(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】支保工用伸縮ガイド部材、支保工用伸縮装置、伸縮支保工、支保工用伸縮装置の伸縮方法および支保工の伸縮方法
(51)【国際特許分類】
E01D 21/00 20060101AFI20250218BHJP
B66F 3/46 20060101ALI20250218BHJP
E04G 25/04 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
E01D21/00 A
B66F3/46
E04G25/04
(21)【出願番号】P 2022001807
(22)【出願日】2022-01-07
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【氏名又は名称】藤田 崇
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕明
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 康宏
(72)【発明者】
【氏名】中村 信秀
(72)【発明者】
【氏名】木本 智美
(72)【発明者】
【氏名】土肥 かおり
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-235263(JP,A)
【文献】特開2013-209865(JP,A)
【文献】特開2004-143756(JP,A)
【文献】実開平03-041792(JP,U)
【文献】特開2013-072278(JP,A)
【文献】特開昭58-173205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 21/00
B66F 3/46
E04G 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定方向に伸縮可能なジャッキが取り付けられ、取り付けられた前記ジャッキの伸縮により前記一定方向に伸縮可能に構成された支保工用伸縮ガイド部材であって、
前記支保工用伸縮ガイド部材は、
前記ジャッキを取り付ける取り付け部を有する前記一定方向に伸縮可能な本体部と、
前記本体部に設けられ、前記本体部が前記一定方向に所定長さ以下に収縮しないようにする制限と前記制限の解除を切り替え可能なロック機構と、
を有し、
前記本体部は前記一定方向を長手方向とする3本以上の中実なガイド支柱を有し、前記一定方向から見て前記3本以上の中実なガイド支柱で囲まれたジャッキ配置領域に、前記取り付け部を有し、
前記ロック機構により前記ジャッキと前記本体部との間で前記ジャッキの収縮方向の荷重の盛り替えを可能にしたことを特徴とする支保工用伸縮ガイド部材。
【請求項2】
前記本体部の前記取り付け部は、前記ロック機構により前記ジャッキから前記本体部に前記ジャッキの収縮方向の荷重を盛り替えた後、取り付けられた前記ジャッキを取り外し可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の支保工用伸縮ガイド部材。
【請求項3】
前記3本以上のガイド支柱の一端部同士を連結して固定する一端部固定部を有しており、前記取り付け部に取り付けられる前記ジャッキの一端は、前記一端部固定部に連結することを特徴とする請求項
1又は2に記載の支保工用伸縮ガイド部材。
【請求項4】
前記一端部固定部には、前記取り付け部に取り付けられた前記ジャッキが伸長する方向に突出する柱状天端部が設けられており、該柱状天端部は、前記ジャッキの前記伸長する方向に位置する他の部材と連結可能であることを特徴とする請求項
3に記載の支保工用伸縮ガイド部材。
【請求項5】
前記一端部固定部の部位のうち、前記取り付け部に取り付けられた前記ジャッキが収縮する方向に前記柱状天端部を延長した部位に、前記ジャッキ配置領域に取り付けられる前記ジャッキの前記一端が連結することを特徴とする請求項
4に記載の支保工用伸縮ガイド部材。
【請求項6】
前記取り付け部に取り付けられる前記ジャッキの一端が取り付けられるベース部を有していることを特徴とする請求項
3~5のいずれかに記載の支保工用伸縮ガイド部材。
【請求項7】
前記ベース部は、前記3本以上のガイド支柱と対応する位置にそれぞれ貫通孔を有しており、前記3本以上のガイド支柱は、それぞれ対応する前記貫通孔を挿通することを特徴とする請求項
6に記載の支保工用伸縮ガイド部材。
【請求項8】
前記3本以上のガイド支柱には、切り欠かれて断面が小さくなっている切り欠き部が設けられており、前記ロック機構は、前記切り欠き部に差し込まれたストッパ部材が前記ベース部に係止することで、前記本体部の収縮が制限されるように構成されていることを特徴とする請求項
7に記載の支保工用伸縮ガイド部材。
【請求項9】
前記3本以上のガイド支柱には、それぞれ外周面に、ねじが切られたねじ切り部が設けられているとともに、該ねじ切り部に螺合するナットが備えられており、前記ロック機構は、前記ナットが前記ベース部に係止することで、前記本体部の収縮が制限されるように構成されていることを特徴とする請求項
7に記載の支保工用伸縮ガイド部材。
【請求項10】
前記取り付け部に取り付けられる前記ジャッキの前記一端は、前記一端部固定部にクレビス継手で連結することを特徴とする請求項
3~9のいずれかに記載の支保工用伸縮ガイド部材。
【請求項11】
前記取り付け部は、前記ジャッキの一端側及び他端側の両方が当接する当接部で構成されており、前記ロック機構による前記制限と前記ジャッキの収縮動作により前記ジャッキの一端側を前記本体部の前記当接部から離間させて前記本体部に前記ジャッキの収縮方向の荷重を盛り替えることで前記ジャッキを取り外し可能としたことを特徴とする請求項1~
9のいずれかに記載の支保工用伸縮ガイド部材。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれかに記載の支保工用伸縮ガイド部材と、
前記本体部の前記取り付け部に取り付けられた前記ジャッキと、
を有することを特徴とする支保工用伸縮装置。
【請求項13】
請求項
12に記載の支保工用伸縮装置を、伸縮方向が上下方向になるように水平方向に位置をずらして複数備えることを特徴とする伸縮支保工。
【請求項14】
前記複数の支保工用伸縮装置が、変位制御で連動して伸縮することを特徴とする請求項
13に記載の伸縮支保工。
【請求項15】
前記複数の支保工用伸縮装置は、同一の水平面内に配置されていることを特徴とする請求項
13又は14に記載の伸縮支保工。
【請求項16】
前記同一の水平面内で隣接する前記支保工用伸縮装置同士を水平方向に連結する連結部材がさらに設けられていることを特徴とする請求項
15に記載の伸縮支保工。
【請求項17】
前記連結部材はラチス部材であることを特徴とする請求項
16に記載の伸縮支保工。
【請求項18】
支持する対象が橋梁の上部構造であり、前記支保工用伸縮装置は、前記橋梁の橋軸直角方向に複数並んで配置されているとともに、前記橋梁の橋軸方向にも複数並んで配置されていることを特徴とする請求項
13~17のいずれかに記載の伸縮支保工。
【請求項19】
複数の前記支保工用伸縮装置が上下方向に積まれて複数段配置されていることを特徴とする請求項
13~18のいずれかに記載の伸縮支保工。
【請求項20】
請求項
12に記載の支保工用伸縮装置の伸縮方法であって、
前記支保工用伸縮ガイド部材が前記ロック機構によって収縮の制限がされていて、前記ロック機構を介して前記支保工用伸縮ガイド部材が荷重を支持した状態において、前記ジャッキを所定の長さだけ伸長させて、前記ロック機構に加わっていた荷重を前記ジャッキに盛り替える荷重盛り替え工程と、
前記荷重盛り替え工程で前記荷重を盛り替えた後、前記支保工用伸縮ガイド部材の前記ロック機構によるロックを解除して、前記支保工用伸縮ガイド部材の収縮の制限を解除するロック解除工程と、
前記ロック解除工程の後、前記ジャッキを収縮させる収縮工程と、
を有することを特徴とする支保工用伸縮装置の伸縮方法。
【請求項21】
請求項
12に記載の支保工用伸縮装置の伸縮方法であって、
前記ジャッキを介して前記支保工用伸縮装置が荷重を支持した状態において、所定の長さだけ前記ジャッキを伸長させるジャッキ伸長工程と、
前記ジャッキ伸長工程で前記ジャッキを前記所定の長さだけ伸長させた後、前記支保工用伸縮ガイド部材の前記ロック機構でロックして、前記支保工用伸縮ガイド部材の収縮の制限をするロック工程と、
前記ロック工程の後、所定の長さだけ前記ジャッキを収縮させて、前記ジャッキに加わっていた荷重を前記ロック機構に盛り替える荷重盛り替え工程と、
を有することを特徴とする支保工用伸縮装置の伸縮方法。
【請求項22】
前記荷重盛り替え工程で、前記ジャッキに加わっていた荷重を前記ロック機構に盛り替えた後、前記ジャッキを前記支保工用伸縮装置から取り外すことを特徴とする請求項
21に記載の支保工用伸縮装置の伸縮方法。
【請求項23】
請求項
13~19のいずれかに記載の伸縮支保工を用いた支保工の伸縮方法であって、
前記複数の支保工用伸縮ガイド部材がそれぞれの前記ロック機構によって収縮の制限がされていて、それぞれの前記ロック機構を介して前記複数の支保工用伸縮ガイド部材が荷重を支持した状態において、前記複数のジャッキを変位制御で連動して所定の長さだけ伸長させて、それぞれの前記ロック機構に加わっていた荷重を前記複数のジャッキに盛り替える荷重盛り替え工程と、
前記荷重盛り替え工程で荷重を盛り替えた後、前記複数の支保工用伸縮ガイド部材のそれぞれの前記ロック機構によるロックを解除して、前記複数の支保工用伸縮ガイド部材の収縮の制限を解除するロック解除工程と、
前記ロック解除工程で前記複数の支保工用伸縮ガイド部材の収縮の制限を解除した後、前記複数のジャッキを変位制御で連動して収縮させて、前記伸縮支保工の高さを低くする支保工収縮工程と、
を有することを特徴とする支保工の伸縮方法。
【請求項24】
請求項
13~19のいずれかに記載の伸縮支保工を用いた支保工の伸縮方法であって、
前記複数のジャッキを介して前記複数の支保工用伸縮装置が荷重を支持した状態において、所定の長さだけ前記複数のジャッキを変位制御で連動して伸長させるジャッキ伸長工程と、
前記ジャッキ伸長工程で前記複数のジャッキを前記所定の長さだけ変位制御で連動して伸長させた後、前記複数の支保工用伸縮ガイド部材の前記複数のロック機構でロックして、前記複数の支保工用伸縮ガイド部材の収縮の制限をするロック工程と、
前記ロック工程で前記複数の支保工用伸縮ガイド部材の収縮の制限をした後、所定の距離だけ前記複数のジャッキを変位制御で連動して収縮させて、前記複数のジャッキに加わっていた荷重を前記複数のロック機構に盛り替える荷重盛り替え工程と、
を有することを特徴とする支保工の伸縮方法。
【請求項25】
前記荷重盛り替え工程で荷重を前記複数のジャッキから前記複数のロック機構に盛り替えた後、前記ジャッキを前記支保工用伸縮装置から取り外すことを特徴とする請求項
