(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】オペレータ管理システム、オペレータ管理方法、オペレータ管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20250218BHJP
【FI】
G08G1/09 V
(21)【出願番号】P 2022117935
(22)【出願日】2022-07-25
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山郷 成仁
(72)【発明者】
【氏名】田口 康治
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/014174(WO,A1)
【文献】特開2019-185279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の支援要求項目を含む遠隔支援要求を発信する複数の車両に対する複数の遠隔支援オペレータの割り当てを管理するオペレータ管理システムであって、
1又は複数のプロセッサと、
前記1又は複数のプロセッサと結合され、前記1又は複数のプロセッサにより実行可能な複数のインストラクションを記憶するメモリと、
を含み、
前記複数のインストラクションは、前記1又は複数のプロセッサに、
前記複数の車両の各々について前記遠隔支援要求の
前記1又は複数の支援要求項目に応じた割当優先度を設定又は更新する処理と
前記複数の車両の数が前記複数の遠隔支援オペレータの数より多い場合であって、かつ前記複数の車両のうち前記複数の遠隔支援オペレータの割り当てが行われていない車両の1つである第1車両の前記割当優先度が前記複数の車両のうち前記複数の遠隔支援オペレータの割り当てが行われている車両の1つである第2車両の前記割当優先度よりも高い場合に、前記第2車両に割り当てられている遠隔支援オペレータを前記第1車両に割り当てる処理と、
を実行させるように構成されている
ことを特徴とするオペレータ管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載のオペレータ管理システムであって、
前記割当優先度を設定又は更新する処理は、
前記遠隔支援要求を新たに取得したことを受けて、前記複数の車両の各々について前記割当優先度を設定又は更新することを含む
ことを特徴とするオペレータ管理システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のオペレータ管理システムであって
、
前記割当優先度を設定又は更新する処理は、
前記1又は複数の支援要求項目の各々について支援優先度を算出することと、
前記支援優先度に基づいて、前記割当優先度を設定又は更新することと、
を含む
ことを特徴とするオペレータ管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載のオペレータ管理システムであって、
前記割当優先度を設定又は更新する処理は、
前記1又は複数の支援要求項目の一部が前記遠隔支援オペレータに処理されたことを受けて、前記複数の車両の各々について前記割当優先度を設定又は更新することを含む
ことを特徴とするオペレータ管理システム。
【請求項5】
請求項4に記載のオペレータ管理システムであって、
前記複数の車両の各々は、
複数の運転判断の組み合わせである運転計画に従って走行する自動運転車であり、
前記複数の運転判断に前記1又は複数の支援要求項目が含まれることを受けて、前記運転計画を前記遠隔支援要求として発信するように構成されている
ことを特徴とするオペレータ管理システム。
【請求項6】
1又は複数の支援要求項目を含む遠隔支援要求を発信する複数の車両に対する複数の遠隔支援オペレータの割り当てをコンピュータにより管理するオペレータ管理方法であって、
前記複数の車両の各々について前記遠隔支援要求の
前記1又は複数の支援要求項目に応じた割当優先度を設定又は更新することと、
前記複数の車両の数が前記複数の遠隔支援オペレータの数より多い場合であって、かつ前記複数の車両のうち前記複数の遠隔支援オペレータの割り当てが行われていない車両の1つである第1車両の前記割当優先度が前記複数の車両のうち前記複数の遠隔支援オペレータの割り当てが行われている車両の1つである第2車両の前記割当優先度よりも高い場合に、前記第2車両に割り当てられている遠隔支援オペレータを前記第1車両に割り当てることと、
を含む
ことを特徴とするオペレータ管理方法。
【請求項7】
1又は複数の支援要求項目を含む遠隔支援要求を発信する複数の車両に対する複数の遠隔支援オペレータの割り当ての管理をコンピュータに実行させるオペレータ管理プログラムであって、
前記複数の車両の各々について前記遠隔支援要求の
前記1又は複数の支援要求項目に応じた割当優先度を設定又は更新する処理と
前記複数の車両の数が前記複数の遠隔支援オペレータの数より多い場合であって、かつ前記複数の車両のうち前記複数の遠隔支援オペレータの割り当てが行われていない車両の1つである第1車両の前記割当優先度が前記複数の車両のうち前記複数の遠隔支援オペレータの割り当てが行われている車両の1つである第2車両の前記割当優先度よりも高い場合に、前記第2車両に割り当てられている遠隔支援オペレータを前記第1車両に割り当てる処理と、
を前記コンピュータに実行させるように構成されている
ことを特徴とするオペレータ管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠隔支援要求を発信する複数の車両に対する複数の遠隔支援オペレータの割り当てを管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
運転計画に従って走行する自動運転車では、自動運転システムが苦手な運転判断に遭遇した場合や遭遇する可能性が高い場合に、遠隔地にいる遠隔支援オペレータに対して遠隔支援要求を発信することが考えられている。これにより、遠隔支援オペレータが運転判断を適宜行うことで、自動運転車は、自動運転の停止や危険な状況に陥ることを回避し、円滑に自動運転を継続することができる。
【0003】
特許文献1には、複数の自動運転動作の優先度を示す優先度情報を生成する生成部と、優先度情報に基づき、複数の自動運転動作の1つの自動運転動作を決定して自動運転を行う制御部と、制御部が1つの自動運転動作を決定できない場合に車両の操作要求を出力する出力部と、を備える制御装置が開示されている。
【0004】
その他、本開示に係る技術分野の技術レベルを示す文献として、以下の特許文献2乃至特許文献5がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-151908号公報
【文献】特開2018-142265号公報
【文献】特開2019-185279号公報
【文献】特開2019-185451号公報
