(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
F16H 61/02 20060101AFI20250218BHJP
F16H 61/662 20060101ALI20250218BHJP
F16H 59/22 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H61/662
F16H59/22
(21)【出願番号】P 2021175983
(22)【出願日】2021-10-27
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】林 正樹
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-069849(JP,A)
【文献】特開2014-214791(JP,A)
【文献】特開昭63-028740(JP,A)
【文献】特開2021-092304(JP,A)
【文献】特開2018-080763(JP,A)
【文献】特開2010-138961(JP,A)
【文献】特開2015-174484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00-61/12
F16H 61/16-61/24
F16H 61/66-61/70
F16H 63/40-63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力源と、前記駆動力源に動力伝達可能に接続された変速機と、を備え、前記変速機は、ギヤ機構から構成される第1動力伝達経路とベルト式の無段変速機から構成される第2動力伝達経路とを並列に備え、前記第1動力伝達経路を用いたギヤ走行と、前記第2動力伝達経路を用いたベルト走行と、に切替可能に構成されている車両の、制御装置であって、
アクセルオフされたときの走行状態がギヤ走行である場合、スロットル弁のスロットル開度の算出時に適用される、アクセル開度に対するスロットル開度の関係を、予め規定されているギヤ走行用の第1の関係とし、
アクセルオフされたときの走行状態がベルト走行であって、車速が予め設定されている閾値以下の場合、スロットル開度の算出時に適用される、アクセル開度に対するスロットル開度の関係を、ギヤ走行用の前記第1の関係とする一方で、車速が前記閾値よりも大きい場合、スロットル開度の算出時に適用される、アクセル開度に対するスロットル開度の関係を、予め規定されているベルト走行用の第2の関係とする
ことを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト式の無段変速機を用いたベルト走行とギヤ機構を用いたギヤ走行とに切替可能な変速機を有する車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動力源と、ベルト式の無段変速機を用いたベルト走行とギヤ機構を用いたギヤ走行とに切替可能な変速機と、を備えた車両が知られている。特許文献1に記載の車両がそれである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来では、車両の走行状態がギヤ走行かベルト走行かに拘わらず、アクセル開度に対するスロットル開度の関係が同じとなっており、車両発進時のベルト走行領域でドライバ(運転者)が期待する駆動力を得ることが困難になっていた。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、ベルト式の無段変速機を用いたベルト走行とギヤ機構を用いたギヤ走行とに切替可能な変速機を有する車両の制御装置において、車両発進時にドライバが期待する駆動力を得ることができる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨とするところは、(a)駆動力源と、前記駆動力源に動力伝達可能に接続された変速機と、を備え、前記変速機は、ギヤ機構から構成される第1動力伝達経路とベルト式の無段変速機から構成される第2動力伝達経路とを並列に備え、前記第1動力伝達経路を用いたギヤ走行と、前記第2動力伝達経路を用いたベルト走行と、に切替可能に構成されている車両の、制御装置であって、(b)アクセルオフされたときの走行状態がギヤ走行である場合、スロットル弁のスロットル開度の算出時に適用される、アクセル開度に対するスロットル開度の関係を、予め規定されているギヤ走行用の第1の関係とし、(c)アクセルオフされたときの走行状態がベルト走行であって、車速が予め設定されている閾値以下の場合、スロットル開度の算出時に適用される、アクセル開度に対するスロットル開度の関係を、ギヤ走行用の前記第2の関係とする一方で、車速が前記閾値よりも大きい場合、スロットル開度の算出時に適用される、アクセル開度に対するスロットル開度の関係を、予め規定されているベルト走行用の第2の関係とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アクセルオフされたときの走行状態がギヤ走行である場合、および、アクセルオフされたときの走行状態がベルト走行であって車速が閾値以下の場合、スロットル開度の算出時に適用される、アクセル開度に対するスロットル開度の関係が、ギヤ走行用の第1の関係とされるため、車両発進時には、ギヤ走行用の第1の関係に基づいてスロットル開度が算出され、ドライバの所望する駆動力を得ることができる。また、アクセルオフされたときの走行状態がベルト走行であって、車速が閾値よりも大きい場合にはベルト走行用の第2の関係が適用されることで、ベルト走行に適した駆動力を得ることができる。ここで、アクセルオフされたときにアクセル開度に対するスロットル開度の関係が切り替えられるため、アクセルオンの状態ではアクセル開度に対するスロットル開度の関係が維持される。従って、アクセルオンの状態で走行中に、車両状態がギヤ走行とベルト走行との間で切り替わっても、アクセル開度に対するスロットル開度に変化が生じないため、ドライバが意図しないスロットル開度の変化に伴う車両挙動の変化が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例である車両に備えられた動力伝達装置の概略構成を説明するための骨子図である。
