(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】シート装置
(51)【国際特許分類】
A47C 7/32 20060101AFI20250218BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
A47C7/32
B60N2/68
(21)【出願番号】P 2021116834
(22)【出願日】2021-07-15
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 敦士
(72)【発明者】
【氏名】新美 義明
(72)【発明者】
【氏名】中島 慎介
(72)【発明者】
【氏名】土屋 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】内藤 康介
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-172036(JP,A)
【文献】実開平06-058755(JP,U)
【文献】特開2008-093058(JP,A)
【文献】特開2002-028044(JP,A)
【文献】特開2018-016095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/32
B60N 2/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートフレームに張設され、着座乗員の荷重を弾性的に支持する伸縮性を備えた面状部材と、
前記シートフレームに固定され、前記面状部材のシート裏側への撓みをシート裏側からの当接により規制する撓み規制部材と、を有し、
前記撓み規制部材が、前記面状部材が着座乗員の荷重によりシート裏側に撓むことで該面状部材の着座乗員の荷重を支持する領域内の両サイド部分にシート裏側から当接する当接部と、前記面状部材がシート裏側に撓んでも前記領域内の中央部分とは当接せず該中央部分の撓みを許容する非当接部と、を有
し、
前記撓み規制部材が、前記面状部材のシート裏側の周縁に沿って無端状に延びる矩形の枠状体から成り、前記当接部が、前記枠状体を構成する両サイドの縦枠部に形成され、前記非当接部が、前記枠状体の枠内の開口部から成り、前記枠状体の前記両縦枠部間を繋ぐ両横枠部は、前記面状部材がシート裏側に撓んでも前記面状部材とは当接しないシート装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート装置であって、
前記
当接部が、シート幅方向の内側に向かってシート裏側へと傾斜する傾斜面部から成るシート装置。
【請求項3】
請求項
1又は請求項2に記載のシート装置であって、
前記
面状部材が、シートクッションに適用され、該面状部材の撓みが規制される前記両サイド部分が、着座乗員がAM50ダミーである場合の該AM50ダミーの各坐骨結節より外側の部分とされ、前記面状部材の撓みが許容される前記中央部分が、前記AM50ダミーの前記各坐骨結節の直下を含む前記各坐骨結節の間の部分とされるシート装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のシート装置であって、
前記
面状部材が、着座乗員に直接接触して荷重を支持するシート表面部材とされるシート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート装置に関する。詳しくは、シートフレームに張設されて着座乗員の荷重を弾性的に支持する伸縮性を備えた面状部材を備えるシート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートフレームに張設された面状部材により着座乗員の荷重を弾性的に支持する構成が開示されている。面状部材は、ネット材等の伸縮性を備えた部材から成り、着座乗員の荷重を撓みを伴って支持する構成とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
