(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】スピーカー装置、及び車両用ドア
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20250218BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
H04R1/02 105B
H04R1/02 102B
B60R11/02 S
(21)【出願番号】P 2021002131
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明善
【審査官】佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-084389(JP,A)
【文献】特開2004-248031(JP,A)
【文献】特表平11-510034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-1/46
H04R 9/00-9/18
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカーユニットと、
前記スピーカーユニットと
、取付対象部材
または前記取付対象部材に取り付けられる取付部材のいずれか一方とを接続し、前記スピーカーユニットを支持するバネ部材と、
を備え、
前記バネ部材は、板バネであり、
前記板バネの厚さ方向は、前記スピーカーユニットの中心軸方向に沿い、
前記スピーカーユニットの中心軸方向における前記バネ部材のバネ定数k1、及び前記スピーカーユニットの質量m又は前記スピーカーユニットと前記バネ部材との合算の質量m1に基づく共振周波数fcは、前記スピーカーユニットの出力音声帯域より低
く、
前記スピーカーユニットの中心軸方向は、水平方向に沿って延在し、
前記スピーカーユニットの中心軸方向における前記バネ部材のバネ定数k1は、前記中心軸方向に垂直な方向における前記バネ部材のバネ定数k2よりも低い、
スピーカー装置。
【請求項2】
前記共振周波数fcは、前記スピーカーユニットの最低共振周波数f
0未満である、
請求項1に記載のスピーカー装置。
【請求項3】
前記スピーカーユニットは、
振動板と、
前記振動板の外周側に配置されるスピーカーフレームと、
前記スピーカーユニットの中心軸方向において、前記振動板よりも背面側に配置された磁気回路と、
前記スピーカーフレームに接続されて、前記スピーカーユニットの放音面側から背面側に延び、前記板バネに接続される中間フレームと、を含む、
請求項
1又は2に記載のスピーカー装置。
【請求項4】
前記板バネは、円環状を成し、
取付部材に接続される外周部と、
前記外周部よりも内周側に配置され、前記中間フレームに接続される内周部と、を含む、
請求項
3に記載のスピーカー装置。
【請求項5】
前記板バネは、前記中間フレームに接続され、前記スピーカーユニットの中心軸方向において、前記スピーカーユニットの放音面側の端部よりも、背面側に配置される、
請求項
3又は4に記載のスピーカー装置。
【請求項6】
前記スピーカーユニットの径方向において、前記板バネと前記スピーカーユニットとの接続位置は、前記スピーカーユニットの最大の外形の位置よりも、前記スピーカーユニットの中心軸に近い位置である
請求項
1~5のいずれか一項に記載のスピーカー装置。
【請求項7】
前記取付部材と前記スピーカーユニットとの間の隙間を密封する密封部材と、を更に備え、
前記バネ部材は、前記取付部材を介して、前記取付対象部材に接続される、
請求項1~
6の何れか一項に記載のスピーカー装置。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載のスピーカー装置と、
開口部が形成されたパネル部材と、を備え、
前記スピーカー装置が前記開口部に保持される、
車両用ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スピーカー装置、及び車両用ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
