(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】学習装置、判定装置、学習済みモデル生成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/60 20180101AFI20250218BHJP
【FI】
G16H10/60
(21)【出願番号】P 2023509897
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2021013209
(87)【国際公開番号】W WO2022208582
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】大野 友嗣
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/170290(WO,A1)
【文献】特開2019-095927(JP,A)
【文献】特開2013-109661(JP,A)
【文献】特表2019-500939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の生体情報と前記患者のカルテ情報とを取得する取得手段と、
前記カルテ情報に含まれる前記患者の容態に関する情報が前記患者の容態に関する第一条件を満たす前記患者の前記生体情報を、前記患者が不穏状態であるか否かを判別可能な前記生体情報
として選択する選択手段と、
選択された前記生体情報
に対して、不穏状態または非不穏状態のラベル付けがされた前記生体情報を用いて、対象患者の前記生体情報に基づいて前記対象患者が不穏状態であるか否かを判定する不穏判定モデルを生成するモデル生成手段と、を備える学習装置。
【請求項2】
前記患者の容態に関する情報は、前記患者の認知機能または身体機能の状態に関する情報を含む請求項
1に記載の学習装置。
【請求項3】
前記患者の容態に関する情報は、病名、病状、GCS(Glasgow Coma Scale)スコア、JCS(Japan Coma Scale)スコア、MMT(Manual Muscle Test)スコア、の少なくともいずれか一つを含む請求項
1または
2に記載の学習装置。
【請求項4】
前記第一条件は、前記患者の容態の程度に関する条件である
請求項
1から
3の何れか一項に記載の学習装置。
【請求項5】
前記不穏状態であるか否かを判別可能な前記生体情報は、前記容態の重症度が低い患者に対応する前記生体情報である請求項
1から
4の何れか一項に記載の学習装置。
【請求項6】
前記不穏状態であるか否かを判別可能な前記生体情報は、意識的な動作または発話が可能な患者に対応する前記生体情報である請求項
1から
5の何れか一項に記載の学習装置。
【請求項7】
前記選択手段は、前記カルテ情報に含まれる前記患者に行われた療養行為に関する情報が前記療養行為に関する第二条件を満たす患者の前記生体情報を、前記不穏状態であるか否かを判別可能な前記生体情報として選択する請求項
1から
6の何れか一項に記載の学習装置。
【請求項8】
前記選択手段は、前記カルテ情報に対して前記第一条件を適用して選択された前記生体情報のうち、前記カルテ情報に含まれる前記患者に行われた療養行為に関する情報が前記療養行為に関する第二条件を満たす患者の前記生体情報を、前記不穏状態であるか否かを判別可能な前記生体情報として選択する請求項1から6の何れか一項に記載の学習装置。
【請求項9】
前記療養行為は、服薬、処置、抑制、飲食の少なくともいずれか一つを含む請求項
7又は8に記載の学習装置。
【請求項10】
前記第二条件は、前記療養行為に起因する前記生体情報の変動の程度に関する条件である請求項
7から9の何れか一項に記載の学習装置。
【請求項11】
前記不穏状態であるか否かを判別可能な前記生体情報は、前記患者に前記療養行為が行われている時間以外の時間における前記生体情報である請求項
7から10の何れか一項に記載の学習装置。
【請求項12】
前記対象患者の前記生体情報と前記不穏判定モデルとを用いて前記対象患者が前記不穏状態であるか否かを判定する判定手段を備え、
前記不穏判定モデルは、請求項1から
11の何れか一項に記載の学習装置によって生成された学習済みモデルである判定装置。
【請求項13】
コンピュータが、
患者の生体情報と前記患者のカルテ情報とを取得し、
前記カルテ情報に含まれる前記患者の容態に関する情報が前記患者の容態に関する第一条件を満たす前記患者の前記生体情報を、前記患者が不穏状態であるか否かを判別可能な前記生体情報
として選択し、
選択された前記生体情報
に対して、不穏状態または非不穏状態のラベル付けがされた前記生体情報を用いて、対象患者の前記生体情報に基づいて前記対象患者が不穏状態であるか否かを判定する不穏判定モデルを生成する、学習済みモデル生成方法。
【請求項14】
患者の生体情報と前記患者のカルテ情報とを取得し、
前記カルテ情報に含まれる前記患者の容態に関する情報が前記患者の容態に関する第一条件を満たす前記患者の前記生体情報を、前記患者が不穏状態であるか否かを判別可能な前記生体情報
として選択し、
選択された前記生体情報
に対して、前記不穏状態または非不穏状態のラベル付けがされた前記生体情報を用いて、対象患者の前記生体情報に基づいて前記対象患者が不穏状態であるか否かを判定する不穏判定モデルを生成する処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習装置、判定装置、学習済みモデル生成方法及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
