(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】ベンゼン誘導体の新規結晶形
(51)【国際特許分類】
C07C 311/21 20060101AFI20250218BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20250218BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20250218BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250218BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
C07C311/21 CSP
A61K31/192
A61P25/02
A61P25/00
A61P43/00 105
(21)【出願番号】P 2021574120
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2021003092
(87)【国際公開番号】W WO2021153690
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2020012075
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000185983
【氏名又は名称】小野薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】大谷 修平
(72)【発明者】
【氏名】藤戸 貴之
(72)【発明者】
【氏名】西馬 直希
【審査官】一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】特許第7306392(JP,B2)
【文献】特許第7384179(JP,B2)
【文献】特許第4529119(JP,B2)
【文献】特表2011-503030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸
の結晶。
【請求項2】
粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくと
も8.7度
±0.2度、11.2度
±0.2度、およ
び14.1度
±0.2度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項1記載の化合物
の結晶。
【請求項3】
粉末X線回折スペクトルにおいて、さら
に12.0度
±0.2度、18.5度
±0.2度、22.2度
±0.2度、24.7度
±0.2度、およ
び25.6度
±0.2度の回折角(2θ)に少なくとも1つ以上の回折ピークを有する、請求項2記載の化合物
の結晶。
【請求項4】
粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくと
も8.7度
±0.2度、11.2度
±0.2度、12.0度
±0.2度、14.1度
±0.2度、18.5度
±0.2度、22.2度
±0.2度、24.7度
±0.2度、およ
び25.6度
±0.2度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項1記載の化合物
の結晶。
【請求項5】
図3に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする、請求項1記載の化合物
の結晶。
【化1】
【請求項6】
示差走査熱量測定において吸熱ピーク温度が86.4℃
±2℃である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物
の結晶。
【請求項7】
図4に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする、請求項6記載の化合物
の結晶。
【化2】
【請求項8】
粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくと
も6.8度
±0.2度およ
び10.5度
±0.2度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項1記載の化合物
の結晶。
【請求項9】
粉末X線回折スペクトルにおいて、さら
に8.2度
±0.2度、12.8度
±0.2度、18.2度
±0.2度、23.5度
±0.2度、およ
び24.3度
±0.2度の回折角(2θ)に少なくとも2つ以上の回折ピークを有する、請求項8記載の化合物
の結晶。
【請求項10】
粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくと
も6.8度
±0.2度、8.2度
±0.2度、10.5度
±0.2度、12.8度
±0.2度、18.2度
±0.2度、23.5度
±0.2度、およ
び24.3度
±0.2度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項1記載の化合物
の結晶。
【請求項11】
図5に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする、請求項1記載の化合物
の結晶。
【化3】
【請求項12】
示差走査熱量測定において吸熱ピーク温度
が86.8℃
±2℃である、請求項1
および8~11のいずれか一項に記載の化合物
の結晶。
【請求項13】
図6に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする、請求項12記載の化合物
の結晶。
【化4】
【請求項14】
3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ジイソプロピルアミン塩。
【請求項15】
3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ジイソプロピルアミン塩
の結晶。
【請求項16】
粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくと
も6.5度
±0.2度、9.8度
±0.2度、10.6度
±0.2度、17.1度
±0.2度、19.3度
±0.2度、20.1度
±0.2度、およ
び20.9度
±0.2度の回折角(2θ)に少なくとも2つ以上の回折ピークを有する、請求項
15記載の化合物
の結晶。
【請求項17】
粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくと
も6.5度
±0.2度、9.8度
±0.2度、10.6度
±0.2度、17.1度
±0.2度、19.3度
±0.2度、20.1度
±0.2度、およ
び20.9度
±0.2度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項
15記載の化合物
の結晶。
【請求項18】
図1に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする、請求項
15記載の化合物
の結晶。
【化5】
【請求項19】
示差走査熱量測定において吸熱ピーク温度
が133℃
±2℃である、請求項
15~
18のいずれか一項に記載の化合物
の結晶。
【請求項20】
図2に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする、請求項
19記載の化合物
の結晶。
【化6】
【請求項21】
請求項14に記載の化合物、又は、請求項1~
13および15~20のいずれか一項に記載の化合物
の結晶を含有する医薬組成物。
【請求項22】
請求項14に記載の化合物、又は、請求項1~
13および15~20のいずれか一項に記載の化合物
の結晶を含有するシュワン細胞分化促進剤。
【請求項23】
請求項14に記載の化合物、又は、請求項1~
13および15~20のいずれか一項に記載の化合物
の結晶を含有する神経障害の予防および/または治療剤。
【請求項24】
神経障害が末梢神経障害である請求項23記載の剤。
【請求項25】
末梢神経障害が、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、ギランバレー症候群、結節性動脈周囲炎、アレルギー性血管炎、糖尿病性末梢神経障害、絞扼性神経障害、化学療法薬投与に伴う末梢神経障害、またはシャルコー・マリー・トゥース病に伴う末梢神経障害である、請求項24記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸(以下、化合物Aと略記することがある。)の新規結晶等に関する。
【背景技術】
【0002】
神経系は、中枢神経系と末梢神経系に大別され、なかでも末梢神経系は、脳および脊髄と身体末梢とを連絡し、神経伝達を担う。末梢神経系は、体性神経系(脳脊髄神経系)と自律神経系に分類できる。さらに、体性神経系は脳神経と脊髄神経に分けられる。また、体性神経系を機能的に分類すると、感覚受容器から生じた神経信号(興奮)を中枢神経に伝えるものは求心性、あるいは感覚性の神経線維に分類され、それに対して、脳・脊髄から筋や腺等の効果器に向かう神経信号を伝えるものは遠心性、あるいは運動性の神経線維に分類される。脳神経は脳から出る末梢神経で12対が知られ、あるものは感覚性、あるものは運動性、またはあるものは混合性の神経線維から成っている。第1~第12神経対は、それぞれ嗅神経、視神経、動眼神経、滑車神経、三叉神経、外転神経、顔面神経、内耳神経、舌咽神経、迷走神経、副神経、舌下神経と呼ばれる。これらのうち、感覚性または混合性の神経線維から成る神経は、嗅神経、視神経、三叉神経、顔面神経、内耳神経、舌咽神経、迷走神経が知られている。脊髄神経は脊髄から発する末梢神経で左右31対が知られ、8対の頚神経、12対の胸神経、5対の腰神経、5対の仙骨神経と1対の尾骨神経が知られている。脊髄神経はすべて混合性の神経線維から成り、皮膚等に行く感覚線維(後根)と骨格筋に行く運動線維(前根)とを含んでいる。
【0003】
感覚性の神経線維、すなわち感覚神経は視覚器、聴覚器、嗅覚器、味覚器および皮膚等の感覚受容器が受け取った光、音、温度や接触等の刺激を中枢神経系に正確に伝える機能を担っている。中枢神経系に伝えられた神経信号は、最終的には大脳皮質の各感覚野、例えば、視覚野、聴覚野等に伝達され、正常に感覚が認識される。しかしながら、これらの感覚神経が、例えば、ウイルス感染、腫瘍、癌、糖尿病、虚血、外傷、圧迫、薬物や放射線療法等により、軸索、ミエリン鞘またはシュワン細胞等が侵され、細胞死や脱髄等の様々な神経障害が引き起こされることがある。その結果、障害が生じた感覚神経では正確な神経伝達が行われないため、例えば、難聴や神経障害性疼痛等の疾患が発症する。これら以外に、特定の感覚神経だけでなく、感覚神経を含む様々な末梢神経が、例えば、代謝疾患、自己免疫疾患等の疾患、外傷、薬物中毒等の原因によって同時に障害を受ける末梢神経障害がある。本症は、単一神経、別々の領域にある2つ以上の神経、または多数の神経が同時に障害を受けることがある。その症状は、末梢部の刺痛、しびれ、灼熱感、関節の固有覚低下、振動覚低下、疼痛(神経障害性疼痛も含む)、異常感覚、冷えまたはほてり等が挙げられ、非常に複雑で多岐に渡っている。
【0004】
しかしながら、上記のような末梢神経系疾患はその発生機序が不明な疾患であったり、神経の物理的な損傷であったりするため、それらの治療に際しては、主として症状改善等を目的とした対症療法が行われており、障害を受けた神経系に直接作用する根本治療となるような臨床上有用な薬剤はほとんど知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、神経保護および/または修復作用を有する化合物を見出すことであり、さらには、該化合物について、医薬品として取り扱いに優れた結晶等を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討を行い、一態様において化合物Aのフリー体が2種類の結晶を形成することを見出した。また、一態様において、化合物Aの塩を見出した。
本発明は、例えば下記の態様である。
[1]結晶形態である、3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸。
[2]粉末X線回折スペクトルにおいて、約8.7度、約11.2度、約12.0度、約14.1度、約18.5度、約22.2度、約24.7度、および約25.6度の回折角(2θ)に少なくとも2つ以上の回折ピークを有する、[1]記載の化合物。
[2-1]粉末X線回折スペクトルにおいて、約8.7度、約11.2度、約12.0度、約14.1度、約18.5度、約22.2度、約24.7度、および約25.6度の回折角(2θ)に少なくとも3つ以上の回折ピークを有する、[1]記載の化合物。
[2-2]粉末X線回折スペクトルにおいて、約8.7度、約11.2度、約12.0度、約14.1度、約18.5度、約22.2度、約24.7度、および約25.6度の回折角(2θ)に少なくとも4つ以上の回折ピークを有する、[1]記載の化合物。
[2-3]粉末X線回折スペクトルにおいて、約8.7度、約11.2度、約12.0度、約14.1度、約18.5度、約22.2度、約24.7度、および約25.6度の回折角(2θ)に少なくとも5つ以上の回折ピークを有する、[1]記載の化合物。
[2-4]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約8.7度、約11.2度、および約14.1度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[1]記載の化合物。
[2-5]粉末X線回折スペクトルにおいて、さらに約12.0度、約18.5度、約22.2度、約24.7度、および約25.6度の回折角(2θ)に少なくとも1つ以上の回折ピークを有する、[2-4]記載の化合物。
[2-6]粉末X線回折スペクトルにおいて、さらに約12.0度、約18.5度、約22.2度、約24.7度、および約25.6度の回折角(2θ)に少なくとも2つ以上の回折ピークを有する、[2-4]記載の化合物。
[3]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約8.7度、約11.2度、約12.0度、約14.1度、約18.5度、約22.2度、約24.7度、および約25.6度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[1]記載の化合物。
