(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】電気光学装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1345 20060101AFI20250218BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20250218BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20250218BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20250218BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20250218BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20250218BHJP
G09F 9/35 20060101ALI20250218BHJP
H10D 84/80 20250101ALI20250218BHJP
H10D 84/83 20250101ALI20250218BHJP
H10D 84/85 20250101ALI20250218BHJP
H10D 86/60 20250101ALI20250218BHJP
H10D 86/40 20250101ALI20250218BHJP
【FI】
G02F1/1345
G02F1/133 580
G02F1/1333
G02F1/1343
G02F1/1368
G09F9/30 349C
G09F9/30 349Z
G09F9/35
H01L27/06 102A
H01L27/06 311A
H01L27/06 311C
H01L27/088 331E
H01L27/092 A
H01L29/78 612C
H01L29/78 613A
(21)【出願番号】P 2021147452
(22)【出願日】2021-09-10
【審査請求日】2024-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】藤川 紳介
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-018367(JP,A)
【文献】特開平08-248405(JP,A)
【文献】特開平01-306820(JP,A)
【文献】特開2001-013511(JP,A)
【文献】特開2018-194717(JP,A)
【文献】特開平10-171369(JP,A)
【文献】特開平11-202293(JP,A)
【文献】特開2010-073810(JP,A)
【文献】特開2017-167425(JP,A)
【文献】特開2015-152609(JP,A)
【文献】特開平09-146072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1343-1/1345
G02F 1/133
G02F 1/1333
G02F 1/136-1/1368
G02F 1/01
G01K 7/01
G09F 9/00
G09F 9/30-9/46
G09G 3/04,3/20
H01L 27/02
H01L 27/06
H01L 29/78
H01L 29/786
H01L 21/8234
H01L 27/088
H01L 27/092
H01L 21/8238
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域の外側に開口部が設けられた配線と、
表示領域の外側で平面視において前記開口部の内側に設けられた温度検出素子と、
を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置において、
平面視で前記開口部の内側に、前記配線と同一層の島状の遮光層が前記配線から離隔して設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気光学装置において、
前記表示領域に複数のデータ線を備え、
前記複数のデータ線は各々、平面視で前記配線と重なる部分を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電気光学装置において、
前記配線は、定電位が印加されることを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電気光学装置において、
液晶層と、
前記液晶層と前記配線との間で共通電位が印加された導電層と、
を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の電気光学装置において、
前記温度検出素子は、第1ダイオードと、第2ダイオードと、前記第1ダイオードと前記第2ダイオードとを直列に電気的に接続する電極と、を有し、
前記第1ダイオードと前記第2ダイオードとは第1方向に沿って配置され、
前記電極は、前記第1方向と交差する第2方向に沿う方向の幅が、前記第1ダイオードを構成する半導体層および前記第2ダイオードを構成する半導体層の前記第2方向に沿う方向の幅よりも狭い部分を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項1から5までの何れか一項に記載の電気光学装置において、
前記表示領域の外側にNチャネル型トランジスターおよびPチャネル型トランジスターを有する相補型トランジスターを備え、
前記温度検出素子は、第1ダイオードと、第2ダイオードと、前記第1ダイオードと前記第2ダイオードとを直列に電気的に接続する電極と、を有し、
前記第1ダイオードを構成する半導体層と前記第2ダイオードを構成する半導体層との間隔は、前記Nチャネル型トランジスターを構成する半導体層と前記Pチャネル型トランジスターを構成する半導体層との間隔以下であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
請求項1から5までの何れか一項に記載の電気光学装置において、
前記表示領域の外側に、交流信号が供給される信号配線を備え、
前記温度検出素子は、第1ダイオードと、第2ダイオードと、前記第1ダイオードと前記第2ダイオードとを直列に電気的に接続する電極と、を有し、
前記第1ダイオードと前記第2ダイオードとは第1方向に沿って配置され、
前記第1ダイオードに電気的に接続されたカソード配線は、平面視において、前記第1ダイオードおよび前記第2ダイオードと、前記信号配線との間を前記第1方向に沿って延在していることを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
請求項1から5までの何れか一項に記載の電気光学装置において、
前記表示領域の外側に、交流信号が供給される信号配線を備え、
前記温度検出素子は、第1ダイオードと、第2ダイオードと、前記第1ダイオードと前記第2ダイオードとを直列に電気的に接続する電極と、を有し、
前記第1ダイオードと前記第2ダイオードとは第1方向に沿って配置され、
前記信号配線は、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延在していることを特徴とする電気光学装置。
【請求項10】
請求項3から5までのいずれか一項に記載の電気光学装置において、
前記複数のデータ線を選択する選択回路と、
プリチャージ期間において、水平走査期間ごとに前記選択回路を制御する制御回路と、
を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電気光学装置において、
前記複数の水平走査期間には、前記複数のデータ線の一部にプリチャージ信号を供給する第1水平走査期間と、前記複数のデータ線のうち、前記一部と異なる他の一部のデータ線に前記プリチャージ信号を供給する第2水平走査期間と、が含まれていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項12】
請求項10に記載の電気光学装置において、
前記複数の水平走査期間には、前記複数のデータ線の全てにプリチャージ信号を供給する第1水平走査期間と、前記複数のデータ線の全てにプリチャージ信号を供給しない第2水平走査期間と、が含まれていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項13】
請求項1から
12までの何れか一項に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度検出素子が設けられた電気光学装置、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶装置等の電気光学装置において、表示領域の外側に温度検出素子を設け、温度検出素子での検出結果に基づいて、電気光学装置の駆動条件を補正する等の技術が提案されている。この場合、温度検出素子の近傍に交流信号が供給される信号配線が設けられていると、信号配線の電位変化の影響が温度検出素子に及び、温度検出精度が低下することがある。そこで、温度検出素子と信号配線との間に定電位が印加される定電位配線をシールド層として設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シールド層として定電位配線を用いた場合でも、電気光学装置を駆動した際、シールド層として用いた定電位配線に印加した定電位にノイズが発生することがある。その結果、ノイズの影響が定電位配線と温度検出素子との間の寄生容量を介して温度検出素子に及ぶと、温度検出素子の温度検出精度が低下する。