【文献】特開2019-021200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の自動運転車が遠隔支援要求を発信している場合、複数の遠隔支援オペレータが必要となる。一方で、人的コストの観点から、一般に遠隔支援オペレータの数は自動運転車の数に対して少数である。このため、遠隔支援要求を発信する自動運転車の数が多くなると、遠隔支援オペレータが不足する場合がある。
【0007】
遠隔支援オペレータの割り当ては、従来、遠隔支援要求を発信した順番に行われている。このため遠隔支援オペレータが不足する場合、後に遠隔支援要求を発信した自動運転車は、遠隔支援要求の内容に関わらず遠隔支援の開始を待機することになる。しかしながら、遠隔支援要求の内容によっては、緊急時の対応の迅速化や交通流の円滑化の観点から、後に遠隔支援要求を発信した自動運転車を先に処理する方が適切である場合がある。
【0008】
本開示の1つの目的は、上記の課題を鑑み、遠隔支援要求を発信する複数の車両に対する複数の遠隔支援オペレータの割り当てを管理する技術に関して、遠隔支援要求を発信する数が遠隔支援オペレータの数より多くなる場合に、適切に遠隔支援オペレータの割り当てを行うことが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の開示は、遠隔支援要求を発信する複数の車両に対する複数の遠隔支援オペレータの割り当てを管理するオペレータ管理システムに関する。
【0010】
第1の開示に係るオペレータ管理システムは、1又は複数のプロセッサと、1又は複数のプロセッサと結合され、1又は複数のプロセッサにより実行可能な複数のインストラクションを記憶するメモリと、を含み、複数のインストラクションは、1又は複数のプロセッサに、複数の車両の各々について遠隔支援要求の内容に応じた割当優先度を設定又は更新する処理と、複数の車両の数が複数の遠隔支援オペレータの数より多い場合であって、かつ複数の車両のうち複数の遠隔支援オペレータの割り当てが行われていない車両の1つである第1車両の割当優先度が複数の車両のうち複数の遠隔支援オペレータの割り当てが行われている車両の1つである第2車両の割当優先度よりも高い場合に、第2車両に割り当てられている遠隔支援オペレータを第1車両に割り当てる処理と、を実行させるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
第2の開示は、第1の開示に係るオペレータ管理システムに対して、さらに以下の特徴を有するオペレータ管理システムに関する。
【0012】
割当優先度を設定又は更新する処理は、遠隔支援要求を新たに取得したことを受けて、複数の車両の各々について割当優先度を設定又は更新することを含む。
【0013】
第3の開示は、第1又は第2の開示に係るオペレータ管理システムに対して、さらに以下の特徴を有するオペレータ管理システムに関する。
【0014】
遠隔支援要求は、1又は複数の支援要求項目を含み、割当優先度を設定又は更新する処理は、1又は複数の支援要求項目の各々について支援優先度を算出することと、支援優先度に基づいて、割当優先度を設定又は更新することと、を含む。
【0015】
第4の開示は、第3の開示に係るオペレータ管理システムに対して、さらに以下の特徴を有するオペレータ管理システムに関する。
【0016】
割当優先度を設定又は更新する処理は、1又は複数の支援要求項目の一部が遠隔支援オペレータに処理されたことを受けて、複数の車両の各々について割当優先度を設定又は更新することを含む。
【0017】
第5の開示は、第4の開示に係るオペレータ管理システムに対して、さらに以下の特徴を有するオペレータ管理システムに関する。
【0018】
複数の車両の各々は、複数の運転判断の組み合わせである運転計画に従って走行する自動運転車であり、複数の運転判断に1又は複数の支援要求項目が含まれることを受けて、運転計画を遠隔支援要求として発信するように構成されている。
【0019】
第6の開示は、遠隔支援要求を発信する複数の車両に対する複数の遠隔支援オペレータの割り当てをコンピュータにより管理するオペレータ管理方法に関する。
【0020】
第6の開示に係るオペレータ管理方法は、複数の車両の各々について遠隔支援要求の内容に応じた割当優先度を設定又は更新することと、複数の車両の数が複数の遠隔支援オペレータの数より多い場合であって、かつ複数の車両のうち複数の遠隔支援オペレータの割り当てが行われていない車両の1つである第1車両の割当優先度が複数の車両のうち複数の遠隔支援オペレータの割り当てが行われている車両の1つである第2車両の割当優先度よりも高い場合に、第2車両に割り当てられている遠隔支援オペレータを第1車両に割り当てることと、を含むことを特徴とする。
【0021】
第7の開示は、遠隔支援要求を発信する複数の車両に対する複数の遠隔支援オペレータの割り当ての管理をコンピュータに実行させるオペレータ管理プログラムに関する。
【0022】
第7の開示に係るオペレータ管理プログラムは、複数の車両の各々について遠隔支援要求の内容に応じた割当優先度を設定又は更新する処理と、複数の車両の数が複数の遠隔支援オペレータの数より多い場合であって、かつ複数の車両のうち複数の遠隔支援オペレータの割り当てが行われていない車両の1つである第1車両の割当優先度が複数の車両のうち複数の遠隔支援オペレータの割り当てが行われている車両の1つである第2車両の割当優先度よりも高い場合に、第2車両に割り当てられている遠隔支援オペレータを第1車両に割り当てる処理と、を前記コンピュータに実行させるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、複数の車両の各々について遠隔支援要求の内容に応じた割当優先度の設定又は更新が行われる。そして、複数の車両の数が複数の遠隔支援オペレータの数より多い場合であって、かつ遠隔支援オペレータの割り当てが行われていない第1車両の割当優先度が遠隔支援オペレータの割り当てが行われている第2車両の割当優先度より高い場合、第2車両に割り当てられている遠隔支援オペレータが第1車両に割り当てられる。これにより、遠隔支援の緊急性の度合いが高い車両を優先して処理するように複数の遠隔支援オペレータの割り当てを行うことができる。延いては、緊急時の対応の迅速化や交通流の円滑化等の観点を基に、適切に複数の遠隔支援オペレータの割り当てを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態に係るオペレータ管理システムの概要について説明するための概念図である。
【
図3】本実施形態に係るオペレータ管理システムが提供するオペレータ管理機能の概要について説明するための概念図である。
【
図4】本実施形態に係るオペレータ管理システムが提供するオペレータ管理機能の概要について説明するための概念図である。
【
図5】本実施形態に係るオペレータ管理システムが提供するオペレータ管理機能の概要について説明するための概念図である。