[3-1]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約8.5度、約8.7度、約11.2度、約11.4度、約12.0度、約12.9度、約13.5度、約13.6度、約14.1度、約14.5度、約15.1度、約15.9度、約16.2度、約16.4度、約16.6度、約16.9度、約17.2度、約17.4度、約17.9度、約18.5度、約19.2度、約19.4度、約19.6度、約20.2度、約20.4度、約20.6度、約21.7度、約22.2度、約22.5度、約23.0度、約23.1度、約24.0度、約24.5度、約24.7度、約25.2度、約25.6度、約26.0度、約27.0度、約27.1度、約28.5度、約31.6度、約32.3度、約33.1度、および約33.3度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[1]記載の化合物。
[4]
図3に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする、[1]記載の化合物。
[5]示差走査熱量測定において吸熱ピーク温度が約86.4℃である、[1]~[4]、[2-1]~[2-6]、および[3-1]のいずれか一項に記載の化合物。
[6]
図4に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする、[5]記載の化合物。
[7]粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.8度、約8.2度、約10.5度、約12.8度、約18.2度、約23.5度、および約24.3度の回折角(2θ)に少なくとも2つ以上の回折ピークを有する、[1]記載の化合物。
[7-1]粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.8度、約8.2度、約10.5度、約12.8度、約18.2度、約23.5度、および約24.3度の回折角(2θ)に少なくとも3つ以上の回折ピークを有する、[1]記載の化合物。
[7-2]粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.8度、約8.2度、約10.5度、約12.8度、約18.2度、約23.5度、および約24.3度の回折角(2θ)に少なくとも4つ以上の回折ピークを有する、[1]記載の化合物。
[7-3]粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.8度、約8.2度、約10.5度、約12.8度、約18.2度、約23.5度、および約24.3度の回折角(2θ)に少なくとも5つ以上の回折ピークを有する、[1]記載の化合物。
[7-4]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.8度および約10.5度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[1]記載の化合物。
[7-5]粉末X線回折スペクトルにおいて、さらに約8.2度、約12.8度、約18.2度、約23.5度、および約24.3度の回折角(2θ)に少なくとも1つ以上の回折ピークを有する、[7-4]記載の化合物。
[7-6]粉末X線回折スペクトルにおいて、さらに約8.2度、約12.8度、約18.2度、約23.5度、および約24.3度の回折角(2θ)に少なくとも2つ以上の回折ピークを有する、[7-4]記載の化合物。
[7-7]粉末X線回折スペクトルにおいて、さらに約8.2度、約12.8度、約18.2度、約23.5度、および約24.3度の回折角(2θ)に少なくとも3つ以上の回折ピークを有する、[7-4]記載の化合物。
[8]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.8度、約8.2度、約10.5度、約12.8度、約18.2度、約23.5度、および約24.3度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[1]記載の化合物。
[8-1]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約5.3度、約6.2度、約6.8度、約8.2度、約10.5度、約12.3度、約12.5度、約12.8度、約13.6度、約14.6度、約15.8度、約16.4度、約17.1度、約17.8度、約18.1度、約18.2度、約18.7度、約19.0度、約19.3度、約19.6度、約20.1度、約20.3度、約20.5度、約21.0度、約21.7度、約22.0度、約22.1度、約22.4度、約23.5度、約24.0度、約24.3度、約24.7度、約25.2度、約25.5度、約25.8度、約26.5度、約27.7度、約28.0度、約29.1度、約29.6度、約29.8度、約30.6度、約31.5度、および約33.1度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[1]記載の化合物。
[9]
図5に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする、[1]記載の化合物。
[10]示差走査熱量測定において吸熱ピーク温度が約86.8℃である、[1]、[7]~[9]、[7-1]~[7-7]、および[8-1]のいずれか一項に記載の化合物。
[11]
図6に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする、[10]記載の化合物。
[12]3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ジイソプロピルアミン塩。
[13]結晶形態である、[12]記載の3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ジイソプロピルアミン塩。
[14]粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.5度、約9.8度、約10.6度、約17.1度、約19.3度、約20.1度、および約20.9度の回折角(2θ)に少なくとも2つ以上の回折ピークを有する、[13]記載の化合物。
[14-1]粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.5度、約9.8度、約10.6度、約17.1度、約19.3度、約20.1度、および約20.9度の回折角(2θ)に少なくとも3つ以上の回折ピークを有する、[13]記載の化合物。
[14-2]粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.5度、約9.8度、約10.6度、約17.1度、約19.3度、約20.1度、および約20.9度の回折角(2θ)に少なくとも4つ以上の回折ピークを有する、[13]記載の化合物。
[14-3]粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.5度、約9.8度、約10.6度、約17.1度、約19.3度、約20.1度、および約20.9度の回折角(2θ)に少なくとも5つ以上の回折ピークを有する、[13]記載の化合物。
[15]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.5度、約9.8度、約10.6度、約17.1度、約19.3度、約20.1度、および約20.9度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[13]記載の化合物。
[15-1]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.5度、約8.5度、約9.8度、約10.6度、約12.8度、約13.3度、約13.4度、約14.1度、約15.0度、約15.2度、約15.9度、約16.2度、約16.5度、約17.0度、約17.1度、約19.3度、約19.7度、約20.1度、約20.9度、約21.3度、約21.6度、約21.9度、約22.3度、約22.4度、約22.7度、約22.9度、約23.4度、約24.0度、約24.5度、約25.8度、約26.5度、約26.8度、約27.4度、および約30.3度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[13]記載の化合物。
[16]
図1に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする、[13]記載の化合物。
[17]示差走査熱量測定において吸熱ピーク温度が約133℃である、[13]~[16]、[14-1]~[14-3]、および[15-1]のいずれか一項に記載の化合物。
[17-1]
図2に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする、[17]記載の化合物。
[18]3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 エチレンジアミン塩。
[19]結晶形態である、[18]記載の3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 エチレンジアミン塩。
[20]粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.4度、約9.2度、約14.7度、約20.8度、約21.6度、約23.9度、約24.4度、および約29.7度の回折角(2θ)に少なくとも2つ以上の回折ピークを有する、[19]記載の化合物。
[20-1]粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.4度、約9.2度、約14.7度、約20.8度、約21.6度、約23.9度、約24.4度、および約29.7度の回折角(2θ)に少なくとも3つ以上の回折ピークを有する、[19]記載の化合物。
[20-2]粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.4度、約9.2度、約14.7度、約20.8度、約21.6度、約23.9度、約24.4度、および約29.7度の回折角(2θ)に少なくとも4つ以上の回折ピークを有する、[19]記載の化合物。
[20-3]粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.4度、約9.2度、約14.7度、約20.8度、約21.6度、約23.9度、約24.4度、および約29.7度の回折角(2θ)に少なくとも5つ以上の回折ピークを有する、[19]記載の化合物。
[21]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.4度、約9.2度、約14.7度、約20.8度、約21.6度、約23.9度、約24.4度、および約29.7度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[19]記載の化合物。
[22]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.4度、約9.2度、約12.5度、約13.0度、約14.1度、約14.7度、約17.8度、約18.7度、約19.4度、約20.0度、約20.8度、約21.6度、約22.5度、約22.8度、約23.9度、約24.4度、および約29.7度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[19]記載の化合物。
[23]
図7に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする、[19]記載の化合物。
[24]示差走査熱量測定において吸熱ピーク温度が約153℃である、[19]~[23]、および[20-1]~[20-3]のいずれか一項に記載の化合物。
[25]
図8に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする、[24]記載の化合物。
[26]3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ベネタミン塩。
[27]結晶形態である、[26]記載の3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ベネタミン塩。
[28]粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.8度、約8.3度、約15.8度、約18.4度、約18.8度、約20.4度、約20.8度、および約21.2度の回折角(2θ)に少なくとも2つ以上の回折ピークを有する、[27]記載の化合物。
[28-1]粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.8度、約8.3度、約15.8度、約18.4度、約18.8度、約20.4度、約20.8度、および約21.2度の回折角(2θ)に少なくとも3つ以上の回折ピークを有する、[27]記載の化合物。
[28-2]粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.8度、約8.3度、約15.8度、約18.4度、約18.8度、約20.4度、約20.8度、および約21.2度の回折角(2θ)に少なくとも4つ以上の回折ピークを有する、[27]記載の化合物。
[28-3]粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.8度、約8.3度、約15.8度、約18.4度、約18.8度、約20.4度、約20.8度、および約21.2度の回折角(2θ)に少なくとも5つ以上の回折ピークを有する、[27]記載の化合物。
[29]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.8度、約8.3度、約15.8度、約18.4度、約18.8度、約20.4度、約20.8度、および約21.2度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[27]記載の化合物。
[30]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.8度、約8.3度、約11.9度、約12.9度、約14.9度、約15.1度、約15.8度、約16.6度、約16.7度、約18.4度、約18.8度、約19.2度、約19.8度、約19.9度、約20.4度、約20.8度、約21.2度、約22.2度、約23.2度、約24.4度、約24.7度、約25.2度、約25.7度、約26.3度、約26.6度、約27.1度、約28.0度、約28.7度、約29.2度および約29.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[27]記載の化合物。