【
図2】各走行モード毎の係合要素の係合状態を示す係合表である。
【
図3】エンジンや無段変速機などを制御するために車両に設けられた電子制御装置の入出力系統を説明するとともに、電子制御装置による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【
図4】
図3の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートであり、例えば車両発進時においても適切な駆動力を得ることができる制御作動を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0010】
図1は、本発明の一実施例である車両10に備えられた動力伝達装置12の概略構成を説明するための骨子図である。動力伝達装置12は、例えば走行用の駆動力源として用いられるエンジン14に連結された流体式伝動装置としてのトルクコンバータ16と、前後進切替装置18と、ベルト式の無段変速機20と、ギヤ機構22と、図示しない駆動輪に動力伝達可能な出力ギヤ24が形成されている出力軸25と、を含んで構成されている。
【0011】
動力伝達装置12にあっては、エンジン14から出力される動力(駆動力、トルク)がトルクコンバータ16を経由して入力軸であるタービン軸26に入力され、この動力がタービン軸26からギヤ機構22等を経由して出力軸25に伝達される第1動力伝達経路PT1と、タービン軸26に入力された動力が無段変速機20を経由して出力軸25に伝達される第2動力伝達経路PT2とを並列に備えており、車両10の走行状態に応じて、動力伝達経路が第1動力伝達経路PT1および第2動力伝達経路PT2の何れかに切り替えられるように構成されている。動力伝達装置12は、ギヤ機構22から構成される第1動力伝達経路PT1と、ベルト式の無段変速機20から構成される第2動力伝達経路PT2と、を並列に備えた変速機27を備えている。変速機27は、トルクコンバータ16を介してエンジン14に動力伝達可能に接続されている。
【0012】
エンジン14は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関にて構成されている。トルクコンバータ16は、エンジン14のクランク軸に連結されたポンプ翼車16p、およびトルクコンバータ16の出力側部材に相当するタービン軸26を介して前後進切替装置18に連結されたタービン翼車16tを備えており、流体を介して動力伝達を行うようになっている。また、それらポンプ翼車16pおよびタービン翼車16tの間にはロックアップクラッチ28が設けられており、このロックアップクラッチ28が完全係合させられることによって、ポンプ翼車16pおよびタービン翼車16tが一体的に回転させられる。油圧制御回路や潤滑油の油圧源となるオイルポンプ17は、ポンプ翼車16pを介して、エンジン14によって駆動させられる。
【0013】
前後進切替装置18は、前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1、およびダブルピニオン型の遊星歯車装置30を主体として構成された遊星歯車式前後進切替装置である。前後進切替装置18では、ピニオン30pを回転可能に支持するキャリヤ30cがトルクコンバータ16のタービン軸26および無段変速機20の入力軸32に連結され、リングギヤ30rが後進用ブレーキB1を介して非回転部材としてのハウジング34に選択的に連結され、サンギヤ30sが小径ギヤ36に連結されている。また、サンギヤ30sとキャリヤ30cとが、前進用クラッチC1を介して選択的に連結される。前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は断接装置に相当するもので、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。
【0014】
また、遊星歯車装置30のサンギヤ30sは、ギヤ機構22を構成する小径ギヤ36に連結されている。ギヤ機構22は、小径ギヤ36と、カウンタ軸38に相対回転不能に設けられている大径ギヤ40とを、含んで構成されている。カウンタ軸38と同じ回転軸線まわりには、アイドラギヤ42がカウンタ軸38に対して相対回転可能に設けられている。また、カウンタ軸38とアイドラギヤ42との間には、これらを選択的に断接する噛合クラッチD1が設けられている。
【0015】
噛合クラッチD1は、カウンタ軸38に形成されている第1ギヤ48と、カウンタ軸38に相対回転可能に嵌合する第2ギヤ50と、第1ギヤ48のスプライン歯に常時噛み合うとともに、カウンタ軸38の軸方向に移動させられることで第2ギヤ50のスプライン歯に噛合可能なスプライン歯が形成されているハブスリーブ51と、第1ギヤ48の回転速度と第2ギヤ50の回転速度とを同期させる同期機構53と、を備えている。なお、同期機構53は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。ハブスリーブ51は、油圧アクチュエータ60によってカウンタ軸38の軸方向に移動させられる。
【0016】
