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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/06 20060101AFI20250218BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20250218BHJP
   B60R 99/00 20090101ALI20250218BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20250218BHJP
【FI】
B60W30/06
G08G1/16 C
B60R99/00 340
B60W30/08
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021063897
(22)【出願日】2021-04-05
(65)【公開番号】P2022159612
(43)【公開日】2022-10-18
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大林 幹生
(72)【発明者】
【氏名】早川 嘉紀
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-207732(JP,A)
【文献】特開2018-083481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
B60R 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲の物体の位置に関する情報を含む周囲環境情報を取得する情報取得装置と、
支援要求の発生に応じて、前記周囲環境情報を用いて、前記車両を、当該車両の現在位置から、前記車両の出庫が完了したときの前記車両の位置である目標位置へ移動させるための移動経路を演算し、
前記移動経路に沿って前記車両が移動するように駐車支援制御を実行するように構成された制御ユニットと、
記憶部と、
を備え、
前記制御ユニットは、前記車両の駐車が完了したときに成立する所定の記憶条件が成立した場合、
前記車両が駐車される過程において前記情報取得装置によって取得された前記周囲環境情報を第1情報として前記記憶部に記憶する
ように構成され、
前記制御ユニットは、前記車両が駐車されている状況において前記支援要求が発生したとき、
前記記憶部から前記第1情報を取得し、
現時点にて前記情報取得装置によって取得された前記周囲環境情報を第2情報として取得し、
前記第1情報と前記第2情報との間のずれ度合が所定の度合よりも大きいときに成立する環境変化条件が成立したとき、前記第2情報を用いて前記移動経路を演算し、
前記環境変化条件が成立しないとき、前記第1情報と前記第2情報とを統合した情報を用いて前記移動経路を演算する
ように構成された、
車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車支援制御を実行する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の周辺状況に応じて設定された移動経路(目標経路)に沿って車両が移動するように駐車支援制御を実行する車両制御装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。駐車支援制御は、例えば、駐車モード及び出庫モードを含む。駐車モードは、車両の駐車を行うためのモードである。出庫モードは、駐車された車両の走行路への出庫(走行路への移動)を行うためのモードである。
【0003】
特許文献1に記載されている装置(以下、「従来装置」と称呼する。)は、車両を出庫する際に、現時点にてセンサから取得される周囲環境情報と、車両を駐車した際に記憶しておいた周囲環境情報とを統合して、周囲環境の統合情報を取得する。従来装置は、周囲環境の統合情報に基づいて、移動経路(車両を出庫させるための経路)を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-083481号公報
【発明の概要】
【0005】
ところで、車両が駐車された後に、車両の周囲に存在する物体(例えば、他車両)が移動する場合がある。このような場合においても、従来装置は、車両を駐車した際に記憶しておいた周囲環境情報を使用する。車両と物体との間の位置関係が、車両が駐車された時点から変化しているので、従来装置は車両の周囲の環境を誤って認識する可能性がある。その結果、従来装置は不適切な移動経路を演算する可能性がある。
【0006】
本発明の目的の一つは、車両の周囲の環境が、車両が駐車された時点から変化している状況において駐車支援制御を実行する場合に、不適切な移動経路を演算する可能性を低減することができる技術を提供することである。
【0007】
1つ以上の実施形態における車両制御装置は、
車両(VA)の周囲の物体の位置に関する情報を含む周囲環境情報を取得する情報取得装置(60、10)と、
支援要求の発生に応じて、前記周囲環境情報を用いて、前記車両を、当該車両の現在位置から、前記車両の出庫が完了したときの前記車両の位置である目標位置(Ptgt)へ移動させるための移動経路(MP)を演算し、
前記移動経路に沿って前記車両が移動するように駐車支援制御を実行するように構成された制御ユニット(10)と、
記憶部(10e)と、
を備える。
前記制御ユニットは、前記車両の駐車が完了したときに成立する所定の記憶条件が成立した場合、
前記車両が駐車される過程において前記情報取得装置によって取得された前記周囲環境情報を第1情報として前記記憶部に記憶する
ように構成されている。
前記制御ユニットは、前記車両が駐車されている状況において前記支援要求が発生したとき、
前記記憶部から前記第1情報を取得し、
現時点にて前記情報取得装置によって取得された前記周囲環境情報を第2情報として取得し、