24に記載の支保工の伸縮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は支保工用伸縮ガイド部材、支保工用伸縮装置、伸縮支保工、支保工用伸縮装置の伸縮方法および支保工の伸縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の一般的な架設の一方法においては、架設する橋桁ブロックをクレーンで吊り上げて、ベント(仮受け設備)に複数段積んだ鋼製サンドルを介して仮受けさせた状態で、橋桁の据付高さを設計値どおりとなるように調整した後に橋軸方向に隣り合う橋桁ブロック同士を連結し、架設する橋桁の長さを、橋軸方向に隣接する橋脚の間の距離以上の長さにする。その後、鋼製サンドルを取り外して仮受けを開放し当該橋桁を架設対象の橋脚上に載置し、ベント(仮受け設備)を撤去する。架設する橋桁の下面とベントの天端との間には、複数段積んだ鋼製サンドル等(鋼製サンドルの上に高さ微調整用に鋼板を複数枚積み上げる場合がある)と低ストロークのジャッキを並べて配置しておき、据付高さの調整時において当該橋桁を降下する場合においては、架設する橋桁の荷重を下方から支持する鋼製サンドルとジャッキとの間で荷重の盛り替えを行い橋桁が所定の据付高さとなるように鋼製サンドルや鋼板を抜いた後に、当該橋桁を降下させ、当該橋桁の据付高さを調整する。据付高さの調整時において当該橋桁を上昇させる場合においては、同様に架設する橋桁の荷重を下方から支持する鋼製サンドルとジャッキの間で荷重の盛り替えを行い、橋桁が所定の高さとなるようにジャッキで橋桁を上昇させた後に鋼製サンドルや鋼板を追加し、ジャッキから鋼製サンドルに荷重を盛り替えて据付高さの調整を行う。
【0003】
この橋桁の据付高さ調整作業においては、鋼製サンドルとジャッキとの間で荷重の盛り替えを行いながら、鋼製サンドルを一段ずつ作業員が抜き取りあるいは追加していくため、作業の効率が悪く、また、架設する橋桁の下面とベント天端との間の距離が短いため、鋼製サンドルを作業員が抜き取りあるいは追加していく作業自体も行いにくかった。また、橋桁を架設対象の橋脚上に載置した後の当該橋桁の下面とベントの上面との間の距離が短いため、橋桁を架設対象の橋脚上に載置した後のベントの解体作業も行いにくかった。
【0004】
この問題点に対処可能と考えられる技術として、特許文献1に記載の重量物昇降装置300がある。
図29は、特許文献1に記載の重量物昇降装置300を示す外観斜視図である。この重量物昇降装置300は、設置面をなすロアフレーム303と上方に重量物を載置可能なアッパーフレーム302が、その中央に設けられた中空の伸縮ガイドポスト304と、その周りに配置された複数の昇降用シリンダ305、306、307、308によって連結されたものであり、伸縮ガイドポスト304は、複数の筒体304A、304B、304Cが水平荷重を支持可能なように摺動可能に重ね合わされ、昇降用シリンダ306、308には、異常が発生した場合に重量物の荷重を受けて落下を防止するロック機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の重量物昇降装置300に開示されたロック機構は、伸縮ガイドポスト304の周りに配置されたメインで使用される昇降用シリンダ(主駆動油圧シリンダ)305、307に油漏れ等の異常が生じた時に代わりに用いられる補助用の昇降用シリンダ306、308に用いられたものであり、特許文献1に記載の重量物昇降装置300は、メインの主駆動油圧シリンダ305、307の油圧回路に破損などが生じた場合でも、油圧シリンダ306、308に設けられたロック機構によって機械的に荷重を受けて落下を防止し、油圧シリンダ306、308を駆動させて安全・確実に昇降させることができるように構成されており、油圧シリンダ306、308自体に重量物荷重がかからないことは想定していない。
【0007】
また、伸縮ガイドポスト304は、複数の筒体304A、304B、304Cが水平荷重を支持可能なように摺動可能に重ね合わされて構成されており、鉛直荷重を支持することができず、特許文献1に記載の重量物昇降装置300においては、昇降用シリンダ305、306、307、308が鉛直荷重を受け、伸縮ガイドポスト304が水平力に対抗するように役割分担されている。
【0008】
つまり、これらのシリンダ(伸縮ガイドポスト304、昇降用シリンダ305、306、307、308)は役割分担されており、特許文献1に記載の重量物昇降装置300において一体的に構成されたものである。
【0009】
そのため、昇降用シリンダ305、306、307、308は、伸縮ガイドポスト304やアッパーフレーム302、ロアフレーム303と共に用いられるものとして特化しており、汎用性はなく、適用可能な現場も限られてくると考えられる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、様々な形状のベントに適用させやすく、また、汎用型のジャッキが使用可能で低コストに構成することができる支保工用伸縮ガイド部材、支保工用伸縮装置、伸縮支保工、支保工用伸縮装置の伸縮方法および支保工の伸縮方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前記課題を解決する発明であり、以下のような支保工用伸縮ガイド部材、支保工用伸縮装置、伸縮支保工、支保工用伸縮装置の伸縮方法および支保工の伸縮方法である。
【0012】
即ち、本発明に係る支保工用伸縮ガイド部材の一態様は、一定方向に伸縮可能なジャッキが取り付けられ、取り付けられた前記ジャッキの伸縮により前記一定方向に伸縮可能に構成された支保工用伸縮ガイド部材であって、前記支保工用伸縮ガイド部材は、前記ジャッキを取り付ける取り付け部を有する前記一定方向に伸縮可能な本体部と、前記本体部に設けられ、前記本体部が前記一定方向に所定長さ以下に収縮しないようにする制限と前記制限の解除を切り替え可能なロック機構と、を有し、前記ロック機構により前記ジャッキと前記本体部との間で前記ジャッキの収縮方向の荷重の盛り替えを可能にしたことを特徴とする支保工用伸縮ガイド部材である。
【0013】
ここで、「前記ジャッキを取り付ける」とは、前記ジャッキと前記ジャッキを取り付ける対象との間で少なくとも圧縮力を伝達できる状態にすることを意味する。本願の他の箇所の同様の記載も同様に解釈するものとする。
【0014】
また、「前記ジャッキを取り付ける」には、前記ジャッキと前記ジャッキを取り付ける対象とが直接的に接して少なくとも圧縮力を伝達できる状態にする場合だけでなく、前記ジャッキと前記ジャッキを取り付ける対象との間に他の部材が介在して少なくとも圧縮力を伝達できる状態にする場合も含む。本願の他の箇所の同様の記載も同様に解釈するものとする。
【0015】
前記本体部の前記取り付け部は、前記ロック機構により前記ジャッキから前記本体部に前記ジャッキの収縮方向の荷重を盛り替えた後、取り付けられた前記ジャッキを取り外し可能に構成されていてもよい。
【0016】
前記本体部は前記一定方向を長手方向とする3本以上のガイド支柱を有し、前記一定方向から見て前記3本以上の前記ガイド支柱で囲まれたジャッキ配置領域に、前記取り付け部を有する、ように構成されていてもよい。
【0017】
ここで、ジャッキ配置領域とは、前記一定の方向から見たとき、前記3本以上のガイド支柱の中心を直線で結んでできる多角形の内部の領域のことである。
【0018】
前記ガイド支柱は中実であってもよい。
【0019】
前記3本以上のガイド支柱の一端部同士を連結して固定する一端部固定部を有しており、前記取り付け部に取り付けられる前記ジャッキの一端は、前記一端部固定部に連結する、ように構成されていてもよい。
【0020】
ここで、「前記ジャッキの一端」が「前記一端部固定部に連結する」とは、前記ジャッキの一端が前記一端部固定部との間で少なくとも圧縮力を伝達できる状態になることを意味する。本願の他の箇所の同様の記載も同様に解釈するものとする。
【0021】
また、「前記ジャッキの一端」が「前記一端部固定部に連結する」には、前記ジャッキの一端が前記一端部固定部に直接に連結する場合だけでなく、他の部材を介して間接に連結する場合も含む。本願の他の箇所の同様の記載も同様に解釈するものとする。
【0022】
前記一端部固定部には、前記取り付け部に取り付けられた前記ジャッキが伸長する方向に突出する柱状天端部が設けられており、該柱状天端部は、前記ジャッキの前記伸長する方向に位置する他の部材と連結可能である、ように構成されていてもよい。
【0023】
前記一端部固定部の部位のうち、前記取り付け部に取り付けられた前記ジャッキが収縮する方向に前記柱状天端部を延長した部位に、前記ジャッキ配置領域に取り付けられる前記ジャッキの前記一端が連結する、ように構成されていてもよい。
【0024】
前記支保工用伸縮ガイド部材は、前記取り付け部に取り付けられる前記ジャッキの一端が取り付けられるベース部を有しているように構成されていてもよい。
【0025】
ここで、「前記ジャッキの一端が取り付けられるベース部」には、前記ジャッキの一端がベース部に直接に取り付けられる場合だけでなく、他の部材を介して間接に前記ジャッキの一端がベース部に取り付けられる場合も含む。本願の他の箇所の同様の記載も同様に解釈するものとする。
【0026】
前記ベース部は、前記3本以上のガイド支柱と対応する位置にそれぞれ貫通孔を有しており、前記3本以上のガイド支柱は、それぞれ対応する前記貫通孔を挿通する、ように構成されていてもよい。
【0027】
前記3本以上のガイド支柱には、切り欠かれて断面が小さくなっている切り欠き部が設けられており、前記ロック機構は、前記切り欠き部に差し込まれたストッパ部材が前記ベース部に係止することで、前記本体部の収縮が制限されるように構成されていてもよい。
【0028】
ここで、前記3本以上のガイド支柱において、「断面」とは、該ガイド支柱の長手方向と直交する平面で該ガイド支柱を切断したときの切断面のことである。
【0029】
前記3本以上のガイド支柱には、それぞれ外周面に、ねじが切られたねじ切り部が設けられているとともに、該ねじ切り部に螺合するナットが備えられており、前記ロック機構は、前記ナットが前記ベース部に係止することで、前記本体部の収縮が制限されるように構成されていてもよい。
【0030】
前記取り付け部に取り付けられる前記ジャッキの前記一端は、前記一端部固定部にクレビス継手で連結するように構成されていてもよい。
【0031】
前記取り付け部は、前記ジャッキの一端側及び他端側の両方が当接する当接部で構成されており、前記ロック機構による前記制限と前記ジャッキの収縮動作により前記ジャッキの一端側を前記本体部の前記当接部から離間させて前記本体部に前記ジャッキの収縮方向の荷重を盛り替えることで前記ジャッキを取り外し可能とした、ように構成されていてもよい。
【0032】
本発明に係る支保工用伸縮装置の一態様は、支保工用伸縮ガイド部材と、前記本体部の前記取り付け部に取り付けられた前記ジャッキと、を有することを特徴とする支保工用伸縮装置である。
【0033】
本発明に係る伸縮支保工の一態様は、前記支保工用伸縮装置を、伸縮方向が上下方向になるように水平方向に位置をずらして複数備えることを特徴とする伸縮支保工である。
【0034】
前記複数の支保工用伸縮装置は、変位制御で連動して伸縮するようにしてもよい。
【0035】
