(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】再生システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/025 20060101AFI20250218BHJP
F02D 13/02 20060101ALI20250218BHJP
F02D 41/38 20060101ALI20250218BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20250218BHJP
F02M 26/05 20160101ALI20250218BHJP
F02M 26/42 20160101ALI20250218BHJP
【FI】
F01N3/025 101
F02D13/02 Z
F02D41/38
F02D43/00 301H
F02D43/00 301N
F02D43/00 301R
F02D43/00 301Z
F02M26/05
F02M26/42
(21)【出願番号】P 2023202681
(22)【出願日】2023-11-30
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 伸匡
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-113814(JP,A)
【文献】特開2010-112280(JP,A)
【文献】特開2010-112281(JP,A)
【文献】特開2011-174467(JP,A)
【文献】特開2013-136986(JP,A)
【文献】特開2016-113900(JP,A)
【文献】特開2018-193953(JP,A)
【文献】特許第7416194(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/021
F02D 13/02
F02D 17/00
F02D 41/00-45/00
F02M 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気を外部に排出する排気管路に設けられ、前記排気に含まれる物質を捕集するフィルタと、
前記エンジンの複数の気筒のうちの一部の気筒の圧縮工程中に前記一部の気筒の排気弁の開閉を制御する排気弁制御部と、
前記一部の気筒の燃焼室に燃料を噴射する噴射部を制御する噴射制御部と、
前記エンジンに供給される新気を圧縮する過給機の前記排気管路に設けられたタービンと、
前記排気管路における前記エンジンと前記タービンとの間から、前記排気管路における前記タービンの下流に前記一部の気筒の排気を供給可能なバイパス管路と、
前記一部の気筒の排気を前記バイパス管路に供給させる流路制御部と、
を有し、
前記排気管路には、前記一部の気筒の排気を前記タービンに供給する第一管路と、前記一部の気筒と異なる他の気筒の排気を前記タービンに供給する第二管路とが含まれ、
前記バイパス管路は、前記第一管路における前記エンジンと前記タービンとの間から、前記排気管路における前記タービンの下流に前記一部の気筒の排気を供給し、
前記排気弁制御部は、前記フィルタに捕集された前記物質を除去する場合に、前記一部の気筒の圧縮工程中に排気弁を開き、
前記噴射制御部は、圧縮工程中に前記排気弁が開いた状態の前記一部の気筒の燃焼室に、前記一部の気筒の圧縮工程中に前記排気弁が閉じている状態で前記一部の気筒の燃焼室に噴射させる燃料の第一噴射量よりも少ない第二噴射量の燃料を噴射させ
前記流路制御部は、前記圧縮工程中に前記排気弁が開いた状態の前記一部の気筒の燃焼室に燃料が噴射される場合、前記一部の気筒の排気を前記バイパス管路に供給させる、
再生システム。
【請求項2】
前記噴射制御部は、圧縮工程中に前記排気弁が閉じている状態の前記一部の気筒の燃焼室に燃料を噴射するタイミングと同じタイミングで、圧縮工程中に前記排気弁が開いた状態の前記一部の気筒の燃焼室に前記第二噴射量の燃料を噴射させる、
請求項1に記載の再生システム。
【請求項3】
前記一部の気筒の排気を前記エンジンの吸気管路に還流する第一還流管路と、
前記他の気筒の排気を前記吸気管路に還流する第二還流管路と、を有し、
前記流路制御部は、前記圧縮工程中に前記排気弁が開いた状態の前記一部の気筒の燃焼室に燃料が噴射される場合、前記他の気筒の排気の一部を前記第二還流管路に供給して前記吸気管路に還流させ、前記一部の気筒の排気を前記第一還流管路に供給しない、
請求項
1に記載の再生システム。
【請求項4】
前記噴射制御部は、前記圧縮工程中に前記排気弁が開いた状態の前記一部の気筒の燃焼室に燃料を噴射させる場合、前記一部の気筒の圧縮工程中に前記一部の気筒の排気弁が閉じている状態で前記一部の気筒と異なる他の気筒の燃焼室に噴射させる燃料の第三噴射量よりも多い第四噴射量の燃料を、前記他の気筒の燃焼室に噴射させる、
請求項1に記載の再生システム。
【請求項5】
