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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】高周波回路および無線装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/203 20060101AFI20250218BHJP
   H01P 1/205 20060101ALI20250218BHJP
   H01P 3/08 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
H01P1/203
H01P1/205 B
H01P3/08 100
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022541424
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2021026966
(87)【国際公開番号】W WO2022030238
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2024-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2020134329
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】宮川 由大
(72)【発明者】
【氏名】李 超然
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-368502(JP,A)
【文献】特開2001-044712(JP,A)
【文献】特開2013-251863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/203
H01P 1/205
H01P 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体である第1導電体が形成された第1グランド層と、
導電体である第2導電体が形成された第2グランド層と、
第1の導電パターンが形成された導電パターン層とを備え、
前記第1グランド層、前記第2グランド層および前記導電パターン層は、積層されており、
前記導電パターン層から前記第2グランド層までの距離は、前記導電パターン層から前記第1グランド層までの距離よりも長く、
前記導電パターン層は、前記第2導電体と対向する第1の領域と、前記第1導電体と対向する第2の領域とを含み、
前記第1グランド層、前記第2グランド層および前記導電パターン層の積層方向において、前記第1導電体および前記第2導電体のうちの前記第1の領域との間の距離が最も短い前記導電体は、前記第2導電体であり、
前記積層方向において、前記第1導電体および前記第2導電体のうちの前記第2の領域との間の距離が最も短い前記導電体は、前記第1導電体であり、
前記第1の導電パターンの少なくとも一部分は、前記第1の領域に設けられ、
前記導電パターン層には、前記第1の導電パターンとは別の第2の導電パターンがさらに形成されており、
前記第2の導電パターンは、前記第2の領域に設けられ、
前記第1の導電パターンは、第1のフィルタの一部を構成し、
前記第2の導電パターンは、第2のフィルタの一部を構成し、
前記第2のフィルタの比帯域は、前記第1のフィルタの比帯域よりも狭い、高周波回路。
【請求項2】
前記第1の導電パターンは、前記第1の領域および前記第2の領域にまたがって設けられる、請求項に記載の高周波回路。
【請求項3】
前記第1の領域は、前記第1の導電パターンの特性インピーダンスが対象信号の周波数に対して一定値となるように設けられる、請求項1または請求項2に記載の高周波回路。
【請求項4】
前記第1の導電パターンの少なくとも一部分の特性インピーダンスは、前記第1の領域から前記第2導電体までの距離によって決定され、
前記第2の導電パターンの特性インピーダンスは、前記第2の領域から前記第1導電体までの距離によって決定される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高周波回路。
【請求項5】
前記積層方向において前記第1の領域に対向する前記第1グランド層の部分には、前記第1導電体が設けられない空洞が形成され、
前記積層方向において前記第2の領域に対向する前記第1グランド層の部分には、前記第1導電体が形成される、請求項4に記載の高周波回路。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の高周波回路を備える、無線装置。
【請求項7】
導電体である第1導電体が形成された第1グランド層と、
導電体である第2導電体が形成された第2グランド層と、
第1の導電パターンが形成された導電パターン層とを備え、
前記第1グランド層、前記第2グランド層および前記導電パターン層は、積層されており、
前記導電パターン層から前記第2グランド層までの距離は、前記導電パターン層から前記第1グランド層までの距離よりも長く、
前記導電パターン層は、前記第2導電体と対向する第1の領域と、前記第1導電体と対向する第2の領域とを含み、
前記第1グランド層、前記第2グランド層および前記導電パターン層の積層方向において、前記第1導電体および前記第2導電体のうちの前記第1の領域との間の距離が最も短い前記導電体は、前記第2導電体であり、
前記積層方向において、前記第1導電体および前記第2導電体のうちの前記第2の領域との間の距離が最も短い前記導電体は、前記第1導電体であり、
前記第1の導電パターンの少なくとも一部分は、前記第1の領域に設けられ、
前記導電パターン層には、前記第1の導電パターンとは別の第2の導電パターンがさらに形成されており、
前記第2の導電パターンは、前記第2の領域に設けられ、