前記複数の支保工用伸縮装置は、同一の水平面内に配置されていてもよい。
【0036】
前記同一の水平面内で隣接する前記支保工用伸縮装置同士を水平方向に連結する連結部材がさらに設けられていてもよい。
【0037】
前記連結部材はラチス部材であってもよい。
【0038】
支持する対象が橋梁の上部構造であってもよく、この場合、前記支保工用伸縮装置は、前記橋梁の橋軸直角方向に複数並んで配置されているとともに、前記橋梁の橋軸方向にも複数並んで配置されていてもよい。
【0039】
前記伸縮支保工において、複数の前記支保工用伸縮装置が上下方向に積まれて複数段配置されていてもよい。
【0040】
本発明に係る支保工用伸縮装置の伸縮方法の第1の態様は、前記支保工用伸縮装置の伸縮方法であって、前記支保工用伸縮ガイド部材が前記ロック機構によって収縮の制限がされていて、前記ロック機構を介して前記支保工用伸縮ガイド部材が荷重を支持した状態において、前記ジャッキを所定の長さだけ伸長させて、前記ロック機構に加わっていた荷重を前記ジャッキに盛り替える荷重盛り替え工程と、前記荷重盛り替え工程で前記荷重を盛り替えた後、前記支保工用伸縮ガイド部材の前記ロック機構によるロックを解除して、前記支保工用伸縮ガイド部材の収縮の制限を解除するロック解除工程と、前記ロック解除工程の後、前記ジャッキを収縮させる収縮工程と、を有することを特徴とする支保工用伸縮装置の伸縮方法である。
【0041】
本発明に係る支保工用伸縮装置の伸縮方法の第2の態様は、前記支保工用伸縮装置の伸縮方法であって、前記ジャッキを介して前記支保工用伸縮装置が荷重を支持した状態において、所定の長さだけ前記ジャッキを伸長させるジャッキ伸長工程と、前記ジャッキ伸長工程で前記ジャッキを前記所定の長さだけ伸長させた後、前記支保工用伸縮ガイド部材の前記ロック機構でロックして、前記支保工用伸縮ガイド部材の収縮の制限をするロック工程と、前記ロック工程の後、所定の長さだけ前記ジャッキを収縮させて、前記ジャッキに加わっていた荷重を前記ロック機構に盛り替える荷重盛り替え工程と、を有することを特徴とする支保工用伸縮装置の伸縮方法である。
【0042】
前記支保工用伸縮装置の伸縮方法の第2の態様において、前記荷重盛り替え工程で、前記ジャッキに加わっていた荷重を前記ロック機構に盛り替えた後、前記ジャッキを前記支保工用伸縮装置から取り外すようにしてもよい。
【0043】
本発明に係る支保工の伸縮方法の第1の態様は、前記伸縮支保工を用いた支保工の伸縮方法であって、前記複数の支保工用伸縮ガイド部材がそれぞれの前記ロック機構によって収縮の制限がされていて、それぞれの前記ロック機構を介して前記複数の支保工用伸縮ガイド部材が荷重を支持した状態において、前記複数のジャッキを変位制御で連動して所定の長さだけ伸長させて、それぞれの前記ロック機構に加わっていた荷重を前記複数のジャッキに盛り替える荷重盛り替え工程と、前記荷重盛り替え工程で荷重を盛り替えた後、前記複数の支保工用伸縮ガイド部材のそれぞれの前記ロック機構によるロックを解除して、前記複数の支保工用伸縮ガイド部材の収縮の制限を解除するロック解除工程と、前記ロック解除工程で前記複数の支保工用伸縮ガイド部材の収縮の制限を解除した後、前記複数のジャッキを変位制御で連動して収縮させて、前記伸縮支保工の高さを低くする支保工収縮工程と、を有することを特徴とする支保工の伸縮方法である。
【0044】
本発明に係る支保工の伸縮方法の第2の態様は、前記伸縮支保工を用いた支保工の伸縮方法であって、前記複数のジャッキを介して前記複数の支保工用伸縮装置が荷重を支持した状態において、所定の長さだけ前記複数のジャッキを変位制御で連動して伸長させるジャッキ伸長工程と、前記ジャッキ伸長工程で前記複数のジャッキを前記所定の長さだけ変位制御で連動して伸長させた後、前記複数の支保工用伸縮ガイド部材の前記複数のロック機構でロックして、前記複数の支保工用伸縮ガイド部材の収縮の制限をするロック工程と、前記ロック工程で前記複数の支保工用伸縮ガイド部材の収縮の制限をした後、所定の距離だけ前記複数のジャッキを変位制御で連動して収縮させて、前記複数のジャッキに加わっていた荷重を前記複数のロック機構に盛り替える荷重盛り替え工程と、を有することを特徴とする支保工の伸縮方法である。
【0045】
前記支保工の伸縮方法の第2の態様において、前記荷重盛り替え工程で荷重を前記複数のジャッキから前記複数のロック機構に盛り替えた後、前記ジャッキを前記支保工用伸縮装置から取り外すようにしてもよい。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、様々な形状のベントに適用させやすく、また、汎用型のジャッキが使用可能で低コストに構成することができる支保工用伸縮ガイド部材、支保工用伸縮装置、伸縮支保工、支保工用伸縮装置の伸縮方法および支保工の伸縮方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10の伸長した状態の正面図
【
図2】本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10の伸長した状態の側面図(
図1及び
図6の矢視II方向から見た側面図)
【
図8】本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10の収縮した状態の正面図
【
図10】本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10の上部を拡大して示す拡大正面図
【
図11】本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10の伸長した状態の下部を拡大して示す拡大正面図
【
図12】本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10の収縮した状態の下部を拡大して示す拡大正面図
【
図13】(A)はガイド支柱14の正面図であり、(B)は
図13(A)の矢視B方向から切り欠き部14Xを見た拡大側面図である。
【
図14】本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10のベース部20の一部およびその上部の押さえプレート36Aを拡大して示す拡大正面図
【
図15】本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10のベース部20の一部およびその上部の押さえプレート36Aを拡大して示す拡大側面図(
図14の矢視XV方向から見た拡大側面図)
【
図16】本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10のガイド支柱14、ロック機構16、およびベース部20の一部を拡大して示す拡大正面図
【
図17】(A)は差し込みプレート36の正面図であり、(B)は差し込みプレート36の側面図であり、(C)はボルト38の側面図である。
【
図18】橋梁100の上部構造102の架設のための支保工(ベント)の一部に支保工用伸縮装置10を複数用いた伸縮支保工40の伸長した状態を示す正面図(橋軸方向から見た正面図)
【
図19】橋梁100の上部構造102の架設のための支保工(ベント)の一部に支保工用伸縮装置10を複数用いた伸縮支保工40の収縮した状態を示す正面図(橋軸方向から見た正面図)
【
図20】伸縮支保工40に用いる支保工用伸縮装置10を示す正面図
【
図21】本発明の第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50の伸長した状態の正面図
【
図23】本発明の第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50の収縮した状態の正面図
【
図24】本発明の第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50の伸長した状態の下部を拡大して示す拡大正面図
【
図25】本発明の第3実施形態に係る支保工用伸縮装置60の伸長した状態の水平断面図(
図6(
図1のVI-VI線断面図)および
図22(
図21のXXII-XXII線断面図)に対応する切断位置の水平断面図)
【
図26】第1実施形態の変形例に係る支保工用伸縮装置70の伸長した状態を示す正面図
【
図27】第1実施形態の変形例に係る支保工用伸縮装置70の収縮した状態を示す正面図
【
図28】第1実施形態の変形例に係る支保工用伸縮装置70の支保工用伸縮ガイド部材72の収縮した状態を示す正面図
【
図29】特許文献1に記載の重量物昇降装置300を示す外観斜視図
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の実施形態の説明においては、本発明の実施形態に係る支保工用伸縮装置が上下方向に伸縮する場合について説明するが、本発明に係る支保工用伸縮装置の伸縮方向が上下方向に限定されるわけではない。また、本発明の実施形態の適用対象として、
図18、
図19では、鋼製の箱桁橋である橋梁100を取り上げているが、本発明の適用対象が鋼製の箱桁橋に限定されるわけではなく、本発明は例えば鈑桁橋にも適用可能であり、また、鋼橋だけでなくコンクリート橋にも適用可能である。さらに、本発明は橋梁以外の分野にも適用可能であり、本発明の適用対象は橋梁に限定されるわけではない。
【0049】
(1)第1実施形態
(1-1)構成
図1は本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10の伸長した状態の正面図であり、
図2は本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10の伸長した状態の側面図(
図1及び
図6の矢視II方向から見た側面図)である。ただし、
図1においては、ベース部20の範囲について、ガイド支柱14の前面に位置する部材の部位は描かずにガイド支柱14を描いている。
【0050】
図3は
図1のIII-III線断面図であり、
図4は
図1のIV-IV線断面図であり、
図5は
図1の矢視V方向から見た平面図であり、
図6は
図1のVI-VI線断面図であり、
図7は
図1のVII-VII線断面図であり、
図8は本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10の収縮した状態の正面図であり、
図9は
図8のIX-IX線断面図であり、
図10は本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10の上部を拡大して示す拡大正面図であり、
図11は本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10の伸長した状態の下部を拡大して示す拡大正面図であり、
図12は本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10の収縮した状態の下部を拡大して示す拡大正面図である。ただし、
図8、
図11、
図12においては、ベース部20の範囲について、ガイド支柱14の前面に位置する部材の部位は描かずにガイド支柱14を描いている。