内箱及び外箱を備えたスピーカーにおいて、内箱と外箱との間にコイル状のバネ部材を介在させたものがある(例えば、特許文献1参照)。また、スピーカーユニットの放音面の周囲にシール材及び封止材が配置されたスピーカーがある。このスピーカーは、ドアトリムに設けられた面部材に対して、シール部材及び封止材を介して取り付けられている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6424963号明細書
【文献】特開平10-210582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スピーカーフレームが取り付けられる取付対象部材に対して、スピーカーの振動がスピーカーフレームを介して伝達されることがある。そのため、取付対象部材が共振したり、びびりによる異音が発生したりするおそれがある。本開示は、スピーカーユニットの振動がスピーカーフレームから、取付対象部材に伝達されることを抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のスピーカー装置は、スピーカーユニットと、スピーカーユニットと取付対象部材との間に位置し、スピーカーユニットを支持するバネ部材と、を備える。スピーカーユニットの中心軸方向におけるバネ部材のバネ定数k1、及びスピーカーユニットの質量m又はスピーカーユニットとバネ部材との合算の質量m1に基づく共振周波数fcは、スピーカーユニットの出力音声帯域より低い。
【0006】
本開示の車両用ドアは、上記のスピーカー装置と、開口部が形成されたパネル部材とを備える。スピーカー装置は開口部に保持される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るスピーカー装置の正面図である。
【
図5】スピーカー装置を備えた車両用ドアを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面において各部の寸法及び縮尺は実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に記載する実施形態は、本開示の好適な具体例である。このため、本実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
図1は、実施形態に係るスピーカー装置1の正面図である。
図2は、スピーカー装置1の断面図である。
図1及び
図2に示されるスピーカー装置1は、例えば、
図5に示されるように、自動車等の車両に搭載される車載用のスピーカー装置として使用される。
【0010】
スピーカー装置1は、例えば、取付対象部材50であるインナパネルを介して、車両のドアに取り付けられてもよい。なお、スピーカー装置1の用途は、車載用に限定されず、他の用途でもよい。スピーカー装置1が取り付けられる取付対象部材50は、インナパネルに限定されない。取付対象部材50は、ドアトリムなどその他の部材でもよい。取付対象部材50には、スピーカー装置1が保持される開口部が形成される。例えば、後述する取付部材40を介して、スピーカー装置1が、開口部を取り囲む周縁部に固定される。
【0011】
図2では、スピーカー装置1の一部が断面で示される。この断面は、スピーカーユニット2の軸線Oに沿って切断した断面である。なお、軸線Oは、後述する振動板3の振動方向に平行で、かつ、振動板3の中心を通る線分である。軸線Oと交差する方向は、スピーカーユニット2の径方向Yである。軸線O方向において、振動板3が配置される側は、正面側であり、反対側は背面側Bである。正面側は放音面側Fである。スピーカーユニット2の軸線Oは、後述する磁気回路6の軸線Oである。
【0012】
スピーカー装置1は、スピーカーユニット2を含む。スピーカーユニット2は、振動板3と、駆動部4と、スピーカーフレーム5とを有し、これらをユニット化した構造体である。
【0013】
振動板3は、シート材で構成され、振動により放音する振動体である。当該シート材は、例えば、樹脂材料を繊維基材に含浸させた状態で硬化または固化することで得られる。当該樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、変性ゴム樹脂およびフェノール樹脂等が挙げられる。当該繊維基材としては、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、シリカ繊維、金属繊維、チタン酸カリウム繊維、ジルコニア繊維、ポリアクリレート繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、綿繊維、麻繊維およびセルロース繊維等が挙げられる。