前記噴射制御部は、前記一部の気筒の圧縮工程中に前記排気弁が開く場合、前記一部の気筒の圧縮工程中に前記排気弁が開いている状態の前記エンジンに生じる負荷に応じた量だけ前記第三噴射量よりも多い前記第四噴射量の燃料を前記他の気筒の燃焼室に噴射させる、
請求項
4に記載の再生システム。
【請求項6】
前記排気弁制御部は、前記フィルタに捕集された前記物質の除去が必要であり、前記エンジンの回転数が所定回転数以下であり、かつ前記燃焼室に噴射する燃料の指示噴射量が所定値以下である場合に、前記一部の気筒の圧縮工程中に排気弁を開く、
請求項1に記載の再生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気に含まれる物質を捕集するフィルタを再生する再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
排気中に含まれる煤等を捕集するDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)を再生する技術が知られている。特許文献1には、蓄積された煤等が所定量になったときに、DPFの上流側の噴射部から排気管路内に燃料(軽油)を直接噴射することで供給し、フィルタ近傍で燃料を燃焼させてフィルタに捕集されている煤等を焼却してフィルタを再生する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フィルタの上流側の排気管路内に燃料を供給するためには、排気管路に燃料を噴射する噴射部や、噴射部に燃料を供給する配管及びポンプ等が必要であり、排気管路内に燃料を供給するための構成が複雑になっていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で排気管路に燃料を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様においては、エンジンの排気を外部に排出する排気管路に設けられ、前記排気に含まれる物質を捕集するフィルタと、前記エンジンの複数の気筒のうちの一部の気筒の圧縮工程中に前記一部の気筒の排気弁の開閉を制御する排気弁制御部と、前記一部の気筒の燃焼室に燃料を噴射する噴射部を制御する噴射制御部と、を有し、前記排気弁制御部は、前記フィルタに捕集された前記物質を除去する場合に、前記一部の気筒の圧縮工程中に排気弁を開き、前記噴射制御部は、圧縮工程中に前記排気弁が開いた状態の前記一部の気筒の燃焼室に、前記一部の気筒の圧縮工程中に前記排気弁が閉じている状態で前記一部の気筒の燃焼室に噴射させる燃料の第一噴射量よりも少ない第二噴射量の燃料を噴射させる、再生システムを提供する。
【0007】
前記噴射制御部は、圧縮工程中に前記排気弁が閉じている状態の前記一部の気筒の燃焼室に燃料を噴射するタイミングと同じタイミングで、圧縮工程中に前記排気弁が開いた状態の前記一部の気筒の燃焼室に前記第二噴射量の燃料を噴射させてもよい。
【0008】
前記エンジンに供給される新気を圧縮する過給機の前記排気管路に設けられたタービンと、前記排気管路における前記エンジンと前記タービンとの間から、前記排気管路における前記タービンの下流に前記一部の気筒の排気を供給可能なバイパス管路と、前記圧縮工程中に前記排気弁が開いた状態の前記一部の気筒の燃焼室に燃料が噴射される場合、前記一部の気筒の排気を前記バイパス管路に供給させる流路制御部と、を有してもよい。
【0009】
前記排気管路には、前記一部の気筒の排気を前記タービンに供給する第一管路と、前記一部の気筒と異なる他の気筒の排気を前記タービンに供給する第二管路とが含まれ、前記バイパス管路は、前記第一管路における前記エンジンと前記タービンとの間から、前記排気管路における前記タービンの下流に前記一部の気筒の排気を供給してもよい。
【0010】
前記一部の気筒の排気を前記エンジンの吸気管路に還流する第一還流管路と、前記他の気筒の排気を前記吸気管路に還流する第二還流管路と、を有し、前記流路制御部は、前記圧縮工程中に前記排気弁が開いた状態の前記一部の気筒の燃焼室に燃料が噴射される場合、前記他の気筒の排気の一部を前記第二還流管路に供給して前記吸気管路に還流させ、前記一部の気筒の排気を前記第一還流管路に供給しなくてもよい。
【0011】
前記噴射制御部は、前記圧縮工程中に前記排気弁が開いた状態の前記一部の気筒の燃焼室に燃料を噴射させる場合、前記一部の気筒の圧縮工程中に前記一部の気筒の排気弁が閉じている状態で前記一部の気筒と異なる他の気筒の燃焼室に噴射させる燃料の第三噴射量よりも多い第四噴射量の燃料を、前記他の気筒の燃焼室に噴射させてもよい。
【0012】
前記噴射制御部は、前記一部の気筒の圧縮工程中に前記排気弁が開く場合、前記一部の気筒の圧縮工程中に前記排気弁が開いている状態の前記エンジンに生じる負荷に応じた量だけ前記第三噴射量よりも多い前記第四噴射量の燃料を前記他の気筒の燃焼室に噴射させてもよい。
【0013】
