IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特許7635742車速制御装置、車速制御方法及び車速制御用コンピュータプログラム
<>
  • 特許-車速制御装置、車速制御方法及び車速制御用コンピュータプログラム 図1
  • 特許-車速制御装置、車速制御方法及び車速制御用コンピュータプログラム 図2
  • 特許-車速制御装置、車速制御方法及び車速制御用コンピュータプログラム 図3
  • 特許-車速制御装置、車速制御方法及び車速制御用コンピュータプログラム 図4
  • 特許-車速制御装置、車速制御方法及び車速制御用コンピュータプログラム 図5
  • 特許-車速制御装置、車速制御方法及び車速制御用コンピュータプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】車速制御装置、車速制御方法及び車速制御用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/14 20060101AFI20250218BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20250218BHJP
   B60W 40/072 20120101ALI20250218BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20250218BHJP
【FI】
B60W30/14
B60W40/06
B60W40/072
B60W60/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022040560
(22)【出願日】2022-03-15
(65)【公開番号】P2023135388
(43)【公開日】2023-09-28
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】上山 真生
(72)【発明者】
【氏名】魏 一
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-052435(JP,A)
【文献】特開2018-058494(JP,A)
【文献】特開2020-192942(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0139971(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行中の自車線を検出する車線検出部と、
前記車両に設けられた、前記車両の周囲の状況を検知するセンサにより得られたセンサ信号または地図情報に基づいて、前記車両の前方の所定距離以内でカーブとなる道路区間が開始する開始地点を検出するとともに前記道路区間における前記自車線の曲率を推定する曲率推定部と、
前記地図情報を参照して、前記自車線が、前記道路区間において相対的に高い速度で走行することが許容される高速車線か、あるいは、前記道路区間において相対的に低い速度で走行することが要求される低速車線かを判定する判定部と、
前記道路区間に含まれる複数の車線の何れかを基準車線に設定し、前記基準車線の曲率に基づいて、前記自車線の曲率が大きいほど前記車両に対して設定される基準速度が低くなり、かつ、前記自車線が前記高速車線である場合の前記基準速度が、前記自車線が前記低速車線である場合の前記基準速度以上となるように、前記基準速度を設定する基準速度設定部と、
前記車両が、前記道路区間の前記開始地点に達したときの前記車両の速度が前記基準速度以下となるように前記車両の速度を制御する制御部と、
を有する車速制御装置。
【請求項2】
前記基準速度設定部は、前記道路区間に含まれる前記複数の車線のうちの前記低速車線を前記基準車線に設定する、請求項に記載の車速制御装置。
【請求項3】
前記基準速度設定部は、前記道路区間におけるカーブにおいて最も内側となる車線を前記基準車線に設定する、請求項に記載の車速制御装置。
【請求項4】
前記基準速度設定部は、前記道路区間におけるカーブの方向が前記高速車線側へ向けて曲がる方向である場合、前記高速車線を前記基準車線に設定し、前記道路区間におけるカーブの方向が前記低速車線側へ向けて曲がる方向である場合、前記自車線を前記基準車線に設定する、請求項に記載の車速制御装置。
【請求項5】
前記基準速度設定部は、前記基準車線と前記自車線とが異なる場合、前記地図情報に基づいて、前記基準車線から前記自車線までの車線数と前記道路区間における各車線の幅を求め、前記車線数に前記幅を乗じて得られる距離に基づいて前記自車線の曲率を補正することで前記基準車線の曲率を算出する、請求項に記載の車速制御装置。
【請求項6】
車両が走行中の自車線を検出し、
前記車両に設けられた、前記車両の周囲の状況を検知するセンサにより得られたセンサ信号または地図情報に基づいて、前記車両の前方の所定距離以内でカーブとなる道路区間が開始する開始地点を検出するとともに前記道路区間における前記自車線の曲率を推定し、
前記地図情報を参照して、前記自車線が、前記道路区間において相対的に高い速度で走行することが許容される高速車線か、あるいは、前記道路区間において相対的に低い速度で走行することが要求される低速車線かを判定し、
前記道路区間に含まれる複数の車線の何れかを基準車線に設定し、前記基準車線の曲率に基づいて、前記自車線の曲率が大きいほど前記車両に対して設定される基準速度が低くなり、かつ、前記自車線が前記高速車線である場合の前記基準速度が、前記自車線が前記低速車線である場合の前記基準速度以上となるように、前記基準速度を設定し、