アイドラギヤ42は、そのアイドラギヤ42よりも大径の入力ギヤ52と噛み合っている。入力ギヤ52は、無段変速機20の後述するセカンダリプーリの回転軸線と同じ回転軸線上に配置されている出力軸25に相対回転不能に固定されている。出力軸25は、セカンダリプーリの回転軸線と同じ回転軸線を中心にして回転可能に配置されている。出力軸25には、入力ギヤ52および出力ギヤ24が相対回転不能に設けられている。
【0017】
また、無段変速機20と出力軸25との間には、これらの間を選択的に断接するベルト走行用クラッチC2が介挿されており、このベルト走行用クラッチC2が係合されることで、エンジン14の動力(駆動力、トルク)が入力軸32および無段変速機20を経由して出力軸25に伝達される第2動力伝達経路PT2が形成される。一方、ベルト走行用クラッチC2が解放されると、第2動力伝達経路PT2が遮断され、無段変速機20を経由して出力軸25に動力が伝達されなくなる。
【0018】
無段変速機20は、タービン軸26に連結された入力軸32と出力軸25との間の動力伝達経路上に設けられ、入力軸32に設けられた入力側部材である有効径が可変のプライマリプーリ54(可変プーリ54)と、出力側部材である有効径が可変のセカンダリプーリ56(可変プーリ56)と、その一対の可変プーリ54、56の間に巻き掛けられた伝動ベルト58とを備えており、一対の可変プーリ54、56と伝動ベルト58との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。
【0019】
プライマリプーリ54は、入力軸32に固定された入力側固定回転体としての固定シーブ54aと、入力軸32に対して相対回転不能かつ軸方向の相対移動可能に設けられた入力側可動回転体としての可動シーブ54bと、それらの間のV溝幅を変更するために可動シーブ54bを移動させるための推力を発生させるプライマリ側油圧アクチュエータ54cとを、備えて構成されている。また、セカンダリプーリ56は、出力側固定回転体としての固定シーブ56aと、固定シーブ56aに対して相対回転不能かつ軸方向の相対移動可能に設けられた出力側可動回転体としての可動シーブ56bと、それらの間のV溝幅を変更するために可動シーブ56bを移動させるための推力を発生させるセカンダリ側油圧アクチュエータ56cとを備えて構成されている。
【0020】
一対の可変プーリ54,56のV溝幅が変化して伝動ベルト58の掛かり径(有効径)が変更されることで、変速比(ギヤ比)γ(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout)が連続的に変更させられる。例えば、プライマリプーリ54のV溝幅が狭くされると、変速比γが小さくされる。すなわち、無段変速機20がアップシフトされる。また、プライマリプーリ54のV溝幅が広くされると、変速比γが大きくされる。すなわち、無段変速機20がダウンシフトされる。
【0021】
以下、上記のように構成される動力伝達装置12の作動について、
図2に示す各走行モード毎の係合要素の係合表を用いて説明する。動力伝達装置12を構成する変速機27では、第1動力伝達経路PT1を経由して動力(駆動力、トルク)が伝達される
図2のギヤ走行モードと、第2動力伝達経路PT2を経由して動力が伝達される
図2のベルト走行モードと、に切替可能に構成されている。
図2において、C1が前進用クラッチC1の作動状態に対応し、C2がベルト走行用クラッチC2の作動状態に対応し、B1が後進用ブレーキB1の作動状態に対応し、D1が噛合クラッチD1の作動状態に対応し、「○」が係合(接続)を示し、「×」が解放(遮断)を示している。
【0022】
先ず、ギヤ機構22を経由してエンジン14の動力(駆動力、トルク)が出力ギヤ24に伝達される走行モード、すなわち第1動力伝達経路PT1を経由して動力が伝達される走行モードについて説明する。この走行モードが
図2のギヤ走行モードに対応し、
図2に示すように、前進用クラッチC1および噛合クラッチD1が係合(接続)される一方、ベルト走行用クラッチC2および後進用ブレーキB1が解放(遮断)される。
【0023】
前進用クラッチC1が係合されることで、前後進切替装置18を構成する遊星歯車装置30が一体回転させられるので、小径ギヤ36がタービン軸26と同回転速度で回転させられる。また、小径ギヤ36は、カウンタ軸38に設けられている大径ギヤ40と噛み合わされているので、カウンタ軸38が回転させられる。さらに、噛合クラッチD1が係合されているので、カウンタ軸38とアイドラギヤ42とが接続され、このアイドラギヤ42が入力ギヤ52と噛み合わされているので、入力ギヤ52と一体的に設けられている出力軸25および出力ギヤ24が回転させられる。このように、第1動力伝達経路PT1に設けられている前進用クラッチC1および噛合クラッチD1が係合されることで、エンジン14の動力が、トルクコンバータ16、タービン軸26、前後進切替装置18、ギヤ機構22、カウンタ軸38、アイドラギヤ42、入力ギヤ52、出力軸25を経由して出力ギヤ24に伝達される。
【0024】
次いで、無段変速機20を経由してエンジン14の動力(駆動力、トルク)が出力ギヤ24に伝達される走行モードについて説明する。この走行モードが
図2のベルト走行モード(高車速)に対応し、
図2のベルト走行モードに示すように、ベルト走行用クラッチC2が接続される一方、前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1、および噛合クラッチD1が遮断される。ベルト走行用クラッチC2が接続されることで、セカンダリプーリ56と出力軸25とが接続されるので、セカンダリプーリ56と出力軸25および出力ギヤ24とが一体回転させられる。従って、ベルト走行用クラッチC2が接続されることで、第2動力伝達経路PT2が形成され、エンジン14の動力が、トルクコンバータ16、タービン軸26、入力軸32、無段変速機20、および出力軸25を経由して出力ギヤ24に伝達される。このとき、第2動力伝達経路PT2を経由してエンジン14の動力が伝達されるベルト走行モード(高車速)中に噛合クラッチD1が解放(遮断)されるのは、ベルト走行モード(高車速)で走行中におけるギヤ機構22等の引き摺りをなくすとともに、高車速においてギヤ機構22等が高回転化するのを防止するためである。