前記第1情報と前記第2情報との間のずれ度合が所定の度合よりも大きいときに成立する環境変化条件が成立したとき、前記第2情報を用いて前記移動経路を演算し、
前記環境変化条件が成立しないとき、前記第1情報を用いて前記移動経路を演算する
ように構成されている。
【0008】
上記の構成によれば、車両制御装置は、環境変化条件が成立する場合、第2情報を用いて車両の周囲の環境を認識して、移動経路を演算する。従って、車両制御装置が車両の周囲の環境を誤って認識する可能性を低減できる。その結果、車両制御装置が不適切な移動経路を演算する可能性を低減できる。
【0009】
一以上の実施形態において、前記制御ユニットは、前記環境変化条件が成立しないとき、前記第1情報と前記第2情報とを統合した情報を用いて、前記移動経路を演算するように構成されている。
【0010】
環境変化条件が成立しない場合、第1情報と第2情報との間のずれ度合が小さいので、第1情報は車両の周囲の環境を正確に表していると考えられる。上記の構成によれば、第2情報が第1情報によって補完される。車両制御装置は、車両の周囲に存在する物体の位置をより正確に認識することができる。その結果、車両制御装置が不適切な移動経路を演算する可能性を更に低減できる。
【0011】
一以上の実施形態において、前記情報取得装置は、超音波又は電磁波を放射し、当該放射した超音波又は電磁波が反射された点である反射点に関する情報を取得するセンサ(16)を含む。
前記周囲環境情報は、前記反射点に関する情報(401、402、601、602、801、802)を含む。
前記制御ユニットは、
前記ずれ度合を表す指標値(dn)として、前記第1情報に含まれる前記反射点の位置と前記第2情報に含まれる前記反射点の位置との間の距離に関連する値を演算し、
前記指標値が所定の閾値よりも大きいとき、前記環境変化条件が成立すると判定する
ように構成されている。
【0012】
上記の構成によれば、車両制御装置は、反射点に関する情報を用いて、環境変化条件が成立するか否かを判定することができる。
【0013】
一以上の実施形態において、上記の制御ユニットは、本明細書に記述される1以上の機能を実行するためにプログラムされたマイクロプロセッサにより実施されてもよい。一以上の実施形態において、上記の制御ユニットは、1以上のアプリケーションに特化された集積回路、即ち、ASIC等により構成されたハードウェアによって、全体的に或いは部分的に実施されてもよい。上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、本発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る車両制御装置の概略構成図である。
図2】車両が駐車されている状況の一例を示す平面図である。
図3図2に示される状況において取得される周囲環境情報である。
図4】車両が駐車される過程を示す平面図である。
図5図4に示される過程において取得される周囲環境情報である。
図6】車両が駐車されている状況の一例を示す平面図である。
図7図6に示される状況において取得される周囲環境情報である。
図8】車両が駐車された後に車両の周囲の環境が変化した状況の一例を示す平面図である。
図9図8に示される状況において取得される周囲環境情報である。
図10】統合情報の一例である。
図11】「周囲環境情報を第1情報として記憶するためのルーチン」を示したフローチャートである。
図12】「出庫モードによる駐車支援制御を実行するためのルーチン」を示したフローチャートである。
図13図12のルーチンのステップ1204にて実行されるルーチンである。
図14】車両が駐車されている状況の一例を示す平面図である。
図15図14に示される状況において得られる統合情報である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<構成>
図1に示したように、本実施形態に係る車両制御装置100は、車両VAに搭載(適用)される。車両制御装置100は、駐車支援ECU10、エンジンECU20、ブレーキECU30、SBW(Shift-by-Wire)・ECU40、及び、電動パワーステアリングECU(以下、「EPS・ECU」と称呼する。)50を備えている。これらのECUは、CAN(Controller Area Network)90を介して互いにデータを送受信可能となるように接続されている。
【0016】
ECUは、エレクトロニックコントロールユニットの略称であり、CPU、ROM、RAM、インターフェース及び不揮発性メモリ等を含むマイクロコンピュータを主要構成部品として有する電子制御回路である。CPUはROMに格納されたインストラクション(ルーチン、プログラム)を実行することにより各種機能を実現する。例えば、駐車支援ECU10は、CPU10a、ROM10b、RAM10c、インターフェース(I/F)10d及び不揮発性メモリ10e等を含むマイクロコンピュータを備える。
【0017】
エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21に接続されている。エンジンアクチュエータ21は、内燃機関22のスロットル弁の開度を変更するスロットル弁アクチュエータを含む。エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21を駆動することによって、内燃機関22が発生するトルクを変更することができる。内燃機関22が発生するトルクは、トランスミッション23及び駆動力伝達機構を介して駆動輪に伝達される。従って、エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21を制御することによって、車両VAの駆動力を制御することができる。
【0018】
なお、内燃機関22の状態は、エンジンスタートスイッチ24に対する操作に応じて変更される。エンジンスタートスイッチ24は、「イグニッションスイッチ(IGスイッチ)」或いは「車両起動スイッチ」等と称呼される場合がある。以降において、エンジンスタートスイッチ24は、単に「スタートスイッチ24」と称呼される。