【0014】
振動板3は、軸線Oに沿う方向に振動する。振動板3は、コーン型である。なお、振動板3の形状は、コーン型に限定されず、例えば、ドーム型等でもよい。
【0015】
駆動部4は、入力される電気信号に基づいて振動板3を駆動する機構である。駆動部4は、磁場を生じさせる磁気回路6と、振動板3に接続されるボイスコイル7とを含む。
【0016】
磁気回路6は、マグネット8とヨーク9とセンターポール10とを含む。マグネット8、ヨーク9、及びセンターポール10は、軸線O方向において、振動板3の背面側Bに配置されている。マグネット8、ヨーク9、及びセンターポール10は、軸線Oと同軸に配置される。マグネット8は円環状を成し、ヨーク9は円盤状を成し、センターポール10は円柱状を成す。ヨーク9及びセンターポール10は磁性材料から成る。
【0017】
マグネット8から生じる磁束は、ヨーク9及びセンターポール10を通過する。磁気回路6を通過する磁束により、磁気回路6の周囲に磁場が形成される。ボイスコイル7は、磁気回路6による磁場内に配置される。
【0018】
スピーカーユニット2は、ボイスコイル7が巻回されるボビン11を備える。ボビン11は、筒状部11a及びセンターキャップ11bを含む。センターキャップ11bは、筒状部11aの正面側の開口を閉じる。ボイスコイル7は、ボビン11の筒状部11aの外周面に沿って巻回される。
【0019】
振動板3は、軸線O方向から見て、センターキャップ11bの周囲に形成される。振動板3の内周3aは、センターキャップ11bの外周に接続される。
【0020】
スピーカーユニット2は、弾性を有するエッジ部12を備える。軸線O方向から見て、エッジ部12は、リング状を成し、振動板3の外周3bに沿って設けられる。振動板3の外周3bは、エッジ部12に接続される。振動板3は、エッジ部12を介して、スピーカーフレーム5に連結される。
【0021】
スピーカーフレーム5は、振動板3及び磁気回路6を保持する。スピーカーフレーム5は、鉄または金属材料または樹脂材料で構成される。スピーカーフレーム5の形状は、振動板3及び磁気回路6を保持できればよく、
図2に示す形状に限定されず、任意である
【0022】
スピーカーフレーム5は、コーン部13、磁気回路収容部14、及びフランジ15を含む。コーン部13は、振動板3を径方向Y外側から覆うように形成される。磁気回路収容部14は、軸線O方向において、コーン部13の背面側Bに配置されている。磁気回路収容部14は、磁気回路6のうち、マグネット8及びヨーク9を収容する。センターポール10の背面側Bの部分は、磁気回路収容部14に収容されている。センターポール10の放音面側Fの部分は、コーン部13内に延びている。磁気回路収容部14は、磁気回路6の一部を収容している。
【0023】
フランジ15は、コーン部13の放音面側Fの端部から、径方向Y外側に張り出している。フランジ15は、軸線O方向から見て円環状を成している。
【0024】
スピーカーユニット2は、スピーカーフレーム5に接続される中間フレーム20を備える。中間フレーム20は、径方向Yにおいて、コーン部13の外側に配置される。中間フレーム20は、軸線O方向から見て、たとえば円環状を成す。中間フレーム20は、たとえば筒体を含んでもよい。中間フレーム20は、軸線O方向において、放音面側Fに配置されるベース部21と、ベース部21から背面側Bに延びる延出部22とを備える。ベース部21及び延出部22は、一体成型されている。中間フレーム20は、複数の部品から構成されていてもよい。
【0025】
ベース部21は、フランジ15に対して固定されている。ベース部21は、フランジ15の背面に接続されている。ベース部21の外径は、フランジ15の外径と同じでもよい。ベース部21の外径は、フランジ15の外径より小さくてもよく、フランジ15の外径より大きくてもよい。
【0026】
図3は、中間フレーム20を示す断面図である。
図3では、中間フレーム20の軸線Oに沿う断面を示す。延出部22は、軸線Oに沿う断面において、軸線Oに対して傾斜している。延出部22の放音面側Fの内径D1は、延出部22の背面側Bの内径D2よりも大きい。中間フレーム20の背面側Bの端部には、接続面20aが形成されている。接続面20aは、軸線O方向から見て円環状をなす。接続面20aは、軸線Oと垂直な面を含む。