【0025】
ギヤ走行モードは、低車速領域において選択される。第1動力伝達経路PT1における変速比γg(入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout)は、無段変速機20の最大変速比γmaxよりも大きい値に設定されている。すなわち、変速比γgは、無段変速機20では設定されていない値に設定されている。そして、例えば車速Vが上昇するなどしてベルト走行モードに切り替える判定が為されると、走行モードが前記ベルト走行モードに切り替えられる。ここで、ギヤ走行モードからベルト走行モード(高車速)、またはベルト走行モード(高車速)からギヤ走行モードへ切り替える過渡期には、
図2のベルト走行モード(中車速)を過渡的に経由して切り替えられる。
【0026】
例えばギヤ走行モードからベルト走行モード(高車速)に切り替えられる場合、ギヤ走行に対応する前進用クラッチC1および噛合クラッチD1が係合された状態から、ベルト走行用クラッチC2および噛合クラッチD1が係合された状態に過渡的に切り替えられる。すなわち、前進用クラッチC1およびベルト走行用クラッチC2の掛け替えが開始される。このとき、動力伝達経路が第1動力伝達経路PT1から第2動力伝達経路PT2に変更され、動力伝達装置12においては実質的にアップシフトさせられる。そして、動力伝達経路が切り替えられた後、不要な引き摺りやギヤ機構22等の高回転化を防止するために噛合クラッチD1が解放(遮断)される(被駆動入力遮断)。
【0027】
また、ベルト走行モード(高車速)からギヤ走行モードに切り替えられる場合、ベルト走行用クラッチC2が係合された状態から、ギヤ走行モードへの切替準備として噛合クラッチD1が係合される状態に過渡的に切り替えられる(ダウンシフト準備)。このとき、ギヤ機構22を経由して遊星歯車装置30のサンギヤ30sにも回転が伝達された状態となり、この状態から前進用クラッチC1およびベルト走行用クラッチC2の掛け替え(前進用クラッチC1の係合、ベルト走行用クラッチC2の解放)が実行されることで、動力伝達経路が第2動力伝達経路PT2から第1動力伝達経路PT1に切り替えられる。このとき、動力伝達装置12にあっては実質的にダウンシフトさせられる。
【0028】
図3は、エンジン14や無段変速機20などを制御するために車両10に設けられた電子制御装置80(制御装置)の入出力系統を説明するとともに、電子制御装置80による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。電子制御装置80は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置80は、エンジン14の出力制御、無段変速機20の変速制御やベルト挟圧力制御、走行モードをギヤ機構22によるギヤ走行モードおよび無段変速機20によるベルト走行モードの何れかに適宜切り替える制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用、無段変速機制御用、走行モード切替用等に分けて構成される。
【0029】
電子制御装置80には、エンジン回転速度センサ82により検出されたクランク軸の回転角度(位置)Acrおよびエンジン14の回転速度(エンジン回転速度)Neを表す信号、タービン回転速度センサ84により検出されたタービン軸26の回転速度(タービン回転速度)Ntを表す信号、入力軸回転速度センサ86により検出された無段変速機20の入力軸32(プライマリプーリ54)の回転速度である入力軸回転速度Ninを表す信号、出力軸回転速度センサ88により検出された車速Vに対応する無段変速機20のセカンダリプーリ56の回転速度である出力軸回転速度Noutを表す信号、アクセル開度センサ90により検出された運転者の加速要求量としてのアクセルペダル89の操作量であるアクセル開度θaccを表す信号、スロットル開度センサ92により検出された電子スロットル弁91のスロットル開度θthを表す信号、フットブレーキスイッチ94により検出された常用ブレーキであるフットブレーキが操作された状態を示すブレーキオンBonを表す信号、レバーポジションセンサ96により検出されたシフトレバーのレバーポジション(操作位置)Pshを表す信号、ストロークセンサ98により検出されたハブスリーブ51のストローク量Lstを表す信号、油温センサ100によって検出された動力伝達装置12内の作動油の油温Toilを表す信号、カウンタ軸回転速度センサ102によって検出された噛合クラッチD1の上流側の回転部材に対応するハブスリーブ51の回転速度Nscinに対応するカウンタ軸38の回転速度Ncoutを表す信号等が、それぞれ供給される。また、電子制御装置80は、例えば出力軸回転速度Noutと入力軸回転速度Ninとに基づいて無段変速機20の変速比γ(=Nin/Nout)を随時算出する。
【0030】
また、電子制御装置80からは、エンジン14の出力制御のためのエンジン出力制御指令信号Se、無段変速機20の変速に関する油圧制御のための油圧制御指令信号Scvt、動力伝達装置12の走行モード(走行状態)の切替に関連する前後進切替装置18(前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1)、ベルト走行用クラッチC2、および噛合クラッチD1を制御するための油圧制御指令信号Sswt等が、それぞれ出力される。
【0031】
