(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】ナビゲーション装置
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20250218BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20250218BHJP
B60L 50/70 20190101ALI20250218BHJP
B60L 58/30 20190101ALI20250218BHJP
【FI】
G01C21/34
B60L15/20 J
B60L50/70
B60L58/30
(21)【出願番号】P 2021195920
(22)【出願日】2021-12-02
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】美才治 悠樹
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-085266(JP,A)
【文献】特開2014-163742(JP,A)
【文献】特開2016-196256(JP,A)
【文献】特開2014-032460(JP,A)
【文献】特開2017-118786(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0345976(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
B60L 15/20
B60L 50/70
B60L 58/30
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを燃料ガスとして用いる燃料電池を有する燃料電池車両に搭載されて用いられ、当該燃料電池車両の経路案内を実行するナビゲーション装置であって、
現在水素量A、及び、目的地までに消費が予想される水素消費量Xを取得する取得部と、
現在地から前記目的地までの経路の周辺に存在する第1水素ステーション、及び、前記目的地から最寄りの第2水素ステーションを特定する特定部と、
目的地到着時の予想水素残量B(B=A-X)、及び、目的地到着時に必要な必要水素量Cを算出する算出部と、
経路設定部と、を有し、
前記経路設定部は、前記予想水素残量Bが、前記必要水素量Cよりも小さい(B<C)場合に、前記現在地から前記目的地までの経路を、前記第1水素ステーションを経由する経路に経路変更
し、
前記必要水素量Cは、前記目的地から前記第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量Fであり、
前記取得部は、前記目的地で使用する予定水素使用量Dを取得し、
前記経路設定部は、前記目的地から前記第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量Fと、前記予定水素使用量Dを残すように、経路探索を行い、
前記経路設定部は、前記目的地設定時に所定の場所を設定した場合に、前記目的地での水素使用要否を確認するコマンドを出すことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記予定水素使用量Dは、ユーザー入力値又は目的地属性から統計的に算出される値である、請求項
1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記経路設定部は、前記目的地での水素使用中に、前記目的地から前記第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量Fを下回る恐れが生じた場合にアラームを出す、請求項
1又は2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記予定水素使用量Dが、前記目的地属性から統計的に算出される値である場合、前記取得部は、前記目的地で実際に消費された水素消費量Eと、当該予定水素使用量Dとを比較して誤差を算出し、当該誤差のデータを蓄積し、当該誤差に応じて当該予定水素使用量Dを補正する、請求項
1~3のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記経路設定部は、前記経路変更において、2以上の前記第1水素ステーションの内、前記現在地から水素ステーションを経由して前記目的地に到達するまでに消費が予想される水素消費量Yが最小となる水素ステーションを選択する、請求項1~
4のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(FC)は、1つの単セル(以下、セルと記載する場合がある)又は複数の単セルを積層した燃料電池スタック(以下、単にスタックと記載する場合がある)で構成され、水素等の燃料ガスと酸素等の酸化剤ガスとの電気化学反応によって電気エネルギーを取り出す発電装置である。
なお、以下では、燃料ガスや酸化剤ガスを、特に区別することなく単に「反応ガス」あるいは「ガス」と呼ぶ場合もある。また、単セル、及び、単セルを積層した燃料電池スタックのいずれも、燃料電池と呼ぶ場合がある。
