(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】医薬製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/551 20060101AFI20250217BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250217BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20250217BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20250217BHJP
A61J 1/00 20230101ALI20250217BHJP
【FI】
A61K31/551
A61K9/08
A61K47/04
A61K47/18
A61J1/00 Z
(21)【出願番号】P 2024570545
(86)(22)【出願日】2024-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2024032713
【審査請求日】2024-12-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕明
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/047720(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/047721(WO,A1)
【文献】特開2023-155218(JP,A)
【文献】国際公開第02/000228(WO,A1)
【文献】特開2014-015455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61J 1/00-19/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
(B)次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上
(B-2)エデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上
を含有する、溶存酸素量が8.5mg/L以上の水性組成物が、ポリプロピレン製容器に収容されてなる、医薬製剤。
【請求項2】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~13mg/Lである、請求項1記載の医薬製剤。
【請求項3】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~12mg/Lである、請求項1記載の医薬製剤。
【請求項4】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~11mg/Lである、請求項1記載の医薬製剤。
【請求項5】
ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物について、前記水性組成物の溶存酸素量を8.5mg/L以上とする工程、及び前記水性組成物に次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上
(B-2)エデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上
を含有せしめる工程を含む、ポリプロピレン製容器の軟化の抑制方法。
【請求項6】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~13mg/Lである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~12mg/Lである、請求項5記載の方法。
【請求項8】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~11mg/Lである、請求項5記載の方法。
【請求項9】
ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物について、前記水性組成物の溶存酸素量を8.5mg/L以上とする工程、及び前記水性組成物に次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上ホウ酸類
(B-2)エデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上
を含有せしめる工程を含む、ポリプロピレン製容器の軟化が抑制された医薬製剤の製造方法。
【請求項10】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~13mg/Lである、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~12mg/Lである、請求項9記載の製造方法。
【請求項12】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~11mg/Lである、請求項9記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬製剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の構造式:
【0003】
【0004】
で表されるリパスジル(化学名:4-フルオロ-5-[[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル]イソキノリン)は、Rhoキナーゼ阻害作用等の薬理作用(例えば、特許文献1)を有し、眼疾患の予防や治療に有用であることが知られている。具体的には例えば、高眼圧症や緑内障等の予防又は治療(例えば、特許文献2)、あるいは加齢黄斑変性等の眼底疾患の予防又は治療(例えば、特許文献3)に有用であることが報告されている。そして、リパスジル塩酸塩水和物を有効成分として含有する高眼圧症・緑内障の予防・治療剤として、「グラナテック」(登録商標)及び「グラアルファ」(登録商標)が、日本を含め数ヵ国で開発・上市されている(非特許文献1及び2)。
そのため、リパスジルを、例えば眼科用剤等として安定的に製剤化する技術を確立することは、極めて有用である。
【0005】
なお、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物をポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂製容器に収容することにより、高温で長期間の保存後の変色を抑制できることが報告されている(特許文献4)。
また、グラナテック及びグラアルファは、いずれもリパスジル塩酸塩水和物を含有する水性組成物がポリプロピレン製の点眼剤用容器本体に収容された医薬品である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4212149号公報
【文献】国際公開第2006/068208号パンフレット
【文献】特許第5557408号公報
【文献】特許第6244038号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】医薬品インタビューフォーム「グラナテック(登録商標)点眼液0.4%」興和株式会社、2023年9月
【文献】医薬品インタビューフォーム「グラアルファ(登録商標)配合点眼液」興和株式会社、2024年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
眼科用剤等は、通常、水を含有する組成物(水性組成物)である。そこで、本発明者は、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物(以下、「リパスジル含有水性組成物」と称することがある。)をポリオレフィン系樹脂製容器に収容した場合の保存安定性について検討した。
しかるところ、ポリオレフィン系樹脂製容器として特にポリプロピレン製容器を採用した場合、リパスジル含有水性組成物を収容して高温条件下で保存することにより、経時的に容器が軟化するという問題が生じることが判明した。
そこで、本発明は、リパスジル含有水性組成物を収容したポリプロピレン製容器の高温保存時における軟化を抑制する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するためさらに鋭意検討したところ、ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル含有水性組成物の溶存酸素量を8.5mg/L以上とし、かつホウ酸に代表されるホウ酸類やエデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上に代表される低級脂肪族カルボン酸類を含有せしめた場合に特異的に、高温保存時の容器の軟化が抑制されることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
(B)次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有する、溶存酸素量が8.5mg/L以上の水性組成物が、ポリプロピレン製容器に収容されてなる、医薬製剤を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物について、前記組成物の溶存酸素量を8.5mg/L以上とする工程、及び前記組成物に次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有せしめる工程を含む、ポリプロピレン製容器の軟化の抑制方法を提供するものである。