前記第1の導電パターンは、第1のフィルタの一部を構成し、
前記第2の導電パターンは、第2のフィルタの一部を構成し、
前記第2のフィルタの比帯域は、前記第1のフィルタの比帯域よりも狭く、
前記第1のフィルタは、前記第1の導電パターンの一部により構成される低インピーダンス部と、前記第1の導電パターンの他の一部により構成される高インピーダンス部とを含むステップインピーダンス共振器である、高周波回路。
【請求項8】
導電体である第1導電体が形成された第1グランド層と、
導電体である第2導電体が形成された第2グランド層と、
第1の導電パターンが形成された導電パターン層とを備え、
前記第1グランド層、前記第2グランド層および前記導電パターン層は、積層されており、
前記導電パターン層から前記第2グランド層までの距離は、前記導電パターン層から前記第1グランド層までの距離よりも長く、
前記導電パターン層は、前記第2導電体と対向する第1の領域と、前記第1導電体と対向する第2の領域を含み、
前記第1グランド層、前記第2グランド層および前記導電パターン層の積層方向において、前記第1導電体および前記第2導電体のうちの前記第1の領域との間の距離が最も短い前記導電体は、前記第2導電体であり、
前記積層方向において、前記第1導電体および前記第2導電体のうちの前記第2の領域との間の距離が最も短い前記導電体は、前記第1導電体であり、
前記第1の導電パターンの少なくとも一部分は、前記第1の領域に設けられ、
前記導電パターン層には、前記第1の導電パターンとは別の第2の導電パターンがさらに形成されており、
前記第2の導電パターンは、前記第2の領域に設けられ、
前記第1の導電パターンは、第1のフィルタの一部を構成し、
前記第2の導電パターンは、第2のフィルタの一部を構成し、
前記第2のフィルタの比帯域は、前記第1のフィルタの比帯域よりも狭く、
前記第1のフィルタは、前記第1の導電パターンの一部により構成される低インピーダンス部と、前記第1の導電パターンの他の一部により構成される高インピーダンス部とを含むステップインピーダンス共振器であり、
前記高インピーダンス部は、前記第1の領域に設けられ、
前記低インピーダンス部は、前記第2の領域に設けられる、高周波回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高周波回路および無線装置に関する。
この出願は、2020年8月7日に出願された日本出願特願2020-134329号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【背景技術】
【0002】
特開2010-87830号公報(特許文献1)は、SIRを多層基板に実装した無線装置を開示する。この無線装置では、2つのSIRがそれぞれ、多層基板の異なる層に形成される。多層基板の積層方向から見たとき、2つのSIRは重なるように形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-87830号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の高周波回路は、導電体が形成された第1グランド層と、導電体が形成された第2グランド層と、第1の導電パターンが形成された導電パターン層とを備え、前記第1グランド層、前記第2グランド層および前記導電パターン層は、積層されており、前記導電パターン層は、前記第1グランド層、前記第2グランド層および前記導電パターン層の積層方向において、前記第2グランド層に形成された前記導電体までの距離が、前記第1グランド層に形成された前記導電体までの距離よりも長い領域である第1の領域を含み、前記第1の導電パターンの少なくとも一部分は、前記第1の領域に設けられる。
【0005】
本開示の一態様は、高周波回路の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、高周波回路を含む通信システムとして実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、導電パターンで形成されたフィルタを概略的に示す断面図である。
図2図2は、導電パターンで形成されたバンドパスフィルタの一例を概略的に示す平面図である。
図3図3は、本開示の実施の形態に係る無線装置の構成を示す平面図である。
図4図4は、図3中のIV-IV線での断面図である。
図5図5は、本開示の実施の形態の変形例に係る無線装置の構成を示す平面図である。
図6図6は、図5中のVI-VI線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
無線装置は、たとえば受信した電波から特定の周波数帯の成分を抽出し、各種信号処理を行う。特定の周波数帯の信号波を抽出する手段として、フィルタがある。
【0008】
フィルタには様々な種類がある一方で、無線装置の小型化の観点から、ステップインピーダンス共振器(SIR:Stepped Impedance Resonator)がフィルタとして用いられることがある。SIRは、基板に形成された導電パターンにより構成されるパターンフィルタの一種であり、パターン幅の広い低インピーダンス部とパターン幅の狭い高インピーダンス部とを組み合わせた構成となっている。
【0009】
[本開示が解決しようとする課題]
多層基板において、2つのSIRを同一の層に形成する場合、双方のSIRの配置スペースを確保するために、多層基板のサイズを大きくする必要がある。これに対し、特許文献1に記載の無線装置では、2つのSIRが異なる層に形成される。したがって、多層基板のサイズを大きくする必要がなく、無線装置を小型にすることができる。
【0010】
しかしながら、SIRを構成する導電パターンの幅は、SIRの周波数特性に深く関係する。そのため、特許文献1に記載の無線装置においても、設定すべきカットオフ周波数によっては導電パターンの幅が広くなり過ぎ、導電パターンの配置が困難になったり、無線装置が大きくなったりする。