【0019】
スタートスイッチ24は、運転者(ユーザ)が車両VAの運転を開始又は終了する場合に運転者によって操作されるスイッチである。スタートスイッチ24が押下される度に、スタートスイッチ24の状態がオン状態とオフ状態との間で交互に入れ替わる。スタートスイッチ24の状態に従って、車両VAの駆動源(この例では、内燃機関22)の状態が変更される。運転者は、車両VAの運転を開始する際にスタートスイッチ24を押下して、スタートスイッチ24の状態をオフ状態からオン状態に変更する。これにより、内燃機関22が始動する。運転者は、車両VAの運転を終了する際にスタートスイッチ24を押下して、スタートスイッチ24の状態をオン状態からオフ状態に変更する。これにより、内燃機関22が停止する。
【0020】
なお、車両VAが、ハイブリッド車両である場合、エンジンECU20は、駆動源としての「内燃機関及び電動機」の何れか一方又は両方によって発生する駆動力を制御することができる。更に、車両VAが電気自動車である場合、エンジンECU20は、駆動源としての電動機によって発生する駆動力を制御することができる。
【0021】
ブレーキECU30は、ブレーキアクチュエータ31に接続されている。ブレーキアクチュエータ31は、公知の油圧回路を含む。油圧回路は、リザーバ、オイルポンプ及び種々の弁装置等を含む。ブレーキアクチュエータ31は、ブレーキECU30からの指示に応じてホイールシリンダ32に供給する油圧(即ち、制動圧)を調整する。制動圧に応じて車輪に発生する摩擦制動力が変化する。従って、ブレーキECU30は、ブレーキアクチュエータ31を制御することによって、車両VAの制動力を制御することができる。
【0022】
SBW・ECU40は、SBWアクチュエータ41に接続されている。SBW・ECU40は、図示しないシフトレバーの位置に基づいてSBWアクチュエータ41を制御するようになっている。SBWアクチュエータ41は、SBW・ECU40からの指示に応じてシフト切替機構42を制御して、トランスミッション23のシフト位置を、複数のシフト位置のうちの一つへと切り替える。
【0023】
本例において、シフト位置は、駆動輪に駆動力が伝達されず且つ車両VAが機械的に停止位置にロックされる位置である駐車位置、駆動輪に駆動力が伝達されず且つ車両VAが機械的に停止位置にロックされないニュートラル位置、駆動輪に車両VAを前進させる駆動力が伝達される位置である前進位置、及び、駆動輪に車両VAを後進させる駆動力が伝達される位置である後進位置を少なくとも含む。
【0024】
EPS・ECU50は、アシストモータ(M)51に接続されている。アシストモータ51は、ステアリング機構52に組み込まれている。ステアリング機構52は、操舵ハンドルSWの回転操作により操舵輪を転舵するための機構である。ステアリング機構52は、操舵ハンドルSW、操舵ハンドルSWに連結されたステアリングシャフトUS、及び、図示しない操舵用ギア機構等を含む。EPS・ECU50は、ステアリングシャフトUSに設けられた図示しない操舵トルクセンサによって、運転者が操舵ハンドルSWに入力した操舵トルクを検出し、この操舵トルクに基づいてアシストモータ51を駆動する。EPS・ECU50は、このアシストモータ51の駆動によってステアリング機構52に操舵トルク(操舵アシストトルク)を付与し、これにより、運転者の操舵操作をアシストすることができる。
【0025】
加えて、EPS・ECU50は、以降で説明する駐車支援制御の実行中に駐車支援ECU10から操舵指令を受信した場合には、操舵指令で特定される操舵トルクに基づいてアシストモータ51を駆動する。この操舵トルクは、上述した操舵アシストトルクとは異なり、運転者の操舵操作を必要とせずに、駐車支援ECU10からの操舵指令によってステアリング機構52に付与されるトルクを表す。このトルクにより、車両VAの操舵輪の舵角が自動的に変更される。
【0026】
駐車支援ECU10は、周囲センサ60に接続されている。周囲センサ60は、車両VAの周囲環境に関する情報を取得するために使用される。周囲センサ60は、複数の超音波センサ61a~61h、及び、複数のカメラセンサ62a~62bを含む。複数の超音波センサ61a~61hは「超音波センサ61」と総称される場合がある。複数のカメラセンサ62a~62bは「カメラセンサ62」と総称される場合がある。
【0027】
4個の超音波センサ61a~61dが、車両VAの前部に、車幅方向に間隔をあけて設けられている。4個の超音波センサ61e~61hが、車両VAの後部に、車幅方向に間隔をあけて設けられている。
【0028】
各超音波センサ61は、超音波をパルス状に車両VAの周囲の所定の範囲に送信し、物体によって反射された反射波を受信する。「物体」は、例えば、自動車、歩行者及び自転車などの移動物、並びに、ガードレール及びフェンスなどの固定物を含む。
【0029】
各超音波センサ61は、超音波の送信から受信までの時間等に基づいて、「送信した超音波が反射された物体上の点である反射点についての情報(以下、「反射点情報」と称呼する。)」を取得することができる。反射点情報は、超音波センサに対する反射点の位置(方向)、及び、超音波センサと反射点との間の距離等についての情報を含む。各超音波センサ61は、反射点情報を駐車支援ECU10に出力するようになっている。
【0030】
カメラセンサ62aが、車両VAの前部の車幅方向の略中央部に設けられ、カメラセンサ62bが、車両VAの後部の車幅方向の略中央部に設けられている。各カメラセンサ62は、例えば、CCD(charge coupled device)或いはCIS(CMOS image sensor)の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。各カメラセンサ62は、車両VAの周囲の画像データを取得し、当該画像データを駐車支援ECU10に出力するようになっている。なお、各カメラセンサ62は、画像データに基づいて、車両VAの周囲に存在する物体及び区画線を認識し、当該物体及び区画線についての情報を駐車支援ECU10に出力してもよい。
