(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御用コンピュータプログラム及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20250218BHJP
【FI】
B60W30/10
(21)【出願番号】P 2022063524
(22)【出願日】2022-04-06
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100135976
【氏名又は名称】宮本 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 健太
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-189404(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159341(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行している走行車線と隣接する隣接車線を走行する他の車両と前記車両との間の車両間距離が所定の基準距離以下の時に、少なくとも前記車両間距離に基づいて、前記走行車線における前記車両の進行方向と直交する横方向位置の基準を表す基準横方向位置を設定する基準横方向位置設定部と、
前記基準横方向位置と、前記基準横方向位置に対する現在の補正値とに基づいて、前記車両が制御される目標となる目標横方向位置を決定する目標横方向位置決定部と、
ドライバの操作により前記走行車線における前記車両の横方向位置が、前記目標横方向位置から変更された変更回数をカウントするカウント部と、
前記変更回数に基づいて決定される補正係数と、ドライバの操作により前記目標横方向位置から変化した前記車両の横方向位置の変化量とに基づいて、前記基準横方向位置に対する新たな補正値を求める補正値算出部と、
を有し、
前記目標横方向位置決定部は、前記基準横方向位置と、前記新たな補正値とに基づいて、次回の前記目標横方向位置を決定
し、
前記補正係数と前記変更回数との関係は、前記補正係数が前記変更回数の増加と共に増加する第1領域と、前記補正係数が前記変更回数の増加と共に前記第1領域よりも大きく増加する第2領域とを有する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記補正係数と前記変更回数との関係は、
前記第1領域と、
前記第2領域と、前記補正係数が前記変更回数の増加と共に前記第2領域よりも小さく増加する第3領域とを有する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記補正値算出部は、前記隣接車線とは異なる他の隣接車線において前記車両よりも後方を走行する第2の他の車両と前記車両との間の車両間距離が所定の第2の基準距離以下にある場合、前記他の隣接車線を走行する前記第2の他の車両がいないか、又は、前記車両と前記第2の他の車両との間の車両間距離が所定の第2の基準距離よりも長い時よりも、小さな新たな補正値を求める請求項1又は2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
車両が走行している走行車線と隣接する隣接車線を走行する他の車両と前記車両との間の車両間距離が所定の基準距離以下の時に、少なくとも前記車両間距離に基づいて、前記走行車線における前記車両の進行方向と直交する横方向位置の基準を表す基準横方向位置を設定し、
前記基準横方向位置と、前記基準横方向位置に対する現在の補正値とに基づいて、前記車両が制御される目標となる目標横方向位置を決定し、
ドライバの操作により前記走行車線における前記車両の横方向位置が、前記目標横方向位置から変更された変更回数をカウントし、
前記変更回数に基づいて決定される補正係数と、ドライバの操作により前記目標横方向位置から変化した前記車両の横方向位置の変化量とに基づいて、前記基準横方向位置に対する新たな補正値を求めることを含む処理をプロセッサに実行させ、
前記基準横方向位置と、新たな補正値とに基づいて、次回の前記目標横方向位置が決定さ
れ、
前記補正係数と前記変更回数との関係は、前記補正係数が前記変更回数の増加と共に増加する第1領域と、前記補正係数が前記変更回数の増加と共に前記第1領域よりも大きく増加する第2領域とを有する、ことを特徴とする車両制御用コンピュータプログラム。
【請求項5】
車両制御装置によって実行される車両制御方法であって、
車両が走行している走行車線と隣接する隣接車線を走行する他の車両と前記車両との間の車両間距離が所定の基準距離以下の時に、少なくとも前記車両間距離に基づいて、前記走行車線における前記車両の進行方向と直交する横方向位置の基準を表す基準横方向位置を設定し、
前記基準横方向位置と、前記基準横方向位置に対する現在の補正値とに基づいて、前記車両が制御される目標となる目標横方向位置を決定し、
ドライバの操作により前記走行車線における前記車両の横方向位置が、前記目標横方向位置から変更された変更回数をカウントし、
前記変更回数に基づいて決定される補正係数と、ドライバの操作により前記目標横方向位置から変化した前記車両の横方向位置の変化量とに基づいて、前記基準横方向位置に対する新たな補正値を求める、
ことを含み、
前記基準横方向位置と、新たな補正値とに基づいて、次回の前記目標横方向位置が決定さ
れ、
前記補正係数と前記変更回数との関係は、前記補正係数が前記変更回数の増加と共に増加する第1領域と、前記補正係数が前記変更回数の増加と共に前記第1領域よりも大きく増加する第2領域とを有する、ことを特徴とする車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置、車両制御用コンピュータプログラム及び車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動制御システムは、車両の現在位置と、車両の目的位置と、ナビゲーション用地図とに基づいて、車両のナビルートを生成する。自動制御システムは、地図情報を用いて車両の現在位置を推定し、車両をナビルートに沿って走行するように制御する。