前記車両が、前記道路区間の前記開始地点に達したときの前記車両の速度が前記基準速度以下となるように前記車両の速度を制御する、
ことを含む車速制御方法。
【請求項7】
車両が走行中の自車線を検出し、
前記車両に設けられた、前記車両の周囲の状況を検知するセンサにより得られたセンサ信号または地図情報に基づいて、前記車両の前方の所定距離以内でカーブとなる道路区間が開始する開始地点を検出するとともに前記道路区間における前記自車線の曲率を推定し、
前記地図情報を参照して、前記自車線が、前記道路区間において相対的に高い速度で走行することが許容される高速車線か、あるいは、前記道路区間において相対的に低い速度で走行することが要求される低速車線かを判定し、
前記道路区間に含まれる複数の車線の何れかを基準車線に設定し、前記基準車線の曲率に基づいて、前記自車線の曲率が大きいほど前記車両に対して設定される基準速度が低くなり、かつ、前記自車線が前記高速車線である場合の前記基準速度が、前記自車線が前記低速車線である場合の前記基準速度以上となるように、前記基準速度を設定し、
前記車両が、前記道路区間の前記開始地点に達したときの前記車両の速度が前記基準速度以下となるように前記車両の速度を制御する、
ことを前記車両に搭載されたプロセッサに実行させる車速制御用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車速制御装置、車速制御方法及び車速制御用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転制御では、車両が安全にカーブを走行できるように、車両の速度が制御される(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された車速制御装置は、道路地図情報及び車両の現在位置に基づき車両前方の道路のカーブの存在を検出し、検出したカーブの曲率半径を検出する。そしてこの車速制御装置は、カーブの曲率半径に基づきカーブをトレース可能な車両のカーブ進入速度を演算する。また、この車速制御装置は、ドライバの運転状態を検出する。さらに、この車速制御装置は、ドライバの運転状態、カーブ進入速度及び車速に基づき、車両が減速を開始すべき減速開始距離を設定する。そしてこの車速制御装置は、カーブの開始地点から車両までの距離が減速開始距離の範囲内となったとき、カーブ進入速度に向け車速を低減させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-269498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の車線を含むカーブとなる道路区間では、そのカーブの曲率が車線ごとに異なることになる。そのため、場合によっては、車両が走行する車線によって、車両が安全に走行するための車速の抑制の程度が異なることがある。特に、カーブの向きによっては、追越車線を車両が走行しているときの車速の抑制の程度が、走行車線を車両が走行しているときの車速の抑制の程度よりも大きくなることがある。このような場合、カーブ進入速度に向けて車速が低減されると、ドライバに違和感を与えるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、ドライバが車両の挙動に違和感を生じることを抑制しつつ、車両がカーブを走行する際の車速を適切に制御することが可能な車速制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、車速制御装置が提供される。この車速制御装置は、車両が走行中の自車線を検出する車線検出部と、車両に設けられた、車両の周囲の状況を検知するセンサにより得られたセンサ信号または地図情報に基づいて、車両の前方の所定距離以内のカーブとなる道路区間が開始する開始地点を検出するとともにその道路区間における自車線の曲率を推定する曲率推定部と、地図情報を参照して、自車線が、上記の道路区間において相対的に高い速度で走行することが許容される高速車線か、あるいは、その道路区間において相対的に低い速度で走行することが要求される低速車線かを判定する判定部と、自車線の曲率が大きいほど車両の基準速度が低くなり、かつ、自車線が高速車線である場合の基準速度が、自車線が低速車線である場合の基準速度よりも高くなるように、基準速度を設定する基準速度設定部と、車両が上記の道路区間の開始地点に達したときの車両の速度が基準速度以下となるように車両の速度を制御する制御部とを有する。
【0008】
この車速制御装置において、基準速度設定部は、道路区間に含まれる複数の車線の何れかを基準車線に設定し、基準車線の曲率に基づいて基準速度を設定することが好ましい。
【0009】
この場合において、基準速度設定部は、道路区間に含まれる複数の車線のうちの低速車線を基準車線に設定することが好ましい。
【0010】
あるいは、基準速度設定部は、道路区間におけるカーブにおいて最も内側となる車線を基準車線に設定することが好ましい。
【0011】
あるいはまた、基準速度設定部は、道路区間におけるカーブの方向が高速車線側へ向けて曲がる方向である場合、高速車線を基準車線に設定し、道路区間におけるカーブの方向が低速車線側へ向けて曲がる方向である場合、自車線を基準車線に設定することが好ましい。
【0012】
さらに、基準速度設定部は、基準車線と自車線とが異なる場合、地図情報に基づいて、基準車線から自車線までの車線数と道路区間における各車線の幅を求め、車線数に車線の幅を乗じて得られる距離に基づいて自車線の曲率を補正することで基準車線の曲率を算出することが好ましい。
