(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】階段下構造
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20250218BHJP
E04F 11/02 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
E04H1/02
E04F11/02
(21)【出願番号】P 2023185891
(22)【出願日】2023-10-30
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】上井 一哉
【審査官】岡崎 彦哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-057172(JP,A)
【文献】特開2019-120030(JP,A)
【文献】特開2022-035055(JP,A)
【文献】特開2019-148100(JP,A)
【文献】特開2014-062419(JP,A)
【文献】特開2022-115422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/02
E04F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも折り返されない直線部を有し、居室に隣接し、下階と上階とを接続する階段の下に形成される階段下構造であって、
前記直線部の下側に形成される勾配天井と、
少なくとも前記勾配天井の下側を含む階段下に形成される階段下空間と、
を備え、
前記階段下空間は、前記勾配天井の下側に配置され前記下階の床面から立ち上がる腰壁によって2つの空間に隔てられており、
前記2つの空間は、前記勾配天井の低い側に配置される子供空間、及び、前記勾配天井の高い側に配置され、前記腰壁から突出するデスク天板を有するワーク空間である階段下構造。
【請求項2】
前記腰壁の上に透明板が立設されており、
前記透明板の上端は前記勾配天井に繋がる請求項1に記載の階段下構造。
【請求項3】
前記子供空間は前記居室に向かって開放されるとともに、前記ワーク空間と前記居室との間に、建具が設置された第一の間仕切壁が設けられ、
前記居室と反対側は前記階段下空間全体が第二の間仕切壁によって閉じられている請求項2に記載の階段下構造。
【請求項4】
前記建具は透明部を有する請求項3に記載の階段下構造。
【請求項5】
前記ワーク空間は、前記子供空間と反対側が外壁に面して形成されており、
当該外壁に沿って高窓が形成される請求項1に記載の階段下構造。
【請求項6】
前記高窓は、開閉可能である請求項5に記載の階段下構造。
【請求項7】
前記外壁に沿って前記高窓の下に造作棚収納が形成される請求項5に記載の階段下構造。
【請求項8】
前記子供空間は前記下階の床面と、前記勾配天井と、前記腰壁及び前記透明板と、当該腰壁と反対側に設けられる鉛直壁面と、に囲まれた空間であり、
前記子供空間と前記居室との開放された境界は、その上縁が勾配天井に沿った第一勾配部と、前記第一勾配部と逆勾配の第二勾配部と、で山形状に形成される請求項3に記載の階段下構造。
【請求項9】
前記勾配天井の天井裏、又は前記第二の間仕切壁は、防音性を有する構造が配置される請求項3に記載の階段下構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として居住性の建物の階段下構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建物の階段下には低い勾配天井となる空間が形成されることになり、一般的な居室としての利用には適さないことから、従来は収納やトイレ等の目的で利用されていた。
【0003】
そして、このような階段下の空間をより有効に活用すべく、様々な発明がなされている。例えば、階段下にホームオフィスやワークスペースを設けた発明が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。この発明では、基本的に着座した姿勢で利用することとなるワークスペース等を階段下に設けるので、天井の低い階段下空間でも圧迫感を感じにくく、階段下空間の有効活用を図ることができる。
【0004】