【0003】
燃料電池車両(FCEV:以下車両と記載する場合がある)に搭載されて用いられる装置に関して種々の研究がなされている。
例えば特許文献1では、走行可能距離の範囲内に存在する水素ステーション(ST)を特定、走行可能距離と目的地までの距離を比較し、目的値までの距離が走行可能距離よりも長い場合には水素STを経由する経路へ変更する構成を有する燃料電池車両が開示されている。
【0004】
特許文献2では、目的地に到着した際のバッテリの残り電力量を推定し、指定電力量に最も近くなる経路を推奨経路として決定する経路探索装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-110547号公報
【文献】国際公開第2013/172157号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料電池車両では、目的地へ到着はできるものの、目的地到着時に水素燃料を使い切ってしまい、目的地到着後に水素残量が不足する虞がある。燃料電池車両では、目的地から最寄りの水素ステーションまでの水素量を残しておきたいというニーズ、及び、キャンプ場等で燃料電池車両を発電機として利用したいというニーズ等がある。
できる。
【0007】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、目的地到着後の水素残量不足の発生を抑制することができるナビゲーション装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のナビゲーション装置は、水素ガスを燃料ガスとして用いる燃料電池を有する燃料電池車両に搭載されて用いられ、当該燃料電池車両の経路案内を実行するナビゲーション装置であって、
現在水素量A、及び、目的地までに消費が予想される水素消費量Xを取得する取得部と、
現在地から前記目的地までの経路の周辺に存在する第1水素ステーション、及び、前記目的地から最寄りの第2水素ステーションを特定する特定部と、
目的地到着時の予想水素残量B(B=A-X)、及び、目的地到着時に必要な必要水素量Cを算出する算出部と、
経路設定部と、を有し、
前記経路設定部は、前記予想水素残量Bが、前記必要水素量Cよりも小さい(B<C)場合に、前記現在地から前記目的地までの経路を、前記第1水素ステーションを経由する経路に経路変更することを特徴とする。
【0009】
本開示のナビゲーション装置においては、前記必要水素量Cは、前記目的地から前記第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量Fであってもよい。
【0010】
本開示のナビゲーション装置においては、前記取得部は、前記目的地で使用する予定水素使用量Dを取得し、
前記経路設定部は、前記目的地から前記第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量Fと、前記予定水素使用量Dを残すように、経路探索を行ってもよい。
【0011】
本開示のナビゲーション装置においては、前記予定水素使用量Dは、ユーザー入力値又は目的地属性から統計的に算出される値であってもよい。
【0012】
本開示のナビゲーション装置においては、前記経路設定部は、前記目的地設定時に所定の場所を設定した場合に、前記目的地での水素使用要否を確認するコマンドを出してもよい。
【0013】
本開示のナビゲーション装置においては、前記経路設定部は、前記目的地での水素使用中に、前記目的地から前記第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量Fを下回る恐れが生じた場合にアラームを出してもよい。
【0014】
本開示のナビゲーション装置においては、前記予定水素使用量Dが、前記目的地属性から統計的に算出される値である場合、前記取得部は、前記目的地で実際に消費された水素消費量Eと、当該予定水素使用量Dとを比較して誤差を算出し、当該誤差のデータを蓄積し、当該誤差に応じて当該予定水素使用量Dを補正してもよい。
【0015】
本開示のナビゲーション装置においては、前記経路設定部は、前記経路変更において、2以上の前記第1水素ステーションの内、前記現在地から水素ステーションを経由して前記目的地に到達するまでに消費が予想される水素消費量Yが最小となる水素ステーションを選択してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示のナビゲーション装置によれば、目的地到着後の水素残量不足の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本開示のナビゲーション装置が目的地到達時に最寄の水素STへ最低限到達できる水素量を残すように現在地から目的地まで経路案内する手順の一例を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、B≧C又はB’≧Cの条件を満たす経路案内をする場合の、水素STに立ち寄らない場合で条件を満たすケースと、立ち寄る場合であって条件を満たさないケースと条件を満たすケースの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示のナビゲーション装置が目的地で使用する予定水素使用量Dに応じて現在地から目的地までの経路を変更する手順の一例を示すフローチャートである。 まず、ナビゲーション装置に目的地を入力する。
