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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/18 20060101AFI20250218BHJP
   B60R 22/12 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
B60R21/18
B60R22/12
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022023921
(22)【出願日】2022-02-18
(65)【公開番号】P2023120836
(43)【公開日】2023-08-30
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】折▲高▼ 早苗
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0290545(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113459987(CN,A)
【文献】特開2007-118924(JP,A)
【文献】特表2003-519040(JP,A)
【文献】特開2020-066425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/16 - 21/33
B60R 22/00 - 22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
シートベルトと、
該シートベルトにおいて装着時に前記乗員の腰部を拘束するラップベルトの領域に配置され、前記乗員の上半身を保護可能に膨張するエアバッグと、
膨張用ガスを発生させるインフレーター本体と、
該インフレーター本体から延びて前記膨張用ガスを前記エアバッグ内に案内するパイプ部と、
を有する構成とされて、
前記エアバッグは、前記シートの側面側に延出し前記パイプ部と接続されバッグ本体に膨張用ガスを流入させる導管部を有し、
該導管部は、前記パイプ部の先端に外側から嵌って締付部材としてのクランプにより前記パイプ部の先端に締付固定される筒状の導管部本体と、該導管部本体から外側に向かって延びる延出片と、を備え、該延出片が前記シートを支えるシートフレームに固定されていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記導管部と前記パイプ部との接続部において、前記膨張用ガスの流出方向に向かって、前記クランプ、前記パイプ部の先端、前記延出片の固定用の挿通孔、の順に配設されていることを特徴とする、請求項1に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員保護装置としては、シートベルトにおいて装着時に乗員の腰部を拘束するラップベルトの領域に配置されるエアバッグを備える構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。この乗員保護装置では、膨張用ガスの発生に伴なってラップベルトから前上方に向けてエアバッグを膨張させ、膨張完了時に、乗員の上半身の保護が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-66425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような乗員保護装置では、膨張用ガスをエアバッグ内に案内するパイプ部とエアバッグ側の導管部とがクランプ等の締付部材を利用して接続固定されており、かかるパイプ部との接続部における導管部の位置によりエアバッグ本体の展開膨張位置が規定されている。しかしながら、膨張用ガスが発生した際に、導管部の位置がガス圧による推進力方向にずれてしまうと、エアバッグ本体の展開膨張位置にも影響が生じてしまう場合がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するものであり、膨張用ガスが発生した際の、パイプ部との接続部における導管部の位置ずれを抑えることが可能な乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、シートベルトと、該シートベルトにおいて装着時に前記乗員の腰部を拘束するラップベルトの領域に配置され、前記乗員の上半身を保護可能に膨張するエアバッグと、膨張用ガスを発生させるインフレーター本体と、該インフレーター本体から延びて前記膨張用ガスを前記エアバッグ内に案内するパイプ部と、を有する構成とされて、
前記エアバッグは、前記シートの側面側に延出し前記パイプ部と接続されバッグ本体に膨張用ガスを流入させる導管部を有し、