また、階段下空間に子供の遊び場やスタディスペースを設けた発明も提案されている(特許文献3、特許文献4参照)。階段下空間を子供の空間とすれば、天井が低くても当該天井が邪魔になりにくく、適度に天井が低い空間は、子供に静的な行動である、昼寝、読書、勉強などをさせやすい利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-227237号公報
【文献】特開2013-57172号公報
【文献】特開2014-62419号公報
【文献】特開2015-209646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では、在宅勤務の機会が多くなり、住宅においても在宅勤務に適した空間が求められている。また、子育て世代の在宅勤務の場合には、在宅勤務と子供の見守りの両立を図りたい要望がある。
【0007】
そこで、本発明は、スペースを有効活用することができ、在宅勤務と子供の見守りの両立を図ることができる階段下構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1発明は、少なくとも折り返されない直線部を有し、居室に隣接し、下階と上階とを接続する階段の下に形成される階段下構造であって、前記直線部の下側に形成される勾配天井と、少なくとも前記勾配天井の下側を含む階段下に形成される階段下空間と、を備え、前記階段下空間は、前記勾配天井の下側に配置され前記下階の床面から立ち上がる腰壁によって2つの空間に隔てられており、前記2つの空間は、前記勾配天井の低い側に配置される子供空間、及び、前記勾配天井の高い側に配置され、前記腰壁から突出するデスク天板を有するワーク空間である。
【0009】
本願の第2発明は、第1発明の階段下構造であって、前記腰壁の上に透明板が立設されており、前記透明板の上端は前記勾配天井に繋がる。
【0010】
本願の第3発明は、第2発明の階段下構造であって、前記子供空間は前記居室に向かって開放されるとともに、前記ワーク空間と前記居室との間に、建具が設置された第一の間仕切壁が設けられ、前記居室と反対側は前記階段下空間全体が第二の間仕切壁によって閉じられている。
【0011】
本願の第4発明は、第3発明の階段下構造であって、前記建具は透明部を有する。
【0012】
本願の第5発明は、第1発明の階段下構造であって、前記ワーク空間は、前記子供空間と反対側が外壁に面して形成されており、当該外壁に沿って高窓が形成される。
【0013】
本願の第6発明は、第5発明の階段下構造であって、前記高窓は、開閉可能である。
【0014】
本願の第7発明は、第5発明の階段下構造であって、前記外壁に沿って前記高窓の下に造作棚収納が形成される。
【0015】
本願の第8発明は、第3発明の階段下構造であって、前記子供空間は前記下階の床面と、前記勾配天井と、前記腰壁及び前記透明板と、当該腰壁と反対側に設けられる鉛直壁面と、に囲まれた空間であり、前記子供空間と前記居室との開放された境界は、その上縁が勾配天井に沿った第一勾配部と、前記第一勾配部と逆勾配の第二勾配部と、で山形状に形成される。
【0016】
本願の第9発明は、第3発明の階段下構造であって、前記勾配天井の天井裏、又は前記第二の間仕切壁は、防音性を有する構造が配置される。
【発明の効果】
【0017】
本願の第1発明によると、階段が少なくとも折り返されない直線部を有し、直線部の下側に形成される勾配天井を含む階段下空間が腰壁によって2つの空間に隔てられており、2つの空間は、子供空間及び、腰壁から突出するデスク天板を有するワーク空間であるので、ワーク空間側からデスク天板に向かって在宅勤務等の作業をする場合、腰壁を挟んで反対側に子供空間を見ることができるので、子供を見守りつつデスクワークをすることができる。そして、子供空間が勾配天井の低い側に配置され、ワーク空間が勾配天井の高い側に配置されているので、天井が低く子供が籠りたくなる小空間を子供空間とすることができ、当該子供空間より天井の高い側をワーク空間とすることで、階段下に2つの役割の空間を設けることができ、より空間効率を高めることができる。
【0018】
本願の第2発明によると、子供空間とワーク空間との間に腰壁及び腰壁の上から勾配天井までつながる透明板が設けられるので、ワーク空間から子供を見守りつつ、子供が発する音は、ある程度遮ることができ、例えばリモート会議等の場合に子供が発する音をマイクが拾うことを抑制できる。
【0019】
