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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20250218BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20250218BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20250218BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20250218BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20250218BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20250218BHJP
   A61K 8/20 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/19
A61K8/26
A61Q11/00
A61K8/36
A61K8/365
A61K8/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020110360
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022007409
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 彩佳
(72)【発明者】
【氏名】川延 勇介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康彦
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06096292(US,A)
【文献】特表2004-506663(JP,A)
【文献】特開2012-232937(JP,A)
【文献】特開2009-155216(JP,A)
【文献】国際公開第2019/107338(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重量平均分子量6,000以上10,000以下のポリアクリル酸塩と、
(B)硝酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、乳酸アルミニウム及び塩化アルミニウムから選ばれる1種類以上と
を含有し、(A)成分の含有量が0.005~2.5質量%、(B)成分の含有量が1~10質量%、(A)/(B)が質量比として0.001~0.5である口腔用組成物。
【請求項2】
(B)成分が、硝酸カリウム及び乳酸アルミニウムから選ばれる請求項1記載の口腔用組成物。
【請求項3】
更に、(C)アルキル硫酸塩を含有する請求項1又は2記載の口腔用組成物。
【請求項4】
(C)アルキル硫酸塩が、ラウリル硫酸ナトリウム及びミリスチル硫酸ナトリウムから選ばれる1種以上である請求項3記載の口腔用組成物。
【請求項5】
(C)成分の含有量が0.1~2質量%である請求項3又は4記載の口腔用組成物。
【請求項6】
(B)/(C)が質量比として1~50である請求項3~5のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項7】
歯磨剤組成物である請求項1~6のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項8】
知覚過敏抑制用である請求項1~7のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即効的かつ効果的に知覚過敏抑制効果を与える口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
知覚過敏症とは、露出した象牙質に、温度的、科学的、物理的な外来刺激が与えられることによって一過性の非常に不快な痛みを生じるもので、この症状を緩和するため、神経鈍麻成分として露出した神経に作用する硝酸カリウム等のカリウム塩が多数採用され、また、象牙細管を塞ぐという別のアプローチで作用する象牙細管封鎖成分として乳酸アルミニウム等のアルミニウム塩も採用され、口腔用組成物に配合されている。
しかし、硝酸カリウム等のカリウム塩は、知覚過敏抑制効果が比較的即効性ではあるものの十分ではなく効果が持続し難く、乳酸アルミニウム等のアルミニウム塩は、知覚過敏抑制効果が即効的なものではなく、これらの効果は限定的であった。しかも、これらは、口腔用組成物に配合されると他の配合成分の影響を受け易く、特にカリウム塩は、増量するほど基本特性の泡立ちに影響し、口腔用組成物を口腔内に行き渡らせることができなくなり、十分に知覚過敏抑制効果を発現させることが難しかった。したがって、口腔用組成物において、カリウム塩等による知覚過敏抑制効果を向上させ、より一層即効的かつ効果的に発揮させることが、課題となっていた。
【0003】
特許文献1(特許第5790455号公報)は、硝酸カリウム又は乳酸アルミニウム、ラウリル硫酸ナトリウム配合の歯磨剤組成物に、特定水溶性高分子の併用系を配合すると、泡立ちが確保され、知覚過敏抑制効果に優れることを提案しているが、知覚過敏抑制効果は使用して4週間経過後の評価であり、即効性に劣る。特許文献2(特許第5924002号公報)は、カリウムイオンとナトリウムイオンとの濃度比をコントロールし、更に両性界面活性剤、特定高分子物質を配合すると、知覚過敏抑制効果が高率で発揮されることを提案し、特許文献3(特開2017-141178号公報)は、硝酸カリウム又は乳酸アルミニウム配合の歯磨剤組成物に、α-オレフィンスルホン酸及びスクラロースを配合すると、発泡性能及び知覚過敏抑制効果を確保できることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5790455号公報