【0031】
駐車支援ECU10は、所定時間が経過するたびに、超音波センサ61のそれぞれから反射点情報を受信する。駐車支援ECU10は、反射点情報(即ち、反射点の位置)を、x軸及びy軸により規定される二次元座標系にプロットする。x軸の原点及びy軸の原点は、車両VAの前部の車幅方向における中心位置Oである(図3を参照。)。x軸は、車両VAの前後方向に沿って車両VAの中心位置Oを通るように伸び、前方を正の値として有する座標軸である。y軸は、x軸と直交し、車両VAの右方向を正の値として有する座標軸である。
【0032】
図2の例において、車両VAは、道路RDにおいて、白線WLに沿って縦列駐車の形式で駐車されている。車両VAの前方に他車両OVが存在している。このような状況において、超音波センサ61a~61dの超音波は、他車両OVの後部で反射する。従って、駐車支援ECU10は、超音波センサ61a~61dから、複数の反射点201に関する反射点情報を取得する。
【0033】
図3に示すように、駐車支援ECU10は、複数の反射点201の位置を二次元座標系にプロットする。このように反射点の位置がプロットされた二次元座標系の情報は、車両VAの周囲環境に関する情報であり、以降において、「周囲環境情報」と称呼される。
【0034】
なお、「周囲センサ60及び駐車支援ECU10」は、「周囲環境情報を取得する情報取得装置」と称呼される場合がある。
【0035】
駐車支援ECU10は、図3に示す周囲環境情報300において、互いに近接している「複数の反射点」(或いは、互いに近接し且つ同一方向に移動している複数の反射点)をグルーピングする。このようにグルーピングされた複数の反射点は、「反射点群」と称呼される。
【0036】
駐車支援ECU10は、複数の反射点201を1つの反射点群として判定する。以降において、複数の反射点201は、「反射点群201」と称呼される。反射点は、超音波が反射された物体上の点であるので、反射点群201は、物体のエッジとみなすことができる。従って、周囲環境情報300は、車両VAの周囲に存在する物体の位置に関する情報を含むと言うことができる。従って、駐車支援ECU10は、周囲環境情報300に基づいて、反射点群201の前方に第1物体OB1が存在すると判定(推定)することができる。
【0037】
駐車支援ECU10は、周囲環境情報300に基づいて第1物体OB1が存在すると仮定して、車両VAの周囲の領域であって、「物体が存在しない領域」を検出する。駐車支援ECU10は、物体が存在しない領域が、車両VAが余裕をもって出庫することが可能な大きさ及び形状を有する領域である場合、その領域を「出庫可能領域」として決定する。
【0038】
更に、駐車支援ECU10は、駐車支援スイッチ70に接続されている。駐車支援スイッチ70は、運転者が駐車支援ECU10に対して駐車支援制御の実行を要求する際(後述する支援要求を発生させる際)に、運転者によって押下されるスイッチである。
【0039】
<駐車支援制御>
駐車支援ECU10は、支援モードに従って駐車支援制御を実行するようになっている。支援モードは、駐車モード及び出庫モードを含む。駐車モードは、車両VAの駐車を行うためのモードである。出庫モードは、駐車された車両VAの走行路への出庫を行うためのモードである。
【0040】
以降において、「出庫モードによる駐車支援制御」について説明される。駐車モードによる駐車支援制御は、本実施形態の特徴に直接関連しないので、その説明が省略される。
【0041】
駐車支援ECU10は、車両VAが駐車されている状況において支援要求が発生したか否かを判定する。駐車支援ECU10は、以下の条件A1及び条件A2の両方が成立すると、支援要求が発生したと判定する。なお、支援要求が発生するための条件として、他の条件が追加されてもよい。
(条件A1)駐車支援スイッチ70が押下された。
(条件A2)シフト位置が駐車位置である。
【0042】
駐車支援ECU10は、支援要求が発生すると、図2に示すように、周囲環境情報300に基づいて出庫可能領域ASを検出する。そして、駐車支援ECU10は、出庫可能領域AS内に目標位置Ptgtを設定する。目標位置Ptgtは、車両VAの出庫が完了したときの車両VAの位置であり、車両VAの中心位置Oが到達すべき位置である。
【0043】
駐車支援ECU10は、車両VAを現在位置から目標位置Ptgtにまで移動させる移動経路MPを演算する。移動経路MPは、車両VAの車体が物体(他車両、縁石及びガードレール等)に対して所定の間隔以上をあけながら車両VAが現在位置から目標位置Ptgtまで移動することができる経路である。なお、駐車支援ECU10は、様々な既知の演算方法の一つ(例えば、特開2015-3565号公報に提案されている方法)に従って、移動経路MPを演算する。
【0044】
次に、駐車支援ECU10は、移動経路MPに沿って車両VAを移動させるための移動支援情報を決定する。移動支援情報は、車両VAの移動方向(具体的には、トランスミッション23のシフト位置)、舵角パターン、及び、速度パターンを含む。
【0045】
駐車支援ECU10は、決定されたシフト位置に応じて、CAN90を介してSBW・ECU40に対してシフト制御指令を送信する。SBW・ECU40は、駐車支援ECU10からシフト制御指令を受信した場合には、SBWアクチュエータ41を駆動して、トランスミッション23のシフト位置をシフト制御指令で特定される位置に変更する(即ち、シフト制御を実行する。)。
【0046】
舵角パターンは、移動経路MP上の車両VAの位置と操舵輪の舵角とを関連付けたデータであり、車両VAが移動経路MPを走行する間の舵角の変化を表す。駐車支援ECU10は、舵角パターンに従って、CAN90を介してEPS・ECU50に対して操舵指令(目標舵角を含む)を送信する。EPS・ECU50は、駐車支援ECU10から操舵指令を受信した場合には、操舵指令で特定される操舵トルクに基づいてアシストモータ51を駆動して実際の舵角を目標舵角に一致させる(即ち、舵角制御を実行する。)。