着座乗員の荷重により面状部材が撓み過ぎると、尻下等の体圧の高い部位に面状部材の反力が集中しやすくなり座り心地が悪化しやすい。そこで、本発明は、体圧分散性を向上させることが可能なシート装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のシート装置は次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明のシート装置は、シートフレームに張設され、着座乗員の荷重を弾性的に支持する伸縮性を備えた面状部材と、シートフレームに固定され、面状部材のシート裏側への撓みをシート裏側からの当接により規制する撓み規制部材と、を有する。撓み規制部材が、面状部材が着座乗員の荷重によりシート裏側に撓むことで面状部材の着座乗員の荷重を支持する領域内の両サイド部分にシート裏側から当接する当接部と、面状部材がシート裏側に撓んでも上記領域内の中央部分とは当接せず中央部分の撓みを許容する非当接部と、を有する。
【0007】
上記構成によれば、着座乗員の荷重により面状部材がシート裏側に撓むことで、面状部材の両サイド部分が撓み規制部材の当接部と当接する。それにより、着座乗員の荷重が面状部材の引張力に加えて当接部との当接によっても支持される状態となる。その結果、面状部材の撓み規制がされない中央部分に作用する着座乗員の荷重が軽減される。それにより、面状部材の中央部分から着座乗員に掛けられる反力が軽減される。併せて、面状部材の中央部分は、面状部材が撓んでも撓み規制部材とは当接しないことから、着座乗員の荷重を底づきを生じさせないように弾性的に支持することができる。以上のことから、シート装置の体圧分散性を向上させることができる。
【0008】
また、本発明のシート装置は、更に次のように構成されていても良い。撓み規制部材が、面状部材のシート裏側の周縁に沿って無端状に延びる矩形の枠状体から成る。当接部が、枠状体を構成する両サイドの縦枠部に形成される。非当接部が、枠状体の枠内の開口部から成る。
【0009】
上記構成によれば、撓み規制部材を無端状の枠状体から成る構造強度の高い構成とすることができる。それにより、当接部によって面状部材の両サイド部分をシート裏側から適切に支持することができる。また、非当接部を枠状体の枠内の開口部により合理的に形成することができる。
【0010】
また、本発明のシート装置は、更に次のように構成されていても良い。枠状体の両縦枠部間を繋ぐ両横枠部は、面状部材がシート裏側に撓んでも面状部材とは当接しない。
【0011】
上記構成によれば、着座乗員の荷重をより底づきを生じさせないように弾性的に支持することができる。したがって、シート装置の体圧分散性をより向上させることができる。
【0012】
また、本発明のシート装置は、更に次のように構成されていても良い。当接部が、シート幅方向の内側に向かってシート裏側へと傾斜する傾斜面部から成る。
【0013】
上記構成によれば、当接部が、着座乗員の身体の両サイドの湾曲する部位に沿った方向に向けられる。したがって、当接部により、面状部材の着座乗員の荷重を支持する領域内の両サイド部分を、シート裏側からより適切に支持することができる。
【0014】
また、本発明のシート装置は、更に次のように構成されていても良い。面状部材が、シートクッションに適用される。面状部材の撓みが規制される両サイド部分が、着座乗員がAM50ダミーである場合のAM50ダミーの各坐骨結節より外側の部分とされる。面状部材の撓みが許容される中央部分が、AM50ダミーの各坐骨結節の直下を含む各坐骨結節の間の部分とされる。
【0015】
上記構成によれば、面状部材の着座乗員の荷重を支持する領域のうち、体圧の高い各坐骨結節の直下より外側の領域となる両サイド部分が、当接部によりシート裏側から支持されることとなる。したがって、着座乗員の荷重をより底づきを生じさせないように弾性的に支持することができ、シート装置の体圧分散性をより向上させることができる。
【0016】
また、本発明のシート装置は、更に次のように構成されていても良い。面状部材が、着座乗員に直接接触して荷重を支持するシート表面部材とされる。
【0017】
上記構成によれば、シート装置を体圧分散性に優れたネットシートとして構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態に係るシート装置の概略構成を表す斜視図である。
【
図3】面状部材が張られた枠体と撓み規制部材とをシート裏側から見た分解斜視図である。
【