【0013】
他の実施形態によれば、車速制御方法が提供される。この車速制御方法は、車両が走行中の自車線を検出し、車両に設けられた、車両の周囲の状況を検知するセンサにより得られたセンサ信号または地図情報に基づいて、車両の前方の所定距離以内のカーブとなる道路区間が開始する開始地点を検出するとともにその道路区間における自車線の曲率を推定し、地図情報を参照して、自車線が、上記の道路区間において相対的に高い速度で走行することが許容される高速車線か、あるいは、その道路区間において相対的に低い速度で走行することが要求される低速車線かを判定し、自車線の曲率が大きいほど車両の基準速度が低くなり、かつ、自車線が高速車線である場合の基準速度が、自車線が低速車線である場合の基準速度よりも高くなるように、基準速度を設定し、車両が上記の道路区間の開始地点に達したときの車両の速度が基準速度以下となるように車両の速度を制御する、ことを含む。
【0014】
さらに他の実施形態によれば、車速制御用コンピュータプログラムが提供される。この車速制御用コンピュータプログラムは、車両が走行中の自車線を検出し、車両に設けられた、車両の周囲の状況を検知するセンサにより得られたセンサ信号または地図情報に基づいて、車両の前方の所定距離以内のカーブとなる道路区間が開始する開始地点を検出するとともにその道路区間における自車線の曲率を推定し、地図情報を参照して、自車線が、上記の道路区間において相対的に高い速度で走行することが許容される高速車線か、あるいは、その道路区間において相対的に低い速度で走行することが要求される低速車線かを判定し、自車線の曲率が大きいほど車両の基準速度が低くなり、かつ、自車線が高速車線である場合の基準速度が、自車線が低速車線である場合の基準速度よりも高くなるように、基準速度を設定し、車両が上記の道路区間の開始地点に達したときの車両の速度が基準速度以下となるように車両の速度を制御する、ことを車両に搭載されたプロセッサに実行させるための命令を含む。
【発明の効果】
【0015】
本開示による車速制御装置は、ドライバが車両の挙動に違和感を生じることを抑制しつつ、車両がカーブを走行する際の車速を適切に制御することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】車速制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。
図2】車速制御装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。
図3】車速制御処理に関する、電子制御装置のプロセッサの機能ブロック図である。
図4】低速車線と高速車線の一例を示す図である。
図5】減速制御の一例を示す図である。
図6】車速制御処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照しつつ、車速制御装置及び車速制御装置上で実行される車速制御方法ならびに車速制御用コンピュータプログラムについて説明する。この車速制御装置は、車両がカーブに進入する際に、車両がそのカーブを安全に走行することができるように車両の車速を自動で制御する。
【0018】
そのために、この車速制御装置は、車両が走行中の車線(以下、自車線と呼ぶことがある)を検出する。そしてこの車速制御装置は、検出した自車線が、車両前方のカーブとなる道路区間において相対的に高い速度で走行することが許容される高速車線か、あるいは、相対的に低い速度で走行することが要求される低速車線かを判定する。さらに、この車速制御装置は、自車線の曲率が大きいほど車両の基準速度が低くなり、かつ、自車線が高速車線である場合の基準速度が、自車線が低速車線である場合の基準速度以上となるように、基準速度を設定する。そしてこの車速制御装置は、車両が、カーブとなる道路区間の開始地点に達したときの車両の速度が基準速度以下となるように車両の速度を制御する。なお、以下では、カーブとなる道路区間を、単にカーブ区間と呼ぶことがある。
【0019】
図1は、車速制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。また図2は、車速制御装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。本実施形態では、車両10に搭載され、かつ、車両10を制御する車両制御システム1は、カメラ2と、GPS受信機3と、ストレージ装置4と、車速制御装置の一例である電子制御装置(ECU)5とを有する。カメラ2、GPS受信機3及びストレージ装置4とECU5とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。なお、車両制御システム1は、LiDARあるいはレーダといった、車両10から車両10の周囲に存在する物体までの距離を測定する測距センサ(図示せず)をさらに有していてもよい。また、車両制御システム1は、他の機器と通信するための無線通信端末(図示せず)をさらに有していてもよい。さらにまた、車両制御システム1は、車両10の走行予定ルートを設定するためのナビゲーション装置(図示せず)を有していてもよい。
【0020】