【
図6】本実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
【
図7】本実施形態に係る車両において実行される処理の構成を示すブロック図である。
【
図8】本実施形態に係る管理サーバの構成を示すブロック図である。
【
図9】本実施形態に係る管理サーバにおいて実行される処理の構成を示すブロック図である。
【
図10】本実施形態に係る遠隔支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図11】本実施形態に係る遠隔支援装置において実行される処理の構成を示すブロック図である。
【
図12】本実施形態に係る車両において実行される処理を示すシーケンス図である。
【
図13】本実施形態に係る管理サーバにおいて実行される処理を示すシーケンス図である。
【
図14】本実施形態に係る管理サーバにおいて実行される処理を示すシーケンス図である。
【
図15】本実施形態に係る遠隔支援装置において実行される処理を示すシーケンス図である。
【
図16】本実施形態に係る遠隔支援装置において実行される処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.概要
以下、本実施形態に係るオペレータ管理システムの概要について説明する。
図1は、本実施形態に係るオペレータ管理システム10の概要について説明するための概念図である。オペレータ管理システム10は、遠隔支援要求を発信する複数の車両1に対する複数の遠隔支援オペレータ2の割り当てを管理する機能(以下、「オペレータ管理機能」とも称する。)を提供する。
【0026】
複数の車両1の各々は、典型的には、自動運転車である。この場合、複数の車両1の各々は、自動運転システムが苦手な運転判断に遭遇した場合や遭遇する可能性が高い場合等に、遠隔支援要求を発信する。複数の車両1の各々は、遠隔支援要求により、遠隔支援オペレータ2の運転判断を求める。遠隔支援オペレータ2に求められる運転判断(以下、「支援要求項目」とも称する。)は、例えば、レーンチェンジを行う場合や合流地点で合流する場合のタイミング、駐車を行う場合の駐車位置の調整、路肩へのはみ出しが確認された場合の事後対応等である。なお、遠隔支援要求は、複数の支援要求項目を含んでいても良い。
【0027】
複数の遠隔支援オペレータ2の各々は、遠隔支援装置200に対応している。遠隔支援装置200は、遠隔支援の対象となる車両1と接続し通信を行う。ここで、遠隔支援装置200と車両1の接続は、典型的には、移動体通信ネットワークとインターネットを介して実現される。また遠隔支援装置200は、接続する車両1の状況(遠隔支援要求の内容、走行映像、周囲環境、車両状態等)を遠隔支援オペレータ2に通知する機能と、遠隔支援オペレータ2の運転判断の入力を受け付ける機能と、を有する。つまり、遠隔支援オペレータ2は、遠隔支援装置200の通知から車両1の状況を確認し、遠隔支援装置200に運転判断を入力することにより、車両1の遠隔支援を行う。
【0028】
本実施形態に係るオペレータ管理システム10において、オペレータ管理機能は、管理サーバ100により実現される。管理サーバ100は、複数の車両1の各々、及び複数の遠隔支援オペレータ2の各々に対応する遠隔支援装置200と互いに情報を通信することができるように構成されている。例えば、管理サーバ100及び遠隔支援装置200は、通信ケーブルを介してインターネットに接続し、複数の車両1の各々は、移動体通信ネットワークを介してインターネットに接続するように構成される。あるいは、管理サーバ100と遠隔支援装置200は、ローカルエリアネットワークにより接続していても良い。
【0029】
管理サーバ100は、複数の車両1から取得する遠隔支援要求と、複数の遠隔支援オペレータ2の支援状況と、に基づいて、複数の車両1に対する複数の遠隔支援オペレータ2の割り当てを決定する。ここで、支援状況は、個々の遠隔支援装置200から取得され、少なくとも対応する遠隔支援オペレータ2が遠隔支援を行っているか否か(対応する遠隔支援オペレータ2が空いているか否か)についての情報を含んでいる。支援状況は、さらに、遠隔支援要求の処理の状態についての情報を含んでいて良い。例えば、遠隔支援要求が複数の支援要求項目を含む場合、支援状況は、複数の支援要求項目の各々について処理されたか否かについての情報を含んでいて良い。
【0030】
管理サーバ100は、決定した割り当てに基づいて、複数の遠隔支援オペレータ2の各々に対応する遠隔支援装置200に割り当て指示を行う。ここで、割り当て指示は、少なくとも割り当てられる車両1を特定する情報が含まれる。例えば、割り当て指示は、割り当てられる車両1を識別する車両IDの情報を含む。遠隔支援装置200は、割り当て指示に従って、遠隔支援の対象となる車両1との通信を開始する。
【0031】
また管理サーバ100は、複数の車両1に割り当て状況を送信する。割り当て状況は、例えば、遠隔支援要求に対して遠隔支援オペレータ2の割り当てが成功したか否かについての割当結果の情報を含んでいる。これにより、複数の車両1の各々は、発信した遠隔支援要求に対する遠隔支援の対応状況を取得することができる。複数の車両1の各々は、割り当て状況に応じて、所定の処理を実行するように構成されていても良い。
【0032】
例えば、複数の車両1の各々は、遠隔支援オペレータ2の割り当てが成功したことを示す割当結果を受けて、遠隔支援装置200との通信を開始するように構成されていても良い。あるいは、複数の車両1の各々は、遠隔支援オペレータ2が不足し割り当てが保留されたことを示す割当結果を受けて、割り当てが行われるまでの間の安全性や周囲の円滑な交通流を担保するための走行制御を開始するように構成されていても良い。
【0033】
このように本実施形態に係るオペレータ管理システム10が構成される。なお複数の車両1の各々が自動運転車であるとき、複数の車両1の各々は、典型的には、複数の運転判断の組み合わせである運転計画に従って走行する。この場合、複数の車両1の各々は、運転計画に係る複数の運転判断に1又は複数の支援要求項目が含まれることを受けて、運転計画を遠隔支援要求として発信するように構成されていても良い。さらに、車両1は、運転計画を遠隔支援要求として発信した後に、周囲の交通状況や認識状況が変化して運転計画に係る一部の支援要求項目を取り下げる場合においても、運転計画を発信するように構成されていても良い。このように構成することで、遠隔支援要求と運転計画とを一体的に取り扱うことができる。延いては、簡易な構成によるシステムの実現を図ることができる。
【0034】
図2は、運転計画の例を示す概念図である。運転計画は、一般に、センサ等の検出情報に基づいて、自車両の位置から一定距離の範囲内における運転判断を規定する。また、運転計画は、所定の制御周期毎に更新される。つまり、運転計画は、車両1が走行している間、自車両の位置から一定距離の範囲内における運転判断を時々刻々と規定する。
