(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】車両検査システム、及び車両検査方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20250218BHJP
【FI】
G01M17/007 H
(21)【出願番号】P 2022174705
(22)【出願日】2022-10-31
【審査請求日】2024-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立住 優介
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-191807(JP,A)
【文献】特開2014-195170(JP,A)
【文献】特開2013-107439(JP,A)
【文献】特開2022-42167(JP,A)
【文献】特開2004-247979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0103730(US,A1)
【文献】中国実用新案第206961189(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00 - 1/31
G01M 11/00 - 11/08
G01M 17/00 - 17/10
G08G 1/16
H04N 7/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を検査する車両検査システムであって、
前記車両の前方に搭載された第1カメラと前記車両の後方に搭載された第2カメラとに接続されたコンピュータを備え、
前記コンピュータは、
前記車両の走行中において前記第1カメラにより撮影された第1カメラ画像を取得するとともに、前記第1カメラによる前記第1カメラ画像の撮影と同時に前記第2カメラにより撮影された第2カメラ画像を取得し、
前記第1カメラ画像から第1光軸座標値を算出し、
前記第2カメラ画像から第2光軸座標値を算出し、
前記第1光軸座標値と前記第2光軸座標値のそれぞれについて異常の有無を判定し、
前記第1光軸座標値の異常の有無と、前記第2光軸座標値の異常の有無との組み合わせに基づいて、前記第1カメラ、前記第2カメラ、及び前記車両の車体の中から前記第1光軸座標値と前記第2光軸座標値の一方又は両方に異常を生じさせている異常要因箇所を特定するように構成されている
ことを特徴とする車両検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両検査システムであって、
前記コンピュータは、
前記第1光軸座標値に異常が有り前記第2光軸座標値に異常が無い場合、前記異常要因箇所を前記第1カメラと特定し、
前記第2光軸座標値に異常が有り前記第1光軸座標値に異常が無い場合、前記異常要因箇所を前記第2カメラと判定し、
前記第1光軸座標値と前記第2光軸座標値の両方に異常が有る場合、前記異常要因箇所を前記車体と特定するように構成されている
ことを特徴とする車両検査システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両検査システムであって、
更に、前記車体に設けられたハイトセンサを含み、
前記コンピュータは、
前記車体が前記異常要因箇所と特定され、且つ、前記ハイトセンサから取得された車高が閾値以上である場合、異常要因を前記車体の構造変形と推定し、
前記車体が前記異常要因箇所と特定され、且つ、前記車高が前記閾値未満である場合、前記異常要因を前記車両の過積載と推定するように構成されている
ことを特徴とする車両検査システム。
【請求項4】
請求項2に記載の車両検査システムであって、
更に、前記第1カメラの姿勢角を計測する第1センサと、前記第2カメラの姿勢角を計測する第2センサと、を備え、
前記コンピュータは、
前記第1カメラが前記異常要因箇所と特定され、且つ、前記第1センサから取得された第1姿勢角が許容範囲内である場合、異常要因を前記第1カメラの内部の故障と推定し、
前記第1カメラが前記異常要因箇所と特定され、且つ、前記第1姿勢角が前記許容範囲外である場合、前記異常要因を前記車体に取り付けられた前記第1カメラの位置のずれと推定し、
前記第2カメラが前記異常要因箇所と特定され、且つ、前記第2センサから取得された第2姿勢角が前記許容範囲内である場合、前記異常要因を前記第2カメラの内部の故障と推定し、