カメラ2は、車両10の周囲の状況を検知するセンサの一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。そしてカメラ2は、例えば、車両10の前方を向くように、例えば、車両10の車室内に取り付けられる。カメラ2は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに車両10の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ2により得られた画像は、センサ信号の一例である。なお、車両10には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラが設けられてもよい。
【0021】
カメラ2は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してECU5へ出力する。
【0022】
GPS受信機3は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両10の自己位置を測位する。そしてGPS受信機3は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両10の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介してECU5へ出力する。なお、車両10は、GPS受信機の代わりに、他の衛星測位システムによる衛星からの測位信号を受信して車両10の自己位置を測位する受信機を有していてもよい。
【0023】
ストレージ装置4は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置、不揮発性の半導体メモリ、または光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。そしてストレージ装置4は、高精度地図を記憶する。なお、高精度地図は、地図情報の一例である。高精度地図には、その高精度地図に表される所定の領域に含まれる各道路区間における車線の数、車線の幅、車線区画線または停止線といった道路標示を表す情報、各道路区間に設けられた道路標識を表す情報及び各道路区間の制限車速を表す情報が含まれる。さらに、高精度地図には、各道路区間のうちの個々のカーブ区間の両端の位置を表す情報が含まれる。さらにまた、高精度地図には、個々のカーブ区間の曲率を表す情報が含まれてもよい。
【0024】
さらに、ストレージ装置4は、高精度地図の更新処理、及び、ECU5からの高精度地図の読出し要求に関する処理などを実行するためのプロセッサを有していてもよい。そしてストレージ装置4は、例えば、車両10が所定距離だけ移動する度に、無線通信端末(図示せず)を介して地図サーバへ、高精度地図の取得要求を車両10の現在位置とともに送信してもよい。また、ストレージ装置4は、地図サーバから無線通信端末を介して車両10の現在位置の周囲の所定の領域についての高精度地図を受信してもよい。また、ストレージ装置4は、ECU5からの高精度地図の読出し要求を受信すると、記憶している高精度地図から、車両10の現在位置を含み、上記の所定の領域よりも相対的に狭い範囲を切り出して、車内ネットワークを介してECU5へ出力する。
【0025】
ECU5は、車両10の車速を自動制御する。特に、ECU5は、車両10が安全にカーブ区間を走行できるようにするために、車両10の車速を制御する。
【0026】
図2に示されるように、ECU5は、通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。通信インターフェース21、メモリ22及びプロセッサ23は、それぞれ、別個の回路として構成されてもよく、あるいは、一つの集積回路として一体的に構成されてもよい。
【0027】
通信インターフェース21は、ECU5を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース21は、カメラ2から画像を受信する度に、受信した画像をプロセッサ23へわたす。また、通信インターフェース21は、GPS受信機3から測位情報を受信する度に、その測位情報をプロセッサ23へわたす。さらに、通信インターフェース21は、ストレージ装置4から読み込んだ高精度地図をプロセッサ23へわたす。
【0028】
メモリ22は、記憶部の他の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ22は、プロセッサ23により実行される車速制御処理において使用される各種のデータを記憶する。例えば、メモリ22は、カメラ2の焦点距離、撮影方向及び取り付け位置などのパラメータ、車両10の周囲の物体を検出するために利用される識別器を特定するための各種パラメータを記憶する。さらに、メモリ22は、曲率と基準速度との関係を表す事前減速度テーブル及び曲率とカーブ区間の走行速度との関係を表すカーブ走行速度テーブルを記憶する。さらにまた、メモリ22は、車両10の測位情報、車両10の周囲の画像、高精度地図を記憶する。さらにまた、メモリ22は、車速制御処理の途中で生成される各種のデータを一時的に記憶する。
【0029】
プロセッサ23は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ23は、所定の周期ごとに、車両10に対する車速制御処理を実行する。
【0030】
図3は、車速制御処理に関する、プロセッサ23の機能ブロック図である。プロセッサ23は、車線検出部31と、曲率推定部32と、判定部33と、基準速度設定部34と、制御部35とを有する。プロセッサ23が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ23上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ23が有するこれらの各部は、プロセッサ23に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0031】