さらに、本発明は、ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物について、前記組成物の溶存酸素量を8.5mg/L以上とする工程、及び前記組成物に次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有せしめる工程を含む、ポリプロピレン製容器の軟化が抑制された医薬製剤の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リパスジル含有水性組成物を収容したポリプロピレン製容器の、高温保存時における軟化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】試験例1で実施した「点眼剤用容器から内容液を1滴滴下するのに要する力の大きさ」を測定するための試験の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「w/v%」は質量対容積百分率を意味し、具体的には、100mLの組成物当りに含まれる各成分の質量(g)を意味する。
【0015】
<リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物>
本発明において、リパスジル(化学名:4-フルオロ-5-[[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル]イソキノリン)は塩であってもよい。リパスジルの塩としては、薬学上許容される塩であれば特に限定されず、具体的には例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、フッ化水素酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、カンファ―スルホン酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、塩酸塩が好ましい。
さらに、リパスジル又はその塩は、水和物やアルコール和物等の溶媒和物であってもよく、水和物であるのが好ましい。
【0016】
本発明において、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物としては、リパスジル若しくはその塩酸塩又はそれらの水和物がさらに好ましく、以下の構造式:
【0017】
【0018】
で表されるリパスジル塩酸塩水和物(リパスジル1塩酸塩2水和物)が特に好ましい。
【0019】
リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は公知であり、公知の方法により製造できる。具体的には例えば、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、国際公開第1999/020620号パンフレット、国際公開第2006/057397号パンフレット記載の方法等により製造することができる。
【0020】
水性組成物中のリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量は特に限定されず、適用疾患や患者の性別、年齢、症状等に応じて適宜検討して決定すればよいが、優れた薬理作用を得る観点から、水性組成物全容量に対して、リパスジルのフリー体に換算して0.01w/v%以上、好ましくは0.02w/v%以上、さらに好ましくは0.04w/v%以上含有してよく、また、10w/v%以下、好ましくは8w/v%以下、更に好ましくは6w/v%以下含有してよい。中でも、優れた薬理作用を得る観点から、水性組成物全容量に対して、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を、フリー体に換算して0.05~5w/v%含有するのが好ましく、0.1~3w/v%含有するのがより好ましく、0.1~2w/v%含有するのが更に好ましく、0.3~0.5w/v%含有するのがより更に好ましい。
【0021】
<ホウ酸類>
本発明において「ホウ酸類」とは、ホウ酸、ホウ酸の塩、ホウ酸の無水物、ホウ酸の塩の無水物、ホウ酸の溶媒和物及びホウ酸の塩の溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を意味する。
ここで、ホウ酸の「塩」としては、薬理学上許容される塩であれば何ら限定されないが、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩等が挙げられる。また、ホウ酸やホウ酸の塩の「溶媒和物」としては、薬理学上許容される溶媒和物であれば何ら限定されないが、例えば水和物等が挙げられる。
本発明においてホウ酸類としては、ホウ酸類に該当する成分を1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて使用できる。
また、これらのホウ酸類はいずれも公知であり、公知の方法により製造してもよく、市販品を使用してもよい。
【0022】
ホウ酸類としては、具体的には例えば、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等が挙げられる。本発明においてホウ酸類としては、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、ホウ酸及びその塩よりなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ホウ酸が特に好ましい。
【0023】
水性組成物中のホウ酸類の含有量は特に限定されないが、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、水性組成物全容量に対して0.001w/v以上、好ましくは0.01w/v%以上、より好ましくは0.05w/v%以上、更に好ましくは0.1w/v%以上含有してよく、また、6w/v%以下、好ましくは4w/v%以下、更に好ましくは2w/v%含有してよい。
中でも、ホウ酸類として、ホウ酸を用いる場合においては、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、水性組成物全容量に対して0.007~5w/v%含有するのが好ましく、0.03~3w/v%含有するのがより好ましく、0.08~1.5w/v%含有するのが更に好ましい。
また、中でも、ホウ酸類として、ホウ砂を用いる場合においては、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、水性組成物全容量に対して0.003~3w/v%含有するのが好ましく、0.02~2w/v%含有するのがより好ましく、0.07~1w/v%含有するのが更に好ましい。
【0024】
また、水性組成物中のリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物とホウ酸類の含有質量比率は特に限定されないが、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対し、ホウ酸類を0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上含有してよく、また、8質量部以下、好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下含有してよい。
中でも、ホウ酸類としてホウ酸を用いる場合においては、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対し、ホウ酸を0.3~7質量部含有するのが好ましく、0.7~5質量部含有するのがより好ましく、1~4質量部含有するのが更に好ましい。
また、中でも、ホウ酸類としてホウ砂を用いる場合においては、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対し、ホウ酸を0.002~2質量部含有するのが好ましく、0.03~1.5質量部含有するのがより好ましく、0.08~1.3質量部含有するのが更に好ましい。
【0025】
<低級脂肪族カルボン酸類>
本発明において「低級脂肪族カルボン酸類」とは、1個以上の炭素原子が窒素原子で置き換えられていてもよい、低級脂肪族カルボン酸及びその塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩等)並びにそれらの溶媒和物(水和物等)よりなる群から選ばれる1種以上を意味する。
ここで、低級脂肪族カルボン酸類における炭素数は、15個程度以下であれば特に限定されないが、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、2~12個が好ましく、4~12個がより好ましく、6~12個が更に好ましい。なお、斯かる炭素原子のうち、カルボキシル基を構成する炭素原子以外の炭素原子については、その一部は窒素原子に置き換えられていてもよいが、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から斯かる窒素原子の置換数は1~2個であるのが好ましい。さらに、炭素鎖は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また、飽和であっても不飽和であってもよい。
【0026】
また、低級脂肪族カルボン酸類におけるカルボキシル基の数は限定されないが、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、1~4個が好ましい。さらに、低級脂肪族カルボン酸類は、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、カルボキシル基以外の親水性の置換基をさらに1~3個程度有してもよい。斯かる親水性の置換基としては、具体的には例えば、水酸基、アミノ基等が挙げられる。
低級脂肪族カルボン酸類は公知の化合物であり、公知の方法により製造しても良いし、市販のものを使用してもよい。なお、低級脂肪族カルボン酸類としては、他の成分と塩や錯体を形成したものを用いてもよく、斯かる塩や錯体を形成した成分を含有する水性組成物も、「低級脂肪族カルボン酸類を含有する水性組成物」に包含される。
【0027】