前記排気弁制御部は、前記フィルタに捕集された前記物質の除去が必要であり、前記エンジンの回転数が所定回転数以下であり、かつ前記燃焼室に噴射する燃料の指示噴射量が所定値以下である場合に、前記一部の気筒の圧縮工程中に排気弁を開いてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な構成で排気管路に燃料を供給できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】再生システムの構成を説明するための図である。
【
図3】エンジン制御装置の構成を説明するための図である。
【
図4】気筒から排出される排気の流れを説明するための図である。
【
図5】フィルタを再生する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
再生システムSは、エンジン1の排気に含まれる物質を捕集するフィルタ35に堆積した物質を除去するためのシステムである。再生システムSの構成を、
図1、
図2及び
図3を用いて説明する。
図1は、再生システムSの構成を説明するための図である。
図2は、エンジン1の気筒の模式図である。
図3は、エンジン制御装置6の構成を説明するための図である。再生システムSは、エンジン1と、複数の気筒2と、排気管路3と、エンジン制御装置6と、吸気管路12と、フィルタ35とを有する。複数の気筒2の各々は、排気弁42と、気筒2の燃焼室242に燃料を噴射する噴射部43とを有する。
【0017】
エンジン1は、燃料と新気(空気)との混合気を燃焼、膨張させて、動力を発生させる内燃機関である。エンジン1は、例えば自動車や船舶に搭載されたディーゼルエンジンである。複数の気筒2は、第1気筒211、第2気筒212、第3気筒213及び第4気筒214の4つの気筒を含む。以下、第1気筒211、第2気筒212、第3気筒213及び第4気筒214を区別する必要がない場合、気筒2と言う。エンジン1の複数の気筒2のうちの一部の気筒である第1気筒211及び第4気筒214は、第一気筒群21である。エンジン1の複数の気筒2のうちの一部の気筒と異なる他の気筒である第2気筒212及び第3気筒213は、第二気筒群22である。
【0018】
気筒2は、吸気弁41、排気弁42、噴射部43及びピストン241を有する。吸気弁41及び排気弁42は、エンジン1の動作サイクルの開始時において閉じている。まず、ピストン241が下がるときに吸気弁41が開かれて、新気が気筒2内に吸い込まれる(吸気工程)。次に、ピストン241が下死点に至るときに吸気弁41が閉じて、ピストン241が上死点まで上昇するときに空気が圧縮される(圧縮工程)。続いて、噴射部43により燃料が噴射され、圧縮加熱された空気と混合した燃料が燃焼し、膨張した燃焼ガスによりピストン241が下死点まで押し下げられる(燃焼工程)。そして、慣性や他の気筒2での膨張に伴い、ピストン241が再度上死点まで上昇するときに排気弁42を開くことにより、燃焼ガスが気筒2外に押し出されて排気ガスとして排気管路3に排出される(排気工程)。
【0019】
吸気管路12は、エンジン1に新気を供給する管路である。吸気管路12は、各気筒2に対応するように分岐して、新気を各気筒2に供給するための管路である。吸気管路12には、インタークーラ143が設けられている。インタークーラ143は、エンジン1に供給される新気を冷却する。インタークーラ143は、エンジン1の冷却水又は外気と、新気とを熱交換させることで新気を冷却する熱交換器である。
【0020】
排気管路3は、エンジン1の排気を外部に排出する管路である。排気管路3には、エンジン1に供給される新気を圧縮する過給機16のタービン162が設けられている。タービン162は、排気が通過することで回転する。タービン162は、過給機16のコンプレッサ161に連結されている。コンプレッサ161は、吸気管路12に設けられている。コンプレッサ161は、タービン162の回転に連動して回転することで、新気を圧縮して過給する。
【0021】
排気管路3は、第一管路31と、第二管路32と、第三管路33とを有する。第一管路31は、第一気筒群21と接続し、第一気筒群21の排気をタービン162に供給するための管路である。第二管路32は、第二気筒群22と接続し、第二気筒群22の排気をタービン162に供給するための管路である。第三管路33は、タービン162を通過した排気を外部に排出するための管路である。
【0022】
第一還流管路131は、第一管路31と吸気管路12を接続し、第一気筒群21の排気を吸気管路12に還流するための管路である。第一還流管路131には、排気冷却器141が設けられている。排気冷却器141は、第一気筒群21の排気と、エンジン1の冷却水又は外気とを熱交換させることで、第一気筒群21の排気を冷却する熱交換器である。第一還流管路131における吸気管路12と排気冷却器141の間には、第一制御弁151が設けられている。第一制御弁151は、吸気管路12へ流れる第一気筒群21の排気の流量を調整する。第一制御弁151は、エンジン制御装置6の制御により、流路の面積を調整する調整弁が作動することにより、流路の面積が調整されて第一制御弁151を通過する第一気筒群21の排気の流量が調整される。
【0023】