【0003】
車両の自動制御システムは、車両が走行している走行車線と隣接する隣接車線を走行する他の車両の横を、車両が走行する場合、車両と他の車両との間の横方向距離を、車間距離、相対速度、走行車線の車線幅、走行車線を区画する車線区画線と車両との間の横方向距離、走行している道路の曲率等に基づいて決定される目標距離となるように、車両の走行車線における横方向位置を制御する(Variable Lateral Offset:VLO制御)。これにより、自動制御システムは、車両と他の車両とが接近し過ぎないようにして、ドライバに安心感を与えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
隣接車線を走行する他の車両と車両との間の距離に対して、ドライバが安心を感じる感じ方は、ドライバによって異なる。また、車両が、走行車線内において他の車両とは反対側の方向へ移動し過ぎることを不安に感じるドライバもいる。また、隣接車線を走行する他の車両の車両への接近に伴って、車両が横方向に移動することを、車両がふらついているように感じるドライバもいる。
【0006】
そのため、隣接車線を走行する他の車両の車両への接近に伴って、車両の走行車線における横方向位置の一律に決定することには改善の余地があると考えられる。
【0007】
そこで、本開示は、隣接車線を走行する他の車両への車両の接近に伴って、車両の走行車線における横方向位置をドライバごとに満足するように決定できる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一の実施形態によれば、車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、車両が走行している走行車線と隣接する隣接車線を走行する他の車両と車両との間の車両間距離が所定の基準距離以下の時に、少なくとも車両間距離に基づいて、走行車線における車両の進行方向と直交する横方向位置の基準を表す基準横方向位置を設定する基準横方向位置設定部と、基準横方向位置と、基準横方向位置に対する現在の補正値とに基づいて、車両が制御される目標となる目標横方向位置を決定する目標横方向位置決定部と、ドライバの操作により走行車線における車両の横方向位置が、目標横方向位置から変更された変更回数をカウントするカウント部と、変更回数に基づいて決定される補正係数と、ドライバの操作により目標横方向位置から変化した車両の横方向位置の変化量とに基づいて、基準横方向位置に対する新たな補正値を求める補正値算出部と、を有し、目標横方向位置決定部は、基準横方向位置と、新たな補正値とに基づいて、次回の目標横方向位置を決定する、ことを特徴とする。
【0009】
また、この車両制御装置において、補正係数と変更回数との関係は、補正係数が変更回数の増加と共に増加する第1領域と、補正係数が変更回数の増加と共に第1領域よりも大きく増加する第2領域と、補正係数が変更回数の増加と共に第2領域よりも小さく増加する第3領域とを有することが好ましい。
【0010】
また、この車両制御装置において、補正値算出部は、隣接車線とは異なる他の隣接車線において車両よりも後方を走行する第2の他の車両と車両との間の車両間距離が所定の第2の基準距離以下にある場合、他の隣接車線を走行する第2の他の車両がいないか、又は、車両と第2の他の車両との間の車両間距離が所定の第2の基準距離よりも長い時よりも、小さな新たな補正値を求めることが好ましい。
【0011】
他の実施形態によれば、車両制御用コンピュータプログラムが提供される。この車両制御用コンピュータプログラムは、車両が走行している走行車線と隣接する隣接車線を走行する他の車両と車両との間の車両間距離が所定の基準距離以下の時に、少なくとも車両間距離に基づいて、走行車線における車両の進行方向と直交する横方向位置の基準を表す基準横方向位置を設定し、基準横方向位置と、基準横方向位置に対する現在の補正値とに基づいて、車両が制御される目標となる目標横方向位置を決定し、ドライバの操作により走行車線における車両の横方向位置が、目標横方向位置から変更された変更回数をカウントし、変更回数に基づいて決定される補正係数と、ドライバの操作により目標横方向位置から変化した車両の横方向位置の変化量とに基づいて、基準横方向位置に対する新たな補正値を求めることを含む処理をプロセッサに実行させ、基準横方向位置と、新たな補正値とに基づいて、次回の目標横方向位置が決定される、ことを特徴とする。
【0012】
更に他の実施形態によれば、車両制御方法が提供される。この車両制御方法は、車両制御装置によって実行される車両制御方法であって、車両が走行している走行車線と隣接する隣接車線を走行する他の車両と車両との間の車両間距離が所定の基準距離以下の時に、少なくとも車両間距離に基づいて、走行車線における車両の進行方向と直交する横方向位置の基準を表す基準横方向位置を設定し、基準横方向位置と、基準横方向位置に対する現在の補正値とに基づいて、車両が制御される目標となる目標横方向位置を決定し、ドライバの操作により走行車線における車両の横方向位置が、目標横方向位置から変更された変更回数をカウントし、変更回数に基づいて決定される補正係数と、ドライバの操作により目標横方向位置から変化した車両の横方向位置の変化量とに基づいて、基準横方向位置に対する新たな補正値を求める、ことを含み、基準横方向位置と、新たな補正値とに基づいて、次回の目標横方向位置が決定される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る車両制御装置は、隣接車線を走行する他の車両への車両の接近に伴って、車両の走行車線における横方向位置をドライバごとに満足するように決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の運転計画装置の動作の概要を説明する図であり、(A)は、車両が道路を走行する様子を示す図であり、(B)は、車両の横方向位置が隣接車線へ近づくように変更された場合の車両の横方向位置と時間との関係を示す図であり、(C)は、新しい目標横方向位置を説明する図である。