図4】撓み規制部材をクッションフレームに組み付けた状態を表す斜視図である。
【
図8】着座乗員の荷重により面状部材が撓んだ状態を表す
図6に対応する断面図である。
【
図9】着座乗員の荷重により面状部材が撓んだ状態を表す
図7に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0020】
《第1の実施形態》
(シート装置1の概略構成)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシート装置1の構成について、
図1~
図9を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。
【0021】
また、「シート幅方向」等、各方向に「シート」を付して示す場合には、後述するシート装置1の向きを基準とした方向を指すものとする。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、
図1~
図9のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係るシート装置1は、マイクロバス等のバス車両に搭載される座席として構成される。上記シート装置1は、着座乗員の背凭れ部を成すシートバック2と、着座部を成すシートクッション3と、を備える
【0023】
シートバック2とシートクッション3は、それぞれ、フロア上に固定された支持ベース4に連結されている。支持ベース4は、フロア上に固定された左右一対のベースフレーム4Fを備える。シートバック2は、その左右両サイドの下端部が、それぞれ、支持ベース4の左右のベースフレーム4Fに対して一体的に連結されている。
【0024】
シートクッション3は、
図2に示すように、その左右両サイドの後端部が、それぞれ、支持ベース4の左右のベースフレーム4Fに対して、シート幅方向に延びる不図示の軸まわりに回転可能なように連結されている。それにより、シートクッション3は、
図1に示すように、フロア上に倒伏された着座部として使用可能な倒伏位置(実線位置)と、フロア上からシート後方に跳ね上げられてシートバック2の前に重ねられる跳上位置(仮想線位置)と、に切り換え可能な構成とされる。
【0025】
上記シートクッション3は、
図2に示すように、その左右両サイドの後端部と支持ベース4の各ベースフレーム4Fとの間に、それぞれ、渦巻きばねSPが掛着された構成とされる。それにより、シートクッション3は、
図1に示すように、シート装置1が着座使用されない時には、ばね付勢力により跳上位置(仮想線位置)へと跳ね上げられた状態として保持される。
【0026】
また、シートクッション3は、使用者がシートクッション3をばね付勢力に抗してシート前方に倒すことにより、着座使用可能な倒伏位置(実線位置)に切り換えられる。したがって、使用者がシート前方に倒したシートクッション3の上部に腰を下ろすことで、シートクッション3を着座部として使用することができる。上記シートクッション3は、使用者がシートクッション3から腰を上げることにより、再び、ばね付勢力によりシート後方に跳ね上げられて跳上位置(仮想線位置)に切り換えられる。
【0027】
上記シートクッション3は、その着座乗員の荷重を支持する支持構造が、ネット材から成る面状部材40によって構成される、いわゆるネットシートの構成とされる。それにより、シートクッション3は、その支持構造がウレタンパッドや金属ばねを組み合わせた構造から成るものと比べて、薄型かつ軽量な構成とされる。また、カーボンニュートラルに寄与して環境負荷低減にも資する構成とされる。
【0028】
上記シートクッション3は、その支持構造がネット材から成る面状部材40により構成されていても、面状部材40の撓み過ぎに伴う反力の集中を抑制して、良好な体圧分散性を発揮することのできる構成とされる。以下、シートクッション3の各部の具体的な構成について詳しく説明する。
【0029】
(シートクッション3の各部の構成)
図2に示すように、シートクッション3は、その骨格を成す金属製のクッションフレーム10と、クッションフレーム10の上部に覆われる形に組み付けられる樹脂製の撓み規制部材20と、を有する。ここで、クッションフレーム10が、本発明の「シートフレーム」に相当する。
【0030】