【0011】
これを解消するために導電パターンの幅を狭くすることが考えられるが、この場合SIRにおいて任意の特性インピーダンスに設定することが困難になったり、導電パターンの形成が困難になったりする。したがって、パターンフィルタにおいて、任意の特性インピーダンスを維持しつつ、カットオフ周波数または通過帯域幅等を自由に設計することは困難であった。
【0012】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、パターンフィルタにおいて所望の特性インピーダンスを実現しつつ、装置設計の自由度を向上させることが可能な高周波回路および無線装置を提供することである。
【0013】
[本開示の効果]
本開示によれば、パターンフィルタにおいて所望の特性インピーダンスを実現しつつ、装置設計の自由度を向上させることができる。
【0014】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施の形態の内容を列記して説明する。
【0015】
(1)本開示の実施の形態に係る高周波回路は、導電体が形成された第1グランド層と、導電体が形成された第2グランド層と、第1の導電パターンが形成された導電パターン層とを備え、前記第1グランド層、前記第2グランド層および前記導電パターン層は、積層されており、前記導電パターン層は、前記第1グランド層、前記第2グランド層および前記導電パターン層の積層方向において、前記第2グランド層に形成された前記導電体までの距離が、前記第1グランド層に形成された前記導電体までの距離よりも長い領域である第1の領域を含み、前記第1の導電パターンの少なくとも一部分は、前記第1の領域に設けられる。
【0016】
導電パターンによってフィルタを形成する場合、導電パターンの幅の大小に応じて、フィルタの特性インピーダンスおよび周波数特性が変化し、所望の特性が得られない場合がある。
【0017】
これに対し、第1の導電パターンの少なくとも一部分が、第1の領域に設けられる構成により、第1の導電パターンからグランド層までの距離を長くすることができる。第1の導電パターンからグランド層までの距離を長くすれば、第1の導電パターンの特性インピーダンスは上昇する。そのため、第1の導電パターンの幅を広くすることによる第1の導電パターンの特性インピーダンスの低下分を、第1の導電パターンからグランド層までの距離を長くすることで相殺することができる。これにより、所望の特性インピーダンスを維持したまま第1の導電パターンの幅を広くすることができる。したがって、パターンフィルタにおいて所望のインピーダンスを実現しつつ、装置設計の自由度を向上させることができる。
【0018】
また、結合線路を有するSIRを導電パターンによって形成する場合、広い通過帯域幅を実現しようとすれば、長い結合線路が必要になり、基板のサイズが大きくなる。通過帯域幅を維持しつつ結合線路の長さを短くしようとすれば、結合線路の結合度を強くする必要がある。結合度を強めるには、導電パターンの幅を広くすればよい。これにより、結合線路の長さを短くしつつ、所望の通過帯域幅に設定することができる。その一方で、導電パターンの幅を広くした分、SIRの特性インピーダンスは低下する。
【0019】
これに対し、第1の導電パターンの少なくとも一部分が、第1の領域に設けられる構成により、第1の導電パターンの幅を広くすることによる第1の導電パターンの特性インピーダンスの低下分を、第1の導電パターンからグランド層までの距離を長くすることで相殺することができる。これにより、所望の特性インピーダンスを維持したまま結合線路の長さを短くすることができる。したがって、パターンフィルタにおいて所望のインピーダンスを実現しつつ、装置設計の自由度を向上させることができる。
【0020】
(2)前記導電パターン層には、前記第1の導電パターンとは別の第2の導電パターンがさらに形成されており、前記導電パターン層は、前記積層方向において、前記第1グランド層に形成された前記導電体までの距離が、前記第2グランド層に形成された前記導電体までの距離よりも長い領域である第2の領域を含み、前記第2の導電パターンは、前記第2の領域に設けられる構成であってもよい。
【0021】
このような構成により、第1の領域に設けられた第1の導電パターンと、第2の領域に設けられた第2の導電パターンとでは、グランド層までの距離が異なる。そのため、同一の基板に形成された第1の導電パターンおよび第2の導電パターンにより、カットオフ周波数または通過帯域幅が大きく異なる2つのフィルタを構成することができる。したがって、装置設計の自由度をさらに向上させることができる。
【0022】
(3)前記第1の導電パターンは、前記第1の領域および前記第2の領域にまたがって設けられる構成であってもよい。
【0023】
このような構成により、導電パターン層において、第1の導電パターンが第1の領域および第2の領域にまたがって設けられた設計自由度の高いフィルタを設けることができる。
【0024】
(4)前記第1の導電パターンは、第1のフィルタの一部を構成し、前記第2の導電パターンは、第2のフィルタの一部を構成し、前記第2のフィルタの比帯域は、前記第1のフィルタの比帯域よりも狭い構成であってもよい。
【0025】
バンドパスフィルタにおいて、比帯域は、通過帯域幅を中心周波数で除した値で表される。比帯域の広いバンドパスフィルタでは長い結合線路が必要になり、比帯域の狭いバンドパスフィルタでは短い結合線路が必要になる。第2のフィルタの比帯域が、第1のフィルタの比帯域よりも狭い構成により、比帯域の広い第1のフィルタを構成する第1の導電パターンを、結合線路の長さを長くすることができる第1の領域に配置し、比帯域の狭い第2のフィルタを構成する第2の導電パターンを、結合線路の長さを短くすることができる第2の領域に配置することができるので、各フィルタにおいて所望の比帯域を実現しつつ、装置設計の自由度を向上させることができる。