【0027】
図2~
図4に示されるように、スピーカー装置1は、スピーカーユニット2を支持するバネ部材30を備える。
図4は、バネ部材30を示す斜視図である。バネ部材30は、スピーカーユニット2と取付対象部材50との間の力の伝達経路において、スピーカーユニット2と、取付対象部材50との間に位置する。スピーカーユニット2と取付対象部材50との間の力の伝達経路は、スピーカーユニット2を支持するための力が伝達される部品を含む。スピーカー装置1では、バネ部材30と、後述する取付部材40とを含む。
【0028】
図4に示されるように、バネ部材30は、リング状の板バネである。板バネの板厚方向は、軸線O方向に沿う。バネ部材30は、金属により形成されていてもよく、樹脂により形成されていてもよい。バネ部材30は、ゴムにより形成されていてもよい。バネ部材30は、その他の材料から形成されていてもよい。バネ部材30は、第1リング(内周部)31、第2リング(外周部)32、及び連結部33を有する。第1リング31は、内周側に配置され、第2リング32は、外周側に配置される。連結部33は、径方向Yにおいて、第1リング31と第2リング32との間に配置され、第1リング31と第2リング32とを連結する。バネ部材30は、複数の連結部33を有する。バネ部材30は、たとえば4つの連結部33を有する。
【0029】
連結部33は、円弧状を成す第1部分33aと、第1部分33aと第1リング31とを連結する第2部分33bと、第1部分33aと第2リング32とを連結する第3部分33cとを含む。第1部分33aは、バネ部材30の周方向において所定の長さを有する。周方向に隣り合う連結部33同士の間には、隙間が形成される。径方向Yにおいて、第1リング31と第1部分33aとの間には、隙間が形成される。第2リング32と第1部分33aとの間には、隙間が形成される。第1部分33aの長手方向において、一方の端部に、第2部分33bが接続され、他方の端部に第3部分33cが接続される。
【0030】
図2及び
図3に示されるように、第1リング31は、中間フレーム20に接合され、第2リング32は、取付部材40に接合される。第1リング31は、中間フレーム20の接続面20aに接合される。第2リング32は、取付部材40の背面側Bの端面40aに接合される。バネ部材30は、接続面20aに対してねじ止めされてもよく、接着されてもよい。同様に、バネ部材30は、端面40aに対してねじ止めされてもよく、接着されてもよい。バネ部材30は、その他の方法によって、接続面20a及び端面40aと接合されてもよい。
【0031】
取付部材40は、筒体41、第1フランジ42、及び第2フランジ43を備える。筒体41は、軸線Oと同軸に配置される。筒体41は、径方向Yにおいて、中間フレーム20の外側に配置される。第1フランジ42は、筒体41の放音面側Fに配置される。第1フランジ42は、筒体41から径方向Y外側に張り出す。第2フランジ43は、筒体41の背面側Bに配置される。第2フランジ43は、筒体41から径方向Y内側に張り出す。取付部材40の軸線O方向の長さは、たとえば、中間フレーム20の軸線O方向の長さより短い。軸線O方向において、中間フレーム20は、取付部材40よりも、放音面側Fに張り出している。端面40aは、第2フランジ43の背面側Bの面である。端面40aには、上述のとおり、バネ部材30が接合されている。
【0032】
第1フランジ42は、取付対象部材50に対して固定されている。第1フランジ42は、取付対象部材50に対してボルト固定されている。第1フランジ42は、取付対象部材50に対して、その他の方法により接合されていてもよい。
【0033】
スピーカー装置1は、取付部材40とスピーカーユニット2との間の隙間を密封する密封部材16を備える。密封部材16の内周側は、フランジ15に接合されている。密封部材16の外周側は、第1フランジ42に接合されている。密封部材16は弾性を有する部材であり、例えばゴム膜である。密封部材16の材料は、ゴムに限定されず、樹脂等であってもよい。また、密封部材16は、膜状に限定されず、例えばブロック状でもよい。
【0034】
次に、バネ部材30の特性について説明する。バネ部材30の軸線O方向におけるバネ定数k1は、バネ部材30の径方向Yにおけるバネ定数k2よりも小さい。バネ部材30は、径方向Yよりも、軸線O方向に変形しやすい。
【0035】