また、シートクッション3は、撓み規制部材20の上部に組み付けられる樹脂製の枠体30と、枠体30の枠内に張設されるネット材から成る面状部材40と、を有する。また、シートクッション3は、クッションフレーム10の下部に覆われる形に組み付けられる樹脂製の裏面カバー50を有する。
【0031】
クッションフレーム10は、シートクッション3の周囲側面に沿って延びる平面視枠状に組まれた構成とされる。具体的には、クッションフレーム10は、平面視枠状を成す形に曲げ加工された丸パイプ材から成る枠パイプ11と、枠パイプ11の左右の各枠側部に接合されてシート後方に延びる左右一対の長板状のサイドフレーム12と、を有する。
【0032】
クッションフレーム10は、各サイドフレーム12の後端部が支持ベース4の対応する各ベースフレーム4Fに対して不図示の軸を介して回転可能なように連結されている。クッションフレーム10は、各ベースフレーム4Fに対して上記不図示の軸のまわりに倒伏位置まで倒されることにより、各サイドフレーム12が対応する各ベースフレーム4Fと回転方向に突き当たって回転止めされる構成とされる。
【0033】
撓み規制部材20は、ポリプロピレン樹脂のブロー成形により、内部が中空となる平面視枠形状に形成されている。それにより、撓み規制部材20は、シート前後方向に延びる左右一対の縦枠部20Aと、各縦枠部20Aの前部間及び後部間をそれぞれ繋ぐようにシート幅方向に延びる前後一対の横枠部20Bと、を備える構成とされる。
【0034】
撓み規制部材20は、クッションフレーム10にシート上方から押し込まれて一体的に嵌合されている。具体的には、
図3に示すように、撓み規制部材20には、その底面部に、クッションフレーム10の枠パイプ11(
図2参照)の形に沿って溝状に凹んだ嵌合凹部25が形成されている。撓み規制部材20は、上記嵌合凹部25を
図2に示すクッションフレーム10の枠パイプ11にシート上方から嵌め込む形に押し込まれることで、枠パイプ11に一体的に嵌合されている(
図4参照)。
【0035】
図2に示すように、撓み規制部材20は、その左右の縦枠部20Aの天板上に、シート幅方向の内側に向かって凹湾曲面状に傾斜する傾斜面部21が形成された構成とされる。各傾斜面部21は、
図5~
図6に示すように、撓み規制部材20の上部に張設される面状部材40の直下に位置する。各傾斜面部21は、左右の縦枠部20Aの天板上から撓み規制部材20の枠内の開口部22に臨む内周縁位置まで延びる形状とされる。
【0036】
各傾斜面部21は、
図6に示すように、シートクッション3に着座乗員の荷重が掛けられる前の状態では、面状部材40との間に高さ方向の隙間をそれぞれ有する構成とされる。各傾斜面部21は、
図8に示すように、シートクッション3に着座乗員の荷重が掛けられて面状部材40がシート裏側(下側)に撓むことにより、面状部材40と当接する。
【0037】
具体的には、各傾斜面部21は、面状部材40の着座乗員の荷重を支持する領域内の両サイド部分42、詳しくは着座乗員の尻部や大腿部の両サイドの湾曲する部位を支持する部分にシート裏側から当接する。それにより、各傾斜面部21は、面状部材40の両サイド部分42のシート裏側への撓みの進行を規制する。
【0038】
ここで、各傾斜面部21が、本発明の「当接部」に相当する。なお、本実施形態において示す着座乗員は、AM50ダミー(米国人男性の50%が当てはまる体型のダミー)とされる。
【0039】
各傾斜面部21は、これらに面状部材40を介して当接する着座乗員の尻部や大腿部の両サイドの湾曲する部位に沿って凹湾曲面状に湾曲する形状とされる。それにより、各傾斜面部21は、着座乗員の尻部や大腿部の両サイドの湾曲する部位をシート裏側からそれぞれ面状に広く体圧分散させて支持する。
【0040】
各傾斜面部21は、着座乗員がAM50ダミーである場合の各坐骨結節Pより外側の領域に設けられている。それにより、各傾斜面部21は、面状部材40の着座乗員の荷重を支持する領域のうち、体圧の高い各坐骨結節Pの直下よりも外側の領域となる両サイド部分42を、シート裏側から当てて支持する構成とされる。
【0041】
各傾斜面部21は、撓み規制部材20がポリプロピレン樹脂の射出成形により内部が中空となる構造強度の高い閉断面形状とされている。そのようなことから、各傾斜面部21は、面状部材40の両サイド部分42をシート裏側から強固に支持することができる構成とされる。ここで、各傾斜面部21が、本発明の「当接部」に相当する。