図2に示す例では、運転計画は、道路区間B、道路区間D、及び道路区間Fにおける運転判断として、3つの支援要求項目を含んでいる。このように、運転計画は、遠隔支援要求として取り扱うことができる。
【0035】
本実施形態に係るオペレータ管理システム10が提供するオペレータ管理機能の特徴は、複数の車両1の各々について遠隔支援要求の内容に応じた割当優先度の設定又は更新を行うことと、複数の車両1の各々の割当優先度に基づいて、複数の遠隔支援オペレータ2の割り当てを変更することにある。
【0036】
ここで、複数の車両1の各々の割当優先度は、管理サーバ100により、次のように算出することができる。なお以下では、複数の車両1のうちの1つの割当優先度を算出する場合について説明する。
【0037】
まず管理サーバ100は、車両1が発信する遠隔支援要求に係る支援要求項目について、支援優先度を算出する。支援優先度は、支援要求項目の緊急性の度合いである。緊急性の度合いは、安全性や周囲の交通流の円滑化を指標として良い。支援優先度は、典型的には、数値で表される。なお、遠隔支援要求が複数の支援要求項目を含む場合、管理サーバ100は、複数の支援要求項目の各々について支援優先度を算出する。
【0038】
ここで、管理サーバ100は、支援要求項目に対して、あらかじめ記憶する支援優先度を算出するように構成されていて良い。例えば、管理サーバ100は、以下の表1に示すように支援要求項目に対する支援優先度を記憶する。このとき、管理サーバ100は、表1において支援要求項目と対応する数値を支援優先度として算出する。例えば、支援要求項目がレーンチェンジであるとき、算出される支援優先度は5となる。また例えば、車両1が
図2に示す運転計画を遠隔支援要求として発信する場合、3つの支援要求項目に対して算出される支援優先度は、5(レーンチェンジ)、10(歩道横切り)、8(駐車位置の調整)となる。
【0039】
【0040】
次に管理サーバ100は、算出した支援優先度に基づいて、車両1の割当優先度を算出する。遠隔支援要求に係る支援要求項目が1つである場合、管理サーバ100は、算出した支援優先度を車両1の割当優先度として良い。また、遠隔支援要求が複数の支援要求項目を含む場合、管理サーバ100は、複数の支援要求項目の各々について算出された支援優先度のうち最も高い支援優先度を車両1の割当優先度として良い。例えば、車両1が
図2に示す運転計画を遠隔支援要求として発信する場合、管理サーバ100は、車両1の割当優先度を10として良い。
【0041】
このように管理サーバ100により複数の車両1の各々について割当優先度を算出することができる。割当優先度は、車両1の遠隔支援の緊急性の度合いであると考えることもできる。
【0042】
以下、
図3乃至
図5を参照して、オペレータ管理システム10が提供するオペレータ管理機能の概要について説明する。なお、以下の説明において、複数の遠隔支援オペレータ2の数は3とする。
【0043】
まず
図3を参照する。
図3は、複数の遠隔支援オペレータ2に空きがある状態で、遠隔支援要求を新たに取得する場合を示している。
図3では、複数の遠隔支援オペレータ2及び複数の車両1の各々を区別するため、符号に記号(a、b、c)を附している。
【0044】
図3では、遠隔支援オペレータ2cが空いている状態で、車両1cが遠隔支援要求を新たに発信している。この場合、管理サーバ100は、遠隔支援オペレータ2cを車両1cに割り当てる。
【0045】
次に
図4を参照する。
図4は、
図3に示す割り当ての後、複数の遠隔支援オペレータ2に空きがない状態で、遠隔支援要求を新たに取得する場合を示している。つまり、複数の車両1の数が複数の遠隔支援オペレータ2の数よりも多い場合である。
図4では、車両1dが遠隔支援要求を新たに発信している。しかし、複数の遠隔支援オペレータ2に空きがないため、
図3に示すように単に割り当てを行うことはできない。
【0046】
ここで、管理サーバ100は、
図4に示すように、複数の車両1の各々について割当優先度を設定又は更新する。そして、管理サーバ100は、遠隔支援オペレータ2の割り当てが行われていない車両1(第1車両)の割り当て優先度が、遠隔支援オペレータ2の割り当てが行われている車両1(第2車両)の割当優先度よりも高い場合に、第2車両に割り当てられている遠隔支援オペレータ2を第1車両に割り当てるように複数の遠隔支援オペレータ2の割り当てを変更する。
図4に示す例では、車両1dの割当優先度が車両1cの割当優先度よりも高いため、管理サーバ100は、車両1cに割り当てられている遠隔支援オペレータ2cを車両1dに割り当てるように複数の遠隔支援オペレータ2の割り当てを変更する。
【0047】
なお、遠隔支援オペレータ2の割り当てが変更される第2車両は、割当優先度の最も低い第2車両であって良い。仮に遠隔支援オペレータ2の割り当てが変更される第2車両が割当優先度の最も低い車両1でない場合であっても、割り当ての変更を逐次反復して行えば、同様の割り当て状況となる。また、割当優先度が同一である第1車両が複数存在する場合、管理サーバ100は、特定の指標に基づいて割り当てを変更する第1車両を選択するように構成されていて良い。特定の指標として、例えば、割り当てが行われていない期間の長さ、車両1が位置する道路幅の狭さ、運行スケジュールとの乖離の程度等が挙げられる。これにより、車両1の状況に応じてより遠隔支援の必要性が高い第1車両を選択することができる。
【0048】
次に
図5を参照する。
図5は、
図4に示す割り当ての変更の後、複数の車両1のいずれかについて、支援要求項目の一部が処理された場合を示している。
図5では、車両1bの支援要求項目であった「歩道横切り」が処理されている。このとき、管理サーバ100は、複数の車両1の各々について割当優先度を更新する。これにより、
図5に示すように、車両1bの割当優先度は、10から5となる。そして、管理サーバ100は、遠隔支援オペレータ2の割り当てが行われていない車両1(第1車両)の割り当て優先度が、遠隔支援オペレータ2の割り当てが行われている車両1(第2車両)の割当優先度よりも高い場合に、第2車両に割り当てられている遠隔支援オペレータ2を第1車両に割り当てるように複数の遠隔支援オペレータ2の割り当てを変更する。
図5では、車両1cの割当優先度が車両1bの割当優先度よりも高くなるため、管理サーバ100は、車両1bに割り当てられている遠隔支援オペレータ2bを車両1cに割り当てるように複数の遠隔支援オペレータ2の割り当てを変更する。
【0049】
2.構成
以下、本実施形態に係るオペレータ管理システム10に関して、車両1、管理サーバ100、及び遠隔支援装置200の構成について説明する。なお、以下の説明において、車両1は、運転計画を遠隔支援要求として発信する自動運転車であるとする。
【0050】
2-1.自動運転車
まず車両1(自動運転車)の構成について説明する。