本願の第3発明によると、子供空間は居室に向かって開放されているので、ワーク空間にいる場合でも居室にいる場合でも子供を見守ることができ、また、ワーク空間と居室との間には、建具が設置された第一の間仕切壁が設けられ、居室と反対側は第二の間仕切壁によって閉じられているので、ワーク空間に他の居住者の生活音が入り込みにくく、デスクワークやリモート会議をより静かな環境で行うことができる。
【0020】
本願の第4発明によると、第一の間仕切壁に設置される建具は透明部を有しているので、ワーク空間が閉塞感のある空間となることを抑制でき、より居心地のよい空間とすることができる。
【0021】
本願の第5発明によると、ワーク空間の子供空間と反対側が外壁に面して形成されており、当該外壁に沿って高窓が形成されているので、日中はワーク空間に光を取り込むことができるとともに、子供空間とワーク空間との境界は透明板が設けられていることから、子供空間にも高窓から光を取り込むことができる。特に、設けられる窓が高窓であることで、より屋外側の奥まで光を届かせることができ、子供空間により光を取り込むことができる。
【0022】
本願の第6発明によると、高窓が開閉可能であるので、ワーク空間の換気を行うことができる。
【0023】
本願の第7発明によると、高窓の下に造作棚収納が形成されているので、デスクワークに必要な資料や書籍、ノートパソコンなどを収納しておくことができる。窓が高窓であることで、当該窓を遮ることなく収納することができる。
【0024】
本願の第8発明によると、子供空間と居室との開放された境界は、その上縁が勾配天井に沿った第一勾配部と、前記第一勾配部と逆勾配の第二勾配部と、で山形状に形成されているので、居室から子供空間に入る入口は、家の妻面のようなデザインとすることができ、子供が入りやすいデザインとすることができる。そして、第二勾配部が形成されることで境界の上縁が片流れ状ではなく山形状となっているので、内周が鈍角の開口とすることができ、施工の際のクロス張りなどの作業を容易にすることができる。
【0025】
本願の第9発明によると、勾配天井の天井裏や第二の間仕切壁は、防音性を有する構造であるので、階段の昇降や第二の間仕切壁の反対側の生活音を遮り、ワーク空間の遮音性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】階段下構造の構成を説明する一部省略水平断面図。
【
図2】階段及び階段下空間の構成を説明する一部省略鉛直断面図。
【
図3】ホームオフィスと建具との関係を説明する
図2の一部省略鉛直断面図に建具の記載を追加した図。
【
図4】居室側から見た第一の間仕切壁及び子供空間と居室との境界に形成される出入口を説明する図。
【
図6】第二の間仕切壁の内部に遮音材が配置される点を説明する拡大断面図。
【
図7】階段がリビング階段のように居室の内側に配置される実施形態の変形例を説明する一部省略水平断面図。
【
図8】階段がリビング階段のように居室の内側に配置される実施例の変形例を説明するパース図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の階段下構造の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。本実施形態の階段下構造1は、2階建て以上の戸建住宅やメゾネットタイプの集合住宅のような建物に配置される階段下構造1であり、下階と上階とを接続する階段2と、当該階段2の下側に形成される勾配天井3と、勾配天井3の下側を含む階段下に形成される階段下空間4と、を備えている。
【0028】
階段2は、
図1に示すように、下階における一方の側面が居室5に隣接して配置されている。なお、居室5は、本実施形態においては、リビングルーム、ダイニングルーム、又はその両方が含まれる空間である。居室5はこれに限定されるものではないが、後述するワーク空間6及び子供空間7と直接アクセスできる空間であるので、居室5は居住者の全員が利用する空間であることが好ましい。また、本実施形態では階段2は下階における他方の側面がトイレ室8及び廊下9に隣接して配置されている。
【0029】
階段2は、
図2及び