具体的には、上記エンジン出力制御指令信号Seとして、スロットルアクチュエータを駆動して電子スロットル弁91の開閉を制御するためのスロットル信号や燃料噴射装置から噴射される燃料の量を制御するための噴射信号や点火装置によるエンジン14の点火時期を制御するための点火時期信号などが出力される。また、上記油圧制御指令信号Scvtとして、プライマリ側油圧アクチュエータ54cに供給されるプライマリ圧Pinを調圧する図示しないリニアソレノイド弁を駆動するための指令信号、セカンダリ側油圧アクチュエータ56cに供給されるセカンダリ圧Poutを調圧する図示しないリニアソレノイド弁を駆動するための指令信号などが油圧制御回路104へ出力される。さらに、油圧制御指令信号Sswtとして、前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1、ベルト走行用クラッチC2、および噛合クラッチD1を制御する各油圧アクチュエータに供給される作動油の油圧を制御する各リニアソレノイド弁を駆動するための指令信号などが油圧制御回路104へ出力される。
【0032】
次に、電子制御装置80の制御機能の要部について説明する。
図3に示すエンジン出力制御手段として機能するエンジン出力制御部120は、例えばエンジン14の出力制御のためにスロットル信号や噴射信号や点火時期信号などのエンジン出力制御指令信号Seをそれぞれスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置へ出力する。エンジン出力制御部120は、例えばアクセル開度θaccおよび車速Vに基づいて算出される要求駆動力(駆動トルク)が得られるための目標エンジントルクTe*を設定し、その目標エンジントルクTe*が得られるようにスロットルアクチュエータにより電子スロットル弁91を開閉制御する他、燃料噴射装置により燃料噴射量を制御したり、点火装置により点火時期を制御する。
【0033】
変速制御手段として機能する変速制御部122は、例えばベルト走行モードで走行中の場合、アクセル開度θacc、車速V、ブレーキオンBonなどに基づいて算出される目標変速比γ*となるように無段変速機20の変速比γを制御する。具体的には、変速制御部122は、無段変速機20のベルト滑りが発生しないようにしつつ、エンジン14が燃費最適となる動作点で動作させられる無段変速機20の目標変速比γ*を達成するように、プライマリ圧Pinの指令値(目標プライマリ圧Pin*)としてのプライマリ指示圧Pintgtとセカンダリ圧Poutの指令値(目標セカンダリ圧Pout*)としてのセカンダリ指示圧Pouttgtとを決定し、プライマリ指示圧Pintgtおよびセカンダリ指示圧Pouttgtを油圧制御回路104へ出力する。
【0034】
また、変速制御部122は、ギヤ走行モードとベルト走行モードとを切り替える切替制御を実行する。変速制御部122は、例えばギヤ走行モードおよびベルト走行モードの走行領域を規定する図示しないモードマップを記憶しており、このモードマップに基づいて走行モードの切替を判定する。モードマップは、例えば車速Vに対応する出力軸回転速度Noutおよびスロットル開度θth(またはアクセル開度θacc)から構成されている。変速制御部122は、車両の走行モード(走行状態)が、モードマップにおけるギヤ走行モードとベルト走行モードとの境界線を跨いた場合には、走行モードを切り替えるものと判定する。なお、モードマップでは、低車速域においてギヤ走行モードに切り替えられ、中高車速域においてベルト走行モードに切り替えられるように設定されている。
【0035】
変速制御部122は、例えばギヤ走行モードで走行中にベルト走行モードへの切替を判定すると、前進用クラッチC1を解放しつつベルト走行用クラッチC2を係合するクラッチツウクラッチ変速を実行する。これにより、動力伝達装置12における動力伝達経路が、第1動力伝達経路PT1から第2動力伝達経路PT2に切り替えられることで、走行モードがギヤ走行モードからベルト走行モード(中車速)に切り替えられる。また、変速制御部122は、ベルト走行モード(中車速)に切り替えられると、油圧アクチュエータ60による噛合クラッチD1の解放作動を行う指令を油圧制御回路104へ出力する。これにより、噛合クラッチD1が解放されることで、走行モードがベルト走行モード(中車速)からベルト走行モード(高車速)に切り替えられる。
【0036】
また、変速制御部122は、ベルト走行モード(高車速)で走行中にギヤ走行モードへの切替を判定すると、先ず、噛合クラッチD1の係合作動を行う指令を油圧制御回路104へ出力する。これにより、走行モードが、ベルト走行モード(高車速)からベルト走行モード(中車速)に過渡的に切り替えられる。次いで、変速制御部122は、ベルト走行用クラッチC2を解放しつつ前進用クラッチC1を係合するクラッチツウクラッチ変速を実行する。これにより、動力伝達装置12における動力伝達経路が、第2動力伝達経路PT2から第1動力伝達経路PT1に切り替えられる。
【0037】
また、変速制御部122は、車両停止中において、ギヤ走行モードでの車両発進に備えて、油圧アクチュエータ60を駆動させて噛合クラッチD1の係合作動を行う指令を油圧制御回路104へ出力する。その後、シフト操作位置が、前進走行ポジションであるDポジションまたは後進走行ポジションであるRポジションに運転者によって切り替えられると、変速制御部122は、前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1を係合する指令を油圧制御回路104に出力する。
【0038】