【0051】
図13~
図17は、本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10のロック機構16に関連する各部位や各部品の詳細図である。
【0052】
本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10は、支保工用伸縮ガイド部材12と、ジャッキ30とを有してなり、ジャッキ30の伸縮と連動して、ジャッキ30が伸縮する方向と同じ方向に伸縮するように構成されている。
【0053】
支保工用伸縮ガイド部材12は、4本のガイド支柱14と、ロック機構16と、上部固定部18と、ベース部20と、を有してなる。4本のガイド支柱14と、上部固定部18と、ベース部20とにより、支保工用伸縮ガイド部材12の本体部12Aが構成されている。
【0054】
支保工用伸縮ガイド部材12の本体部12Aには、クレビス継手32、34を介してジャッキ30を取り付けることができ、支保工用伸縮ガイド部材12の本体部12Aは、取り付けられたジャッキ30が伸縮する方向と同じ方向に伸縮する(この伸縮機構については後述する)。さらに、支保工用伸縮ガイド部材12においては、本体部12Aの収縮を制限して、本体部12Aに加わる、本体部12Aが収縮する方向の荷重を、ジャッキ30を介さずに支持することができるようにするロック機構16が、本体部12Aに設けられている。このため、支保工用伸縮ガイド部材12は、ロック機構16によって本体部12Aの収縮を制限するロックをすることにより、本体部12Aで鉛直荷重を支持することができ、本体部12Aに本体部12Aが収縮する方向の荷重が加わった状態においても、ジャッキ30を支保工用伸縮ガイド部材12から取り外すことが可能である。なお、支保工用伸縮ガイド部材12の本体部12Aとともに本体部12Aが収縮する方向の荷重を常に分担して負担する役割を持って取り付けられるようなジャッキは、本体部12Aに本体部12Aが収縮する方向の荷重が加わった状態において、支保工用伸縮ガイド部材12から取り外すことはできない。
【0055】
4本のガイド支柱14は、
図3等に示すように、上方から見て正方形の各頂点に対応するような位置に配置されており、その正方形の内部にジャッキ30を配置できるようになっている。
図1等に示すように、4本のガイド支柱14の上端部は上部固定部18にそれぞれ固定されており、また、
図13(A)に示すように、4本のガイド支柱14の下端は下端プレート14Aにボルト14A2でそれぞれ取り付けられている。このように連結された4本のガイド支柱14は、それぞれ対応する位置に配置されたベース部20のベース部管体20Cを挿通している(
図1、
図7及び
図8等参照)。4本のガイド支柱14が、ジャッキ30の伸縮に連動して、ベース部20のベース部管体20Cを挿通しつつ、ベース部20に対して相対的に移動することで、上部固定部18とベース部20との間の相対距離が伸縮して、支保工用伸縮装置10の全体が上下方向に伸縮する。
図9に示すように、下端プレート14Aの中央部には、基端部管体24Aの外径よりも大きな内径の下端プレート貫通孔14A1が設けられており、支保工用伸縮装置10の全体が上下方向に伸縮する際には、基端部管体24Aが下端プレート貫通孔14A1を挿通した状態で下端プレート14Aが上下方向に移動する。
【0056】
本第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10の4本のガイド支柱14は、中実の丸鋼であり、鉛直荷重の負担能力を大きくできるようにしている。中実の丸鋼であるガイド支柱14の外径は、1本あたりのガイド支柱14が負担する鉛直荷重の大きさに応じて適宜に定めればよく、橋梁の鋼製上部構造の荷重を負担する場合には、外径を80~200mm程度にすることが標準的である。1本あたりのガイド支柱14が負担する鉛直荷重の大きさによっては、中実の丸鋼ではなく、鋼管にすることも可能である。
【0057】
ガイド支柱14の長さは、伸縮量が500mm程度の場合、標準的には2000~3000mm程度であり、ジャッキ30の伸縮に伴って、ベース部20に対してガイド支柱14を相対的に400~600mm程度移動させるように設計することが標準的である。
【0058】
上部固定部18は、
図1等に示すように、上下に2つの鋼製フランジ(上部固定部上フランジ18A及び上部固定部下フランジ18B)を所定の間隔(例えば、150~250mm程度の間隔)で備えており、上部固定部上フランジ18Aの下面に4本のガイド支柱14がそれぞれ溶接されている。また、4本のガイド支柱14は上部固定部下フランジ18Bを貫通しており、上部固定部下フランジ18Bは4本のガイド支柱14の外周面に溶接されている。
図3及び
図4に示すように、上部固定部上フランジ18A及び上部固定部下フランジ18Bは略正方形の形状であるが、
図1等に示すように、上部固定部上フランジ18Aの方が上部固定部下フランジ18Bよりもやや大きくなっており、具体的には例えば、ガイド支柱14の外径が100mm程度の場合には、上部固定部上フランジ18Aの形状は一辺の長さが700~750mm程度の略正方形であり、上部固定部下フランジ18Bの形状は一辺の長さが630~680mm程度の略正方形である。上部固定部上フランジ18A及び上部固定部下フランジ18Bの厚さは、標準的には20~30mm程度である。
【0059】
4本のガイド支柱14の外周面(上部固定部18に位置する部位)、上部固定部下フランジ18Bの上面および上部固定部上フランジ18Aの下面には、
図3及び
図10に示すように、ガイド支柱14の長手方向から見て略正方形を形作るようにリブ18Cが溶接されている。
【0060】
また、上部固定部18の中心部には、上下方向に天端部管体22Aが配置されている。天端部管体22Aの下端は上部固定部下フランジ18Bの上面に溶接されており、天端部管体22Aは上部固定部上フランジ18Aの中心部を貫通して上部固定部18の上部固定部上フランジ18Aよりも上方に突出している。天端部管体22Aの高さ方向中央部付近の外周面には上部固定部上フランジ18Aが溶接されている。天端部管体22Aの外径は標準的には200~500mm程度であり、天端部管体22Aの厚さは標準的には6~15mm程度であり、また、天端部管体22Aは、上部固定部上フランジ18Aの上面よりも上方に150~250mm程度突出させることが標準的である。
【0061】
また、
図3及び
図4に示すように、ガイド支柱14の長手方向から見て4本のガイド支柱14が形作る略正方形の対角線に沿って、リブ18Dが立設されており、リブ18Dは、上部固定部下フランジ18Bの上面および上部固定部上フランジ18Aの下面ならびに上部固定部18におけるガイド支柱14の外周面および上部固定部18における天端部管体22Aの外周面に溶接されている。さらに、上部固定部18においては、天端部管体22Aの内部に前記略正方形の対角線に沿ってリブ18Eが立設されており、リブ18E同士は天端部管体22Aの断面中心で交差している。リブ18Eは、上部固定部18における天端部管体22Aの内周面に溶接で取り付けてもよい。
【0062】
以上述べたように、4本のガイド支柱14の上端部は、上部固定部18によって強固に固定されている。また、4本のガイド支柱14の上端部を固定する上部固定部18は、4本のガイド支柱14の一端部同士を連結して固定しており、一端部固定部と言うことができる。
【0063】
上部固定部18には、
図1等に示すように、上方に突出する柱状天端部22が設けられており、柱状天端部22は上方に位置する他の部材と連結可能であり、上部固定部18の上部固定部下フランジ18Bの下面に連結するジャッキ30の上端部は、柱状天端部22の下方に位置する。
【0064】
柱状天端部22は、天端部管体22Aおよび天端プレート22Bを有してなり、上部固定部18よりも上方に突出した部位であり、上方に位置する他の部材と連結するための部位である。
図4、
図5及び
図10等に示すように、天端部管体22Aの外周面、天端プレート22Bの下面および上部固定部上フランジ18Aの上面に、リブ22Cが溶接されており、
図4に示すように、上方から見て上部固定部18のリブ18Dと重なるような位置に立設されている。天端部管体22Aは、前述したように、その下部が上部固定部18に含まれており、天端部管体22Aは、柱状天端部22と上部固定部18の両方に属する部材である。
【0065】
ベース部20は、4本のガイド支柱14が挿通して上下方向に移動自在となるように貫通孔が設けられているとともに、ベース部上フランジ20Aにジャッキ30の下端が取り付けられるように構成されており、さらに、4本のガイド支柱14の下方向(支保工用伸縮装置10が収縮する方向)への移動を制限するロック機構16の差し込みプレート36が係止する部位である。本第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10においては、4本のガイド支柱14が、ジャッキ30の伸縮に連動して、ベース部20のベース部管体20Cを挿通しつつ、ベース部20に対して相対的に移動することで、上部固定部18とベース部20との間の相対距離が伸縮して、支保工用伸縮装置10の全体が上下方向に伸縮するが、ロック機構16の差し込みプレート36がベース部20に係止することにより、4本のガイド支柱14の下方向(支保工用伸縮装置10が収縮する方向)への移動が制限されるようになっている。その結果、4本のガイド支柱14に加わる鉛直方向下向きの荷重は、4本のガイド支柱14からロック機構16の差し込みプレート36を介してベース部20に伝達され、柱状基端部24へと伝達されていき、さらには柱状基端部24に連結する下方の他の部材を経由して地盤200(
図18参照)へと伝達されていく。
【0066】
ベース部20は、ベース部上フランジ20Aと、ベース部下フランジ20Bと、ベース部管体20Cと、を有してなり、ベース部上フランジ20A及びベース部下フランジ20Bはベース部管体20Cの高さに相当する間隔(例えば、150~250mm程度の間隔)を空けて上下に配置されている。ベース部管体20Cは、上部及び下部が開口しており、ベース部管体20Cの管壁の厚さは例えば4~5mm程度であり、そしてベース部管体20Cは、4本のガイド支柱14と対応する位置に4本のガイド支柱14と同数の4つ備えられている。また、ベース部上フランジ20Aには、4本のガイド支柱14と対応する位置に、それぞれ4つの貫通孔20A1(
図11、
図12及び
図14参照)が設けられ、ベース部下フランジ20Bには、4本のガイド支柱14と対応する位置に、それぞれ4つの貫通孔20B1(
図11、
図12及び
