織の認識によって認識することができる。
【0040】
方法は、追跡システムからの追跡データを受信することを含むことができる。追跡システムは、ロボット可視化システムと並べて設置できる。これは、ロボット可視化システムと追跡システムを共通の参照座標系内で動作させることができる、又は追跡システムを使って参照座標系内でのロボット可視化システムの配置(及びそれゆえ、ロボット可視化システムにより捕捉される測定データ又は画像の姿勢又は視野)を特定できることを意味する。追跡システムはまた、参照座標系内の他のマーカの配置(すなわち、位置及び/又は向き)を特定するように構成することもできる。参照座標系は、手術室に関して特定することができる。
【0041】
追跡データは、ロボット可視化システムに関する、患者に関して定置に固定されたマーカの配置を記述することができる。マーカは、例えばパッシブ機械可読記号又はアクティブ機械可読光源により実装できる。
【0042】
したがって、方法は、少なくとも1つの探索画像シーケンスを記録するために使用されるロボット可視化システムの少なくとも1つの画像撮影パラメータの値を、追跡データに基づいて特定することをさらに含むことができる。
【0043】
例えば、少なくとも1つの探索画像シーケンスによりカバーされる対応する探索領域の配置を、追跡データに基づいて特定することができる。例えば、マーカが追跡システムにより認識された場合、標的領域に関するマーカの相対位置を事前に知ることができる。
【0044】
一般に、それゆえ、少なくとも1つの探索画像シーケンスを記録するために使用されるロボット可視化システムの少なくとも1つの画像撮影パラメータの値を、事前の知識に基づいて特定することが可能となる。例えば、例示的画像撮影パラメータとして照明の明度を設定することができる。明示的画像撮影パラメータとして露出時間を設定することができる。対応する探索領域の配置を特定することができる。異なる探索画像シーケンス間での探索画像の再使用を特定することができる。
【0045】
このような事前知識は、例えばロボット可視化システムに関する患者の(大まかな)配置に関するものとすることができる。代替的又は追加的に、このような事前知識はまた、患者に関して定置に固定されたマーカに関係する標的領域の配置に関するものとすることもできる。例えば、具体的には、患者をロボット可視化システムに関して大まかに予備位置決めすることができる。例えば、患者を患者用カウチ上に位置付けることができ、ロボット可視化システムに関するこの患者用カウチの配置はわかっている。このようにして、第一のステップで、ロボット可視化システムを患者の(仮定された)位置と大まかに整列させることができ、その後、少なくとも1つの探索画像シーケンスの探索画像を事前知識に基づいて捕捉することができる。同じことが、患者に関して定置に固定されたマーカにも当てはめることができる。
【0046】
方法は、少なくとも1つの探索画像シーケンスの記録中に、少なくとも1つの探索画像シーケンスの、すでに捕捉された探索画像を評価することをさらに含むことができる。評価中、少なくとも1つの探索画像シーケンスの記録は選択的に終了でき、すなわち、さらに別の探索画像の捕捉は行わなくてよい。代替的又は追加的に、評価に基づいて、少なくとも1つの探索画像シーケンスを記録するために使用されるロボット可視化システムの少なくとも1つの画像撮影パラメータの値を調整することも考えられるであろう。
【0047】
換言すれば、複数の探索画像が捕捉される場合、さらに別の探索画像を捕捉する必要があるか否か(又は、例えば標的領域がすでに認識され、探索画像をさらに捕捉することが必要であるか否か)を連続的にチェックすることができる。さらに、少なくとも1つの画像撮影パラメータの値が適切に設定されたか否か、又は調整、例えば明度若しくは露光時間の調整等を行うべきか否かをチェックすることが可能であろう。
【0048】
一般に、標的領域の配置は、少なくとも1つの探索画像内の1つ又は複数の事前に定義された構造の構造認識に基づいて特定することができる。これに関して、例えば、皮膚組織の構造を少なくとも1つの探索画像内で認識することができる。代替的又は追加的に、特定の解剖学的特徴(例えば、鼻、耳、口、眼等)の構造を少なくとも1つの探索画像内で認識することができる。適切なアルゴリズムを使用することができる。この標的領域の配置を特定するためのこのようなアルゴリズムの特定の実装は、本明細書に記載の技術の実装にとって本質的ではないが、これまでに知られている実装に頼ることが可能である。