バネ部材30のバネ定数k1及びスピーカーユニット2の質量mに基づく共振周波数fcは、スピーカーユニット2の出力音声帯域より低い。なお、バネ部材30の質量が、無視できないほど大きい値の場合、「質量m」を、スピーカーユニット2とバネ部材30との合算の「質量m1」に置き換えてもよい。
【0036】
共振周波数fcは、下記式(1)を満たす。
【数1】
【0037】
共振周波数fcは、スピーカーユニット2の最低共振周波数f0未満である。最低共振周波数f0は、スピーカーユニット2から出力される音声域の周波数の下限値に相当する。スピーカーユニット2の最低共振周波数f0は、たとえば30Hz以上60Hz以下である。
【0038】
スピーカーユニット2の最低共振周波数f0は、スピーカーユニット2において電気インピーダンスの絶対値が極大となる周波数のうち、最も低い周波数である。
【0039】
このようなスピーカー装置1によれば、バネ部材30を備えているので、スピーカーユニット2による振動が、バネ部材30によって減衰される。これにより、スピーカーユニット2の振動が、取付部材40及び取付対象部材50に伝達されにくい。
【0040】
スピーカー装置1では、バネ部材30のバネ定数k1及びスピーカーユニット2の質量mに基づく共振周波数fcが、スピーカーユニット2の出力音声帯域より低い。これにより、スピーカーユニット2の振動が、バネ部材30を介して、取付部材40及び取付対象部材50に伝達されることが抑制される。
【0041】
スピーカー装置1では、バネ部材30が板バネであり、板バネの板厚方向がスピーカーユニット2の軸線O方向に沿っている。板バネの板厚方向が、振動板3の振動方向に沿っているので、スピーカーユニット2による振動が、径方向Yに伝達されにくい。そのため、スピーカーユニット2の振動が取付部材40及び取付対象部材50に伝達されにくい。
【0042】
スピーカー装置1では、軸線O方向が水平方向に沿って延在し、バネ部材30の軸線O方向におけるバネ定数k1は、バネ部材30の径方向Yにおけるバネ定数k2よりも低い。そのため、スピーカー装置1は、水平方向に柔らかく、垂直方向に硬くなる。スピーカー装置1は、軸線O方向が水平方向に沿って配置される縦置きに適した構造である。なお、水平方向に柔らかいとは、スピーカーユニット2が水平方向に変位しやすいことをいう。垂直方向に硬いとは、スピーカーユニット2が垂直方向に変位しにくいことをいう。スピーカーユニット2は、垂直方向よりも水平方向に変位しやすい。
【0043】
スピーカー装置1では、バネ部材30が、中間フレーム20に接続され、軸線O方向において、スピーカーユニット2の放音面側Fの端部であるフランジ15よりも、背面側Bに配置されている。換言すれば、軸線O方向において、バネ部材30は、磁気回路6に近い位置に配置されている。
【0044】
このようなスピーカー装置1によれば、軸線O方向において、バネ部材30をスピーカーユニット2の重心に近い位置に配置できるので、スピーカーユニット2を安定して支持できる。スピーカー装置1では、バネ部材30のゆがみを防止して、スピーカーユニット2の傾きを抑制できる。
【0045】
スピーカー装置1では、スピーカーユニット2の径方向Yにおいて、バネ部材30とスピーカーユニット2との接続位置である接続面20aは、スピーカーユニット2の最大の外形の位置であるフランジ15の外周部分15aよりも、軸線Oに近い位置に配置されている。これにより、径方向Yにおいて、スピーカー装置1の小型化を図ることができる。スピーカー装置1の設置スペースを小さくできる。
【0046】
次にスピーカー装置1を備えた車両ドア(車両用ドア)100について説明する。
図5は、実施形態に係るスピーカーシステムを備えた車両ドア100を示す分解斜視図である。
図5に示されるように、車両ドア100は、外部と接するアウタパネルと称される第1パネル102と、車両ドア100において車室側に内装材として設けられ、ドアトリムと称される第2パネル103と、第1パネル102と第2パネル103との間に設けられ、インナパネルと称される第3パネル104と、第3パネル104に取り付けられるスピーカー装置1とを備える。第1パネル102と第3パネル104には一般的に鋼板が用いられてその前後及び下部の外縁部分が互いに結合される。第1パネル102と第3パネル104には、アルミニウム合金あるいは炭素材を使用することも可能である。第2パネル103には一般的には合成樹脂成形板が用いられる。しかしながら、本開示においては、これらのパネル102、103、104の構成材料は上記のものに限定されない。第1パネル102と第3パネル104の上部には、窓ガラス106を上下動可能に収容した枠体107が設けられる。