図6は、車両1の構成を示すブロック図である。車両1は、1又は複数のセンサ310と、1又は複数の通信装置320と、ECU類330と、1又は複数のアクチュエータ340と、を備えている。ECU類330は、1又は複数のセンサ310、1又は複数の通信装置320、及び1又は複数のアクチュエータ340と、互いに情報を伝達することができるように構成されている。典型的には、それぞれ、CAN(Controller Area Network)等で構成された車載ネットワークに接続している。
【0051】
1又は複数のセンサ310は、少なくとも車両1の周囲を撮像するカメラを含んでいる。その他、1又は複数のセンサ310として、車両1の周囲環境(先行車、白線、障害物等)を検出するセンサや車両1の走行状態(車速、加速度、ヨーレート等)を検出するセンサが例示される。車両1の周囲環境を検出するセンサは、例えば、ミリ波レーダ、LiDAR(Light Detection And Ranging)等である。車両1の走行状態を検出するセンサは、例えば、車速センサ、Gセンサ、ジャイロセンサ等である。1又は複数のセンサ310が検出する情報は、ECU類330に伝達される。
【0052】
1又は複数の通信装置320は、車両1の外部の装置と通信して情報を送受信する。特に、1又は複数の通信装置320は、管理サーバ100及び遠隔支援装置200と通信を行うための装置(典型的には、無線基地局と無線通信を行う端末)を含んでいる。つまり、1又は複数の通信装置320により、割り当て状況の取得や遠隔支援オペレータ2による運転判断の取得等が行われる。その他、1又は複数の通信装置320として、周辺車両と通信を行う装置、GPS受信機等が例示される。1又は複数の通信装置320が受信する情報は、ECU類330に伝達される。1又は複数の通信装置320が受信する情報として、割り当て状況や遠隔支援オペレータ2による運転判断の他、地図情報、道路交通情報、GPS位置情報等が例示される。
【0053】
ECU類330は、取得する情報に基づいて、車両1の種々の制御に係る処理を実行し、制御信号を生成するECU(Electronic Control Unit)の類を示す。ECU類330は、自動運転ECU331と、車両制御ECU332と、を含んでいる。
【0054】
自動運転ECU331は、車両1の自動運転に係る処理を実行する。特に自動運転ECU331は、1又は複数のセンサ310の検出情報及び1又は複数の通信装置320の受信情報に基づいて、運転計画を生成する処理を実行する。車両制御ECU332は、車両1が所望の動作を行うように1又は複数のアクチュエータ340の制御信号を生成する処理を実行する。特に車両制御ECU332は、自動運転ECU331において生成した運転計画に従って車両1を動作させるための制御信号を生成する処理を実行する。車両制御ECU332が生成した制御信号は、1又は複数のアクチュエータ340に伝達される。
【0055】
1又は複数のアクチュエータ340は、ECU類330から伝達される制御信号に従って動作する。1又は複数のアクチュエータ340として、動力装置(内燃機関、電気モータ等)の動作に関わるアクチュエータ、ブレーキ機構の動作に関わるアクチュエータ、ステアリング機構の動作に関わるアクチュエータ等が例示される。1又は複数のアクチュエータ340が制御信号に従って動作することにより、車両1の自動運転が実現される。
【0056】
次に
図7を参照して、本実施形態に係る車両1において実行される処理の構成について説明する。車両1において実行される処理は、映像データ送信処理部P321と、運転計画送信処理部P322と、オペレータ割当受信処理部P323と、運転判断受信処理部P324と、センサ情報処理部P331と、物体認識処理部P332と、行動予測処理部P333と、運行ルート生成処理部P334と、運転計画生成処理部P335と、により構成される。
【0057】
ここで、センサ情報処理部P331、物体認識処理部P332、行動予測処理部P333、運行ルート生成処理部P334、及び運転計画生成処理部P335は、自動運転ECU331において実現される。また、映像データ送信処理部P321、運転計画送信処理部P322、オペレータ割当受信処理部P323、及び運転判断受信処理部P324は、1又は複数の通信装置320において実現される。
【0058】
センサ情報処理部P331は、1又は複数のセンサ310から取得する情報を処理し、車両1の周囲の物体に関するデータを抽出する。
【0059】
物体認識処理部P332は、1又は複数のセンサ310から取得する車両1の周囲の物体についての情報を統合し、車両1の周囲の物体の種類(例えば、人物、車両、信号機、地面、空等)を判断する。
【0060】
行動予測処理部P333は、車両1の周囲の物体の将来の移動経路を予測する。
【0061】
運行ルート生成処理部P334は、目的地までの運行ルートを生成する。ここで、運行ルートは、通行経路を規定する情報であって良い。
【0062】
運転計画生成処理部P335は、行動予測処理部P333の処理結果と、運行ルート生成処理部P334において生成した運行ルートと、に基づいて運転判断(例えば、車線変更、発進、停止等)を決定し、複数の運転判断の組み合わせである運転計画を生成する。特に、運転計画生成処理部P335は、自動運転システム単独では難しい運転判断については、支援要求項目とする。また運転計画生成処理部P335は、遠隔支援オペレータ2の運転判断を取得したときは、遠隔支援オペレータ2の運転判断に応じて運転計画を更新する。
【0063】
映像データ送信処理部P321は、車両1に備えるカメラから取得する映像データを遠隔支援装置200に対して送信する。ここで、映像データ送信処理部P321は、物体認識処理部P332の処理結果に基づいて、送信する映像データに車両1の周囲の物体の認識結果を組み込んでも良い。あるいは、映像データ送信処理部P321は、物体認識処理部P332の処理結果に基づいて、「人物がこの位置にいる」といったモデル化した情報を送信するように構成されていても良い。
【0064】
運転計画送信処理部P322は、運転計画に係る運転判断に支援要求項目が含まれることを受けて、運転計画生成処理部P335において生成された運転計画を送信する。
【0065】
オペレータ割当受信処理部P323は、管理サーバ100から複数の遠隔支援オペレータ2の割り当て状況を受信する。
【0066】
運転判断受信処理部P324は、遠隔支援装置200から遠隔支援オペレータ2の運転判断を受信する。
【0067】
2-2.管理サーバ
次に管理サーバ100の構成について説明する。
図8は、管理サーバ100の構成を示すブロック図である。管理サーバ100は、メモリ110と、プロセッサ120と、通信装置130と、を含むコンピュータである。
【0068】
メモリ110は、プロセッサ120と結合し、プロセッサ120により実行可能な複数のインストラクション112と、処理の実行に必要な種々のデータ113と、を記憶している。ここで、複数のインストラクション112は、コンピュータプログラム111(オペレータ管理プログラム)により与えられる。