【
図2】本実施形態の車両制御システムが実装される車両の概略構成図である。
【
図3】本実施形態の運転計画装置の目標横方向位置決定処理に関する動作フローチャートの一例である。
【
図4】本実施形態の運転計画装置の補正値算出処理に関する動作フローチャートの一例である。
【
図5】補正係数と変更回数との関係の一例を説明する図である。
【
図6】車両の横方向位置が隣接車線側から離れるように変更された場合の車両の横方向位置と時間との関係を示す図である。
【
図7】変型例における補正値算出処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1(A)~
図1(C)は、本実施形態の運転計画装置の動作の概要を説明する図である。
図1(A)は、車両が道路を走行する様子を示す図である。
図1(B)は、車両の横方向位置が隣接車線へ近づくように変更された場合の車両の横方向位置と時間との関係を示す図である。
図1(C)は、新しい目標横方向位置を説明する図である。
【0016】
以下、
図1(A)~
図1(C)を参照しながら、本明細書に開示する運転計画装置15の車両制御処理に関する動作の概要を説明する。
【0017】
図1(A)に示すように、車両10は、車線51、52を有する道路50の車線52上を走行している。車線51と車線52とは、車線区画線53により区画されている。
【0018】
車両10は、運転計画装置15及び車両制御装置16を有する。運転計画装置15は、所定の時間先までの車両10の予定走行軌跡を表す運転計画を生成する。運転計画は、現時刻から所定の時間先までの各時刻における、車両10の目標位置及びこの目標位置における目標車両速度の集合として表される。車両制御装置16は、運転計画に基づいて、車両10の動作を制御する。
【0019】
車両10が走行する車線52と隣接する車線51上には、車両10から前方に向かって所定の基準車間距離以内の位置で他の車両30が走行している。車両10は、所定の基準到達時間以内に車両30の横に到達した後、車両30を追い抜く予定である。
【0020】
通常、車両10は、車線52の幅方向における中央を走行する。車両30が車線区画線53に近い位置を走行していると、車両30と車線区画線53との距離L1が短くなる。そのため、車両10が車両30と並んだ時に、車両10と車両30との距離L2が近くなる場合がある。距離L2が近いと、車両10のドライバは車両30が接近することにより不安を感じるおそれがある。
【0021】
そこで、運転計画装置15は、車両10の横方向位置を車線区画線53から離れるように運転計画を生成して、車両10が車両30と接近し過ぎないように、車両30の横を走行するようにする。以下、運転計画装置15によるこのような制御を、Variable Lateral Offset制御(VLO制御)ともいう。
【0022】
図1(A)に示すように、車両10が走行する車線52と隣接する車線51の前方に車両30が走行している。運転計画装置15は、車両10が車両30の横に到達した時に、車両10が車線53の中央を走行していると、車両10と車両30との距離が近づき過ぎる。運転計画装置15は、車両10と車両10との距離が基準横方向距離となるように、車両10に対して基準横方向位置を設定する。
【0023】
運転計画装置15は、車両10と他の車両30との間の基準横方向位置を、例えば、相対距離、相対速度、車線52の車線幅、車線51と車線52とを区画する車線区画線53と車両10との間の横方向距離、走行している道路50の曲率等に基づいて決定する。
【0024】
更に、運転計画装置15は、基準横方向位置と、基準横方向位置に対する現在の補正値とに基づいて、車両10が制御される目標となる目標横方向位置を決定する。
【0025】
現在の補正値は、基準横方向位置に対して、今までのドライバの好みを反映させるように決定される。隣接車線を走行する車両30と自分の車両10との間の距離に対して、ドライバが安心を感じる感じ方は、ドライバによって異なるためである。
【0026】
図1(B)は、車両10の横方向位置と時間との関係を示している。縦軸は、横方向位置を示しており、正の向きは、車両10の左側の向き(隣接車線)を示し、原点は、車両10の右側の向きを示す。
【0027】
運転計画装置15は、車両10が車両30の横に到達した時に、車両10の横方向位置が目標横方向位置となるように、運転計画を生成する。運転計画では、車両10の横方向位置は、車線51の中央から隣接する車線52とは反対側に向かって、目標横方向位置まで移動する。その後、運転計画では、車両10が車両30を追い抜いた後、車両10の横方向位置は、目標横方向位置から車線51の中央に移動する。車両制御装置16は、運転計画に基づいて、車両10の動作を制御する。
【0028】
図1(B)に示すように、車両10の横方向位置は、車線51の中央から隣接する車線52とは反対側に向かって移動していく。ここで、ドライバは、車両10を操舵して、自分が心地よいと感じられる車線51内の横方向位置に車両10を移動させる。
図1(B)に示す例では、ドライバは、車両10の横方向位置を、車線52の中央側に向けて移動するように操舵している。
【0029】
運転計画装置15は、目標横方向位置を含む運転計画に基づいて車両が制御されている時に、ドライバの操作により車線52における車両10の横方向位置が、目標横方向位置から変更された変更回数をカウントする。
【0030】
