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  • 特許-インホイールモータの冷却構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】インホイールモータの冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20250218BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20250218BHJP
【FI】
H02K9/19 A
B60K1/04 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022063625
(22)【出願日】2022-04-06
(65)【公開番号】P2023154344
(43)【公開日】2023-10-19
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮園 秀明
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-192999(JP,A)
【文献】国際公開第2011/093200(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0001678(US,A1)
【文献】特開2018-058489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪のホイール内に設けられたインホイールモータの冷却構造であって、
前記ホイールが固定されるハブを回転させる回転電機と、
前記ハブを回転可能に支持するとともに、前記回転電機のステータと接触して設けられたナックルと、
を備え、
前記車輪の軸線方向に延在する冷却フィンを前記ナックルに1つ以上設けており、
前記ナックルの車両後方側の脚部における周方向の側面に、前記冷却フィンを配置したことを特徴とするインホイールモータの冷却構造。
【請求項2】
車輪のホイール内に設けられたインホイールモータの冷却構造であって、
前記ホイールが固定されるハブを回転させる回転電機と、
前記ハブを回転可能に支持するとともに、前記回転電機のステータと接触して設けられたナックルと、
を備え、
前記車輪の軸線方向に延在する冷却フィンを前記ナックルに1つ以上設けており、
前記ナックルの車両後方側のみに前記冷却フィンを配置したことを特徴とするインホイールモータの冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インホイールモータの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インホイールモータの冷却装置において、ステータが固定されたハウジングの外周部であってインホイールモータの下部にモータ放熱フィンを配置し、インホイールモータの外部に空冷ファンを設けてモータ放熱フィンを空冷する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-148272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、冷却性能の向上において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、冷却性能の向上を図ることができるインホイールモータの冷却構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るインホイールモータの冷却構造は、車輪のホイール内に設けられたインホイールモータの冷却構造であって、前記ホイールが固定されるハブを回転させる回転電機と、前記ハブを回転可能に支持するとともに、前記回転電機のステータと接触して設けられたナックルと、を備え、前記車輪の軸線方向に延在する冷却フィンを前記ナックルに1つ以上設けたことを特徴とするものである。
【0007】
これにより、回転電機のステータから熱が伝わるナックルに、ホイール内での風の流れ方向を考慮して冷却フィンを設けて、冷却性能を向上させることができる。
【0008】
また、上記において、前記ナックルの車両後方側の脚部における周方向の側面に、前記冷却フィンを配置してもよい。
【0009】
これにより、風速の大きい部位に冷却フィンを配置して冷却性能を向上させることができる。
【0010】
また、上記において、前記ナックルの車両後方側のみに前記冷却フィンを配置してもよい。
【0011】
これにより、冷却フィンの数を減らして低コスト化を図りつつ、効率よく冷却性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るインホイールモータの冷却装置は、回転電機のステータから熱が伝わるナックルに、ホイール内での風の流れ方向を考慮して冷却フィンを設けて、冷却性能を向上させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係るインホイールモータの概略構成を示した断面図である。