図3に示すように、少なくとも折り返されない直線部10を有する。すなわち、階段2は折り返される箇所がない直階段、途中で90度折れ曲がるかね折れ階段、又は、途中で180度折り返される折り返し階段及び回り階段を含むが、例えば螺旋階段のように直線部10を有さない階段は含まれない。なお、階段2は直線部10の上端が踊り場11となるように形成される折り返し階段やかね折れ階段であって、当該踊り場11が外壁12に面して形成されていると、直線部10及び踊り場11の下側に形成される階段下空間4も外壁12に面することとなり、当該階段下空間4が面する外壁12に窓を設けることで、
図5に示すように、階段下空間4の採光Lや換気Wを行うことができ、階段下空間4の居心地をよりよくすることができる。また直線部10の下側に形成される勾配天井3が、下階の床面13から少なくとも600mmから1800mmの高さ範囲で形成されることが好ましい。本実施形態においては、階段2は下階の床面13から11段目までが折り返されない直線部10を形成し、当該11段目が踊り場11を形成するとともに、2段の折り返し部15が形成されて上階の床面に至る折り返し階段となっている。本実施形態の階段2は、踊り場11の直線部10と反対側が外壁12に面している。
【0030】
なお、本実施形態の階段2は、
図1に示すように、幅方向に1mの長さで、直線部10と踊り場11を合わせた長さが水平方向に3mに形成されている。階段2の幅及び直線部10と踊り場11を合わせた長さは、建物の設計上のモジュール単位の倍数で形成されていれば、設計や商品の提案を容易に行うことができる。特に、本実施形態では、階段2に隣接して設けられるトイレ室8及び廊下9の幅もモジュール単位に形成されており、全体として建物の設計に組み込みやすく、本実施形態の階段下構造1とトイレ室8及び廊下9をセットにしたプランとして商品化することができる。
【0031】
図2及び
図3に示すように、階段2の直線部10の4段目の下側には、下階の床面13から鉛直に立ち上がる鉛直壁面14が形成されている。鉛直壁面14は、階段2の3段目程度の高さまで立ち上がっており、鉛直壁面14の上端から階段2の勾配方向に上向きに勾配天井3が形成されている。鉛直壁面14の上端の高さは、例えば600mmである。勾配天井3は、鉛直壁面14の上端から、階段2の10段目から11段目に上がる蹴込み板の下側付近まで形成されている。勾配天井3の上端の高さは階段2の9段目程度の高さとなっている。勾配天井3の上端から外壁12までの間は水平天井16が形成されている。水平天井16は、階段2の11段目となる踊り場11の下側に配置されており、隣接する居室5の天井より低い例えば床面13から1800mmの高さに形成されている。勾配天井3は例えば600mmから1800の高さの範囲に形成されている。勾配天井3及び水平天井16の高さ寸法はこれに限定されるものではなく、後述する子供空間7及びワーク空間6を配置する高さがあればよい。
【0032】
本実施形態においては鉛直壁面14と外壁12との間で、且つ、勾配天井3及び水平天井16の下側の空間が階段下空間4である。階段下空間4は、勾配天井3の下側に形成され、下階の床面13から立ち上がる腰壁17を有している。腰壁17は階段下空間4を2つの空間に隔てており、勾配天井3の低い側に配置される空間が子供空間7であり、勾配天井3の高い側に配置される空間がワーク空間6である。階段下空間4はトイレ室8及び廊下9との境界は第二の間仕切壁18が形成されて、完全に閉じられている。
【0033】
腰壁17は床面13からの高さが例えば900mmに形成されており、腰壁17の上には透明板19が立設されている。透明板19は、上端が勾配天井3に接するように形成されている。透明板19はガラス又は透明樹脂で形成されており、例えば窓状の枠が設けられるものであってもよい。透明板19は腰壁17の上端から例えば500mmの高さまで形成されている。
【0034】
子供空間7は、
図2に示すように、下階の床面13と、勾配天井3と、腰壁17及び透明板19と、腰壁17の反対側に形成された鉛直壁面14と、に囲まれた空間である。
図1及び
図4に示すように、子供空間7は隣接する居室5との境界が開放されて形成されている。また、子供空間7は隣接する廊下9及びトイレ室8との境界は第二の間仕切壁18で閉じられて形成されている。子供空間7と居室5との開放された境界に形成される出入口20は、その上縁が勾配天井3に沿った第一勾配部21と、前記第一勾配部21と逆勾配の第二勾配部22と、で山形状に形成されており、鉛直壁面14及び腰壁17に沿うように両側の側縁が形成されて、住宅の妻面のような形状に形成されている。