それ故、温度検出素子に配線が平面視で重なっている場合、温度検出素子と配線との間の寄生容量の影響が温度検出素子に及びやすいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る電気光学装置の一態様は、表示領域の外側に開口部が設けられた配線と、表示領域の外側で平面視において前記開口部の内側に設けられた温度検出素子と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る電気光学装置の別の態様は、表示領域の外側に設けられた温度検出素子と、前記温度検出素子に平面視で重なる部分を有する配線と、を備え、前記温度検出素子は、第1のダイオードと、第2のダイオードと、前記第1のダイオードと前記第2ダイオードとを直列に電気的に接続する電極と、を有し、前記第1ダイオードと前記第2ダイオードとは第1方向に沿って配置され、前記電極は、前記第1方向と交差する第2方向に沿う方向の幅が、前記第1ダイオードを構成する半導体層および前記第2ダイオードを構成する半導体層の前記第2方向に沿う方向の幅よりも狭い部位を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る電気光学装置のさらに別の態様は、表示領域の外側に設けられた温度検出素子と、前記温度検出素子に平面視で重なる部分を有する配線と、前記表示領域の外側にNチャネル型トランジスターおよびPチャネル型トランジスターを有する相補型トランジスターと、を備え、前記温度検出素子は、第1のダイオードと、第2のダイオードと、前記第1のダイオードと前記第2ダイオードとを直列に電気的に接続する電極と、を有し、前記第1ダイオードを構成する半導体層と前記第2ダイオードを構成する半導体層との間隔は、前記Nチャネル型トランジスターを構成する半導体層と前記Pチャネル型トランジスターを構成する半導体層との間隔以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る電気光学装置のさらに別の態様は、表示領域に設けられた複数のデータ線と、前記複数のデータ線の各々と平面視で重なる部分を有する共通電位配線と、前記表示領域の外側で前記配線と平面視で重なる温度検出素子と、前記複数のデータ線の各々と電気的に接続された選択回路と、プリチャージ期間において、水平走査期間ごとに前記選択回路を制御する制御回路と、を備え、複数の水平走査期間には、前記複数のデータ線の一部にプリチャージ信号を供給する第1水平走査期間と、前記複数のデータ線のうち、前記一部と異なる他の一部のデータ線に前記プリチャージ信号を供給する第2水平走査期間と、が含まれていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る電気光学装置のさらに別の態様は、表示領域に設けられた複数のデータ線と、前記複数のデータ線の各々と平面視で重なる部分を有する共通電位配線と、前記表示領域の外側で前記配線と平面視で重なる温度検出素子と、前記複数のデータ線の各々と電気的に接続された選択回路と、プリチャージ期間において、水平走査期間ごとに前記選択回路を制御する制御回路と、を備え、複数の水平走査期間には、前記複数のデータ線の全てにプリチャージ信号を供給する第1水平走査期間と、前記複数のデータ線の全てにプリチャージ信号を供給しない第2水平走査期間と、が含まれていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る電気光学装置は電子機器に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1に係る電気光学装置の構成例を示す平面図。
【
図2】
図1に示す電気光学装置の断面を模式的に示す説明図。
【
図3】
図2に示す第1基板の電気的構成を示す回路ブロック図。
【
図5】
図1に示す電気光学装置において画像表示を行う際のタイミングチャート。
【
図7】
図6に示す温度検出素子等の断面を模式的に示す説明図。
【
図8】本発明の実施形態1に対する比較例の説明図。
【
図9】プリチャージと温度検出回路の出力電圧との関係を示す図。
【
図10】
図3に示す温度検出素子に寄生する容量が温度検出回路の出力電圧に与える影響を示すグラフ。
【
図11】本発明の実施形態2に係る電気光学装置の説明図。
【
図12】
図11に示す温度検出素子等の断面を模式的に示す説明図。
【
図13】本発明の実施形態2の変形例に係る電気光学装置の説明図。
【
図14】本発明の実施形態3に係る電気光学装置の説明図。
【
図16】本発明の実施形態3の変形例1に係る電気光学装置の説明図。
【
図17】本発明の実施形態3の変形例2に係る電気光学装置の説明図。
【
図18】本発明の実施形態4に係る電気光学装置の奇数フレームにおけるプリチャージの説明図。
【
図19】本発明の実施形態4に係る電気光学装置の偶数フレームにおけるプリチャージの説明図。
【
図20】本発明の実施形態5に係る電気光学装置のプリチャージの説明図。
【
図21】本発明を適用した投射型表示装置の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。また、第1基板に形成される層の配置を説明する際、上層側ある
いは表面側とは第1基板の基板本体が位置する側とは反対側(対向基板および液晶層が位置する側)を意味し、下層側とは第1基板の基板本体が位置する側を意味する。第2基板に形成される層の配置を説明する際、上層側あるいは表面側とは対向基板の基板本体が位置する側とは反対側(第1基板および液晶層が位置する側)を意味し、下層側とは第2基板の基板本体が位置する側を意味する。また、本発明において、「平面視」とは第1基板10または第2基板20に対する法線方向からみた様子を意味する。
【0013】
1.実施形態1
1-1.電気光学装置100の具体的構成
図1は、本発明の実施形態1に係る電気光学装置100の構成例を示す平面図である。
図2は、
図1に示す電気光学装置100の断面を模式的に示す説明図である。
図1および
図2に示す電気光学装置100は液晶装置であり、液晶パネルからなる電気光学パネル100pを有している。電気光学装置100では、第1基板10と第2基板20とが所定の隙間を介してシール材107によって貼り合わされており、シール材107は第2基板20の外縁に沿うように枠状に設けられている。シール材107は、光硬化樹脂や熱硬化性樹脂等からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー、あるいはガラスビーズ等のギャップ材107aが配合されている。電気光学装置100において、第1基板10と第2基板20との間のうち、シール材107によって囲まれた領域内には、液晶層からなる電気光学層50が設けられている。シール材107には、液晶注入口として利用される途切れ部分107cが形成されており、かかる途切れ部分107cは、液晶材料の注入後、封止材108によって塞がれている。なお、液晶材料を滴下法で封入する場合は、途切れ部分107cは形成されない。第1基板10および第2基板20はいずれも四角形であり、電気光学装置100の略中央には、表示領域10aが四角形の領域として設けられている。かかる形状に対応して、シール材107も略四角形に設けられ、表示領域10aの外側は四角枠状の外周領域10cになっている。
【0014】
表示領域10aにおいて、X方向に延在する2辺を第1辺10a1および第2辺10a2とし、Y方向に延在する2辺を第3辺10a3および第4辺10a4としたとき、第1基板10の外周領域10cには、第1基板10の端部と表示領域10aの第1辺10a1との間にデータ線駆動回路101が設けられ、第1基板10の端部と表示領域10aの第2辺10a2との間に検査回路105が設けられる。また、第1基板10の端部と表示領域10aの第3辺10a3との間、および第1基板10の端部と表示領域10aの第4辺10a4との間には走査線駆動回路104が設けられる。第1基板10の端部のうち、データ線駆動回路101の側の端部には、配線基板70が電気的に接続される実装用の端子102が配列されている。配線基板70には、
図5を参照して後述する画像信号VID1、VID2、…VID2n、および選択信号SEL1、SEL2、…SEL8等を出力する制御回路76を含む駆動用IC75が実装されている。配線基板70は、コネクタ61を介して上位回路60に電気的に接続される。上位回路60には画像制御回路65が設けられている。また、上位回路60には、後述する温度検出回路1を駆動する温度検出用駆動回路66が設けられている。上位回路60は、後述する電子機器において、電気光学装置100に対する上位装置に設けられる。
【0015】
第1基板10は、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体10wを有しており、第1基板10の一方面10sの側において、表示領域10aには、複数の画素トランジスター、および複数の画素トランジスターの各々に電気的に接続する画素電極9aがマトリクス状に形成される。画素電極9aの上層側には第1配向膜16が形成されている。第1基板10の一方面10sの側において、表示領域10aとシール材107との間に沿って延在する四角形の枠状領域10bには、表示領域10aの各辺に沿って延在する部分に、画素電極9aと同時形成されたダミー画素電極9bが設けられる。
【0016】
第2基板20は、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体20wを有しており、第2基板20の一方面20sの側には共通電極21が形成されている。共通電極21は、第2基板20の一方面20sの側の略全面に形成されている。第2基板20の一方面20sの側において、枠状領域10bには、共通電極21の下層側に遮光性の見切り29が形成され、共通電極21の表面には第2配向膜26が積層されている。表示領域10aは、見切り29の内縁によって規定される。見切り29と共通電極21との間には透光性の平坦化膜22が形成されている。見切り29を構成する遮光層は、隣り合う画素電極9aにより挟まれた画素間領域10fに重なるブラックマトリクス部として形成されることもある。見切り29はダミー画素電極9bと平面的に重なる位置に形成されている。見切り29は、遮光性の金属膜や黒色の樹脂によって構成されている。
【0017】
第1配向膜16および第2配向膜26は、例えば、SiOX(x≦2)、TiO2、MgO、Al2O3等の斜方蒸着膜からなる無機配向膜であり、カラムと称せられる柱状体が第1基板10および第2基板20に対して斜めに形成された柱状構造体層からなる。従って、第1配向膜16および第2配向膜26は、電気光学層50に用いた負の誘電異方性を備えたネマチック液晶分子を第1基板10および第2基板20に対して斜め傾斜配向させ、液晶分子にプレチルトを付している。このようにして、電気光学装置100は、ノーマリブラックのVA(VerticalAlignment)モードの液晶装置として構成されている。
【0018】
第1基板10においてシール材107より外側には、第2基板20の4つの角部分24tと重なる位置に基板間導通用電極部14tが形成されている。基板間導通用電極部14tは、配線6gに導通しており、配線6gは、端子102のうち、共通電位LCCOMを供給するための端子102gに導通している。基板間導通用電極部14tと角部分24tとの間には、導電粒子を含んだ基板間導通材109が配置されており、第2基板20の共通電極21は、基板間導通用電極部14t、基板間導通材109を介して、第1基板10側に電気的に接続されている。このため、共通電極21は、第1基板10の側から共通電位LCCOMが印加される。
【0019】
複数の端子102は、端子102d、102h、102f、102t、102s、102g、102c、102aを含む。端子102dは、走査線駆動回路104にスタートパルスSPを供給するための端子である。端子102hは、走査線駆動回路104にクロック信号CLYを供給するための端子である。端子102fは、走査線駆動回路104に出力制御信号ENBYを供給するための端子である。端子102tは、走査線駆動回路104に高レベルの定電位VDDYを供給するための端子である。端子102sは、走査線駆動回路104に低レベルの定電位VSSYを供給するための端子である。端子102gは、共通電位LCCOMを供給するための端子である。カソード端子102cおよびアノード端子102aは各々、
図3を参照して後述する温度検出回路1のカソード配線Lcおよびアノード配線Laに電気的に接続された端子である。
【0020】