第二還流管路132は、第二管路32と吸気管路12を接続し、第二気筒群22の排気を吸気管路12に還流するための管路である。第二還流管路132には、排気冷却器142が設けられている。排気冷却器142は、第二気筒群22の排気と、エンジン1の冷却水又は外気とを熱交換させることで、第二気筒群22の排気を冷却する熱交換器である。第二還流管路132における吸気管路12と排気冷却器142の間には、第二制御弁152が設けられている。第二制御弁152は、吸気管路12へ流れる第二気筒群22の排気の流量を調整する。第二制御弁152は、エンジン制御装置6の制御により、流路の面積を調整する調整弁が作動することにより、流路の面積が調整されて第二制御弁152を通過する第二気筒群22の排気の流量が調整される。
【0024】
第三管路33には、浄化装置34及びフィルタ35が設けられている。浄化装置34は、タービン162とフィルタ35の間に設けられている。浄化装置34は、エンジン1の排気を浄化する。浄化装置34は、例えばディーゼル酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst; DOC)であるが、これに限定するものではない。
【0025】
フィルタ35は、第三管路33における浄化装置34の下流に設けられている。フィルタ35は、例えばDPD(ディーゼル・パティキュレート・ディフューザー)である。フィルタ35は、排気に含まれる物質を捕集する。排気に含まれる物質は、例えば粒子状物質であり、具体例を挙げると煤である。フィルタ35が捕集した物質の量が、フィルタ35が捕集可能な許容量を超えると、フィルタ35の捕集性能が低下する。そのため、フィルタ35が捕集した物質の量が許容量を超えた場合、フィルタ35に捕集された物質を除去して捕集性能を再生する再生制御を実行する必要がある。
【0026】
バイパス管路36は、排気管路3におけるエンジン1とタービン162との間から、排気管路3におけるタービン162の下流に第一気筒群21の排気を供給可能な管路である。具体的には、バイパス管路36は、第一管路31と第三管路とを接続し、第一管路におけるエンジン1とタービン162との間から、排気管路3におけるタービン162の下流に第一気筒群21の排気を供給する。言い換えると、バイパス管路36は、第一気筒群21の排気にタービン162を迂回(バイパス)させる。
【0027】
三方弁153は、バイパス管路36が第一管路31から分岐する分岐点に設けられている。三方弁153は、第一気筒群21の排気にタービン162を迂回させるか否かを切り替える。具体的には、三方弁153は、第一気筒群21の排気をタービン162に供給するか、第一気筒群21の排気をバイパス管路36に供給するかを切り替える。
【0028】
エンジン制御装置6は、エンジン1を制御するECU(Electronic Control Unit)である。エンジン制御装置6は、フィルタ35の再生制御が必要な場合に、排気管路3に未燃焼の燃料を供給し、フィルタ35の近傍で燃焼させることで、フィルタ35に捕集された物質を焼却することで除去できる。
以下、エンジン制御装置6の具体的な構成を説明する。
【0029】
エンジン制御装置6は、記憶部61及び制御部62を有する。記憶部61は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等を含む記憶媒体である。記憶部61は、制御部62が実行するプログラムを記憶する。
【0030】
制御部62は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部62は、記憶部61に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部621、判定部622、排気弁制御部623、噴射制御部624及び流路制御部625としての機能を実現する。
【0031】
取得部621は、再生システムSに関する情報を検出するセンサ群11から、当該情報を取得する。例えば、センサ群11は、第三管路33におけるフィルタ35の上流と下流の圧力を検出するセンサを含む。取得部621は、フィルタ35の上流と下流の圧力をセンサ群11から取得する。また、センサ群11は、エンジン1の回転数を取得するセンサ、及びエンジン1の冷却水の温度を取得するセンサを含む。取得部621は、エンジン1の回転数とエンジン1の冷却水の温度とをセンサ群11から取得する。
【0032】
取得部621は、燃焼室242に噴射する燃料の指示噴射量を取得する。例えば、取得部621は、エンジン1の出力を制御する操作部の操作量に応じた指示噴射量を取得する。具体例を挙げると、エンジン1が車両に搭載されている場合、取得部621は、操作部であるアクセルペダルの踏込量が大きいほど大きい指示噴射量を取得する。また、取得部621は、エンジン1に対する要求トルクに応じた指示噴射量を取得してもよい。この場合、取得部621は、要求トルクが大きいほど大きい指示噴射量を取得する。
【0033】