【0047】
速度パターンは、移動経路MP上の車両VAの位置と車両VAの目標速度とを関連付けたデータであり、車両VAが移動経路MPを走行する間の車両VAの速度の変化を表す。駐車支援ECU10は、速度パターンに従って、CAN90を介してエンジンECU20に対して駆動力制御指令を送信する。エンジンECU20は、駐車支援ECU10から駆動力制御指令を受信した場合には、駆動力制御指令に応じてエンジンアクチュエータ21を制御する(即ち、駆動力制御を実行する)。更に、駐車支援ECU10は、速度パターンに従って、CAN90を介してブレーキECU30に対して制動力制御指令を送信する。ブレーキECU30は、駐車支援ECU10から制動力制御指令を受信した場合には、制動力制御指令に応じてブレーキアクチュエータ31を制御する(即ち、制動力制御を実行する)。
【0048】
以上のように、駐車支援ECU10は、運転者による運転操作なしに、車両VAが移動経路MPに沿って移動するように駐車支援制御(シフト制御、舵角制御、駆動力制御及び制動力制御)を実行することができる。
【0049】
<作動の概要>
車両VAが駐車されている状況において、超音波センサ61によって送信される超音波が届く範囲には制限がある。従って、周囲環境情報が、反射点に関して比較的少ない情報量しか含まない可能性がある。その結果、駐車支援ECU10は、車両VAの周囲の環境(具体的には、物体の位置)を正確に認識できない可能性がある。これを考慮して、車両VAが出庫される状況において、駐車支援ECU10は、車両VAが駐車される過程において取得された周囲環境情報を使用する。
【0050】
図4の例において、車両VAは、道路RD1において、第1他車両OV1と第2他車両OV2との間に縦列駐車の形式で駐車されている。車両VAが駐車される過程において、車両VAは経路Paに沿って移動したとする。駐車支援ECU10は、車両VAが経路Paを移動している間に、超音波センサ61から、複数の反射点401及び複数の反射点402に関する反射点情報を取得する。
【0051】
図5に示すように、駐車支援ECU10は、複数の反射点401及び複数の反射点402を二次元座標系にプロットする。なお、駐車支援ECU10は、複数の反射点401を1つの反射点群として判定し、複数の反射点402を1つの反射点群として判定する。図5に示された周囲環境情報500は、車両VAが駐車される過程において取得された周囲環境情報であり、以降において、「第1情報500」と称呼される。駐車支援ECU10は、後述する所定の記憶条件が成立すると、第1情報500を不揮発性メモリ10eに記憶する。
【0052】
その後、図6の状況において、車両VAの運転者は、車両VAを道路RD1に出庫しようとする。車両VAのシフト位置が駐車位置である状態で、運転者が駐車支援スイッチ70を押下する。これにより、支援要求が発生する。駐車支援ECU10は、支援要求が発生すると、現時点にて、超音波センサ61から、複数の反射点601及び複数の反射点602に関する反射点情報を取得する。
【0053】
図7に示すように、駐車支援ECU10は、複数の反射点601及び反射点602を二次元座標系にプロットする。なお、駐車支援ECU10は、複数の反射点601を1つの反射点群として判定し、複数の反射点602を1つの反射点群として判定する。図7に示された周囲環境情報700は、支援要求が発生した時点(現時点)にて取得された周囲環境情報であり、以降において、第1情報と区別するために、「第2情報700」と称呼される。
【0054】
第2情報700は、反射点に関して、第1情報500に比べて比較的少ない情報量しか含まない。一方で、第1情報500は、反射点に関して、第2情報700に比べて多い情報量を含んでいる。第1情報500は、第2情報700に比べてより正確に車両VAの周囲の環境を表している。従って、第1情報500に基づいて車両VAの周囲に存在する物体の位置を認識することが好ましいと考えられる。このような経緯から、本願の発明者は、駐車支援ECU10が第1情報500に基づいて出庫可能領域を検出して移動経路MPを演算する構成を検討した。
【0055】
しかし、上述したように、車両VAが駐車された後に、車両の周囲環境が変化する場合がある。例えば、車両VAが駐車された後に、車両の周囲に存在する物体(例えば、他車両)が移動する場合がある。図8の例において、車両VAが駐車された後に、第1他車両OV1が後方に少しだけ移動したと仮定する。この場合、駐車支援ECU10が第1情報500に基づいて車両VAの周囲に存在する物体の位置を認識すると、駐車支援ECU10が物体(第1他車両OV1)の位置を誤って認識する。その結果、駐車支援ECU10が不適切な移動経路MPを演算する可能性がある。例えば、駐車支援ECU10が第1他車両OV1に過度に接近するような移動経路MPを演算する可能性がある。
【0056】
図8の状況において支援要求が発生した場合、駐車支援ECU10は、超音波センサ61から、複数の反射点801及び複数の反射点802に関する反射点情報を取得する。図9に示すように、駐車支援ECU10は、複数の反射点801及び複数の反射点802を二次元座標系にプロットする。なお、駐車支援ECU10は、複数の反射点801を1つの反射点群として判定し、複数の反射点802を1つの反射点群として判定する。図9に示された周囲環境情報900は、支援要求が発生した時点にて取得された周囲環境情報であり、以降において、「第2情報900」と称呼される。第2情報900は、反射点に関して、第1情報500に比べて少ない情報量しか含まないが、第1情報500に比べてより正確に車両VAの周囲の環境を表している。
【0057】