【0049】
少なくとも1つの探索画像を記録するために、例えばロボット可視化システムの概観画像撮影ユニット及び/又はロボット可視化システムの顕微鏡画像撮影ユニットを作動させることができる。これは、換言すれば、例えば少なくとも1つの探索画像が比較的低倍率の概観画像を含むことができ、及び/又は比較的高倍率の顕微鏡画像を含むことができることを意味する。
【0050】
測定データは、例えば以下の群から選択される測定方法により捕捉することができる:立体画像撮影、タイムオブフライト測定、構造化照明、及び非合焦奥行き推定。
【0051】
立体画像撮影の場合、トポグラフィに関する情報は、同じ区域を異なる位置姿勢で画像化する2つのカメラによって取得される。
【0052】
タイムオブフライト測定の場合、トポグラフィに関する情報は、短い光パルスと、それに対応するタイムオブフライトのモニタによって取得できる。
【0053】
構造化照明の場合、事前に定義されたパターン、例えばラインパターンが測定対象表面に投射される。すると、事前に定義されたパターンの歪曲を使って、トポグラフィに関する情報を取得できる。
【0054】
非合焦奥行き推定の場合、トポグラフィに関する情報はオートフォーカス方式の局所的使用を通じて取得できる。
【0055】
一般的に、測定データが少なくとも1つの探索画像を含むようにすることが考えられるであろう。これは、測定データを探索画像とは完全に別に捕捉する絶対的な必要はないことを意味する。
【0056】
方法は、測定データをフィルタ処理することをさらに含むことができる。例えば、この場合、患者の皮膚組織を画像化しないデータ要素を測定データから取り除くことができる。例えば、手術用ドレープ又はマーカ又は手術器具を画像化する区域を測定データから取り除くことができる。その結果、術前ボリューム画像データに関する測定データの位置合わせの誤りが回避される。
【0057】
少なくとも1つの探索画像の記録の前に、ロボット可視化システムを事前に定義された参照配置に配置するために、ロボット可視化システムのモータを作動させることができる。例えば、事前に定義される参照配置は、手術台に関して定義できる。事前に定義される参照配置は、例えば、手術台の中で患者の頭部が配置される区域が、少なくとも1つの探索画像を最初に記録するために使用されるロボット可視化システムの画像撮影ユニットの視野の中に入るように定義できる。
【0058】
方法がさらに、少なくとも1つの探索画像の記録の前に、ロボット可視化システムの少なくとも1つの画像撮影パラメータを事前に定義された値に設定することを含むことが考えられるであろう。これは例えば、ロボット可視化システムの対応する画像撮影ユニットのズーム係数のための標的倍率を設定することを含むことができる。照明の特定の明度を選択することができる。露光時間が特定の値に設定されることが考えられるであろう。
【0059】
本明細書に記載の方法は、事前に定義された制御スクリプトに基づいて自動的に実行することができる。例えば、制御スクリプトは、1つのユーザコマンド(例えば、「ワンクリック」)で開始することができる。このようにして、特に簡単で迅速な測定データ捕捉を実現することができ、それによって変換仕様を特定することが可能となり、ロボット可視化システムのマニュアルでの位置調整を不要とすることができる。
【0060】
例えば、このような制御スクリプトは、画像データ又は測定データを評価するための解析モジュールを含むことができる。さらに、制御スクリプトは、ロボット可視化システムを位置決めするための少なくとも1つの位置決めモジュールを含むことができる。このような位置決めは、例えばスキャンによって、個々の探索画像の視野より大きい探索領域をカバーする探索画像シーケンスの探索画像を捕捉するために使用することができる。解析モジュールは、例えば皮膚組織を見つけるために画像データを評価することができる。解析モジュールは、例えば患者に関して定置に固定されたマーカを認識するために画像データを評価することができる。
【0061】
解析モジュールは、例えば1つ又は複数の機械学習アルゴリズムを含むことができる。例えば、画像中の事前に定義された構造又は物体を認識する人工ニューラルネットワークを使用することができる。例えば、畳み込みニューラルネットワークをこの目的のために使用することができる。対応する訓練は、例えば対応する訓練画像データ又は訓練測定データのマニュアルによる注釈によって可能にすることができる。