【0026】
(5)前記第1の領域は、前記第1の導電パターンの特性インピーダンスが対象信号の周波数に対して一定値となるように設けられる構成であってもよい。
【0027】
このような構成により、フィルタを含む対象信号の伝送路において、所望のインピーダンスを実現しつつ、装置設計の自由度を向上させることができる。
【0028】
本開示の実施の形態に係る無線装置は、上記高周波回路を備える。
【0029】
このような構成により、無線装置において、パターンフィルタにおける所望の特性インピーダンスを実現しつつ、装置設計の自由度を向上させることができる。
【0030】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0031】
まず、本開示の高周波回路および無線装置の着想に至った経緯について説明する。
【0032】
図1は、導電パターンで形成されたフィルタを概略的に示す断面図である。図1を参照して、フィルタ100は、板状の誘電体層1001の表面に形成された線状の導電パターン1002と、誘電体層1001の裏面に形成されたグランド層1003とを備える。フィルタ100は、マイクロストリップ線路構造のパターンフィルタである。フィルタ100では、フィルタを構成するLC回路の定数を導電パターンで置き換えている。具体的には、L(コイル)は高インピーダンスの導電パターンで置き換えられ、C(コンデンサ)は低インピーダンスの導電パターンで置き換えられる。
【0033】
ここで、導電パターン1002の特性インピーダンスには、主として、導電パターン1002の幅Wと、導電パターン1002からグランド層1003までの距離Hとが影響する。距離Hが一定であるとすれば、幅Wが広いほど特性インピーダンスは低くなり、幅Wが狭いほど特性インピーダンスは高くなる。
【0034】
一方、幅Wが一定であるとすれば、距離Hが長いほど特性インピーダンスは高くなり、距離Hが短いほど特性インピーダンスは低くなる。したがって、フィルタ100の設計においては、導電パターン1002の幅Wおよび距離Hを調整し、任意の特性インピーダンスを設定する。
【0035】
しかしながら、導電パターン1002の幅Wが広くなり過ぎると、基板上において導電パターン1002を配置することがスペース上困難になり、フィルタ100のサイズも大きくなる。他方、導電パターン1002の幅Wが狭くなり過ぎると、導電パターン1002を製造することが困難になる。したがって、フィルタ100において設定しようとする導電パターン1002の特性インピーダンスによっては、導電パターン1002の所望の幅Wを実現することが困難となる場合がある。
【0036】
図2は、導電パターンで形成されたバンドパスフィルタの一例を概略的に示す平面図である。図2を参照して、バンドパスフィルタ200は、たとえば、幅W1の導電パターンで構成される低インピーダンス部2001A,2001Bと、幅W1よりも狭い幅W2の導電パターンで構成される高インピーダンス部2002A,2002Bとを組み合わせて形成されるステップインピーダンス共振器(SIR)である。高インピーダンス部2002Aと、高インピーダンス部2002Bとは、わずかな隙間を空けて配置されることにより結合線路2003を形成する。また、低インピーダンス部2001A,2001Bおよび高インピーダンス部2002A,2002Bは、すべて図1に示すような導電パターン1002で形成されている。
【0037】
低インピーダンス部2001A,2001Bと高インピーダンス部2002A,2002Bとでは、特性インピーダンスが異なる。SIRでは、低インピーダンス部2001A,2001Bの幅および長さと、高インピーダンス部2002A,2002Bの幅および長さとを調整することで、共振条件、すなわちカットオフ周波数を設定する。
【0038】
一般に、バンドパスフィルタの結合線路は電磁界を通して結合されるが、図2に示すバンドパスフィルタ200の結合線路2003では電流を流して磁界による結合を強化するため、図1に示すようなグランド層1003に接続している。
【0039】
ここで、結合線路2003の長さは、バンドパスフィルタにおける通過帯域幅に影響する。結合線路2003が短いほど通過帯域幅は狭くなり、結合線路2003が長いほど通過帯域幅は広くなる。したがって、結合線路2003を有するSIRを用いたバンドパスフィルタ200の設計においては、結合線路2003の長さを調整し、任意の通過帯域幅を設定する。
【0040】
一方で、結合線路2003が短くなり過ぎると、基板上において結合線路2003を形成することが製造上困難になる。この場合、結合線路2003を長くし、その分結合線路2003の結合度を弱くすることが考えられる。結合線路2003の結合度を弱めるには、導電パターンの幅を狭くする必要がある。しかしながら、導電パターンの幅を狭くすれば、特性インピーダンスが変わり、バンドパスフィルタのカットオフ周波数が設定値から外れることになる。
【0041】
結合線路2003が長くなり過ぎると、結合線路2003を配置するスペースを確保するために基板のサイズが大きくなる。この場合、結合線路2003を短くし、その分結合線路2003の結合度を強くすることが考えられる。結合線路2003の結合度を強めるには、導電パターンの幅を広くする必要がある。しかしながら、導電パターンの幅を広くすれば、特性インピーダンスが変わり、バンドパスフィルタのカットオフ周波数が設定値から外れることになる。
【0042】
したがって、設定しようとする通過帯域幅によっては、結合線路2003を所望の長さにすることが困難となる場合がある。
【0043】
このように、従来技術では、導電パターンによってフィルタを形成しようとすれば、導電パターンの幅または結合線路の長さに制約があるため、所望のカットオフ周波数または通過帯域幅の実現が困難であった。このような経緯から本開示の無線装置は着想された。