【
図4】
図4は、B≧F+D又はB’≧F+Dの条件を満たす経路案内をする場合の、水素STに立ち寄らない場合で条件を満たすケースと、立ち寄る場合であって条件を満たさないケースと条件を満たすケースの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、目的地を設定していない場合に本開示のナビゲーション装置が行う案内の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示のナビゲーション装置は、水素ガスを燃料ガスとして用いる燃料電池を有する燃料電池車両に搭載されて用いられ、当該燃料電池車両の経路案内を実行するナビゲーション装置であって、
現在水素量A、及び、目的地までに消費が予想される水素消費量Xを取得する取得部と、
現在地から前記目的地までの経路の周辺に存在する第1水素ステーション、及び、前記目的地から最寄りの第2水素ステーションを特定する特定部と、
目的地到着時の予想水素残量B(B=A-X)、及び、目的地到着時に必要な必要水素量Cを算出する算出部と、
経路設定部と、を有し、
前記経路設定部は、前記予想水素残量Bが、前記必要水素量Cよりも小さい(B<C)場合に、前記現在地から前記目的地までの経路を、前記第1水素ステーションを経由する経路に経路変更することを特徴とする。
【0019】
本開示のナビゲーション装置は、目的地到着時に必要な必要水素量Cとして少なくとも目的地から目的地の最寄水素ST(第2水素ステーション)へ到達できる最低限の必要水素量Fを残して、経路探索、経路途中の水素ST探索を行い、経路案内する。さらに、目的地で水素使用可能性がある場合は、使用用途に合わせて目的地で使用する予定水素使用量Dの分の水素残存量を増加させる。
本開示において、現在水素量A、予想水素残量B、候補水素ST(第1水素ステーション)からの目的地到達時の予想水素残量B’目的地到着時に必要な必要水素量C、目的地で使用する予定水素使用量D、目的地で実際に消費された水素消費量E、目的地から目的地の最寄水素STまでの必要水素量F、現在地から最寄水素STまでに要する水素量G、目的地までに消費が予想される水素消費量X、現在地から候補水素STを経由した目的地までの予想水素消費量Y、候補水素STから目的地までの予想水素消費量Z、の各値は水素の割合値(%)で表してもよいし、質量(kg)で表してもよい。
【0020】
本開示のナビゲーション装置は、水素ガスを燃料ガスとして用いる燃料電池を有する燃料電池車両に搭載されて用いられ、当該燃料電池車両の経路案内を実行するナビゲーション装置である。
【0021】
燃料電池車両は、トラクションモータの電力源として燃料電池を有する。
燃料電池は、単セルと呼ばれる単体でも発電可能な発電要素を1つのみ有するものであってもよいし、単セルを複数個積層した積層体である燃料電池スタックであってもよい。
単セルの積層数は特に限定されず、例えば、2~数百個であってもよい。
本実施形態において、燃料電池は、固体高分子型燃料電池であり、燃料ガスとして水素ガスが用いられ、酸化剤ガスとして空気が用いられる。
燃料電池車両は、燃料電池に加えて、燃料電池へ水素ガスを供給する水素ガス系を備える。水素ガス系としては、水素ガスを貯蔵する水素タンク、水素タンクから燃料電池へと水素ガスを供給する水素ガス供給路、主止弁、圧力センサ等を備える。
【0022】
本開示のナビゲーション装置は、取得部と、特定部と、算出部と、経路設定部と、を有し、通常、表示部等を備える。
【0023】
取得部と、特定部と、算出部と、経路設定部は、ナビゲーション装置全体を制御する制御部によって制御されてもよい。
制御部は、CPU(中央演算処理装置)と、ROM(リードオンリーメモリー)と、RAM(ランダムアクセスメモリー)と、GNSS機能部と、を備えるコンピュータにより構成されている。CPUは、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出してRAMに展開して実行することにより、取得部、特定部、算出部、及び、経路設定部として機能する。
【0024】
ROMには、上述の制御プログラムの他、地図情報が予め記憶されている。この地図情報には、道路や交差点の位置や大きさなどの情報に加えて、建物の大きさや種類などの情報も含まれている。したがって、水素ステーションに関する情報も地図情報に含まれている。地図情報に含まれている水素ステーションに関する情報としては、例えば、各水素ステーションの名称、すなわち、「第1水素ステーション」、「第2水素ステーション」の他、各水素ステーションの位置情報、敷地や建物の輪郭や大きさについての情報が該当する。
【0025】