[31]
図9に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする、[27]記載の化合物。
[32]示差走査熱量測定において吸熱ピーク温度が約114℃である、[27]~[31]、および[28-1]~[28-3]のいずれか一項に記載の化合物。
[33]
図10に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする、[32]記載の化合物。
[34]3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 t-ブチルアミン塩。
[35]結晶形態である、[34]記載の3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 t-ブチルアミン塩。
[36]粉末X線回折スペクトルにおいて、約8.3度、約14.4度、約15.5度、約16.7度、約18.9度、約20.7度、約21.0度、および約21.9度の回折角(2θ)に少なくとも2つ以上の回折ピークを有する、[35]記載の化合物。
[36-1]粉末X線回折スペクトルにおいて、約8.3度、約14.4度、約15.5度、約16.7度、約18.9度、約20.7度、約21.0度、および約21.9度の回折角(2θ)に少なくとも3つ以上の回折ピークを有する、[35]記載の化合物。
[36-2]粉末X線回折スペクトルにおいて、約8.3度、約14.4度、約15.5度、約16.7度、約18.9度、約20.7度、約21.0度、および約21.9度の回折角(2θ)に少なくとも4つ以上の回折ピークを有する、[35]記載の化合物。
[36-3]粉末X線回折スペクトルにおいて、約8.3度、約14.4度、約15.5度、約16.7度、約18.9度、約20.7度、約21.0度、および約21.9度の回折角(2θ)に少なくとも5つ以上の回折ピークを有する、[35]記載の化合物。
[37]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約8.3度、約14.4度、約15.5度、約16.7度、約18.9度、約20.7度、約21.0度、および約21.9度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[35]記載の化合物。
[38]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約8.3度、約9.4度、約12.1度、約12.5度、約14.4度、約15.5度、約15.9度、約16.2度、約16.7度、約18.5度、約18.9度、約19.7度、約20.7度、約21.0度、約21.9度、約22.4度、約22.9度、約23.1度、約23.6度、約24.0度、約25.1度、約25.7度、および約27.7度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[35]記載の化合物。
[39]
図11に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする、[35]記載の化合物。
[40]3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ナトリウム塩。
[41]結晶形態である、[40]記載の3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ナトリウム塩。
[42]粉末X線回折スペクトルにおいて、約9.7度、約10.7度、約13.1度、約13.8度、約15.1度、約18.4度、約22.9度、および約25.5度の回折角(2θ)に少なくとも2つ以上の回折ピークを有する、[41]記載の化合物。
[43-1]粉末X線回折スペクトルにおいて、約9.7度、約10.7度、約13.1度、約13.8度、約15.1度、約18.4度、約22.9度、および約25.5度の回折角(2θ)に少なくとも3つ以上の回折ピークを有する、[41]記載の化合物。
[43-2]粉末X線回折スペクトルにおいて、約9.7度、約10.7度、約13.1度、約13.8度、約15.1度、約18.4度、約22.9度、および約25.5度の回折角(2θ)に少なくとも4つ以上の回折ピークを有する、[41]記載の化合物。
[43-3]粉末X線回折スペクトルにおいて、約9.7度、約10.7度、約13.1度、約13.8度、約15.1度、約18.4度、約22.9度、および約25.5度の回折角(2θ)に少なくとも5つ以上の回折ピークを有する、[41]記載の化合物。
[44]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約9.7度、約10.7度、約13.1度、約13.8度、約15.1度、約18.4度、約22.9度、および約25.5度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[41]記載の化合物。
[45]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約7.7度、約9.7度、約10.7度、約13.1度、約13.8度、約15.1度、約15.4度、約16.2度、約17.6度、約17.9度、約18.4度、約18.7度、約19.6度、約19.9度、約20.5度、約21.0度、約21.4度、約22.5度、約22.7度、約22.9度、約23.1度、約24.4度、約25.3度、約25.5度、約26.5度、約28.4度、約28.9度、および約29.2度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[41]記載の化合物。
[46]
図12に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする、[41]記載の化合物。
[47]3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ヘミカルシウム塩。
[48]結晶形態である、[47]記載の3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ヘミカルシウム塩。
[49]粉末X線回折スペクトルにおいて、約5.3度、約8.2度、約8.8度、約10.8度、約18.6度、約20.3度、約20.8度および約22.1度の回折角(2θ)に少なくとも2つ以上の回折ピークを有する、[48]記載の化合物。
[49-1]粉末X線回折スペクトルにおいて、約5.3度、約8.2度、約8.8度、約10.8度、約18.6度、約20.3度、約20.8度および約22.1度の回折角(2θ)に少なくとも3つ以上の回折ピークを有する、[48]記載の化合物。
[49-2]粉末X線回折スペクトルにおいて、約5.3度、約8.2度、約8.8度、約10.8度、約18.6度、約20.3度、約20.8度および約22.1度の回折角(2θ)に少なくとも4つ以上の回折ピークを有する、[48]記載の化合物。
[49-3]粉末X線回折スペクトルにおいて、約5.3度、約8.2度、約8.8度、約10.8度、約18.6度、約20.3度、約20.8度および約22.1度の回折角(2θ)に少なくとも5つ以上の回折ピークを有する、[48]記載の化合物。
[50]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約約5.3度、約8.2度、約8.8度、約10.8度、約18.6度、約20.3度、約20.8度および約22.1度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[48]記載の化合物。
[51]粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約5.3度、約6.6度、約8.2度、約8.8度、約10.8度、約11.3度、約11.8度、約13.0度、約13.3度、約13.7度、約14.0度、約14.9度、約15.6度、約16.0度、約16.6度、約16.7度、約16.9度、約17.4度、約17.6度、約17.9度、約18.0度、約18.6度、約19.0度、約19.5度、約19.8度、約20.0度、約20.3度、約20.8度、約21.3度、約21.6度、約22.1度、約22.4度、約22.9度、約23.2度、約23.4度、約23.9度、約24.4度、約24.7度、約25.7度、および約27.0度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[48]記載の化合物。
[52]
図13に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする、[48]記載の化合物。
[53][1]~[52]、[2-1]~[2-6]、[3-1]、[7-1]~[7-7]、[8-1]、[14-1]~[14-3]、[15-1]、[17-1]、[20-1]~[20-3]、[28-1]~[28-3]、[36-1]~[36-3]、[43-1]~[43-3]、[49-1]~[49-3]のいずれか一項に記載の化合物を含有する医薬組成物。
[54][1]~[52]、[2-1]~[2-6]、[3-1]、[7-1]~[7-7]、[8-1]、[14-1]~[14-3]、[15-1]、[17-1]、[20-1]~[20-3]、[28-1]~[28-3]、[36-1]~[36-3]、[43-1]~[43-3]、[49-1]~[49-3]のいずれか一項に記載の化合物を含有するシュワン細胞分化促進剤。
[55][1]~[52]、[2-1]~[2-6]、[3-1]、[7-1]~[7-7]、[8-1]、[14-1]~[14-3]、[15-1]、[17-1]、[20-1]~[20-3]、[28-1]~[28-3]、[36-1]~[36-3]、[43-1]~[43-3]、[49-1]~[49-3]のいずれか一項に記載の化合物を含有する神経障害の予防及び/又は治療剤。
[56]神経障害が末梢神経障害である[55]記載の剤。
[57]末梢神経障害が、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、ギランバレー症候群、結節性動脈周囲炎、アレルギー性血管炎、糖尿病性末梢神経障害、絞扼性神経障害、化学療法薬投与に伴う末梢神経障害、またはシャルコー・マリー・トゥース病に伴う末梢神経障害である、[56]記載の剤。
【発明の効果】
【0007】
化合物Aのフリー体は結晶を形成し、取扱いに優れるため、医薬品原薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】化合物Aのジイソプロピルアミン塩の粉末X線回折スペクトルチャートを表す(縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)。
【
図2】化合物Aのジイソプロピルアミン塩の示差走査熱量測定(DSC)チャートを表す(縦軸は熱流束(W/g)を表し、横軸は温度(℃)を表す。)。
【
図3】化合物Aのフリー体(B晶)の粉末X線回折スペクトルチャートを表す(縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)。
【
図4】化合物Aのフリー体(B晶)の示差走査熱量測定(DSC)チャートを表す(縦軸は熱流束(W/g)を表し、横軸は温度(℃)を表す。)。
【
図5】化合物Aのフリー体(A晶)の粉末X線回折スペクトルチャートを表す(縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)。
【
図6】化合物Aのフリー体(A晶)の示差走査熱量測定(DSC)チャートを表す(縦軸は熱流束(W/g)を表し、横軸は温度(℃)を表す。)。
【
図7】化合物Aのエチレンジアミン塩の粉末X線回折スペクトルチャートを表す(縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)。
【
図8】化合物Aのエチレンジアミン塩の示差走査熱量測定(DSC)チャートを表す(縦軸は熱流束(W/g)を表し、横軸は温度(℃)を表す。)。
【
図9】化合物Aのベネタミン塩の粉末X線回折スペクトルチャートを表す(縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)。
【
図10】化合物Aのベネタミン塩の示差走査熱量測定(DSC)チャートを表す(縦軸は熱流束(W/g)を表し、横軸は温度(℃)を表す。)。
【
図11】化合物Aのt-ブチルアミン塩の粉末X線回折スペクトルチャートを表す(縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)。
【
図12】化合物Aのナトリウム塩の粉末X線回折スペクトルチャートを表す(縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)。
【
図13】化合物Aのヘミカルシウム塩の粉末X線回折スペクトルチャートを表す(縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)。
【
図14】ストレプトゾトシンモデルにおいて、実施例5の化合物を0.3mg/kgの投与量で投与した場合における侵害受容閾値を表す(縦軸は侵害受容閾値を、横軸はストレプトゾトシン投与後の経過日数を表す。)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明において、3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸(化合物A)とは、以下の構造式
【0011】
【0012】
で表される化合物を意味する。
【0013】
化合物AのB晶は、以下の(a)および(b)の少なくとも一つの物理化学データによって特徴づけられる。好ましくは、(a)および(b)の両方の物理化学データによって特徴づけられる。(a)
図3に示される粉末X線回折スペクトルチャートもしくは表2に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)に回折ピークを有する、または表2に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)から選択される回折角(2θ)に少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超のピークを有する、粉末X線回折スペクトル、(b)以下の
図4に示される示差走査熱量測定(DSC)チャート、またはピーク温度が約86.4℃である吸熱ピークを有する。
【0014】
化合物AのA晶は、以下の(c)および(d)の少なくとも一つの物理化学データによって特徴づけられる。好ましくは、(c)および(d)の両方の物理化学データによって特徴づけられる。(c)