本実施形態の電気光学装置100は透過型液晶装置である。従って、画素電極9aおよび共通電極21は、ITO(Indium Tin Oxide)膜やIZO(Indium Zinc Oxide)膜等の透光性導電層により形成されている。かかる透過型液晶装置では、例えば、第2基板20の側から入射した光源光が第1基板10から出射される間に変調されて画像を表示する。なお、画素電極9aにアルミニウム等の反射性金属によって構成すれば、電気光学装置100を反射型液晶装置とすることができる。
【0021】
1-2.電気光学装置100の電気的構成
図3は、
図2に示す第1基板10の電気的構成を示す回路ブロック図である。
図3において、第1基板10は、略中央領域に複数の画素100aがマトリクス状に配列された表
示領域10aを備えている。第1基板10において、表示領域10aの内側には、走査線駆動回路104からX方向に延在する複数本の走査線3a、およびデータ線駆動回路101からY方向に延在する複数本のデータ線6aが設けられており、走査線3aとデータ線6aとの交差に対応して画素100aが構成される。複数本のデータ線6aは、表示領域10aの第2辺10a2側に配置した検査回路105が電気的に接続している。複数の画素100aの各々には、Nチャネル型トランジスターからなる画素トランジスター30、および画素トランジスター30に電気的に接続された画素電極9aが形成される。画素トランジスター30のソース領域にはデータ線6aが電気的に接続され、画素トランジスター30のゲートには走査線3aが電気的に接続され、画素トランジスター30のドレイン領域には、画素電極9aが電気的に接続されている。データ線駆動回路101によってデータ線6aには画像信号VIDが供給され、走査線3aには走査信号Gが供給される。
【0022】
また、データ線駆動回路101は、後述するように、各水平走査期間の冒頭に設定されたプリチャージ期間においてデータ線6aにプリチャージ信号を印加するプリチャージ回路106の一部として利用される。図示を省略するが、検査回路105はトランジスターアレイである。検査回路105のトランジスターは、一方のソース・ドレイン領域がデータ線6aに電気的に接続され、他方のソース・ドレイン領域が検査線(図示せず)に電気的に接続され、ゲートが検査回路105内の制御信号線(図示せず)に電気的に接続されている。
【0023】
各画素100aにおいて、画素電極9aは、
図2を参照して説明した第2基板20の共通電極21と電気光学層50を介して対向し、液晶容量50aを構成する。各画素100aには、液晶容量50aで保持される画像信号VIDの変動を防ぐために、液晶容量50aと並列に保持容量55が付加されている。本実施形態では、保持容量55を構成するために、第1基板10には、複数の画素100aに跨って延在する共通電位配線8aが容量線として形成されており、共通電位配線8aには共通電位LCCOMが供給されている。共通電位配線8aは、走査線3aおよびデータ線6aの少なくとも一方と平面視で重なるように設けられている。
図3には、共通電位配線8aが走査線3aおよびデータ線6aの双方と平面視で重なる態様が例示されている。共通電位配線8aは、走査線3aおよびデータ線6aのうち、データ線6aと平面視で重なるように構成されることもある。いずれの場合も、共通電位配線8aは、データ線6aと重なる部分を有する。第1基板10において、表示領域10aの外側には温度検出回路1が構成されている。
図3では、表示領域10aの左側に配置された走査線駆動回路104によって奇数行の走査線3aを駆動し、表示領域10aの右側に配置された走査線駆動回路104によって偶数行の走査線3aを駆動する構成としたが、同一の走査線3aを左右両側にそれぞれ配置された走査線駆動回路104で駆動する構成であってもよい。
【0024】
1-3.データ線駆動回路101等の構成例
図4は、
図3に示すデータ線駆動回路101等の説明図である。
図5は、
図1に示す電気光学装置100において画像表示を行う際のタイミングチャートである。
図4に示すように、第1基板10において、表示領域10aの第1辺10a1側にはデータ線駆動回路101が配置される。データ線駆動回路101はデマルチプレクサを含み、デマルチプレクサはサンプル・ホールド回路としての選択回路101aを含む。選択回路101aからはデータ線6aがY方向、すなわち表示領域10aの第2辺10a2側へ向かって延在している。選択回路101aは、データ線6aと画像信号配線6jとの電気的な接続を制御するトランジスター30eを備える。本実施形態において、デマルチプレクサは、例えば、8個のトランジスター30eを備える。トランジスター30eはNチャネル型トランジスターである。従って、FHD規格であれば1920/8=240であるから、240個のデマルチプレクサを備える。かかるデータ線駆動回路101は、
図3に示す駆動用IC75から端子102および画像信号配線6jを経由した画像信号VIDを各データ線6a
に供給する。その際、選択回路101aのトランジスター30eは、駆動用IC75の制御回路76から制御信号線6iを介して供給される選択信号SEL1、SEL2、…SEL8に基づいて、画像信号VIDを各データ線6aに時分割的に供給する。
【0025】
より具体的には、電気光学装置100で画像表示を行う際、
図5に示すように、走査線駆動回路104は、垂直同期信号Vsyncによって規定される第Nフレーム期間において、走査信号G1、G2、G3・・Gmを水平走査期間H毎に順次排他的に選択レベルとする。水平走査期間Hでは、選択信号SEL1、SEL2、…SEL8が順に排他的に選択レベルとなり、駆動用IC75は、選択信号SEL1、SEL2、…SEL8に同期して画像信号VID1、VID2・・・VIDnを供給する。
【0026】
例えば、走査信号G1が選択レベルとなる水平走査期間Hにおいて、選択信号SEL1が選択レベルとなったときには、第1行目の走査線3aと、複数のデマルチプレクサの各々においてX方向の第1番目に位置するデータ線6aとの交差に対応する画素100aに対して、画像信号VID1、VID2・・・VIDnに対応する電圧が書き込まれる。次に、選択信号SEL2が選択レベルとなったとき、第1行目の走査線3aと、複数のデマルチプレクサの各々において第1方向の第2番目に位置するデータ線6aとの交差に対応する画素100aに対して、画像信号VID1、VID2・・・VIDnに対応する電圧が書き込まれる。以下、同様にして、選択信号SEL3~SEL8が選択レベルとなったとき、対応する画素100aに対して画像信号VID1~VIDnに対応する電圧の書き込みが行われる。
【0027】
また、電気光学装置100の駆動としては、表示品質の改善のためにデータ線6aに画像信号電圧を書き込む前に予備書き込みが行われる。これを一般的にはプリチャージという。従って、水平走査期間Hの冒頭では、選択信号SEL1、SEL2、…SEL8が同時に選択レベルになるプリチャージ期間tpが設けられている。プリチャージ期間tpでは、選択信号SEL1、SEL2、…SEL8が全て選択レベルとなることによって、プリチャージ信号PRCが全てのデータ線6aに供給される。従って、制御回路76は、プリチャージ期間tpにおいて選択回路101aを制御することから、制御回路76および選択回路101aは、プリチャージ回路を構成している。
【0028】
かかる動作は、各水平期間Hにおいて実施される。また、第Nフレームの後の第N+1フレームにおいても、同様な動作が実施される。その際、各画素100aに対する画像信号極性が入れ替えられることがある。画像信号極性とは、共通電位LCCOMを基準としたときの、画像信号電圧の極性である。例えば、共通電位LCCOMに対して画像信号電圧が正であれば正極性であり、共通電位LCCOMに対して画像信号電圧が負であれば負極性である。例えば、第Nフレームにおいて正極性書き込みが行われたのであれば、次の第N+1フレームにおいては、負極性書き込みが行われる。一方、第Nフレームにおいて負極性書き込みが行われたのであれば、次の第N+1フレームにおいては、正極性書き込みが行われることになる。かかる極性反転を行うことにより、電気光学層50の劣化を防止することができる。
【0029】
このように、本形態では、プリチャージによって、画像信号電圧の書き込みを補助し、あるいは中間調背景に白ウインドウ表示をした際に、白ウインドウの上部や下部が周辺とは異なった階調に視認されるクロストークを軽減させる。プリチャージ信号PRCは、例えば、画像信号VIDの電圧範囲の最低電圧付近に設定されることが多い。例えば、ノーマリブラックモードの電気光学装置100で、共通電位LCCOMを固定電位の7Vに設定し、負極性表示における画像信号電圧を2V(白)~7V(黒)、正極性表示における画像信号電圧を7V(黒)~12V(白)とし、プリチャージ信号を2V~4V程度とする。実際には、選択回路101aのトランジスター30eと画素トランジスター30とに
おけるプッシュダウン電圧を考慮して共通電位LCCOMの調整が行われるが、実施例の説明上は無視しても支障はない。
【0030】
プリチャージは、水平走査期間Hの冒頭に実施することが一般的である。従って、データ線6aの電位は一斉に2V近辺に遷移し、寄生容量によって共通電位配線8aの電位に対し、比較的大きなノイズを生起させる。詳細には
図5のLCCOMに示すように、プリチャージに同期して、共通電位配線8aには共通電位LCCOMより低電位側へ向かったスパイクノイズが立つ。各画素への画像信号書き込み時にもノイズは生起するが、時分割動作であるため比較的小さいものである。近年は高精細化により表示領域10aのデータ線6aの数は増加し、このスパイクノイズは抑えきれないものになっている。
【0031】
1-4.温度検出回路1の構成
図6は、
図3に示す温度検出回路1の説明図である。
図6には、温度検出回路1によって温度を検出する際の回路構成を示してある。
【0032】
図3に示すように、第1基板10の表示領域10aの外側において、電気光学パネル100pの温度を検出する温度検出回路1が設けられている。温度検出回路1は、温度検出素子11と、温度検出素子11をサージ電流から保護するための静電保護回路12とを備えている。第1基板10において、温度検出素子11は表示領域10aの近傍に配置され、静電保護回路12は、温度検出素子11と第1基板10において端子102が配列された端部との間に設けられている。
【0033】
図6に示すように、温度検出素子11は、例えば、直列に電気的に接続された複数のダイオードDを備えている。
図6には、説明を容易化するために3個のダイオードD(D1~D3)が直列に電気的に接続された形態を例示してあるが、ダイオードDは、5個あるいは6個、直列に電気的に接続されることもある。かかる温度検出素子11によれば、温度検出素子11に定電流を流したとき、順方向電圧の温度に対する感度を約-10mV/℃にすることができる。温度検出素子11のアノード11aには、アノード端子102aから延在するアノード配線Laが電気的に接続されている。温度検出素子11のカソード11cには、カソード端子102cから延在するカソード配線Lcが電気的に接続されている。カソード配線Lcには、グランド電位GNDが供給される。
【0034】