該導管部は、前記パイプ部の先端に外側から嵌って締付部材としてのクランプにより前記パイプ部の先端に締付固定される筒状の導管部本体と、該導管部本体から外側に向かって延びる延出片と、を備え、該延出片が前記シートを支えるシートフレームに固定されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の乗員保護装置によれば、導管部に対し膨張用ガスのガス圧による推進力が作用した場合でも、シートフレームに固定された延出片を介して導管部には反対方向の反力が働くため、導管部の移動が規制される。これにより、膨張用ガスが発生した際の、パイプ部との接続部における導管部の位置ずれを抑えることができる。
【0008】
ここで、前記延出片を、前記導管部本体における膨張用ガスの流路を挟んだ両側にそれぞれ設けるように構成することができる。このようにすることで、より効果的に導管部の位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態である乗員保護装置を搭載させたシートの斜視図である。
図2図1のシートの側面図である。
図3図1のシートの正面図であり、シートベルトが装着された状態を示す。
図4】Aはパイプ部と導管部との接続部をその周辺部とともに示した図、Bはパイプ部とインフレーター本体との接続部をその周辺部とともに示した図である。
図5図1の乗員保護装置において使用されるエアバッグを、単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。
図6図5のエアバッグの概略縦断面図である。
図7図5のエアバッグを構成する基布を示す平面図である。
図8】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの正面図である。
図9】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの側面図である。
図10】実施形態の乗員保護装置において、膨張を完了させたエアバッグにより乗員を拘束する状態を示す側面図である。
図11】延出片を複数設けた変形例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の乗員保護装置Sは、図1~3に示すように、車両のシート1に搭載されるもので、シートベルト7と、エアバッグ25と、インフレーター17と、を備える構成とされている。シート1は、背もたれ部2と座部3とを備えている。
【0011】
シートベルト7は、シート1に着座した乗員MPを拘束するためのベルト本体8と、ベルト本体8に取り付けられるタングプレート12と、タングプレート12を連結させるためのバックル13と、を備える構成とされている。ベルト本体8は、背もたれ部2内に配置される図示しないリトラクタの巻取軸に、一端を係止され、他端側を、シート1における座部3の後端3b左方に配置されるアンカ部材14(図1,2参照)に係止されている。詳細には、ベルト本体8は、背もたれ部2の上端左縁側から外部に露出されるように配置されるもので、実施形態の場合、乗員の非着座状態においては、図1,2に示すように、エアバッグ25を配置させるラップベルト10を、背もたれ部2の前面に露出させるように、構成されている。ベルト本体8は、ラップベルト10と、背もたれ部2内に収納されたショルダーベルト9と、を有し、乗員着座時においてタングプレート12をバックル13に連結させた状態で、アンカ部材14とバックル13との間において左右方向に略沿うように配置されるラップベルト10によって乗員MPの下半身MD(腰部)を拘束し、背もたれ部2の上端左縁側から延びつつバックル13にかけて斜めに配置されるショルダーベルト9によって乗員MPの上半身MU(肩から胸部MBにかけてと頭部MH)を拘束する構成とされている(図3参照)。なお、シートベルト7において、背もたれ部2内に配置されている図示しないリトラクタは、プリテンショナー機構を有している。
【0012】
インフレーター17は、エアバッグ25に膨張用ガスを供給する。実施形態の場合、インフレーター17は、膨張用ガスを発生させるインフレーター本体18と、インフレーター本体18から延びて膨張用ガスをエアバッグ25内に案内するパイプ部19と、を備えている。実施形態におけるインフレーター17は、エアバッグ25の膨張に伴なうシートベルト7のベルト本体8の引き出しを規制するために、作動開始を、シートベルト7のプリテンショナー機構よりも遅らせるように設定されている。具体的には、インフレーター17は、シートベルト7のプリテンショナー機構の作動から5ms後に作動するように設定されている。
【0013】
インフレーター17は、シート1における座面3aよりも下方となる位置において、シート1(詳しくは座部3)を支えるシートフレーム4に取り付けられており、例えばシート1を前後に大きくスライドさせたり、回転させたりした場合でも、インフレーター17はシート1と共に移動可能とされている。
【0014】
インフレーター本体18は、図4に示されているように、略円柱状のシリンダタイプとされ、座部3より下方の背面側においてその軸方向を左右方向に略沿わせて設けられている。このときインフレーター本体18の軸方向の一端側に設けられたガス吐出口部61はシート1の左方向を向いている。