図5に示される粉末X線回折スペクトルチャートもしくは表3に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)に回折ピークを有する、または表3に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)から選択される回折角(2θ)に少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超のピークを有する、粉末X線回折スペクトル、(d)
図6に示される示差走査熱量測定(DSC)チャート、またはピーク温度が約86.8℃である吸熱ピークを有する。
【0015】
化合物AのB晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約8.7度、約11.2度、約12.0度、約14.1度、約18.5度、約22.2度、約24.7度、および約25.6度の回折角(2θ)に少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つの回折ピークを有する結晶形態である。
【0016】
化合物AのB晶の別の態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約8.7度、約11.2度、約12.0度、約14.1度、約18.5度、約22.2度、約24.7度、および約25.6度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
【0017】
化合物AのB晶の別の態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約8.7度、約11.2度、および約14.1度の回折角(2θ)に少なくとも1つ又は2つの回折ピークを有する結晶形態である。
【0018】
化合物AのB晶の別の態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約8.7度、約11.2度、および約14.1度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
【0019】
化合物AのB晶の別の態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約8.7度、約11.2度、および約14.1度の回折角(2θ)に回折ピークを有し、さらに、約12.0度、約18.5度、約22.2度、約24.7度、および約25.6度の回折角(2θ)に少なくとも1つ、2つ、3つまたは4つの回折ピークを有する結晶形態である。
【0020】
化合物AのA晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.8度、約8.2度、約10.5度、約12.8度、約18.2度、約23.5度、および約24.3度の回折角(2θ)に少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの回折ピークを有する結晶形態である。
【0021】
化合物AのA晶の別の態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.8度、約8.2度、約10.5度、約12.8度、約18.2度、約23.5度、および約24.3度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
【0022】
化合物AのA晶の別の態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.8度および/または約10.5度に回折ピークを有する結晶形態である。
【0023】
化合物AのA晶の別の態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.8度および約10.5度に回折ピークを有する結晶形態である。
【0024】
化合物AのA晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.8度および約10.5度に回折ピークを有し、さらに約8.2度、約12.8度、約18.2度、約23.5度、および約24.3度の回折角(2θ)に少なくとも1つ、2つ、3つまたは4つの回折ピークを有する結晶形態である。
【0025】
3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ジイソプロピルアミン塩(化合物A ジイソプロピルアミン塩)は、一実施形態において結晶形態であり、結晶形態であるとき、その結晶は以下の(e)および(f)の少なくとも一つの物理化学データによって特徴づけられる。好ましくは、(e)および(f)の両方の物理化学データによって特徴づけられる。(e)
図1に示される粉末X線回折スペクトルチャートもしくは表1に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)に回折ピークを有する、または表1に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)から選択される回折角(2θ)に少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超のピークを有する、粉末X線回折スペクトル、(f)
図2に示される示差走査熱量測定(DSC)チャート、またはピーク温度が約133℃である吸熱ピークを有する。
【0026】
化合物A ジイソプロピルアミン塩の結晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.5度、約9.8度、約10.6度、約17.1度、約19.3度、約20.1度、および約20.9度の回折角(2θ)に少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの回折ピークを有する結晶形態である。
【0027】
化合物A ジイソプロピルアミン塩の別の態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.5度、約9.8度、約10.6度、約17.1度、約19.3度、約20.1度、および約20.9度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
【0028】
3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 エチレンジアミン塩(化合物A エチレンジアミン塩)は、一実施形態において結晶形態であり、結晶形態であるとき、その結晶は以下の(g)および(h)の少なくとも一つの物理化学データによって特徴づけられる。好ましくは、(g)および(h)の両方の物理化学データによって特徴づけられる。(g)
図7に示される粉末X線回折スペクトルチャートもしくは表4に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)に回折ピークを有する、または表4に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)から選択される回折角(2θ)に少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超のピークを有する、粉末X線回折スペクトル、(h)
図8に示される示差走査熱量測定(DSC)チャート、またはピーク温度が約153℃である吸熱ピークを有する。
【0029】
化合物A エチレンジアミン塩の結晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.4度、約9.2度、約14.7度、約20.8度、約21.6度、約23.9度、約24.4度、および約29.7度の回折角(2θ)に少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの回折ピークを有する結晶形態である。
【0030】
化合物A エチレンジアミン塩の別の態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.4度、約9.2度、約14.7度、約20.8度、約21.6度、約23.9度、約24.4度、および約29.7度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
【0031】
3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ベネタミン塩(化合物A ベネタミン塩)は、一実施形態において結晶形態であり、結晶形態であるとき、その結晶は以下の(i)および(j)の少なくとも一つの物理化学データによって特徴づけられる。好ましくは、(i)および(j)の両方の物理化学データによって特徴づけられる。(e)
図9に示される粉末X線回折スペクトルチャートもしくは表5に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)に回折ピークを有する、または表5に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)から選択される回折角(2θ)に少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超のピークを有する、粉末X線回折スペクトル、(j)
図10に示される示差走査熱量測定(DSC)チャート、またはピーク温度が約114℃である吸熱ピークを有する。
【0032】
化合物A ベネタミン塩の結晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.8度、約8.3度、約15.8度、約18.4度、約18.8度、約20.4度、約20.8度、および約21.2度の回折角(2θ)に少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの回折ピークを有する結晶形態である。
【0033】
化合物A ベネタミン塩の別の態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.8度、約8.3度、約15.8度、約18.4度、約18.8度、約20.4度、約20.8度、および約21.2度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
【0034】
3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 t-ブチルアミン塩(化合物A t-ブチルアミン塩)は、一実施形態において結晶形態であり、結晶形態であるとき、その結晶は以下の(k)の物理化学データによって特徴づけられる。(k)
図11に示される粉末X線回折スペクトルチャートもしくは表6に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)に回折ピークを有する、または表6に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)から選択される回折角(2θ)に少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超のピークを有する、粉末X線回折スペクトルを有する。
【0035】
化合物A t-ブチルアミン塩の結晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約8.3度、約14.4度、約15.5度、約16.7度、約18.9度、約20.7度、約21.0度、および約21.9度の回折角(2θ)に少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの回折ピークを有する結晶形態である。
【0036】
化合物A t-ブチルアミン塩の別の態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約8.3度、約14.4度、約15.5度、約16.7度、約18.9度、約20.7度、約21.0度、および約21.9度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
【0037】
3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ナトリウム塩(化合物A ナトリウム塩)は、一実施形態において結晶形態であり、結晶形態であるとき、その結晶は以下の(l)の物理化学データによって特徴づけられる。(l)
図12に示される粉末X線回折スペクトルチャートもしくは表7に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)に回折ピークを有する、または表7に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)から選択される回折角(2θ)に少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超のピークを有する、粉末X線回折スペクトルを有する。
【0038】
化合物A ナトリウム塩の結晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約9.7度、約10.7度、約13.1度、約13.8度、約15.1度、約18.4度、約22.9度、および約25.5度の回折角(2θ)に少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの回折ピークを有する結晶形態である。
【0039】
化合物A ナトリウム塩の別の態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約9.7度、約10.7度、約13.1度、約13.8度、約15.1度、約18.4度、約22.9度、および約25.5度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
【0040】
3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ヘミカルシウム塩(化合物A ヘミカルシウム塩)は、一実施形態において結晶形態であり、結晶形態であるとき、その結晶は以下の(l)の物理化学データによって特徴づけられる。(l)
図13に示される粉末X線回折スペクトルチャートもしくは表8に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)に回折ピークを有する、または表8に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)から選択される回折角(2θ)に少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超のピークを有する、粉末X線回折スペクトルを有する。