【0035】
子供空間7における勾配天井3には、
図2及び
図3に示すように、当該勾配天井3に埋め込まれる天井埋め込み式ダウンライト23が設けられている。天井埋め込み式とすることで、照明器具が突出していないので、ケガや破損を抑制できる。また、天井埋め込み式ダウンライト23は、図示しないが、例えばLED光源が角度調整可能であってもよい。また、天井埋め込み式ダウンライト23は、図示しないが、光源の手前に光を拡散させるフィルターカバーが設けられるものであってもよい。子供空間7の全体に広く光が拡散することが好ましい。
【0036】
子供空間7は天井が低く、床面13が例えば各辺900mm程度の正方形となる狭い空間となっており、居室5側が開かれて適度な開放感と、おこもり感とを両立させることで、子供に居心地よく感じさせることができる。
【0037】
ワーク空間6は、
図1及び
図2に示すように、下階の床面13と、天井面との間に形成され、天井面が、子供空間7から続く勾配天井3、及び踊り場11の下側の水平天井16で形成され、腰壁17及び透明板19と、腰壁17の反対側に形成された外壁12と、によって隔てられており、居室5との境界が第一の間仕切壁24によって閉じられ、トイレ室8との境界が第二の間仕切壁18によって閉じられて囲まれた空間となっている。第一の間仕切壁24には、
図3及び
図4に示すように、居室5との出入口20となる建具25が設けられている。建具25は、例えば開き戸であり、上下に矩形開口が設けられている。それぞれの矩形開口には透明なガラス板がはめ込まれて透明部26を形成している。このように第一の間仕切壁24により閉じられたワーク空間6でありながら建具25に透明部26が形成されていることで、居室5側に開かれた圧迫感の少ない空間とすることができる。
【0038】
ワーク空間6は、
図2に示すように、腰壁17から水平なデスク天板27が突出して形成されている。デスク天板27は、高さが床面13から700mmの位置に形成されており、デスク天板27のワーク空間6側への突出長さは例えば500mmである。デスク天板27のの上には光を拡散可能なスタンド照明28が配置されて、ワーク空間6を照らしている。なお、ワーク空間6の天井にも照明器具が設けられるものであってもよい。ワーク空間6は図示しないが適切な位置にコンセントが形成されて、スタンド照明28やノートパソコン、タブレット端末などに電気を供給することができる。
【0039】
ワーク空間6にはデスク天板27に面して着席できるように椅子29が配置されている。前述のとおり、デスク天板27の高さが700mmで、腰壁17の高さが900mmである場合、デスク天板27から腰壁17の上部が200mm上方に突出し、その上に透明板19が配置される。デスク天板27に面して椅子29に着席したときに、着席者は透明板19を介して子供空間7を視認することができる、したがって、ワーク空間6でデスクワークやリモート会議を行いながらも、子供空間7に居る子供を見守ることができる。
【0040】
ワーク空間6の椅子29に着席した時に後ろ側には外壁12が形成される。外壁12は、水平天井16に沿って高窓30が形成されている。高窓30はワーク空間6の幅方向の全長に亘って形成されて折り、高窓30の高さ方向の長さは例えば300mmである。ワーク空間6には高窓30が設けられることで、
図5に示すように、屋外から光Lを取り入れることができる。また、水平天井16に沿う高窓30であることで、屋外から取り入れられた光Lが遮られることなく、子供空間7にも入射できる。なお、例えば勾配天井3を白色のように光を反射しやすい色とすれば、勾配天井3に反射して光をより多く子供空間7に入射させることができる。高窓30は、嵌め殺し窓であってもよいが、開閉可能であることがより好ましい。開閉可能であればワーク空間6を外気Wを取り入れることができる。本実施形態では、高窓30は引き違い窓である。
【0041】
外壁12に沿って高窓30の下には、造作棚収納31が設けられている。造作収納棚収納31は、例えばデスクワークに必要な資料や機器を収納するスペースとして利用してもよく、様々な本を収納することで、ワーク空間6をホームライブラリとして機能させることもできる。
【0042】