従って、電気光学装置100を電子機器に搭載した状態で、上位回路60の温度検出用駆動回路66から配線基板70を介してアノード端子102aおよびカソード端子102cを介して温度検出回路1に100nA~数μA程度の微小な順方向の駆動電流IFを供給すると、ほとんどの駆動電流IFが温度検出素子11を流れる。ここで、温度検出素子11の順方向の電圧は、温度に対して良い線形関係にあるとみなせる。従って、温度検出素子11に100nA~数μA程度の定電流からなる駆動電流IFを供給した際のアノード端子102aとカソード端子102cとの間の出力電圧VFを温度検出用駆動回路66によって検出すれば、電気光学パネル100pの表示領域10aの温度を検出することができる。より具体的には、電気光学装置100を後述する投射型表示装置のライトバルブ等として使用した際の仕様温度域において、出力電圧VFは、温度に対して良い線形性をもって変化するので、予め校正しておけば、電気光学パネル100pの温度を検出することができる。その際、温度検出素子11は、表示領域10aの近傍に配置されているため、温度検出素子11は、表示領域10aの温度を適正に検出することができる。それ故、温度検出回路1の温度検出に基づいて、画像信号の補正等を行えば、表示領域10aの温度に対応した適正な条件で電気光学装置100を駆動することができるので、品位の高い画像を表示することができる。なお、温度検出用駆動回路66は、定電流回路661と、安定化容量662とを備える。安定化容量662は、定電流回路661とグランド電位GNDとの間に設けられており、出力電圧VFの測定値を安定させる。安定化容量662の
静電容量は、例えば、0.1μFである。
【0035】
本形態において、静電保護回路12は、アノード配線Laとカソード配線Lcとの間に接続されたトランジスターTrを備えており、トランジスターTrは、温度検出素子11に並列に電気的に接続されている。トランジスターTrの一方のソース・ドレイン領域31iは、カソード端子102cと温度検出素子11のカソード11cとの間においてカソード配線Lcと電気的に接続され、トランジスターTrの他方のソース・ドレイン領域31jは、アノード端子102aと温度検出素子11のアノード11aとの間においてアノード配線Laと電気的に接続されている。本形態において、トランジスターTrは、画素トランジスター30と同様、Nチャネル型トランジスターからなる。
【0036】
静電保護回路12は、直列に電気的に接続された第1容量素子C1と第2容量素子C2とがアノード配線Laとカソード配線Lcとの間に電気的に接続されている。より具体的には、アノード配線Laに第2容量素子C2の一方の電極が電気的に接続され、カソード配線Lcに第1容量素子C1の一方の電極が電気的に接続され、第1容量素子C1の他方の電極と第2容量素子C2の他方の電極とが電気的に接続されている。第1容量素子C1の一方の電極は、カソード端子102cとトランジスターTrの一方のソース・ドレイン領域31iとの間においてカソード配線Lcと電気的に接続され、第2容量素子C2の一方の電極は、アノード配線Laのうち、アノード端子102aとトランジスターTr他方のソース・ドレイン領域31jとの間においてアノード配線Laと電気的に接続されている。第1容量素子C1および第2容量素子C2の静電容量は、例えば、5pFである。
【0037】
アノード配線Laは、アノード端子102aとアノード配線Laと第2容量素子C2との接続位置との間に第1抵抗素子R1を有し、カソード配線Lcは、カソード端子102cとカソード配線Lcと第1容量素子C1との接続位置との間に第2抵抗素子R2を有する。また、第1容量素子C1と第2容量素子C2との接続ノードCnは、トランジスターTrのゲート電極33tに電気的に接続されている。第1抵抗素子R1および第2抵抗素子R2は、例えば、10kΩである。
【0038】
静電保護回路12は、第1容量素子C1に並列に電気的に接続された抵抗素子R3を有する。より具体的には、トランジスターTrのゲート電極33tから延在するゲート配線Lgは、第1容量素子C1と第2容量素子C2との接続ノードCnに電気的に接続し、さらに、抵抗素子R3を介してカソード配線Lcに電気的に接続されている。抵抗素子R3は、例えば、500kΩである。トランジスターTrは放電経路として機能する。トランジスターTrのゲート電極33tは、抵抗素子R3を介してカソード配線Lcと電気的に接続されているため、静的状態ではゲート電極33tとカソード配線Lcとは同電位である。つまりトランジスターTrのゲート・ソース間電圧は0Vである。故にトランジスターTrはオフとなり、理想的にはソース・ドレイン間に電流は流れない。従って、温度検出素子11によって温度を検出する際、アノード配線Laに供給した駆動電流IFは、トランジスターTrには電流は流れず、温度検出素子11に流れる。
【0039】
このように、静電保護回路12は、温度検出素子11に並列に電気的に接続されたトランジスターTrと、トランジスターTrに電気的に接続された第1容量素子C1と、第1容量素子C1に並列に電気的に接続された抵抗素子R3とを有する。また、静電保護回路12は、第1容量素子C1と直列に電気的に接続された第2容量素子C2を備える。それ故、製造工程等において、アノード端子102aから静電気によるサージ電流が侵入した際、静電保護回路12は、温度検出素子11を静電気から保護する。
【0040】
より具体的には、静電保護回路12において、静的状態ではトランジスターTrのゲート・ソース間電圧は0Vであり、トランジスターTrはオフである。ここで、アノード端
子102aから静電気によるサージ電流が侵入すると、第1抵抗素子R1によって電圧変動が抑制されながら、第1容量素子C1と第2容量素子C2との接続ノードCnの電位であるトランジスターTrのゲート電極33tの電位が上昇する。このため、トランジスターTrがオン状態となるので、サージ電流は、トランジスターTrおよびカソード配線Lcを介してカソード端子102cに流れる。その際、第1抵抗素子R1は、アノード端子102aから侵入するサージ電流を緩和し、第2抵抗素子R2は、カソード端子102cから侵入するサージ電流を緩和する。また、トランジスターTrがオンとなる期間は、第1容量素子C1、第2容量素子C2、抵抗素子R3、およびトランジスターTrのゲート容量等で決まる。放電後は、抵抗素子R3によって、トランジスターTrのゲート・ソース間電圧は0Vに復帰する。よって、温度検出素子11に流れるサージ電流は、静電保護回路12によって抑制されるので、温度検出素子11を保護することができる。
【0041】
1-5.温度検出素子11等の構成例
図7は、
図6に示す温度検出素子11等の断面を模式的に示す説明図である。
図7に示すように、第1基板10において、基板本体10wにはシリコン酸化膜等からなる透光性の絶縁層41が形成され、絶縁層41の表面側に、半導体層31aを備えた画素トランジスター30が形成されている。基板本体10wと絶縁層41との間には、半導体層31a等と平面視で重なるように遮光層(図示せず)が形成されることがある。なお、図面での判別を容易にするためにゲート絶縁層32は画素トランジスター30のみに描いている。
【0042】
画素トランジスター30は、半導体層31aと、半導体層31aと交差する走査線3aの一部からなるゲート電極33gとを備えており、半導体層31aとゲート電極33gとの間に、シリコン酸化膜等からなる透光性のゲート絶縁層32を有している。ゲート電極33gは、例えば、タングステンシリサイドと導電性ポリシリコンとの積層膜である。半導体層31aは、ポリシリコン膜からなる。画素トランジスター30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有している。より具体的には、画素トランジスター30において、ソース領域31sは、チャネル領域31gから離隔する高濃度領域31s1と、チャネル領域31gと高濃度領域31s1とに挟まれた低濃度領域31s2とを備え、ドレイン領域31dは、チャネル領域31gから離隔する高濃度領域31d1と、チャネル領域31gと高濃度領域31d1とに挟まれた低濃度領域31d2とを備えている。ゲート絶縁層32は、例えば、シリコン酸化膜からなる。なお、基板本体10wと絶縁層41との間に形成した遮光層を走査線3aとし、ゲート電極33gをゲート絶縁層32および絶縁層41を貫通するコンタクトホール(図示せず)を介して遮光層と電気的に接続することもある。
【0043】
ゲート電極33gの上層側には、シリコン酸化膜等からなる透光性の絶縁層42、43、44が順に積層されており、絶縁層41、42、43の層間に導電層を形成して
図3を参照して説明した保持容量55が構成される。
【0044】
絶縁層42と絶縁層43との層間にはデータ線6a、および中継電極6bが形成されている。データ線6aは、ゲート絶縁層32および絶縁層42を貫通するコンタクトホール42sを介して画素トランジスター30のソース領域31sに電気的に接続されている。中継電極6bは、ゲート絶縁層32および絶縁層42を貫通するコンタクトホール42dを介して画素トランジスター30のドレイン領域31dに電気的に接続されている。データ線6aおよび中継電極6bは、同一層に同時形成された導電層からなり、例えば、アルミニウムを主体とした低抵抗配線である。
【0045】
絶縁層43と絶縁層44との層間には共通電位配線8aおよび中継電極8dが形成されている。共通電位配線8aおよび中継電極8dは、同一層に同時形成された導電層からなる。中継電極8dは、絶縁層43を貫通するコンタクトホール43dを介して中継電極6
bに電気的に接続されている。図示を省略するが、共通電位配線8aは、保持容量55の一方の電極に電気的に接続され、保持容量55の他方の電極は、中継電極6b、8dに電気的に接続されている。また、共通電位配線8aは
図1の配線6gにも電気的に接続される。
【0046】
絶縁層44の上層には画素電極9aが形成されている。画素電極9aは、絶縁層44を貫通するコンタクトホール44dを介して中継電極8dに電気的に接続されている。従って、画素電極9aは、保持容量55の他方の電極に電気的に接続し、さらに、画素トランジスター30のドレイン領域31dに電気的に接続している。
【0047】
なお、図示を省略するが、第1基板10には、画素トランジスター30等の製造工程を利用して、走査線駆動回路104においてインバーター回路等を構成する駆動回路用のトランジスターや、データ線駆動回路101の選択回路101aを構成する駆動回路用のトランジスターも構成されている。
【0048】
第1基板10には、画素トランジスター30や駆動回路用のトランジスター等の製造工程を利用して、温度検出素子11のダイオードDが構成されている。より具体的には、第1基板10において、絶縁層41の上層には、互いに島状に分離した複数の半導体層31hが設けられており、複数の半導体層31hの各々にはN型領域およびP型領域が設けられている。本形態において、N型領域は、高濃度N型領域N+と低濃度N型領域N-とを備え、P型領域は、高濃度P型領域P+と低濃度P型領域P-とを備えており、低濃度N型領域N-と低濃度P型領域P-とがPN接合を構成している。なお、ダイオードDは、高濃度のP型領域P+、低濃度のN型領域N-、および高濃度のN型領域N+によっても構成可能である。いずれの場合も、ダイオードDであるか否かはその電気特性を測定することで判別できる。