【0042】
図2に示すように、撓み規制部材20の枠内には、高さ方向に貫通する略矩形孔状の開口部22が形成されている。開口部22は、
図5~
図6に示すように、撓み規制部材20の上部に張設される面状部材40の中央部分41の直下に位置する。
【0043】
開口部22は、
図8に示すように、シートクッション3に着座乗員の荷重が掛けられて面状部材40がシート裏側(下側)に撓む際の中央部分41の撓みを許容する許容部として機能する。具体的には、開口部22は、面状部材40の着座乗員の荷重を支持する領域のうち、体圧の高い各坐骨結節Pの直下を含む各坐骨結節Pの間の中央部分41のシート裏側への撓みを許容する。
【0044】
上記開口部22により、面状部材40は、その中央部分41が着座乗員の荷重によりシート裏側に撓んでいく過程で底づきを生じにくい構成とされる。ここで、開口部22が、本発明の「非当接部」に相当する。
【0045】
図2に示すように、撓み規制部材20の前側の横枠部20Bの天板上には、シート後方に向かって真っ直ぐ傾斜する前傾斜面部23が形成されている。また、撓み規制部材20の後側の横枠部20Bの天板上には、シート前方に向かって真っ直ぐ傾斜する後傾斜面部24が形成されている。
【0046】
これら前傾斜面部23及び後傾斜面部24は、
図5及び
図7に示すように、撓み規制部材20の上部に張設される面状部材40の直下に位置する。これら前傾斜面部23及び後傾斜面部24は、各横枠部20Bの天板上から撓み規制部材20の枠内の開口部22に臨む内周縁位置まで延びる形状とされる。
【0047】
これら前傾斜面部23及び後傾斜面部24は、
図7に示すように、シートクッション3に着座乗員の荷重が掛けられる前の状態では、面状部材40との間に高さ方向の隙間をそれぞれ有する構成とされる。また、前傾斜面部23及び後傾斜面部24は、
図9に示すように、シートクッション3に着座乗員の荷重が掛けられて面状部材40がシート裏側(下側)に撓んでも、面状部材40とは当接せず、面状部材40との間に高さ方向の隙間を有する状態を維持するようになっている。
【0048】
図2に示すように、枠体30は、ポリプロピレン樹脂の射出成形により平面視枠形状に形成されている。枠体30は、その射出成形時において、成形型内に面状部材40がセットされて一体成形されることにより、その枠内に面状部材40が一体的に張設された形に形成されている。
【0049】
図3に示すように、枠体30には、その左右の各枠側部の底面部と枠後部の底面部とに、それぞれ、複数の樹脂製のクリップCLが一体的に装着されている。上記枠体30は、
図2に示すように、各クリップCLを撓み規制部材20の天板上の対応する各周縁箇所に形成された凹状の各座面部26にそれぞれシート上方から差し込んで締結することにより、撓み規制部材20の上部に互いの外周部同士が一体的に重ね合わされる形に組み付けられる(
図4参照)。
【0050】
図2に示すように、上記枠体30は、その枠後部からシート後方に向かって面状に延び出す覆い部31を有する。覆い部31は、撓み規制部材20の後側の横枠部20Bよりもシート後方に延び出して、シートバック2の直下に潜り込む構成とされる(
図1参照)。
【0051】
面状部材40は、PET樹脂から成る経糸と緯糸とを面状に編み込んだ網目体によって構成される。面状部材40は、前述したように枠体30の射出成形時に成形型内にセットされて一体成形されることにより、枠体30の枠内に一体的に張設されている。
【0052】
上記面状部材40は、そのシート前後方向に配置される経糸が、マルチフィラメントから成る比較的伸張性の低い構成とされる。また、面状部材40は、そのシート幅方向に配置される緯糸が、モノフィラメントから成る比較的伸張性の高い構成とされる。面状部材40は、上記緯糸により、着座乗員の荷重を弾性的に支持する弾性支持力を発揮する構成とされる。
【0053】
上記面状部材40は、上記緯糸の張り具合の調節により、着座乗員の尻部を支持する後部領域の方が、大腿部を支持する前部領域よりも撓みやすい構成とされる。それにより、面状部材40は、その着座乗員の荷重を支持する領域のうち、比較的体圧の高い尻部を支持する領域が、尻部を深く沈ませられる形に弾性支持することができるようになっている。