【0041】
化合物A ヘミカルシウム塩の結晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約5.3度、約8.2度、約8.8度、約10.8度、約18.6度、約20.3度、約20.8度および約22.1度の回折角(2θ)に少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの回折ピークを有する結晶形態である。
【0042】
化合物A ヘミカルシウム塩の別の態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約5.3度、約8.2度、約8.8度、約10.8度、約18.6度、約20.3度、約20.8度および約22.1度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
【0043】
本発明において、各結晶形は、本明細書に記載された物理化学データによって特定されるものであるが、各スペクトルデータは、その性質上多少変わり得るものであるから、厳密に解されるべきではない。
【0044】
例えば、粉末X線回折スペクトルデータは、その性質上、結晶の同一性の認定においては、回折角(2θ)や全体的なパターンが重要であり、相対強度は結晶成長の方向、粒子の大きさ、測定条件によって多少変わり得る。
【0045】
また、DSCデータにおいても、結晶の同一性の認定においては、全体的なパターンが重要であり、測定条件によって多少変わり得る。
【0046】
したがって、本発明の化合物において、粉末X線回折スペクトルまたはDSCとパターンが、それぞれ全体的に類似するものは、本発明の化合物に含まれるものである。
【0047】
本明細書中、粉末X線回折パターンにおける回折角(2θ(度))及びDSC分析における吸熱ピークのオンセット温度(℃)及びピーク温度(℃)の記載は、当該データ測定法において通常許容される誤差範囲を含むことを意味し、おおよそその回折角及び吸熱ピークのオンセット温度及びピーク温度であることを意味する。例えば、粉末X線回折における回折角(2θ(度))の「約」は、ある態様としては±0.2度であり、さらに別の態様としては、±0.1度である。DSC分析における吸熱ピークのオンセット温度(℃)またはピーク温度(℃)の「約」は、ある態様としては±2℃であり、別の態様としては±1℃であり、さらに別の態様としては±0.3℃である。
【0048】
本発明において、本発明の化合物は、例えば以下に示す方法、これらに準ずる方法または実施例に従って製造することが出来る。なお、再結晶を行う際、種晶は、使用しても、または使用しなくてもよい。
【0049】
[毒性]
化合物Aの毒性は低いものであるため、医薬品として安全に使用することができる。
【0050】
[医薬品への適用]
化合物Aは、神経保護および/または修復作用を有する。
化合物Aは、一実施形態において、持続性に優れた神経保護および/または修復作用を有する。
【0051】
そのため、化合物Aは、例えば、神経障害を伴う疾患の治療に有用である。
本発明において、神経保護および/または修復作用のある態様としては、グリア細胞(例えば、ミクログリア、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、上衣細胞、シュワン細胞、および衛星細胞など)を介した神経保護および/または修復作用が挙げられる。グリア細胞を介した神経保護および/または修復作用のある態様としては、シュワン細胞のミエリン化促進作用が挙げられる。
【0052】
化合物Aは、神経保護および/または修復作用を有するため、神経障害の予防および/または治療剤として使用することができる。
【0053】
本発明において、神経障害には、末梢神経障害や中枢神経障害が含まれる。
末梢神経障害を伴う疾患としては、例えば、糖尿病性神経障害、尿毒症に伴う代謝性末梢神経障害、ビタミンB欠乏に伴う末梢神経障害、ジフテリア、ボツリヌス食中毒、およびヘルペスウィルス(帯状疱疹)などの感染症に伴う末梢神経障害、抗けいれん薬のフェニトイン、抗菌薬(クロラムフェニコール、ニトロフラントイン、およびスルホンアミド系薬剤など)、化学療法薬(タキサン系:パクリタキセル、およびドセタキセルなど、プラチナ製剤:オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、およびネダアプラチンなど、ビンカアルカロイド系:ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビンデシンなど)、または鎮静薬(バルビタールおよびヘキソバルビタールなど)の投与に伴う薬剤性末梢神経障害、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、ギランバレー症候群、絞扼性神経障害(例えば、手根管症候群、胸郭出口症候群、肘部管症候群、梨状筋症候群、足根管症候群、および腓骨神経絞扼障害など)、多巣性運動ニューロパチーなどの免疫性末梢神経障害、結節性動脈周囲炎、アレルギー性血管炎、全身性エリテマトーデスなどのアレルギー疾患に伴う末梢神経障害、鉛、水銀、ヒ素、およびタリウムなどの重金属、シンナーなどの有機溶媒、有機リン系殺虫剤、リン酸トリオルソクレシル(TOCP)など毒性物質、またはアルコールの摂取に伴う中毒性末梢神経障害、がんが神経を圧迫することによる末梢神経障害、遺伝性疾患(例えば、甲状腺機能低下症、腎不全、シャルコー・マリー・トゥース病、レフサム病、ポルフィリン症、ファブリー病、および遺伝性圧脆弱性ニューロパチーなど)に伴う末梢神経障害などが挙げられる。
【0054】
中枢神経障害を伴う疾患としては、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、ハンチントン病、ジストニア、プリオン病、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、原発性側索硬化症、球脊髄性筋萎縮症、脊髄性筋萎縮症、痙性対麻痺、脊髄空洞症、多発性硬化症、視神経脊髄炎、同心円硬化症、急性散在性脳脊髄炎、炎症性広汎性硬化症、亜急性硬化症全脳炎、進行性多巣性白質脳症などの感染性神経障害、低酸素脳症や橋中心髄鞘破壊症などの中毒・代謝性神経障害、およびBinswanger病などの血管性神経障害などが挙げられる。
【0055】
本発明の化合物は、
1)その化合物の予防および/または治療効果の補完および/または増強、
2)その化合物の動態・吸収改善、投与量の低減、および/または
3)その化合物の副作用の軽減のために他の薬物と組み合わせて、併用薬として投与してもよい。
【0056】
本発明の化合物と他の薬物の併用薬は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、また別々の製剤にして投与する形態をとってもよい。この別々の製剤にして投与する場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また、時間差による投与は、本発明の化合物を先に投与し、他の薬物を後に投与してもよいし、他の薬物を先に投与し、本発明の化合物を後に投与してもよい。それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。
【0057】
上記併用薬により、予防および/または治療効果を奏する疾患は特に限定されず、本発明の化合物の予防および/または治療効果を補完および/または増強する疾患であればよい。
【0058】
また、本発明の化合物と組み合わせる併用薬としては、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
【0059】
本発明の化合物の神経障害に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬物としては、例えば、アルドース還元酵素阻害薬、ビタミン剤、および脳保護薬が挙げられる。アルドース還元酵素阻害薬としては、エパルレスタットが挙げられる。ビタミン剤としては、メコバラミンなどが挙げられる。脳保護薬としては、エダラボンが挙げられる。
【0060】
前記他の薬物の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、化合物Aと他の薬剤の配合比は、投与対象の年齢及び体重、投与方法、投与時間、対象疾患、症状、組み合わせ等により適宜選択することができる。例えば、化合物A1質量部に対し、他の薬剤を0.01乃至100質量部用いればよい。他の薬剤は任意の2種以上を適宜の割合で組み合わせて投与してもよい。
【0061】
本発明の化合物または本発明の化合物と他の薬剤の併用剤を上記の目的で用いるには、通常、薬学的に許容される担体とともに適当な医薬組成物として製剤化したうえで、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。
【0062】
本発明の化合物は、薬学的有効量で哺乳動物(好ましくはヒト、より好ましくは患者)へ投与される。
【0063】
本発明の化合物の投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人当たり、一回につき、1ngから1000mgの範囲で一日一回から数回経口投与されるか、または成人一人当たり、一回につき、0.1ngから10mgの範囲で一日一回から数回非経口投与されるか、または一日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。もちろん前記したように、投与量は種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与の必要な場合もある。
【0064】
本発明の化合物又は本発明の化合物と他の薬剤の併用剤を投与する際には、経口投与のための内服用固形剤若しくは内服用液剤、経口投与における徐放性製剤、放出制御製剤、または非経口投与のための注射剤、外用剤、吸入剤若しくは坐剤等として用いられる。
【0065】
本発明の化合物は、上記医薬品の原薬として使用される。
【0066】
本発明の化合物を単剤として、あるいは他の薬剤を組み合わせて併用剤として、上記の疾患の予防および/または治療の目的に用いるには、有効成分である当該物質を、通常、各種の添加剤または溶媒等の薬学的に許容される担体とともに製剤化したうえで、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。ここで、薬学的に許容される担体とは、一般的に医薬品の製剤に用いられる、有効成分以外の物質を意味する。薬学的に許容される担体は、その製剤の投与量において薬理作用を示さず、無害で、有効成分の治療効果を妨げないものが好ましい。また、薬学的に許容される担体は、有効成分および製剤の有用性を高める、製剤化を容易にする、品質の安定化を図る、または使用性を向上させる等の目的で用いることもできる。具体的には、薬事日報社2000年刊「医薬品添加物事典」(日本医薬品添加剤協会編集)等に記載されているような物質を、適宜目的に応じて選択すればよい。
【0067】
化合物Aは、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。経口剤としては、例えば、内服用液剤(例えば、エリキシル剤、シロップ剤、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤、乳剤)、内服用固形剤(例えば、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊錠を含む)、丸剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、ゼラチンカプセル、マイクロカプセルを含む)、散剤、顆粒剤、トローチ剤)等が挙げられる。非経口剤としては、例えば、液剤(例えば、注射剤(硝子体内注射剤、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、点滴剤等)、点眼剤(例えば、水性点眼剤(水性点眼液、水性懸濁点眼液、粘性点眼液、可溶化点眼液等)、非水性点眼剤(非水性点眼液、非水性懸濁点眼液等))等)、外用剤(例えば、軟膏(眼軟膏等))、点耳剤等が挙げられる。これらの製剤は、速放性製剤、徐放性製剤などの放出制御剤であってもよい。これらの製剤は公知の方法、例えば、日本薬局方に記載の方法等により製造することができる。
【0068】
経口剤としての内服用液剤は、例えば、有効成分を一般的に用いられる希釈剤(例えば、精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化されることにより製造される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0069】
経口剤としての内服用固形剤は、例えば、有効成分を賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(例えば、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合し、常法に従って製剤化される。また、必要によりコーティング剤(例えば、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。
【0070】
非経口剤としての外用剤は公知の方法または通常使用されている処方により製造される。例えば、軟膏剤は有効成分を基剤に研和または溶融させて製造される。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(例えば、アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(例えば、ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(例えば、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(例えば、ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(例えば、親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(例えば、ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(例えば、ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0071】