【0047】
第3パネル104には、スピーカー装置1を収容するための開口部104aや、窓ガラス106を上下動させるための不図示のモータやドアロックアクチュエータ等を収容するための複数の開口部104bが設けられる。本実施形態においては、これらの開口部104bの少なくとも一部は不図示のモータやドアロックアクチュエータ等によっては閉塞されず、開口部104bを閉塞する専用の部材も設けられない。
【0048】
第2パネル103は第3パネル104に対し、連結部材109X、109Yにより、第2パネル103の外縁部分が第3パネル104に着脱可能に固定されることによって取付けられる。第2パネル103の外縁部分には外縁部分に沿って溝状のパッキン取付部が設けられ、パッキン取付部にはパッキン110が嵌め込まれており、このパッキン110が第2パネル103と第3パネル104との間の空間の気密性を保持する。この空間は、第1パネル102と第3パネル104との間で形成された空間と、第3パネル104に設けられた少なくとも一部の開口部により連通する。
【0049】
スピーカーユニット2は、取付部材40を介して第3パネル104に取付けられる。取付部材40はねじを用いて固定される。第3パネル104は、パネル部材の一例であり、前述の取付対象部材50に相当する。
【0050】
なお、前述した実施例は、本開示の代表的な形態を示したに過ぎず、本開示は、前述した実施例に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。
【0051】
前述の実施形態では、軸線Oが水平方向となるように配置される場合について説明しているが、軸線Oが垂直方向となるように、スピーカー装置1が配置されてもよく、軸線O方向が、水平方向に対して傾斜するようにスピーカー装置1が配置されていてもよい。
【0052】
前述の実施形態では、スピーカー装置1が車両用ドアに配置される場合について、例示しているが、スピーカー装置1は車両のその他の部分に配置されてもよい。また、スピーカー装置1は、車両以外の物に適用されてもよい。
【0053】
スピーカー装置1は、中間フレーム20及び取付部材40を備えていない構成でもよい。バネ部材30は、フランジ15に直接接続されていてもよい。バネ部材30は、取付対象部材50に直接接続されていてもよい。同様に、密封部材16は、取付対象部材50に直接接続されていてもよい。
【0054】
前述の実施形態では、取付部材40とフランジ15との間の隙間を密封する密封部材16について説明しているが、密封部材16はその他の構成でもよい。スピーカー装置1は、密封部材16を備えていない構成でもよい。スピーカー装置1は、その他の部品の隙間を密封する密封部材を備えていてもよい。スピーカー装置1は、バネ部材30の隙間を密封する密封部材を備えていてもよい。密封部材は、伸縮性を有するゴム膜で形成され、バネ部材30の隙間を密封してもよい。密封部材は、バネ部材30の隙間に配置されてもよく、隙間を覆うように配置されてもよい。また、スピーカー装置1は、密封部材として機能するバネ部材を備えていてもよい。スピーカー装置1は、隙間が形成されていないゴム製のバネ部材を備える構成でもよい。密封部材は、その他の複数の部品間の隙間を密封してもよい。密封部材は、取付部材40と中間フレーム20との間の隙間を密封するものでもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…スピーカー装置、2…スピーカーユニット、3…振動板、3b…振動板の外周、4…スピーカーフレーム、6…磁気回路、15…フランジ(スピーカーユニットの放音面側の端部)、15a…外周部分(スピーカーユニットの最大の外形の位置)、16…密封部材16、20…中間フレーム、20a…接続面(板バネとスピーカーユニットとの接続位置)、30…バネ状部材(板バネ)、31…第1リング(内周部)、32…第2リング(外周部)、40…取付部材、50…取付対象部材、100…車両ドア(車両用ドア)、104…第3パネル(取付対象部材、パネル部材)、104a…開口部、B…背面側、F…放音面側、O…スピーカーユニットの中心軸、Y…径方向。