上述したように、動力伝達装置12では、車両発進時および低車速域でギヤ走行モードに切り替えられ、中高車速域でベルト走行モードに切り替えられるように構成されている。ところで、ドライバのアクセルペダル89の操作量であるアクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が予め規定されており、アクセル開度θaccに応じてスロットル開度θthが随時調整される。前記アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係は、例えば予め規定されているアクセル開度θaccおよびスロットル開度θthからなる関係マップ、または、アクセル開度θaccを変数とするスロットル開度θthを決定する関係式で規定されている。ここで、ギヤ走行モードとベルト走行モードとでは、実現できるトルク領域が異なるため、ドライバ(運転者)のアクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が、ギヤ走行モード用とベルト走行モード用とで異なることが望ましい。
【0039】
しかしながら、ドライバによるアクセル操作(アクセルペダル89の踏み増し、アクセルペダル89の踏み戻し)なしに走行モードが切り替えられたとき、走行モードの切替に併せてアクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が切り替えられると、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthが変化することで車両挙動が変化し、ドライバが違和感を感じる虞がある。
【0040】
具体例として、ドライバによるアクセル開度θaccが30%であるとき、ギヤ走行モード用の関係ではスロットル開度θthが30%に設定され、ベルト走行モード用の関係ではスロットル開度θthが40%に設定されている場合について説明する。以下、ギヤ走行モード用の関係を第1の関係と定義し、ベルト走行モード用の関係を第2の関係と定義する。このように設定されている場合において、アクセル開度θaccが30%で走行中にギヤ走行モードからベルト走行モードへの切替が行われると、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が第1の関係から第2の関係に切り替えられ、スロットル開度θthが30%から40%に変化する。このとき、ドライバにとってはアクセル操作なしにスロットル開度θthが30%から40%に切り替わることによる車両挙動を感じるため、ドライバは違和感を感じてしまう。
【0041】
また、走行モードの切替に併せてアクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が切り替えられると、ギヤ走行モードとベルト走行モードとの間で切替が繰り返されるハンチングが発生する虞がある。
【0042】
具体例として、ドライバのアクセル開度θaccが30%であるとき、ギヤ走行モード用の第1の関係ではスロットル開度θthが50%に設定され、ベルト走行モード用の第2の関係ではスロットル開度θthが70%に設定されている場合について説明する。このように設定されている場合において、アクセル開度θaccが50%で走行中に、ギヤ走行モードからベルト走行モードへの車速の判定閾値を跨いだとき、ギヤ走行モードからベルト走行モードへの切替に併せて、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が第1の関係から第2の関係に切り替えられ、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthが、50%から70%に変化する。このとき、スロットル開度θthの増加に伴ってギヤ走行モードへの切替が判断され、ギヤ走行モードに切り替えられる。さらに、スロットル開度θthが50%に戻されることで、再度ベルト走行モードへの切替が判断される。その結果、ギヤ走行モードとベルト走行モードとの間で切替が繰り返されるハンチングが発生する。
【0043】
上記のように、走行モード(車両状態)に応じてアクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が切り替えられると、走行モードの切替に伴うスロットル開度θthの変化による車両挙動の変化、および、ギヤ走行モードとベルト走行モードとの間で切替が繰り返されるハンチングが発生する虞があるため、走行モードに応じてアクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係を切り替えることは困難となっていた。その結果、車両10の発進時には、ギヤ走行による車両10の飛び出し感が抑えられるように、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係を設定する必要が生じ、ベルト走行モードに切り替わったときにドライバの所望する駆動力(すなわちスロットル開度θth)が実現できなかった。
【0044】
これに対して、エンジン出力制御部120は、車両10の走行モードおよび車速Vに応じて、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係を切り替えるスロットル開度制御手段としてのスロットル開度制御部124を機能的に備えている。なお、前記アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が関係マップで規定される場合には、関係マップがギヤ走行モード用とベルト走行モード用とで別個に規定され、前記関係が切り替えられる場合には、ギヤ走行モード用の関係マップとベルト走行モード用の関係マップとの間で関係マップが変更される。また、前記アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が関係式で規定される場合には、スロットル開度θthを算出する関係式の定数の値がギヤ走行モードとベルト走行モードとで異なっており、前記関係が切り替えられる場合には、関係式の定数の値が、ギヤ走行用の定数とベルト走行用の定数との間で変更される。