車線検出部31は、車両10が走行中の自車線を検出する。本実施形態では、車線検出部31は、カメラ2により生成された画像(以下、単に画像と呼ぶことがある)と高精度地図とを照合することで自車線を検出する。そのために、車線検出部31は、画像から車線区画線といった道路標示、縁石または道路標識などの道路上または道路周囲の地物を検出する。例えば、車線検出部31は、識別器に画像を入力することで、画像に表された地物を検出する。そのような識別器として、車線検出部31は、例えば、Single Shot MultiBox Detector(SSD)、または、Faster R-CNNといった、コンボリューショナルニューラルネットワーク(CNN)型のアーキテクチャを持つディープニューラルネットワーク(DNN)を用いることができる。あるいは、車線検出部31は、そのような識別器として、Vision Transformerといった、self attention network(SAN)型のアーキテクチャを有するDNNを用いてもよい。このような識別器は、画像から検出対象となる地物を検出するように予め学習される。識別器は、入力された画像上で検出した地物を含む物体領域を特定する情報及び検知した地物の種類を表す情報を出力する。
【0032】
地物が検出されると、車線検出部31は、車両10の位置及び姿勢を仮定して、画像から検出された個々の地物を高精度地図上に投影するか、あるいは、高精度地図に表された車両10の周囲の道路上または道路周囲の個々の地物を画像上に投影する。そして車線検出部31は、画像から検出された個々の地物と高精度地図上に表された対応する地物とが最も一致するときの車両10の位置及び姿勢を、車両10の自己位置として推定する。そして車線検出部31は、高精度地図を参照して、車両10の自己位置が含まれる車線を、車両10が走行中の自車線として特定する。
【0033】
車線検出部31は、仮定される車両10の位置及び姿勢の初期値と、焦点距離、設置高さ、及び、撮影方向といった、カメラ2のパラメータとを用いて、高精度地図上または画像上で地物が投影される位置を決定すればよい。なお、車両10の位置及び姿勢の初期値として、GPS受信機3により測位された車両10の位置、あるいは、前回の自車線検出時に推定された車両10の位置及び姿勢を、オドメトリ情報を用いて補正した位置が利用される。そして車線検出部31は、画像から検出された道路上または道路周囲の地物と高精度地図上に表された道路上または道路周囲の地物との一致度合(例えば、検出された個々の地物と対応する地物間の距離の二乗和の逆数)を算出する。
【0034】
車線検出部31は、仮定される車両10の位置及び姿勢を変更しながら上記の処理を繰り返す。そして車線検出部31は、一致度合が最大となるときの仮定された位置及び姿勢を、車両10の実際の自己位置とする。
【0035】
なお、GPS受信機3による車両10の位置の測位精度が十分である場合には、車線検出部31は、GPS受信機3から受け取った最新の測位情報に表される車両10の位置を、車両10の実際の自己位置としてもよい。そして上記の実施形態と同様に、車線検出部31は、高精度地図を参照して、車両10の自己位置が含まれる車線を、車両10が走行中の自車線として特定すればよい。
【0036】
さらに、車線検出部31は、画像から検出された車線区画線のうち、自車線を区画する車線区画線を特定する。例えば、車線検出部31は、画像の水平方向の中心よりも右側で、画像の下端に最も近い位置、すなわち、車両10に最も近い位置において、その中心に最も近い車線区画線を、自車線の右側を区画する車線区画線として特定することができる。同様に、車線検出部31は、画像の水平方向の中心よりも左側で、画像の下端に最も近い位置において、その中心に最も近い車線区画線を、自車線の左側を区画する車線区画線として特定することができる。
【0037】
車線検出部31は、検出した自車線を表す情報及び自己位置を表す情報を、曲率推定部32、判定部33及び制御部35へ通知する。さらに、車線検出部31は、画像から検出された自車線を区画する左右何れかの車線区画線が表された各画素の位置を曲率推定部32へ通知する。
【0038】
曲率推定部32は、車両10の自己位置及び高精度地図を参照して、カーブ区間の開始地点が車両10の進行方向において車両10の前方の所定距離以内に存在するか否か判定する。そして曲率推定部32は、所定距離以内に開始地点があるカーブ区間を検出すると、そのカーブ区間における自車線の曲率を推定する。なお、以下では、車両10の進行方向において車両10の前方の所定距離以内に存在する開始地点にて始まるカーブ区間を、単にカーブ区間あるいは検出したカーブ区間と呼ぶことがある。
【0039】
例えば、曲率推定部32は、自車線を区画する左右何れかの車線区画線上で、検出したカーブ区間の開始地点よりも遠方に位置する3個以上の地点を選択する。なお、画像上の各画素の位置は、カメラ2から見た方位と1対1に対応している。また、カメラ2の撮影方向、設置高さ及び焦点距離といったカメラ2のパラメータは既知であり、かつ、車線区画線は路面上に位置している。そのため、曲率推定部32は、カメラ2のパラメータに基づいて、画像上で車線区画線が表されている個々の画素について、カメラ2を基準とする、その画素に表されている車線区画線上の地点の実空間での位置を求めることができる。そこで、曲率推定部32は、カメラ2の撮影範囲に検出したカーブ区間が含まれるようになってから生成された画像をメモリ22から読み込む。そして曲率推定部32は、その画像上で車線区画線が表されている個々の画素に表された地点のなかから、検出したカーブ区間の開始地点よりも遠方に位置する3以上の地点を選択すればよい。そして曲率推定部32は、各地点を通る近似曲線を求め、その近似曲線の曲率を、検出したカーブ区間における自車線の曲率とする。