上記を考慮して、本実施形態における駐車支援ECU10は、車両VAが駐車されている状況において支援要求が発生したとき、所定の環境変化条件が成立するか否かを判定する。環境変化条件は、車両VAが駐車された時点から車両VAの周囲の環境が変化したかどうかを判定するための条件である。具体的には、環境変化条件は、第1情報と第2情報との間のずれ度合が所定の度合よりも大きいときに成立する条件である。駐車支援ECU10は、環境変化条件が成立するかどうかに従って、第1情報及び第2情報から、最終的に使用する周囲環境情報(以下、「最終周囲環境情報」と称呼する。)を選択する。
【0058】
以降において、第1情報が図5の「500」であり、第2情報が図9の「900」であると仮定して、駐車支援ECU10の作動を説明する。
【0059】
駐車支援ECU10は、環境変化条件が成立するか否かを判定するために、まず、第1情報500と第2情報900とを統合する。具体的には、図10に示すように、駐車支援ECU10は、第1情報500と第2情報900とを重ね合わせる。このように統合された情報1000は、「統合情報1000」と称呼される。
【0060】
駐車支援ECU10は、統合情報1000において、互いに近接する「第1情報500の反射点群と第2情報900の反射点群との間で」ずれ度合を表す指標値dnを演算する。
【0061】
図10の例においては、第1情報500の反射点群401と第2情報900の反射点群801とが互いに近接する。従って、駐車支援ECU10は、反射点群401と反射点群801との間で指標値dnを演算する。本例において、指標値dnは、反射点群401に含まれる特定の反射点(第1特定反射点)の位置と、反射点群801に含まれる特定の反射点(第2特定反射点)の位置との間のx軸方向における距離である。
【0062】
駐車支援ECU10は、統合情報1000において、x軸と平行な直線1001を設定する。直線1001の式は、「y=y1」と表現される。なお、「y1」は任意の値に設定されてよい。第1特定反射点は、直線1001上に位置する反射点群401の反射点であり、第2特定反射点は、直線1001上に位置する反射点群801の反射点である。「反射点群401と反射点群801との間で演算された指標値dn」は、以降において、「第1指標値dn1」と称呼される。
【0063】
更に、第1情報500の反射点群402と第2情報900の反射点群802とが互いに近接する。従って、駐車支援ECU10は、前述と同じやり方で、反射点群402と反射点群802との間で指標値dnを演算する。「反射点群402と反射点群802との間で演算された指標値dn」は、以降において、「第2指標値dn2」と称呼される。
【0064】
駐車支援ECU10は、演算された指標値(dn1、dn2)の中で、所定の距離閾値dnthよりも大きい指標値dnが存在するか否かを判定する。距離閾値dnthよりも大きい指標値dnが存在する場合、駐車支援ECU10は、第1情報500と第2情報900との間のずれ度合が所定の度合よりも大きいと判定する。即ち、駐車支援ECU10は、環境変化条件が成立すると判定する。
【0065】
本例において、第2指標値dn2が距離閾値dnth以下であるものの、第1指標値dn1が距離閾値dnthよりも大きい。従って、駐車支援ECU10は、第1情報500と第2情報900との間のずれ度合が所定の度合よりも大きいと判定する。即ち、駐車支援ECU10は、環境変化条件が成立すると判定する。この場合、駐車支援ECU10は、最終周囲環境情報として、第2情報900を選択する。この構成によれば、駐車支援ECU10は、現時点の車両VAの周囲の環境を正確に表した周囲環境情報を使用する。駐車支援ECU10が不適切な移動経路MPを演算する可能性を低減できる。
【0066】
一方で、第1情報が図5の「500」であり、第2情報が図7の「700」であると仮定する。この場合、車両VAが駐車された後に、第1他車両OV1が移動していないので、環境変化条件が成立しない。この場合、駐車支援ECU10は、最終周囲環境情報として、第1情報500を選択する。この構成によれば、駐車支援ECU10は、第1情報500に基づいて、車両VAの周囲に存在する物体の位置をより正確に認識することができる。
【0067】
更に別の例において、車両VAが駐車された後に第1他車両OV1がいなくなったと仮定する。第1情報500の反射点群401に近接する第2情報900の反射点群が存在せず、駐車支援ECU10が指標値dnを演算することができない。このような場合においても、駐車支援ECU10は、環境変化条件が成立すると判定する。
【0068】
<作動>
次に、駐車支援ECU10の作動について説明する。駐車支援ECU10のCPU10a(以下、単に「CPU」と称呼する。)は、所定時間dTが経過する毎に、図11のルーチンを実行するようになっている。
【0069】
なお、CPUは、図示しないルーチンを所定時間dTが経過する毎に実行することにより、超音波センサ61から反射点情報を取得して周囲環境情報を更新している。
【0070】
所定のタイミングになると、CPUは、図11のステップ1100から処理を開始してステップ1101に進み、所定の記憶条件が成立するか否かを判定する。記憶条件は、車両VAの駐車が完了したときに成立する条件である。本例において、記憶条件は、以下の条件B1乃至条件B3の全てが成立するときに成立する。
(条件B1)車両VAの速度がゼロである。
(条件B2)シフト位置が駐車位置である。
(条件B3)スタートスイッチ24の状態がオン状態からオフ状態に変更された。
【0071】
記憶条件が成立しない場合、CPUはステップ1101にて「No」と判定してステップ1195に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0072】
これに対し、記憶条件が成立した場合、CPUはステップ1101にて「Yes」と判定してステップ1102に進み、車両VAが駐車される過程において取得された周囲環境情報を第1情報として不揮発性メモリ10eに記憶する。その後、CPUは、ステップ1195に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0073】