【0062】
他方で、位置決めモジュールが機械学習アルゴリズムを含まないことも考えられるであろう。手作業でパラメータ設定されたアルゴリズムを使用することができる。これは特に実行する価値があり、これは、このようにすることで、各入力パラメータについて、バリデーション段階の位置決めモジュールの新しい位置を、ロボット可視化システムの制御されない又は危険な動作を回避するためにバリデートできるからである。
【0063】
方法は、トポグラフィデータセットを測定データに基づいて生成することをさらに含むことができる。これは、測定データを、例えば前述のような解析モジュールによって評価できることを意味する。
【0064】
方法は、トポグラフィデータセットと術前ボリューム画像データとの位置合わせを実行することをさらに含むことができる。これは、トポグラフィデータセットと術前ボリューム画像データの中の対応する点を見つけることができることを意味する。すると、変換仕様を相互に関するこれらの対応する点の相対的配置に基づいて特定することができる。一般に、変化仕様は位置合わせに基づいて特定することができる。
【0065】
データ処理ユニットは、少なくとも1つの探索データをこのように記録するためにロボット可視化システムを作動させるように構成される。少なくとも1つの探索データは、患者を少なくとも部分的に画像化する。さらに、データ処理ユニットは、少なくとも1つの探索画像内の標的領域の配置を特定し、少なくとも1つの探索画像内の標的領域のこの配置に基づいて、深さ分解能を持つ測定データを記録するためにロボット可視化システムを作動させるように構成される。これらの測定データは、患者の解剖学的構造のトポグラフィを示す。これによって、ロボット可視化システムにより記録された画像と患者の術前ボリューム画像データとの間の変換仕様を特定することが可能となる。
【0066】
システムは、データ処理ユニットとロボット可視化システムを含む。
【0067】
コンピュータプログラム又はコンピュータプログラム製品又はコンピュータ可読記憶媒体はプログラムコードを含む。プログラムコードは、プロセッサによりロードし、実行することができる。これはプロセッサに方法を実行させる。方法は、このようにして少なくとも1つの探索画像を記録するためにロボット可視化システムを作動させることを含む。少なくとも1つの探索画像は、患者を少なくとも部分的に画像化する。さらに、方法はまた、少なくとも1つの探索画像中の標的領域の配置を特定することも含む。さらに、方法は、少なくとも1つの探索画像中の標的領域の配置に基づいて深さ分解能を持つ測定データを記録するために、ロボット可視化システムを作動させることを含む。この場合、測定データは、患者の解剖学的構造のトポグラフィを示す。測定データによって、ロボット可視化システムにより記録された画像と患者の術前ボリューム画像データとの間の変換仕様を特定することが可能となる。
【0068】
上述の特徴及び以下に説明する特徴は、明確に示されているそれぞれの組合せにおいてだけでなく、本発明の保護範囲から逸脱することなく、別の組合せでも、又は個別にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】各種の例による光学的可視化システムを概略的に示す。
【
図2】各種の例によるデータ処理ユニットを概略的に示す。
【
図4】各種の例による個々の探索画像と標的領域を示す。
【
図5】各種の例による探索画像シーケンスと標的画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
前述の本発明の特性、特徴、及び利点と、それらが実現される方法は、図面に関連してより詳しく述べている実例示的実施形態に関する以下の説明から、より明確になり、より明瞭に理解されるであろう。
【0071】