【0040】
なお、曲率推定部32は、自車線の左側の車線区画線及び自車線の右側の車線区画線のそれぞれに対して上記の処理を行って、それぞれ曲率を算出し、算出した曲率の平均値を、検出したカーブ区間における自車線の曲率としてもよい。また、曲率推定部32は、高精度地図に示されるカーブ区間の曲率を、そのカーブ区間における自車線の曲率としてもよい。
【0041】
曲率推定部32は、検出したカーブ区間における自車線の曲率を基準速度設定部34へ通知する。さらに、曲率推定部32は、検出したカーブ区間を示す情報を判定部33へ通知する。
【0042】
判定部33は、検出したカーブ区間における自車線が、そのカーブ区間において相対的に高い速度で走行することが許容される高速車線か、あるいは、そのカーブ区間において相対的に低い速度で走行することが要求される低速車線かを判定する。
【0043】
判定部33は、高精度地図を参照して、自車線がカーブ区間において走行車線か追越車線かを判定する。自車線が走行車線である場合、判定部33は、自車線を低速車線と判定する。一方、自車線が追越車線である場合、判定部33は、自車線を高速車線と判定する。
【0044】
図4は、低速車線及び高速車線の一例を示す図である。図4に示される例では、車両10の進行方向において右側の車線401が追越車線、左側の車線402が走行車線であるとする。この場合、左側の走行車線402を車両10が走行しているため、自車線は低速車線であると判定される。
【0045】
なお、判定部33は、画像上での自車線の位置に基づいて、カーブ区間において自車線が走行車線または追越車線の何れに該当するかを判定してもよい。例えば、日本のように左側通行が適用される地域では、画像上で自車線よりも右側に、車両10の進行方向と同じ向きの車線が存在しない場合、判定部33は、自車線が追越車線、すなわち高速車線であると判定する。一方、画像上で自車線よりも右側に、車両10の進行方向と同じ向きの車線が存在する場合、判定部33は、自車線が走行車線、すなわち低速車線であると判定する。なお、判定部33は、自車線よりも右側において車線区画線が一つ以下しか検出されていない場合、あるいは、自車線の右隣りに中央分離帯が検出されている場合、自車線よりも右側に、車両10の進行方向と同じ向きの車線が存在しないと判定すればよい。
【0046】
また、カーブ区間において登坂車線といった、いわゆるゆずり車線が設けられていることがある。このような場合において、自車線がゆずり車線であると、判定部33は、自車線を低速車線と判定してもよい。また、自車線がゆずり車線以外の車線である場合、判定部33は、自車線を高速車線と判定してもよい。
【0047】
判定部33は、自車線が高速車線か低速車線かの判定結果を基準速度設定部34に通知する。
【0048】
基準速度設定部34は、自車線の曲率が大きいほど車両10の基準速度が低くなり、かつ、自車線が高速車線である場合の基準速度が、自車線が低速車線である場合の基準速度以上になるように基準速度を設定する。基準速度は、車両10がカーブ区間に進入する際の目標上限速度であり、車両10がカーブ区間を走行する際に急減速することなく、そのカーブ区間を走行できる速度に設定される。
【0049】
基準速度設定部34は、基準速度を設定する際、カーブ区間における複数の車線の何れかを基準速度を設定するために基準となる車線(以下、基準車線と呼ぶことがある)に設定する。そして基準速度設定部34は、基準車線の曲率に基づいて基準速度を設定する。例えば、基準速度設定部34は、低速車線を基準車線に設定する。また、カーブ区間における車線の数が3以上である場合、基準速度設定部34は、高速車線から最も離れた位置の車線(例えば、日本では、最も左側の車線)を基準車線に設定する。あるいは、基準速度設定部34は、カーブ区間において最も内側の車線を基準車線に設定してもよい。これにより、車両10がカーブ区間へ進入する際に、車両10が高速車線を走行していると減速し、一方、車両10が低速車線を走行していると減速しないといった事態が生じることが防止される。
【0050】
自車線と基準車線とが異なり、かつ、高精度地図に基準車線の曲率が示されていない場合、基準速度設定部34は、自車線から基準車線までの車線数に、各車線の幅を乗じて得られる距離を補正半径として算出する。そして基準速度設定部34は、自車線の曲率に対応する曲率半径から補正半径を減じて得られる値を基準車線の曲率半径とすることで、基準車線の曲率を推定する。なお、基準速度設定部34は、高精度地図を参照して、自車線から基準車線までの車線数、及び各車線の幅をもとめればよい。
【0051】
また、基準速度設定部34は、基準車線の曲率が高速車線の曲率以上となるように、基準車線の曲率を補正することが好ましい。これにより、車両10が高速車線を走行している場合の基準速度が高くなり過ぎることが防止される。
【0052】