運転計画装置15は、変更回数がカウントされる度に、この変更回数に基づいて決定される補正係数と、ドライバの操作により目標横方向位置から変化した車両10の横方向位置の変化量とに基づいて、基準横方向位置に対する新たな補正値を求める。
【0031】
図1(C)に示すように、運転計画装置15は、次回にVLO制御を行う時には、基準横方向位置と、新たな補正値とに基づいて、新しい目標横方向位置を決定する。
図1(C)に示す例では、この新しい目標横方向位置は、前回のドライバの操舵を反映させて、前回の目標横方向位置よりも車線の中央側に変位するように補正されている。
【0032】
以上説明したように、運転計画装置15は、隣接車線を走行する他の車両30への車両10の接近に伴って、車両10の走行車線における横方向位置をドライバごとに満足するように決定できる。
【0033】
図2は、本実施形態の車両制御システム1が実装される車両10の概略構成図である。車両10は、前方カメラ2a及び後方カメラ2bと、LiDARセンサ3a、3bと、測位情報受信機4と、ナビゲーション装置5と、ユーザインターフェース(UI)6と、地図情報記憶装置11と、位置推定装置12と、物体検出装置13と、走行車線計画装置14と、運転計画装置15と、車両制御装置16等とを有する。更に、車両10は、ミリ波レーダといった、車両10の周囲の物体までの距離を測定するための測距センサ(図示せず)を有してもよい。
【0034】
前方カメラ2a及び後方カメラ2bと、LiDARセンサ3a、3bと、測位情報受信機4と、ナビゲーション装置5と、UI6と、地図情報記憶装置11と、位置推定装置12と、物体検出装置13と、走行車線計画装置14と、運転計画装置15と、車両制御装置16とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワーク17を介して通信可能に接続される。
【0035】
前方カメラ2a及び後方カメラ2bは、車両10に設けられる撮像部の一例である。前方カメラ2aは、車両10の前方を向くように、車両10に取り付けられる。前方カメラ2aは、例えば所定の周期で、車両10の前方の所定の領域の環境が表されたカメラ画像を撮影する。後方カメラ2bは、車両10の後方を向くように、車両10に取り付けられる。後方カメラ2bは、例えば所定の周期で、車両10の後方の所定の領域の環境が表されたカメラ画像を撮影する。カメラ画像には、車両10の前方又は後方の所定の領域内に含まれる道路と、その路面上の車線区画線等の道路特徴物が表わされ得る。前方カメラ2a、後方カメラ2bは、CCDあるいはC-MOS等、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する撮像光学系を有する。
【0036】
前方カメラ2a及び後方カメラ2bは、カメラ画像を撮影する度に、カメラ画像及びカメラ画像が撮影されたカメラ画像撮影時刻を、車内ネットワーク17を介して、位置推定装置12及び物体検出装置13等へ出力する。カメラ画像は、位置推定装置12において、車両10の位置を推定する処理に使用される。また、カメラ画像は、物体検出装置13において、車両10の周囲の他の物体を検出する処理に使用される。
【0037】
LiDARセンサ3aは車両10の前方を向くように、LiDARセンサ3bは車両10の後方を向くように、例えば、車両10の外面に取り付けられる。LiDARセンサ3a、3bのそれぞれは、所定の周期で設定される反射波情報取得時刻において、車両10の前方、後方に向けてレーザを同期して走査するように発射して、反射物により反射された反射波を受信する。反射波が戻ってくるのに要する時間は、レーダが照射された方向に位置する他の物体と車両10との間の距離情報を有する。LiDARセンサ3a、3bのそれぞれは、レーダの照射方向及び反射波が戻ってくるのに要する時間を含む反射波情報を、レーダを発射した反射波情報取得時刻と共に、車内ネットワーク17を介して物体検出装置13へ出力する。反射波情報は、物体検出装置13において、車両10の周囲の他の物体を検出する処理に使用される。
【0038】
測位情報受信機4は、車両10の現在位置を表す測位情報を出力する。例えば、測位情報受信機4は、GNSS受信機とすることができる。測位情報受信機4は、所定の受信周期で測位情報を取得する度に、測位情報及び測位情報を取得した測位情報取得時刻を、ナビゲーション装置5及び地図情報記憶装置11等へ出力する。
【0039】
ナビゲーション装置5は、ナビゲーション用地図情報と、UI6から入力された車両10の目的位置と、測位情報受信機4から入力された車両10の現在位置を表す測位情報とに基づいて、車両10の現在位置から目的位置までのナビルートを生成する。ナビルートは、右折、左折、合流、分岐等の位置に関する情報を含む。ナビゲーション装置5は、目的位置が新しく設定された場合、又は、車両10の現在位置がナビルートから外れた場合等に、車両10のナビルートを新たに生成する。ナビゲーション装置5は、ナビルートを生成する度に、そのナビルートを、車内ネットワーク17を介して、位置推定装置12及び走行車線計画装置14等へ出力する。
【0040】
UI6は、通知部の一例である。UI6は、ナビゲーション装置5、運転計画装置15及び車両制御装置16等に制御されて、車両10の走行情報等をドライバへ通知する。車両10の走行情報は、車両の現在位置、ナビルート等の車両の現在及び将来の経路に関する情報等を含む。UI6は、走行情報等を表示するために、液晶ディスプレイ又はタッチパネル等の表示装置5aを有する。また、UI6は、走行情報等をドライバへ通知するための音響出力装置(図示せず)を有していてもよい。また、UI6は、ドライバから車両10に対する操作に応じた操作信号を生成する。操作情報として、例えば、目的位置、経由地、車両の速度及びその他の制御情報等が挙げられる。UI6は、ドライバから車両10への操作情報を入力する入力装置として、例えば、タッチパネル又は操作ボタンを有する。UI6は、入力された操作情報を、車内ネットワーク17を介して、ナビゲーション装置5、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力する。