以下に本発明を、図面を参照しながら、好ましい実施形態に基づいてより詳しく説明する。図中、同じ参照符号は同じ又は同様の要素を指す。図面は本発明の各種の実施形態の概略的表現である。図面に示される要素は、必ずしも正しい縮尺で描かれていない。むしろ、図中に示される様々な要素は、それらの機能及び一般的目的が当業者にとってわかりやすくなるような方法で描かれている。図中に示されている機能的ユニット及び要素間の接続や連結はまた、間接的な接続又は連結としても実装できる。接続又は連結は、有線でも無線でも実装できる。機能的ユニットは、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアの組合せとして実装することができる。
【0072】
以下に、ロボット可視化システム(以下、単純に手術用顕微鏡と呼ぶ)により捕捉される画像データを術前ボリューム画像データにマッピングする、又は変換するための変換仕様を特定することを可能にする技術を説明するが、逆マッピング仕様も変換仕様に含めることができる。
【0073】
この目的のために、1つ又は複数の探索画像に基づいて、標的領域が自動的に認識され、又はその配置が自動的に特定される。すると、この標的領域について、深さ分解能を有する測定データを特定することが可能となり、その術前ボリューム画像データに関する位置合わせを行い、この位置合わせから変換仕様を導き出すことができる。
【0074】
すると、この変換仕様に基づいて様々な応用を可能にすることができる。例えば、術者を支援する機能を術前ボリューム画像データ及び変換仕様に基づいて提供できる。例えば、術前ボリューム画像データ又はその一部を、手術用顕微鏡の視野内、又は手術用顕微鏡により捕捉された画像データ内に空間的に正しい方法で挿入できる。術前ボリューム画像データの中で識別された特定の区域は、手術用顕微鏡により捕捉された画像データの中でハイライトすることができる。外科的介入をガイドするナビゲーション支援機能を可能にすることができる。
【0075】
図1は、手術のための手術用顕微鏡801を概略的に示す。図の例において、手術用顕微鏡801はアイピース803を含む。アイピース803を通じて、術者は手術用顕微鏡801の視野804内にある物体の拡大画像を見ることができる。図の例では、これは患者用カウチの上に横たわる患者805である。
【0076】
光学的アイピースの代わりに、又はそれに加えて、画像をスクリーンに転送するカメラ809(デジタル手術用顕微鏡)を提供することもできる。
【0077】
一般的に、手術用顕微鏡801はデジタル画像を記録するように構成された1つ又は複数の画像撮影ユニットを含むことができる。画像撮影ユニットの例は、例えば顕微鏡画像撮影ユニット及び概観画像撮影ユニットである。顕微鏡画像撮影ユニットは1つ又は複数のカメラを含むことができ、例えば立体画像撮影を複数のカメラにより可能とすることができる。
【0078】
操作機器808もまた、ヒューマンマシンインタフェースとして提供され、例えばこれはハンドル又はフットスイッチとして実施できる。
図1で示される実施形態では、これはハンドルである。操作機器808により、クロスビーム850に固定されたアイピース803を移動させることができる。手術用顕微鏡の対応する設定にしたがって、制御データに基づいてこの移動を自動的に実行するためにモータを提供できる。モータはまた、ハンドル808により起こされる移動も支援できる。
【0079】
さらに、手術用顕微鏡801のための制御機器880が提供され、手術用顕微鏡801の動作と、アイピース803における画像並びに追加の情報及びデータの表示を制御する。制御機器880は、術者とのやり取りを実行できる。
【0080】
手術用顕微鏡801は、1つ又は複数の別のセンサ860、例えば環境カメラ、飛行時間センサ(TOFカメラ)、構造化照明の場合に捕捉される画像を記録するための画像記録機器等も含むことができ、例えば深さ分解能を有する測定データをこのようなセンサ860によって捕捉できる。これは、深さ分解能が対応するセンサ860と患者805との間の距離を説明できることを意味する。
【0081】
このようなセンサ860のその他の実装は、内部追跡システムに関する。例えば、患者との相対的関係で固定され、機械可読として実施されるマーカは、このような内部追跡システムによって認識できる。マーカは、ターゲットと呼ばれることもある。特に、マーカの手術用顕微鏡801に関する相対的配置を特定できる。
【0082】
図1はまた、外部追跡システム890も示す。これは、手術用顕微鏡801と並べて設置される。追跡データ890が追跡システム890から制御機器880に転送されるようにすることができ、追跡データは例えば、空間内の、例えば患者805に関して定置に位置付けられた、若しくは参照座標システムに空間的に固定されたマーカに関する、カメラ809若しくはアイピース803の、又は一般に画像撮影ユニットの視野804の配置を示す。