図14参照)が設けられている。これらの貫通孔20A1、20B1の内径は、ガイド支柱14の外径よりも少し大きく(例えば2~4mm程度大きく)なっており、また、これらの貫通孔20A1、20B1の内径よりも、ベース部管体20Cは少し大きな内径(例えば4~5mm程度大きな内径)を有している。そして、これらの貫通孔20A1、20B1とベース部管体20Cの内空部が連続するように、ベース部管体20Cの上端がベース部上フランジ20Aの下面に溶接されており、ベース部管体20Cの下端がベース部下フランジ20Bの上面に溶接されている。このため、ガイド支柱14は、ベース部上フランジ20Aの貫通孔20A1、ベース部管体20Cの内空部、およびベース部下フランジ20Bの貫通孔20B1を挿通して、ベース部20を貫通することができるようになっている。4本のガイド支柱14が、ジャッキ30の伸縮に連動して、ベース部20のベース部管体20Cの内空部および貫通孔20A1、20B1を挿通しつつ、ベース部20に対して相対的に移動することで、上部固定部18とベース部20との間の相対距離が伸縮して、支保工用伸縮装置10の全体が上下方向に伸縮する。
【0067】
ベース部管体20Cの外周面、ベース部下フランジ20Bの上面およびベース部上フランジ20Aの下面には、
図7、
図11及び
図12に示すように、上方から見て略正方形を形作るようにリブ20Dが溶接されている。
【0068】
また、ベース部20の中心部には、上下方向に基端部管体24Aが配置されている。基端部管体24Aの上端はベース部上フランジ20Aの下面に溶接されており、基端部管体24Aはベース部下フランジ20Bの中心部を貫通してベース部20のベース部下フランジ20Bよりも下方に突出している。基端部管体24Aの外周面にはベース部下フランジ20Bが溶接されている。基端部管体24Aの外径は標準的には200~500mm程度であり、基端部管体24Aの管壁の厚さは標準的には6~15mm程度であり、また、基端部管体24Aは、伸縮量に応じて長さが決まり、例えば伸縮量500mmの場合にはベース部下フランジ20Bの下面よりも下方に500~700mm程度突出させることが標準的である。
【0069】
また、
図7に示すように、上方から見て4つのベース部管体20Cが形作る略正方形の対角線に沿って、リブ20Eが立設されており、リブ20Eは、ベース部下フランジ20Bの上面およびベース部上フランジ20Aの下面ならびにベース部管体20Cの外周面およびベース部20における基端部管体24Aの外周面に溶接されている。さらに、ベース部20においては、基端部管体24Aの内部に前記略正方形の対角線に沿ってリブ20Fが立設されており、リブ20F同士は基端部管体24Aの断面中心で交差している。リブ20Fは、ベース部20における基端部管体24Aの内周面に溶接で取り付けてもよい。
【0070】
ベース部20には、
図1等に示すように、下方に突出する柱状基端部24が設けられており、柱状基端部24は下方に位置する他の部材と連結可能であり、ベース部20のベース部上フランジ20Aの上面に連結するジャッキ30の下端部は、柱状基端部24の上方に位置する。
【0071】
柱状基端部24は、基端部管体24Aおよび基端プレート24Bを有してなり、ベース部20よりも下方に突出した部位であり、下方に位置する他の部材と連結するための部位である。基端部管体24Aは、前述したように、その上部がベース部20に含まれており、基端部管体24Aは、柱状基端部24とベース部20の両方に属する部材である。基端部管体24Aの下端には基端プレート24B(例えば、一辺の長さが400~500mm程度の略正方形で厚さ10~15mm程度の鋼板)が取り付けられており、基端部管体24Aの外周面と基端プレート24Bの上面との間には、リブ24Cが設けられている。
【0072】
ジャッキ30は、上部固定部18とベース部20との間に配置されていて、一端が上部固定部18に連結され、他端がベース部20に連結されており、ジャッキ30が伸縮することで、上部固定部18とベース部20との間の距離が伸縮し、支保工用伸縮装置10の全体が伸縮する。
【0073】
具体的には、ジャッキ30の上端が、クレビス継手32を介して上部固定部18の上部固定部下フランジ18Bの下面の中央部(つまり、上部固定部18の部位のうち、支保工用伸縮装置10が収縮する方向に柱状天端部22を延長した部位)に連結されており、ジャッキ30の下端が、クレビス継手34を介してベース部20のベース部上フランジ20Aの上面の中央部(つまり、ベース部20の部位のうち、支保工用伸縮装置10が伸長する方向に柱状基端部24を延長した部位)に連結されている。そして、ジャッキ30の伸縮に連動して、4本のガイド支柱14が、ベース部20のベース部管体20Cの内空部および貫通孔20A1、20B1を挿通しつつ、ベース部20に対して相対的に移動することで、上部固定部18とベース部20との間の相対距離が伸縮して、支保工用伸縮装置10の全体が上下方向に伸縮する。
【0074】
クレビス継手32は、
図2及び
図10に示すように、2つの対向板状体32Aの間に挿入板状体32Bが配置された状態の3部材をピン32Cが挿通して連結してなる継手であり、クレビス継手34は、
図2、
図11及び
図12に示すように、2つの対向板状体34Aの間に挿入板状体34Bが配置された状態の3部材をピン34Cが挿通して連結してなる継手である。クレビス継手32のピン32Cおよびクレビス継手34のピン34Cを取り外すことで、ジャッキ30を支保工用伸縮装置10から取り外すことができる。ジャッキ30を支保工用伸縮ガイド部材12に取り付けて支保工用伸縮装置10を構成する場合には、2つの対向板状体32Aの間に挿入板状体32Bが配置された状態の3部材をピン32Cで連結し、2つの対向板状体34Aの間に挿入板状体34Bが配置された状態の3部材をピン34Cで連結する。
【0075】
ジャッキ30を配置するジャッキ配置領域は、4本のガイド支柱14に囲まれる空間であり、設置の際には、ジャッキ30の上端をクレビス継手32で上部固定部18に連結し、ジャッキ30の下端をクレビス継手34でベース部20に連結するだけでよいので、汎用型のジャッキを使用することができる。
【0076】
ジャッキ30としては、油圧ジャッキを用いることが標準的であるが、機械式のジャッキを用いてもよい。
【0077】
ロック機構16は、支保工用伸縮ガイド部材12の収縮する方向の動き(4本のガイド支柱14が下方に動いて支保工用伸縮ガイド部材12の高さが低くなる方向の動き)を制限して、支保工用伸縮ガイド部材12を収縮させようとする荷重を、ジャッキ30を介さずに支持して下方に伝達できるようにするロック機構である。
【0078】
具体的には、ロック機構16は、ベース部20、ガイド支柱14の下部に設けられた切り欠き部14X、差し込みプレート36、押さえプレート36A、ボルト38及びナット38Aが関連しあって構成される機構である。
【0079】
ガイド支柱14の下部(例えば、伸縮量500mm程度の場合には、ガイド支柱14の下端から200~400mm程度の領域)には、
図12に示すように、切り欠き部14Xがガイド支柱14の両側面に、下端からの距離が同一となるように、かつ、側方から見た形状が同一の長方形状となるように設けられている。切り欠き部14Xを側方から見た形状は、
図12及び
図13に示すように、細長い長方形状であり、側方から見たその形状は、例えば、幅が20~30mm程度で、高さが130~170mm程度である。
【0080】
差し込みプレート36は、ガイド支柱14の切り欠き部14Xに差し込まれる鋼製プレートである。差し込みプレート36の厚さは、切り欠き部14Xの前記の幅と同じにし、また、差し込みプレート36の高さは切り欠き部14Xの前記高さよりも20mm程度小さくする。差し込みプレート36の長さ(
図11及び
図16における奥行きの長さ)は、差し込みプレート36をベース部上フランジ20Aの上面と接するように切り欠き部14Xに立設させて配置した場合に、差し込みプレート36の端部(
図11及び
図16における奥行き方向における端部)下面が、ベース部上フランジ20Aの上面と十分に係止できるように配慮し、例えば160~200mm程度又はそれ以上にする。切り欠き部14Xに差し込んだ差し込みプレート36の端部下面が、ベース部上フランジ20Aの上面に係止するため、
図16に示すように、切り欠き部14Xに差し込んだ差し込みプレート36の下方には切り欠き部14Xの下端部空間14X1が存在することになる。
【0081】
図11及び
図16に示すように、下端がベース部20のベース部上フランジ20Aの上面と接するように立設させて配置することで、差し込みプレート36が、ベース部上フランジ20Aの上面と切り欠き部14Xの上端面との間で挟み込まれた状態になり、ガイド支柱14を下方に移動させようとしても差し込みプレート36がその移動を制限する。この結果、4本のガイド支柱14に加わる鉛直方向下向きの荷重は、ロック機構16の差し込みプレート36を介してベース部20に伝達され、柱状基端部24へと伝達されていき、さらには柱状基端部24に連結する下方の部材を経由して地盤200(
図18参照)へと伝達されていく。
【0082】
ロック機構16を備えた本第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10では、差し込みプレート36が切り欠き部14Xから外れないように外側から押さえるべく、
図11、
図12、
図14~
図16に示すように、押さえプレート36Aがベース部20のベース部上フランジ20Aの上面に溶接されて取り付けられている。押さえプレート36Aは、
図14に示すように、ベース部上フランジ20Aの貫通孔20A1に外接するように配置し、押さえプレート36Aの内面(ガイド支柱14側の面)と、切り欠き部14Xに差し込んだ差し込みプレート36の外面(ガイド支柱14とは反対側の面)との間のすき間が例えば1~2mm程度になるようにする。
【0083】
図13に示すように、ガイド支柱14の切り欠き部14Xの切断面に直交するように貫通孔14X0が設けられている。また、
図2及び
図15に示すように、押さえプレート36Aには、貫通孔14X0と連続する位置関係になるように、上下方向に長い長孔36A1が設けられている。さらに、
図17(A)に示すように、差し込みプレート36には長孔36A1と同形状の上下方向に長い長孔36Xが設けられている。
【0084】
差し込みプレート36を切り欠き部14Xに差し込む際には、
図16に示すように、差し込みプレート36の長孔36Xの位置が、押さえプレート36Aの長孔36A1及び切り欠き部14Xの貫通孔14X0の位置と連続するように差し込む。ガイド支柱14の両側の切り欠き部14Xに差し込みプレート36を差し込んだ後、2枚の差し込みプレート36の長孔36X、2枚の押さえプレート36Aの長孔36A1、及び切り欠き部14Xの貫通孔14X0を挿通するようにボルト38を差し込み、ナット38Aを螺合する。押さえプレート36Aは差し込みプレート36が切り欠き部14Xから外れることを防止するためのものであるので、ナット38Aの螺合は強く締め込むことは不要であり、軽く締め込めばよい。
【0085】
差し込みプレート36に設けた貫通孔が上下方向に長い長孔36Xであり、かつ、押さえプレート36Aに設けた貫通孔も上下方向に長い長孔36A1であるため、
図1、
図2及び
図16に示す支保工用伸縮装置10(支保工用伸縮ガイド部材12)の伸長状態(ロック機構16によりガイド支柱14の下方への移動が制限されてロック機構16が下向きの荷重を支持した状態)であっても、支保工用伸縮ガイド部材12に取り付けたジャッキ30をわずかに伸長させることができ、ジャッキ30をわずかに伸長させることで荷重をロック機構16からジャッキ30に盛り替えることができ、差し込みプレート36に加わっていた下向きの荷重を除荷することができる。荷重をロック機構16からジャッキ30に盛り替えて、差し込みプレート36に加わっていた下向きの荷重を除荷した後、ボルト38を取り外して差し込みプレート36を切り欠き部14Xから抜き取ることで、ロック機構16によるロックを解除して、ガイド支柱14を下方へ移動させて支保工用伸縮ガイド部材12を収縮させることができるようになる。