【0041】
地図情報記憶装置11は、車両10の現在位置を含む相対的に広い範囲(例えば10~30km四方の範囲)の広域の地図情報を記憶する。この地図情報は、路面の3次元情報と、道路の制限速度、道路の曲率、道路上の車線区画線等の道路特徴物、構造物の種類及び位置を表す情報等を含む高精度地図情報を有する。
【0042】
地図情報記憶装置11は、車両10の現在位置に応じて、車両10に搭載される無線通信装置(図示せず)を介した無線通信により、基地局を介して外部のサーバから広域の地図情報を受信して記憶装置に記憶する。地図情報記憶装置11は、測位情報受信機4から測位情報を入力する度に、記憶している広域の地図情報を参照して、測位情報により表される現在位置を含む相対的に狭い領域(例えば、100m四方~10km四方の範囲)の地図情報を、車内ネットワーク17を介して、位置推定装置12、物体検出装置13、走行車線計画装置14、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力する。
【0043】
位置推定装置12は、前方カメラ2aにより撮影されたカメラ画像内に表された車両10の周囲の道路特徴物に基づいて、カメラ画像撮影時刻における車両10の位置を推定する。例えば、位置推定装置12は、カメラ画像内に識別した車線区画線と、地図情報記憶装置11から入力された地図情報に表された車線区画線とを対比して、カメラ画像撮影時刻における車両10の推定位置及び推定方位角を求める。また、位置推定装置12は、地図情報に表された車線区画線と、車両10の推定位置及び推定方位角とに基づいて、車両10が位置する道路上の走行車線を推定する。位置推定装置12は、カメラ画像撮影時刻における車両10の推定位置、推定方位角及び走行車線を求める度に、これらの情報を、物体検出装置13、走行車線計画装置14、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力する。
【0044】
物体検出装置13は、カメラ画像及び反射波情報に基づいて、車両10の周囲の他の物体及びその種類(例えば、車両)を検出する。他の物体には、車両10の周囲を走行する他の車両が含まれる。物体検出装置13は、検出された他の物体を追跡して、他の物体の軌跡を求める。物体検出装置13は、地図情報に表された車線区画線と、他の物体位置とに基づいて、他の物体が走行している走行車線を特定する。また、物体検出装置19は、検出された他の物体の種類を示す情報と、その位置を示す情報及び走行車線を示す情報を含む物体検出情報を、走行車線計画装置14及び運転計画装置15等へ出力する。
【0045】
走行車線計画装置14は、所定の周期で設定される走行車線計画生成時刻において、ナビルートから選択された直近の運転区間(例えば、10km)において、地図情報と、ナビルート及び周辺環境情報と、車両10の現在位置とに基づいて、車両10が走行する道路内の車線を選択して、車両10が走行する予定走行車線を表す走行車線計画を生成する。走行車線計画装置14は、例えば、車両10が追い越し車線以外の車線を走行するように、走行車線計画を生成する。走行車線計画装置14は、走行車線計画を生成する度に、この走行車線計画を運転計画装置15へ出力する。
【0046】
運転計画装置15は、計画処理と、設定処理と、決定処理と、カウント処理と、算出処理とを実行する。そのために、運転計画装置15は、通信インターフェース(IF)21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とは、信号線24を介して接続されている。通信インターフェース21は、運転計画装置15を車内ネットワーク17に接続するためのインターフェース回路を有する。運転計画装置15は、車両制御装置の一例である。
【0047】
メモリ22は、記憶部の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ22は、プロセッサ23により実行される情報処理において使用されるアプリケーションのコンピュータプログラム及び各種のデータを記憶する。
【0048】
運転計画装置15が有する機能の全て又は一部は、例えば、プロセッサ23上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。プロセッサ23は、計画部231と、設定部232と、決定部233と、カウント部234と、算出部235とを有する。あるいは、プロセッサ23が有する機能モジュールは、プロセッサ23に設けられる、専用の演算回路であってもよい。プロセッサ23は、1個又は複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路を更に有していてもよい。
【0049】
計画部231は、所定の周期で設定される運転計画生成時刻において、走行車線計画と、地図情報と、車両10の現在位置と、周辺環境情報と、車両状態情報とに基づいて、所定の時間(例えば、5秒)先までの車両10の予定走行軌跡を表す運転計画を生成する運転計画処理を実行する。周辺環境情報は、車両の10の周囲を走行する他の車両の位置及び速度等を含む。車両状態情報は、車両10の現在位置、車両速度、加速度及び進行方向等を含む。運転計画は、現時刻から所定時間先までの各時刻における、車両10の目標位置及びこの目標位置における目標車両速度の集合として表される。運転計画が生成される周期は、走行車線計画が生成される周期よりも短いことが好ましい。運転計画装置15は、車両10と他の物体(車両等)との間に所定の距離以上の間隔を維持できるように運転計画を生成する。運転計画装置15は、運転計画を生成する度に、その運転計画を車両制御装置16へ出力する。運転計画装置15の他の動作については、後述する。
【0050】