前記第2カメラが前記異常要因箇所と特定され、且つ、前記第2姿勢角が前記許容範囲外である場合、前記異常要因を前記車体に取り付けられた前記第2カメラの位置のずれと推定するように構成されている
ことを特徴とする車両検査システム。
【請求項5】
車両を検査する車両検査方法であって、
前記車両の走行中において前記車両の前方に搭載された第1カメラにより撮影された第1カメラ画像を取得するとともに、前記第1カメラによる前記第1カメラ画像の撮影と同時に前記車両の後方に搭載された第2カメラにより撮影された第2カメラ画像を取得することと、
前記第1カメラ画像から第1光軸座標値を算出することと、
前記第2カメラ画像から第2光軸座標値を算出することと、
前記第1光軸座標値と前記第2光軸座標値のそれぞれについて異常の有無を判定することと、
前記第1光軸座標値の異常の有無と、前記第2光軸座標値の異常の有無との組み合わせに基づいて、前記第1カメラ、前記第2カメラ、及び前記車両の車体の中から前記第1光軸座標値と前記第2光軸座標値の一方又は両方に異常を生じさせている異常要因箇所を特定することと、
を含む
ことを特徴とする車両検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両を検査する検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、カメラの光軸ズレ(光軸異常)を走行環境下においてリアルタイムに検出することができる車外監視装置を開示する。この技術では、車両の前方を撮像した画像に基づいて、白線が1次以上の近似式で近似される。そして、当該近似式の定数に基づいて、車両が設定時間走行したときの白線に対する車両の横位置の変化量(第1の横方向移動量)が算出される。また、当該近似式の1次係数に基づいて、車両が設定時間走行したときの白線に対する車両の横位置の変化量(第2の横方向移動量)が算出される。更に、第1の横方向移動量と第2の横方向移動量との差が予め設定された閾値以上である場合、水平方向におけるカメラの光軸異常が発生していると判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カメラの光軸異常が検出された場合、当該光軸異常が発生した要因として、カメラの故障や、車両に取り付けられたカメラの位置のずれ等が考えられる。この場合、販売店において当該光軸異常を生じさせている異常要因箇所を特定するのは困難であり、車両の診断に要する期間が長期化するおそれがある。また、修理を必要としない箇所にまで修理が及ぶおそれがある。
【0005】
本開示の1つの目的は、カメラの光軸異常を検出した場合、当該光軸異常を生じさせている異常要因箇所を特定することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の観点は、車両を検査する車両検査システムに関連する。車両検査システムは、車両の前方に搭載された第1カメラと車両の後方に搭載された第2カメラとに接続されたコンピュータを備える。コンピュータは、車両の走行中において第1カメラにより撮影された第1カメラ画像を取得するとともに、第1カメラによる第1カメラ画像の撮影と同時に第2カメラにより撮影された第2カメラ画像を取得する。また、コンピュータは、第1カメラ画像から第1光軸座標値と、第2カメラ画像から第2光軸座標値とを算出する。更に、コンピュータは、第1光軸座標値と第2光軸座標値のそれぞれについて異常の有無を判定する。また更に、コンピュータは、第1光軸座標値の異常の有無と、第2光軸座標値の異常の有無との組み合わせに基づいて、第1カメラ、第2カメラ、及び車両の車体の中から第1光軸座標値と第2光軸座標値の一方又は両方に異常を生じさせている異常要因箇所を特定するように構成されている。
【0007】