【0049】
絶縁層42の上層には電極6e1、6e2が形成されており、複数の電極6e1、6e2は各々、絶縁層42を貫通するコンタクトホール42p、42nを介して半導体層31hの高濃度P型領域P+と、隣りの半導体層31hの高濃度N型領域N+とに電気的に接続されている。中継部P1は、第1ダイオードD1のPN接合と第2ダイオードD2のPN接合とを電気的に接続する部分であり、第1ダイオードD1のN型領域、電極6e1および第2ダイオードD2のP型領域を含み、中継部P2は、第2ダイオードD2のPN接合と第3ダイオードD3のPN接合とを電気的に接続する部分であり、第2ダイオードD2のN型領域、電極6e2および第3ダイオードD3のP型領域を含む。従って、電極6e1は第1ダイオードD1と第2ダイオードD2とを電気的に接続する中継部P1に含まれ、電極6e2は第2ダイオードD2と第3ダイオードD3とを電気的に接続する中継部P2に含まれている。ここで、電極6e1は、第1ダイオードD1の半導体層31h、および第2ダイオードD2の半導体層31hを電気的に接続する部分に相当し、電極6e2は、第2ダイオードD2の半導体層31h、および第3ダイオードD3の半導体層31hを電気的に接続する部分に相当する。
【0050】
また、一方の端部に配置された半導体層31hの高濃度P型領域P+には、コンタクトホール42pを介してアノード配線Laが電気的に接続され、他方の端部に配置された半導体層31hの高濃度N型領域N+には、コンタクトホール42nを介してカソード配線Lcが電気的に接続されている。
【0051】
半導体層31hは、半導体層31aと同一層に同時形成されるため、厚さ等は半導体層31aと等しい。N型領域およびP型領域は、
図3に示す走査線駆動回路104等を構成する駆動用トランジスター、および画素トランジスター30の製造工程を利用して形成される。電極6e1、6e2は、例えば、データ線6aと同一層に同時形成される。
【0052】
なお、図示を省略するが、静電保護回路12のトランジスターTr、第1抵抗素子R1、第2抵抗素子R2、および抵抗素子R3は、
図7に示す各導電層等を用いて形成される。例えば、第1抵抗素子R1、第2抵抗素子R2、および抵抗素子R3は、導電性ポリシリコン膜等によって構成される。例えば、ゲート電極33gや半導体層31aと同一層に設けられる。第1抵抗素子R1、第2抵抗素子R2、および抵抗素子R3は、これに限らず、タングステンシリサイドやアルミニウム等の金属材料によって構成してもよい。トランジスターTrは、画素トランジスター30と同一層に同時形成される。第1容量素子C1および第2容量素子C2は保持容量55と同一層に同時形成される。
【0053】
図4および
図7に示すように、共通電位配線8aは、端子102gから温度検出素子11の形成領域を通って表示領域10a、および走査線駆動回路104に向けて延在する配線である。ここで、共通電位配線8aは、表示領域10aの外側に開口部8a0が設けられており、平面視において、温度検出素子11は、開口部8a0の内側に形成されている。本形態において、平面視で開口部8a0の内側には、温度検出素子11と平面視で重なる遮光層8eが形成されている。遮光層8eは、共通電位配線8aと同一層に同時形成された遮光性の導電層である。また、遮光層8eは、共通電位配線8aと同一層に同時形成された膜であるが、共通電位配線8aと離隔して設けられている。
【0054】
第2基板20の見切り29は、温度検出素子11と平面視で重なる領域に形成されており、見切り29は、さらに、データ線駆動回路101および走査線駆動回路104と平面視で重なる領域に形成されている。
【0055】
このように構成した第1基板10において、絶縁層42と絶縁層43との間に形成されたデータ線6aや電極6e1、6e2等は、第1導電層に相当し、絶縁層43と絶縁層44との間に形成された共通電位配線8aや遮光層8e等は、第2導電層に相当し、絶縁層44の上層に形成された画素電極9aやダミー画素電極9bは、第3導電層に相当する。
【0056】
1-6.実施形態1の作用効果
図8は、本発明の実施形態1に対する比較例の説明図である。
図9は、プリチャージと温度検出回路1の出力電圧VFとの関係の一例を示す図である。
図10は、
図6に示す温度検出素子11に寄生する容量Cbが出力電圧VFに与える影響を示すグラフである。詳細には、
図10は、温度検出素子11と共通電位配線8aとの間の寄生容量Cbの静電容量と温度検出回路1の出力電圧VFとの関係を示してある。
図10において、寄生容量Cbは、温度検出素子11のダイオードDの電極6e1を含む中継部P1と共通電位配線8aとの間に寄生する容量、および電極6e2を含む中継部P2と共通電位配線8aとの間に寄生する容量である。なお、電極6e1と電気的に接続されているダイオードDの一方の極は、電極6e1と同一のノードである。同様にして、電極6e2と電気的に接続されているダイオードDの一方の極は、電極6e2と同一のノードである。
【0057】
図8に示す比較例では、共通電位配線8aに開口部8a0が形成されておらず、温度検出素子11は、共通電位配線8aと平面視で重なっている。従って、比較例では、ダイオードDの中継部P1、P2と共通電位配線8aとの間に大きな静電容量を有する寄生容量Cb(
図6参照)が存在する。この寄生容量Cbでは、半導体層31hよりも上層に配置された電極6e1、6e2の影響が大きい。
【0058】
これに対して、
図7に示すように、本発明の実施形態1に係る電気光学装置100において、共通電位配線8aには、温度検出素子11と平面視で重なる位置に開口部8a0が形成されている。このため、温度検出素子11は、平面視において共通電位配線8aと重なっていない。従って、本発明の実施形態1に係る電気光学装置100では、ダイオード
Dの電極6e1、6e2と共通電位配線8aとの間に大きな静電容量を有する寄生容量が存在しないので、中継部P1、P2と共通電位配線8aとの間に大きな静電容量を有する寄生容量Cbが存在しない。それ故、以下に説明するように、プリチャージによって、共通電位配線8aの電位にスパイクノイズが発生した際、比較例では、共通電位配線8aの電位変化が寄生容量Cbを介して温度検出素子11の出力電圧VFに影響を及ぼすのに対し、実施形態1では、上記の影響が発生しにくい。
【0059】
例えば、6個のダイオードDからなる温度検出素子11を含む温度検出回路1の駆動電流を100nAとしたとき、以下の問題が発生した。
図9に示すように、時刻t0~t1において電気光学装置100のプリチャージを停止していると、温度検出回路1の出力電圧VFは6個のダイオードDにおいて期待される順方向電圧と略一致した。次に、時刻t1~t2においてプリチャージを実施すると、温度検出回路1の出力電圧VFはΔVF1低下して飽和した。時刻t2以降プリチャージを停止すると、温度検出回路1の出力電圧VFは、時刻t0~t1における出力電圧VFに復帰した。また、このΔVF1は、第1基板10の温度検出素子11より上層に配置され、共通電位LCCOMが印加された導電層を電気的にフローティングにすると軽減した。
【0060】
そこで、寄生容量Ca(
図6参照)と寄生容量Cb(
図6参照)を想定し、ダイオードDは測定データをもとにモデル化し、回路シミュレータを用いて、共通電位配線8aの電位変化が寄生容量Ca、Cbを介して温度検出回路1の出力電圧VFに及ぼす影響を計算した。なお、計算時間短縮のため、
図6に示した安定化容量662は100pFとした。出力電圧VFの応答時間は実際の電気光学装置100とは異なるが、出力電圧VFの挙動を検証するには充分である。なお出力電圧VFは、プリチャージ開始後低下し飽和するが、プリチャージに同期した微小な電圧揺らぎが残る。そこで、1水平期間よりも充分に長い0.01sec間の平均電圧を出力電圧VFとした。なお、計算は室温を想定した。
【0061】
共通電位配線8aの電位は、基本的には共通電位LCCOMとしての固定電位、例えば7Vであるが、プリチャージに伴って周期的に以下のノイズが重畳されるものとした。ここで1水平走査期間の3μsecは、例えば、WUXGA規格の電気光学パネルを240フレーム毎秒で駆動する場合の1水平期間に近しいものである。ノイズの電圧の極性が-なのは、共通電位配線8aには共通電位LCCOMより低電位側へ向かったスパイクノイズが発生するためである。
1水平走査期間=3μsec
ノイズの電圧=-1.5V
ノイズの電圧の下降時間=100nsec
ノイズの電圧の上昇時間=300nsec
【0062】
計算の結果、寄生容量Ca(
図6参照)として0.5pFを想定したが、温度検出素子11の出力電圧VFに及ぼす影響は小さかった。
【0063】
一方で、寄生容量Cbの静電容量と出力電圧VFとの関係として
図10に示す計算結果を得た。
図10には、駆動電流IFを100nA、200nA、400nA、800nAとした場合における、温度検出回路1の出力電圧VFの計算結果を各々、実線L100、L200、L400、L800で示してある。
【0064】
例えば、ダイオードDの中継部P1、P2、…と共通電位配線8aとの間に、0.03pFの寄生容量Cbが存在すると、温度検出素子11の出力電圧VFの変動ΔVF1が100mVを超えてしまう可能性がある計算結果を得た。出力電圧VFが100mV変動すると、約-10mV/℃の感度を持つ温度検出素子11とした場合、測温誤差は10℃にも達してしまうから、電気光学装置100の温度制御は困難である。
【0065】
また、
図10から、上記問題を解決するには寄生容量Cbを小さくするか、駆動電流IFを大きくすることが効果的であるといえる。従って、本実施形態のように、直列に電気的に接続されたダイオードDの中継部P1、P2、…と共通電位配線8aとの間の寄生容量Cbを小さくすれば、例えば、
図9のΔVF2のように出力電圧VFの変動を抑制できる。つまり、プリチャージによって共通電位配線8aの電位が変化しても、温度検出回路1の出力電圧VFの変動が小さいので、温度検出素子11による温度検出精度を改善できる。
【0066】
なお、駆動電流IFを大きくすると、共通電位配線8aの電位変化が温度検出回路1の出力電圧VFに影響を及ぼしにくくなるが、駆動電流IFを大きくすると、直列抵抗の影響を受けて、動作点における駆動電流の変動ΔIFに対する温度検出素子11の順方向電圧の変動ΔVFが大きくなるから検出温度の信頼性が低下する。従って、温度検出回路1としては使い難いものになるからダイオードDの駆動電流を単純に大きくすることは好ましくない。
【0067】
また、駆動電流IFを大きくすると、動作点である出力電圧VFが上昇し、定電流回路のコンプライアンス電圧(動作点電圧上限)を守れなくなる場合がある。例えば、トランジスター、オペアンプ及びシャントレギュレータ等を用いた吐き出し型の定電流回路では、5V電源を使用した場合の定電流動作できる動作点電圧上限は3.7V程度である。