【文献】特許第5924002号公報
【文献】特開2017-141178号公報
【文献】国際公開第2019/107335号
【文献】国際公開第2019/107340号
【文献】国際公開第2019/107338号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、即効的かつ効果的に優れた知覚過敏抑制効果を与える口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、重量平均分子量が特定値以下のポリアクリル酸塩を、知覚過敏抑制作用を有するカリウム塩又はアルミニウム塩に併用して口腔用組成物に配合すると、知覚過敏抑制作用の即効性が向上し、使用直後から即効的に顕著に高い知覚過敏抑制効果を与えることができることを知見した。即ち、本発明では、(A)重量平均分子量1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩と、(B)硝酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、乳酸アルミニウム及び塩化アルミニウムから選ばれる1種類以上とを配合した口腔用組成物が、即効的かつ効果的に優れた知覚過敏抑制効果を与え、また、味も良いことを知見し、本発明をなすに至った。
【0007】
本発明では、口腔用組成物において、(A)特定分子量のポリアクリル酸塩が、(B)成分と特異的に相互作用し、両者の複合体が優先的に形成されて(B)成分の口腔内での滞留性が向上することが一つの要因となり、(B)成分の知覚過敏抑制効果の即効性を顕著に高めることができた。カリウム塩は神経鈍麻作用、アルミニウム塩は象牙細管封鎖作用を有し、互いに別のアプローチで知覚過敏抑制効果を奏するものであるが、このように異なる作用メカニズムであっても、本発明においては(A)成分によって(B)成分の知覚過敏抑制効果を向上させて、即効的に高い知覚過敏抑制効果を発揮させることができ、その効果を使用直後から持続させることも可能となった。
(B)成分、特にカリウムイオンを含むカリウム塩は、口腔用組成物で泡立ち確保に汎用されているアニオン性界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムを組み合わせて配合すると、これらが強く結合することで、遊離カリウムイオン濃度低下による神経鈍麻作用の低下を招いたり、更には難溶解性のラウリル硫酸カリウムが析出し、泡立ち量の低下を招くこともあるという問題が生じていた。しかし、本発明では、(A)及び(B)成分を併用し、更に(C)成分を組み合わせて配合することで、上記のような問題が生じることもなく、適度な泡立ち量となる十分な泡立ちを確保して上記優れた知覚過敏抑制効果を発揮させることもできた。
後述の比較例からも明らかなように、(A)成分が配合されていないと、知覚過敏抑制効果(効果の即効性)が低く、分子量が不適切であるポリアクリル酸塩が添加されていても、知覚過敏抑制効果が劣り(比較例1~9)、本発明の作用効果を得ることができなかった。
特許文献1~3は、知覚過敏抑制効果を有する歯磨剤組成物に水溶性高分子、ナトリウム供給源、粘結剤としてポリアクリル酸ナトリウムが配合されているが、その分子量に関する言及がない。口腔用組成物に粘結剤等として一般的に使用されるのは重量平均分子量10万以上、通常は30万程度の架橋型のポリアクリル酸又はその塩である。
また、特許文献4~6(国際公開第2019/107335号、国際公開第2019/107340号、国際公開第2019/107338号)は、口腔用組成物における重量平均分子量20,000以下のポリアクリル酸による口腔バイオフィルム形成抑制やそれ自身の刺激改善であり、知覚過敏抑制に着目したものではない。これに対して、本発明は、(A)成分による、(B)成分の知覚過敏抑制効果、特にその即効性の向上であり、(A)及び(B)成分の併用系によって、(A)成分に代えて重量平均分子量20,000超のポリアクリル酸塩を使用した場合は達成し得ない格別顕著な作用効果を奏する。
【0008】
従って、本発明は、下記の口腔用組成物を提供する。
〔1〕
(A)重量平均分子量1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩と、
(B)硝酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、乳酸アルミニウム及び塩化アルミニウムから選ばれる1種類以上と
を含有することを特徴とする口腔用組成物。
〔2〕
(B)成分が、硝酸カリウム及び乳酸アルミニウムから選ばれる〔1〕記載の口腔用組成物。
〔3〕
(A)成分の含有量が0.005~2.5質量%、(B)成分の含有量が1~10質量%である〔1〕又は〔2〕記載の口腔用組成物。
〔4〕
(A)/(B)が質量比として0.001~0.5である〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔5〕
更に、(C)アルキル硫酸塩を含有する〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔6〕
(C)アルキル硫酸塩が、ラウリル硫酸ナトリウム及びミリスチル硫酸ナトリウムから選ばれる1種以上である〔5〕記載の口腔用組成物。
〔7〕