【0083】
図2は、データ処理ユニット910に関係する部分を示す。データ処理ユニット910は、例えばコンピュータにより実装できる。データ処理ユニット910は、例えば手術用顕微鏡801の制御機器880(
図1参照)を実装でき、又は手術用顕微鏡801とは別に実施(し、例えば制御機器880と通信)することもできる。
【0084】
データ処理ユニット910は、コンピューティングユニット911とメモリ912と通信インタフェース913を含む。コンピューティングユニット911は例えば、メモリ912からプログラムコードをロードし、前記コードを実行できる。コンピューティングユニット911は、他のデバイス、ノード、又は装置と通信インタフェース913を介して通信できる。例えば、追跡データを追跡システムから受信できる。術前ボリューム画像データを、例えば画像アーカイブシステム又は他の何れかのデータベースから受信することができる。ユーザ入力は、ヒューマンマシンインタフェースから受信できる。
【0085】
コンピューティングユニット911がメモリ912からロードされたプログラムコードを実行すると、例えばこれはコンピューティングユニット911に本明細書に記載の技術を実行させることができ、例えば、探索画像又は測定データを記録すること、探索画像又は測定データを評価すること、探索画像内の標的領域の配置を特定すること、画像、探索画像、又は測定データを捕捉させ、及び/又は視野804の特定の位置にするために手術用顕微鏡801を作動させること、術者のための支援機能を可能にするために制御データを提供すること、手術用顕微鏡801により捕捉された画像データと術前ボリューム画像データとの間の変換仕様を、例えば深さ分解能を有する測定データと術前ボリューム画像データとの間の対応する位置合わせに基づいて特定すること、である。対応するプログラムコードに基づいてコンピューティングユニット911が提供し、実行できる各種の機能性について、
図3の方法に関して以下に説明する。
【0086】
図3は、1つの例示的方法のフローチャートである。例えば、
図3の方法はデータ処理ユニット、例えば
図2のデータ処理ユニット910により実行できる。特に、
図3の方法は、コンピューティングユニット、例えばプロセッサにより、それがプログラムコードをロードし、実行した時に実行できる。
【0087】
図3の方法は、手術用顕微鏡により記録された画像と術前ボリューム画像データ、例えばCT画像データ又はMRI画像データとの間の変換仕様を特定することを可能にするのに役立つ。換言すれば、
図3の方法はそれゆえ、手術用顕微鏡及び術前ボリューム画像データに関する患者の位置を較正する役割を果たす。特に、
図3の方法は、手術用顕微鏡による深さ分解能を有する測定データの自動捕捉をサポートし、それによってこれらの測定データの術前ボリューム画像データに関する位置合わせを行うことができる。変換仕様はすると、この位置合わせに基づいて特定できるが、変換仕様はまた、下流の方法によって、例えば異なるデータ処理システムによって、例えば追跡システムの制御機器によっても特定できる。
【0088】
例えば、
図3による方法が自動制御スクリプトに基づいて実行されるようにすることが考えられる。これは、各種の方法ステップをコンピュータプログラムによって自動的に連続的に処理できることを意味する。これには、例えばユーザが対応する制御スクリプトを1回の人間と機械との相互作用のみによって開始でき、対応する方法ステップの処理中にマニュアルによる相互作用が不要になるという利点がある。
【0089】
任意選択的なボックスは、
図3では破線で表されている。
【0090】
まず、ボックス3005で、手術用顕微鏡を事前に定義された参照配置に配置するように手術用顕微鏡のモータを作動させることができる。例えば、この参照配置では、手術用顕微鏡の視野が、患者がそのためのカウチ上に寝かされた時に患者の頭部と整列するようにできる。
【0091】
その後、ボックス3010で、任意選択により1つ又は複数のパラメータの初期化を行うことができる。これは、探索画像を記録する前に手術用顕微鏡の少なくとも1つの画像撮影パラメータを事前に定義された値に設定することが可能であることを意味する。例えば、照明の明度を初期化でき、又はズームの倍率が設定されることも考えられる。事前に定義された焦点を選択できる。特定の視野を設定できる。