非経口剤としての注射剤には溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含される。注射剤は、例えば有効成分を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0072】
本発明において、化合物Aまたはその各種塩は、例えば後記する実施例、これらに準ずる方法に従って製造することが出来る。なお、再結晶を行う際、種晶は、使用しても、または使用しなくてもよい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例および生物学的実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
クロマトグラフィーによる分離の箇所およびTLCに示されているカッコ内の溶媒は、使用した溶出溶媒または展開溶媒を示し、割合は体積比を表す。
【0075】
NMRの箇所に示されているカッコ内は測定に使用した溶媒を示す。
【0076】
本明細書中に用いた化合物名は、一般的にIUPACの規則に準じて命名を行うコンピュータプログラム、Advanced Chemistry Development社のACD/Name(登録商標)、OpenEye Scientific Software社のLexichem Toolkit 1.4.2またはPerkinElmer社のChemDraw(登録商標)Ultraを用いるか、または、IUPAC命名法に準じて命名したものである。
【0077】
LCMSはWaters i-classシステムを使用し、以下の条件で実施した。
カラム:YMC Triart C18 2.0mm×30mm,1.9μm;流量:1.0mL/分;温度:30℃;移動相A:0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液;移動相B:0.1%TFAアセトニトリル溶液:グラジエント(移動相(A):移動相(B)の比率を記載):0~0.10分:(95%:5%);0.10~1.20分:(95%:5%)から(5%:95%);1.20~1.50分:(5%:95%)。
【0078】
粉末X線回折スペクトルは以下のいずれかの条件で測定した。
条件1
装置:リガク製 SmartLab
ターゲット:Cu
電圧:45kV
電流:200mA
走査速度:30度/min
条件2
装置:PANalytical製 ENPYREAN
ターゲット:Cu
電圧:45kV
電流:40mA
走査速度:0.164度/sec
示差走査熱量測定(DSC)は以下のいずれかの条件で測定した。
条件1
装置:ティー・エイ・インスツルメント製 Discovery DSC
試料セル:アルミニウムパン
窒素ガス流量:40mL/min
条件2
装置:メトラー・トレド製 TGA/DSC 3+
試料セル:アルミニウムパン
アルゴンガス流量:20mL/min
条件3
装置:メトラー・トレド製 DSC 3+
試料セル:アルミニウムパン
アルゴンガス流量:20mL/min
【0079】
実施例1:イソプロピル 3-(2-ヒドロキシフェニル)プロパノエート
3,4-ジヒドロクマリン(50.0g)のイソプロピルアルコール(500mL)溶液に、硫酸(0.26mL)を加え、反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、得られた残さを酢酸エチルで希釈した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮し、以下の物性値を有する標題化合物(73.2g)を得た。
1H-NMR(CDCl3):δ 1.20, 2.66-2.70, 2.87-2.91, 4.95-5.08, 6.86-6.91, 7.06-7.15, 7.35。
【0080】
実施例2:イソプロピル 3-(2-(ペンタ-4-イン-1-イルオキシ)フェニル)プロパノエート
実施例1で製造した化合物(3.00g)のN,N-ジメチルアセトアミド(25mL)溶液に、室温で炭酸セシウム(9.39g)を加え、同温で15分間撹拌した。反応溶液に室温で5-クロロ-1-ペンチン(CAS登録番号:14267-92-6)(1.63g)を加え、60℃で3時間撹拌した。反応溶液に水を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:0→5:1)によって精製することにより、以下の物性値を有する標題化合物(2.40g)を得た。
HPLC保持時間(分):1.13。
【0081】
実施例3:イソプロピル (E)-3-(2-((5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ペンタ-4-エン-1-イル)オキシ)フェニル)プロパノエート
実施例2で製造した化合物(1.00g)のヘプタン(2mL)溶液に、室温で4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1.17g)と4-ジメチルアミノ安息香酸(60.2mg)を加え、100℃で4時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却後、濃縮した。得られた残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1→4:1)によって精製することにより、以下の物性値を有する標題化合物(503mg)を得た。
HPLC保持時間(分):1.38。
【0082】
実施例3(1):N-(3-ブロモフェニル)ベンゼンスルホンアミド
3-ブロモアニリン(1.02g)のジクロロメタン(20mL)溶液に、0℃でピリジン(0.95mL)、N,N-ジメチルアミノピリジン(以下、DMAPと略記)(72.4mg)および塩化ベンゼンスルホニル(1.10g)を加え、室温で2時間撹拌した。反応溶液を濃縮後、得られた残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1→2:1)によって精製することにより、以下の物性値を有する標題化合物(1.96g)を得た。
HPLC保持時間(分):0.98。
【0083】
実施例4:イソプロピル (E)-3-(2-((5-(3-(フェニルスルホンアミド)フェニル)ペンタ-4-エン-1-イル)オキシ)フェニル)プロパノエート
実施例3で製造した化合物(180mg)のTHF(3mL)溶液に、実施例3(1)で製造した化合物(168mg)、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル)[2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)(0.035g)および2Mリン酸三カリウム水溶液(0.67mL)を加え、60℃で1時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:1→2:1)によって精製することにより、以下の物性値を有する標題化合物(113mg)を得た。
HPLC保持時間(分):1.24
【0084】
実施例5:3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸
【0085】
【0086】
実施例4で製造した化合物(146mg)のTHF(0.5mL)とメタノール(0.1mL)の溶液に、1M水酸化リチウム水溶液(0.5mL)を加え、50℃で8時間撹拌した。1M塩酸を加え酸性にし、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮することにより、以下の物性値を有する標題化合物(105mg)を得た。
形態:非晶質
HPLC保持時間(分):1.10
1H-NMR(CD3OD):δ 1.95-2.03, 2.41-2.46, 2.57-2.61, 2.92-2.95, 4.03-4.06, 6.24, 6.36, 6.86, 6.90-6.95, 7.06-7.08, 7.11-7.19, 7.45-7.49, 7.55, 7.75-7.78。
【0087】
実施例6:3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ジイソプロピルアミン塩の結晶
実施例5で得られた化合物1gを酢酸イソプロピル3.0mLに溶解させた。40℃に加熱した後、テトラヒドロフラン1.5mLを添加した。この溶液にジイソプロピルアミン647mgを加えた。種結晶を0.5mg添加すると徐々に結晶が析出した。さらに、酢酸イソプロピル6.0mLを1時間かけて滴加した後、0℃まで2時間かけて冷却した。0℃で1時間撹拌し、結晶をろ取した。ろ取した結晶を真空ポンプ,検体乾燥器を用いて50℃で乾燥し、該結晶を1.07g得た。本実施例化合物であるジイソプロピルアミン塩は、他のアミン塩と比べて純度の高い結晶として析出させることができ、化合物AのB晶の製造中間体として有用である。
【0088】
なお、種結晶は以下の方法により取得した。まず、実施例5で得られた化合物150mgをテトラヒドロフラン0.75mLに溶解させた。当該溶液を40℃に加熱した後、ジイソプロピルアミン51mgを加え、次いで酢酸イソプロピル1.5mL追加したところ徐々に結晶が析出した。25℃で撹拌しながら結晶をろ取し、ろ取した結晶を真空ポンプおよび検体乾燥器を用いて50℃で乾燥することにより種晶を得た。
【0089】
下記の条件で測定した該結晶の粉末X線回析スペクトルチャートを
図1に、DSCチャートを
図2にそれぞれ示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
測定条件:条件2
Cu-Kα線を使用した粉末X線回折スペクトル法で得られた回折角(2θ)(度)および相対強度(%)の結果を表1に示す。
【0090】
【0091】
(2)示差走査熱量測定(DSC)
測定条件:条件2
試料量:6.0mg
昇温速度:10℃/min(25~300℃)
吸熱ピーク:オンセット温度約125℃、ピーク温度約133℃
実施例7:3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸の結晶(B晶)
実施例5で得られた化合物10gに酢酸イソプロピル30mLを加えて、35℃に加熱した。その後、ノルマルヘプタンを21mL添加した。種結晶を0.1g添加すると徐々に結晶が析出した。3時間撹拌後、ノルマルヘプタン69mLを2時間かけて滴加した後、0℃まで2時間かけて冷却した。0℃で1時間撹拌したのち、結晶をろ取した。ろ取した結晶を真空ポンプ,検体乾燥器を用いて40℃で乾燥し、該結晶を9.63g得た。
なお、種結晶は以下の方法により取得した。まず、実施例5で得られた化合物3gに酢酸イソプロピル9mLを加えて、35℃に加熱した。その後、当該溶液にノルマルヘプタンを6.3mL添加し、さらに実施例8記載のA晶を0.03g添加すると徐々に結晶が析出した。15時間撹拌後、ノルマルヘプタン20.7mLを2時間かけて滴加した後、0℃まで2時間かけて冷却した。0℃で1時間撹拌したのち、結晶をろ取し、ろ取した結晶を真空ポンプおよび検体乾燥器を用いて40℃で乾燥することにより種晶を取得した。
【0092】
下記の条件で測定した該結晶の粉末X線回析スペクトルチャートを
図3に、DSCチャートを
図4にそれぞれ示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
測定条件:条件2
Cu-Kα線を使用した粉末X線回折スペクトル法で得られた回折角(2θ)(度)および相対強度(%)の結果を表2に示す。
【0093】
【0094】
(2)示差走査熱量測定(DSC)
測定条件:条件3
試料量:6.5mg
昇温速度:0.01℃/min(85.5~88.5℃)
吸熱ピーク:オンセット温度約86.2℃、ピーク温度約86.4℃
なお、化合物AのB晶は実施例7(1)~(6)に示した方法でも取得することができる。
【0095】
実施例7(1):N-3-[(1E)-5-クロロペンタ-1-エン-1-イル]フェニルベンゼンスルホンアミド
実施例3(1)で合成した化合物(10.0g)、2-[(1E)-5-クロロペンタ―1-エン―1-イル]-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン(CAS登録番号:126688-98-0)(8.86g)のテトラヒドロフラン(60mL)溶液にクロロ(クロチル)[(p-ジメチルアミノフェニル)(ジ―tert―ブチルホスヒノ)]パラジウム(II)(14.8mg)およびリン酸カリウム(20.4g)の水(32mL)溶液を加え、60℃で1時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、メチルtert-ブチルエーテル(100mL)を加えた。分液後、有機層を1mol/L塩酸水溶液(30mL)、10%食塩水(30mL)、10%食塩水(30mL)で順次洗浄した。有機層にメチルtert-ブチルエーテル(5mL)に懸濁させた活性炭(0.3g)を加えて30分間撹拌した後、不溶物をセライトろ過した。セライトをメチルtert-ブチルエーテル(40mL)で掛け洗った後、ろ液を3v/wまで濃縮した。濃縮液にトルエン(30mL)を加え、3v/wまで濃縮した。再度、濃縮液にトルエン(30mL)を加え、3v/wまで濃縮した。内温45℃に温調した濃縮液にn-ヘプタン(20mL)を加えて15分間以上撹拌した後、さらにn-ヘプタン(40mL)を加えた。内温25℃に冷却して1時間撹拌した後、沈殿物をろ過した。湿結晶を12時間50℃で真空乾燥して、以下の物性値を有する標題化合物(10.0g)を得た。性状:微黄色固体1H-NMR(CDCl3、400MHz):δ 7.81-7.79 (m, 2H), 7.56-7.52 (m, 1H), 7.47-7.42 (m, 2H), 7.15 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.09-7.06 (m, 2H), 6.92-6.90 (m, 2H), 6.33 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.11 (dt, J = 16.0, 7.2 Hz, 1H), 3.56 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.37-2.32 (m, 2H), 1.96-1.89 (m, 2H)。
【0096】
実施例7(2):N-3-[(1E)-5-ヨードペンタ-1-エン-1-イル]フェニルベンゼンスルホンアミド