【0069】
複数のインストラクション112は、プロセッサ120にオペレータ管理機能に係る処理を実行させるように構成されている。特に、複数のインストラクション112に従ってプロセッサ120が動作することにより、オペレータ管理機能に係る処理が実現される。
【0070】
通信装置130は、管理サーバ100の外部の装置と通信して情報を送受信する。特に、通信装置130は、車両1及び遠隔支援装置200と通信を行う。つまり、通信装置130により、遠隔支援要求や支援状況の取得、割り当て状況や割り当て指示の送信が行われる。通信装置130が受信する情報は、データ113としてメモリ110に記憶される。
【0071】
次に
図9を参照して、本実施形態に係る管理サーバ100において実行される処理の構成について説明する。管理サーバ100において実行される処理は、割当優先度算出処理部P121と、支援状況管理処理部P122と、オペレータ割当算出処理部P123と、運転計画受信処理部P131と、オペレータ割当送信処理部P132と、支援状況受信処理部P133と、により構成される。
【0072】
ここで、割当優先度算出処理部P121、支援状況管理処理部P122、及びオペレータ割当算出処理部P123は、複数のインストラクション112に従って動作するプロセッサ120により実現される。また、運転計画受信処理部P131、オペレータ割当送信処理部P132、及び支援状況受信処理部P133は、通信装置130において実現される。
【0073】
割当優先度算出処理部P121は、複数の車両1の運転計画と、複数の遠隔支援オペレータ2の支援状況と、に基づいて複数の車両1の各々について割当優先度を算出する。ここで、割当優先度の算出は、先に説明したように行われる。また、割当優先度算出処理部P121は、管理サーバ100が遠隔支援要求を新たに取得したこと、又は支援要求項目の一部が処理されたことを受けて、割当優先度を算出するように構成されていて良い。
【0074】
支援状況管理処理部P122は、複数の遠隔支援オペレータ2の支援状況を複数の車両1の各々の割当優先度と対応させて管理する。つまり、支援状況管理処理部P122は、
複数の遠隔支援オペレータ2の各々について、どの車両1のどのような遠隔支援要求を処理しているかと、遠隔支援の対象とする車両1の割当優先度と、を管理する。例えば、支援状況管理処理部P122は、以下の表2に示すような支援状況テーブルをデータ113として管理する。
【0075】
【0076】
オペレータ割当算出処理部P123は、複数の遠隔支援オペレータ2の支援状況と、複数の車両1の割当優先度と、に基づいて複数の遠隔支援オペレータ2の割り当てを算出する。ここで、複数の遠隔支援オペレータ2の割り当ては、
図3乃至
図5で説明したように行われる。またオペレータ割当算出処理部P123は、管理サーバ100が遠隔支援要求を新たに取得したこと、又は支援要求項目の一部が処理されたことを受けて、複数の遠隔支援オペレータ2の割り当てを算出するように構成されていて良い。
【0077】
運転計画受信処理部P131は、車両1が発信する運転計画を受信する。
【0078】
オペレータ割当送信処理部P132は、遠隔支援要求(運転計画)を発信する車両1に対して割当結果を送信する。ここで、割当結果は、オペレータ割当算出処理部P123から取得するように構成されていて良い。またオペレータ割当送信処理部P132は、遠隔支援装置200に対して割り当てを行った車両1を特定する情報(車両ID)を送信する。ここで、車両1を特定する情報は、支援状況管理処理部P122から取得するように構成されていて良い。
【0079】
支援状況受信処理部P133は、複数の遠隔支援オペレータ2の各々と対応する遠隔支援装置200から支援状況を受信する。
【0080】
2-3.遠隔支援装置
次に遠隔支援装置200の構成について説明する。
図10は、遠隔支援装置200の構成を示すブロック図である。遠隔支援装置200は、HMI210と、処理装置220と、通信装置230と、を備えている。
【0081】
HMI210は、遠隔支援オペレータ2に対するHMI機能を提供する。HMI210は、運転判断入力部211と、映像表示部212と、を含んでいる。運転判断入力部211は、遠隔支援オペレータ2の運転判断の入力を受け付ける。運転判断入力部211は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、操作盤等により実現される。映像表示部212は、遠隔支援の対象とする車両1についての情報を表示する。典型的には、映像表示部212は、遠隔支援の対象とする車両1の周囲の映像データと、遠隔支援の対象とする車両1の遠隔支援要求(運転計画)の情報を表示する。映像表示部212は、典型的には、ディスプレイである。
【0082】
遠隔支援オペレータ2は、映像表示部212の表示から車両1の状況を確認する。そして、遠隔支援オペレータ2は、運転判断入力部211を操作することにより遠隔支援要求に対する運転判断を入力する。
【0083】
処理装置220は、取得する情報に基づいて、種々の処理を実行するコンピュータである。特に、処理装置220は、映像表示部212の表示の制御に係る処理を実行する。
【0084】
通信装置230は、遠隔支援装置200の外部の装置と通信して情報を送受信する。特に、通信装置230は、車両1及び管理サーバ100と通信を行う。つまり、通信装置230により、割り当て指示の取得や遠隔支援オペレータ2による運転判断及び支援状況の送信等が行われる。通信装置230が受信する情報は、処理装置220に伝達される。
【0085】
次に
図11を参照して、本実施得形態に係る遠隔支援装置200において実行される処理の構成について説明する。遠隔支援装置200において実行される処理は、映像生成処理部P221と、支援状況送信処理部P231と、運転判断送信処理部P232と、映像データ受信処理部P233と、運転計画受信処理部P234と、オペレータ割当受信処理部P235と、を含んでいる。ここで、映像生成処理部P221は、処理装置220において実現される。また、支援状況送信処理部P231、運転判断送信処理部P232、映像データ受信処理部P233、運転計画受信処理部P234、及びオペレータ割当受信処理部P235は通信装置230において実現される。
【0086】
映像生成処理部P221は、遠隔支援の対象とする車両1から取得する映像データ及び運転計画に基づいて、映像表示部212に映像を表示させるための表示信号を生成する。映像生成処理部P221は、例えば、取得した映像データに車両1の予測走行軌道、支援要求項目、周囲の物体の位置や大きさ等の情報を組み合わせた映像を表示させる表示信号を生成する。これにより、遠隔支援オペレータ2は、映像表示部212を確認することで、車両1の周囲の状況を十分に確認することができる。
【0087】