【0092】
場合により、ボックス3010とボックス3005とを一緒に実行することもできる。例えば、画像撮影パラメータの場合、ボックス3010で手術用顕微鏡の対応する画像撮影ユニットの値が設定される。
【0093】
その後、ボックス3011は、画像を少なくとも部分的に画像化する少なくとも1つの探索画像を記録することを含む。この目的のために、手術用顕微鏡、又は厳密に言えば、対応する画像撮影ユニット又は対応する制御機器を作動させることができる。対応する少なくとも1つの探索画像を捕捉するためのコマンドを送信できる。
【0094】
例えば、手術用顕微鏡の概観画像撮影ユニット及び/又は手術用顕微鏡の顕微鏡画像撮影ユニットは、少なくとも1つの探索画像を記録するために作動させることができる。したがって、これは、例えば低倍率の1つ又は複数の概観画像及び/又は高倍率の1つ又は複数の顕微鏡画像を使って少なくとも1つの探索画像を実現できることを意味する。
【0095】
ボックス3011には様々な変形実施例がある。これらの変形実施例を後で詳しく説明する前に、まず、その後の方法をより詳しく説明する。
【0096】
ボックス3030は、少なくとも1つの探索画像内の標的領域の配置を特定することを含む。これは、少なくとも1つの探索画像中の標的領域の位置及び/又は向き及び/又は範囲を特定することを意味する。解析モジュールを使用できる。この目的のために、例えば機械学習アルゴリズムを使用できる。このような機械学習アルゴリズムは、訓練用探索画像及び標的領域のマニュアルの注釈に基づいて訓練できる。機械学習アルゴリズムは、例えば畳み込みニューラルネットワークによって実装できる。
【0097】
標的領域は、例えば計画された手術の介入区域を指すことができる。標的領域は、患者の体の、それについて術前ボリューム画像データが捕捉された、又は術前ボリューム画像データによって画像化された区域を指すことができる。
【0098】
例えば、標的領域の配置は、少なくとも1つの探索画像内の1つ又は複数の事前に定義された構造の構造認識に基づいて特定できる。例えば、皮膚組織又は解剖学的特徴を認識できる。しかしながら、機械可読マーカも認識できる。
【0099】
すると、ボックス3035で、標的領域のこの配置に基づいて、深さ分解能を有する測定データを捕捉することができる。この目的のために、手術用顕微鏡、例えば対応するセンサ、対応する画像撮影ユニット、又は割り当てられた制御機器を作動させることができる。それゆえ、測定データは、患者の解剖学的構造の、標的領域の区域内のトポグラフィを示す。
【0100】
例えば、測定データは、立体画像撮影、タイムオブフライト測定、構造化照明、及び非合焦奥行き推定を含む群から選択される測定方法により捕捉することができる。
【0101】
幾つかの例では、測定データが少なくとも1つの探索画像のうちの少なくとも1つを含むことも可能である。これはしたがって、特定の画像が、ボックス3011で探索画像として使用されるだけでなく、ボックス3035で測定データに関して考慮されることが考えられ、すなわち、二重の機能を実行できることを意味する。
【0102】
ボックス3036で、任意選択により、測定データをフィルタ処理することができる。例えば、ノイズ抑制を実行できる。背景を取り除くことができる。患者の皮膚組織を画像化しないデータ要素を取り除くことができる。
【0103】
このようにして、手術用顕微鏡により記録された画像と患者の術前ボリューム画像データとの間の変換仕様を特定することを可能にすることができる。この変換仕様は、任意選択のボックス3040で特定できる。また、測定データを、後に特定するために保存すること、又はこれらを異なるデータ処理ユニットに、それが変換仕様を特定するように通信することも可能である。
【0104】
変換仕様が特定される場合、これは以下のように行うことができる:まず、トポグラフィデータセットを測定データに基づいて生成することができる。これは、例えば患者の頭部の、又は一般的に標的領域における患者の皮膚表面の高さプロファイルを特定することができる。すると、このトポグラフィデータセットと術前ボリューム画像データとの位置合わせを実行することができる。具体的には、術前ボリューム画像データとの位置合わせは、特に、患者の頭部の皮膚表面のトポグラフィを画像化することができる。この位置合わせに基づいて、変換仕様を、例えば並進及び/又は回転自由度を考慮して特定することができる。歪曲もまた考慮に入れることができる。