このような低級脂肪族カルボン酸類としては、具体的には例えば、アジピン酸;アスパラギン酸、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アスパラギン酸マグネシウムなどのアスパラギン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;イプシロン-アミノカプロン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;エデト酸、エデト酸カルシウムナトリウム水和物、エデト酸ナトリウム水和物、エデト酸四ナトリウム水和物、無水エデト酸二ナトリウムなどのエデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;クエン酸、クエン酸カルシウム、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、無水クエン酸、無水クエン酸ナトリウムなどのクエン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム六水和物などのコハク酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム水和物、氷酢酸、無水酢酸ナトリウム等の酢酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;酒石酸、D-酒石酸、酒石酸水素カリウム、DL-酒石酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムカリウムなどの酒石酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;ソルビン酸、ソルビン酸カリウム等のソルビン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;乳酸、乳酸ナトリウム液、乳酸カルシウム水和物、乳酸アルミニウムなどの乳酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウムなどのプロピオン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;フマル酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;マレイン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;マロン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;リンゴ酸、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウムなどのリンゴ酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上等が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの低級脂肪族カルボン酸類はいずれも公知であり、公知の方法により製造してもよく、市販品を使用してもよい。
【0028】
低級脂肪族カルボン酸類としては、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、イプシロン-アミノカプロン酸、エデト酸、クエン酸、酢酸、ソルビン酸及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上が好ましく、イプシロン-アミノカプロン酸、エデト酸及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、エデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上が特に好ましい。低級脂肪族カルボン酸類としてエデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いることにより、他の低級脂肪族カルボン酸類と比較してもポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化が顕著に抑制される。
【0029】
水性組成物中の低級脂肪族カルボン酸類の含有量は特に限定されないが、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、水性組成物全容量に対して0.001w/v以上、好ましくは0.01w/v%以上、より好ましくは0.05w/v%以上、更に好ましくは0.1w/v%以上含有してよく、また、5w/v%以下、好ましくは3.5w/v%以下、更に好ましくは1w/v%含有してよい。
中でも、低級脂肪族カルボン酸類として、イプシロン-アミノカプロン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、水性組成物全容量に対して0.003~3w/v%含有するのが好ましく、0.07~1w/v%含有するのがより好ましく、0.2~0.5w/v%含有するのが更に好ましい。
また、中でも、低級脂肪族カルボン酸類として、エデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、水性組成物全容量に対して0.0003~0.3w/v%含有するのが好ましく、0.007~0.2w/v%含有するのがより好ましく、0.02~0.1w/v%含有するのが更に好ましい。
また、中でも、低級脂肪族カルボン酸類として、クエン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、水性組成物全容量に対して0.006~2w/v%含有するのが好ましく、0.04~0.4w/v%含有するのがより好ましく、0.07~0.2w/v%含有するのが更に好ましい。
また、中でも、低級脂肪族カルボン酸類として、酢酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、水性組成物全容量に対して0.003~2w/v%含有するのが好ましく、0.03~0.3w/v%含有するのがより好ましく、0.07~0.2w/v%含有するのが更に好ましい。
また、中でも、低級脂肪族カルボン酸類として、ソルビン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、水性組成物全容量に対して0.02~0.8w/v%含有するのが好ましく、0.09~0.4w/v%含有するのがより好ましく、0.07~0.2w/v%含有するのが更に好ましい。
【0030】
また、水性組成物中のリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と低級脂肪族カルボン酸類の含有質量比率は特に限定されないが、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対し、低級脂肪族カルボン酸類を0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.6質量部以上、さらに好ましくは0.8質量部以上含有してよく、また、8質量部以下、好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下含有してよい。
中でも、低級脂肪族カルボン酸類としてイプシロン-アミノカプロン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対し、イプシロン-アミノカプロン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を0.05~2.5質量部含有するのが好ましく、0.2~2質量部含有するのがより好ましく、0.5~1.5質量部含有するのが更に好ましい。
また、中でも、低級脂肪族カルボン酸類としてエデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対し、エデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を0.003~2質量部含有するのが好ましく、0.01~1質量部含有するのがより好ましく、0.02~0.5質量部含有するのが更に好ましい。
また、中でも、低級脂肪族カルボン酸類としてクエン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対し、クエン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を0.003~5質量部含有するのが好ましく、0.03~2質量部含有するのがより好ましく、0.07~7質量部含有するのが更に好ましい。
また、中でも、低級脂肪族カルボン酸類として酢酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対し、酢酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を0.003~2質量部含有するのが好ましく、0.03~1質量部含有するのがより好ましく、0.02~0.8質量部含有するのが更に好ましい。
また、中でも、低級脂肪族カルボン酸類としてソルビン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、ポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化の抑制の観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対し、ソルビン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を0.04~3質量部含有するのが好ましく、0.03~1.5質量部含有するのがより好ましく、0.3~0.7質量部含有するのが更に好ましい。
【0031】
<溶存酸素量>