【0015】
インフレーター本体18は、図4のBに示されているように、固定部材65を利用して、軸方向に離間した2箇所においてシートフレーム4に固定されている。固定部材65としては、縮径可能なリング状のクランプ66と、クランプ66の外周面から径方向外向きに突出させたボルト68と、を備えたボルト付きクランプが用いられている。
【0016】
クランプ66は、板金製とされ、インフレーター本体18の外周面に装着された状態で縮径変形することで、インフレーター本体18に強固に巻き付けられている。これによりクランプ66を含む固定部材65がインフレーター本体18に取り付けられている。
【0017】
一方、インフレーター本体18が固定されるシートフレーム4の取付板部70は、左右方向に延びる平坦な第1の取付面71を備え、左右方向に離間して貫通の取付孔72が穿設されている(図4のB参照)。実施形態では、この取付孔72に固定部材65のボルト68を挿通させ、ボルト68の先端側から、取付板部70を挟み込むように、ボルト68の雄ねじ部にナット75を螺合させることにより、インフレーター本体18がシートフレーム4の取付板部70に固定されている。
【0018】
パイプ部19は、略L字状に屈曲形成された金属製の管体で、その一方の端部19aがインフレーター本体18のガス吐出口部61と接続されている(図4のB参照)。ガス吐出口部61と接続される側の端部19aは拡径部とされ、インフレーター本体18のガス吐出口部61に外嵌した状態でカシメ加工され、カシメ接合部76が形成されている。カシメ接合部76において、ガス吐出口部61の基部に形成された環状の凹溝62内にパイプ部19の一部がくい込むことにより、パイプ部19の端部19aはインフレーター本体18に接続されている。
【0019】
インフレーター本体18に接続されたパイプ部19は、端部19aを水平方向に延ばした後、図4のAで示すように、屈曲部19bにおいて前上方向に曲げられている。そしてシートフレーム4に近接して前上方向に延びた先に先端19cが、配設されている。この先端19cは、クランプ20を利用して、エアバッグ25における後述する導管部40と接続させる構成とされている。
【0020】
エアバッグ25は、長尺状に折り畳まれて、シートベルト7の装着時におけるラップベルト10の上面側に、重ねられるようにして、ラップベルト10の領域に配置されている(図3参照)。すなわち、図1に示すような非装着状態においては、エアバッグ25は、ラップベルト10の背面側(背もたれ部2側)に、配置されている。実施形態の場合、エアバッグ25とラップベルト10とは、図3に示すように、周囲を、エアバッグ25の展開膨張時に破断可能なカバー22によって、覆われて、一体化されている。すなわち、実施形態では、ラップベルト10とカバー22との間の隙間が、エアバッグ25を収納させる収納部位を構成している。
【0021】
エアバッグ25は、図5,6に示すように、バッグ本体26と、インフレーター17と接続されてバッグ本体26に膨張用ガスを流入させる導管部40と、ラップベルト10を挿通させるベルト取付部47と、を備えている。
【0022】
バッグ本体26は、膨張完了時の外形形状を、軸方向を左右方向に略沿わせた略三角柱形状とされている。詳細に説明すれば、バッグ本体26は、左右の側方から見た状態での膨張完了形状を、前側に斜辺を有するような略直角三角形状とし、前後方向側から見た状態での膨張完了形状を、上下に幅広とした略長方形状とするように、構成されている(図8,9参照)。バッグ本体26は、膨張完了時に乗員MPから離れた前側に配置される前壁部27と、膨張完了時に乗員MP側に配置される後上壁部28及び後下壁部29と、膨張完了時に左右方向側で対向して配置される左壁部30及び右壁部31と、を備えている。そして、バッグ本体26は、後下壁部29の後端29aの下面側に、導管部40と連通される連通孔33を有するとともに、この連通孔33の周縁の部位で、導管部40と連結されている。実施形態の場合、連通孔33は、円形に開口して、バッグ本体26の左右の中心を挟むようにして、略左右対称となるように、左右方向側で2個並設されている。また、前壁部27の左右両縁側における上下の中央付近には、余剰の膨張用ガスを排気させるためのベントホール34,34が、形成されている。実施形態のバッグ本体26では、後下壁部29が、膨張完了時に乗員MPの脚部(大腿部)の上面と当接可能な脚当接面36を構成し、後上壁部28が、膨張完了時に乗員MPの前方に配置されて、乗員MPの胸部から頭部にかけてを拘束可能な上半身拘束面37を、構成している。実施形態の場合、後上壁部28と後下壁部29とは、バッグ本体26の膨張完了状態での外形形状を、それぞれ、前後方向側若しくは上下方向側に長手方向を略沿わせた略長方形状として、図6に示すように、長手方向側の幅寸法を、一致させて構成されている。後上壁部28は、バッグ本体の膨張完了時に、上端28aを、乗員の頭部MHの前方に位置させるように、構成されている(図9参照)。また、後上壁部28と後下壁部29とは、バッグ本体26の膨張完了時における断面形状において、略直交するように配置される構成である(図6参照)。