GNSS機能部は、GNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)を利用して燃料電池車両の現在地(緯度および経度)を特定する。
GNSSとしては、GPS(Global Positioning System)、Galileo、QZSS等の任意の種類のGNSSを用いてもよい。
【0026】
取得部は、現在水素量A、及び、目的地までに消費が予想される水素消費量Xを取得する。
取得部は、例えば圧力センサが検出する水素タンク内の圧力を利用して現在水素量Aを特定してもよい。現在水素量Aの特定は、例えば、水素タンク内の圧力と水素残量(現在水素量A)とを対応付けたマップをROMに予め記憶させておき、かかるマップを参照して特定してもよい。また、例えば、圧力と水素残量との関係を表す演算式を予め定めておき、かかる演算式に圧力値を当てはめて水素残量を算出することにより特定してもよい。
取得部は、燃料電池車両が始動してから現在までの平均車速と消費水素量から、水素消費量Xを取得してもよい。
【0027】
特定部は、現在地から目的地までの経路の周辺に存在する第1水素ステーション、及び、目的地から最寄りの第2水素ステーションを特定する。
第1水素ステーションは、現在地から目的地までの最短経路上に存在する水素ステーション又は最短経路の周辺に存在する最寄りの水素ステーションであってもよい。
【0028】
算出部は、目的地到着時の予想水素残量B(B=A-X)、及び、目的地到着時に必要な必要水素量Cを算出する。
必要水素量Cは、目的地から第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量Fであってもよい。最低限の必要水素量Fには、第2水素ステーション到達時に水素残量がゼロとならないようにマージンを含めてもよい。
算出部は、第1水素ステーションを経由する経路を検索する場合、現在地から候補水素ST(第1水素ステーション)を経由した目的地までの予想水素消費量Yを算出し、候補水素STから目的地までの予想水素消費量Zを算出し、候補水素STからの目的地到達時の予想水素残量B’を、例えば候補水素STで水素を満タン100になるまで補充すると仮定した場合、式1(B’=100-Z)から算出してもよい。式1において100は、候補水素STで水素を満タン100になるまで補充すると仮定した場合の値のため、候補水素STで補充する水素量に応じて適宜変更することができる。
【0029】
経路設定部は、燃料電池車両の目標経路を設定する。目標経路とは、燃料電池車両が目的地に至るまでに通る経路として設定される経路を意味する。本実施形態では、経路設定部は、経路設定用のメニュー画面を表示部に表示させ、かかるメニュー画面においてユーザーが目的地を設定すると、燃料電池車両の現在地から目的地までの経路を、所定のアルゴリズムに従って検索して設定する。上述の「所定のアルゴリズム」は、本実施形態ではダイクストラ法等の最短距離を求めるアルゴリズムであってもよい。なお、経路設定部による目標経路の検索アルゴリズムとして、最短距離を求めるアルゴリズムに代えて、または、かかるアルゴリズムに加えて、走行時間帯や有料道路等を考慮して最短時間で到達する経路を求めるアルゴリズムや、最もコストが低い経路を求めるアルゴリズムなどの他の種類のアルゴリズムを用いてもよい。
経路設定部は、予想水素残量Bが、必要水素量Cよりも小さい(B<C)場合に、現在地から目的地までの経路を、第1水素ステーションを経由する経路に経路変更する。
経路設定部は、経路変更において、2以上の第1水素ステーションの内、現在地から水素ステーションを経由して目的地に到達するまでに消費が予想される水素消費量Yが最小となる水素ステーションを選択してもよい。
経路設定部は、第1水素ステーションを経由しても目的地に到達できない場合は、2か所以上の水素STに立ち寄りする経路を検索してもよいし、到達不可能な旨を通知してもよい。通知は、表示部である画面に表示してもよい。
【0030】
表示部は、地図画像の他、各種メニュー画面やメッセージ、アラート等を表示する。表示部は、タッチパネルにより構成されていてもよく、ユーザーによる操作を受け付ける。
【0031】
(第1実施形態)
図1は、本開示のナビゲーション装置が目的地到達時に最寄の水素STへ最低限到達できる水素量を残すように現在地から目的地まで経路案内する手順の一例を示すフローチャートである。
まず、ナビゲーション装置に目的地を入力する。
その後、取得部は、現在水素量A、及び、目的地までに消費が予想される水素消費量Xを取得する。
算出部は、目的地到着時の予想水素残量B(B=A-X)、及び、目的地到着時に必要な必要水素量Cを算出する。目的地到着時に必要な必要水素量Cとして目的地から第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量Fを算出してもよく、後述する目的地で使用する予定水素使用量Dを含めてもよい。
経路設定部は、予想水素残量Bが、目的地到着時に必要な必要水素量C以上の(B≧C)場合は、水素STへの誘導をしない経路を設定する。