支援状況送信処理部P231は、支援状況を送信する。ここで、支援状況送信処理部P231が送信する支援状況は、遠隔支援の対象とする車両1について、未だ処理が行われていない支援要求項目の情報を含んでいて良い。
【0088】
運転判断送信処理部P232は、運転判断入力部211が受け付けた遠隔支援オペレータ2の運転判断を送信する。
【0089】
映像データ受信処理部P233は、遠隔支援の対象とする車両1の映像データを受信する。ここで、映像データ受信処理部P233が受信する映像データは、車両1の周囲の物体の位置や大きさ等の車両1の周囲の認識情報を含んでいても良い。
【0090】
運転計画受信処理部P234は、遠隔支援の対象とする車両1の運転計画を受信する。
【0091】
オペレータ割当受信処理部P235は、遠隔支援の対象とする車両1を特定する情報(車両ID)を受信する。オペレータ割当受信処理部P235が車両IDを受信したことを受けて、遠隔支援装置200は、車両IDが特定する車両1の遠隔支援を開始する。逆に、オペレータ割当受信処理部P235が車両IDを受信していないとき、遠隔支援オペレータ2は空いている状態となる。
【0092】
3.処理
以下、本実施形態に係るオペレータ管理システム10に関して、車両1、管理サーバ100、及び遠隔支援装置200において実行される処理について説明する。
【0093】
2-1.自動運転車
まず車両において実行される処理について説明する。
図12は、車両1において実行される処理を示すシーケンス図である。
【0094】
運転計画生成処理部P335は、取得する情報に基づいて、定期的に運転計画を更新する(T310)。
【0095】
そして、運転計画に係る運転判断に支援要求項目が追加されたとき(T320)、運転計画送信処理部P322は、運転計画を送信する。その後、オペレータ割当受信処理部P323は、割当結果の受信を待機する。
【0096】
オペレータ割当受信処理部P323が遠隔支援オペレータ2の割り当てが成功したことを示す割当結果を受信したとき、車両1は、遠隔支援装置200と通信を開始し、運転判断受信処理部P324は、遠隔支援オペレータ2による運転判断の受信を待機する(
図12に図示しない)。
【0097】
一方で、オペレータ割当受信処理部P323が遠隔支援オペレータ2の割り当てが保留されたことを示す割当結果を受信したとき、又は割当結果の受信が一定期間行われずタイムアウトしたとき、運転計画生成処理部P335は、運転計画を変更する。このとき、運転計画生成処理部P335は、割り当てが行われるまでの間の安全性や周囲の円滑な交通流を担保することができる運転計画への変更を行うように構成されていて良い。例えば、運転計画生成処理部P335は、運転判断に車両1の低速走行や車両1の路肩への停止等を含む運転計画への変更を行うことが挙げられる。あるいは、運転計画生成処理部P335は、運転計画を生成するポリシーを変更するように構成されていても良い。例えば、運転計画生成処理部P335は、安全性を重視した運転計画が生成されるポリシーに変更する。
【0098】
2-2.管理サーバ
次に管理サーバ100において実行される処理について説明する。
図13及び
図14は、管理サーバ100において実行される処理を示すシーケンス図である。ここで、
図13及び
図14は、「A」で接続しており1つのシーケンス図を示している。また
図13及び
図14において、支援状況管理処理部P122は、表2に示すような支援状況テーブルにより複数の遠隔支援オペレータ2の支援状況を管理するとする。
【0099】
支援状況管理処理部P122は、定期的に、割当優先度について支援状況テーブルの更新を行う(T110)。このとき、支援状況管理処理部P122は、支援状況受信処理部P133が受信する支援状況を取得し、取得した支援状況を割当優先度算出処理部P121に通知する。割当優先度算出処理部P121は、支援状況の通知を受けて、複数の車両の各々について割当優先度を算出する。そして、支援状況管理処理部P122は、割当優先度算出処理部P121が算出した割当優先度に基づいて、支援状況テーブルを更新する。
【0100】
運転計画受信処理部P131は、運転計画(遠隔支援要求)を受信したことを受けて、受信した運転計画をオペレータ割当算出処理部P123に通知する。オペレータ割当算出処理部P123は、運転計画の通知を受けて、支援状況管理処理部P122から支援状況を取得する。そして、オペレータ割当算出処理部P123は、複数の遠隔支援オペレータ2に空きがあるかを確認する。
【0101】
複数の遠隔支援オペレータ2に空きがある場合(T120)、オペレータ割当算出処理部P123は、新たに運転計画を発信する車両1に空いている遠隔支援オペレータ2を割り当てる。そして、オペレータ割当算出処理部P123は、遠隔支援オペレータ2の割り当てが成功したことを示す割当結果をオペレータ割当送信処理部P132に通知する。オペレータ割当送信処理部P132は、通知された割当結果を車両1に送信する。またオペレータ割当算出処理部P123は、割り当てを行った車両1についての情報(支援情報)を支援状況管理処理部P122に通知する。支援情報は、車両ID、支援要求項目、割り当てられる遠隔支援オペレータ2の情報を含んでいる。さらに、支援情報は、割り当てを行った車両1の割当優先度の情報を含んでいても良い。この場合、割当優先度算出処理部P121において処理が実行される。支援状況管理処理部P122は、支援情報の通知を受けて、支援情報に基づいて支援状況テーブルを更新する。そして、支援状況管理処理部P122は、割り当てを行った車両1の車両IDをオペレータ割当送信処理部P132に通知する。オペレータ割当送信処理部P132は、通知された車両IDを遠隔支援装置200に送信する。
【0102】
遠隔支援オペレータ2に空きがない場合(T130)、オペレータ割当算出処理部P123は、割当優先度算出処理部P121に通知を行う。割当優先度算出処理部P121は、通知を受けて、新たに運転計画を発信する車両1を含む複数の車両1の各々の割当優先度を算出する。そして、オペレータ割当算出処理部P123は、算出された複数の車両1の各々の割当優先度を確認する。
【0103】
新たに運転計画を発信する車両1の割当優先度が遠隔支援オペレータ2の割り当てが行われている車両1(第2車両)の割当優先度よりも高い場合(T131)、オペレータ割当算出処理部P123は、新たに運転計画を発信する車両1に第2車両の遠隔支援オペレータ2を割り当てるように複数の遠隔支援オペレータ2の割り当てを変更する。その後、オペレータ割当算出処理部P123は、割当結果をオペレータ割当送信処理部P132に通知する。ここで、オペレータ割当算出処理部P123が通知する割当結果は、新たに運転計画を発信する車両1に対しては遠隔支援オペレータ2の割り当てが成功したことを示し、第2車両に対しては遠隔支援オペレータ2の割り当てが外れることを示すものである。オペレータ割当送信処理部P132は、通知された割当結果を、新たに運転計画を発信する車両1及び第2車両に送信する。またオペレータ割当算出処理部P123は、割り当ての変更を行った車両1についての支援情報を支援状況管理処理部P122に通知する。支援状況管理処理部P122は、支援情報の通知を受けて、支援情報に基づいて支援状況テーブルを更新する。そして、支援状況管理処理部P122は、割り当てを行った車両1の車両IDをオペレータ割当送信処理部P132に通知する。オペレータ割当送信処理部P132は、通知された車両IDを遠隔支援装置200に送信する。