実施例7(1)で合成した化合物(10.0g)のメチルエチルケトン(81mL)溶液にN,N-ジメチルホルムアミド(9mL)、濃硫酸(29.2mg)およびヨウ化ナトリウム(22.3g)を加え、75℃で5時間撹拌した。反応溶液を50℃に調整してメチルエチルケトン(60mL)を加え、室温まで冷却した後、水(50mL)を加えた。分液後、有機層を10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(60mL)で洗浄した。有機層にトルエン(30mL)および水(50mL)を加えて分液した。有機層を水(50mL)で洗浄した後、4v/wまで濃縮した。濃縮液にトルエン(30mL)を加え、4v/wまで濃縮した。再度、濃縮液にトルエン(30mL)を加え、4v/wまで濃縮した。濃縮液にトルエンを加えて液量を4.7v/wに調製した。内温45℃に温調した溶液にn-ヘプタン(29mL)を加えて10分間以上撹拌した後、さらにn-ヘプタン(9.3mL)を加えた。内温25℃に冷却して1時間撹拌した後、沈殿物をろ過した。湿結晶を12時間50℃で真空乾燥して、以下の物性値を有する標題化合物(12.0g)を得た。
性状:微褐色固体
1H-NMR(CDCl3、400MHz):δ 7.80-7.78 (m, 2H), 7.56-7.52 (m, 1H), 7.47-7.42 (m, 2H), 7.15 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.10-7.05 (m, 2H), 6.91-6.89 (m, 1H), 6.79 (brs, 1H), 6.34 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.08 (dt, J = 16.0, 7.2 Hz, 1H), 3.21 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.33-2.27 (m, 2H), 2.01-1.94 (m, 2H)。
【0097】
実施例7(3):tert-ブチル=(ベンゼンスルホニル)3-[(1E)-5-ヨードペンタ-1-エン-1-イル]フェニルカルバマート
内温0℃に冷却したDMAP(1.4g)、トリエチルアミン(49mL)、二炭酸ジ―tert―ブチル(66.4g)のテトラヒドロフラン(350mL)溶液に、実施例7(2)で合成した化合物(100g)のテトラヒドロフラン(400mL)溶液を滴加した。反応溶液を1時間撹拌した後、0.5mol/L硫酸水溶液(450mL)およびメチルtert-ブチルエーテル(1000mL)を加えて分液した。有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(300mL)、水(300mL)で順次洗浄した。有機層を5v/wに濃縮した後、トルエン(600mL)を加えて3.5v/wまで濃縮した。再度、濃縮液にトルエン(600mL)を加えて3.5v/wまで濃縮した。内温60℃に温調した濃縮液にイソプロピルアルコール(700mL)を加えた。内温30℃に冷却した後、種結晶50mgを添加して1時間撹拌した。さらにイソプロピルアルコール(1000mL)を加えて、1時間撹拌した。内温30~40℃に温調して1時間撹拌した後、内温0℃に冷却して1時間撹拌し、沈殿物をろ過した。湿結晶を12時間40℃で真空乾燥して、以下の物性値を有する標題化合物(108g)を得た。
性状:微桃赤色固体
1H-NMR(CDCl3、400MHz):δ 8.02-7.99 (m, 2H), 7.69-7.65 (m, 1H), 7.59-7.55 (m, 2H), 7.40-7.33 (m, 2H), 7.25-7.24 (m, 1H), 7.10-7.07 (m, 1H), 6.46 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.18 (dt, J = 16.0, 6.8 Hz, 1H), 3.24 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.38-2.32 (m, 2H), 2.04-1.99 (m, 2H), 1.34 (s, 9H)。
【0098】
実施例7(4):プロパン-2-イル=3-(2-{(4E)-5-3-[(ベンゼンスルホニル)(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]フェニルペンタ-4-エン-1-イル}オキシフェニル)プロパノアート
実施例1で合成した化合物(473mg)のイソプロピルアルコール(3.1mL)溶液に、実施例7(3)で合成した化合物(1.0g)およびN-メチル-2-ピロリドン(0.5mL)溶液を加えて内温10℃に冷却した。この溶液に、内温10℃に冷却したナトリウム―tert―ブトキシド(218.7mg)のN-メチル-2-ピロリドン(2.0mL)溶液を滴下した。30分間以上撹拌して、以下の物性値を有する標題化合物の溶液を得た。
シリカゲルカラムクロマトグラフィー精製品の性状:白色固体
1H-NMR(CDCl3、400MHz):δ 8.02-7.99 (m, 2H), 7.67-7.63 (m, 1H), 7.57-7.54 (m, 2H), 7.40-7.33 (m, 2H), 7.24-7.23 (m, 1H), 7.20-7.16 (m, 2H), 7.09-7.06 (m, 1H), 6.89-6.83 (m, 2H), 6.45 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.29 (dt, J = 16.0, 7.2 Hz, 1H), 5.04-4.98 (m, 1H), 4.03 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.97 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.62-2.59 (m, 2H), 2.47-2.42 (m, 2H), 2.04-1.99 (m, 2H), 1.34 (s, 9H), 1.21 (d, J = 6.4 Hz, 6H)。
【0099】
実施例7(5):3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ジイソプロピルアミン塩の結晶
実施例7(4)で合成した化合物の溶液に2mol/L水酸化カリウム水溶液(4.0mL)を加え、内温90℃で3時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却した後、35%クエン酸水溶液(5.0mL)および酢酸イソプロピル(5.0mL)を加えた。有機層と水層を分液した後、水層を酢酸イソプロピル(5.0mL)で抽出した。合わせた有機層を5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(4.0mL)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(4.0mL)、水(4.0mL)で順次洗浄した。有機層を3v/wまで濃縮した。濃縮液にテトラヒドロフラン(1.0mL)を加えて内温40℃に温調した。ジイソプロピルアミン(534μL)およびテトラヒドロフラン(0.5mL)を加えて、種結晶(0.5mg)を添加した。酢酸イソプロピル(6.0mL)を滴加して内温0℃に冷却した。2時間撹拌した後、沈殿物をろ過した。湿結晶を12時間50℃で真空乾燥して、以下の物性値を有する標題化合物(913mg)を得た。
性状:白色固体
H-NMR(CDCl3、400MHz):δ 7.89-7.86 (m, 2H), 7.47-7.35 (m, 4H), 7.25-7.20 (m, 2H), 7.15-7.08 (m, 2H), 6.87-6.78 (m, 3H), 6.40 (dt, J = 15.6, 6.8 Hz, 1H), 6.23 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 4.02 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 3.35-3.25 (m, 2H), 2.99-2.95 (m, 2H), 2.62-2.58 (m, 2H), 2.42-2.38 (m, 2H), 2.00-1.94 (m, 2H), 1.36 (d, J = 6.8 Hz, 12H)。
【0100】
実施例7(6):3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸の結晶(B晶)
実施例7(5)で合成した化合物(1.217g)の酢酸イソプロピル(5mL)溶液に20%クエン酸水溶液(3mL)を加えて分液した。有機層を水(3mL)で2回洗浄した。有機層を2.5v/wに濃縮した後、酢酸イソプロピル(5mL)を加えて2.5v/wまで濃縮した。濃縮液に酢酸イソプロピル(1mL)とn-ヘプタン(1mL)を加えた。内温40℃に温調した後、n-ヘプタン(1.61mL)を滴加した。種結晶(1.0mg)を添加して30分間以上撹拌した後、内温35℃に降温した。3時間以上撹拌した後、n-ヘプタン(0.3mL)、n-ヘプタン(0.3mL)、n-ヘプタン(5.79mL)を順次滴加した。内温0℃に冷却して1時間撹拌し、沈殿物をろ過した。湿結晶を12時間40℃で真空乾燥して、化合物AのB晶(920mg)を得た。
【0101】
実施例8:3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸の結晶(A晶)
実施例5で得られた化合物を149.6gを酢酸エチル100mLに室温で溶解させた。この溶液にn-へプタン900mLを加えた。溶液が少し白く濁り、徐々に2層になり、結晶がフラスコの底で塊になったため、これを砕いた。その後、室温で3日間撹拌し、結晶をろ取した。ろ取した結晶を空気中で乾燥し、該結晶を121.3g得た。
【0102】
下記の条件で測定した該結晶の粉末X線回析スペクトルチャートを
図5に、DSCチャートを
図6にそれぞれ示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
測定条件:条件3
Cu-Kα線を使用した粉末X線回折スペクトル法で得られた回折角(2θ)(度)および相対強度(%)の結果を表3に示す。
【0103】
【0104】
(2)示差走査熱量測定(DSC)
測定条件:条件3
試料量:6.4mg
昇温速度:0.01℃/min(85.5~88.5℃)
吸熱ピーク:オンセット温度約86.3℃、ピーク温度約86.8℃
【0105】
実施例9:3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 エチレンジアミン塩の結晶
実施例8(フリー体A晶)で得られた化合物200mgにエタノール0.4mLを加えて室温で撹拌した。この中にエチレンジアミン29μLを加えた後、MTBE0.8mLを添加した。超音波照射した後、MTBE(2-メトキシ-2-メチルプロパン)1.2mLを追加して室温で10分撹拌した。固体をろ取し、真空ポンプ、検体乾燥器を用いて室温で乾燥し、該結晶を201mg得た。
【0106】
下記の条件で測定した該結晶の粉末X線回析スペクトルチャートを
図7に、DSCチャートを
図8にそれぞれ示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
測定条件:条件1
Cu-Kα線を使用した粉末X線回折スペクトル法で得られた回折角(2θ)(度)および相対強度(%)の結果を表4に示す。
【0107】
【0108】
(2)示差走査熱量測定(DSC)
測定条件:条件1
試料量:1.0mg
昇温速度:10℃/min(20~160℃)
吸熱ピーク:オンセット温度約148℃、ピーク温度約153℃
【0109】
実施例10:3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ベネタミン塩の結晶
実施例8(フリー体A晶)で得られた化合物1gにメタノール2mLを加えた。さらにベネタミン450mgをメタノール1mLに溶かした溶液を加えた。溶媒を減圧留去し、残渣にジエチルエーテル430μLを加えて再度溶媒を減圧留去した.さらに再度ジクロロメタン430μLを加えて溶媒を減圧留去した。アセトニトリル3mLと水0.15mLを加えて超音波照射した後、室温で1時間撹拌した。アセトニトリル1.8mLと水0.1mLを加えてを加えて室温で5日間撹拌した。固体をろ取し、真空ポンプ、検体乾燥器を用いて室温で一晩乾燥し、該結晶を615mg得た。
【0110】
下記の条件で測定した該結晶の粉末X線回析スペクトルチャートを
図9に、DSCチャートを
図10にそれぞれ示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
測定条件:条件1
Cu-Kα線を使用した粉末X線回折スペクトル法で得られた回折角(2θ)(度)および相対強度(%)の結果を表5に示す。
【0111】
【0112】
(2)示差走査熱量測定(DSC)
測定条件:条件1
試料量:1.0mg
昇温速度:10℃/min(20~160℃)
吸熱ピーク:オンセット温度約112℃、ピーク温度約114℃
【0113】
実施例11:3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 t-ブチルアミン塩の結晶
実施例8(フリー体A晶)で得られた化合物100mgにエタノール1.5mLを加え溶解させ、t-ブチルアミン13.5mgのMTBE1.5mL溶液を加えて室温で1日撹拌した。固体をろ取後、一晩乾燥し、該結晶を113mg得た。
【0114】
下記の条件で測定した該結晶の粉末X線回析スペクトルチャートを
図11に示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
測定条件:条件1
Cu-Kα線を使用した粉末X線回折スペクトル法で得られた回折角(2θ)(度)および相対強度(%)の結果を表6に示す。
【0115】
【0116】
実施例12:3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ナトリウム塩の結晶
実施例8(フリー体A晶)で得られた化合物100mgにメタノール200μL投入し溶解させた。ここに2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液107.4μL投入し、濃縮乾固した。その後2-ブタノール200μL投入し撹拌後、濃縮乾固した。その後、2-ブタノール200μL投入し、室温で7日間撹拌後、60℃で1日間撹拌した。そのまま濃縮乾固し、該結晶を100mg得た。
【0117】
下記の条件で測定した該結晶の粉末X線回析スペクトルチャートを
図12に示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
測定条件:条件1
Cu-Kα線を使用した粉末X線回折スペクトル法で得られた回折角(2θ)(度)および相対強度(%)の結果を表7に示す。
【0118】
【0119】