一方、経路設定部は、予想水素残量Bが、目的地到着時に必要な必要水素量Cよりも小さい(B<C)場合には、特定部が、現在地から目的地までの経路の周辺に存在する現在地から到達可能な水素ST候補をピックアップする。例えば、現在水素量Aと現在地から最寄水素STまでに要する水素量Gとを比較して、現在地から到達可能か否か判断できる。算出部は、現在地から候補水素STを経由した目的地までの予想水素消費量Yを算出し、候補水素STから目的地までの予想水素消費量Zを算出し、候補水素STからの目的地到達時の予想水素残量B’を式1(B’=100-Z)から算出する。なお、式1において、立ち寄る候補水素STで水素を満タン充填する前提で100としたが、可変でもよい。
そして、経路設定部は、B’≧Cとなる水素STがあるか否か検索し、無い場合は水素ST立寄り1回では到達不可能な旨を通知し、検索終了するか、又は、2か所以上の水素STに立ち寄りする経路を検索してもよい。
一方、経路設定部は、B’≧Cとなる水素STがある場合は、複数の水素STの候補のうち、Yが最小となる水素STを選択し、第1水素ステーションとして決定する。
そして、現在地から目的地までの経路を、第1水素ステーションを経由する経路に変更して案内経路として決定する。
【0032】
図2は、B≧C又はB’≧Cの条件を満たす経路案内をする場合の、水素STに立ち寄らない場合で条件を満たすケースと、立ち寄る場合であって条件を満たさないケースと条件を満たすケースの一例を示す図である。
前提として、現在地及び水素ST立ち寄り時を水素満タン状態100とし、目的地から第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量Fとして水素を最低30は、目的地到達時に必要な必要水素量C(C=F)として残すとする。
(i)ケース1の経路1は、水素補給なしで条件B≧Cを満たすケース、(ii)ケース2の経路1は、水素補給なしで条件B≧Cを満たさないケース、経路2は、水素補給ありだがB’≧Cの条件を満たさないケース(近場の水素STによって無駄をするケース)、経路3は、水素補給ありでB’≧Cの条件を満たすケースの1例目、経路4は、水素補給ありでB’≧Cの条件を満たすケースの2例目である。
水素STに立ち寄る場合に(ii)ケース2の経路3~4は、ともに条件を達成しているが、出発地から水素STを経由した目的地までの総距離がより短い経路3を選択してもよい。
【0033】
(第2実施形態)
取得部は、目的地で使用する予定水素使用量Dを取得してもよい。
経路設定部は、目的地到着時に必要な必要水素量Cとして、目的地から第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量F、及び、目的地で使用する予定水素使用量Dを残すように、経路探索を行ってもよい。すなわち、この場合、目的地到着時に必要な必要水素量Cは、目的地から第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量Fと、目的地で使用する予定水素使用量Dを含める(C=F+D)。
例えば、目的地がキャンプ地など特定の場所である場合に、目的地で使用する予定水素使用量Dに応じて、案内ルートを変えてもよい。
図1に示す例では、目的地到達時の残存水素量を「最低限最寄りの水素STに立ち寄り、水素充填できる量」としていたが、目的地での使用用途によっては残存量を増やしておきたいというニーズがある(例;目的地がキャンプ場で、現地で給電をしたい等)。そのため、目的地で使用する予定水素使用量Dに応じて案内ルートを変える。
【0034】
目的地で使用する予定水素使用量Dは、ユーザー入力値又は目的地属性から統計的に算出される値であってもよい。
目的地で使用する予定水素使用量Dが、目的地属性から統計的に算出される値である場合、取得部は、目的地で実際に消費された水素消費量Eと、目的地で使用する予定水素使用量Dとを比較して誤差を算出し、当該誤差のデータを蓄積し、当該誤差に応じて当該予定水素使用量Dを補正してもよい。
車両で得たデータの蓄積は情報センターに送信してもよい。
データの送信は、4G(4th Generation)通信、LTE(Long Time Evolution)通信、5G(5th Generation)通信等の電気通信事業者が提供する移動体通信、無線LAN(Local Area Network)等の任意の種類の無線通信等を用いてもよい。
【0035】
経路設定部は、目的地設定時に所定の場所を設定した場合に、ユーザーに目的地で使用する予定水素使用量Dの入力を促すため、目的地での水素使用要否を確認するコマンドを出してもよい。コマンドは表示部である画面に表示してもよい。
【0036】
経路設定部は、目的地での水素使用中に、目的地から第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量Fを下回る恐れが生じた場合にアラームを出してもよい。アラームは表示部である画面に表示してもよいし、警告音を発してもよい。目的地から第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量Fを下回る恐れが生じた時点は、水素残量が目的地から第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量Fに到達した時であってもよいし、目的地から第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量Fに到達する前の所定の残存量に到達した時であってもよい。