【0045】
スロットル開度制御部124は、現在のアクセル開度θaccがゼロすなわちアクセルペダル89の踏込が解除されたアクセルオフの状態であるか否かを判定する。なお、アクセルオフの状態を判断するアクセル開度θaccの閾値は、厳密にゼロに限定されず、アクセルオフの状態と判断できる微小な値に設定されても構わない。
【0046】
スロットル開度制御部124は、アクセル開度θaccがゼロよりも大きい場合、すなわちアクセルペダル89が踏まれたアクセルオンの状態であると判定した場合、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係を切り替えることなく維持する。
【0047】
例えば、スロットル開度制御部124は、アクセル開度θaccがゼロよりも大きい場合であって、且つ、現在のアクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が、予め規定されているギヤ走行モード用の第1の関係であった場合には、車両10の走行モードに拘わらず、前記第1の関係を維持する。すなわち、スロットル開度制御部124は、ギヤ走行モード用の第1の関係に基づいてスロットル開度θthを算出する。また、スロットル開度制御部124は、アクセル開度θaccがゼロよりも大きい場合であって、且つ、現在のアクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が、予め規定されているベルト走行モード用の第2の関係であった場合には、車両10の走行モードに拘わらず、前記第2の関係を維持する。すなわち、スロットル開度制御部124は、ベルト走行モード用の第2の関係に基づいてスロットル開度θthを算出する。
【0048】
このようにアクセル開度θaccがゼロよりも大きい場合には、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が切り替わらないため、走行中に走行モードの切替が実行された場合であっても、スロットル開度θthが変化することがなくなる。従って、ドライバの運転中にスロットル開度θthの変化に伴う車両挙動が生じないため、ドライバに違和感を与えることがない。また、スロットル開度θthの変化に伴うハンチングも生じない。
【0049】
一方、スロットル開度制御部124は、アクセル開度θaccがゼロであった場合、現在の走行モード(走行状態)がギヤ走行モードであるか否かを判定する。スロットル開度制御部124は、アクセルオフされたときの走行モード(走行状態)がギヤ走行モードであった場合には、スロットル開度θthの算出時に適用される、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係をギヤ走行モード用の第1の関係とする。すなわち、アクセルオフされたときの走行モードがギヤ走行モードであった場合、ギヤ走行用の第1の関係に基づいてスロットル開度θthが算出される。ここで、ギヤ走行モード用の第1の関係では、車両発進時においてギヤ走行による車両10の飛び出し感が抑えられるように、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が設定されている。従って、車両発進時にギヤ走行モード用の第1の関係が適用されると、車両10の飛び出し感が抑制される。
【0050】
また、スロットル開度制御部124は、アクセル開度θaccがゼロであった場合であって、且つ、現在の走行モード(走行状態)がベルト走行モードであった場合、現時点の車速Vが予め設定されている閾値αよりも大きいか否かを判定する。スロットル開度制御部124は、アクセルオフされたときの走行モードがベルト走行モードであって、車速Vが閾値α以下の場合、スロットル開度θthの算出用に適用される、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係をギヤ走行モード用の第1の関係とする。すなわち、ベルト走行モードで走行中にアクセルオフされたときの車速Vが閾値α以下の場合、ギヤ走行モード用の第1の関係に基づいてスロットル開度θthが算出される。ここで、前記閾値αは、予め実験的または設計的に求められ、例えばベルト走行モードで走行できる車速Vの下限閾値など極低車速の値に設定されている。
【0051】
これより、車速Vが閾値α以下であったとき、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係がベルト走行用の第2の関係であった場合には、ギヤ走行用の第1の関係に切り替えられる。例えば、車両10を停止させるためにアクセルペダル89の踏込が解除された場合には、車両10が停止する直前において、車速Vが閾値α以下になるため、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が第1の関係に確実に切り替えられる。従って、車両停止後の車両発進時にアクセルペダル89が踏み込まれたときには、第1の関係に基づいてスロットル開度θthが算出されるため、適切な駆動力を得ることができる。
【0052】
また、スロットル開度制御部124は、アクセルオフされたときの走行モードがベルト走行モードであって、車速Vが閾値αよりも大きい場合、スロットル開度θthの算出時に適用される、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係をベルト走行用の第2の関係とする。すなわち、ベルト走行モードで走行中にアクセルオフされたときの車速Vが閾値αよりも大きい場合、ベルト走行モード用の第2の関係に基づいてスロットル開度θthが算出される。ここで、ベルト走行モード用の第2の関係は、ベルト走行モードで走行される領域に応じた適切な駆動力が得られるように、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が設定されている。従って、ベルト走行モードが実行される中高車速領域において、アクセルペダル89の踏込が解除された場合には、ベルト走行モード用の第2の関係に切り替えられ、ベルト走行モード用の第2の関係に基づいて、ドライバの所望する駆動力を得ることができる。