実施例13:3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸 ヘミカルシウム塩の結晶
実施例8(フリー体A晶)で得られた化合物500 mgに水酸化カルシウム39.8mgを加えた。メタノール1mL、水100μLを加え超音波を当て、懸濁液とした。これを濃縮乾固した。イソプロピルアルコール2.5mLと水0.5mLを加え、室温で4日間撹拌した。結晶をろ過、乾燥し、該結晶を431mg得た。
【0120】
下記の条件で測定した該結晶の粉末X線回析スペクトルチャートを
図13に示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
測定条件:条件1
Cu-Kα線を使用した粉末X線回折スペクトル法で得られた回折角(2θ)(度)および相対強度(%)の結果を表8に示す。
【0121】
【0122】
実施例14:晶析溶媒中での安定性評価
実施例7(フリー体B晶)および実施例8(フリー体A晶)記載の結晶原薬について、競合スラリーによる収束実験を実施した。
フリー体A晶とB晶を各50 mgずつ試験管内で混合し、各種組成の溶媒を加えてスラリーとした。0℃~60℃にて12時間以上撹拌した後、結晶をろ別した。得られた湿結晶を粉末X線回折にて分析した。結果を表9および表10に示す。
【0123】
【0124】
【0125】
いずれの溶媒組成、温度においても、B晶へ収束したことから、B晶が安定晶であることが示唆される。
【0126】
実施例15:粉砕工程における製造性評価
実施例7(フリー体B晶)および実施例8(フリー体A晶)の結晶原薬について、A-O Jet mill(株式会社セイシン企業)を使用して、以下の粉砕条件で未粉砕原薬を粉砕した。
粉砕条件:供給圧 0.64MPa、粉砕圧 0.60MPa、フィード速度 2.0g/min
<結果・考察>
A晶の未粉砕原薬(10 g)を粉砕した場合には、ミル本体内で著しい固着・閉塞が発生したため、全量の粉砕は不可能であった。B晶の未粉砕原薬(10 g)を粉砕した場合には、目立った固着は発生せず、全量の粉砕可能であったことから、B晶は取扱いに優れた結晶形である。
【0127】
実施例16:溶解度評価
実施例7(フリー体B晶)および実施例8(フリー体A晶)記載の結晶原薬について、Crystal-16(Avantium Technologies,BV)を用いる動的溶解法により溶解度を測定した。
<実験方法>
あらかじめ秤量した実施例7(フリー体B晶)及び実施例8(フリー体A晶)並びに溶媒(n-へプタンと酢酸イソプロピルの混媒;n-ヘプタン/酢酸イソプロピル=3.6/4.35、4.8/4.35、12/4.35)を透明なガラスバイアル内で混合し、徐々に(0.1℃/minで)加熱・降温した。各バイアルの濁度をモニターし、温度プロファイルと共にプロットして、各結晶の溶解及び沈殿点を記録した。溶解点の溶液の濃度(固体と溶媒の質量に基づいて計算した)を、記録した温度での飽和濃度として処理し、溶解度をこの濃度に基づいて計算した。
<結果・考察>
いずれの溶媒組成(n-へプタンと酢酸イソプロピルの混媒)においても、40℃以下の温度域において、B晶と比較してA晶の溶解度が高い値を示した。
【0128】
実施例17:かさ密度の測定
実施例7(フリー体B晶)および実施例8(フリー体A晶)記載の結晶原薬について、かさ密度を測定した。
<実験方法>
風袋引きした50 mLガラス製メスシリンダー内に静かに実施例7(フリー体B晶)および実施例8(フリー体A晶)の結晶原薬約5 gを入れ、充填した結晶原薬の質量を測定した。その後、メスシリンダーをゆっくりと1回反転させたときの結晶原薬の見かけの体積を測定した。結晶原薬の質量を見かけの体積で除した値をルーズかさ密度(緩め見かけ密度)とした。その後、メスシリンダーをフルイ振とう器(株式会社飯田製作所、ふるい振盪機 ES-65型)にセットし、3分間振動を与えたあとの体積を測定した。結晶原薬をタップ後の見かけの体積で除した値をタップかさ密度(固め見かけ密度)とした。結果を表11に示す。
<結果・考察>
A晶と比較し、B晶はルーズかさ密度、タップかさ密度ともに高い値を示したことから、B晶の方が流動性が高く、取扱いに優れた結晶形である。
【0129】
【0130】
生物学的実験例1:シュワン細胞を用いたin vitro試験
(試験方法)
1)ラットシュワン細胞の調製
クリーンベンチ内で生後0~2日の新生仔ラットの後根神経節(以下DRGと略す)を摘出し、DMEM中に回収した。回収後のチューブを室温にて400g、3分間、遠心分離し、上清を除去後、0.25%コラゲナーゼ溶液を添加した。37℃、30分間のインキュベートにより摘出DRGを分散・分離させた後、室温にて400g、3分間遠心分離し、上清を除去後、0.25%Trypsin/EDTAとDNaseIを添加した。37℃、30分間のインキュベート後、10%FBSを添加したDMEM(10%FBS-DMEM)でtrypsinを不活化し、室温にて400g、3分間遠心分離した。上清を除去後、10%FBS-DMEMを添加して細胞懸濁液を調製し、フィルター(直径70μm)に通した。フィルターを通した細胞懸濁液の細胞数をカウントし、2.0×105 cells/mLに調製した後、ポリ-D-リジンコート96-well black-clear plateに100μL/wellずつ播種し、CO2インキュベーターにて5%CO2、95%Air、37℃の条件下で静置培養した。
2)化合物添加
細胞培養プレートの培地をアスピレーターで吸引除去し、1%透析済みFBSと100μmol/L dibutyryl cyclic AMPを添加したDMEMを添加した。その後、DMSOに溶解した実施例5記載の化合物の溶液(終濃度0.1、0.3、1または3μmol/L)を10μLずつ添加し、CO2インキュベーターにて5%CO2、95%Air、37℃の条件下で静置培養した。
3)細胞免疫染色
化合物処置後3日に細胞培養プレートの各wellにホルムアルデヒドを添加し、室温で30分以上静置した。上清を除去後、0.3%TritonX-100溶液を添加し、室温で20分以上静置した。上清を除去後、5μg/mL 抗myeline-associated glycoprotein抗体(抗MAG抗体)溶液を添加し、室温で60分以上または4℃(許容範囲:1~9℃)で一晩静置した。0.1%TritonX-100溶液で3回洗浄した後、10μg/mL Alexa fluor 488 anti-mouse IgG溶液を添加し、室温で60分以上または4℃で一晩静置した。0.1%TritonX-100溶液で4回洗浄した後、1μg/mL Hoechst33342溶液を添加し、核を染色した。
(評価方法)
蛍光画像のMAG陽性面積と細胞核数を算出し、それぞれ5視野/wellの総和を各wellのMAG陽性面積及び細胞核数とした。その後、各wellのMAG陽性面積を細胞核数で除した値(MAG/細胞核数値)を算出し、以下の式により媒体群に対するシュワン細胞分化促進率を求めた。
【0131】
【0132】
(結果)
0.3または3μmol/Lの実施例5記載の化合物の溶液を添加した場合の媒体群に対するシュワン細胞分化促進率(% of vehicle値)は、表12のとおりであった。このことから、実施例5記載の化合物は強力な神経保護および/または修復作用を有すると考えられる。
【0133】
【0134】
生物学的実験例2:ストレプトゾトシン誘発ラットモデルを用いた試験
実施例5記載の化合物の糖尿病性末梢神経障害における治療効果を評価するため、ストレプトゾトシンモデルを用いたin vivo試験を行った。
(試験方法)
1)モデル作成法
ラットに55 mg/kgのストレプトゾトシン(以下STZと略す)を単回静脈内投与することで作製した。
2)侵害受容閾値の測定
STZ投与までに1回以上、ラットを測定用の透明アクリルケージに10分間以上入れ、測定環境にラットを馴化させた.0.4、0.6、1、2、4、6、8、15 gの8本のvon Freyフィラメントを、金網床の下から後肢足底部に垂直に適用した。すばやい逃避反応あるいは足振り反応を陽性反応(反応あり)とした。実施例5記載の化合物は、STZ投与後14日から28日まで1日1回経口投与し、投与量は0.03、0.3、または3mg/kgとした。また侵害受容閾値は、STZ投与前、STZ投与後14日(実施例5記載の化合物の投薬開始日)、21日(投薬開始後7日)、28日(投薬開始後14日)および35日(休薬後7日)において、実施例5記載の化合物の投与2時間後に測定した。
(評価方法)
Chaplanらの方法(J Neurosci Methods. 1994;53:55-63)に従い,up-down法にて侵害受容閾値を測定した。また、侵害受容閾値の改善率は以下の式に基づき算出した。
【0135】
【0136】
(結果)
実施例5記載の化合物を0.3mg/kgの投与量で投与した場合の侵害受容閾値の結果を
図14に、侵害受容閾値改善率を表13に示す。化合物Aは末梢神経障害において強力な鎮痛作用を発揮した。また投薬開始後7日から侵害受容閾値の改善が認められ、その作用は休薬後7日においても持続しており、持続的な鎮痛作用が認められた。
【0137】
【0138】
生物学的実験例3:反応性代謝物測定試験
実施例5記載の化合物の反応性代謝物とquaternary ammonium glutathione(QA-GSH)との複合体をLC/MS/MSで半定量し(Soglia JR et al.,Chem.Res.Toxicol.19(3),480-490,2006)、NADPHに依存した反応性代謝物量を測定した。
100mM リン酸バッファー(pH7.4)187.5μLに20mg/mLのヒト肝ミクロソーム(Xenotech)を12.5μL(終濃度:1mg/mL)、10mmol/L QA-GSHを25μL(終濃度:1mmol/L)、0.5mmol/L 実施例5記載の化合物の溶液(DMSO:アセトニトリル:水=5:38:57)を5μL(実施例5記載の化合物の終濃度:10μmol/L)添加した。37℃の水浴で3分間プレインキュベーション後、25mmol/L NADPHを20μL(終濃度:2mmol/L)添加して反応を開始した。反応1時間後にIS含有アセトニトリル500μLを混和して反応を停止した。反応を停止した試料中に生成した反応性代謝物とQA-GSHとの複合体(QA-GS付加体)をLC/MS/MSで分析した。測定はQA-GS付加体内部標準物質(IS)とともに実施した。
【0139】
下式より、QA-GS付加体濃度を算出した。
【0140】
【0141】
(結果)
実施例5記載の化合物のQA-GS付加体濃度は低く、200nmol/L以下であった。
【0142】
生物学的実験例4:Hand1-EST試験
実施例5記載の化合物の生殖発生毒性を、マウスES細胞から心筋への分化過程における生細胞数と分化効率を指標にしたPOCA(登録商標)Hand1-EST(DS ファーマバイオメディカル株式会社)を用いて測定した(Le Coz F et al.,J.Toxicol.,40(2):251-61.2015)。
実施例5記載の化合物の1000mg/mL DMSO溶液を調製した。実施例5記載の化合物の1000mg/mL DMSO溶液を心筋分化培地で希釈し,実施例5記載の化合物の1000μg/mL液(DMSOの終濃度0.1%)を調製した。目視で沈殿物の有無を確認しながら、心筋分化培地(DMSOの終濃度0.1%)で順次3倍希釈し、沈殿物が無い濃度を最大溶解度として記録した。
融解したHand1-ES細胞(pGL4.17をベクターとし心筋分化マーカーHand1遺伝子のプロモーター領域とその下流にルシフェラーゼ遺伝子を形質転換したマウスES細胞)を未分化維持培地に懸濁後、ゼラチンコートした60mm Dishに播種し、2-3日培養した。培養2-3日後、トリプシン処理をしたHand1-ES細胞をゼラチンコートした60mm Dishに2×106cells/5mLで継代し、一晩培養した。その後、トリプシン処理をしたHand1-ES細胞を、心筋分化培地に懸濁後、PrimeSurface(登録商標)U底96wellプレートに750cells/50μL/wellで播種し、2時間培養した。2時間後、実施例5記載の化合物あるいは陽性対照である5-FUを含む心筋分化培地50μLを添加し(実施例5記載の化合物の終濃度:1000,333,111,37.0,12.3,4.12及び1.37μg/mL、5-FUの終濃度:1,0.333,0.111,0.0370,0.0123,0.00412及び0.00137μg/mL、DMSOの終濃度:0.1%)、5日間培養した。実施例5記載の化合物あるいは5-FUを5日間曝露した後、生細胞数を測定するためにCellTiter-Fluor(登録商標)(Promega)を添加し、SpectraMax M5e plate reader(Molecular Devices)を用いて,励起波長Ex 390nm及び蛍光波長Em 505nmの蛍光を測定した。さらに、分化効率を測定するためにSteady-Glo(登録商標)(Promega)を添加し、SpectraMax M5e plate readerを用いて、発光を測定した。専用解析ソフトPOCA Hand1-EST Analysis Softwareに、求めた最大溶解度、生細胞数の50%阻害濃度及び分化効率の50%阻害濃度を入力し、催奇形性リスクを判定した。判定の基準はProvability 0.52未満を低リスク、0.52以上を高リスクとした(Nagahori et al.,Toxicology Letters 259,44-51)。
(結果)
実施例5記載の化合物は、probabilityが0.52未満であり、催奇形性のリスクは低いと考えられた。
【0143】
[製剤例]
製剤例1:
化合物A(B晶) 5mg含有錠
以下の各成分を常法により混合した後打錠して、一錠中に5mgの活性成分を含有する錠剤1万錠を得る。
・3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸(B晶):50g
・カルボキシメチルセルロースカルシウム(崩壊剤):20g
・ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤):10g
・微結晶セルロース:920g
【0144】
製剤例2:
化合物A(A晶) 20mg含有注射剤
以下の各成分を常法により混合した後、溶液を常法により滅菌し、5mLずつアンプルに充填し、常法により凍結乾燥し、1アンプル中20mgの活性成分を含有するアンプル1万本を得る。
・3-[2-[(E)-5-[3-(ベンゼンスルホンアミド)フェニル]ペンタ-4-エノキシ]フェニル]プロパン酸(A晶):200g
・マンニトール:20g
・蒸留水:50L
【産業上の利用可能性】
【0145】
化合物Aは、神経保護および/または修復作用を有するため、神経障害等の治療に有用である。また、化合物Aの結晶は、医薬品原薬として有用である。