ワーク空間6は、子供空間7との境界が腰壁17及び透明板19で閉じられており、トイレ室8との境界が第二の間仕切壁18で閉じられており、居室5との境界が第一の間仕切壁24で閉じられているので、リモート会議やデスクワークの際に他の居住者の生活音や子供の遊ぶ声等が、ワーク空間6に入り込みにくく、在宅勤務の妨げになりにくい。
【0043】
本実施形態では、
図2及び
図6に示すように、勾配天井3の天井裏、水平天井16の天井裏、及び第二の間仕切壁18の内部には、それぞれグラスウールの遮音材32が配置されて、防音性を有している。このようにワーク空間6及び子供空間7を仕切る壁や天井が防音性を有することで、ワーク空間6をより静かで仕事のしやすい空間とすることができる。なお、勾配天井3、水平天井16、及び第二の間仕切壁18の防音性を高める構造はグラスウール遮音材32に限定されるものではなく、例えば衝撃を吸収するダンパーやその他の吸音材及び遮音材32であってもよい。
【0044】
なお、階段下構造1が形成される階段2は、本実施形態においては、リビングルームなどの居室5に対して第一の間仕切壁24を挟んで外側に隣接して配置されるものであるが、これに限定されるものではない。階段2は、
図7及び
図8に示すように、いわゆるリビング階段のように、間仕切壁33の居室5側に配置され、居室5の内側で当該居室5に隣接配置されるものであってもよい。このように居室5の内側に階段下構造1が形成されていることで、階段2の直線部10及び踊り場11が間仕切壁なくリビングに面することとなり、これら直線部10及び踊り場11を子供空間7及びワーク空間6とともにリビングに面するセット部品として、建物の設計や間取りの提案に組み込むことができる。
【0045】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【0046】
<第1発明>
本願の第1発明は、少なくとも折り返されない直線部を有し、居室に隣接し、下階と上階とを接続する階段の下に形成される階段下構造であって、前記直線部の下側に形成される勾配天井と、少なくとも前記勾配天井の下側を含む階段下に形成される階段下空間と、を備え、前記階段下空間は、前記勾配天井の下側に配置され前記下階の床面から立ち上がる腰壁によって2つの空間に隔てられており、前記2つの空間は、前記勾配天井の低い側に配置される子供空間、及び、前記勾配天井の高い側に配置され、前記腰壁から突出するデスク天板を有するワーク空間である。
【0047】
これによると、階段が少なくとも折り返されない直線部を有し、直線部の下側に形成される勾配天井を含む階段下空間が腰壁によって2つの空間に隔てられており、2つの空間は、子供空間及び、腰壁から突出するデスク天板を有するワーク空間であるので、ワーク空間側からデスク天板に向かって在宅勤務等の作業をする場合、腰壁を挟んで反対側に子供空間を見ることができるので、子供を見守りつつデスクワークをすることができる。そして、子供空間が勾配天井の低い側に配置され、ワーク空間が勾配天井の高い側に配置されているので、天井が低く子供が籠りたくなる小空間を子供空間とすることができ、当該子供空間より天井の高い側をワーク空間とすることで、階段下に2つの役割の空間を設けることができ、より空間効率を高めることができる。
【0048】
<第2発明>
本願の第2発明は、第1発明の階段下構造であって、前記腰壁の上に透明板が立設されており、前記透明板の上端は前記勾配天井に繋がる。
【0049】
これによると、子供空間とワーク空間との間に腰壁及び腰壁の上から勾配天井までつながる透明板が設けられるので、ワーク空間から子供を見守りつつ、子供が発する音は、ある程度遮ることができ、例えばリモート会議等の場合に子供が発する音をマイクが拾うことを抑制できる。
【0050】
<第3発明>
本願の第3発明は、第1発明又は第2発明の階段下構造であって、前記子供空間は前記居室に向かって開放されるとともに、前記ワーク空間と前記居室との間に、建具が設置された第一の間仕切壁が設けられ、前記居室と反対側は前記階段下空間全体が第二の間仕切壁によって閉じられている。
【0051】
これによると、子供空間は居室に向かって開放されているので、ワーク空間にいる場合でも居室にいる場合でも子供を見守ることができ、また、ワーク空間と居室との間には、建具が設置された第一の間仕切壁が設けられ、居室と反対側は第二の間仕切壁によって閉じられているので、ワーク空間に他の居住者の生活音が入り込みにくく、デスクワークやリモート会議をより静かな環境で行うことができる。
【0052】
<第4発明>