本開示の第2の観点は、車両を検査する車両検査方法に関連する。車両検査方法は、車両の走行中において車両の前方に搭載された第1カメラにより撮影された第1カメラ画像を取得するとともに、第1カメラによる第1カメラ画像の撮影と同時に車両の後方に搭載された第2カメラにより撮影された第2カメラ画像を取得することと、第1カメラ画像から第1光軸座標値を算出することと、第2カメラ画像から第2光軸座標値を算出することと、第1光軸座標値と第2光軸座標値のそれぞれについて異常の有無を判定することと、第1光軸座標値の異常の有無と、第2光軸座標値の異常の有無との組み合わせに基づいて、第1カメラ、第2カメラ、及び車両の車体の中から第1光軸座標値と第2光軸座標値の一方又は両方に異常を生じさせている異常要因箇所を特定することと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、車両検査システムは、車両の走行中に取得された第1カメラ画像及び第2カメラ画像に基づいて、第1光軸座標値及び第2光軸座標値を取得する。また、車両検査システムは、第1光軸座標値及び第2光軸座標値のそれぞれについて異常の有無を判定する。更に、車両検査システムは、第1光軸座標値の異常の有無と、第2光軸座標値の異常の有無との組み合わせに基づいて、第1カメラ、第2カメラ、及び車両の車体の中から第1光軸座標値と第2光軸座標値の一方又は両方に異常を生じさせている異常要因箇所を特定する。これにより、光軸異常が発生した場合であっても、異常要因箇所が短時間で特定され、更に、修理を必要とする箇所に限定して修理される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る車両検査システムの概要及び具体例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る車両検査システムの処理例を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態2に係る車両検査システムの概要及び具体例を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態2に係る車両検査システムの処理例を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態3に係る車両検査システムの概要及び具体例を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態3に係る車両検査システムの処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態に係る車両検査システム、及び車両検査方法について説明する。
【0011】
1.実施の形態1
1-1.概要
図1は、実施の形態1に係る車両検査システム10の概要及び具体例を示すブロック図である。
図1(A)に示すように、車両検査システム10は、車両1に搭載され、車両1を検査する。車両検査システム10が搭載される車両1は、自動運転車両であってもよい。車両検査システム10は、第1カメラ20、第2カメラ30、及びコンピュータ100を含んでいる。
【0012】
第1カメラ20は、車両1の前方に搭載され、車両1の周囲の状況を検出する。第2カメラ30は、車両1の後方に搭載され、車両1の周囲の状況を検出する。
【0013】
コンピュータ100は、第1カメラ20と第2カメラ30とに少なくとも接続されている。コンピュータ100は、1又は複数のプロセッサ110(以下、単にプロセッサ110と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置120(以下、単に記憶装置120と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ110は、各種処理を実行する。例えば、プロセッサ110は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。記憶装置120は、各種情報を格納する。記憶装置120としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等が例示される。典型的には、コンピュータ100は、車両1に搭載されている。
【0014】
記憶装置120は、車両検査プログラム121、第1カメラ取得情報122、第2カメラ取得情報123、等が格納される。
【0015】
車両検査プログラム121は、車両1を検査するためのコンピュータプログラムである。プロセッサ110が車両検査プログラム121を実行することにより、コンピュータ100による各種処理が実現される。車両検査プログラム121は、コンピュータ100が読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。
【0016】