図10から、例えば、駆動電流IFを400nAとすると、室温での動作点電圧は約3.8Vであるから、5V電源で駆動する定電流回路を使用することができない。その場合、動作点電圧すなわち出力電圧VFを下げるためにダイオードの直列数を減じることになり、温度検出回路1の温度に対する感度が低下する問題が発生する。また、直列ダイオード数を維持するのであれば、外部回路の駆動電圧源を新たに設ける必要があるため、コスト増となる問題がある。かかる観点からすれば、実施形態1では、寄生容量Cbを減じる構成であるから、駆動電流IFを大きくしなくても、共通電位配線8aの電位変化が温度検出回路1の出力電圧VFに影響を及ぼしにくくなる。従って、感度のよい温度検出素子11を用いた温度検出回路1を低コストで構成できる温度検出用駆動回路66で駆動できる。
【0068】
また、本実施形態では、開口部8a0に島状の遮光層8eを設けたため、開口部8a0を設けた場合でも、入射光が迷光となってダイオードDのパターンが投影されることを抑制する。また、島状の遮光層8eを設けることにより、電気光学層50の温度を温度検出素子11へ伝達しやすくなる。
【0069】
2.実施形態2
図11は、本発明の実施形態2に係る電気光学装置100の説明図である。
図11には、本発明の実施形態2に係る電気光学装置100の温度検出素子11の近傍の平面構成を示してある。
図12は、
図11に示す温度検出素子11等の断面を模式的に示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は実施形態1と同様であるため、共通する部分は、同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0070】
図11および
図12に示すように、本実施形態において、第1基板10の表示領域10aの周囲部には、絶縁層44の表面にダミー画素電極9bを構成する導電層9b0が配置されている。導電層9b0は、例えば、画素電極9aと同様の矩形パターンが複数個配置され、矩形を構成する4辺の中央部で互いに連結された形状をなす。また、導電層9b0は温度検出素子11と平面視で重なっている。導電層9b0は、絶縁層44を貫通するコンタクトホール44eを介して共通電位配線8aと電気的に接続されている。従って、導電層9b0には、共通電位LCCOMが印加されている。このような構成によれば、表示領域10aの周囲において、電気光学層50に印加される電圧を0Vに保持することがで
きるので、電気光学層50の劣化を抑制している。
【0071】
ここで、共通電位配線8aは、実施形態1と同様、温度検出素子11と平面視で重なる領域に開口部8a0が設けられている。また、開口部8a0の内側には、温度検出素子11と平面視で重なる遮光層8eが設けられており、遮光層8eは電気的にフローティングである。また、導電層9b0は共通電位配線8aと電気的に接続されて温度検出素子11と平面視で重なっている。従って、導電層9b0と温度検出素子11の中継部P1及びP2とには寄生容量が存在する。しかしながら、
図8の比較例を参照すれば明らかなように、温度検出素子11の中継部P1及びP2と、共通電位LCCOMが印加されている導電層9b0間の距離は、絶縁層44の厚さによって大きくなっている。その結果、温度検出素子11の中継部P1、P2と導電層9b0との間に形成される寄生容量を小さくできる。それ故、プリチャージを実施した際、共通電位配線8aにスパイクノイズが発生した場合でも、温度検出回路1の出力電圧VFの変動を抑制することができる。よって、電気光学装置100における温度検出精度が高いので、電気光学装置100では適正に温度制御を実施することができる。
【0072】
2-1.実施形態2の変形例
図13は、本発明の実施形態2の変形例に係る電気光学装置100の説明図である。
図13には、本発明の実施形態2の変形例に係る電気光学装置100の温度検出素子11等の断面を模式的に示してある。なお、本形態の基本的な構成は実施形態1、2と同様であるため、共通する部分は、同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0073】
図13に示すように、本実施形態において、第1基板10の表示領域10aの周囲部には、実施形態2と同様、絶縁層44の表面にダミー画素電極9bを構成する導電層9b0が配置されている。導電層9b0は、例えば、画素電極9aと同様の矩形パターンが複数個配置され、矩形を構成する4辺の中央部で互いに連結された形状をなす。
【0074】
ここで、電気光学層50と共通電位配線8aとの間において、共通電位配線8aと導電層9b0との層間に絶縁層44、45が設けられ、絶縁層44と絶縁層45との層間に中継電極7aが設けられている。従って、画素電極9aは、絶縁層45を貫通するコンタクトホール45dを介して中継電極7aに電気的に接続し、中継電極7aは、絶縁層44を貫通するコンタクトホール44dを介して中継電極8dに電気的に接続している。
【0075】
また、絶縁層44と絶縁層45との層間には、配線7eを構成する導電層7e0が設けられている。従って、導電層9b0は、絶縁層45を貫通するコンタクトホール45eを介して導電層7e0に電気的に接続し、導電層7e0は、絶縁層44を貫通するコンタクトホール44eを介して共通電位配線8aに電気的に接続している。従って、ダミー画素電極9bおよび配線7eには共通電位LCCOMが供給される。このような構成によれば、表示領域10aの周囲において、電気光学層50に印加される電圧を0Vに保持することができるので、電気光学層50の劣化を抑制することができる。また、配線7eによって、表示領域10aにおける容量線に電気的に接続される共通電位配線8aと端子102gとを低抵抗で電気的に接続できるから、その電位を安定化させる効果も奏す。
【0076】
ここで、共通電位配線8aは、実施形態1と同様、温度検出素子11と平面視で重なる領域に開口部8a0が設けられている。また、開口部8a0の内側には、温度検出素子11と平面視で重なる遮光層8eが設けられており、遮光層8eは電気的にフローティング状態にある。また導電層7e0は共通電位配線8aと電気的に接続されて温度検出素子11と平面視で重なっている。従って、導電層7e0と温度検出素子11の中継部P1および中継部P2とには寄生容量が存在する。しかしながら、
図8の比較例を参照すれば明らかなように、温度検出素子11の中継部P1および中継部P2と、共通電位LCCOMが
印加されている導電層7e0間の距離は、絶縁層44の厚さによって大きくなっている。その結果、温度検出素子11のダイオードDの中継部P1、P2と導電層7e0との間に形成される寄生容量を小さくできる。それ故、プリチャージを実施した際、共通電位配線8aにスパイクノイズが発生した場合でも、温度検出回路1の出力電圧VFの変動を抑制することができる。よって、電気光学装置100における温度検出精度が高いので、電気光学装置100では適正に温度制御を実施することができる等、実施形態2と同様な効果を奏する。
【0077】
3.実施形態3
図14は、本発明の実施形態3に係る電気光学装置100の説明図である。
図14には、本発明の実施形態3に係る電気光学装置100の温度検出素子11の近傍の平面構成を示してある。
図15は、
図14に示す温度検出素子11の断面図である。なお、本形態の基本的な構成は実施形態1、2と同様であるため、共通する部分は、同一の符号を付してそれらの説明を省略する。なお、
図14および
図15では、構成が分かりやすいように、温度検出素子11において、直列に電気的に接続するダイオードDの数は3としている。
【0078】
図14および
図15に示すように、温度検出素子11において、ダイオードDが配列している方向を第1方向Eとし、第1方向Eと直交する方向を第2方向Fとしたとき、ダイオードDを構成する半導体層31hは第1方向Eに配列され、隣り合うダイオードDは、中継部P1の電極6e1、および中継部P2の電極6e2によって電気的に接続されている。本形態において、第1方向EはY方向であり、第2方向FはX方向である。なお、電極6e1と電気的に接続されているダイオードDの一方の電極は、電極6e1と同一のノードである。同様にして、電極6e2と電気的に接続されているダイオードDの他方の電極は、電極6e2と同一のノードである。
【0079】
ここで、半導体層31hの第2方向Fにおける寸法であるパターン幅をW1とし、中継部P1の電極6e1、中継部P2の電極6e2について、第2方向Fに沿う方向の電極幅をW2としたとき、以下に示すように、電極幅W2は、パターン幅W1より狭い部分を有する。
W1>W2
【0080】
例えば、パターン幅W1が100μmのとき、電極幅W2を5μmとする。温度検出素子11に流れる電流値は小さいので、電極幅W2を小さくしても問題ない。第2ダイオードD2と第3ダイオードD3との間も同様に構成されている。よって、平面視したときの電極6e1、6e2の面積は小さくなるので、電極6e1、6e2をそれぞれ含む中継部P1、P2と共通電位配線8aとの間で形成される平行平板的な寄生容量を小さくできる。従って、プリチャージを実施した際、共通電位配線8aにスパイクノイズが発生した場合でも、温度検出回路1の出力電圧VFの変動を抑制することができる。
【0081】
ここで、共通電位配線8aの開口部8a0については、
図14に点線L1で示すように、全てのダイオードDを露出させるように設けてもよいし、一点鎖線L2で示すように、中継部P1、P2を重点的に露出させるように設けてもよい。後者の場合、第1ダイオードD1に電気的に接続するアノード配線La、および第3ダイオードD3に電気的に接続するカソード配線Lcは、共通電位配線8aと平面視で重なる。前述した回路モデルによる検証から、温度検出回路1の出力電圧VFの変動に大きな影響を及ぼすのは、中継部P1、P2と共通電位配線8aとの間の寄生容量Cbである。従って、アノード配線Laやカソード配線Lcが共通電位配線8aと重なりを持っていても影響は小さい。
【0082】
また、前述した回路モデルによる検証において、中継部P1、P2とノイズ源との寄生容量の削減が重要であるという知見を得たので、本形態では、ダイオードDの配列方向に
沿うように、グランド電位GND電位とされるカソード配線Lcを第1方向Eに延在させる。つまり、中継部P1、P2について、カソード配線Lcを図示しない配線に対するシールドとして利用してもよい。その際、カソード配線Lcについては、電気光学パネル100pのグランド電位GND電位配線とは別系統にすれば、カソード配線Lcはノイズが小さい定電位配線になるので、シールド効果が高い。
【0083】
また、中継部P1、P2について、低レベルの定電位VSSYを供給する定電位配線6sを図示しない配線に対するシールドとして利用し、ダイオードDの配列方向に沿うように第1方向Eに延在させてもよい。あるいは高レベルの定電位VDDYを供給する配線をシールドとして用いてもよい。
【0084】
また、
図15に示すように、第1方向Eにおける半導体層31hの間隔である間隔S0を設計ルールの許す範囲で短くすることによって、電極6e1、6e2の長さL6e1、6e2を短縮することが好ましい。電極6e1、6e2の長さL6e1、L6e2を短縮すれば、中継部P1、P2の長さLP1、LP2を短縮することになる。従って、中継部P1の電極6e1の面積と、中継部P2の電極6e2の面積は小さくなり、中継部P1、P2と共通電位配線8aとの間の寄生容量Cbを小さくできる。従って、プリチャージを実施した際、共通電位配線8aにスパイクノイズが発生した場合でも、温度検出回路1の出力電圧VFの変動を抑制することができる。