【0044】
以下、本開示の実施形態に係る高周波回路および無線装置について説明する。
【0045】
図3は、本開示の実施の形態に係る無線装置の構成を示す平面図である。図3では、一例として、自動車に搭載される無線装置1を示している。
【0046】
図3を参照して、無線装置1は、高周波回路2と、入出力端子1Aと、テレビ用入出力端子1Bと、GPS(Global Positioning System)用入出力端子1Cと、ラジオ用入出力端子1Dとを備える。
【0047】
入出力端子1Aは、高周波ケーブル1Eを介して図示しないアンテナに接続される。アンテナは、たとえば自動車のフロントガラス、リアガラスまたはルーフパネル等に設置され、RF信号(Radio Frequency Signal)を受信する。
【0048】
テレビ用入出力端子1B、GPS用入出力端子1Cおよびラジオ用入出力端子1Dはそれぞれ、対応の周波数帯域の無線信号を用いるサービスを提供可能な図示しない車載機と接続されている。たとえば、テレビ用入出力端子1Bは、テレビチューナー等のテレビに対応する車載機に接続され、GPS用入出力端子1Cは、カーナビゲーション等のGPSに対応する車載機に接続され、ラジオ用入出力端子1Dは、ラジオチューナー等のAM/FMラジオに対応する車載機に接続される。
【0049】
高周波回路2は、入出力端子1Aにおいて受けた電波をテレビ車載機用、GPS車載機用およびラジオ車載機用に分波する。なお、高周波回路2は、テレビに対応する車載機およびGPSに対応する車載機から送信されたRF信号を合波して、入出力端子1Aから出力する構成であってもよい。
【0050】
図4は、図3中のIV-IV線での断面図である。理解を容易にするため図4では、図3に示す平面図を、フィルタを除き破線で示している。
【0051】
図4を参照して、高周波回路2は、多層基板10により構成される。
【0052】
[多層基板]
多層基板10は、たとえばプリント配線板である。多層基板10は、積層方向において主表面側から順に、導電パターン201が形成された層L1、誘電体層101A、第1グランド層102、誘電体層101B、中間グランド層103、誘電体層101Cおよび第2グランド層104を含む。
【0053】
導電パターン201が形成された層L1は、多層基板10の主表面を構成し、導電パターン等を含む。以下、導電パターン201が形成された層を、導電パターン層と称する。導電パターン201は、第1の導電パターンの一例である。
【0054】
誘電体層101Aは、導電パターン層L1と第1グランド層102との間に配置され、導電パターン層L1と第1グランド層102とを絶縁する。誘電体層101Aの材質は、たとえばガラスエポキシ樹脂である。後述する誘電体層101B,101Cも同様である。
【0055】
第1グランド層102は、導電パターン層L1とは異なる層であり、導電パターン層L1よりも下層に位置する。多層基板10では、第1グランド層102は、誘電体層101Aと誘電体層101Bとの間に配置される。第1グランド層102は、たとえば銅箔等の薄い導電体が形成された層である。後述する中間グランド層103および第2グランド層104も同様である。第1グランド層102は、一部において導電体が削除された形状を有する。削除された部分は空洞となっている。
【0056】
誘電体層101Bは、第1グランド層102と中間グランド層103との間に配置され、第1グランド層102と中間グランド層103とを絶縁する。
【0057】
中間グランド層103は、誘電体層101Bと誘電体層101Cとの間に配置される。中間グランド層103は、一部において導電体が削除された形状を有する。削除された部分は空洞となっている。
【0058】
誘電体層101Cは、中間グランド層103と第2グランド層104との間に配置され、中間グランド層103と第2グランド層104とを絶縁する。
【0059】
第2グランド層104は、導電パターン層L1および第1グランド層102とは異なる層であり、第1グランド層102よりも下層に位置する。多層基板10では、第2グランド層104は、誘電体層101Cの下方に配置され、多層基板10の裏面を構成する。したがって、積層方向において、導電パターン層L1から第2グランド層104までの距離は、導電パターン層L1から第1グランド層102までの距離よりも長い。第2グランド層104は、平面視で概ね多層基板10の全域にわたって設けられる。第2グランド層104は、第1グランド層102および中間グランド層103とビアで電気的に接続されている。
【0060】
図3および図4を参照して、導電パターン層L1は、第1グランド層102、第2グランド層104および導電パターン層L1の積層方向において、第2グランド層104に形成された導電体までの距離が、第1グランド層102に形成された導電体までの距離よりも短い領域である第1の領域105を含む。たとえば、第1の領域105は、多層基板10における各層の積層方向において、第2グランド層104と対向する領域である。具体的には、第1の領域105は、平面視で長方形であり、導電パターン層L1に設けられた任意の大きさの領域である。図4に示すように、第1グランド層102および中間グランド層103において、第1の領域105に対応する領域には導電体は設けられず、空洞となっている。積層方向において第1の領域105の下方には、誘電体層101A,101B,101Cと、第2グランド層104とが配置されている。
【0061】
導電パターン層L1は、第1グランド層102、第2グランド層104および導電パターン層L1の積層方向において、第1グランド層102に形成された導電体までの距離が、第2グランド層104に形成された導電体までの距離よりも短い領域である第2の領域107を含む。たとえば、第2の領域107は、多層基板10における各層の積層方向において、第1グランド層102と対向する領域である。具体的には、第2の領域107は、導電パターン層L1において、第1の領域105以外の領域である。第2の領域107は、導電パターン層L1において第1の領域105とは重複せず、別個の領域である。図4に示すように、第1グランド層102において、第2の領域107に対応する領域には導電体が設けられている。積層方向において第2の領域107の下方には、誘電体層101Aと、第1グランド層102とが配置されている。