【0037】
図3は、本開示のナビゲーション装置が目的地で使用する予定水素使用量Dに応じて現在地から目的地までの経路を変更する手順の一例を示すフローチャートである。
まず、ナビゲーション装置に目的地を入力する。
その後、取得部は、現在水素量A、及び、目的地までに消費が予想される水素消費量Xを取得する。
算出部は、目的地到着時の予想水素残量B(B=A-X)、目的地から第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量Fを算出する。
取得部は、目的地で使用する予定水素使用量Dを取得する(予定水素使用量Dは、目的地属性からシステムが決定してもよいし、ユーザー意思で決定してもよい)。
経路設定部は、予想水素残量Bが、目的地から第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量F+予定水素使用量D以上の(B≧F+D)場合は、水素STへの誘導をしない経路を設定する。
一方、経路設定部は、予想水素残量Bが、目的地から第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量F+目的地で使用する予定水素使用量Dよりも小さい(B<F+D)の場合には、特定部が、現在地から目的地までの経路の周辺に存在する現在地から到達可能な水素ST候補をピックアップする。算出部は、現在地から候補水素STを経由した目的地までの予想水素消費量Yを算出し、候補水素STから目的地までの予想水素消費量Zを算出し、候補水素STから目的地到達時の予想水素残量B’を式1(B’=100-Z)から算出する。なお、式1において、立ち寄る候補水素STで水素を満タン充填する前提で100としたが、状況に応じて可変可能である。
そして、経路設定部は、B’≧F+Dとなる水素STがあるか否か検索し、無い場合は水素ST立寄り1回では到達不可能な旨を通知し、検索終了するか、又は、2か所以上の水素STに立ち寄りする経路を検索してもよい。
一方、経路設定部は、B’≧F+Dとなる水素STがある場合は、複数の水素STの候補のうち、Yが最小となる水素STを選択し、第1水素ステーションとして決定する。
そして、現在地から目的地までの経路を、第1水素ステーションを経由する経路に変更して案内経路として決定する。
【0038】
図4は、B≧F+D又はB’≧F+Dの条件を満たす経路案内をする場合の、水素STに立ち寄らない場合で条件を満たすケースと、立ち寄る場合であって条件を満たさないケースと条件を満たすケースの一例を示す図である。
前提として、現在地及び水素ST立ち寄り時を水素満タン状態100とし、目的地から第2水素ステーションへ到達できる最低限の必要水素量Fとして水素を最低30と、目的地で使用する予定水素使用量Dとして水素を最低20との合計50は目的地到達時に必要な必要水素量C(C=F+D)として残すとする。
(i)ケース1の経路1は、水素補給なしでB≧F+Dの条件を満たすケース、(ii)ケース2の経路1は、水素補給なしで条件B≧Fを満たさないケース、経路2は、水素補給ありだがB’≧Fの条件を満たさないケース(近場の水素STによって無駄をするケース)、経路3は、水素補給ありでB’≧Fの条件は満たすが、B’≧F+Dの条件を満たさないケース、経路4は、水素補給ありでB’≧F+Dの条件を満たすケースである。
図2の例では水素STに立ち寄る場合に(ii)ケース2の経路3~4は、ともに条件を満たしていたが、
図4の例では、(ii)ケース2の経路4のみ条件を満たすため経路4を選択する。
【0039】
(その他の実施形態)
目的地を設定していない場合、水素残量を気にせず走行していたら、いつの間にか水素が少なくなっていて、既に最寄りの水素STにたどり着けない状態(まだ水素残量あるのに、水素STへ行けない状態)が発生し得る。
そこで、目的地を設定していない状態にあっても、バックグラウンドで最寄りの水素STと現在位置との距離を計算しておき、最寄の水素STへたどり着けない可能性が生じる前に表示部に水素ST誘導のコーションを表示してもよい。
【0040】
図5は、目的地を設定していない場合に本開示のナビゲーション装置が行う案内の一例を示すフローチャートである。
まず、取得部は、現在地を取得する。
その後、取得部は、現在水素量A、及び、最寄の水素STまでに消費が予想される水素消費量Xを取得する。
算出部は、最寄の水素ST到着時の予想水素残量B(B=A-X)、目的地到着時に必要な必要水素量C(ここでは、到着時に水素切れとならないためのマージンであってもよい)を算出する。
経路設定部は、予想水素残量Bが、必要水素量Cよりも小さい(B<C)場合には、ナビもしくは情報端末に水素ST誘導のコーションを提示して案内を終了する。