【0053】
図4は、電子制御装置80の制御作動の要部を説明するフローチャートであり、例えば車両発進時においても適切な駆動力を得ることができる制御作動を説明するフローチャートである。このフローチャートは、車両10の運転中において繰り返し実行される。
【0054】
先ず、示すスロットル開度制御部124の制御機能に対応するステップ(以下、ステップを省略)S10では、アクセル開度θaccがゼロか否かに基づいてアクセルオフの状態であるか否かが判定される。S10の判定が否定された場合、スロットル開度制御部124の制御機能に対応するS60において、前回適用されたアクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係に基づいて、スロットル開度θthが算出される。従って、アクセル開度θaccがゼロよりも大きいアクセルオンの状態では、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が切り替わらないため、走行モードの切替に伴ってスロットル開度θthが変化することがなくなり、アクセル操作(アクセルペダル89の踏み増し、アクセルペダル89の踏み戻し)されないにも拘わらず、走行モードの切替に伴ってスロットル開度θthが変化することによる車両挙動の変化が生じない。
【0055】
S10の判定が肯定された場合、スロットル開度制御部124の制御機能に対応するS20において、現在の走行モードがギヤ走行モードであるか否かが判定される。S20の判定が肯定された場合、スロットル開度制御部124の制御機能に対応するS40において、ギヤ走行モード用の第1の関係に基づいて、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthが算出される。
【0056】
S20の判定が否定された場合、スロットル開度制御部124の制御機能に対応するS30において、車速Vが低車速域であるか否か、具体的には、車速Vが閾値α以下であるか否かが判定される。S30の判定が肯定された場合、S40において、ギヤ走行モード用の第1の関係に基づいて、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthが算出される。従って、車両10を停車させるための減速中に車速Vが閾値α以下になると、確実にギヤ走行用の第1の関係に切り替えられる。その結果、車両発進時にはギヤ走行モード用の第1の関係に基づいてアクセル開度θaccに対するスロットル開度θthが算出されるため、車両発進時にドライバの所望する駆動力を得ることができる。
【0057】
一方、S30の判定が否定された場合、スロットル開度制御部124の制御機能に対応するS50において、ベルト走行モード用の第2の関係に基づいて、アクセル開度θaccに対するスロットル開度が算出される。ここで、ベルト走行モード用の第2の関係は、ベルト走行モードに適した関係となっているため、アクセルオフされたときにベルト走行モード用の第2の関係に切り替わることで、ベルト走行モードで走行中にドライバの所望する駆動力を得ることができる。
【0058】
上述のように、本実施例によれば、アクセルオフされたときの走行状態がギヤ走行モードである場合、および、アクセルオフされたときの走行状態がベルト走行モードであって車速Vが閾値α以下の場合、スロットル開度θthの算出時に適用される、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が、ギヤ走行用の第1の関係とされるため、車両発進時には、ギヤ走行用の第1の関係に基づいてスロットル開度θthが算出され、ドライバの所望する駆動力を得ることができる。また、アクセルオフされたときの走行状態がベルト走行モードであって、車速Vが閾値αよりも大きい場合にはベルト走行用の第2の関係が適用されることで、ベルト走行モードに適した駆動力を得ることができる。ここで、アクセルオフされたときにアクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が切り替えられるため、アクセルオンの状態ではアクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの関係が維持される。従って、アクセルオンの状態で走行中に、車両状態がギヤ走行モードとベルト走行モードとの間で切り替わっても、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthに変化が生じないため、ドライバが意図しないスロットル開度θthの変化に伴う車両挙動の変化が防止される。
【0059】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0060】
例えば、前述の実施例では、駆動力源として内燃機関であるエンジン14が使用されていたが、駆動力源として電動機を使用されていても構わない。
【0061】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
10:車両
14:エンジン(駆動力源)
20:ベルト式の無段変速機
22:ギヤ機構
27:変速機
80:電子制御装置(制御装置)
91:電子スロットル弁(スロットル弁)
θacc:アクセル開度
θth:スロットル開度