【0062】
[フィルタ]
再び図3を参照して、多層基板10の導電パターン層L1に形成された導電パターンは、フィルタの一部を構成する。多層基板10では、導電パターン201は、テレビ用フィルタの一部を構成する。具体的には、テレビ用フィルタは、導電パターン201および第2グランド層104により構成される。テレビ用フィルタは、第1のフィルタの一例である。テレビ用フィルタは、たとえば通過帯域が470MHz~710MHzとなるように設定される。この場合、テレビ用フィルタにおいて、通過帯域幅は240MHz、中心周波数は590MHzおよび比帯域は0.41となる。
【0063】
導電パターン201は、低インピーダンス部2011,2012と、高インピーダンス部2013,2014とを含む。
【0064】
低インピーダンス部2011,2012は、平面視で概ね長方形であり、間隔を空けて並んで配置される。
【0065】
無線装置1はさらに、コンデンサ1F1,1F2を備える。低インピーダンス部2011は、コンデンサ1F1を介して、入出力端子1Aに接続される。低インピーダンス部2012は、コンデンサ1F2を介して、テレビ用入出力端子1Bに接続される。
【0066】
高インピーダンス部2013,2014は、低インピーダンス部2011,2012よりも導電パターンの幅が狭い。高インピーダンス部2013,2014における導電パターンの幅および長さと、低インピーダンス部2011,2012における導電パターンの幅および長さとは、所望のカットオフ周波数に合わせて適宜設定される。
【0067】
高インピーダンス部2013,2014は、平面視で概ねL字型であり、低インピーダンス部2011,2012の間に並んで配置される。高インピーダンス部2013,2014の一部は、わずかな隙間を開けて平行に配置され、結合線路2016を形成する。結合線路2016において、高インピーダンス部2013,2014は、電磁気的に結合される。
【0068】
低インピーダンス部2011,2012、高インピーダンス部2013,2014からなる共振器の長さは、通過帯域の中心周波数における波長の1/4の長さに設定される。ただし、共振器の長さは、通過帯域の中心周波数における波長の1/2の長さでもよい。
【0069】
導電パターン201の少なくとも一部分は、第1の領域105に設けられ、第2グランド層104と電気的に接続される。たとえば、導電パターン201は、第1の領域105の領域内に配置されており、第1の領域105外には配置されていない。導電パターン201における結合線路2016は、導電パターン層L1に形成されたグランドパターン106に接続される。グランドパターン106には、1または複数のビア2017が設けられている。ビア2017は、グランドパターン106と第2グランド層104とを電気的に接続する。なお、図3中の「L4 GND」は、導電パターン201が、配線層としては第4層目に相当する第2グランド層104をリファレンスのグランドとしていることを意味している。
【0070】
図3および図4に示すように、導電パターン層L1には、導電パターン201とは別の導電パターン202がさらに形成されている。導電パターン202は、第2の導電パターンの一例である。多層基板10では、導電パターン202は、GPS用フィルタの一部を構成する。具体的には、GPS用フィルタは、導電パターン202および第1グランド層102により構成される。GPS用フィルタは、第2のフィルタの一例である。
【0071】
導電パターン202は、第2の領域107に設けられ、第1グランド層102と電気的に接続される。たとえば、導電パターン202は、第2の領域107の領域内に配置されており、第2の領域107外には配置されていない。GPS用フィルタは、たとえば通過帯域が1525MHz~1625MHzとなるように設定される。この場合、GPS用フィルタにおいて、通過帯域幅は100MHz、中心周波数は1575MHzおよび比帯域は0.06となる。すなわち、GPS用フィルタの比帯域は、テレビ用フィルタの比帯域よりも狭い。
【0072】
具体的には、導電パターン202は、低インピーダンス部2021,2022と、高インピーダンス部2023,2024とを含む。
【0073】
低インピーダンス部2021,2022は、平面視で概ね長方形であり、直線状に間隔を空けて配置される。
【0074】
無線装置1はさらに、コンデンサ1F3,1F4を備える。低インピーダンス部2021は、コンデンサ1F3を介して、入出力端子1Aに接続される。低インピーダンス部2022は、コンデンサ1F4を介して、GPS用入出力端子1Cに接続される。
【0075】
高インピーダンス部2023,2024は、低インピーダンス部2021,2022よりも導電パターンの幅が狭い。高インピーダンス部2023,2024における導電パターンの幅および長さと、低インピーダンス部2021,2022における導電パターンの幅および長さとは、所望のカットオフ周波数に合わせて適宜設定される。
【0076】
高インピーダンス部2023,2024は、平面視で概ねL字型であり、低インピーダンス部2021,2022の間に並んで配置される。高インピーダンス部2023,2024の一部は、わずかな隙間を開けて平行に配置され、結合線路2026を形成する。結合線路2026において、高インピーダンス部2023,2024は、電磁気的に結合される。
【0077】
低インピーダンス部2021,2022、および高インピーダンス部2023,2024からなる共振器の長さは、通過帯域の中心周波数における波長の1/4の長さに設定される。ただし、共振器の長さは、通過帯域の中心周波数における波長の1/2の長さでもよい。