【0085】
3-1.実施形態3の変形例1
図16は、本発明の実施形態3の変形例1に係る電気光学装置100の説明図である。
図16には、本発明の実施形態3の変形例1に係る電気光学装置100温度検出素子11近傍の平面構成を示してある。なお、本形態の基本的な構成は実施形態3と同様であるため、共通する部分は、同一の符号を付してそれらの説明を省略する。なお、
図16では、構成が分かりやすいように、温度検出素子11において、直列に電気的に接続するダイオードの数は3とし、共通電位配線8aの一部の図示を省略してある。
【0086】
図16に示すように、ダイオードDが配列している方向を第1方向Eとし、第1方向Eと直交する方向を第2方向Fとしたとき、ダイオードDを構成する半導体層31hは第1方向Eに配列され、隣り合うダイオードDは、中継部P1の電極6e1、および中継部P2の電極6e2によって電気的に接続されている。本形態において、第1方向EはY方向であり、第2方向FはX方向である。
【0087】
ここで、半導体層31hの第2方向Fにおける寸法であるパターン幅をW1とし、中継部P1の電極6e1、中継部P2の電極6e2について、第2方向Fに沿う方向の電極幅をW2としたとき、実施形態3と同様、電極幅W2は、パターン幅W1より狭い部分を有する。
W1>W2
【0088】
例えば、パターン幅W1が100μmのとき、電極幅W2を5μmとする。温度検出素子11に流れる電流値は小さいので、電極幅W2を小さくしても問題ない。従って、中継部P1の電極6e1の面積と、中継部P2の電極6e2の面積は小さくなり、中継部P1、P2と共通電位配線8aとの間の寄生容量Cbを小さくできる。それ故、プリチャージを実施した際、共通電位配線8aにスパイクノイズが発生した場合でも、温度検出回路1の出力電圧VFの変動を抑制することができる。
【0089】
また、第1方向Eにおける半導体層31hの間隔である間隔S0をルールの許す範囲で短くしてある。より具体的には、データ線駆動回路101の選択回路101aは、Nチャネル型トランジスター30n1とPチャネル型トランジスター30p1との相補型トラン
ジスターを備える。また、走査線駆動回路104のインバーター回路104aも、選択回路101aと同様、Nチャネル型トランジスター30n2とPチャネル型トランジスター30p2とを備える。ここで、回路長の短縮のために、Nチャネル型トランジスター30n1を構成する半導体層とPチャネル型トランジスター30p1を構成する半導体層との間隔S1、およびNチャネル型トランジスター30n2を構成する半導体層とPチャネル型トランジスター30p2を構成する半導体層との間隔S2はいずれも狭く設定されている。同様の処置は検査回路105でも行われ得る。このように構成すると電気光学パネル100pの表示領域10a外側の周辺回路領域を小さくできるから電気光学パネル100pを小型化できる。その結果、電気光学パネル100pを安価に製造できる。本形態では、以下に示すように、ダイオードDにおける間隔S0は、Nチャネル型トランジスター30n1とPチャネル型トランジスター30p1との間隔S1、およびNチャネル型トランジスター30n2とPチャネル型トランジスター30p2との間隔S2以下に設定されている。
S0≦S1、S2
【0090】
電気光学パネル100pの設計ルールは、間隔S1、S2、あるいはその他、互いに隣り合う異なる導電型のトランジスターの半導体層の間隔の最小値(図示せず)とみなせる。従って、その値をS3とすれば間隔S0との関係は以下のようになる。
S0≦S3
【0091】
間隔S3は、主に不純物注入マスクパターンルールによって決定される。例えば、P型領域を形成する場合には、N型領域を充分覆い、P型領域から充分離隔するようにマスクパターンを作る必要があるからである。
【0092】
従って、温度検出素子11について、電気光学パネル100pの設計ルールが許すところの間隔S0で、第1方向Eにおける半導体層31hを配置する。その結果、
図15に示す電極6e1、6e2の長さL6e1、L6e2を短くすることができる。従って、中継部P1の電極6e1の面積と、中継部P2の電極6e2の面積は小さくなり、中継部P1、P2と共通電位配線8aとの間の寄生容量Cbを小さくできる。それ故、プリチャージを実施した際、共通電位配線8aにスパイクノイズが発生した場合でも、温度検出回路1の出力電圧VFの変動を抑制することができる。
【0093】
なお、共通電位配線8aの開口部8a0については、点線L1で示すように、全てのダイオードDと共通電位配線8aが重ならないように設けてもよいし、一点鎖線L2で示すように、中継部P1、P2と重点的に共通電位配線8aが重ならないように設けてもよい。
【0094】
また、本形態では、温度検出素子11の側方では、第1方向Eに沿って延在するスタートパルスSPを供給するための信号配線6d、クロック信号CLYを供給するための信号配線6h、および出力制御信号ENBYを供給するための信号配線6fと、温度検出素子11との間でカソード配線Lcが第1方向Eに延在している。また、カソード配線Lcは、第2方向Fにおいて温度検出素子11に対して信号配線6d、6h、6fとは反対側で温度検出素子11に沿うように第1方向Eに延在している。従って、中継部P1、P2について、カソード配線Lcを交流信号配線に対するシールドに利用することができる。その際、カソード配線Lcについては、電気光学パネル100pのグランド電位GND電位配線とは別系統にすれば、カソード配線Lcはノイズが小さい定電位配線になるので効果的である。なお、カソード配線Lcを温度検出素子11の両側で第1方向Eに延在させることが好ましい。そのように構成すれば、データ線駆動回路101側と中継部P1、P2との容量結合も抑制することができるから、データ線駆動回路101が温度検出回路1の出力電圧VFに与える影響も小さくできる。
【0095】
3-2.実施形態3の変形例2
図17は、本発明の実施形態3の変形例2に係る電気光学装置100の説明図である。
図17には、本発明の実施形態3の変形例2に係る電気光学装置100の温度検出素子11近傍の平面構成を示してある。なお、本形態の基本的な構成は実施形態3と同様であるため、共通する部分は、同一の符号を付してそれらの説明を省略する。なお、
図17では、構成が分かりやすいように、温度検出素子11において、直列に電気的に接続するダイオードDの数は3としてある。
【0096】
図17に示すように、ダイオードDが配列している方向を第1方向Eとし、第1方向Eと直交する方向を第2方向Fとしたとき、ダイオードDを構成する半導体層31hは第1方向Eに配列され、隣り合うダイオードDは、中継部P1の電極6e1、および中継部P2の電極6e2によって電気的に接続されている。本形態において、第1方向EはX方向であり、第2方向FはY方向である。ここで、半導体層31hの第2方向Fにおける寸法であるパターン幅をW1とし、中継部P1の電極6e1、および中継部P2の電極6e2について、第2方向Fに沿う方向の電極幅をW2としたとき、実施形態3と同様、電極幅W2は、パターン幅W1より狭い部分を有する。
W1>W2
【0097】
従って、中継部P1に含まれる電極6e1の面積と、中継部P2に含まれる電極6e2の面積は小さくなり、中継部P1、P2と共通電位配線8aとの間の寄生容量Cbを小さくできる。それ故、プリチャージを実施した際、共通電位配線8aにスパイクノイズが発生した場合でも、温度検出回路1の出力電圧VFの変動を抑制することができる。
【0098】
また、共通電位配線8aには、温度検出素子11と平面視で重なる開口部8a0が形成されている。本形態において、開口部8a0は、共通電位配線8aの端部まで到達し、共通電位配線8aの端部では開放端になっている。このように開口部8a0は共通電位配線8aの辺に設けられた切欠き状を成してもよい。このような構成は低抵抗配線として共通電位配線8aを配置したい場合に生じる。また、温度検出素子11を構成するダイオードDの一部が、開口部8a0において共通電位配線8aの辺の延在方向から描くことのできる仮想線8a1より外側に配置されてもよい。本形態において、仮想線8a1は、例えば、
図17の破線のように描くことができる。
【0099】
また、本形態では、温度検出素子11に近接して信号配線6d、6h、6fが配置されている。信号配線6d、6h、6fにはプリチャージに伴う共通電位配線8aの電圧変動よりも電圧振幅の大きい信号が印加されている。信号の電圧振幅は、例えば、15.5Vである。本実施形態では、ダイオードDが配列されている第1方向Eと直交する第2方向Fに沿って、信号配線6d、6h、6fが延在している。このため、信号配線6d、6h、6fは、ダイオードDの中継部P1、P2に沿って延在していない。換言すれば、ダイオードDの中継部P1、P2は、平面視で信号配線6d、6h、6fと対向していない。従って、信号配線6d、6h、6fと中継部P1及びP2との寄生容量を小さくできるから、信号配線6d、6h、6fによる温度検出回路1の出力電圧VFの変動を抑制する。また、中継部P1及びP2に沿うようにシールド線を配置しなくてもよいので、温度検出素子11の配置性が良くなる。
【0100】
また、本形態では、温度検出素子11のカソード側11cにおいて、第2方向Fに沿って延在する信号配線6d、6h、6fと温度検出素子11との間でカソード配線Lcを第2方向Fに延在させてある。従って、中継部P1、P2について、カソード配線Lcを信号配線6d、6h、6fに対するシールドに利用することができる。
【0101】
4.実施形態4
図18は、本発明の実施形態4に係る電気光学装置100の奇数フレームにおけるプリチャージの説明図である。
図19は、本発明の実施形態4に係る電気光学装置100の偶数フレームにおけるプリチャージの説明図である。なお、本形態の基本的な構成は実施形態1と同様であるため、共通する部分は、同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0102】
本形態では、複数の水平走査期間には、複数のデータ線6aの一部にプリチャージ信号を供給する第1水平走査期間と、複数のデータ線6aのうち、一部と異なる他の一部のデータ線6aにプリチャージ信号を供給する第2水平走査期間とが含まれている。
【0103】
より具体的には、選択回路101aは、
図4に示すようにNチャネル型トランジスターで構成される。そして
図18に示すように、奇数フレームの第1水平走査期間Ha1では、プリチャージ期間tpにおいて、
図3に示す制御回路76は、奇数番目の選択信号SEL1、SEL3、SEL5、SEL7を選択レベルにする一方、偶数番目の選択信号SEL2、SEL4、SEL6、SEL8を非選択レベルにする。従って、奇数系列のデータ線6aにプリチャージを実施し、偶数系列のデータ線6aにプリチャージを実施しない。
【0104】
続く奇数フレームの第2水平走査期間Ha2では、プリチャージ期間tpにおいて、