【0086】
以上、本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10の構成について説明したが、支保工用伸縮ガイド部材12に用いる鋼材は、いずれも一般的に用いられている鋼板、鋼管および丸鋼であり、また、前述したように、ジャッキ30も汎用型のジャッキを使用することができる。したがって、本第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10を安価に構成することができる。
【0087】
(1-2)伸縮方法
本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10の伸縮方法について、収縮させる場合と伸長させる場合に分けて説明する。
【0088】
<収縮させる場合>
図1、
図2及び
図16に示す支保工用伸縮装置10(支保工用伸縮ガイド部材12)の伸長状態(ロック機構16によりガイド支柱14の下方への移動が制限されてロック機構16が下向きの荷重を支持した状態)から、支保工用伸縮装置10(支保工用伸縮ガイド部材12)を収縮させる場合、以下のような手順で行う。
【0089】
(ステップS1a(荷重盛り替え工程))
図1、
図2及び
図16に示す支保工用伸縮装置10(支保工用伸縮ガイド部材12)の伸長状態では差し込みプレート36にガイド支柱14から下向きの荷重が加わっているため、差し込みプレート36を切り欠き部14Xから抜き取ってロック機構16によるロックを解除することはできない。
【0090】
そこで、本ステップS1a(荷重盛り替え工程)では、差し込みプレート36にガイド支柱14から下向きに加わっていた荷重を除荷するために荷重の盛り替えを行う。具体的には、ジャッキ30をわずかに伸長させることで荷重をロック機構16からジャッキ30に盛り替え、差し込みプレート36にガイド支柱14から下向きに加わっていた荷重を除荷する。前述したように、差し込みプレート36に設けた貫通孔が上下方向に長い長孔36Xであり、かつ、押さえプレート36Aに設けた貫通孔も上下方向に長い長孔36A1であるため、
図1、
図2及び
図16に示す支保工用伸縮装置10(支保工用伸縮ガイド部材12)の伸長状態(ロック機構16によりガイド支柱14の下方への移動が制限されてロック機構16を介して下向きの荷重を支持した状態)であっても、支保工用伸縮ガイド部材12に取り付けたジャッキ30をわずかに伸長させることができ、ジャッキ30をわずかに伸長させることで荷重をロック機構16からジャッキ30に盛り替えることができ、差し込みプレート36に加わっていた下向きの荷重を除荷することができる。
【0091】
(ステップS2a(ロック解除工程))
ステップS1a(荷重盛り替え工程)で、差し込みプレート36にガイド支柱14から下向きに加わっていた荷重を除荷した後、ナット38Aをボルト38から取り外して、長孔36A1、36Xおよび貫通孔14X0を挿通していたボルト38を抜き取る。そして、差し込みプレート36をガイド支柱14の切り欠き部14Xから抜き取ってロック機構16によるロックを解除する。これにより、支保工用伸縮ガイド部材12はジャッキ30の収縮と連動して伸縮することができるようになる。
【0092】
(ステップS3a(収縮工程))
ステップS1a(荷重盛り替え工程)でロック機構16によるロックを解除した後、ジャッキ30を収縮させて、支保工用伸縮ガイド部材12を収縮させる。
【0093】
<伸長させる場合>
図8に示す支保工用伸縮装置10(支保工用伸縮ガイド部材12)の収縮状態(ロック機構16によるロックがされておらず、ジャッキ30を介して下向きの荷重を支持した状態)から、支保工用伸縮装置10(支保工用伸縮ガイド部材12)を伸長させる場合、以下のような手順で行う。
【0094】
(ステップS1b(ジャッキ伸長工程))
図8に示す支保工用伸縮装置10(支保工用伸縮ガイド部材12)の収縮状態ではロック機構16によるロックがされていないため、ジャッキ30を伸長させて、支保工用伸縮装置10(支保工用伸縮ガイド部材12)を伸長させることができる。
【0095】
そこで、本ステップS1b(ジャッキ伸長工程)では、所定の長さだけジャッキ30を伸長させる。次のステップS2b(ロック工程)でロック機構16によるロックを行うため、具体的には、ロック機構16によるロックを行える位置(ガイド支柱14の切り欠き部14Xの貫通孔14X0が、押さえプレート36Aの長孔36A1と水平方向に連続する位置)までガイド支柱14を上昇させるようにジャッキ30を伸長させる。
【0096】
(ステップS2b(ロック工程))
ステップS1b(ジャッキ伸長工程)で、ロック機構16によるロックを行える位置(ガイド支柱14の切り欠き部14Xの貫通孔14X0が、押さえプレート36Aの長孔36A1と水平方向に連続する位置)までガイド支柱14を上昇させた後、ガイド支柱14の切り欠き部14Xに差し込みプレート36を差し込む。そして、ボルト38を長孔36A1、36Xおよび貫通孔14X0に挿通させて、ナット38Aをボルト38に螺合させる。このようにして、ロック機構16によりガイド支柱14の下方への移動を制限するロックを行う。
【0097】
(ステップS3b(荷重盛り替え工程))
ステップS2b(ロック工程)でロック機構16によるロック(ガイド支柱14の下方への移動を制限するロック)を設定した後、ジャッキ30を収縮させて、ジャッキ30に加わっていた荷重をロック機構16に盛り替える。これにより、支保工用伸縮ガイド部材12を収縮させようとする荷重を、ジャッキ30を介さずに、ガイド支柱14及びロック機構16等を介して支持して下方に伝達するようになる。したがって、本ステップS3b(荷重盛り替え工程)を行った後、ジャッキ30には、支保工用伸縮ガイド部材12を収縮させようとする荷重は伝達されなくなるので、ジャッキ30を支保工用伸縮ガイド部材12から取り外すことも可能になる。
【0098】
(1-3)橋梁への適用
本発明の第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10を、橋梁100の上部構造102の架設の際の支保工(ベント)に用いる場合、荷重負担能力の観点から、橋軸直角方向および橋軸方向に支保工用伸縮装置10を複数配置して支保工(ベント)を構成することが好ましい。
【0099】
図18は、橋梁100の上部構造102の架設のための支保工(ベント)の一部に支保工用伸縮装置10を複数用いた伸縮支保工40の伸長した状態を示す正面図(橋軸方向から見た正面図)であり、
図19は、橋梁100の上部構造102の架設のための支保工(ベント)の一部に支保工用伸縮装置10を複数用いた伸縮支保工40の収縮した状態を示す正面図(橋軸方向から見た正面図)である。
図20は、伸縮支保工40に用いる支保工用伸縮装置10を示す正面図である。伸縮支保工40に用いる支保工用伸縮装置10にはラチス取合せ口42が設けられている。
【0100】
図18及び
図19に示すように、伸縮支保工40においては、架台90の上に一段目の支保工用伸縮装置10が橋軸直角方向に間隔を空けて4つ配置されており、一段目の支保工用伸縮装置10の柱状基端部24(
図1等参照)が架台90に連結されている。また、橋軸直角方向に隣り合う一段目の支保工用伸縮装置10同士がラチス44で連結されている。
【0101】
また、一段目の支保工用伸縮装置10の上に二段目の支保工用伸縮装置10が橋軸直角方向に間隔を空けて4つ配置されており、二段目の支保工用伸縮装置10の柱状基端部24(
図1等参照)が一段目の支保工用伸縮装置10の柱状天端部22(
図1等参照)に連結されている。また、橋軸直角方向に隣り合う二段目の支保工用伸縮装置10同士がラチス44で連結されている。
【0102】
また、二段目の支保工用伸縮装置10の上に、伸縮機能を備えない従来タイプの支保工92が橋軸直角方向に間隔を空けて4つ配置されており、三段目の従来タイプの支保工92が二段目の支保工用伸縮装置10の柱状天端部22(
図1等参照)に連結されている。また、橋軸直角方向に隣り合う三段目の従来タイプの支保工92同士がラチス44で連結されている。
【0103】
このように、伸縮支保工40は、支保工が三段積まれて構成されているが、伸縮支保工40においては、その三段構成と同じに構成したものが橋軸方向に所定の間隔(例えば2~3m程度)を空けて設けられているとともに、各段において橋軸直角方向端部に配置された部材同士がラチス44(図示せず)で橋軸方向に連結されており、さらに最上部に天端架台94が設けられて、伸縮支保工40が構成されている。したがって、伸縮支保工40の全体の形状は直方体状になっている。
【0104】
支保工用伸縮装置10同士を連結するラチス44は、その下部がラチス取合せ口42(
図20参照)に連結され、その上部が上部固定部18の上部固定部上フランジ18Aに連結されている。
【0105】
橋軸直角方向および橋軸方向に配置する支保工用伸縮装置10の数、ならびに支保工用伸縮装置10を上方に積み上げる段数は、適用対象の現場の状況に応じて適宜に定めることができ、支保工用伸縮装置10は様々な形状のベントに適用させやすい。
【0106】
また、
図18に示す伸長状態の伸縮支保工40においては、各支保工用伸縮装置10はそれぞれのロック機構16でロックされており、伸縮支保工40は、ジャッキ30に荷重を負担させずに橋梁100の上部構造102を下方から支持している。したがって、
図18に示す伸長状態の伸縮支保工40からジャッキ30を取り外すことも可能である。
【0107】
図18に示す伸長状態の伸縮支保工40に支持された上部構造102において、橋桁ブロック同士の連結等が完了して橋脚上へ上部構造102を降下させる準備が完了したら、各支保工用伸縮装置10を、「(1-2)伸縮方法」で記載した方法で収縮させて、上部構造102を降下させて橋脚上に載置する。その際には、一段目、二段目の各支保工用伸縮装置10のジャッキ30は各段ごとに変位制御で連動して伸縮させるようにする。一段目の伸縮作業と二段目の伸縮作業の順番は特には限定されないが、一段目の伸縮作業と二段目の伸縮作業は同時には実施せず別々に実施した方がよい。
【0108】
一段目の伸縮作業と二段目の伸縮作業を終えて伸縮支保工40を収縮させた後においては、
図19に示すように、天端架台94と橋梁100の上部構造102との間に十分な作業空間である桁下空間46を確保することができ、その後の伸縮支保工40の撤去作業も容易に行うことができる。
【0109】
(2)第2実施形態
図21は本発明の第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50の伸長した状態の正面図であり、
図22は
図21のXXII-XXII線断面図であり、