本発明において、リパスジル含有水性組成物の溶存酸素量は8.5mg/L以上である必要がある。後記試験例に示されるとおり、リパスジル含有水性組成物の溶存酸素量を8.5mg/L以上とし、リパスジル含有水性組成物にさらにホウ酸類及び低級脂肪族カルボン酸類よりなる群から選ばれる1種以上を含有せしめ、かつ、当該水性組成物をポリプロピレン製容器に収容せしめることにより、かかるポリプロピレン製容器の高温保存時の軟化を抑制できる。
【0032】
本発明において、リパスジル含有水性組成物の溶存酸素量は、8.5mg/L以上(より好適には、8.5~13mg/L、更に好適には8.5~12mg/L、より更に好適には8.5~11mg/L、より更に好適には8.5~10mg/L、特に好適には8.5~9.5mg/L)である必要があるが、8.7mg/L以上(より好適には8.7~13mg/L、更に好適には8.7~12mg/L、より更に好適には8.7~11mg/L、より更に好適には8.7~10mg/L、特に好適には8.7~9.5mg/L)であるのが好ましく、9mg/L以上(より好適には9~13mg/L、更に好適には9~12mg/L、より更に好適には9~11mg/L、より更に好適には9~10mg/L、特に好適には9~9.5mg/L)であるのが特に好ましい。
【0033】
本発明において、溶存酸素量は、隔膜電極法、なかでもポーラログラフ法(隔膜ポーラログラフ法)により測定した値を意味する。斯かる方法による溶存酸素量の測定に用いる溶存酸素計としては、例えば、ポータブル防水溶存酸素計 型番AS720(アズワン株式会社製)などが挙げられる。
本発明において、溶存酸素量は、医薬製剤が定められた保存条件(貯法)にて継続的に保存される際の値を測定する。すなわち、例えば、貯法として「室温保存」と定められた医薬製剤については、第十八改正日本薬局方に定められた「室温」の意義(1~30℃)に従い、1~30℃の範囲の任意の温度で保存された医薬製剤にかかるリパスジル含有水性組成物の溶存酸素量を測定すればよい。通常予定される保存条件下において、溶存酸素量が8.5mg/L以上であれば、リパスジル含有水性組成物を収容したポリプロピレン製容器の、高温保存時における軟化を抑制できる。
【0034】
リパスジル含有水性組成物の溶存酸素量を8.5mg/L以上とするには特別の工程等は必要無く、例えば、水性組成物の混合時において空気を巻き込むように攪拌回転数や攪拌羽根を調整する等、リパスジル含有水性組成物について通常想定される製造工程における簡易の工夫により、当業者であれば適宜溶存酸素量を8.5mg/L以上にできる。そのため、本発明によれば、溶存酸素量を能動的・強制的に低値に調整・維持するより格段に労力やコストが少なくて済む。なお、労力・コスト上の過度の負担とならない範囲で、酸素ガスを吹き込む等の手段を採用してもよい。
なお、本明細書において「溶存酸素量が8.5mg/L以上の水性組成物」は溶存酸素量を8.5mg/L以上に意図的に「調整」した水性組成物のみに限定されず、水性組成物の製造後に溶存酸素量が自然に当該範囲に変動した場合も含まれる。かかる解釈指針は、溶存酸素量が他の数値範囲である場合においても同様に適用される。
【0035】
<水性組成物>
本発明において「水性組成物」とは、少なくとも水を含有する組成物を意味し、その性状としては、液状(溶液又は懸濁液)、半固形状(軟膏)が挙げられる。なお、組成物中の水としては例えば、精製水、注射用水、滅菌精製水等を用いることができる。
水性組成物に含まれる水の含有量は特に限定されないが、5w/v%以上が好ましく、20w/v%以上がより好ましく、50w/v%以上が更に好ましく、90w/v%以上がより更に好ましく、90~99.8w/v%がより更に好ましい。
【0036】
水性組成物は、例えば、第十八改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法に従って、種々の剤形とすることができる。剤形としては、後述する容器に収容可能なものである限り特に限定されないが、例えば、注射剤、吸入液剤、点眼剤、眼軟膏剤、点耳剤、点鼻液剤、注腸剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、経口液剤、シロップ剤等が挙げられる。剤形としては、リパスジルの有する薬理作用を有利に利用する観点から、眼疾患用剤、具体的には点眼剤、眼軟膏剤が好ましく、点眼剤が特に好ましい。
【0037】
水性組成物には、上記した以外に、医薬品や医薬部外品等で利用される添加物を含んでいてよい。このような添加物としては、例えば、低級脂肪族カルボン酸類、無機塩類、等張化剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、防腐剤、抗酸化剤、粘稠化剤、界面活性剤、可溶化剤、懸濁化剤、清涼化剤、分散剤、保存剤、油性基剤、乳剤性基剤、水溶性基剤等が挙げられる。
こうした添加物としては、具体的には例えば、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、アルギン酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸ベンジル、ウイキョウ油、エタノール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩酸、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、カルボキシビニルポリマー、乾燥亜硫酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、d-カンフル、dl-カンフル、キシリトール、グリセリン、グルコン酸、クレアチニン、クロルヘキシジン、クロロブタノール、結晶リン酸二水素ナトリウム、ゲラニオール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、酸化チタン、ジェランガム、ジブチルヒドロキシトルエン、臭化カリウム、臭化ベンゾドデシニウム、水酸化ナトリウム、ステアリン酸ポリオキシル45、精製ラノリン、D-ソルビトール、ソルビトール液、タウリン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、チメロサール、チロキサポール、トロメタモール、濃グリセリン、濃縮混合トコフェロール、白色ワセリン、ハッカ水、ハッカ油、濃ベンザルコニウム塩化物液50、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ヒアルロン酸ナトリウム、人血清アルブミン、ピロ亜硫酸ナトリウム、フェニルエチルアルコール、ブドウ糖、プロピレングリコール、ベルガモット油、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム塩化物液、ベンジルアルコール、ベンゼトニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物液、ポビドン、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングルコール(70)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、d-ボルネオール、マクロゴール4000、マクロゴール6000、D-マンニトール、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、メタンスルホン酸、l-メントール、モノエタノールアミン、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ユーカリ油、ヨウ化カリウム、硫酸、硫酸オキシキノリン、流動パラフィン、リュウノウ、リン酸、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、ワセリン等が例示される。
【0038】
添加物としては、例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、グリセリン、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、濃グリセリン、ポビドン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、マクロゴール4000、マクロゴール6000、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、モノエタノールアミン、リン酸、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、ヒアルロン酸ナトリウム、ブドウ糖、l-メントール等が好ましい。
【0039】