【0078】
結合線路2026は、導電パターン層L1に形成されたグランドパターン108に接続される。グランドパターン108には、1または複数のビア2027が設けられている。ビア2027は、グランドパターン108と第1グランド層102とを電気的に接続する。なお、図3中の「L2 GND」は、導電パターン202が、配線層としては第2層目に相当する第1グランド層102をリファレンスのグランドとしていることを意味している。
【0079】
高周波回路2は、さらに、第2の領域107において導電パターン202とは別の領域に設けられたラジオ用フィルタを備えている。一般に、ラジオ用フィルタはインダクタおよびコンデンサで構成されるローパスフィルタ(LPF)であるが、図3に示すラジオ用フィルタ203では、インダクタをコイルおよびパターンで構成し、ラジオ用入出力端子1Dに接続される。ラジオ用フィルタ203の電気回路は、周知の構成であるので詳細な説明は行わない。
【0080】
このように、本実施の形態に係る高周波回路2および無線装置1では、導電パターン201が、第1の領域105に設けられる構成により、導電パターン201から第2グランド層104に形成された導電体までの距離を長くすることができる。導電パターン201から第2グランド層104に形成された導電体までの距離を長くすれば、導電パターン201の特性インピーダンスは上昇する。そのため、導電パターン201の幅を広くすることによる導電パターン201の特性インピーダンスの低下分を、導電パターン201から第2グランド層104に形成された導電体までの距離を長くすることで相殺することができる。これにより、所望の特性インピーダンスを維持したまま導電パターン201の幅を広くすることができる。したがって、パターンフィルタにおいて所望のインピーダンスを実現しつつ、装置設計の自由度を向上させることができる。
【0081】
また、結合線路を有するSIRを導電パターンによって形成する場合、導電パターン201が、第1の領域105に設けられる構成により、導電パターン201の幅を広くすることによる導電パターン201の特性インピーダンスの低下分を、導電パターン201から第2グランド層104に形成された導電体までの距離を長くすることで相殺することができる。これにより、所望の特性インピーダンスを維持したまま結合線路2016を短くすることができる。したがって、パターンフィルタにおいて所望のインピーダンスを実現しつつ、装置設計の自由度を向上させることができる。
【0082】
(変形例)
図5は、本開示の実施の形態の変形例に係る無線装置の構成を示す平面図である。図5に示す無線装置は、図3に示す無線装置と比べて、導電パターン201における低インピーダンス部2011,2012および第1の領域105が小さい。
【0083】
図6は、図5中のVI-VI線での断面図である。理解を容易にするため図6では、図5に示す平面図を、導電パターンを除き破線で示している。
【0084】
図5および図6を参照して、変形例に係る無線装置1では、導電パターン201が、第1の領域105および第2の領域107にまたがって設けられる。具体的には、導電パターン201において、高インピーダンス部2013,2014が第1の領域105に設けられ、低インピーダンス部2011,2012が第2の領域107に設けられる。
【0085】
この場合であっても、導電パターン201の一部分は、積層方向において第2グランド層104と対向する。そのため、導電パターン201とリファレンスグランドまでの距離を長くすることができ、所望の特性インピーダンスを実現しつつ、装置設計の自由度をさらに向上させることができる。
【0086】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0087】
導電パターン層L1において、第1の領域105の位置は特に限定されるものではない。第1の領域105は、導電パターン201の特性インピーダンスが対象信号、すなわち入出力端子1Aに接続されたアンテナにおいて受信されるRF信号の周波数に対して一定値となるように設けられていればよい。たとえば、第1の領域105は、入出力端子1Aに接続されたアンテナにおいて受信されるRF信号の周波数変動に対する導電パターン201の特性インピーダンスの変動幅が5パーセント未満となるように設けられることが好ましく、当該変動幅が3パーセント未満となるように設けられることがより好ましく、当該変動幅が1パーセント未満となるように設けられることがさらに好ましい。
【0088】
上述の説明では、高周波回路2がラジオ用フィルタ203を備えている場合について説明した。しかしながら、高周波回路2はラジオ用フィルタ203を備えていなくてもよい。
【0089】
上述の説明では、導電パターン201を含むテレビ用フィルタおよび導電パターン202を含むGPS用フィルタが、結合線路を有するSIRである場合について説明した。しかしながら、高周波回路2において、フィルタは、結合線路を有するSIRに限定されない。フィルタは、単一線路で構成されるSIRでもよいし、幅が一定の導体パターンで構成されるパターンフィルタであってもよい。当該フィルタは、多層基板10の導電パターン層L1において幅が一定の導体パターンにより形成され、第2グランド層104と積層方向において対向する第1の領域105に設けられる。
【0090】