第1カメラ取得情報122は、車両1の走行中において第1カメラ20により撮影されたカメラ画像(以下、第1カメラ画像と称す)を含んでいる。また、第2カメラ取得情報123は、車両1の走行中において第2カメラ30により撮影されたカメラ画像(以下、第2カメラ画像と称す)を含んでいる。尚、第2カメラ画像は、第1カメラ20による第1カメラ画像の撮影と同時に第2カメラ30により撮影される。
【0017】
更に、第1カメラ取得情報122及び第2カメラ取得情報123は、車両1の周囲の物体に関する物体情報を含む。車両1の周囲の物体としては、歩行者、他車両、白線、道路構造物、障害物、等が例示される。他の例として、カメラによって得られた画像を解析することによって、物体を認識、識別することもできる。
【0018】
1-2.具体例
1-2-1.光軸異常の有無の判定例
プロセッサ110は、第1カメラ20及び第2カメラ30の光軸異常の有無を判定する。以下、光軸異常の有無の判定例の詳細について説明する。
【0019】
プロセッサ110は、第1カメラ取得情報122及び第2カメラ取得情報123を取得し、第1カメラ20及び第2カメラ30のそれぞれの光軸座標値を算出する。具体的には、プロセッサ110は、
図1(B)に示すように、第1カメラ画像21に基づいて第1カメラ20の光軸座標値である第1光軸座標値FOE1を算出する。また、プロセッサ110は、
図1(C)に示すように、第2カメラ画像31に基づいて第2カメラ30の光軸座標値である第2光軸座標値FOE2を算出する。
【0020】
第1光軸座標値FOE1及び第2光軸座標値FOE2とは、例えば、無限遠距離の点(消失点(FOE:Focus Optical Expansion)とも称す)を意味する。第1光軸座標値FOE1及び第2光軸座標値FOE2の算出例としては、参考文献(特開2011-081613号公報)の技術が挙げられる。この文献によれば、車両1の周囲に存在する道路構造物等の特徴点から得られるオプティカルフローの交点が光軸座標値(FOE)とされる。
【0021】
更に、プロセッサ110は、算出された第1光軸座標値FOE1及び第2光軸座標値FOE2のそれぞれについて光軸異常の有無を判定する。
【0022】
まず、第1光軸座標値FOE1における光軸異常の有無の判定について説明する。
図1(B)に示すように、第1カメラ取得情報122は、更に、第1所定領域IMG_A1の情報を含んでいる。第1所定領域IMG_A1とは、第1カメラ画像21において光軸座標値が位置すべき位置を中心に設定された所定のサイズの領域であり、光軸異常でないことを示す画像領域を意味する。従って、プロセッサ110は、第1光軸座標値FOE1が第1所定領域IMG_A1に含まれる場合、光軸異常の有無を「無し」と判定する。一方、プロセッサ110は、第1光軸座標値FOE1が第1所定領域IMG_A1に含まれない場合、光軸異常の有無を「有り」と判定する。
【0023】
続いて、第2光軸座標値FOE2における光軸異常の有無の判定について説明する。
図1(C)に示すように、第2カメラ取得情報123は、更に、第2所定領域IMG_A2の情報を含んでいる。第2所定領域IMG_A2とは、第2カメラ画像31において光軸座標値が位置すべき位置を中心に設定された所定のサイズの領域であり、光軸異常でないことを示す画像領域を意味する。従って、プロセッサ110は、第2光軸座標値FOE2が第2所定領域IMG_A2に含まれる場合、光軸異常の有無を「無し」と判定する。一方、プロセッサ110は、第2光軸座標値FOE2が第2所定領域IMG_A2に含まれない場合、光軸異常の有無を「有り」と判定する。尚、第2所定領域IMG_A2のサイズは、第1所定領域IMG_A1と異なるサイズであってもよいし、同じサイズであってもよい。
【0024】
尚、光軸異常の有無は、光軸座標値(FOE)が異常となる回数に基づいて判定されてもよい。例えば、第1光軸座標値FOE1が第1所定領域IMG_A1からはみ出た回数が設定された基準回数以上の場合、光軸異常の有無は「有り」と判定される。基準回数は、第1光軸座標値FOE1と第2光軸座標値FOE2のそれぞれで異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0025】
1-2-2.異常要因箇所の判定例
プロセッサ110は、光軸異常の有無の判定が行われた後、当該光軸異常を生じさせている異常要因箇所を特定する。具体的には、第1光軸座標値FOE1の異常の有無と、第2光軸座標値FOE2の異常の有無との組み合わせに基づいて、異常要因箇所が特定される。例えば、