判定部622は、フィルタ35に捕集された物質の除去する再生制御が必要か否かを判定する。判定部622は、フィルタ35が捕集した物質の量が許容量を超えたか否かを判定することで、再生制御が必要か否かを判定する。フィルタ35が捕集した物質の量が許容量を超えると、排気がフィルタ35を通過しにくくなるので、フィルタ35の上流を流れる排気の圧力が高くなり、フィルタ35の下流を流れる排気の圧力が小さくなる。そのため、フィルタ35が捕集した物質の量が許容量を超えると、2つの排気の圧力の差が大きくなる。そこで、判定部622は、フィルタ35の上流の排気の圧力と下流の排気の圧力との圧力差に基づいて、フィルタ35が捕集した物質の量が許容量を超えたか否かを判定し、再生制御の要否を判定する。
【0034】
判定部622は、圧力差が所定の圧力未満の場合、フィルタ35が捕集した物質の量が許容量を超えておらず、再生制御が不要であると判定する。所定の圧力は、フィルタ35の性能や仕様、実験によって定めればよい。排気弁制御部623は、圧力差が所定の圧力以上の場合、フィルタ35が捕集した物質の量が許容量を超えており、再生制御が必要であると判定する。
【0035】
排気弁制御部623は、複数の気筒2の排気弁42の開閉を制御する。排気弁制御部623は、エンジン1の動作サイクルの工程に応じて、複数の気筒2の各々の排気弁42の開閉制御を行う。例えば、排気弁制御部623は、フィルタ35の再生制御が不要である場合、第一気筒群21の圧縮工程中に第一気筒群21の排気弁42を閉じた状態にする。以下の説明において、圧縮工程中に排気弁42が閉じている状態の第一気筒群21を、通常稼働時の第一気筒群21と言うことがある。
【0036】
排気弁制御部623は、再生制御が必要である場合に、第一気筒群21(第1気筒211及び第4気筒214)の圧縮工程中に第一気筒群21の排気弁42を開く。具体的には、排気弁制御部623は、再生制御が必要でありフィルタ35に捕集された物質を除去する場合に、第一気筒群21の圧縮工程中に第一気筒群21の排気弁42を開く。この場合、排気弁制御部623は、第二気筒群22(第2気筒212及び第3気筒213)の圧縮工程中に、第二気筒群22の排気弁42を閉じた状態にする。以下の説明において、第一気筒群21の圧縮工程中に第一気筒群21の排気弁42を開くことを、第一気筒群21を圧縮開放すると言うことがある。また、圧縮工程中に第一気筒群21の排気弁42が開いた状態の第一気筒群21を、圧縮開放時の第一気筒群21と言うことがある。
【0037】
噴射制御部624は、第一気筒群21及び第二気筒群22の各噴射部43を制御して、第一気筒群21及び第二気筒群22の燃焼室242への燃料の噴射を制御する。例えば、噴射制御部624は、噴射部43を制御して、圧縮開放時の第一気筒群21の燃焼室242に燃料を噴射させる。つまり、噴射制御部624は、圧縮工程中に排気弁42が開くことで混合気の温度が燃焼可能な温度にならない第一気筒群21の燃焼室242に燃料を噴射する。
【0038】
噴射制御部624は、圧縮開放時の第一気筒群21の燃焼室242に燃料を噴射させる場合、第一噴射量よりも少ない第二噴射量の燃料を噴射させる。第一噴射量は、通常稼働時の第一気筒群21の燃焼室242に噴射させる燃料の量である。噴射制御部624は、通常稼働時の第一気筒群21の燃焼室242に燃料を噴射するタイミングと同じタイミングで、圧縮開放時の第一気筒群21の燃焼室242に第二噴射量の燃料を噴射させる。言い換えると、噴射制御部624は、圧縮開放時の第一気筒群21に燃料を噴射させる場合、通常稼働時と同様に、ピストン241が上死点付近である状態の圧縮開放時の第一気筒群21の燃焼室242に燃料Nを噴射させる(
図2を参照)。
【0039】
ところで、燃焼室242は、圧縮工程中に噴射された燃料Nの内壁への付着が抑制されるような気流が生じるように設計されているが、排気工程中に燃料Nが噴射されることを想定して設計されていない。そのため、排気工程中の燃焼室242内に生じる気流は、圧縮工程中の燃焼室242の気流と異なり、噴射された燃料Nの内壁への付着が抑制されるような気流にならない。これにより、排気工程中の燃焼室242に燃料Nが噴射部43から噴射されると、燃料Nが燃焼室242の内壁に付着してしまうことがある。この場合、内壁に付着した燃料Nが、ピストン241を潤滑する潤滑油に混入してエンジン1が故障してしまうおそれがある。一方、本実施の形態に係る噴射制御部624は、通常燃焼時と同様に圧縮工程中の燃焼室242に、噴射部43に燃料Nを噴射させる。このようにすることで、圧縮開放時の第一気筒群21の燃焼室242に噴射された燃料Nは、通常稼働時と同様に燃焼室242内で拡散して新気と混合される。つまり、燃料Nは、圧縮工程中の燃焼室242内で生じている、燃料Nの内壁への付着が抑制されるような気流に乗って拡散するので、燃焼室242の内壁への付着が抑制される。その結果、ピストン241を潤滑する潤滑油への燃料Nの混入が抑制されるためエンジン1の故障が抑制される。
【0040】
このとき、第一気筒群21を圧縮開放することにより第一気筒群21の燃焼室242内の圧力が低下しているので、燃焼室242内で圧縮された空気の温度は、混合気が燃焼可能な温度未満である。そのため、圧縮開放時の第一気筒群21の燃焼室242に燃料Nを噴射した場合、新気と燃料Nの混合気は燃焼しない。そして、混合気は、第一気筒群21の排気工程において未燃焼の状態で燃焼室242から第一管路31に排出される。つまり、噴射制御部624は、未燃焼の燃料Nを排気管路3に供給することができる。