【0105】
任意選択により、この変換仕様に基づく適用をボックス3045で可能にすることができる。例えば、コンピュータ支援手術を、例えば手術用顕微鏡によって捕捉され、術前ボリューム画像データに基づいて特定された情報を有する拡張画像に関して可能とすることができる。ナビゲーション支援機能が可能にされる。
【0106】
ボックス3011に関する、すなわち少なくとも1つの探索画像の記録に関する詳細を以下に記す。1つの単純な変形型では、1つの探索画像を記録し、その1つの探索画像の中の標的領域の配置を特定することが可能である。このようなシナリオは
図4に示されている。
図4は、探索画像111を示す。探索画像111は、標的領域131を画像化している。例えば、探索画像111は、手術用顕微鏡801の概観画像撮影ユニット(
図1参照)によって捕捉できる。
【0107】
他の変形型では、1つ又は複数の探索画像シーケンスも捕捉できる。例えば、
図5は、合計25の探索画像111~113(明瞭にするために最初の3つの探索画像にのみ参照符号が付されている)が捕捉されるシナリオを示している。例えば、探索画像シーケンスのこれらの探索画像の各々は、特に高い分解能を有し得る。このようにして、高倍率も可能にすることができる。これは、対応する探索領域のスキャンに対応する。スキャンは、手術用顕微鏡のモータを作動させることによって実現でき、それによって手術用顕微鏡の位置を、例えば探索画像シーケンスの各種の探索画像を捕捉する合間に何度も変更される。
【0108】
幾つかの例において、複数の探索画像シーケンスは連続的に捕捉することもできる。このようなシナリオは、ボックス3011に関して
図3に記されている。この場合、まず、ボックス3015で第一の探索領域が割り当てられる第一の探索画像シーケンスが記録され、その後、ボックス3025で第二の探索領域が割り当てられる第二の探索画像シーケンスが記録される。この間に、ボックス3020で、ボックス3015の第一の探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像を評価し、この評価に基づいて、手術用顕微鏡の少なくとも1つの画像撮影パラメータの値を特定することができ、これはその後のボックス3025で第二の探索画像シーケンを記録するために使用される。
【0109】
ボックス3020でのこの評価は、例えばボックス3015の第一の探索画像シーケンスの1つ又は複数の探索画像内の、患者に関して定置に固定されたマーカの配置を特定することを含むことができる。
【0110】
これにより、例えばそれについてボックス3025で第二の探索画像シーケンスが捕捉された第二の探索領域の、ボックス3015の第一の探索画像シーケンスの第一の探索領域に関する配置を特定することが可能となる。また、第一の探索画像シーケンスが第二の探索画像シーケンスのために再使用されるか否かを確認することも可能である。例えば第二の探索画像シーケンスを記録するための照明パラメータを設定することが可能となる。第二の探索画像シーケンスの探索画像の倍率を設定することが可能となる。
【0111】
複数の探索画像シーケンスが使用される場合、ボックス3015及びボックス3025に関して
図3に示されるように、原則として、少なくとも1つの探索画像を複数の探索画像シーケンスの一部とすることができる。
【0112】
図3の方法を実行することができるワークフローの説明を以下の表1に示す。
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
要約すれば、以上、患者の位置合わせのためのスキャン対象区域、すなわち標的領域の自動認識を可能にする技術を説明した。深さ分解能を有し、標的領域を画像化する測定データを捕捉できるような、ロボット可視化システムの自動アラインメントを開示した。
【0119】
言うまでもなく、上述の本発明の実施形態及び態様の特徴は相互に組み合わせることができる。特に、特徴は、記載されている組合せに限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組合せでも、又はそれ自体でも使用することができる。