【0023】
導管部40は、インフレーター17のパイプ部19と接続される筒状の導管部本体41と、導管部本体41から外側に向かって延びる延出片80と、を備えている(延出片80については、図4のAおよび図7参照)。導管部本体41は、バッグ本体26に連結される先端41b側を閉塞させ、元部41a側を、パイプ部19と接続可能に開口させて構成されるもので、エアバッグ25の膨張完了時に、ラップベルト10に略沿うように左右方向に沿って配置される構成である。この導管部本体41は、図5に示すように、先端41b側の領域を、膨張完了時のバッグ本体26の下面側に配置させるもので、この先端41b側の領域を、幅広として、内部に流入した膨張用ガスを一旦貯留させるガス貯留部42としている。
【0024】
ガス貯留部42は、幅寸法を、導管部本体41における元部41a側の部位の幅寸法の2倍程度に、設定されている。また、ガス貯留部42は、左右方向側の幅寸法を、バッグ本体26における後下縁側の部位(連通孔33の配置部位付近)の左右方向側の幅寸法と略同一として、構成されている(図5,7参照)。そして、ガス貯留部42には、バッグ本体26に形成される連通孔33に対応する開口42aが、形成されている。導管部本体41は、実施形態の場合、外形形状を同一とされる上壁部43と下壁部44との周縁相互を結合させることにより、筒状とされており、開口42aは、上壁部43の領域に形成されている。また、開口42aは、周縁を全周にわたって連通孔33の周縁と結合(縫着)されている。
【0025】
この導管部本体41の元部41a側には、図4のAで示すように、導管部本体41から外側に向かって延びる延出片80が設けられている。延出片80は、図7で示すように、導管部40を構成する2枚の導管部用パネル57,58に設けられた延出片80に対応する部位80aと80bを相互に結合させることにより形成されたものである。延出片80は、平面視略三角形状とされており、導管部本体41から離間した隅角部近傍には固定用のねじ部材85を挿通させる挿通孔82が形成されている。
【0026】
ここで、図4のAに基づいて、エアバッグ25の導管部40とパイプ部19との接続部について説明する。パイプ部19の先端19cは径方向外側に突出した環状突部とされており、実施形態では、この先端19cを、筒状の導管部本体41の内部に挿入させた状態で、導管部本体41の外側から締付部材としてのクランプ20が縮径されて、導管部40(詳しくは導管部本体41)がパイプ部19に接続固定されている。また、パイプ部19と接続された導管部本体41の元部41a側における、クランプ20による固定箇所の近傍位置には、延出片80が設けられている。図4のAにおける部分拡大図で示すように、延出片80の挿通孔82に固定用のねじ部材85が挿通され、そのねじ部が、延出片80と対向するシートフレーム4の取付板部70の第2の取付面73にねじ込まれることで、延出片80がシートフレーム4の取付板部70に固定されている。そして、導管部40とパイプ部19との接続部においては、膨張用ガスの流出方向(図4のAにおける左上方向)に向かって、クランプ20、パイプ部19の先端19c、延出片80の固定用の挿通孔82、の順に配設されている。このように構成された実施形態では、パイプ部19との接続部における導管部40の移動が、シートフレーム4に固定された延出片80により規制されるため、仮想的に延出片80を備えていない乗員保護装置に比べて、膨張用ガスが発生した際の、接続部における導管部40の位置ずれを抑制することができる。
【0027】
ベルト取付部47は、導管部40のガス貯留部41の領域における下面側(下壁部44側)に配置されるもので、ラップベルト10を挿通可能に両端側を開口させた略筒状として、下壁部44に縫着されている(図5,6参照)。このベルト取付部47は、長さ寸法を、ガス貯留部41の左右方向側の幅寸法よりも僅かに小さく設定されている。すなわち、ベルト取付部47は、展開膨張時のバッグ本体26のラップベルト10からの過度の浮き上がりを抑制可能に、ラップベルト10に沿った方向側の長さ寸法を大きく設定されている。
【0028】
実施形態のエアバッグ25は、所定形状の基布の周縁相互を結合させて形成されるもので、図6,7に示すように、バッグ本体26を構成する2枚の乗員側パネル50,前側パネル55と、導管部40を構成する2枚の導管部用パネル57,58と、ベルト取付部47を構成するベルト取付用パネル60と、から、構成されている。これらの乗員側パネル50,前側パネル55,導管部用パネル57,58,ベルト取付用パネル60は、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。
【0029】