図23は本発明の第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50の収縮した状態の正面図であり、
図24は本発明の第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50の伸長した状態の下部を拡大して示す拡大正面図である。ただし、
図21及び
図23においては、ベース部20の範囲について、ガイド支柱54の前面に位置する部材の部位は描かずにガイド支柱54を描いている。また、
図21及び
図23では、支保工用伸縮装置50にラチス取合せ口42を描いているが、支保工用伸縮装置50同士を水平方向に連結しない場合にはラチス取合せ口42を設けることは不要である。
【0110】
第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10においては、ガイド支柱14に切り欠き部14Xを設け、切り欠き部14Xに差し込んだ差し込みプレート36がベース部20に係止することで、支保工用伸縮装置10(支保工用伸縮ガイド部材12)が収縮することを制限するようなロック機構16を設けたが、本第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50においては、ロック機構16とは異なる仕組みのロック機構56(ガイド支柱54に螺合したナット58がベース部20に係止してガイド支柱54の下方向への移動を制限して支保工用伸縮装置50の収縮を制限するロック機構)を設けた点が第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10と異なる。ロック機構56およびこれに関連して変更した構成以外は、本第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50は第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10と同様であるので、第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10と同様の構成要素については同一の符号を用いて説明は原則として省略する。
【0111】
本発明の第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50は、支保工用伸縮ガイド部材52と、ジャッキ30とを有してなり、ジャッキ30の伸縮と連動して、ジャッキ30が伸縮する方向と同じ方向に伸縮するように構成されている。
【0112】
支保工用伸縮ガイド部材52は、4本のガイド支柱54と、ロック機構56と、上部固定部18と、ベース部20と、を有してなる。4本のガイド支柱54と、上部固定部18と、ベース部20とにより、支保工用伸縮ガイド部材52の本体部52Aが構成されている。
【0113】
支保工用伸縮ガイド部材52の本体部52Aには、クレビス継手32、34を介してジャッキ30を取り付けることができ、支保工用伸縮ガイド部材52の本体部52Aは、第1実施形態における支保工用伸縮ガイド部材12の本体部12Aと同様の機構でジャッキ30が伸縮する方向と同じ方向に伸縮する。さらに、支保工用伸縮ガイド部材52においては、本体部52Aの収縮を制限して、本体部52Aに加わる、本体部52Aが収縮する方向の荷重を、ジャッキ30を介さずに支持することができるようにするロック機構56が、本体部52Aに設けられている。このため、支保工用伸縮ガイド部材52は、ロック機構56によって本体部52Aの収縮を制限するロックをすることにより、本体部52Aで鉛直荷重を支持することができ、本体部52Aに本体部52Aが収縮する方向の荷重が加わった状態においても、ジャッキ30を支保工用伸縮ガイド部材52から取り外すことが可能である。なお、支保工用伸縮ガイド部材52の本体部52Aとともに本体部52Aが収縮する方向の荷重を常に分担して負担する役割を持って取り付けられるようなジャッキは、本体部52Aに本体部52Aが収縮する方向の荷重が加わった状態において、支保工用伸縮ガイド部材52から取り外すことはできない。
【0114】
4本のガイド支柱54は、
図21及び
図23に示すように、それぞれ下部の所定の領域の外周面(例えば、伸縮量が500mm程度の場合、ガイド支柱54の下端から200~1000mm程度の範囲の外周面)にねじが切られてねじ切り部54Xが設けられており、このねじ切り部54Xにナット58が螺合している。ねじ切り部54Xに螺合したナット58がベース部20に係止することで、ガイド支柱54の下方向への移動を制限して支保工用伸縮装置50の収縮を制限する。
【0115】
第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10においては、ガイド支柱14に切り欠き部14Xを設け、切り欠き部14Xに差し込んだ差し込みプレート36がベース部20に係止することで、支保工用伸縮装置10(支保工用伸縮ガイド部材12)が収縮することを制限するようなロック機構16を用いているため、差し込みプレート36が切り欠き部14Xから外れないように外側から押さえるべく、
図11、
図12、
図14~
図16に示すように、押さえプレート36Aをベース部20のベース部上フランジ20Aの上面に溶接して取り付けたが、本発明の第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50のロック機構56は、ガイド支柱54のねじ切り部54Xに螺合したナット58がベース部20に係止する。このため、本第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50においては押さえプレート36Aは不要であり、本第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50のベース部20には押さえプレート36Aを取り付けていない。一方、本第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50においては係止するストッパ部材としてナット58を用いているので、
図22に示すようにナット58がワッシャー58Aを介してベース部20に係止されるように、ベース部上フランジ20Aの貫通孔20A1とワッシャー58Aの貫通孔が連続するように、ワッシャー58Aをベース部上フランジ20Aの上面に取り付けている。
【0116】
4本のガイド支柱54は、
図22に示すように、上方から見て正方形の各頂点に対応するような位置に配置されており、その正方形の内部にジャッキ30を配置できるようになっている。
図21等に示すように、4本のガイド支柱54の上端部は上部固定部18にそれぞれ固定されており、また、
図21及び
図23に示すように、4本のガイド支柱54の下端は下端プレート14Aに取り付けられている。図示はしていないが、第1実施形態の支保工用伸縮装置10と同様に、4本のガイド支柱54の下端はボルト14A2で下端プレート14Aにそれぞれ取り付けられている。このように連結された4本のガイド支柱54は、それぞれ対応する位置に配置されたベース部20のベース部管体20Cを挿通している(
図21及び
図23参照)。4本のガイド支柱54が、ジャッキ30の伸縮に連動して、ベース部20のベース部管体20Cを挿通しつつ、ベース部20に対して相対的に移動することで、上部固定部18とベース部20との間の相対距離が伸縮して、支保工用伸縮装置50の全体が上下方向に伸縮する。
【0117】
本第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50の4本のガイド支柱54は、第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10の4本のガイド支柱14と同様に中実の丸鋼であり、鉛直荷重の負担能力を大きくできるようにしている。中実の丸鋼であるガイド支柱54の外径は、1本あたりのガイド支柱54が負担する鉛直荷重の大きさに応じて適宜に定めればよく、橋梁の鋼製上部構造の荷重を負担する場合には、外径を80~200mm程度にすることが標準的である。1本あたりのガイド支柱54が負担する鉛直荷重の大きさによっては、中実の丸鋼ではなく、鋼管にすることも可能である。
【0118】
ガイド支柱54の長さは、伸縮量が500mm程度の場合、標準的には2000~3000mm程度であり、ジャッキ30の伸縮に伴って、ベース部20に対してガイド支柱54を相対的に400~600mm程度移動させるように設計することが標準的である。
【0119】
ロック機構56は、支保工用伸縮ガイド部材52の収縮する方向の動き(4本のガイド支柱54が下方に動いて支保工用伸縮ガイド部材52の高さが低くなる方向の動き)を制限して、支保工用伸縮ガイド部材52を収縮させようとする荷重を、ジャッキ30を介さずに支持して下方に伝達できるようにするロック機構であり、ロック機構56は、ベース部20、ガイド支柱54の下部の外周面に設けられたねじ切り部54X、ナット58、ワッシャー58Aが関連しあって構成されている。具体的には、ガイド支柱54のねじ切り部54Xに螺合したナット58がワッシャー58Aを介してベース部20に係止することで、支保工用伸縮ガイド部材52の収縮する方向の動き(4本のガイド支柱54が下方に動いて支保工用伸縮ガイド部材52の高さが低くなる方向の動き)を制限して、支保工用伸縮ガイド部材52を収縮させようとする荷重を、ジャッキ30を介さずに支持して下方に伝達できるようにする。
【0120】
ロック機構56においては、ガイド支柱54のねじ切り部54Xに螺合したナット58の位置をねじ切り部54Xの範囲において任意に変更できるので、ナット58がベース部20に係止する位置を、ねじ切り部54Xに応じた範囲において任意に設定することができる。このため、例えば、ガイド支柱54の上昇及び下降に連動させてナット58の螺合位置を変更させることもでき、ジャッキ30の油圧が急に抜けてしまったような場合であっても、支保工用伸縮ガイド部材52が収縮する量(ガイド支柱54、上部固定部18および柱状天端部22が落下する距離)を小さく抑えることができる。
【0121】
また、本第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50を複数用いて、「(1-3)橋梁への適用」で説明した伸縮支保工40と同様の伸縮支保工を構成することもできる。つまり、伸縮支保工40において、支保工用伸縮装置10を支保工用伸縮装置50に置き換えて、伸縮支保工を構成することもできる。
【0122】
(3)第3実施形態
図25は本発明の第3実施形態に係る支保工用伸縮装置60の伸長した状態の水平断面図(
図6(
図1のVI-VI線断面図)および
図22(
図21のXXII-XXII線断面図)に対応する切断位置の水平断面図)である。
【0123】