【0041】
第一管路31に供給された未燃焼の燃料Nと空気の混合気は、第三管路33で第二気筒群22の排気と合流し、第二気筒群22の排気の熱により分解して炭化水素になる。炭化水素は、酸化触媒である浄化装置34に供給される。炭化水素が浄化装置34に供給されることで浄化装置34の酸化反応が促進されて、炭化水素が燃焼する。そして、炭化水素の燃焼により、フィルタ35に流入する排気の温度が上昇する。具体的には、排気の温度は、フィルタ35が捕集している物質(煤)を焼却可能な温度(例えば摂氏500度)になる。そして、フィルタ35が捕集している物質を焼却可能な温度になった排気がフィルタ35に到達することで、フィルタ35に捕集されている物質(煤等)が焼却される。
【0042】
ところで、未燃焼の燃料が吸気管路12に還流されると、フィルタ35に到達する燃料の量が少なくなってしまい、フィルタ35が捕集した物質を燃焼するのに十分な燃焼温度にならないことがある。また、未燃焼の燃料が吸気管路12に還流されると、第二気筒群22の燃焼室242に過剰な燃料が供給されてしまうおそれがある。
【0043】
そこで、流路制御部625は、圧縮開放時の第一気筒群21の燃焼室242に燃料が噴射される場合、第一気筒群21から排出される未燃焼の燃料と空気の混合気を第一還流管路131に供給しない。
図4は、気筒2から排出される排気の流れを説明するための図である。
図4の白く塗りつぶした矢印は、第一気筒群21から排出される未燃焼の燃料と空気の混合気の流れを示す。
図4の黒く塗りつぶした矢印は、第二気筒群22から排出される排気の流れを示す。丸の中にバツが入った記号は、管路に気体が流れないことを示す。
【0044】
流路制御部625は、第一制御弁151を閉じることで未燃焼の燃料と空気の混合気を第一還流管路131に供給されないようにし、未燃焼の燃料と空気の混合気を吸気管路12に還流させない。
図4に示すように、白く塗りつぶした矢印で示される混合気は、第一管路31と第一還流管路131の分岐点で第一還流管路131に向かわず、三方弁153に向かう。これにより、流路制御部625は、未燃焼の燃料と空気の混合気を全て第三管路33に供給でき、第二気筒群22の燃焼室242に過剰な燃料が供給されることを抑制できる。
【0045】
タービン162に未燃焼の燃料が供給されると、タービン162の羽やモータに燃料が付着することによりタービン162が故障してしまうおそれがある。そこで、流路制御部625は、未燃焼の燃料をタービン162に供給させない。具体的には、流路制御部625は、圧縮開放時の第一気筒群21の燃焼室242に燃料が噴射される場合、第一気筒群21のから排出される未燃焼の燃料と空気の混合気をバイパス管路36に供給させる。より具体的には、流路制御部625は、三方弁153を制御して、第一管路31とバイパス管路36を接続し、第一管路31とタービン162の接続を遮断することで、第一気筒群21から排出される未燃焼の燃料と空気の混合気をバイパス管路36に供給させる。
【0046】
図4に示すように、白く塗りつぶした矢印で示される混合気は、タービン162に向かわず、全て三方弁153を通過してバイパス管路36に向かう。このようにすることで、未燃焼の燃料と空気の混合気は、タービン162を迂回するバイパス管路36を通過してフィルタ35に到達する。つまり、流路制御部625は、タービン162に混合気が供給されることを抑制できる。
【0047】
流路制御部625は、未燃焼の燃料と空気の混合気をエンジン1に還流させないが、第二気筒群22の排気をエンジン1に還流させる。具体的には、流路制御部625は、第二気筒群22の排気の一部を第二還流管路132に供給して吸気管路12に還流させる。より具体的には、流路制御部625は、第二制御弁152を開いて第二気筒群22の排気を第二還流管路132に供給させることで、第二気筒群22の排気をエンジン1に還流させる。
【0048】
図4に示すとおり、第二気筒群22から排出された排気は、第二管路32から第二還流管路132に分岐する分岐点で、第二管路32及び第二還流管路132の各々に向かう。第二管路32を流れる排気は、タービン162を通過して第三管路33に到達する。第二還流管路132を流れる排気は、排気冷却器142及び第二制御弁152を通過して吸気管路12に到達する。これにより、流路制御部625は、第二気筒群22に供給される吸気(新気と排気の混合気体)の酸素濃度を低下させることが可能になるので、第二気筒群22の燃焼室242での燃焼時に生成される窒素酸化物の量を低減することができる。
【0049】
第一気筒群21を圧縮開放する場合、エンジン1に負荷がかかる。つまり、燃焼室内の空気の圧力が減少した状態で膨張行程が行われることにより、エンジン1に負の仕事が発生するため、エンジン1に負荷がかかる。第一気筒群21を圧縮開放する場合にエンジン1の出力を所望の出力にするためには、第二気筒群22に噴射する燃料の量を増やす必要がある。