図3に示す制御回路76は、奇数番目の選択信号SEL1、SEL3、SEL5、SEL7を非選択レベルにする一方、偶数番目の選択信号SEL2、SEL4、SEL6、SEL8を選択レベルにする。従って、偶数系列のデータ線6aにプリチャージを実施し、奇数系列のデータ線6aにプリチャージを実施しない。
【0105】
また、
図19に示すように、偶数フレームの第1水平走査期間Hb1では、プリチャージ期間tpにおいて、
図3に示す制御回路76は、奇数番目の選択信号SEL1、SEL3、SEL5、SEL7を非選択レベルにする一方、偶数番目の選択信号SEL2、SEL4、SEL6、SEL8を選択レベルにする。従って、偶数系列のデータ線6aにプリチャージを実施し、奇数系列のデータ線6aにプリチャージを実施しない。続く偶数フレームの第2水平走査期間Hb2では、プリチャージ期間tpにおいて、
図3に示す制御回路76は、奇数番目の選択信号SEL1、SEL3、SEL5、SEL7を選択レベルにする一方、偶数番目の選択信号SEL2、SEL4、SEL6、SEL8を非選択レベルにする。従って、奇数系列のデータ線6aにプリチャージを実施し、偶数系列のデータ線6aにプリチャージを実施しない。
【0106】
従って、1回の平走査期間において、プリチャージを実施するデータ線6aの数を減らすことができるので、共通電位配線8aでは、共通電位LCCOMに発生するノイズのピーク電圧値を低減することができる。回路モデルによる検証から定性的に考察すれば、共通電位LCCOMに生起するノイズのピーク電圧を小さくすると、温度検出回路1の出力電圧VFの変動の抑制に好ましいと言える。すなわち、1回の水平走査期間において、全てのデータ線6aにプリチャージを実施すると、
図18および
図19に破線で示すノイズのピーク電圧が共通電位LCCOMに重畳されるが、本実施形態では、1回の水平走査期間においてプリチャージを実施するデータ線6aの数を減らしたから、
図18および
図19に実線で示すノイズのピーク電圧に抑制される。それ故、プリチャージを行う場合でも、温度検出回路1の出力電圧VFの変動を抑制することができる。
【0107】
5.実施形態5
図20は、本発明の実施形態5に係る電気光学装置100のプリチャージの説明図である。なお、本形態の基本的な構成は実施形態1と同様であるため、共通する部分は、同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0108】
本形態では、複数の水平走査期間には、複数のデータ線6aの全てにプリチャージ信号を供給する第1水平走査期間と、複数のデータ線6aの全てにプリチャージ信号を供給しない第2水平走査期間とが含まれている。
【0109】
より具体的には、
図20に示すように、奇数フレームの第1水平走査期間Ha1では、全てのデータ線6aにプリチャージを実施し、続く第2水平走査期間Ha2では、全てのデータ線6aにプリチャージを実施しない。また、図示を省略するが、偶数フレームの第1水平走査期間(第1水平走査期間Ha1に相当)では、全てのデータ線6aにプリチャージを実施せず、続く第2水平走査期間(第2水平走査期間Ha2に相当)では、全てのデータ線6aにプリチャージを実施する。従って、共通電位配線8aでは、共通電位LCCOMに発生するノイズの生起頻度を低減することができる。回路モデルによる検証から定性的に考察すれば、共通電位LCCOMに生起するノイズの頻度を小さくすると、温度検出回路1の出力電圧VFの変動の抑制に好ましいと言える。すなわち、全てのデータ線6aにプリチャージを実施する第1水平走査期間では、大きなノイズが重畳されるが、全てのデータ線6aにプリチャージを実施しない第2水平走査期間では、ノイズが重畳されない。破線は全てのデータ線6aにプリチャージを実施する場合の共通電位LCCOMの変動である。共通電位LCCOMに生起するノイズの頻度が低下すれば、温度検出回路1の出力電圧VFの変動は抑制される。それ故、プリチャージを行う場合でも、温度検出回路1からの出力電圧VFの変動を抑制することができる。
【0110】
6.実施形態3、4、5の変形例
上記実施形態3、4、5では、電気光学装置100において、共通電位配線8aに開口部8a0を設けることによって温度検出素子11と共通電位配線8aとの間の寄生容量Cbを低減し、加えてプリチャージの実施方法の構成によって温度検出回路1の出力電圧VFの変動を抑制した。但し、共通電位配線8aに開口部8a0が設けられていない電気光学装置100に実施形態3、4、5に適用してもよい。すなわち、共通電位配線8aが温度検出素子11に平面視で重なっている電気光学装置100に実施形態3、4、5に適用することによって、温度検出素子11へのノイズの影響を抑制し、温度検出回路1の出力電圧VFの変動を抑制してもよい。
【0111】
7.電気光学装置の別の実施形態
実施形態1、2、3、4、5では配線として共通電位配線8aを例示したが、他の配線にも適用できる。例えば、グランド電位GND配線でも、プリチャージを実施する際に同様に大きなノイズが重畳され得ることから、温度検出素子11とグランド電位GND配線との間の寄生容量を低減するために、実施形態1、2、3、4、5の構成を適用してもよい。また、交流信号が供給される配線に本発明を適用してもよい。また、プリチャージは検査回路105をプリチャージ回路に置き換えて実施するようにしてもよい。
【0112】
また、本発明は、電気光学装置100は液晶装置に限らず、有機エレクトロルミネッセンス装置等、液晶装置以外の電気光学装置100に本発明を適用してもよい。
【0113】
8.電子機器の構成例
図21は、本発明を適用した投射型表示装置1000の構成例を示すブロック図である。
図22は、
図21に示す光路シフト素子110の説明図である。なお、
図21には、偏光板等の図示を省略してある。
図21に示す投射型表示装置1000は、本発明が適用される電子機器の一例であり、照明装置190、分離光学系170、3個の電気光学装置100R、100G、100B、および投射光学系160を備えている。電気光学装置100R、100G、100Bは各々、
図1~
図20を参照して説明した電気光学装置100からなる。
【0114】
照明装置190は白色光源であり、例えば、レーザー光源やハロゲンランプが用いられる。分離光学系170は、3個のミラー171、172、175と、ダイクロイックミラー173、174とを含む。分離光学系170は、照明装置190から射出された白色光を、赤色R、緑色G、青色Bの3原色に分離する。具体的には、ダイクロイックミラー174は、赤色Rの波長域の光を透過し、緑色Gおよび青色Bの波長域の光を反射する。ダイクロイックミラー173は、青色Bの波長域の光を透過し、緑色Gの波長域の光を反射する。赤色R、緑色G、および青色Bに対応する光は各々、電気光学装置100R、100G、100Bに導かれる。
【0115】
ダイクロイックプリズム161には、電気光学装置100R、100G、100Bによって変調された光が各々、三方向から入射する。ダイクロイックプリズム161は、赤色R、緑色G、および青色Bの画像が合成される合成光学系を構成している。従って、投射レンズ系162は、光路シフト素子110から射出された合成像をスクリーン180等の被投射部材に拡大投射し、スクリーン180等の被投射部材にカラー画像を表示することができる。
【0116】
その際、制御部150は、温度検出回路1での温度検出結果に基づいて電気光学装置100R、100G、100Bに供給する画像信号に補正を行うことができる。それ故、環境温度等が変動しても、品位の高い投射画像を表示することができる。また、ダイクロイックプリズム161において光が出射される側において、一点鎖線で示す光路シフト素子110を投射光学系160に設け、投射画素が視認される位置を所定の期間毎にシフトさせる技術によって解像度を高める構成を採用した場合、液晶層を高速駆動することが必要となる。この場合でも、温度検出回路1での温度検出結果に基づいて、電気光学装置100R、100G、100Bに供給する画像信号に補正を行う構成や、電気光学装置100R、100G、100Bの電気光学パネル100pの温度を調整する構成を採用すれば、液晶層からなる電気光学層50を高速駆動することができる。
【0117】
光路シフト素子110は、
図21に示すように、ダイクロイックプリズム161から出射された光を予め定められた方向にシフトさせる光学素子である。
図22には、電気光学パネル100pの各画素100aから出射された光が視認される投射画素Piの位置を光路シフト素子110によってX方向の一方側X1に0.5画素ピッチ(=P/2)、かつ、Y方向の一方側Y1に0.5画素ピッチ(=P/2)に相当する距離をシフトさせた様子を例示してある。光路シフト素子110は透光板を備え、アクチュエータは、制御部150の指令の下、透光板を第1方向Xに延在する軸線周り、および第2方向Yに延在する軸線周りの一方あるいは双方に揺動させることによって、電気光学パネル100pの各画素100aから出射された光の光路を光路LAと光路LBとにシフトさせる。
【0118】
9.電子機器の他の実施形態
投射型表示装置については、光源部として、各色の光を出射するLED光源等を用い、かかるLED光源から出射された色光を各々、別の液晶装置に供給するように構成してもよい。
【0119】
本発明を適用した電気光学装置100を備えた電子機器は、上記実施形態の投射型表示装置1000に限定されない。例えば、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ等の電子機器に用いてもよい。
【符号の説明】
【0120】
1…温度検出回路、3a…走査線、6a…データ線、6d、6f、6h…信号配線、6e1、6e2…電極、6g、7e…配線、7e0、9b0…導電層、8a…共通電位配線、
8a0…開口部、8a1…仮想線、8e…遮光層、9a…画素電極、9b…ダミー画素電極、10…第1基板、10a…表示領域、11…温度検出素子、11a…アノード、11c…カソード、12…静電保護回路、20…第2基板、21…共通電極、29…見切り、30…画素トランジスター、30n1、30n2…Nチャネル型トランジスター、30p1、30p2…Pチャネル型トランジスター、31a、31h…半導体層、50…電気光学層、60…上位回路、65…画像制御回路、66…温度検出用駆動回路、70…配線基板、75…駆動用IC、76…制御回路、100、100B、100G、100R…電気光学装置、100a…画素、100p…電気光学パネル、101…データ線駆動回路、101a…選択回路、102a…アノード端子、102c…カソード端子、104…走査線駆動回路、104a…インバーター回路、106…プリチャージ回路、110…光路シフト素子、160…投射光学系、161…ダイクロイックプリズム、162…投射レンズ系、180…スクリーン、190…照明装置、1000…投射型表示装置、D…ダイオード、C1…第1容量素子、C2…第2容量素子、D1…第1ダイオード、D2…第2ダイオード、D3…第3ダイオード、E…第1方向、F…第2方向、P1、P2…中継部、R1…第1抵抗素子、R2…第2抵抗素子、R3…抵抗素子、W1…パターン幅、W2…電極幅、Ca、Cb…寄生容量、Ha1、Hb1…第1水平走査期間、Ha2、Hb2…第2水平走査期間、La…アノード配線、Lc…カソード配線、Cn…接続ノード