水性組成物は、さらに、上記した以外に、適用疾患等に応じて、リパスジル以外の他の薬効成分を含んでいても良い。このような薬効成分としては、例えば、ブナゾシン塩酸塩などのブナゾシン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むα1受容体遮断薬;ブリモニジン酒石酸塩などのブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、アプラクロニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むα2受容体作動薬;カルテオロール塩酸塩などのカルテオロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ニプラジロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、チモロールマレイン酸塩などのチモロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ベタキソロール塩酸塩などのベタキソロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、レボブノロール塩酸塩などのレボブノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ベフノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、メチプラノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むβ遮断薬;ネタルスジルメシル酸塩などのネタルスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むRhoキナーゼ阻害薬;ドルゾラミド塩酸塩などのドルゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ブリンゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、アセタゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ジクロルフェナミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、メタゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む炭酸脱水酵素阻害剤;イソプロピルウノプロストン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、タフルプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、トラボプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ビマトプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ラタノプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、クロプロステノール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、フルプロステノール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むプロスタグランジンF2α誘導体;ジピベフリン塩酸塩などのジピべフリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、エピネフリン、エピネフリンホウ酸塩、エピネフリン塩酸塩などのエピネフリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む交感神経作動薬;ジスチグミン臭化物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ピロカルピン、ピロカルピン塩酸塩、ピロカルピン硝酸塩などのピロカルピン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、カルバコール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む副交感神経作動薬;ロメリジン塩酸塩などのロメリジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むカルシウム拮抗薬;デメカリウム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、エコチオフェート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、フィゾスチグミン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むコリンエステラーゼ阻害剤;オミデネパグイソプロピルなどのオミデネパグ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むEP2受容体作動薬などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を配合できる。
他の薬効成分としては、ブリモニジン、ラタノプロスト、ニプラジロール、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、チモロール及びオミデネパグイソプロピル並びにそれらの塩よりなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0040】
水性組成物のpHは特に限定されないが、4~9が好ましく、4.5~8がより好ましく、5~7が更に好ましい。また、生理食塩水に対する浸透圧比は特に限定されないが、0.6~3が好ましく、0.6~2がより好ましい。
【0041】
<容器>
本発明において「容器」とは、前記水性組成物を直接的に収容する包装体を意味する。容器は、第十八改正日本薬局方 通則に定義される「密閉容器」、「気密容器」、「密封容器」のいずれをも包含する概念である。
【0042】
当該容器の形態は、前記水性組成物を収容可能であることを限度として特に限定されず、剤形、医薬製剤の用途等に応じて適宜選択、設定すればよい。このような容器の形態としては、具体的には例えば、注射剤用容器、吸入剤用容器、スプレー剤用容器、ボトル状容器、チューブ状容器、点眼剤用容器、点鼻剤用容器、点耳剤用容器、バッグ容器等が挙げられる。
【0043】
本発明において「ポリプロピレン製容器」とは、容器のうち少なくとも水性組成物と接する部分が「ポリプロピレン製」である容器を意味する。従って、例えば、水性組成物と接する内層にポリプロピレンの層を設け、その外側に他の材質の樹脂等を積層等させてなる容器も、「ポリプロピレン製容器」に該当する。
なお、本発明において「ポリプロピレン製」とは、その材質の少なくとも一部にポリプロピレンを含んでいることを意味し、例えば、ポリプロピレンと、ポリプロピレン以外の他の樹脂との2種以上の樹脂の混合体(ポリマーアロイ)も「ポリプロピレン製」に含まれる。
【0044】
ポリプロピレン製容器には、さらに紫外線吸収剤や紫外線散乱剤などの紫外線の透過を妨げる物質を練り込むのが好ましい。これにより、リパスジルの光に対する安定性が改善される。こうした物質としては、具体的には例えば、紫外線散乱剤としては、酸化チタン;酸化亜鉛等が挙げられる。また、紫外線吸収剤としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(例えば、Tinuvin P:BASF社)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(例えば、Tinuvin 234:BASF社)、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(例えば、Tinuvin320:BASF社)、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール(例えば、Tinuvin 326:BASF社)、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(例えば、Tinuvin327:BASF社)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(例えば、Tinuvin PA328:BASF社)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(例えば、Tinuvin 329:BASF社)、2,2'-メチルレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(例えば、Tinuvin 360:BASF社)、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300の反応生成物(例えば、Tinuvin 213:BASF社)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(例えば、Tinuvin 571:BASF社)、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3'-(3'',4'',5'',6''-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5'-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,2-ビス{[2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイルオキシ]メチル}プロパン-1,3-ジイル=ビス(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート)(例えば、Uvinul 3030 FF:BASF社)、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル(例えば、Uvinul 3035:BASF社)、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルへキシル(例えば、Uvinul 3039:BASF社)等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤;2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(例えば、Tinuvin 1577 ED:BASF社)等のトリアジン系紫外線吸収剤;オクタベンゾン(例えば、Chimassorb 81:BASF社)、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン(例えば、Uvinul 3049:BASF社)、2,2'-4,4'-テトラヒドロベンゾフェノン(例えば、Uvinul 3050:BASF社)、オキシベンゾン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;ジイソプロピルケイ皮酸メチル、シノキサート、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ケイ皮酸ベンジル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、4-[N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)アミノ]安息香酸エチル等の安息香酸エステル系紫外線吸収剤;サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸メチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤;グアイアズレン;ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル;2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5-トリアジン;パラヒドロキシアニソール;4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン;フェニルベンズイミダゾールスルホン酸;2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)-安息香酸ヘキシルなどが挙げられる。