車両制御装置16は、車両10の現在位置と、車両速度及びヨーレートと、運転計画装置15によって生成された運転計画とに基づいて、車両10の各部を制御する。例えば、車両制御装置16は、運転計画、車両10の車両速度及びヨーレートに従って、車両10の操舵角、加速度及び角加速度を求め、その操舵角、加速度及び角加速度となるように、操舵量、アクセル開度又はブレーキ量を設定する。そして車両制御装置16は、設定された操舵量に応じた制御信号を、車両10の操舵輪を制御するアクチュエータ(図示せず)へ車内ネットワーク17を介して出力する。また、車両制御装置16は、設定されたアクセル開度に応じた制御信号を車両10の駆動装置(エンジン又はモータ)へ車内ネットワーク17を介して出力する。あるいは、車両制御装置16は、設定されたブレーキ量に応じた制御信号を車両10のブレーキ(図示せず)へ車内ネットワーク17を介して出力する。
【0051】
地図情報記憶装置11と、位置推定装置12と、物体検出装置13と、走行車線計画装置14と、運転計画装置15と、車両制御装置16は、例えば、電子制御装置(Electronic Control Unit:ECU)である。
図2では、地図情報記憶装置11と、位置推定装置12と、物体検出装置13と、走行車線計画装置14と、運転計画装置15と、車両制御装置16は、別々の装置として説明されているが、これらの装置の全て又は一部は、一つの装置として構成されていてもよい。
【0052】
図3は、本実施形態の運転計画装置15の目標横方向位置決定処理に関する動作フローチャートの一例である。
図3を参照しながら、運転計画装置15の目標横方向位置決定処理について、以下に説明する。運転計画装置15は、所定の周期を有する目標横方向位置決定時刻に、
図3に示される動作フローチャートに従って目標横方向位置決定処理を実行する。目標横方向位置決定処理が実行される周期は、運転計画生成時刻の周期以下であることが好ましい。
【0053】
まず、設定部232は、車両10の現在位置及び走行車線と、物体検出情報とに基づいて、車両10の走行している走行車線と隣接する隣接車線上において、車両10から前方に向かって所定の基準車間距離以内の位置で他の車両が走行しているか否かを判定する(ステップS101)。隣接車線上に車両10から前方に向かって他の車両が検出された場合、設定部232は、車両10の現在位置と、隣接車線を走行する他の車両の現在位置とに基づいて、車両10の進行方向に沿った縦方向における車両10と他の車両との車間距離を求める。車間距離が基準車間距離以内の場合、設定部232は、他の車両が走行していると判定する(ステップS101-Yes)。基準車間距離は、例えば、車両10の速度に基づいて決定され得る。なお、車間距離は、車両10と他の車両とを結んだ直線の距離であってもよい。
【0054】
他の車両が走行している場合、設定部232は、車両10が所定の基準到達時間以内に他の車両30に追いつくか否かを判定する(ステップS102)。設定部232は、例えば、車両10の速度と、隣接車線を走行する他の車両の速度とに基づいて、車両10の進行方向に沿った縦方向における車両10と他の車両との相対速度を求める。設定部232は、車間距離と相対速度とに基づいて、車両10が他の車両30の横に到達する推定到達時間を求める。設定部232は、推定到達時間と基準到達時間とを比較して、車両10が所定の基準到達時間以内に他の車両30に追いつくか否かを判定する。基準到達時間は、例えば、相対速度に基づいて決定され得る。
【0055】
車両10が基準到達時間以内に他の車両30に追いつく場合(ステップS102-Yes)、設定部232は、走行車線における車両10の進行方向と直交する横方向位置の基準を表す基準横方向位置を設定する(ステップS103)。基準横方向位置は、車両10と車両10との距離が、所定の基準横方向距離となるように設定され得る。この基準横方向距離は、通常のドライバに安心感を与えるように、車両10と隣接車線を走行する他の車両とが接近し過ぎないような距離としてとして決定され得る。
【0056】
設定部232は、基準横方向位置を、例えば、車間距離、相対速度、走行車線の車線幅、走行車線と隣接車線とを区画する車線区画線と車両との間の横方向距離、走行道路の曲率等に基づいて決定する。なお、基準横方向位置を、公知の方法を用いて求めてもよい。基準横方向位置は、例えば、所定の位置に原点を有する世界座標系で表される。
【0057】
次に、決定部233は、基準横方向位置と、基準横方向位置に対する現在の補正値とに基づいて、車両10が制御される目標となる目標横方向位置を決定して、(ステップS104)、一連の処理を終了する。計画部231は、車両10が隣接車線を走行する他の車両に追いつくまで、車両10の横方向位置が目標横方向位置となるように運転計画を生成する。
【0058】
決定部233は、下記式(1)に示すように、基準横方向位置Pbと、基準横方向位置に対する現在の補正値Mとの和を、目標横方向位置Paとして求める。
【0059】
【0060】
一方、他の車両が走行していない場合(ステップS101-No)、又は、車両10が基準到達時間以内に他の車両に追いつかない場合(ステップS102-No)、一連の処理を終了する。
【0061】
上述した説明では、目標横方向位置を決定する処理は、走行車線と隣接車線とを区画する車線区画線と隣接車線を走行する他の車両との間の距離(
図1(A)のL1)に関わらず実行されていた。ここで、距離L1が所定の基準距離以下の時のみ、目標横方向位置を決定するようにしてもよい。
【0062】
次に、
図4を参照しながら、補正値算出処理について以下に説明する。
図4は、本実施形態の運転計画装置15の補正値算出処理に関する動作フローチャートの一例である。運転計画装置15は、目標横方向位置決定処理において目標横方向位置が決定された区間を車両10が通過する度に、
図4に示される動作フローチャートに従って補正値算出処理を実行する。
【0063】
まず、カウント部234は、ドライバの操作により車両10の横方向位置が目標横方向位置から変更されたか否かを判定する(ステップS201)。