上述の説明では、図3に示すように、導電パターン201,202が多層基板10の主表面(フィルタが形成された層L1)に形成される場合について説明した。しかしながら、導電パターン201,202が形成される層はこれに限定されない。導電パターン201,202は、主表面よりも下層、すなわち多層基板10の内層に形成されていてもよい。たとえば、図3に示す多層基板10において、導電パターン層L1は主表面の1つ下層(図4では第1グランド層102が配置されている層)に配置されてもよい。この場合、第1グランド層は主表面の2つ下層(図4では中間グランド層103が配置されている層)に配置されてもよいし、主表面に配置されてもよい。また、第1グランド層が主表面に配置される場合、第2グランド層は主表面の2つ下層(図4では中間グランド層103が配置されている層)に配置されてもよい。第1グランド層102および第2グランド層104は共に導電パターン層L1よりも上層に配置されてもよいし、下層に配置されてもよい。また、第1グランド層102および第2グランド層104のうちの一方が導電パターン層L1よりも上層に配置され、他方が導電パターン層L1よりも下層に配置されてもよい。要するに、導電パターン層L1から第1グランド層102までの距離が、導電パターン層L1から第2グランド層104までの距離と異なっていればよく、導電パターン層L1、第1グランド層102および第2グランド層104の配置は、図3に示す例に限定されるものではない。
【0091】
また、上述の説明では、図3に示すように、第1グランド層102が、一部において導電体が削除された形状を有する場合について説明した。しかしながら、第1グランド層102および中間グランド層103はこれに限定されない。たとえば、第1グランド層102および第2グランド層104のうちの一方が導電パターン層L1よりも上層に配置され、他方が導電パターン層L1よりも下層に配置され、かつ導電パターン層L1から第2グランド層104までの距離が導電パターン層L1から第1グランド層102までの距離よりも長い場合、第1グランド層102は、全面において導電体が形成された形状を有してもよい。この場合、導電パターン層L1は、全体が第1の領域105であり、第2の領域107を含まない。要するに、導電パターン層L1が、第2グランド層104に形成された導電体までの距離が、第1グランド層102に形成された導電体までの距離よりも長い領域である第1の領域105を含み、かつ導電パターン201の少なくとも一部分が当該第1の領域105に形成されていればよい。
【0092】
上述の説明では、多層基板10が中間グランド層103を含む場合について説明した。しかしながら、多層基板10は第1グランド層102および第2グランド層104を含んでいればよく、中間グランド層103を含んでいなくてもよい。なお、多層基板10が中間グランド層103を含む場合、多層基板10は複数の中間グランド層103を含んでいてもよい。
【0093】
上述の説明では、第1グランド層102が誘電体層101A,101Bの間に配置され、第2グランド層104が多層基板10の裏面に配置される場合について説明した。しかしながら、第1グランド層102および第2グランド層104の配置はこれに限定されない。第2グランド層104は、第1グランド層102よりも下層に配置されていればよい。
【0094】
上述の説明では、無線装置1が自動車に搭載される場合について説明した。しかしながら、無線装置1はこれに限定されない。無線装置1は、自動車以外の輸送機器に搭載されていてもよいし、建物に設置されていてもよいし、携帯無線機であってもよい。要するに、無線装置1は、無線通信を行う機器であればよい。
【0095】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
多層基板と、
前記多層基板において導電パターンにより形成されたフィルタと、
前記多層基板の前記フィルタが形成された層において導電パターンにより形成された結合線路を有するステップインピーダンス共振器とを備え、
前記多層基板は、
前記フィルタとは異なる層に配置された第1グランド層と、
前記フィルタおよび前記第1グランド層とは異なる層に配置された第2グランド層とを含み、
前記フィルタが形成された層から前記第2グランド層までの距離は、前記フィルタが形成された層から前記第1グランド層までの距離よりも長く、
前記フィルタが形成された層は、前記第2グランド層と積層方向において対向する第1の領域を含み、
前記ステップインピーダンス共振器は、前記第1の領域に設けられる、無線装置。
【0096】
[付記2]
第1グランド層と前記第1グランド層とは異なる層に配置された第2グランド層とを含む多層基板と、
前記多層基板において前記第1グランド層および前記第2グランド層とは異なる層に配置され、導電パターンにより形成されたフィルタとを備え、
前記フィルタが形成された層から前記第2グランド層までの距離は、前記フィルタが形成された層から前記第1グランド層までの距離よりも長く、
前記フィルタが形成された層は、前記第2グランド層と積層方向において対向する第1の領域を含み、
前記フィルタは、前記第1の領域に設けられる、無線装置。
【符号の説明】
【0097】
1 無線装置
2 高周波回路
1A 入出力端子
1B テレビ用入出力端子
1C GPS用入出力端子
1D ラジオ用入出力端子
1E 高周波ケーブル
1F1~1F4 コンデンサ
10 多層基板
L1 導電パターンが形成された層(導電パターン層)
100 フィルタ
101,101A,101B,101C 誘電体層
102 第1グランド層
103 中間グランド層
104 第2グランド層
105 第1の領域
106,108 グランドパターン
107 第2の領域
1001 誘電体層
1002 導電パターン
1003 グランド層
200 バンドパスフィルタ
201 導電パターン
2001A,2001B 低インピーダンス部
2002A,2002B 高インピーダンス部
2003 結合線路
2011,2012 低インピーダンス部
2013,2014 高インピーダンス部
2016 結合線路
2017 ビア
202 導電パターン
2021,2022 低インピーダンス部
2023,2024 高インピーダンス部
2026 結合線路
2027 ビア
203 ラジオ用フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6