【0104】
新たに運転計画を発信する車両1の割当優先度が遠隔支援オペレータ2の割り当てが行われている車両1の割当優先度と同等以下の場合(T132)、オペレータ割当算出処理部P123は、新たに運転計画を発信する車両1への遠隔支援オペレータ2の割り当てを保留とする。その後、オペレータ割当算出処理部P123は、遠隔支援オペレータ2の割り当てが保留されたことを示す割当結果をオペレータ割当送信処理部P132に通知する。オペレータ割当送信処理部P132は、通知された割当結果を、新たに運転計画を発信する車両1に送信する。またオペレータ割当算出処理部P123は、新たに運転計画を発信する車両1についての支援情報を支援状況管理処理部P122に通知する。支援状況管理処理部P122は、支援情報の通知を受けて、支援情報に基づいて支援状況テーブルを更新する。
【0105】
その後、支援状況管理処理部P122は、定期的に、割当優先度について支援状況テーブルの更新を行う(T110)。そして、複数の車両1の数が複数の遠隔支援オペレータ2の数より多い場合においては(T130)、遠隔支援オペレータ2の割り当てが行われていない車両1(第1車両)と遠隔支援オペレータ2の割り当てが行われている車両1(第2車両)について、T131又はT132に係る処理が実行される。つまり、遠隔支援オペレータ2の割り当てが行われていない第1車両の割当優先度が、遠隔支援オペレータ2の割り当てが行われている第2車両の割当優先度より高い場合、第2車両の遠隔支援オペレータ2が第1車両に割り当てられる。
【0106】
このように管理サーバ100において処理が実行される。またこのように管理サーバ100により、遠隔支援要求を発信する複数の車両1に対する複数の遠隔支援オペレータ2の割り当てを管理するオペレータ管理方法が実現される。あるいは、オペレータ管理方法をコンピュータに実行させるオペレータ管理プログラムとして実現することも可能である。
【0107】
3-3.遠隔支援装置
次に遠隔支援装置200において実行される処理について説明する。
図15及び
図16は、遠隔支援装置200において実行される処理を示すシーケンス図である。ここで、
図15は、管理サーバ100により遠隔支援オペレータの割り当てが行われたときの処理を示す。
図16は、遠隔支援オペレータ2が運転判断を入力したときの処理を示す。
【0108】
まず
図15を参照する。オペレータ割当受信処理部P235が車両IDを受信したことを受けて、遠隔支援装置200は、受信した車両IDが示す車両1と通信を開始する。オペレータ割当受信処理部P235は、受信した車両IDを、運転計画受信処理部P234及び映像データ受信処理部P233に通知する。
【0109】
遠隔支援オペレータ2の割り当てが行われている間、以下の処理が実行される(T210)。運転計画受信処理部P234は、遠隔支援の対象とする車両1から運転計画を受信する。そして、運転計画受信処理部P234は、受信した運転計画を、映像生成処理部P221及び支援状況送信処理部P231に通知する。映像データ受信処理部P233は、遠隔支援の対象とする車両1から映像データを受信する。そして、映像データ受信処理部P233は、受信した映像データを、映像生成処理部P221に通知する。映像生成処理部P221は、通知された運転計画及び映像データに基づいて表示信号を生成する。そして、映像生成処理部P221は、表示信号を映像表示部212に通知する。映像表示部212は、通知された表示信号に従って映像を表示する。
【0110】
支援状況送信処理部P231は、運転計画が通知されたことを受けて、運転計画に係る支援要求項目を確認する。ここで、遠隔支援オペレータ2が運転判断を入力した結果、支援要求項目が処理された場合、車両1において運転計画が更新されている。つまり、運転計画に係る支援要求項目を確認することにより、支援要求項目が処理されたか否かを確認することができる。そして、支援要求項目が処理されたことを確認したとき(T220)、支援状況送信処理部P231は、支援状況を送信する。
【0111】
次に
図16を参照する。運転判断入力部211は、遠隔支援オペレータ2の運転判断の入力を受け付けたとき、受け付けた運転判断を運転判断送信処理部P232に通知する。運転判断送信処理部P232は、通知された運転判断を、遠隔支援の対象とする車両1に送信する。T210及びT220に係る処理は、
図15において説明した処理と同様である。
【0112】
4.効果
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の車両1の各々について遠隔支援要求の内容に応じた割当優先度の設定又は更新が行われる。そして、複数の車両1の数が複数の遠隔支援オペレータ2の数より多い場合であって、かつ遠隔支援オペレータ2の割り当てが行われていない第1車両の割当優先度が遠隔支援オペレータ2の割り当てが行われている第2車両の割当優先度より高い場合、第2車両に割り当てられている遠隔支援オペレータ2が第1車両に割り当てられる。これにより、遠隔支援の緊急性の度合いが高い車両1を優先して処理するように複数の遠隔支援オペレータ2の割り当てを行うことができる。延いては、緊急時の対応の迅速化や交通流の円滑化等の観点を基に、適切に複数の遠隔支援オペレータ2の割り当てを行うことができる。
【0113】
5.変形例
本実施形態に係るオペレータ管理システム10は、以下のように変形した態様を採用しても良い。
【0114】
管理サーバ100は、特定の指標に基づいて、支援優先度に基づいて算出した割当優先度を調整するように構成されていても良い。例えば、管理サーバ100は、遠隔支援オペレータ2の割り当てが行われていない期間の長さを指標として、支援優先度に基づいて算出した割当優先度にさらに倍率をかけるように構成されていても良い。これにより、遠隔支援オペレータ2の割り当てが行われていない第1車両の割当優先度を、割り当てが行われていない期間が長いほど高くすることができる。延いては、一向に遠隔支援オペレータ2の割り当てが行われないという事態を回避することができる。
【0115】
その他の指標として、車両1が位置する道路幅の狭さ、運行スケジュールとの乖離の程度、車両1の周囲の状況等を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 車両
2 遠隔支援オペレータ
10 オペレータ管理システム
100 管理サーバ
110 メモリ
111 コンピュータプログラム(オペレータ管理プログラム)
112 インストラクション
120 プロセッサ