基準速度設定部34は、高精度地図を参照して、車両10の現在位置が、日本のように、高速車線が低速車線よりも右側に位置する地域に属するか、逆に、高速車線が低速車線よりも左側に位置する地域に属するかを判定する。さらに、基準速度設定部34は、高精度地図を参照して、カーブ区間が車両10の進行方向において右カーブか左カーブかを判定する。カーブ区間が高速車線側へ向けて曲がる区間である場合、例えば、車両10の現在位置が日本で、カーブ区間が右カーブである場合、基準速度設定部34は、基準車線の曲率を、追越車線、すなわち高速車線の曲率に補正する。また、車両10の現在位置が日本で、カーブ区間が左カーブである場合、基準速度設定部34は、基準車線の曲率を、最も左側の走行車線あるいはゆずり車線の曲率に補正する。なお、上記の場合において、基準車線が最も左側の走行車線あるいはゆずり車線に設定されていれば、基準速度設定部34は、基準車線の曲率を補正する必要は無い。
【0053】
再度図4を参照すると、左側の走行車線(すなわち、低速車線)402が基準車線に設定される。しかし、車両10の前方に位置するカーブ区間410は右カーブとなっている。そのため、基準車線である低速車線402の曲率よりも、右側の追越車線(すなわち、高速車線)401の曲率の方が大きい。したがって、基準車線の曲率は、高速車線401の曲率に補正される。仮に、カーブ区間410が左カーブであれば、低速車線402の曲率の方が高速車線401の曲率よりも大きくなる。そのため、この場合には、低速車線402の曲率がそのまま基準車線の曲率に設定される。
【0054】
基準車線の曲率が決定されると、基準速度設定部34は、曲率と基準速度との関係を表す事前減速度テーブルを参照することで、基準車線の曲率に対応する基準速度を特定する。事前減速度テーブルでは、曲率が大きいほど、基準速度が低くなるように基準速度は設定される。そして基準速度設定部34は、特定した基準速度を、カーブ区間に対して適用される基準速度として設定する。したがって、自車線の曲率あるいは基準車線の曲率が大きいほど、適用される基準速度は低くなる。基準速度設定部34は、設定した基準速度を制御部35へ通知する。
【0055】
変形例によれば、基準速度設定部34は、カーブ区間におけるカーブ方向が高速車線側へ向けて曲がる方向である場合、自車線が低速車線か高速車線かにかかわらず、基準車線を高速車線に設定してもよい。一方、基準速度設定部34は、カーブ区間におけるカーブ方向が低速車線側へ向けて曲がる方向である場合、自車線を基準車線に設定してもよい。これにより、カーブ区間において低速車線の曲率が高速車線の曲率よりも小さい場合、車両10が低速車線及び高速車線の何れを走行しているかにかかわらず、同じ基準速度が設定される。そのため、車両10が高速車線を走行している場合にのみ減速される事態が防止される。一方、カーブ区間において高速車線の曲率が低速車線の曲率よりも小さい場合、自車線が低速車線である場合の基準速度が自車線が高速車線である場合の基準速度よりも低くなる。そのため、プロセッサ23は、相対的に曲率の小さい高速車線を車両10が走行している場合における、車両10の減速の程度を軽減することができる。
【0056】
制御部35は、車両10がカーブ区間の開始地点に達したときの車両10の速度が基準速度以下となるように車両10の速度を制御する。そのために、制御部35は、車両10に設けられた車速センサ(図示せず)により測定された車両10の現在の車速と基準速度とを比較する。現在の車速が基準速度以下である場合、制御部35は、カーブ区間の開始地点まで現在の車速を維持するよう、車両10を制御する。一方、現在の車速が基準速度よりも速い場合、制御部35は、所定の事前減速度で車両10の速度を現在の車速から基準速度まで減速するのに要する走行距離(以下、減速距離と呼ぶことがある)を算出する。そして制御部35は、測位情報で示される、車両10の現在位置が、カーブ区間の開始地点よりも減速距離だけ手前の位置(以下、減速開始位置と呼ぶ)になると、事前減速度で車両10を減速させるよう、車両10を制御する。すなわち、車両10が減速開始位置に達すると、制御部35は、車両10の減速度が事前減速度となるようにアクセル開度を設定する。そして制御部35は、設定されたアクセル開度に従って燃料噴射量を求め、その燃料噴射量に応じた制御信号を車両10のエンジンの燃料噴射装置へ出力する。あるいは、制御部35は、設定されたアクセル開度に従ってモータへ供給される電力量を求め、その電力量がモータへ供給されるようにモータの駆動回路を制御する。さらに、制御部35は、必要に応じてブレーキ量を設定し、設定されたブレーキ量に応じた制御信号を車両10のブレーキへ出力する。なお、事前減速度は、カーブ区間の手前での車両10の減速に対してドライバが違和感及び不快感を覚えない程度の減速度、例えば、アクセル開度を最小にしたときの減速度あるいは0.05G~0.15Gに設定される。
【0057】
また、制御部35は、車両10がカーブ区間を走行している間も、車両10がそのカーブ区間を安全に走行することが可能なように車両10の速度を制御する。すなわち、制御部35は、カーブ区間における自車線の曲率に基づいて、カーブ区間走行中の目標となる速度(以下、カーブ走行速度と呼ぶことがある)を設定する。その際、制御部35は、曲率とカーブ区間の走行速度との関係を表すカーブ走行速度テーブルを参照することで、自車線の曲率に対応する走行速度を特定し、特定した走行速度をカーブ走行速度に設定する。そして制御部35は、車両10の速度がカーブ走行速度にまで減速するように車両10の速度を制御する。その際、制御部35は、カーブ区間走行時用に予め設定された減速度で車両10を減速させる。この減速度の絶対値は、上記の事前減速度の絶対値よりも大きな値(例えば、0.15G~0.3G)に設定される。制御部35は、カーブ区間の開始地点前の減速と同様の制御により、車両10を減速させればよい。
【0058】