【0064】
運転計画の目標横方向位置が設定されている区間において、実際の車両10の横方向位置と目標横方向位置との距離が、基準離間距離以上(
図1(B)及び
図6(A)参照)である時間が、所定の基準離間時間以上であった場合、カウント部234は、車両10の横方向位置が変更されたと判定する(ステップS201-Yes)。基準離間距離及び基準離間時間は、走行している時の車両10の横方向位置のばらつきを考慮して決定され得る。
【0065】
車両10の横方向位置が変更された場合、カウント部234は、ドライバの操作により走行車線における車両10の横方向位置が、目標横方向位置から変更された変更回数をカウントする(ステップS202)。変更回数の初期値は、ゼロである。
【0066】
次に、カウント部234は、ドライバの操作により目標横方向位置から変化した車両10の横方向位置の変化量を求める(ステップS203)。カウント部234は、運転計画の目標横方向位置が設定されている区間において、車両10の横方向位置の変化量Sを下記式(2)により求める。ここで、開始時刻t1は、実際の車両10の横方向位置と目標横方向位置との距離が基準離間距離L3以上なった時刻であり、終了時刻t2は、車両10が他の車両を追い抜いた時刻である(
図1(B)及び
図6(A)参照)。Y
accは実際の車両10の横方向位置と目標横方向位置との距離である。
【0067】
【0068】
次に、算出部235は、変更回数に基づいて決定される補正係数と、ドライバの操作により目標横方向位置から変化した車両10の横方向位置の変化量Sとに基づいて、基準横方向位置に対する新たな補正値を求めて(ステップS204)、一連の処理を終了する。算出部235は、補正値算出部の一例である。
【0069】
また、車両10の横方向位置が変更されていない場合(ステップS201-No)、一連の処理を終了する。
【0070】
次に、算出部235が、新たな補正値を求める処理について、
図5を参照しながら、以下に説明する。算出部235は、変更回数に基づいて決定される補正係数と、ドライバの操作により目標横方向位置から変化した車両10の横方向位置の変化量Sとの積を、新たな補正値として求める。
【0071】
図5は、補正係数と変更回数との関係の一例を説明する図である。補正係数と変更回数との関係は、補正係数が変更回数の増加と共に増加する第1領域と、補正係数が変更回数の増加と共に第1領域よりも大きく増加する第2領域と、補正係数が変更回数の増加と共に第2領域よりも小さく増加する第3領域とを有する。補正値を学習する過程において、序盤ではドライバの横方向位置の変更は偶然である場合もあるので、補正係数は小さくする(第1領域)。そして、ドライバの横方向位置の変更に傾向がある場合には、補正係数を大きくする(第2領域)。ただし、補正係数には実質的な上限を設ける(第3領域)。補正係数として、例えば、シグモイド関数を使用できる。本実施形態では、補正係数は正の値を有する。
【0072】
補正係数と、横方向位置の変化量との積M(補正値)は、下記式(3)により求められる。ここで、iは変更回数であり、αiは、変更i回目の補正係数であり、Siは、変更i回目の横方向位置の変化量である。なお、補正係数の初期値α0はゼロとしてもよい。
【0073】
【0074】
横方向位置が走行車線の中央側へ変更された場合、変化量Siは正となり、補正係数αiはゼロ又は正の値であるので、補正値Mはゼロ又は正となる。一方、横方向位置が走行車線の中央側へ変更された場合、変化量Siは負となり、補正係数αiはゼロ又は正の値であるので、補正値Mはゼロ又は負となる。補正値Mの絶対値に対しては、上限を設けることが好ましい。この上限は、例えば、車両10の走行している車線の幅、実験的又は経験的に決定され得る。
【0075】
次に、車両10が、運転計画の目標横方向位置が設定されている区間において、車両10の横方向位置が隣接車線へ近づくように変更された場合の運転計画装置15の動作の例を、
図1(B)及び
図1(C)を参照しながら、以下に説明する。
【0076】
図1(B)に示すように、運転計画の目標横方向位置が設定されている区間において、車両10の横方向位置は、走行車線の中央から、隣接車線とは離れるように移動していく。ここで、ドライバは、車両10の横方向位置が走行車線の中央から離れすぎると感じて、走行車線の中央に近づけるように車両10を操舵する。
【0077】
ドライバは、走行車線内における車両10の位置と、隣接車線を走行する他の車両との位置関係に基づいて、車両10を操舵して、自分が心地よいと感じられる走行車線内の横方向位置に車両10を移動させる。
【0078】
図1(B)に示す例では、ドライバは、車両10の横方向位置を隣接車線へ近づくように操舵している。そして、車両10が隣接車線の他の車両を追い抜いた後、車両10の横方向位置は、走行車線の中央へ移動する。
【0079】
運転計画装置15は、変更回数に基づいて決定される補正係数と、ドライバの操作により目標横方向位置から変化した車両10の横方向位置の変化量とに基づいて、基準横方向位置に対する新たな補正値を求める。
【0080】
図1(C)に示すように、運転計画装置15は、次回にVLO制御を行う時には、基準横方向位置と、新たな補正値とに基づいて、新しい目標横方向位置を決定する。この新しい目標横方向位置は、今までのドライバの操舵を反映させて、前回の目標横方向位置よりも走行車線の中央側に位置するように補正されている。
【0081】
次に、車両10が、運転計画の目標横方向位置が設定されている区間において、車両10の横方向位置が隣接車線から離れるように変更された場合の運転計画装置15の動作の例を、
図6(A)及び
図6(B)を参照しながら、以下に説明する。
【0082】
図6(A)に示すように、運転計画の目標横方向位置が設定されている区間において、車両10の横方向位置は、車線52の中央から目標横方向位置まで移動していく。ここで、ドライバは、車両10の横方向位置が隣接車線を走行する他の車両に近いと感じて、走行車線の中央から更に離れるように車両10を操舵する。