(C)成分の含有量が0.1~2質量%である〔5〕又は〔6〕記載の口腔用組成物。
〔8〕
(B)/(C)が質量比として1~50である〔5〕~〔7〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔9〕
歯磨剤組成物である〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔10〕
知覚過敏抑制用である〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、即効的かつ効果的に優れた知覚過敏抑制効果を与える口腔用組成物を提供できる。本発明の口腔用組成物は、知覚過敏抑制効果に優れ、また、良好かつ適度な泡立ちを確保することもでき、味も良く、知覚過敏を予防又は抑制する知覚過敏抑制用として有効である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の口腔用組成物は、(A)重量平均分子量1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩と、(B)硝酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、乳酸アルミニウム及び塩化アルミニウムから選ばれる1種類以上とを含有し、更に好ましくは(C)アルキル硫酸塩を含有する。
【0011】
(A)重量平均分子量1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩は、(B)成分の知覚過敏抑制効果、特にその即効性を高める作用を奏する。また、泡立ちの確保にも寄与する。(A)成分は、(B)成分由来の金属味等の嫌味を低減させ、更には(C)成分による刺激をマスキングして刺激に伴う嫌味を低減させ、味の良い使用感を確保する作用も有する。
【0012】
(A)成分のポリアクリル酸塩は、重量平均分子量(Mw)が1,000以上20,000以下であり、特に6,000以上10,000以下、とりわけ6,000以上9,000以下のものが、(B)成分による知覚過敏抑制効果を向上させ、その即効性を高める点及び使用感の点で、好適である。ポリアクリル酸塩の重量平均分子量が20,000を超えると、知覚過敏抑制の向上効果が劣る。
上記重量平均分子量の測定は、GPC(ゲルパーミェーションクロマトグラフィー法)により、特許第5740859号公報に記載された方法及び測定条件で行った。具体的には下記に示す(以下同様)。
重量平均分子量の測定方法;
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ/多角度レーザー光散乱検出器(GPC-MALLS)を用いて測定された値であり、条件は以下の通りである。
移動相:0.3M NaClO4
NaN3水溶液カラム:TSKgelα-M 2本
プレカラム:TSKguardcolumn α
標準物質:ポリエチレングリコール
【0013】
(A)成分のポリアクリル酸塩は、知覚過敏抑制効果、特にその即効性の向上の点から、直鎖状のポリアクリル酸塩が好ましい。
塩としては、一価塩が好ましく、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩がより好ましく、更に好ましくはアルカリ金属塩であり、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられるが、ナトリウム塩が特に好ましい。
このようなポリアクリル酸塩としては、ポリサイエンス社や東亞合成(株)から販売されている市販品を使用し得る。
具体的な市販品として、ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:1,000);直鎖状,ポリサイエンス社製、ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:6,000);直鎖状,東亞合成(株)製,ジュリマーAC-10NP,ジュリマーAC-10NPD,アロンT-50、ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:8,000);直鎖状,ポリサイエンス社製、ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:9,000);直鎖状,ポリサイエンス社製、ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:20,000);直鎖状,東亞合成(株)製,アロンA-20UN等を使用することができる。
【0014】
(A)成分の配合量は、組成物全体の0.005~2.5%(質量%、以下同様)が好ましく、より好ましくは0.01~2%、更に好ましくは0.01~1%である。0.005%以上であると、十分に知覚過敏抑制効果の即効性を向上させて優れたものとすることができる。また、(B)成分由来の嫌味を抑制させることもできる。多く配合し過ぎると、知覚過敏抑制効果の即効性が低下する傾向があるが、2.5%以下であると、十分に知覚過敏抑制効果が確保される。また、良好な泡立ちを維持させることもできる。
【0015】
(B)成分は、硝酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、乳酸アルミニウム及び塩化アルミニウムから選ばれる1種又は2種以上であり、これらは脱感作剤であり、知覚過敏抑制効果を奏する。
カリウム塩である硝酸カリウム、酢酸カリウム又は塩化カリウムは、象牙細管の神経鈍麻作用を有し、アルミニウム塩である乳酸アルミニウム又は塩化アルミニウムは、象牙細管封鎖作用を有する。