図2図2は、車両走行中におけるインホイールモータが搭載された車輪周りの風の流れを示した図である。
図3図3は、ナックルの車両後方側に位置する脚部に冷却フィンが配置されたインホイールモータを軸線方向で内側から見た図である。
図4図4は、車両後方側に位置する脚部に冷却フィンが配置されたナックルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係るインホイールモータの冷却構造の実施形態について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は、実施形態に係るインホイールモータ1の概略構成を示した断面図である。実施形態に係るインホイールモータ1は、ステータ11とロータ12とを有し、車輪のホイール内に設けられる。ステータ11は、ステータコア111とステータコイル112とステータスピンドル113とを有している。また、略リング形状のステータ11の周囲には、ステータコイル112が等間隔に配置されている。ステータコイル112は、バッテリからの電力供給を受けることにより、所定速度の回転磁界を発生させることができる。ステータスピンドル113は、サスペンションアームに固定されたナックル13に、ボルト14によって固定されている。このナックル13は、アウターレース(外輪)151とインナーレース(内輪)152との間に複数のボールが配置されたハブベアリング15を介して、ハブ16を回転自在に支持している。
【0016】
ステータ11の外側には、リム部121とディスク部122とを有するロータ12が、ステータ11と所定間隔をあけて回転自在に配置されている。なお、実施形態に係るインホイールモータ1においては、ロータ12が、車輪のホイールを構成する構成要素としてのリム部121とディスク部122とを有している。リム部121は、ステータ11の径方向外側に位置している。ディスク部122は、ステータ11の軸線方向で外側に位置している。なお、本実施形態において「軸線方向」とは、特に断りが無い限り、後述する車軸18の軸線AXが延びる方向とする。リム部121の内周側には、ステータ11のステータコア111と対向するように永久磁石などのマグネット123が配置されており、回転磁界の移動に伴いステータ11に対しロータ12が回転するようになっている。ロータ12は、ハブボルト17によってハブ16に固定されているため、ロータ12の回転によって車輪を所定速度で回転させることができる。
【0017】
車軸18は、インホイールモータ1が搭載される車輪の回転軸に相当するものであって、軸線AXを中心に回転可能であり、車両外方側の端部が係止リング19によってハブ16に固定されている。
【0018】
機械式のポンプ20は、例えば、冷媒である冷却液(オイル)を圧送するオイルポンプなどであり、ポンプ20を構成する固定部であるインナーレース201がハブベアリング15のアウターレース151に取り付けられており、ポンプ20を構成する回転部であるアウターレース202がハブ16に取り付けられている。そして、ハブ16の回転に伴ってアウターレース202が回転することにより、インナーレース201とアウターレース202との回転差によってポンプ20が駆動する。なお、機械式のポンプ20に代えて、電動式のポンプを用いてもよい。この際、電動式のポンプは、ハブベアリング15のアウターレース151に設ければよい。
【0019】
ステータコア111の内部には、ステータ11の周方向に延在して冷却液が流れる流路である第1冷却流路114と第2冷却流路115とが、軸線方向に並んで設けられている。第1冷却流路114と第2冷却流路115とは、ステータコア111内で互いの一部が連通している。
【0020】
ナックル13の内部とステータ11(ステータコア111及びステータスピンドル113)の内部とには、互いを連通するように、ステータコア111内の第1冷却流路114及び第2冷却流路115と、ポンプ20との間で冷却液を循環させるための複数の流路である往路流路131及び復路流路132が設けられている。往路流路131及び復路流路132におけるナックル13とステータ11(ステータスピンドル113)との接続部分は、ステータ11の周方向でナックル13とステータスピンドル113とを締結するボルト14が存在しない位置としている。また、往路流路131及び復路流路132におけるナックル13とステータ11(ステータスピンドル113)との接続部分には、不図示のガスケットが入れられており、前記接続部分でのシール性を確保している。
【0021】
往路流路131の流入側の端部はポンプ20の吐出口と連通しており、往路流路131の流出側の端部はステータコア111内の第1冷却流路114と連通している。また、復路流路132の流入側の端部はステータコア111内の第2冷却流路115と連通しており、復路流路132の流出側の端部はポンプ20の流入口と連通している。