図1(D)に示すように、第1光軸座標値FOE1と第2光軸座標値FOE2の一方に異常が生じている場合(パターン2及びパターン3)を考える。この場合、異常が生じている光軸座標値に対応するカメラが異常要因箇所である可能性が高い。従って、パターン2の場合、異常要因箇所は第2カメラ30と判定され、パターン3の場合、異常要因箇所は第1カメラ20と判定される。
【0026】
一方、
図1(D)のパターン4に示すように、第1光軸座標値FOE1と第2光軸座標値FOE2の両方に異常が生じている場合を考える。この場合、第1光軸座標値FOE1と第2光軸座標値FOE2の両方が異常であっても、第1カメラ20及び第2カメラ30の両方が異常要因箇所であることは考え難い。むしろ、第1カメラ20及び第2カメラ30が取り付けられている車両の車体に起因して第1光軸座標値FOE1と第2光軸座標値FOE2の両方が異常となっている可能性が高い。従って、パターン4の場合、異常発生箇所は車両1の車体と判定される。
【0027】
このように、実施の形態1に係る車両検査システム10では、第1光軸座標値FOE1及び第2光軸座標値FOE2のそれぞれについて異常の有無が判定される。更に、車両検査システム10によれば、第1光軸座標値FOE1の異常の有無と、第2光軸座標値FOE2の異常の有無との組み合わせに基づいて、第1カメラ20、第2カメラ30、及び車両の車体の中から第1光軸座標値FOE1と第2光軸座標値FOE2の一方又は両方に異常を生じさせている異常要因箇所が特定される。これにより、光軸異常が発生した場合であっても、異常要因箇所を短時間で特定することができる。更に、修理を必要とする箇所に限定して修理を行うことが可能となる。
【0028】
1-3.処理例
図2は、実施の形態1に係る車両検査システム10の処理例を示すフローチャートである。
【0029】
ステップS100において、プロセッサ110は、第1カメラ取得情報122、第2カメラ取得情報123、等の各種情報を取得する。その後、処理はステップS110に進む。
【0030】
ステップS110において、プロセッサ110は、第1カメラ取得情報122に基づいて第1光軸座標値FOE1を算出し、第2カメラ取得情報123に基づいて第2光軸座標値FOE2を算出する。その後、処理はステップS120に進む。
【0031】
ステップS120において、プロセッサ110は、第1光軸座標値FOE1の異常の有無を判定し、第2光軸座標値FOE2の異常の有無を判定する。その後、処理はステップS130に進む。
【0032】
ステップS130において、プロセッサ110は、第1光軸座標値FOE1に異常が有り、且つ、第2光軸座標値FOE2に異常が有る条件を満たすか否かを判定する。当該条件を満たすと判定された場合(ステップS130;Yes)、処理はステップS140に進む。それ以外の場合(ステップS130;No)、処理はステップS150に進む。
【0033】
ステップS140において、プロセッサ110は、第1光軸座標値FOE1と第2光軸座標値FOE2の両方に異常を生じさせている異常要因箇所を車両の車体と判定する。
【0034】
ステップS150において、プロセッサ110は、第1光軸座標値FOE1に異常が有るか否かを判定する。第1光軸座標値FOE1に異常が有ると判定された場合(ステップS150;Yes)、処理はステップS160に進む。それ以外の場合(ステップS150;No)、処理はステップS170に進む。
【0035】
ステップS160において、プロセッサ110は、第1光軸座標値FOE1にのみ異常を生じさせている異常要因箇所を第1カメラ20と判定する。
【0036】
ステップS170において、プロセッサ110は、第2光軸座標値FOE2にのみ異常を生じさせている異常要因箇所を第2カメラ30と判定する。
【0037】
2.実施の形態2
2-1.概要
実施の形態1に係る車両検査システム10では、第1光軸座標値FOE1と第2光軸座標値FOE2の両方に異常が有る場合、異常要因箇所は車両1の車体であると判定される。しかし、異常要因箇所と判定された車体の異常要因は様々である。従って、実施の形態2に係る車両検査システム10によれば、異常要因箇所が車体と判定された場合、更に、車体の異常要因を推定する。これにより、実施の形態1の効果に加えて、修理を必要とする箇所を明確にすることが可能となる。以下、実施の形態1と相違する点を中心に説明する。
【0038】