(B)成分は、上記カリウム塩及び/又はアルミニウム塩を使用でき、中でも、知覚過敏抑制効果の点から、特に硝酸カリウム及び/又は乳酸アルミニウムが好ましい。
【0016】
(B)成分の配合量は、組成物全体の1~10%が好ましく、より好ましくは2~8%である。配合量が1%以上であると、知覚過敏抑制効果が十分に優れ、10%以下であると、十分に泡立ちが確保される。
(B)成分、特にカリウム塩の配合量は、知覚過敏抑制効果、更には泡立ちの確保の点から、組成物全体の5%以上(特に5~8%)、更に6%以上とすることもできる。
【0017】
(A)成分の配合量と(B)成分の配合量との量比を示す(A)/(B)は、質量比として0.001~0.5が好ましく、より好ましくは0.002~0.4、更に好ましくは0.005~0.3、とりわけ好ましくは0.01~0.2である。(A)/(B)の質量比が上記範囲内であると、知覚過敏抑制効果がより優れ、また、嫌味が抑制され味も良い。
【0018】
本発明の口腔用組成物には、泡立ちの確保の点で、更に(C)アルキル硫酸塩を配合することが好ましい。
(C)アルキル硫酸塩は、好ましくはラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウムであり、特にラウリル硫酸ナトリウムが好ましい。
【0019】
(C)成分の配合量は、泡立ち及び知覚過敏抑制効果の点から、組成物全体の0.1~2%が好ましく、より好ましくは0.1~1.8%、更に好ましくは0.6~1.5%であり、1.1%以上でもよい。配合量が0.1%以上であると、泡立ち量を十分に確保できる。多く配合し過ぎると知覚過敏抑制効果に影響することがあるが、配合量が2%以下であると、知覚過敏抑制効果が十分に優れる。
【0020】
(B)成分の配合量と(C)成分の配合量との量比を示す(B)/(C)は、質量比として1~50が好ましく、より好ましくは1~20、更に好ましくは1~10、とりわけ好ましくは1~6である。(B)/(C)の質量比が上記範囲内であると、一層良好な泡立ちとなり十分な泡立ち量を確保でき、かつ知覚過敏抑制効果をより優れたものとすることができる。また、嫌味が抑制され使用感も良い。
【0021】
本発明の口腔用組成物は、特に練歯磨等の歯磨剤組成物として好適であり、通常の方法で調製される。また、上記成分に加えて、その他の公知成分を本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて配合できる。例えば、練歯磨剤では研磨剤、湿潤剤、粘結剤、界面活性剤、更に必要により甘味料、着色剤、防腐剤、香料、有効成分などを配合することができる。なお、配合量は本発明の効果を妨げない範囲で通常量でよい。
本発明の口腔用組成物には、その他の任意成分として、剤型に応じて通常使用される成分を必要に応じて配合できる。
【0022】
研磨剤は、無水ケイ酸、沈降性シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム・2水和物又は無水和物等のリン酸カルシウム系化合物、炭酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤が挙げられる。研磨剤の配合量は、通常、2~50%、特に10~40%である。
【0023】
湿潤剤は、ソルビット、キシリット等の糖アルコール、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。湿潤剤の配合量は、通常、5~50%、特に20~45%である。
【0024】
粘結剤は、有機又は無機粘結剤を配合できる。具体的には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、アルギン酸誘導体、キサンタンガム等のガム類、カラギーナン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムといった有機粘結剤、ゲル化(増粘)性シリカ、ゲル化(増粘)性アルミニウムシリカ等の無機粘結剤が挙げられる。粘結剤の配合量は、通常、0.1~10%、特に0.1~5%である。
【0025】
界面活性剤は、(C)成分に加えて、それ以外のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合できる。
任意のアニオン性界面活性剤は、アシルサルコシン酸塩、アシルタウリン塩、アシルアミノ酸塩が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、糖アルコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、脂肪酸アルカノールアミドが挙げられる。
カチオン性界面活性剤は、アルキルアンモニウム型、アルキルベンジルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩系が挙げられる。
両性界面活性剤は、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン等のベタイン型、アルキルイミダゾリニウムベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリニウムベタイン型が挙げられる。
界面活性剤の配合量は、通常、0.1~10%、特に0.5~5%である。
【0026】
着色剤は、青色1号、黄色4号、二酸化チタン等が挙げられる。
甘味料は、サッカリンナトリウム等が挙げられる。
防腐剤は、メチルパラベン(パラオキシ安息香酸メチル)等のパラオキシ安息香酸エステル、安息香酸又はその塩等が挙げられる。