【0022】
なお、ナックル13は、強度などを考慮して、必要に応じて体格を大きくして往路流路131及び復路流路132などの冷却液を流すための流路を内部に設ければよい。ナックル13内に往路流路131及び復路流路132を設ける方法としては、例えば、ドリル加工などによってナックル13の壁面に往路流路131及び復路流路132に対応する溝を掘った後、その溝を蓋部材で覆ったり、鋳造によってナックル13を作製する際に、往路流路131及び復路流路132に対応する部分に中子を設けたりすればよい。
【0023】
実施形態に係るインホイールモータ1においては、ハブ16の回転に伴ってポンプ20が駆動することにより、ポンプ20から吐出された冷却液が、図1に示すように、往路流路131、第1冷却流路114、第2冷却流路115、復路流路132、の順で各流路を流れてポンプ20に戻ってくるように循環する。
【0024】
実施形態に係るインホイールモータ1では、ポンプ20によって冷却液を循環させて、第1冷却流路114及び第2冷却流路115を流れる冷却液がステータコア111から熱を奪うことにより、ステータコア111ひいてはステータ11を冷却することができる。また、ステータコア111から熱を受けた冷却液が、第2冷却流路115から復路流路132に流出し、復路流路132、ポンプ20、往路流路131、を順に流れて、再び、第1冷却流路114に流入するまでの間に、往路流路131及び復路流路132にて冷却液の熱がナックル13に伝わり、ナックル13の周囲を流れる空気に放熱される。
【0025】
このように、実施形態に係るインホイールモータ1では、ハブ16の回転に伴ってポンプ20を駆動させることにより、往路流路131及び復路流路132を介して、第1冷却流路114及び第2冷却流路115とポンプ20との間で冷却液を循環させることによって、往路流路131及び復路流路132を冷却液が流れている間に冷却液の温度を下げつつ、冷却液によってステータコア111ひいてはステータ11を冷却することができる。
【0026】
また、実施形態に係るインホイールモータ1においては、ステータ11(ステータスピンドル113)とナックル13とが接触しているため、ステータ11の熱がナックル13に伝わる。そして、このようにナックル13に伝わった熱は、ナックル13の周囲を流れる空気に放熱される。
【0027】
ここで、図2に示すように、車両走行中において、インホイールモータ1が搭載された車輪100のホイール内の風の流れは、軸線方向で内側から外側へと流れ、その風速は車両後方側に行くほど大きくなる。
【0028】
そのため、実施形態に係るインホイールモータ1の冷却構造としては、図3及び図4に示すように、ホイール内の風の流れ方向を考慮して、その風の流れに沿うように、軸線方向に延在する冷却フィン30を、ナックル13の脚部130に1つ以上設けている。具体的に、実施形態に係るインホイールモータ1の冷却構造においては、車両走行中におけるホイール内での風速の大きい部位40を考慮して、ナックル13の車両後方側に位置する脚部130における周方向の側面に、冷却フィン30が軸線方向へ延在するように複数(8つ)配置されている。これにより、実施形態に係るインホイールモータ1の冷却構造では、ナックル13の熱を冷却フィン30から効率よく放熱することができ、冷却フィン30をナックル13に設けない場合よりもナックル13の冷却性能、ひいてはステータ11の冷却性能を向上させることができる。
【0029】
なお、ナックル13に対する冷却フィン30の配置箇所としては、車両走行中におけるホイール内での風の流れ方向を考慮して、その風の流れに沿うように、冷却フィン30が軸線方向へ延在するようにナックル13へ設けられれば、ナックル13の車両後方側のみに限らず、ナックル13の他の箇所にも配置してもよい。例えば、ナックル13の車両前方側に位置する脚部130における周方向の側面に、冷却フィン30が軸線方向へ延在するように配置してもよい。一方で、ナックル13の車両後方側のみに冷却フィン30を配置することによって、冷却フィン30の数を減らして低コスト化を図りつつ、効率よく冷却性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 インホイールモータ
11 ステータ
12 ロータ
13 ナックル
14 ボルト
15 ハブベアリング
16 ハブ
17 ハブボルト
18 車軸
19 係止リング
20 ポンプ
111 ステータコア
112 ステータコイル
113 ステータスピンドル
114 第1冷却流路
115 第2冷却流路
121 リム部
122 ディスク部
123 マグネット
130 脚部
131 往路流路
132 復路流路
151 アウターレース
152 インナーレース
201 インナーレース
202 アウターレース
図1
図2
図3
図4