第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10においては、ガイド支柱14に切り欠き部14Xを設け、切り欠き部14Xに差し込んだ差し込みプレート36がベース部20に係止してガイド支柱14の下方向への移動を制限して支保工用伸縮装置10の収縮を制限するロック機構16を設けており、第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50においては、ガイド支柱54にねじ切り部54Xを設け、ねじ切り部54Xに螺合したナット58がベース部20に係止してガイド支柱54の下方向への移動を制限して支保工用伸縮装置50の収縮を制限するロック機構56を設けたが、本第3実施形態に係る支保工用伸縮装置60においては、4本のガイド支柱のうち、2本のガイド支柱には支保工用伸縮装置10のガイド支柱14を用い、残りの2本のガイド支柱には支保工用伸縮装置50のガイド支柱54を用いており、支保工用伸縮装置10のロック機構16と支保工用伸縮装置50のロック機構56の両方をロック機構として用いている実施形態である。それ以外の点については、第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10および第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50と同様であるので、説明は原則として省略する。
【0124】
本発明の第3実施形態に係る支保工用伸縮装置60は、支保工用伸縮ガイド部材62と、ジャッキ30とを有してなり、ジャッキ30の伸縮と連動して、ジャッキ30が伸縮する方向と同じ方向に伸縮するように構成されている。
【0125】
支保工用伸縮ガイド部材62は、4本のガイド支柱(2本のガイド支柱14及び2本のガイド支柱54)と、ロック機構66と、上部固定部18と、ベース部20と、を有してなる。4本のガイド支柱(2本のガイド支柱14及び2本のガイド支柱54)と、上部固定部18と、ベース部20とにより、支保工用伸縮ガイド部材62の本体部62Aが構成されている。
図25に示すように、上方から見て、2本のガイド支柱14は、略正方形の一方の対角線方向の位置関係となるような位置に配置されており、2本のガイド支柱54は、略正方形の他方の対角線方向の位置関係となるような位置に配置されている。
【0126】
支保工用伸縮ガイド部材62の本体部62Aには、クレビス継手32、34を介してジャッキ30を取り付けることができ、支保工用伸縮ガイド部材62の本体部62Aは、第1実施形態における支保工用伸縮ガイド部材12の本体部12Aと同様の機構でジャッキ30が伸縮する方向と同じ方向に伸縮する。さらに、支保工用伸縮ガイド部材62においては、本体部62Aの収縮を制限して、本体部62Aに加わる、本体部62Aが収縮する方向の荷重を、ジャッキ30を介さずに支持することができるようにするロック機構66が、本体部62Aに設けられている。このため、支保工用伸縮ガイド部材62は、ロック機構66によって本体部62Aの収縮を制限するロックをすることにより、本体部62Aで鉛直荷重を支持することができ、本体部62Aに本体部62Aが収縮する方向の荷重が加わった状態においても、ジャッキ30を支保工用伸縮ガイド部材62から取り外すことが可能である。なお、支保工用伸縮ガイド部材62の本体部62Aとともに本体部62Aが収縮する方向の荷重を常に分担して負担する役割を持って取り付けられるようなジャッキは、本体部62Aに本体部62Aが収縮する方向の荷重が加わった状態において、支保工用伸縮ガイド部材62から取り外すことはできない。
【0127】
本第3実施形態に係る支保工用伸縮装置60のロック機構66は、2本のガイド支柱14についてのロック機構16と2本のガイド支柱54についてのロック機構56とを組み合わせて構成されたロック機構である。
【0128】
第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50に水平力が加わった場合、
図23に示すように、ベース部20においては、ベース部上フランジ20Aのコバ面がガイド支柱54のねじ切り部54Xに接触して水平力に抵抗することになるため、ねじ切り部54Xのねじが潰れてしまうおそれがある。本第3実施形態に係る支保工用伸縮装置60においては、外周面にねじが切られていない2本のガイド支柱14と、ねじ切り部54Xを備えた2本のガイド支柱54を備えているため、水平力に対しては、外周面にねじが切られていない2本のガイド支柱14で主に抵抗することができ、ガイド支柱54のねじ切り部54Xのねじが潰れてしまうことを抑制することができる。
【0129】
また、本第3実施形態に係る支保工用伸縮装置60においては、ねじ切り部54Xおよびねじ切り部54Xに螺合するナット58を備えた2本のガイド支柱54を備えているため、この2本のガイド支柱54において、ガイド支柱54の上昇及び下降に連動させてナット58の螺合位置を変更させることもでき、ジャッキ30の油圧が急に抜けてしまったような場合であっても、支保工用伸縮ガイド部材62が収縮する量(ガイド支柱14、54、上部固定部18および柱状天端部22が落下する距離)を小さく抑えることができる。
【0130】
また、本第3実施形態に係る支保工用伸縮装置60を複数用いて、「(1-3)橋梁への適用」で説明した伸縮支保工40と同様の伸縮支保工を構成することもできる。つまり、伸縮支保工40において、支保工用伸縮装置10を支保工用伸縮装置60に置き換えて、伸縮支保工を構成することもできる。
【0131】
(4)補足
以上説明した第1~第3実施形態に係る支保工用伸縮装置10、50、60のガイド支柱の本数は4本であったが、本発明に係る支保工用伸縮装置においては、ガイド支柱の本数を3本にしてもよく、また、5本以上にしてもよい。
【0132】
また、第1~第3実施形態に係る支保工用伸縮装置においては、ロック機構16、56、66を構成する切り欠き部14Xやねじ切り部54Xは、ガイド支柱14、54の一領域のみに形成しているが、特にこれに限定されず、ガイド支柱14、54の長手方向の複数領域に同様な切り欠き部14Xやねじ切り部54Xを形成し、ガイド支柱14、54の長手方向における複数地点でロック機構16、56、66を作動可能にするように構成してもよい。
【0133】
また、第1~第3実施形態に係る支保工用伸縮装置10、50、60では、ジャッキ30と上部固定部18の上部固定部下フランジ18Bとはクレビス継手32で連結し、ジャッキ30とベース部20のベース部上フランジ20Aとはクレビス継手34で連結しているが、上部固定部18及びベース部20とジャッキとの連結態様は、クレビス継手による連結態様に限定されるわけではない。
【0134】
例えば、上部固定部18及びベース部20とジャッキ30との連結態様は、ボルトやネジにより連結する連結態様であってもよい。
【0135】
また、これらのような連結態様ではなく、
図26および
図27に示す第1実施形態の変形例に係る支保工用伸縮装置70のように、ジャッキ74の上端が上部固定部18の上部固定部下フランジ18Bの下面の当接部18B1に当接し、ジャッキ74の下端がベース部20のベース部上フランジ20Aの上面の当接部20A2に当接するだけの構成であってもよい。
図26は第1実施形態の変形例に係る支保工用伸縮装置70の伸長した状態を示す正面図であり、
図27は第1実施形態の変形例に係る支保工用伸縮装置70の収縮した状態を示す正面図である。
図28は第1実施形態の変形例に係る支保工用伸縮装置70の支保工用伸縮ガイド部材72の収縮した状態を示す正面図である。
【0136】
つまり、第1実施形態の変形例に係る支保工用伸縮装置70においては、ジャッキ74の上端が上部固定部18の上部固定部下フランジ18Bの下面の当接部18B1に当接して、上部固定部18に上向きの力を加え、ジャッキ74の下端がベース部20のベース部上フランジ20Aの上面の当接部20A2に当接して、ベース部20に下向きの力を加える。また、上部固定部18には、自重並びにガイド支柱14及び柱状天端部22等の重量による下向きの荷重が加わっている。このため、ジャッキ74を伸縮させるとそれに連動して、上部固定部18がベース部20に対して相対的に移動する。これにより、上部固定部18とベース部20との間の相対距離が伸縮して、支保工用伸縮ガイド部材72が上下方向に伸縮して、支保工用伸縮装置70の全体が上下方向に伸縮する。
【0137】
そして、前述した第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10と同一のロック機構16により、支保工用伸縮ガイド部材72の本体部72A(該本体部72Aの構成は、第1実施形態に係る支保工用伸縮装置10の支保工用伸縮ガイド部材12の本体部12Aと同一の構成である。)の収縮を制限して、本体部72Aに加わる、本体部72Aが収縮する方向の荷重を、ジャッキ74を介さずに支持することができるようにして、収縮する方向の荷重を本体部72Aに盛り替えた上でジャッキ74をさらに収縮させることで、
図27(ジャッキ74の取り外し前)及び
図28(ジャッキ74の取り外し後)に示すように、ジャッキ74をそのまま取り外すことができる。
【0138】
第1実施形態の変形例に係る支保工用伸縮装置70における構成(ジャッキ74の上端が上部固定部18の上部固定部下フランジ18Bの下面の当接部18B1に当接して、上部固定部18に上向きの力を加え、ジャッキ74の下端がベース部20のベース部上フランジ20Aの上面の当接部20A2に当接して、ベース部20に下向きの力を加える構成)と同様の構成を、第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50及び第3実施形態に係る支保工用伸縮装置60に適用して、第2実施形態に係る支保工用伸縮装置50の変形例及び第3実施形態に係る支保工用伸縮装置60の変形例とすることもできる。
【符号の説明】
【0139】
10、50、60、70…支保工用伸縮装置
12、52、62、72…支保工用伸縮ガイド部材
12A、52A、62A、72A…本体部
14、54…ガイド支柱
14A…下端プレート
14A1…下端プレート貫通孔
14A2…ボルト
14X…切り欠き部
14X0…貫通孔
14X1…切り欠き部14Xの下端部空間
16、56、66…ロック機構
18…上部固定部
18A…上部固定部上フランジ
18B…上部固定部下フランジ
18B1…当接部
18C、18D、18E…リブ
20…ベース部
20A…ベース部上フランジ
20A1…貫通孔
20A2…当接部
20B…ベース部下フランジ
20B1…貫通孔
20C…ベース部管体
20D、20E、20F…リブ
22…柱状天端部
22A…天端部管体
22B…天端プレート
22C…リブ
24…柱状基端部
24A…基端部管体
24B…基端プレート
24C…リブ
30、74…ジャッキ
32、34…クレビス継手
32A、34A…対向板状体
32B、34B…挿入板状体
32C、34C…ピン
36…差し込みプレート
36A…押さえプレート
36A1、36X…長孔
38…ボルト
38A…ナット
40…伸縮支保工
42…ラチス取合せ口
44…ラチス
46…桁下空間
54X…ねじ切り部
58…ナット
58A…ワッシャー
90…架台
92…従来タイプの支保工
94…天端架台
100…橋梁
102…上部構造
200…地盤
300…重量物昇降装置
302…アッパーフレーム
303…ロアフレーム
304…伸縮ガイドポスト
304A、304B、304C…筒体
305、306、307、308…昇降用シリンダ