【0027】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料や、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができ、実施例記載の香料に限定されない。
香料の配合量は特に限定されないが、上記の香料素材は、組成物中に0.000001~1%使用するのが好ましく、上記香料素材を使用した賦香用香料は、組成物中に0.1~2%使用するのが好ましい。
【0028】
任意の有効成分は、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤、塩化セチルピリジニウム等のカチオン性殺菌剤、トラネキサム酸、アラントイン等の抗炎症剤、デキストラナーゼ等の酵素、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ素含有化合物、水溶性リン酸化合物、塩化ナトリウム、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール、植物抽出物、歯石防止剤、歯垢防止剤が挙げられる。有効成分は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合できる。
【実施例
【0029】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0030】
[実施例、比較例]
表1~5に示す組成の歯磨剤組成物を常法によって調製し、ラミネートチューブ容器に充填し、これらを試験歯磨剤組成物として用いた。試験歯磨剤組成物の知覚過敏抑制効果を下記方法で評価した。表1に示す組成の歯磨剤組成物は、嫌味のなさについても下記方法で評価した。また、表2~5に示す組成の歯磨剤組成物は、歯磨き時の泡立ちについても下記方法で評価した。これらの結果を各表に併記した。
なお、表2~4に示す歯磨剤組成物は、下記方法で評価した嫌味のなさがいずれも2.5以上で味が良好であった。
なお、実施例13及び15は参考例である。
【0031】
(1)知覚過敏抑制効果の評価方法
被験者として、冷水を口に含むと歯がしみる10人のパネラーを用いた官能試験によって評価した。
試験歯磨剤組成物を押し出して指先に1cm取り、しみる歯に直接刷り込んだ後、普段と同じ方法で3分間歯磨きし、その直後に冷水を口に含んだ際の歯のしみ具合を下記に示す評点基準によって判定した。
<評点基準>
5点:歯磨き後、冷水を口に含むと、まったく歯がしみない
4点:歯磨き後、冷水を口に含むと、歯がしみない
3点:歯磨き後、冷水を口に含むと、ほとんど歯がしみず、問題のないレベル
2点:歯磨き後、冷水を口に含むと、歯がしみる
1点:歯磨き後、冷水を口に含むと、著しく歯がしみる
10人の平均点を算出し、評価した。10人の平均値が3.0点未満は、知覚過敏抑制効果の即効性が低く、3.0以上4.0点未満は、知覚過敏抑制効果の即効性が優れ、4.0点以上は、知覚過敏抑制効果の即効性が更に優れると判断した。
【0032】
(2)歯磨き時の泡立ちの評価方法
被験者として、専門家パネラー10人を用いた官能試験によって評価した。
試験歯磨剤組成物を押し出して歯ブラシ上に約1.5cmのせ、通常、歯を磨く方法で約1週間(1日2回)使用し、歯磨き時の口腔内での泡立ちについて、下記に示す評点基準によって判定した。
<評点基準>
4点:泡立ち量が十分にある
3点:泡立ち量が適度にある
2点:泡立ち量が少ない
1点:泡立ちがほとんどない
10人の平均点を算出し、評価した。10人の平均値が2.5点未満は、泡立ちが十分ではなく、2.5以上3.0点未満は、泡立ちが良好であり、3.0点以上は、泡立ちが更に良好であると判断した。
【0033】
(3)味(嫌味のなさ)の評価方法
被験者として、専門家パネラー10人を用いた官能試験によって評価した。
試験歯磨剤組成物を押し出して歯ブラシ上に約1.5cmのせ、通常、歯を磨く方法で使用し、歯磨き時に感じた嫌味のなさについて、下記に示す評点基準によって判定した。
<評点基準>
4点:嫌味が全くない
3点:嫌味がほとんどない
2点:嫌味がややある
1点:嫌味がある
10人の平均点を算出し、評価した。10人の平均値が2.5点未満は、味(嫌味のなさ)が劣り、2.5以上3.0点未満は、味(嫌味のなさ)が良好であり、3.0点以上は、味(嫌味のなさ)が更に良好であると判断した。
【0034】
使用原料の詳細を下記に示す。
(A)成分:
ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:1,000)
直鎖状、ポリサイエンス社製
ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:6,000)
直鎖状、東亞合成(株)製、ジュリマーAC-10NP
ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:9,000)
直鎖状、ポリサイエンス社製
ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:20,000)
直鎖状、東亞合成(株)製、アロンA-20UN
ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:300,000、比較品)
架橋型、ポリサイエンス社製
(B)成分:
硝酸カリウム;大塚化学(株)製
酢酸カリウム;米山化学工業(株)製
塩化カリウム;大塚化学(株)製
乳酸アルミニウム;武蔵野化学研究所(株)製
塩化アルミニウム;純正化学(株)製
(C)成分:
ラウリル硫酸ナトリウム;BASF社製、Texapon OC-P
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】