【0083】
ドライバは、走行車線内における車両10の位置と、隣接車線を走行する他の車両との位置関係に基づいて、車両10を操舵して、自分が心地よいと感じられる走行車線内の横方向位置に車両10を移動させる。
【0084】
図6(A)に示す例では、ドライバは、車両10の横方向位置を、隣接車線から離れるように操舵している。そして、車両10が隣接車線の他の車両を追い抜いた後、車両10の横方向位置は、走行車線の中央へ移動する。
【0085】
運転計画装置15は、変更回数に基づいて決定される補正係数と、ドライバの操作により目標横方向位置から変化した車両10の横方向位置の変化量とに基づいて、基準横方向位置に対する新たな補正値を求める。
【0086】
図6(B)に示すように、運転計画装置15は、次回にVLO制御を行う時には、基準横方向位置と、新たな補正値とに基づいて、新しい目標横方向位置を決定する。この新しい目標横方向位置は、今までのドライバの操舵を反映させて、前回の目標横方向位置よりも走行車線の中央から離れて位置するように補正されている。
【0087】
以上説明したように、本実施形態の運転計画装置は、隣接車線を走行する他の車両への自車両の接近に伴って、車両の走行車線における横方向位置をドライバごとに満足するように決定できる。
【0088】
次に、上述した本実施形態の運転計画装置の変型例について、
図7を参照しながら、以下に説明する。
【0089】
図7は、変型例における補正値算出処理を説明する図である。
図7に示すように、車両10は、車線61、62、63を有する道路60の車線62上を走行している。車線61と車線62とは、車線区画線64により区画され、車線62と車線63とは、車線区画線65により区画されている。
【0090】
車両10が走行する車線62と隣接する車線61上には、車両10から前方に向かって基準車間距離以内の位置で他の車両40が走行している。車両10は、基準到達時間以内に車両40の横に到達した後、車両40を追い抜くと判定される。ここで、車両10が走行する車線62と隣接する他の車線63上には、車両10から後方に向かって第2の基準車間距離以内の位置で他の車両41が走行している。
【0091】
運転計画装置15は、車両10が隣接する車線61に追いつくと判定されたので、基準横方向位置と、基準横方向位置に対する現在の補正値とに基づいて、車両10が制御される目標となる目標横方向位置を決定する。
【0092】
車両10の横方向位置は、車線52の中央から目標横方向位置に向かって移動していく。ここで、ドライバは、車両10の横方向位置が車線51の中央から離れすぎると感じて、車線52の中央に近づけるように車両10を操舵する。
【0093】
ドライバの操作により車線52における車両10の横方向位置が目標横方向位置から変更されたので、運転計画装置15は、ドライバの操作により車線62における車両10の横方向位置が、目標横方向位置から変更された変更回数をカウントする。
【0094】
運転計画装置15は、変更回数に基づいて決定される補正係数と、ドライバの操作により目標横方向位置から変化した車両10の横方向位置の変化量とに基づいて、基準横方向位置に対する新たな補正値を求める。
【0095】
ここで、運転計画装置15の算出部235は、隣接車線63を走行する車両41がいないか、又は、車両10と車両41との間の相対距離が第2の基準車間距離よりも長い時よりも、小さな新たな補正値を求める。例えば、算出部235は、隣接車線63を走行する車両41がいないか、又は、車両10と車両41との間の相対距離が第2の基準車間距離よりも長い時の補正値と、補正係数(0以上、1未満の正の値)との積を、新たな補正値を求めてもよい。
ドライバは、車両10の前方を走行する車両40の横を通過する時に、車両10の後方を走行する車両41と車両10との位置関係も考慮して、車両10の横方向位置を変更すると考えられる。そこで、このような特殊な状態における補正値の学習を防止するため、補正値に対して1よりも小さい補正係数をかけて、過剰な学習を防止する。
【0096】
隣接車線63を走行する車両41がいないか、又は、他の車両41が車両10から後方に向かって第2の基準車間距離以内に位置していない場合には、運転計画装置15は、上述したような補正値に対する補正は行わない。
【0097】
本開示では、上述した実施形態の車両制御装置、車両制御用コンピュータプログラム及び車両制御方法は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。また、本開示の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0098】
例えば、車両の位置している場所が、雨天、雪等の悪天候の時には、晴天等の良好な天候の時と比べて補正係数をゼロにするか又は小さくしてもよい。悪天候の時には路面が濡れているので、車両の運転状況は、乾いた路面の天候時とは異なる。これにより、悪天候の時の補正が、良好な天候の時の補正値へ与える影響を弱めることができる。また、補正値を、良好な天候の時と、悪天候の時とのそれぞれについて求めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 車両制御システム
2a 前方カメラ
2b 後方カメラ
3a、3b LiDARセンサ
4 測位情報受信機
5 ナビゲーション装置
6 ユーザインターフェース
6a 表示装置
10 車両
11 地図情報記憶装置
12 位置推定装置
13 物体検出装置
14 走行車線計画装置
15 運転計画装置
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
231 計画部
232 設定部
233 決定部
234 カウント部
235 算出部
16 車両制御装置
17 車内ネットワーク