ここで、異常要因箇所が車体である場合に推定される異常要因について考える。車体の後方部に位置する後部座席やトランクルームの総積載量が最大積載量を超えている場合(すなわち、車両1が過積載の状態である場合)、車体を水平に維持することができず、車体の後方部が水平に対して地面側に沈むように傾くことが想定される。よって、車体の異常要因の一例としては、車体の後方部の車高が著しく低くなることが想定される。尚、車体の後方部には、典型的には、車高を計測することができるハイトセンサが設けられている。従って、実施の形態2に係る車両検査システム10によれば、ハイトセンサから得られた車高の情報に基づいて、異常要因箇所が車体である場合の異常要因が車両1の過積載であるか否かが推定される。
【0039】
図3は、実施の形態2に係る車両検査システム10の概要及び具体例を示すブロック図である。具体的には、
図3(A)に示すように、車両検査システム10は、更に、ハイトセンサ40を含んでいる。ハイトセンサ40は、上述したように、車体に設けられ、車体の車高を計測するセンサである。記憶装置120は、ハイトセンサ40から取得された車高情報124が更に格納される。
【0040】
2-2.具体例
上述した異常要因箇所の判定例において、異常要因箇所が車体であると判定された場合、プロセッサ110は、車高情報124に基づいて、異常要因の推定を行う。具体的には、
図3(B)に示すように、プロセッサ110は、車体が異常要因箇所と特定され、且つ、ハイトセンサ40から取得された車高が閾値未満である場合(パターン4(a))、異常要因を車両1の過積載と推定する。一方、ハイトセンサ40から取得された車高が閾値以上である場合(パターン4(b))、つまり、異常要因が車両1の過積載でない場合、車体の構造が変形していることが想定される。従って、この場合、プロセッサ110は、異常要因を車体の構造変形と推定する。
【0041】
2-3.処理例
図4は、実施の形態2に係る車両検査システム10の処理例を示すフローチャートである。
【0042】
ステップS200において、プロセッサ110は、上述したステップS140において異常要因箇所が車体と判定された場合、車高情報124を取得する。その後、処理はステップS210に進む。
【0043】
ステップS210において、プロセッサ110は、車高が閾値未満か否かを判定する。車高が閾値未満と判定された場合(ステップS210;Yes)、処理はステップS220に進む。それ以外の場合(ステップS210;No)、処理はステップS230に進む。
【0044】
ステップS220において、プロセッサ110は、異常要因を車両1の過積載と推定する。
【0045】
ステップS230において、プロセッサ110は、異常要因を車体の構造変形と推定する。
【0046】
3.実施の形態3
3-1.概要
実施の形態1に係る車両検査システム10では、第1光軸座標値FOE1と第2光軸座標値FOE2の一方に異常が有る場合、異常要因箇所は異常を有する光軸座標値に対応するカメラ(すなわち、第1カメラ20あるいは第2カメラ30)であると判定される。しかし、カメラの異常要因は様々である。従って、実施の形態3に係る車両検査システム10によれば、異常要因箇所が第1カメラ20又は第2カメラ30と判定された場合、更に、カメラの異常要因を推定する。これにより、実施の形態1の効果に加えて、修理を必要とする箇所を明確にすることが可能となる。以下、実施の形態1と相違する点を中心に説明する。
【0047】
ここで、異常要因箇所が第1カメラ20又は第2カメラ30である場合の異常要因について考える。車両1に搭載されたカメラは、車体に固定して取り付けられている。このため、カメラの異常要因の一例としては、車両1の走行中における車両1の振動等により、車体に取り付けられているカメラの位置がずれることが想定される。従って、実施の形態2に係る車両検査システム10によれば、異常要因箇所が第1カメラ20又は第2カメラ30である場合、カメラの位置のずれを検出した情報に基づいて、異常要因がカメラの位置のずれか否かが推定される。
【0048】
図5は、実施の形態3に係る車両検査システム10の概要及び具体例を示すブロック図である。具体的には、