更に、CPUは、所定時間dTが経過する毎に、図12のルーチンを実行するようになっている。
【0074】
所定のタイミングになると、CPUは、図12のステップ1200から処理を開始してステップ1201に進み、実行フラグXAの値が「0」であるか否かを判定する。実行フラグXAの値が「0」であるとき、これは、駐車支援制御が実行されていないことを示す。実行フラグXAの値が「1」であるとき、これは、駐車支援制御が実行されていることを示す。なお、実行フラグXAの値は、スタートスイッチ24の状態がオフ状態からオン状態へと変更された時点にて、「0」に設定される。
【0075】
いま、運転者が、駐車されている車両VAに乗り込み、スタートスイッチ24を押下したと仮定する。スタートスイッチ24の状態がオフ状態からオン状態へと変更され、実行フラグXAの値が「0」である。CPUはステップ1201にて「Yes」と判定してステップ1202に進み、支援要求が発生したか否かを判定する。CPUは、上述の条件A1及び条件A2の両方が成立すると、支援要求が発生したと判定する。
【0076】
支援要求が発生していない場合、CPUは、ステップ1202にて「No」と判定してステップ1295に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0077】
いま、支援要求が発生したと仮定すると、CPUはステップ1202にて「Yes」と判定して、以下に述べるステップ1203乃至ステップ1207の処理を順に実行する。その後、CPUは、ステップ1295に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0078】
ステップ1203:CPUは、実行フラグXAの値を「1」に設定する。
ステップ1204:CPUは、後述する図13のルーチンを実行して、最終周囲環境情報として第1情報又は第2情報を選択する。
【0079】
ステップ1205:CPUは、最終周囲環境情報を用いて、出庫可能領域ASを検出する。そして、CPUは、出庫可能領域AS内に目標位置Ptgtを設定する。更に、CPUは、車両VAを現在位置から目標位置Ptgtにまで移動させる移動経路MPを演算する。
ステップ1206:CPUは、移動経路MPに沿って車両VAを移動させるための移動支援情報(具体的には、トランスミッション23のシフト位置、舵角パターン及び速度パターン)を決定する。
ステップ1207:CPUは、出庫モードによる駐車支援制御を実行する。CPUは、移動支援情報に従って、シフト制御、舵角制御、駆動力制御及び制動力制御を実行する。
【0080】
CPUが、出庫モードによる駐車支援制御を開始した後に、図12のルーチンを再び開始する。CPUがステップ1201に進むと、CPUは「No」と判定してステップ1208に進む。CPUは、所定の終了条件が成立したか否かを判定する。終了条件は、車両VAが目標位置Ptgtに到達したときに成立する。終了条件が成立しない場合、CPUは、ステップ1208にて「No」と判定して、ステップ1207の処理を前述のように実行する。即ち、CPUは、駐車支援制御を継続する。その後、CPUは、ステップ1295に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0081】
一方、CPUがステップ1208に進んだ時点にて終了条件が成立する場合、CPUは、ステップ1208にて「Yes」と判定してステップ1209に進み、実行フラグXAの値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ1295に進み、本ルーチンを一旦終了する。これにより、出庫モードによる駐車支援制御が終了される。
【0082】
CPUは、図12のルーチンのステップ1204に進むと、図13のルーチンを実行する。CPUは、図13のステップ1300から処理を開始して、以下に述べるステップ1301乃至ステップ1303の処理を順に実行する。その後、CPUは、ステップ1304に進む。
【0083】
ステップ1301:CPUは、不揮発性メモリ10eから、車両VAが駐車される過程において取得された周囲環境情報である第1情報を取得する。更に、CPUは、現時点で取得された周囲環境情報である第2情報を取得する。
ステップ1302:CPUは、第1情報と第2情報とを統合して、統合情報を作成する。
ステップ1303:CPUは、統合情報において、指標値dnを演算する。
【0084】
次に、ステップ1304にて、CPUは、環境変化条件が成立するか否かを判定する。具体的には、CPUは、ステップ1303にて演算された指標値dnの中で、距離閾値dnthよりも大きい指標値dnが存在するか否かを判定する。距離閾値dnthよりも大きい指標値dnが存在する場合、CPUは、環境変化条件が成立すると判定する。この場合、CPUは、ステップ1304にて「Yes」と判定してステップ1305に進み、第2情報を最終周囲環境情報として選択する。その後、CPUは、ステップ1395に進み、ステップ1204からステップ1205へと進む。
【0085】
これに対し、環境変化条件が成立しない場合、CPUは、ステップ1304にて「No」と判定してステップ1306に進み、第1情報を最終周囲環境情報として選択する。その後、CPUは、ステップ1395に進み、ステップ1204からステップ1205へと進む。
【0086】
以上の構成を備える車両制御装置100は、車両VAが駐車されている状況において支援要求が発生したとき、環境変化条件が成立するか否かを判定する。環境変化条件は、第1情報と第2情報との間のずれ度合が所定の度合よりも大きいときに成立する条件である。環境変化条件が成立する場合、車両制御装置100は、第2情報を用いて車両VAの周囲の環境を認識して、移動経路MPを演算する。従って、車両制御装置100が車両VAの周囲の環境を誤って認識する可能性を低減できる。その結果、駐車支援ECU10が不適切な移動経路MPを演算する可能性を低減できる。