本願の第4発明は、第1発明から第3発明のいずれかの階段下構造であって、前記建具は透明部を有する。
【0053】
これによると、第一の間仕切壁に設置される建具は透明部を有しているので、ワーク空間が閉塞感のある空間となることを抑制でき、より居心地のよい空間とすることができる。
【0054】
<第5発明>
本願の第5発明は、第1発明から第4発明のいずれかの階段下構造であって、前記ワーク空間は、前記子供空間と反対側が外壁に面して形成されており、当該外壁に沿って高窓が形成される。
【0055】
これによると、ワーク空間の子供空間と反対側が外壁に面して形成されており、当該外壁に沿って高窓が形成されているので、日中はワーク空間に光を取り込むことができるとともに、子供空間とワーク空間との境界は透明板が設けられていることから、子供空間にも高窓から光を取り込むことができる。特に、設けられる窓が高窓であることで、より屋外側の奥まで光を届かせることができ、子供空間により光を取り込むことができる。
【0056】
<第6発明>
本願の第6発明は、第1発明から第5発明のいずれかの階段下構造であって、前記高窓は、開閉可能である。
【0057】
これによると、高窓が開閉可能であるので、ワーク空間の換気を行うことができる。
【0058】
<第7発明>
本願の第7発明は、第1発明から第6発明のいずれかの階段下構造であって、前記外壁に沿って前記高窓の下に造作棚収納が形成される。
【0059】
これによると、高窓の下に造作棚収納が形成されているので、デスクワークに必要な資料や書籍、ノートパソコンなどを収納しておくことができる。窓が高窓であることで、当該窓を遮ることなく収納することができる。
【0060】
<第8発明>
本願の第8発明は、第1発明から第7発明の階段下構造であって、前記子供空間は前記下階の床面と、前記勾配天井と、前記腰壁及び前記透明板と、当該腰壁と反対側に設けられる鉛直壁面と、に囲まれた空間であり、前記子供空間と前記居室との開放された境界は、その上縁が勾配天井に沿った第一勾配部と、前記第一勾配部と逆勾配の第二勾配部と、で山形状に形成される。
【0061】
これによると、子供空間と居室との開放された境界は、その上縁が勾配天井に沿った第一勾配部と、前記第一勾配部と逆勾配の第二勾配部と、で山形状に形成されているので、居室から子供空間に入る入口は、家の妻面のようなデザインとすることができ、子供が入りやすいデザインとすることができる。そして、第二勾配部が形成されることで境界の上縁が片流れ状ではなく山形状となっているので、内周が鈍角の開口とすることができ、施工の際のクロス張りなどの作業を容易にすることができる。
【0062】
<第9発明>
本願の第9発明は、第一発明から第8発明のいずれかの階段下構造であって、前記勾配天井の天井裏、又は前記第二の間仕切壁は、防音性を有する構造が配置される。
【0063】
これによると、勾配天井の天井裏や第二の間仕切壁は、防音性を有する構造であるので、階段の昇降や第二の間仕切壁の反対側の生活音を遮り、ワーク空間の遮音性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る階段下構造は、例えば住宅の子育てと在宅勤務を両立できる住宅として好適である。
【符号の説明】
【0065】
1 階段下構造
2 階段
3 勾配天井
4 階段下空間
5 居室
6 ワーク空間
7 子供空間
10 直線部
12 外壁
17 腰壁
18 第二の間仕切壁
19 透明板
24 第一の間仕切壁
25 建具
26 透明部
27 デスク天板
31 造作棚収納
32 遮音材
【要約】
【課題】 本発明は、スペースを有効活用することができ、在宅勤務と子供の見守りの両立を図ることができる階段下構造を提供する。
【解決手段】少なくとも折り返されない直線部10を有し、居室5に隣接し、下階と上階とを接続する階段2の下に形成される階段下構造1であって、前記直線部10の下側に形成される勾配天井3と、少なくとも前記勾配天井3の下側を含む階段下に形成される階段下空間4と、を備え、前記階段下空間4は、前記勾配天井3の下側に配置され前記下階の床面13から立ち上がる腰壁17によって2つの空間に隔てられており、前記2つの空間は、前記勾配天井3の低い側に配置される子供空間7、及び、前記勾配天井3の高い側に配置され、前記腰壁17から突出するデスク天板27を有するワーク空間6である。
【選択図】
図2