【0050】
そのため、噴射制御部624は、第一気筒群21を圧縮開放する場合、第三噴射量よりも多い第四噴射量の燃料を、第二気筒群22の燃焼室242に噴射させる。第三噴射量は、第一気筒群21を通常稼働する場合に第二気筒群22の燃焼室242に噴射させる燃料の量である。具体的には、噴射制御部624は、第一気筒群21を圧縮開放する場合にエンジン1に生じる負荷に応じて第四噴射量を決定する。より具体的には、噴射制御部624は、第一気筒群21を圧縮開放する場合にエンジン1に生じる負荷に応じた燃料の量を第三噴射量に加えた値を第四噴射量として決定する。噴射制御部624は、噴射部43を制御して、決定した第四噴射量の燃料を第二気筒群22の燃焼室242に噴射させる。
【0051】
このように、噴射制御部624は、第一気筒群21の圧縮開放時による負荷がかかったエンジン1の第二気筒群22に噴射する燃料の量を増量する。これにより、噴射制御部624は、実質的なエンジン1の出力を増加させることなく、第二気筒群22の燃焼室242に噴射させる燃料の量を増加できる。その結果、混合気の燃焼温度が上昇するので排気の温度が上昇し、第一気筒群21から排出された未燃焼の燃料を排気管路3内で燃焼しやすくできる。
【0052】
エンジン制御装置6は、エンジン1の状態が所定の条件を満たしている場合に、フィルタ35の再生制御を実行してもよい。例えば、エンジン1の回転数が所定回転数以下の場合、回転数が所定回転数よりも大きい場合よりも単位時間当たりの燃焼回数が少ないので、排気の温度が上がりにくく、フィルタ35が捕集した物質が燃焼し難い。そこで、エンジン制御装置6は、フィルタ35の再生制御が必要であり、エンジン1の回転数が所定回転数以下である場合に、フィルタ35の再生制御を実行する。具体的には、フィルタ35の再生制御が必要であり、エンジン1の回転数が所定回転数以下である場合に、排気弁制御部623は第一気筒群21を圧縮開放し、噴射制御部624は圧縮開放時の第一気筒群21に第二噴射量の燃料を噴射させる。
【0053】
所定回転数は、エンジン1の仕様や実験などにより適宜定めればよい。所定回転数の具体的な値は、ディーゼルエンジンの場合、例えば毎分2000回転であるが、これに限定するものではない。圧縮開放時の第一気筒群21に燃料が噴射されることで、排気管路3に未燃焼の燃料が供給される。このように、エンジン制御装置6は、排気の温度が上がりにくい状況で、排気管路3に未燃焼の燃料を供給してフィルタ35の再生制御を適切に実行することが可能になる。
【0054】
なお、エンジン1の回転数が所定回転数よりも大きい場合、回転数が所定回転数以下の場合よりも単位時間当たりの燃焼回数が多くなるので、排気の温度が上昇しやすく、フィルタ35が捕集した物質が燃焼しやすくなる。そのため、エンジン制御装置6は、フィルタ35の再生制御が必要であっても、エンジン1の回転数が所定回転数よりも大きい場合、フィルタ35の再生制御を実行しない。エンジン制御装置6は、フィルタ35の再生制御が必要であり、かつエンジン1の回転数が所定回転数よりも大きい状態が所定時間継続した場合、フィルタ35の再生制御を実行してもよい。
【0055】
エンジン1に大きな負荷がかかっている状態で再生制御を行うと、過剰な負荷がエンジン1にかかってしまう。そこで、エンジン制御装置6は、フィルタ35の再生制御が必要であり、エンジン1の回転数が所定回転数以下であり、かつ指示噴射量が判定閾値以下である場合に、フィルタ35の再生制御を実行する。具体的には、フィルタ35の再生制御が必要であり、エンジン1の回転数が所定回転数以下であり、かつ指示噴射量が判定閾値以下である場合に、排気弁制御部623は第一気筒群21を圧縮開放し、噴射制御部624は圧縮開放時の第一気筒群21に第二噴射量の燃料を噴射させる。エンジン制御装置6は、フィルタ35の再生制御が必要であり、エンジン1の回転数が所定回転数以下であっても、指示噴射量が判定閾値よりも大きい場合、フィルタ35の再生制御を実行しない。
【0056】
判定閾値は、エンジン1の燃焼室242に噴射可能な最大噴射量よりも小さい。具体的には、判定閾値は、最大噴射量よりも所定値だけ小さい。所定値は、例えばエンジン1の仕様や実験などにより定められている。判定閾値Nの具体的な値は、最大噴射量Mの5分の1(20パーセント相当)であるがこれに限定するものではない。このようにすることで、エンジン制御装置6は、エンジン1に大きな負荷がかかっている状態での再生制御の実行を抑制できるので、エンジン1に過剰な負荷がかかることを抑制できる。
【0057】
[フィルタ35を再生する処理]
図5は、フィルタ35を再生する処理の流れの一例を示すフローチャートである。フィルタ35を再生する処理は、エンジン1の動作中に所定間隔で実行される。言い換えると、フィルタ35を再生する処理は、エンジン1が搭載された車両の走行中に自動的に実行される。所定間隔は、適宜定めればよく、例えば1分であるが、これに限定するものではない。また、取得部621は、フィルタ35の上流及び下流の排気の圧力と、エンジン1の指示噴射量と、エンジン1の回転数とを取得しているものとする。