【0087】
一方で、環境変化条件が成立しない場合、車両制御装置100は、第1情報を用いて車両VAの周囲の環境を認識して、移動経路MPを演算する。駐車支援ECU10は、反射点の情報が多い第1情報に基づいて、車両VAの周囲に存在する物体の位置をより正確に認識して、移動経路MPを演算することができる。
【0088】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0089】
(変形例1)
図13のルーチンのステップ1306にて、CPUは、統合情報を最終周囲環境情報として選択してもよい。即ち、環境変化条件が成立しない場合、CPUは、統合情報を用いて車両VAの周囲の環境を認識して、移動経路MPを演算してもよい。環境変化条件が成立しない場合、第1情報と第2情報との間のずれ度合が小さいので、第1情報は車両VAの周囲の環境を正確に表していると考えられる。この構成によれば、CPUは、第2情報が第1情報によって補完された統合情報を用いて、車両VAの周囲に存在する物体の位置をより正確に認識することができる。
【0090】
(変形例2)
第1情報と第2情報との間のずれ度合を表す指標値dnは、上記の例に限定されない。指標値dnは、第1情報に含まれる反射点の位置と第2情報に含まれる反射点の位置との間の距離に関連する値であってもよい。例えば、図10の例において、CPUは、第1情報500の反射点群401を表す近似曲線(第1近似曲線)を求め、第2情報900の反射点群801を表す近似曲線(第2近似曲線)を求める。CPUは、第1近似曲線と第2近似曲線との間のx軸方向における最大距離を指標値dnとして採用してもよい。別の例において、CPUは、第1近似曲線と第2近似曲線との間のx軸方向における複数の距離を演算し、当該複数の距離の平均値を指標値dnとして採用してもよい。
【0091】
図14に示すように、車両VAの左側(より具体的には、左前方)に物体(他車両OV3)が存在する場合がある。この場合、CPUは、以下のように指標値dnを演算してもよい。図15は、図14の状況において得られた統合情報1500である。「503」は第1情報の反射点群であり、「803」は第2情報の反射点群であるとする。CPUは、第1情報の反射点群503と第2情報の反射点群803との間で指標値dnを演算する。CPUは、統合情報1500において、y軸と平行な直線1501を設定する。直線1501の式は、「x=x1」と表現される。なお、「x1」は任意の値に設定されてよい。指標値dnは、第1情報の反射点群503に含まれる反射点と第2情報の反射点群803に含まれる反射点との間のy軸方向における距離又は当該距離に関連する値であってもよい。例えば、指標値dnは、直線1501上に位置する反射点群503の反射点と、直線1501上に位置する反射点群803の反射点との間のy軸方向における距離であってもよい。
【0092】
(変形例3)
CPUは、以下のように、第1情報と第2情報との間のずれ度合を判定してもよい。例えば、車両VAが駐車された時点で前方に存在していた車両(例えば、軽自動車)がいなくなり、その後、別の車両(例えば、大型車両)が車両VAの前方に駐車される場合もあり得る。この場合、車両VAの前方に存在する物体が、車両VAが駐車された時点と車両VAが出庫する時点とで異なっている。この場合、車両VAの前方で検出される反射点群が表す形状が第1情報と第2情報とで異なる。ここで、反射点群が表す形状としては、凹凸の度合(例えば、反射点の位置のx軸方向でのばらつきの度合)、及び、反射点群の近似曲線の曲率等が挙げられる。CPUは、第1情報に含まれる反射点群が表す形状と、第2情報に含まれる反射点群が表す形状とが異なる場合、第1情報と第2情報との間のずれ度合が所定の度合よりも大きい(即ち、環境変化条件が成立する)と判定してもよい。
【0093】
(変形例4)
記憶条件は、上述の例に限定されない。記憶条件は、車両VAの駐車が完了したと判定できる条件である限り、他の条件であってもよい。例えば、記憶条件は、シフト位置が、前進位置又は後進位置から駐車位置へと変更された時点にて成立する条件であってもよい。
【0094】
(変形例5)
周囲センサ60は、上記の例に限定されない。周囲センサ60は、レーダセンサを含んでもよい。レーダセンサは、電磁波(例えば、ミリ波帯の電波、「ミリ波」と称呼する。)を放射し、放射範囲内に存在する物体によって反射されたミリ波(即ち、反射波)を受信する。レーダセンサは、「送信したミリ波が反射された物体上の点である反射点についての情報」を、反射点情報として取得することができる。駐車支援ECU10は、レーダセンサにより取得された反射点情報に含まれる反射点の位置を二次元座標系にプロットして、周囲環境情報を作成してもよい。「レーダセンサ及び駐車支援ECU10」は、「周囲環境情報を取得する情報取得装置」の一態様であってもよい。
【0095】
更に、周囲センサ60は、ステレオカメラを含んでもよい。ステレオカメラは、撮影範囲内に存在する物体の位置及び当該物体までの距離等についての情報を取得できる。駐車支援ECU10は、ステレオカメラによって取得された物体の位置を二次元座標系にプロットして、周囲環境情報を作成してもよい。「ステレオカメラ及び駐車支援ECU10」は、「周囲環境情報を取得する情報取得装置」の一態様であってもよい。
【0096】
(変形例6)
上述の実施形態において、第1情報は、駐車支援ECU10の不揮発性メモリ10eに記憶されるが、この構成に限定されない。第1情報は、「周囲センサ60或いは駐車支援ECU10に接続される他のECU」、又は、「周囲センサ60或いは駐車支援ECU10に接続される他の記憶媒体」に記憶されてもよい。
【符号の説明】
【0097】
10…駐車支援ECU、20…エンジンECU、30…ブレーキECU、40…SBW・ECU、50…EPS・ECU、60…周囲センサ、70…駐車支援スイッチ、100…車両制御装置。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15