【0045】
なお、紫外線の透過を妨げる物質を容器に練り込む場合、その配合割合は、当該物質の種類等によって異なるが、例えば、容器中に、0.001~50質量%、好ましくは0.002~25質量%、更に好ましくは0.01~10質量%程度とすればよい。
【0046】
容器は、その内部が肉眼で視認可能(観察可能)であるのが好ましい。内部が視認可能であれば、医薬製剤の製造工程において異物混入の有無等の検査が可能となる、医薬製剤の使用者が内容物(水性組成物)の残量を確認できる等のメリットが生ずる。ここで、視認可能性は、少なくとも容器表面の一部において確保されていればよい(例えば、点眼剤用容器の側面がシュリンクフィルム等により見通せなくなっていても、底面が視認可能であれば視認可能と言える。)。容器表面の一部において内部が視認可能であれば、これにより、容器内の水性組成物が確認可能となる。
【0047】
容器への水性組成物の収容手段は特に限定されず、容器の形態等に従って常法により充填等すればよい。
【0048】
<医薬製剤>
本発明において「医薬製剤」の適用疾患は特に限定されず、リパスジルの有する薬理作用等に応じて適宜選択すればよい。
具体的には例えば、リパスジルの有するRhoキナーゼ阻害作用や眼圧低下作用に基づき、高眼圧症や緑内障の予防又は治療剤として利用できる。ここで、緑内障としては、より詳細には例えば、原発性開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、房水産生過多緑内障、急性閉塞隅角緑内障、慢性閉塞隅角緑内障、plateau iris syndrome、混合型緑内障、ステロイド緑内障、水晶体の嚢性緑内障、色素緑内障、アミロイド緑内障、血管新生緑内障、悪性緑内障などが挙げられる。
【0049】
また、日本国特許第5557408号公報に開示されるように、眼底疾患(主として網膜及び/又は脈絡膜に発現する病変。具体的には例えば、高血圧と動脈硬化による眼底変化、網膜中心動脈閉塞症、網膜中心静脈閉塞症(central retinal vein occlusion)や網膜静脈分枝閉塞症(branch retinal vein occlusion)等の網膜静脈閉塞症、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病黄斑症、イールズ病(Eales disease)、コーツ病(Coats disease)等の網膜血管先天異常、ヒッペル病(von Hippel disease)、脈なし病(pulseless disease)、黄斑疾患(中心性網脈絡膜症(central serous chorioretinopathy)、嚢胞様黄斑浮腫(cystoid macular edema)、加齢黄斑変性(age-related macular degeneration)、黄斑円孔(macular hole)、近視性黄斑萎縮(myopic macular degeneration)、網膜硝子体界面黄斑変性症、薬物毒性黄斑変性症、遺伝性黄斑変性等)、(裂孔原性、牽引性、滲出性等の)網膜剥離、網膜色素変性症、未熟児網膜症等が挙げられる。)の予防又は治療剤、より好適には糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫又は加齢黄斑変性の予防又は治療剤として利用できる。
さらに、日本国特許第5657252号公報に開示されるように、角膜内皮障害の予防及び/又は治療剤としても利用できる。
【0050】
<その他の文言の意義>
本発明において「高温保存」とは、医薬製剤が、その製造後、流通時や保管時において偶発的に遭遇し得る室温(1~30℃)より高い温度での保存を意味し、より具体的には例えば、60℃以上での保存が挙げられる。
本発明においてポリプロピレン製容器の「軟化」とは、医薬製剤の高温保存により、当該保存前と比較して相対的にポリプロピレン製容器を同程度変形させるのに必要な力の大きさが低下することを言う。「軟化」は、例えばポリプロピレン製容器が点眼剤用容器である場合、下記試験例1で測定された「点眼剤用容器から内容液を1滴滴下するのに要する力の大きさ」について、高温保存前後での大きさを比較することにより評価できる。
【0051】
本明細書において容器の軟化について「抑制」とは、本発明の技術的手段を講じることによって、当該手段を講じない場合と比較して相対的に「軟化」の程度が低減されることを意味し、ポリプロピレン製容器が絶対的に軟化しないことを意味するものではない。
例えば、評価対象がホウ酸類を含有するものである場合、当該ホウ酸類を含有しないほかは成分・溶存酸素量・ポリプロピレン製容器等が同等の比較対象を準備のうえ、同一の高温条件で保存した場合に、評価対象の方が比較対象よりも相対的に「軟化」の程度が抑制されることを意味する。
【0052】
<軟化の抑制方法、医薬製剤の製造方法>
また、本発明は、ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物について、溶存酸素量を8.5mg/L以上とする工程、及び次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有せしめる工程を含む、ポリプロピレン製容器の軟化の抑制方法にも関する。
さらに、本発明は、ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物について、溶存酸素量を8.5mg/L以上とする工程、及び次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有せしめる工程を含む、ポリプロピレン製容器の軟化が抑制された医薬製剤の製造方法にも関する。
以上の方法において、リパスジルを水性組成物に含有せしめる工程、ホウ酸類や低級脂肪族カルボン酸類を水性組成物に含有せしめる工程と、水性組成物をポリプロピレン製容器に収容する工程の先後は問わない。また、水性組成物の溶存酸素量が8.5mg/L以上となるタイミングも特に問題とならず、任意のタイミングで水性組成物の溶存酸素量が8.5mg/L以上となれば、本明細書に開示の「ポリプロピレン製容器の軟化の抑制方法」あるいは「医薬製剤の製造方法」に該当し得ることとなる。
その他の各種文言の意義、各成分の配合量等は全て上記した「医薬製剤」について説明したのと同様である。
【0053】
本発明は、これらに何ら限定されるものではないが、例えば以下の態様の実施形態を開示する。
[1A]次の成分(A)及び(B):
(A)リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
(B)次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有する、溶存酸素量が8.5mg/L以上(好適には、8.7mg/L以上、更に好適には9mg/L以上)の水性組成物が、ポリプロピレン製容器に収容されてなる、医薬製剤。
[2A]次の成分(A)及び(B):
(A)リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
(B)次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有する、溶存酸素量が8.5~13mg/L(好適には、8.7~13mg/L、更に好適には9~13mg/L)の水性組成物が、ポリプロピレン製容器に収容されてなる、医薬製剤。
[3A]次の成分(A)及び(B):
(A)リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
(B)次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有する、溶存酸素量が8.5~12mg/L(好適には、8.7~12mg/L、更に好適には9~12mg/L)の水性組成物が、ポリプロピレン製容器に収容されてなる、医薬製剤。
[4A]次の成分(A)及び(B):
(A)リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
(B)次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有する、溶存酸素量が8.5~11mg/L(好適には、8.7~11mg/L、更に好適には9~11mg/L)の水性組成物が、ポリプロピレン製容器に収容されてなる、医薬製剤。
[5A]次の成分(A)及び(B):
(A)リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