さらに、制御部35は、車両10がカーブ区間の終端に達したときの車両10の速度が、予め設定された速度(以下、単に設定速度と呼ぶことがある)になるように、カーブ区間の途中にて車両10の加速を開始する。そして制御部35は、所定の加速度で加速するように、車両10の速度を制御する。なお、制御部35は、加速を開始する位置を、カーブ走行速度から所定の加速度で設定速度に達するのに要する走行距離(以下、加速距離と呼ぶことがある)だけ、カーブ区間の終端の手前側に設定すればよい。また、制御部35は、車両10を減速させるときと同様に、車両10の加速度が所定の加速度となるようにアクセル開度を設定する。そして制御部35は、設定されたアクセル開度に従って燃料噴射量を求め、その燃料噴射量に応じた制御信号を車両10のエンジンの燃料噴射装置へ出力する。あるいは、制御部35は、設定されたアクセル開度に従ってモータへ供給される電力量を求め、その電力量がモータへ供給されるようにモータの駆動回路を制御する。
【0059】
なお、制御部35は、自車線が高速車線である場合における加速開始位置を、自車線が低速車線である場合における加速開始位置よりも、カーブ区間の開始位置の近くに設定してもよい。
【0060】
図5は、車両10がカーブ区間を走行する際の減速制御の一例を示す図である。図5において、縦軸は車速を表し、横軸は車両10の位置を表す。そしてグラフ501は、車両10の位置と車速の関係を表す。
【0061】
グラフ501に示されるように、車両10が減速開始位置P1に達するまでは、車両10の車速は設定速度で維持される。車両10が減速開始位置P1に到達すると、事前減速度での車両10の減速が開始される。そして車両10がカーブ区間Cの開始位置P2に到達した時点で、車両10の速度は基準速度にまで低下する。その後、車両10の車速は、カーブ区間Cにおけるカーブ走行速度までさらに低下するよう制御され、その後、車両10はカーブ区間の終端位置P3に達するまでに加速される。そして車両10がカーブ区間の終端位置P3に到達した時点で、車両10の車速は設定速度に戻る。
【0062】
図6は、プロセッサ23により実行される、車速制御処理の動作フローチャートである。プロセッサ23は、所定の周期ごとに、以下の動作フローチャートに従って車速制御処理を実行すればよい。
【0063】
プロセッサ23の車線検出部31は、車両10が走行中の自車線を検出する(ステップS101)。また、プロセッサ23の曲率推定部32は、車両10の前方の所定距離以内にカーブ区間の開始地点が有るか否か判定する(ステップS102)。所定距離以内にカーブ区間の開始地点が無ければ(ステップS102-No)、プロセッサ23の制御部35は、車両10の現在の車速を維持するように車両10を制御する(ステップS103)。そしてプロセッサ23は車速制御処理を終了する。
【0064】
一方、所定距離以内にカーブ区間の開始地点があれば(ステップS103-Yes)、曲率推定部32は、そのカーブ区間における自車線の曲率を推定する(ステップS104)。そしてプロセッサ23の判定部33は、そのカーブ区間において自車線が低速車線か高速車線かを判定する(ステップS105)。
【0065】
プロセッサ23の基準速度設定部34は、自車線の曲率が大きいほど車両10の基準速度が低くなり、かつ、自車線が高速車線である場合の基準速度が、自車線が低速車線である場合の基準速度以上になるように基準速度を設定する(ステップS106)。そしてプロセッサ23の制御部35は、車両10がカーブ区間の開始地点に達したときの車両10の速度が基準速度以下となるように車両10の速度を制御する(ステップS107)。そして制御部35は、車両10がカーブ区間を走行中の速度をカーブ走行速度まで減速させ、その後に、カーブ区間の終端に到達した時点で車両10の速度が設定速度になるように車両10を加速する(ステップS108)。その後、プロセッサ23は、車速制御処理を終了する。
【0066】
以上に説明してきたように、この車速制御装置は、車両が走行中の自車線が、車両前方のカーブ区間において高速車線か低速車線かを判定する。さらに、この車速制御装置は、自車線の曲率が大きいほど車両の基準速度が低くなり、かつ、自車線が高速車線である場合の基準速度が、自車線が低速車線である場合の基準速度以上となるように、基準速度を設定する。そしてこの車速制御装置は、車両が、カーブ区間の開始地点に達したときの車両の速度が基準速度以下となるように車両の速度を制御する。このように車両の速度を制御することで、この車速制御装置は、カーブ区間においても車両が自車線から逸脱することを防止することができる。さらに、この車速制御装置は、カーブ区間への進入の際に高速車線走行時には減速し、低速車線走行時には減速しないといった事態が生じることを防止して、ドライバに対して違和感を与えずに車両を減速することができる。
【0067】
また、上記の実施形態または変形例による、ECU5のプロセッサ23の機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。
【0068】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0069】
1 車両制御システム
10 車両
2 カメラ
3 GPS受信機
4 ストレージ装置
5 電子制御装置(ECU)
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
31 車線検出部
32 曲率推定部
33 判定部
34 基準速度設定部
35 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6