【0054】
また、面状部材40は、その着座乗員の荷重を支持する領域のうち、比較的体圧の低い大腿部を支持する領域が、大腿部を尻部よりも硬く弾性支持することができるようになっている。このように、面状部材40は、着座乗員の体圧の大きさに応じて硬さが変えられていることで、着座乗員の荷重を広く体圧分散させて受け止めることができるようになっている。なお、面状部材40の種類は特に限定されず、例えば、弾性を備えた布材から成るものであっても良く、いわゆる3次元編み込み構造を有するネット材から成るものであっても良い。
【0055】
図2に示すように、裏面カバー50は、ポリプロピレン樹脂の射出成形により、撓み規制部材20の枠形状に適合する平面視枠形状に形成されている。上記裏面カバー50は、クッションフレーム10にシート下方から覆われる形にセットされて、クッションフレーム10と一体的に組み付けられている。上記裏面カバー50は、
図1で前述したように、シートクッション3がシート後方に跳ね上げられた際に露出するシートクッション3の底面を見栄え良く被覆する化粧カバーとして機能する。
【0056】
以上をまとめると、本実施形態に係るシート装置1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0057】
すなわち、シート装置(1)は、シートフレーム(10)に張設され、着座乗員の荷重を弾性的に支持する伸縮性を備えた面状部材(40)と、シートフレーム(10)に固定され、面状部材(40)のシート裏側への撓みをシート裏側からの当接により規制する撓み規制部材(20)と、を有する。撓み規制部材(20)が、面状部材(40)が着座乗員の荷重によりシート裏側に撓むことで面状部材(40)の着座乗員の荷重を支持する領域内の両サイド部分(42)にシート裏側から当接する当接部(21)と、面状部材(40)がシート裏側に撓んでも上記領域内の中央部分(41)とは当接せず中央部分(41)の撓みを許容する非当接部(22)と、を有する。
【0058】
上記構成によれば、着座乗員の荷重により面状部材(40)がシート裏側に撓むことで、面状部材(40)の両サイド部分(42)が撓み規制部材(20)の当接部(21)と当接する。それにより、着座乗員の荷重が面状部材(40)の引張力に加えて当接部(21)との当接によっても支持される状態となる。その結果、面状部材(40)の撓み規制がされない中央部分(41)に作用する着座乗員の荷重が軽減される。それにより、面状部材(40)の中央部分(41)から着座乗員に掛けられる反力が軽減される。
【0059】
併せて、面状部材(40)の中央部分(41)は、面状部材(40)が撓んでも撓み規制部材(20)とは当接しないことから、着座乗員の荷重を底づきを生じさせないように弾性的に支持することができる。以上のことから、シート装置(1)の体圧分散性を向上させることができる。
【0060】
また、撓み規制部材(20)が、面状部材(40)のシート裏側の周縁に沿って無端状に延びる矩形の枠状体から成る。当接部(21)が、枠状体を構成する両サイドの縦枠部(20A)に形成される。非当接部(22)が、枠状体の枠内の開口部(22)から成る。上記構成によれば、撓み規制部材(20)を無端状の枠状体から成る構造強度の高い構成とすることができる。それにより、当接部(21)によって面状部材(40)の両サイド部分(42)をシート裏側から適切に支持することができる。また、非当接部(22)を枠状体の枠内の開口部(22)により合理的に形成することができる。
【0061】
また、枠状体の両縦枠部(20A)間を繋ぐ両横枠部(20B)は、面状部材(40)がシート裏側に撓んでも面状部材(40)とは当接しない。上記構成によれば、着座乗員の荷重をより底づきを生じさせないように弾性的に支持することができる。したがって、シート装置(1)の体圧分散性をより向上させることができる。
【0062】
また、当接部(21)が、シート幅方向の内側に向かってシート裏側へと傾斜する傾斜面部(21)から成る。上記構成によれば、当接部(21)が、着座乗員の身体の両サイドの湾曲する部位に沿った方向に向けられる。したがって、当接部(21)により、面状部材(40)の着座乗員の荷重を支持する領域内の両サイド部分(42)を、シート裏側からより適切に支持することができる。