乗員側パネル50は、膨張完了時に乗員MP側に配置されて脚当接面36から上半身拘束面37にかけての部位を構成するもので、膨張完了時のバッグ本体26における後上壁部28から後下壁部29にかけてを主に構成している。具体的には、乗員側パネル50は、主に脚当接面36(後下壁部29)を構成する下側部位52と、主に上半身拘束面(後上壁部28)を構成する上側部位51と、を備えている。詳細には、下側部位52は、後下壁部29と左壁部30及び右壁部31における後下側の領域とを構成し、上側部位51は、後上壁部28と左壁部30及び右壁部31における後上側の領域とを構成するもので、ともに、外形形状を略六角形状とされている。そして、乗員側パネル50は、この下側部位52と上側部位51とを一辺で連結させたような外形形状とされており、下側部位52と上側部位51とは、この連結部位50aを基準として対称形とされている。
【0030】
前側パネル55は、膨張完了時のバッグ本体26における前壁部27を主に構成するもので、詳細には、前壁部27と左壁部30及び右壁部31における前側の領域とを構成している。この前側パネル55は、外形形状を略六角形状とされている。具体的には、前側パネル55の外形形状は、乗員側パネル50において、連結部位50aの左右に配置される後左縁51a,52a相互、後右縁51b,52b相互をそれぞれ結合させた残りの縁部(前縁51c,52c)相互を離隔させるように開いた状態の下側部位52及び上側部位51(図7参照)と、略一致させた六角形状とされている。
【0031】
2枚の導管部用パネル57,58は、図7に示すように、外形形状を同一とされるもので、導管部40における上壁部43と下壁部44とを、それぞれ構成している。ベルト取付用パネル60は、外形形状を略長方形状とされるもので、二つ折りされて短手方向側の縁部60a,60b相互を結合させることにより、ベルト取付部47を形成することとなる。
【0032】
実施形態の乗員保護装置Sでは、車両に搭載した状態で、インフレーター17が作動すれば、インフレーター17から吐出される膨張用ガスが、導管部40を経てバッグ本体26内に流入することとなり、バッグ本体26が、カバー22を破断させるようにして、ラップベルト10から前上方に突出しつつ、図8,9に示すように膨張を完了させることとなる。その際、エアバッグ25の導管部40には、図9において矢印で示す方向の推進力が作用するが、導管部40はパイプ部19に固定されるとともに、延出片80を介してシートフレーム4に固定されており、パイプ部19やシートフレーム4からの反力が働いて、パイプ部19との接続部における導管部40の移動(位置ずれ)が抑制される。
【0033】
そして、実施形態の乗員保護装置Sでは、エアバッグ25(バッグ本体26)は、膨張完了時の形状を、軸方向を左右方向に略沿わせた略三角柱形状とされており、脚当接面36を脚部MTの上面と当接させつつ、乗員MPの上半身MUの前側に配置される。そのため、エアバッグ25の膨張完了時に、乗員MPが、上半身MUを下半身MDに近づけるように大きく移動させることとなっても、図10に示すように、脚当接面36が広い面積で脚部MTに支持されることから、倒れることや圧縮されることを抑制されて、乗員MPの上半身MU(胸部MBから頭部MHにかけて)を、上半身MUの前側において対向するように配置されている上半身拘束面37によって、的確に拘束することができる。また、実施形態の乗員保護装置Sでは、エアバッグ25(バッグ本体26)の膨張完了形状が、略三角柱形状とされていることから、乗員MPが背もたれ部を傾斜させた状態のシートに着座している場合にも、上半身MUを、上半身拘束面37によって的確に拘束することができる。
【0034】
以上のように構成された実施形態の乗員保護装置Sによれば、導管部40に対し膨張用ガスのガス圧による推進力が作用した場合でも、シートフレーム4に固定された延出片80を介して導管部40には反対方向の反力が働くため、導管部40の移動が規制される。これにより、膨張用ガスが発生した際の、パイプ部19との接続部における導管部40の位置ずれを抑えることができる。
【0035】
なお、上記実施形態は、シートフレーム4に固定される延出片80を一つ設けた例であったが、延出片80の数や位置については適宜変更可能である。例えば、図11で示すように、延出片80を導管部本体41における膨張用ガスの流路を挟んだ両側に設け、それぞれの延出片80をシートフレーム4の取付板部70に固定するように構成することも可能である。このようにすれば、パイプ部19との接続部における導管部40の位置ずれをより効果的に抑制することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例である。本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…シート、2…背もたれ部、4…シートフレーム、7…シートベルト、10…ラップベルト、18…インフレーター本体、19…パイプ部、19c…先端、25…エアバッグ、40…導管部、41…導管部本体、80…延出片、MP…乗員、S…乗員保護装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11