(B)次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有する、溶存酸素量が8.5~10mg/L(好適には、8.7~10mg/L、更に好適には9~10mg/L)の水性組成物が、ポリプロピレン製容器に収容されてなる、医薬製剤。
[6A]ホウ酸類が、ホウ酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上である、[1A]~[5A]のいずれかに記載の医薬製剤。
[7A]低級脂肪族カルボン酸類が、イプシロン-アミノカプロン酸、エデト酸、クエン酸、酢酸、ソルビン酸及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上である、[1A]~[6A]のいずれかに記載の医薬製剤。
[8A]低級脂肪族カルボン酸類が、エデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上である、[1A]~[6A]のいずれかに記載の医薬製剤。
[9A]ポリプロピレン製容器が、点眼剤用容器である、[1A]~[8A]のいずれかに記載の医薬製剤。
[10A]60℃1週間保存後の容器硬さ(点眼剤用容器から内用液を1滴滴下するのに要する力の大きさであり、試験例1のように、点眼剤用容器を平面に横向きに寝かせ、容器胴部の中心付近に対して上から鉛直下方にテクスチャーアナライザーのプローブを押し下げ、点眼剤用容器から内用液が1滴滴下されるまでの最大荷重を意味する。)が、保存前の50%以上(好適には60%以上、より好適には70%以上、更に好適には75%以上)である、[1A]~[8A]のいずれかに記載の医薬製剤。
【0054】
[1B]ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物について、前記水性組成物の溶存酸素量を8.5mg/L以上(好適には、8.7mg/L以上、更に好適には9mg/L以上)とする工程、及び前記水性組成物に次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有せしめる工程を含む、ポリプロピレン製容器の軟化の抑制方法。
[2B]ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物について、前記水性組成物の溶存酸素量を8.5~13mg/L(好適には、8.7~13mg/L、更に好適には9~13mg/L)とする工程、及び前記水性組成物に次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有せしめる工程を含む、ポリプロピレン製容器の軟化の抑制方法。
[3B]ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物について、前記水性組成物の溶存酸素量を8.5~12mg/L(好適には、8.7~12mg/L、更に好適には9~12mg/L)とする工程、及び前記水性組成物に次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有せしめる工程を含む、ポリプロピレン製容器の軟化の抑制方法。
[4B]ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物について、前記水性組成物の溶存酸素量を8.5~11mg/L(好適には、8.7~11mg/L、更に好適には9~11mg/L)とする工程、及び前記水性組成物に次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有せしめる工程を含む、ポリプロピレン製容器の軟化の抑制方法。
[5B]ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物について、前記水性組成物の溶存酸素量を8.5~10mg/L(好適には、8.7~10mg/L、更に好適には9~10mg/L)とする工程、及び前記水性組成物に次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有せしめる工程を含む、ポリプロピレン製容器の軟化の抑制方法。
[6B]ホウ酸類が、ホウ酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上である、[1B]~[5B]のいずれかに記載の方法。
[7B]低級脂肪族カルボン酸類が、イプシロン-アミノカプロン酸、エデト酸、クエン酸、酢酸、ソルビン酸及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上である、[1B]~[6B]のいずれかに記載の方法。
[8B]低級脂肪族カルボン酸類が、エデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上である、[1B]~[6B]のいずれか記載の方法。
[9B]ポリプロピレン製容器が、点眼剤用容器である、[1B]~[8B]のいずれかに記載の方法。
[10B]60℃1週間保存後の容器硬さ(点眼剤用容器から内用液を1滴滴下するのに要する力の大きさであり、試験例1のように、点眼剤用容器を平面に横向きに寝かせ、容器胴部の中心付近に対して上から鉛直下方にテクスチャーアナライザーのプローブを押し下げ、点眼剤用容器から内用液が1滴滴下されるまでの最大荷重を意味する。)が、保存前の50%以上(好適には60%以上、より好適には70%以上、更に好適には75%以上)である、[1B]~[8B]のいずれかに記載の方法。
【0055】
[1C]ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物について、前記水性組成物の溶存酸素量を8.5mg/L以上(好適には、8.7mg/L以上、更に好適には9mg/L以上)とする工程、及び前記水性組成物に次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有せしめる工程を含む、ポリプロピレン製容器の軟化が抑制された医薬製剤の製造方法。
[2C]ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物について、前記水性組成物の溶存酸素量を8.5~13mg/L(好適には、8.7~13mg/L、更に好適には9~13mg/L)とする工程、及び前記水性組成物に次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有せしめる工程を含む、ポリプロピレン製容器の軟化が抑制された医薬製剤の製造方法。
[3C]ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物について、前記水性組成物の溶存酸素量を8.5~12mg/L(好適には、8.7~12mg/L、更に好適には9~12mg/L)とする工程、及び前記水性組成物に次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有せしめる工程を含む、ポリプロピレン製容器の軟化が抑制された医薬製剤の製造方法。
[4C]ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物について、前記水性組成物の溶存酸素量を8.5~11mg/L(好適には、8.7~11mg/L、更に好適には9~11mg/L)とする工程、及び前記水性組成物に次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有せしめる工程を含む、ポリプロピレン製容器の軟化が抑制された医薬製剤の製造方法。
[5C]ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物について、前記水性組成物の溶存酸素量を8.5~10mg/L(好適には、8.7~10mg/L、更に好適には9~10mg/L)とする工程、及び前記水性組成物に次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有せしめる工程を含む、ポリプロピレン製容器の軟化が抑制された医薬製剤の製造方法。
[6C]ホウ酸類が、ホウ酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上である、[1C]~[5C]のいずれかに記載の製造方法。
[7C]低級脂肪族カルボン酸類が、イプシロン-アミノカプロン酸、エデト酸、クエン酸、酢酸、ソルビン酸及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上である、[1C]~[6C]のいずれかに記載の製造方法。
[8C]低級脂肪族カルボン酸類が、エデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上である、[1C]~[6C]のいずれかに記載の製造方法。
[9C]ポリプロピレン製容器が、点眼剤用容器である、[1C]~[8C]のいずれかに記載の製造方法。
[10C]60℃1週間保存後の容器硬さ(点眼剤用容器から内用液を1滴滴下するのに要する力の大きさであり、試験例1のように、点眼剤用容器を平面に横向きに寝かせ、容器胴部の中心付近に対して上から鉛直下方にテクスチャーアナライザーのプローブを押し下げ、点眼剤用容器から内用液が1滴滴下されるまでの最大荷重を意味する。)が、保存前の50%以上(好適には60%以上、より好適には70%以上、更に好適には75%以上)である、[1C]~[8C]のいずれかに記載の製造方法。
【実施例】
【0056】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
なお、以下の試験例において、リパスジル1塩酸塩2水和物は、例えば国際公開第2006/057397号パンフレット記載の方法により製造することが出来る。
【0057】
[試験例1]保存試験 その1
表1に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を常法により調製した後、溶存酸素量を測定しモニタリングしつつ窒素ガス、酸素ガスあるいは空気を吹き込むことにより溶存酸素量を表1のとおりに調整した。なお、溶存酸素量の測定は、25℃の雰囲気温度条件下で溶存酸素計(ポータブル防水溶存酸素計 型番AS720:アズワン株式会社製)を用いて行った。