【0063】
また、面状部材(40)が、シートクッション(3)に適用される。面状部材(40)の撓みが規制される両サイド部分(42)が、着座乗員がAM50ダミーである場合のAM50ダミーの各坐骨結節(P)より外側の部分とされる。面状部材(40)の撓みが許容される中央部分(41)が、AM50ダミーの各坐骨結節(P)の直下を含む各坐骨結節(P)の間の部分とされる。
【0064】
上記構成によれば、面状部材(40)の着座乗員の荷重を支持する領域のうち、体圧の高い各坐骨結節(P)の直下より外側の領域となる両サイド部分(42)が、当接部(21)によりシート裏側から支持されることとなる。したがって、着座乗員の荷重をより底づきを生じさせないように弾性的に支持することができ、シート装置(1)の体圧分散性をより向上させることができる。
【0065】
また、面状部材(40)が、着座乗員に直接接触して荷重を支持するシート表面部材とされる。上記構成によれば、シート装置(1)を体圧分散性に優れたネットシートとして構成することができる。
【0066】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0067】
1.本発明のシート装置は、自動車の他、鉄道等の自動車以外の車両や、航空機、船舶等の車両以外の乗物に適用されるものであっても良い。また、シート装置は、乗物の他、スポーツ施設や、劇場、コンサート会場、イベント会場等の様々な施設に設置される観覧席や、マッサージシート等の非乗物用のシート装置としても適用することができるものである。
【0068】
2.面状部材は、シートクッションの他、シートバックにも適用することができるものである。面状部材をシートバックに適用する場合において、体圧分散性を向上させるために、着座乗員の体圧の高い腰部と胸部とを支持する各部分に、支持剛性を高めるための支持パイプを両サイドフレーム間に架け渡して設けても良い。
【0069】
また、面状部材は、シートクッションやシートバックにおいて着座乗員に直接接触して荷重を支持するシート表面部材として構成されるものの他、シートフレームに張設されてシートパッドをシート裏側から弾性支持する、いわゆる布ばねとして構成されるものであっても良い。具体的には、特開2014-240240号公報や特開2019-81506号公報等の文献に開示される布ばね構造が挙げられる。
【0070】
また、面状部材は、特開2018-197037号公報等の文献に開示されるように、シートフレームに直接張設される構成であっても良い。面状部材は、全体が均一な張り具合で張設される構成であっても良い。
【0071】
3.撓み規制部材の当接部は、撓み規制部材を構成する枠状体の一部として構成されるものの他、それ自体が単独で設けられるものであっても良い。上記当接部は、シート幅方向の内側に向かってシート裏側へと傾斜する傾斜面部から成るものの他、シート表面側に真っ直ぐ向く平面部として構成されても良い。当接部が傾斜面部から成る場合、当接部は、上記実施形態で示したような凹湾曲面から成るものの他、真っ直ぐな傾斜面から成るものであっても良い。
【0072】
4.撓み規制部材の非当接部は、撓み規制部材を構成する枠状体の開口部から成るものの他、当接部に対してシート裏側に相対的に凹んだ凹部から成るものであっても良い。
【0073】
5.上記実施形態では、面状部材の当接部により撓みが規制される両サイド部分として、着座乗員がAM50ダミーである場合のAM50ダミーの各坐骨結節より外側の部分とされた例を示した。しかし、面状部材の両サイド部分は、AM95ダミー等の他のダミーを基準とした各坐骨結節より外側の部分として構成されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0074】
1 シート装置
2 シートバック
3 シートクッション
4 支持ベース
4F ベースフレーム
10 クッションフレーム(シートフレーム)
11 枠パイプ
12 サイドフレーム
20 撓み規制部材
20A 縦枠部
20B 横枠部
21 傾斜面部(当接部)
22 開口部(非当接部)
23 前傾斜面部
24 後傾斜面部
25 嵌合凹部
26 座面部
30 枠体
31 覆い部
40 面状部材
41 中央部分
42 サイド部分
50 裏面カバー
SP 渦巻きばね
CL クリップ
P 坐骨結節