図5(A)に示すように、車両検査システム10は、更に、第1センサ50、及び第2センサ60を含んでいる。第1センサ50は、第1カメラ20に取り付けられ、第1カメラ20の姿勢角を計測するセンサである。第2センサ60は、第2カメラ30に取り付けられ、第2カメラ30の姿勢角を計測するセンサである。記憶装置120は、第1センサ50から取得された第1姿勢角情報125と、第2センサ60から取得された第2姿勢角情報126とが更に格納される。姿勢角を計測するセンサとしては、ジャイロセンサ、等が例示される。また、姿勢角とは、例えば、Yaw方向、Pitch方向、及びRoll方向の回転角で示される。
【0049】
3-2.具体例
上述した異常要因箇所の判定例において、異常要因箇所が第1カメラ20であると判定された場合、プロセッサ110は、第1姿勢角情報125に基づいて、異常要因の推定を行う。具体的には、
図5(B)に示すように、プロセッサ110は、第2カメラ30が異常要因箇所と特定され、且つ、第2センサ60から取得された第2カメラ30の姿勢角(第2姿勢角)が許容範囲外である場合(パターン2(a))、異常要因を車体に取り付けられた第2カメラ30の位置のずれと推定する。一方、第2姿勢角が許容範囲内である場合(パターン2(b))、第2カメラ30の内部が故障していることが想定される。従って、この場合、プロセッサ110は、異常要因を第2カメラ30の内部の故障と推定する。尚、上述した異常要因箇所の判定例において、異常要因箇所が第1カメラ20であると判定された場合、第2カメラ30と同様の処理が行われるので、ここでは説明を省略する。
【0050】
3-3.処理例
図6は、実施の形態3に係る車両検査システム10の処理例を示すフローチャートである。具体的には、
図6(A)は、第1カメラ20の異常要因を推定する処理例のフローチャートであり、
図6(B)は、第2カメラ30の異常要因を推定する処理例のフローチャートである。
【0051】
図6(A)のフローチャートによれば、ステップS300において、プロセッサ110は、上述したステップS160において異常要因箇所が第1カメラ20と判定された場合、第1姿勢角情報125を取得する。その後、処理はステップS310に進む。
【0052】
ステップS310において、プロセッサ110は、第1姿勢角が許容範囲外か否かを判定する。第1姿勢角が許容範囲外と判定された場合(ステップS310;Yes)、処理はステップS320に進む。それ以外の場合(ステップS310;No)、処理はステップS330に進む。
【0053】
ステップS320において、プロセッサ110は、異常要因を第1カメラ20の位置のずれと推定する。
【0054】
ステップS330において、プロセッサ110は、異常要因を第1カメラ20の内部の故障と推定する。
【0055】
尚、
図6(B)のフローチャートに示すステップS400-ステップS430では、上述したステップS300-ステップS330と同様の処理が行われるので、ここでは説明を省略する。
【0056】
4.その他の実施形態
4-1.第1の例
その他の実施形態に係る車両検査システム10によれば、上述した異常要因の推定が行われた後、修理を必要とする箇所の修理を促す警報が乗員に通知される。これにより、販売店等による診断及び修理を早期に行うことが可能となる。修理を必要とする箇所とは、異常要因が第1カメラ20の内部の故障あるいは位置のずれであることと、異常要因が第2カメラ30の内部の故障あるいは位置のずれであることと、異常要因が車体の構造変形であることと、のうちいずれかを含むことを意味する。
【0057】
4-2.第2の例
その他の実施形態に係る車両検査システム10によれば、異常要因箇所の判定結果と異常要因の推定結果の少なくとも一方の結果がエンジンを再起動させても保持される。これにより、エンジンの再起動により異常要因箇所が正常に復帰した場合であっても、一度異常と判定された結果の情報が乗員に通知され続ける。従って、販売店等による診断及び修理を早期に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1…車両, 10…車両検査システム, 20…第1カメラ, 21…第1カメラ画像, 30…第2カメラ, 31…第2カメラ画像, 40…ハイトセンサ, 50…第1センサ, 60…第2センサ, 100…コンピュータ, 110…プロセッサ, 120…記憶装置, 121…車両検査プログラム, 122…第1カメラ取得情報, 123…第2カメラ取得情報, 124…車高情報, 125…第1姿勢角情報, 126…第2姿勢角情報, FOE1…第1光軸座標値, FOE2…第2光軸座標値, IMG_A1…第1所定領域, IMG_A2…第2所定領域