【0058】
判定部622は、フィルタ35の再生制御が必要か否かを判定する(ステップS1)。具体的には、排気弁制御部623は、フィルタ35の上流の排気の圧力と下流の排気の圧力との圧力差が判定閾値未満の場合、再生制御が不要であると判定する。判定部622は、再生制御が不要である場合(ステップS1でNo)、フィルタ35を再生する処理を終了する。
【0059】
判定部622は、圧力差が所定の圧力以上の場合、再生制御が必要であると判定する。判定部622は、再生制御が必要である場合(ステップS1でYes)、エンジン1の回転数が所定回転数以下か否かを判定する(ステップS2)。判定部622は、エンジン1の回転数が所定回転数よりも大きい場合(ステップS2でNo)、単位時間あたりの燃焼回数が多く排気の温度が高くなりやすい状況であるため、フィルタ35を再生する処理を終了する。
【0060】
判定部622は、エンジン1の回転数が所定回転数以下である場合(ステップS2でYes)、指示噴射量が判定閾値以下か否かを判定する(ステップS3)。判定部622は、指示噴射量が判定閾値よりも大きい場合(ステップS3でNo)、噴射される燃料の量が多くエンジン1に大きな負荷がかかっている状況であるため、フィルタ35を再生する処理を終了する。
【0061】
排気弁制御部623は、指示噴射量が判定閾値以下である場合(ステップS3でYes)、第一気筒群21を圧縮開放する(ステップS4)。具体的には、排気弁制御部623は、第一気筒群21の圧縮工程中に第一気筒群21の排気弁42を開く。噴射制御部624は、噴射部43を制御して、圧縮開放時の第一気筒群21の燃焼室242に第二噴射量の燃料を噴射させる(ステップS5)。エンジン制御装置6は、ステップS1からステップS5の処理を、フィルタ35の再生制御が不要であると判定されるまで繰り返し実行する。
【0062】
[再生システムSの効果]
以上説明したとおり、再生システムSは、フィルタ35に捕集された物質を除去する場合に、一部の気筒である第一気筒群21の圧縮工程中に第一気筒群21の排気弁42を開き、第一気筒群21の排気弁42が開いた状態で、第二噴射量の燃料を第一気筒群21の燃焼室242に噴射する。第二噴射量は、圧縮工程中に排気弁42が閉じている状態で燃焼室242に噴射する第一噴射量よりも少ない。
【0063】
このように、圧縮工程中に排気弁42が開くので、燃焼室242内の圧力が低下して圧縮空気の温度が低下する。つまり、再生システムSは、圧縮空気の温度が、空気と燃料の混合気の燃焼温度よりも低くなった状態で、燃焼室242に燃料を噴射できる。燃焼室242に噴射された燃料は、燃焼室242で燃焼せずに未燃の状態で排出されて、排気管路3に供給される。
【0064】
上記のとおり、再生システムSは、排気管路3に燃料を噴射する噴射装置や、噴射装置に燃料を供給する配管及びポンプを追加することなく、第一気筒群21の圧縮工程中に排気弁42を開き、排気弁42が開いた状態の第一気筒群21に燃料を噴射すると言う簡易な構成で未燃焼の燃料を排気管路3に供給できる。そして、排気管路3に供給された未燃焼の燃料は、フィルタ35に達する前に排気管路3内で燃焼する。排気管路3内で燃料が燃焼することで排気の温度がフィルタ35に捕集されている物質が燃焼する温度まで上昇する。これにより、フィルタ35に捕集されている物質(煤等)は、焼却されて除去される。
【0065】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0066】
S 再生システム
1 エンジン
11 センサ群
12 吸気管路
16 過給機
131 第一還流管路
132 第二還流管路
141 排気冷却器
142 排気冷却器
143 インタークーラ
151 第一制御弁
152 第二制御弁
153 三方弁
161 コンプレッサ
162 タービン
2 気筒
21 第一気筒群
22 第二気筒群
211 第1気筒
212 第2気筒
213 第3気筒
214 第4気筒
241 ピストン
242 燃焼室
3 排気管路
31
32 第二管路
33 第三管路
34 浄化装置
35 フィルタ
36 バイパス管路
41 吸気弁
42 排気弁
43 噴射部
6 エンジン制御装置
61 記憶部
62 制御部
621 取得部
622 判定部
623 排気弁制御部
624 噴射制御部
625 流路制御部
【要約】
【課題】簡易な構成で排気管路に燃料を供給する。
【解決手段】再生システムSは、エンジン1の排気を外部に排出する排気管路3に設けられ、排気に含まれる物質を捕集するフィルタ35と、エンジン1の複数の気筒のうちの一部の気筒の圧縮工程中に第一気筒群21の排気弁42を開く排気弁制御部623と、圧縮工程中に排気弁42が開いた状態の第一気筒群21の燃焼室242に、第一気筒群21の圧縮工程中に排気弁42が閉じている状態で第一気筒群21の燃焼室242に噴射させる燃料の第一噴射量よりも少ない第二噴射量の燃料を噴射させる噴射制御部624と、を有する。
【選択図】
図3