溶存酸素量を調整した水性組成物を、ポリプロピレン(PP)製の点眼剤用容器に入れて医薬製剤を製した。なお、ポリプロピレン製の点眼剤用容器は、その胴部の形状が直径約2cm・高さ約2.8cmの中空の円柱状であり、胴部における容器の厚みは約0.4mmであった。
【0058】
各医薬製剤を60℃で1週間保存し、保存前及び60℃1週間保存後の容器硬さ(点眼剤用容器から内用液を1滴滴下するのに要する力の大きさ)を測定した。なお、温度による容器の硬さへの影響を避けるために、60℃1週間保存後の容器については恒温器から取り出した後、室温が25℃に設定された測定室に一晩静置した後に、測定に供した。
「点眼剤用容器から内容液を1滴滴下するのに要する力の大きさ」(以下、「Force」とも表記する。)は、テクスチャーアナライザー(TA.XTplus Texture Analyser:Stable Micro Systems社製)を用いて以下の方法により測定した。すなわち、キャップを取った状態の点眼剤用容器を平面に横向きに寝かせてグリップで固定し、容器胴部の中心付近(容器底面から約1.4cmの高さの中央付近)に対して上から鉛直下方にテクスチャーアナライザーのプローブを1mm/秒の速さで押し下げ、点眼剤用容器から内用液が1滴滴下されるまで容器胴部を押圧した。点眼剤用容器から内用液が1滴滴下されるまでの最大荷重(gf)を測定し、斯かる最大荷重を「点眼剤用容器から内容液を1滴滴下するのに要する力の大きさ」とした。
【0059】
測定された保存前及び60℃1週間保存後のForceから、以下の計算式に従い「60℃1週間保存後の容器硬さの、保存前の容器硬さに対する割合(%)」を算出し、高温保存によるプロピレン製容器の硬さの変化の指標とした。
【0060】
(数1)
60℃1週間保存後の容器硬さの、保存前の容器硬さに対する割合(%)=60℃1週間保存後のForce/保存前のForce×100
【0061】
結果を表1に示す。
【0062】
【0063】
表1記載の結果の通り、リパスジルを含有しない水性組成物がポリプロピレン製容器に収容された参考例1においては、60℃1週間の保存により、容器硬さ(点眼剤用容器から内用液を1滴滴下するのに要する力の大きさ)が保存前の87.1%となり、多少の容器の軟化が確認されたものの、その程度は大きいものではなかった。一方、リパスジル含有水性組成物がポリプロピレン製容器に収容された参考例2においては、60℃1週間の保存により、容器硬さ(点眼剤用容器から内用液を1滴滴下するのに要する力の大きさ)が保存前の28.0%と大きく低下し、大幅な容器の軟化が確認された。
以上の試験結果から、リパスジル含有水性組成物をポリプロピレン製容器に収容して高温条件下で保存することにより、経時的に容器が軟化するという問題が生じることが判明した。
【0064】
[試験例2]保存試験 その2
表2に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を常法により調製した後、溶存酸素量を測定しモニタリングしつつ窒素ガス、酸素ガスあるいは空気を吹き込むことにより溶存酸素量を表2のとおりに調整した。なお、溶存酸素量の測定は、25℃の雰囲気温度条件下で溶存酸素計(ポータブル防水溶存酸素計 型番AS720:アズワン株式会社製)を用いて行った。
溶存酸素量を調整した水性組成物を、試験例1で使用したのと同一のポリプロピレン(PP)製の点眼剤用容器に入れて医薬製剤を製した。
【0065】
得られた各医薬製剤を60℃で1週間保存し、試験例1と同様の方法により、保存前及び60℃1週間保存後の容器硬さ(点眼剤用容器から内用液を1滴滴下するのに要する力の大きさ)を測定し、「60℃1週間保存後の容器硬さの、保存前の容器硬さに対する割合(%)」を算出し、高温保存によるプロピレン製容器の硬さの変化の指標とした。
結果を表2に示す。なお、表2中、「比較例1」は、試験例1の「参考例2」と同一のサンプルである。
【0066】
【0067】
表2記載の結果の通り、ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル含有水性組成物がホウ酸を含有しない場合(比較例1)、あるいは溶存酸素量が8.5mg/L未満である場合(比較例2)には、いずれも、試験例1において確認されたのと同様、60℃1週間の保存により、容器硬さ(点眼剤用容器から内用液を1滴滴下するのに要する力の大きさ)が保存前の50%未満(それぞれ28.0%、48.9%)に低下し、大幅な容器の軟化が確認された。
一方、ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル含有水性組成物の溶存酸素量を8.5mg/L以上とし、かつホウ酸を含有せしめた場合(実施例1、2)には、60℃1週間の保存により、容器硬さ(点眼剤用容器から内用液を1滴滴下するのに要する力の大きさ)が保存前の70%程度を超える高値となり、容器の軟化が抑制されることが明らかとなった。
【0068】
以上から、ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル含有水性組成物の溶存酸素量を8.5mg/L以上とし、かつホウ酸に代表されるホウ酸類を含有せしめた場合、高温保存時の容器の軟化が抑制されることが明らかとなった。
【0069】
[試験例3]保存試験 その3
表2に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物に代えて表3に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を試験に供するほかは試験例2と同一の方法により試験を実施した。
結果を表3に示す。
【0070】
【0071】
表3記載の結果の通り、実施例1、2のホウ酸に代えてエデト酸ナトリウム水和物をリパスジル含有水性組成物に含有せしめた場合(実施例3、4)にも、同様に、60℃1週間の保存により、容器硬さ(点眼剤用容器から内用液を1滴滴下するのに要する力の大きさ)が保存前の70%程度を超える高値となり、容器の軟化が抑制されることが明らかとなった。
【0072】
以上から、ポリプロピレン製容器に収容されたリパスジル含有水性組成物の溶存酸素量を8.5mg/L以上とし、かつエデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上に代表される低級脂肪族カルボン酸類を含有せしめた場合にも、高温保存時の容器の軟化が抑制されることが明らかとなった。
【0073】
[製造例1~5]
表4に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を常法により調製した後、溶存酸素量を測定しモニタリングしつつ窒素ガス、酸素ガスあるいは空気を吹き込むことにより溶存酸素量を表4のとおりに調整し、これをポリプロピレン製の点眼剤用容器に収容して製造例1~5の医薬製剤を得た。
【0074】
【0075】
[製造例6~10]
表5に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を常法により調製した後、溶存酸素量を測定しモニタリングしつつ窒素ガス、酸素ガスあるいは空気を吹き込むことにより溶存酸素量を表5のとおりに調整し、これをポリプロピレン製の点眼剤用容器に収容して製造例6~10の医薬製剤を得た。
【0076】
【0077】
[製造例11~15]
表6に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を常法により調製した後、溶存酸素量を測定しモニタリングしつつ窒素ガス、酸素ガスあるいは空気を吹き込むことにより溶存酸素量を表6のとおりに調整し、これをポリプロピレン製の点眼剤用容器に収容して製造例11~15の医薬製剤を得た。
【0078】
【0079】
[製造例16~20]
表7に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を常法により調製した後、溶存酸素量を測定しモニタリングしつつ窒素ガス、酸素ガスあるいは空気を吹き込むことにより溶存酸素量を表7のとおりに調整し、これをポリプロピレン製の点眼剤用容器に収容して製造例16~20の医薬製剤を得た。
【0080】
【0081】
[製造例21~25]
表8に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を常法により調製した後、溶存酸素量を測定しモニタリングしつつ窒素ガス、酸素ガスあるいは空気を吹き込むことにより溶存酸素量を表8のとおりに調整し、これをポリプロピレン製の点眼剤用容器に収容して製造例21~25の医薬製剤を得た。
【0082】
【0083】
[製造例26~30]
表9に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を常法により調製した後、溶存酸素量を測定しモニタリングしつつ窒素ガス、酸素ガスあるいは空気を吹き込むことにより溶存酸素量を表9のとおりに調整し、これをポリプロピレン製の点眼剤用容器に収容して製造例26~30の医薬製剤を得た。
【0084】
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、保存安定性に優れた医薬製剤を提供でき、医薬品産業等において好適に利用できる。
【要約】
本発明の課題は、リパスジル含有水性組成物を収容したポリプロピレン製容器の高温保存時における軟化を抑制する技術を提供することである。
本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
(B)次の成分(B-1)~(B-2)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)ホウ酸類
(B-2)低級脂肪族カルボン酸類
を含有する、溶存酸素量が8.5mg/L以上の水性組成物が、ポリプロピレン製容器に収容されてなる、医薬製剤に関する。