医療や介護の現場においては、患者が不穏状態に陥る可能性がある。患者が不穏状態に陥ると、抜管、抜針、抜去や転倒、転落などのリスクが高まり、患者自身がけがを負うおそれがある。そこで、このような患者の不穏状態を予め検知する技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、入力される対象患者の生体情報の特徴量に基づいて、対象患者の容態が平常状態と比較して変化しているか否かを示す識別情報を判定し、当該識別情報と、事前に学習された対処予測用パラメータとに基づいて、対象患者に対する対処情報を推定する生体情報処理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
患者の抜管、抜針、抜去や転倒、転落などのリスクを低減するためには、患者が不穏状態であるか否かの判定を精度よく行う必要がある。不穏状態であるか否かの判定を精度よく行うためには、特許文献1に開示された、不穏状態を判定するモデルの精度を高めることが好ましい。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、患者の状態を判定するモデルの精度を向上することができる装置等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様における学習装置は、患者の生体情報と前記患者のカルテ情報とを取得する取得手段と、前記カルテ情報に基づいて、不穏状態であるか否かを判別可能な患者の前記生体情報を選択する選択手段と、選択された前記生体情報を用いて、対象患者の前記生体情報に基づいて前記対象患者が不穏状態であるか否かを判定する不穏判定モデルを生成するモデル生成手段と、を備える。
【0008】
また、本発明の一様態における判定装置は、対象患者の生体情報と不穏判定モデルとを用いて前記対象患者が不穏状態であるか否かを判定する判定手段を備え、前記不穏判定モデルは、患者の生体情報と前記患者のカルテ情報とを取得する取得手段と、前記カルテ情報に基づいて、不穏状態であるか否かを判別可能な患者の前記生体情報を選択する選択手段と、選択された前記生体情報を用いて、対象患者の前記生体情報に基づいて前記対象患者が不穏状態であるか否かを判定する不穏判定モデルを生成するモデル生成手段と、を備える学習装置によって生成された学習済みモデルである。
【0009】
また、本発明の一様態における学習済みモデル生成方法は、コンピュータが、患者の生体情報と前記患者のカルテ情報とを取得し、前記カルテ情報を用いて、不穏状態であるか否かを判別可能な患者の前記生体情報を選択し、選択された前記生体情報を用いて、対象患者の前記生体情報に基づいて前記対象患者が不穏状態であるか否かを判定する不穏判定モデルを生成する。
【0010】
また、本発明の一様態における記録媒体は、患者の生体情報と前記患者のカルテ情報とを取得し、前記カルテ情報を用いて、不穏状態であるか否かを判別可能な患者の前記生体情報を選択し、選択された前記生体情報を用いて、対象患者の前記生体情報に基づいて前記対象患者が不穏状態であるか否かを判定する不穏判定モデルを生成する処理をコンピュータに実行させるプログラムを格納する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、患者の状態を判定するモデルの精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1の実施形態における学習装置10の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態における学習装置10が行う動作の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第2の実施形態における不穏判定システム200の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第2の実施形態における不穏判定システム200が行う動作の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、ハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
本発明の各実施形態において、不穏判定モデルは、患者が不穏状態であるか否かを判定する学習済みモデルである。不穏状態とは、患者に落ち着きがない状態を示す。不穏状態は、精神を正常にコントロールできない状態を含んでいてもよい。また、不穏状態は患者のせん妄により引き起こされる状態を含んでいてもよい。不穏状態は、患者の精神的または身体的な要因により生じるものであってもよい。患者は、不穏状態であると問題行動を起こすことが多いことが分かっている。つまり、不穏状態である患者は問題行動を起こす可能性が高い。したがって、患者が不穏状態であるか否かを把握することで、当該患者が問題行動を起こす恐れがあるか否かを予測することができる。ここで、患者の問題行動は、例えば、当該行動を受けて、患者に療養行為を行う医療従事者によって何らかの対処が必要となる行動である。患者の問題行動は、例えば、離床する、一人歩きをする、徘徊する、病院の別のフロアに行く、ベッドの柵を外す、ベッドから転落する、点滴やチューブ類をいじる、点滴やチューブ類を抜去する、奇声を発する、暴言を発する、暴力をふるう等である。なお、患者の行動が問題行動に該当するか否かは、後述する患者の容態に応じて決定されてもよい。本発明の各実施形態において、不穏判定モデルは、患者が問題行動を起こしているか否かを判定してもよい。以下、患者の正常状態、すなわち不穏状態でない状態を非不穏状態と記載する。
【0015】
また、本発明の各実施形態において、患者は、医療従事者により療養行為を受ける人物である。なお、患者は、不穏状態の判定対象者であればこれに限らない。
【0016】
本発明の各実施形態において、生体情報は、患者の生命活動に伴って変化する情報である。すなわち、生体情報は、患者の生命活動に伴う変化を示す時系列の情報である。生体情報は、例えば、心拍数、心拍変動、呼吸数、血圧値、体温、皮膚温度、血流量、血中酸素飽和度、体動等の少なくとも何れか一つである。生体情報は、不穏状態の判定に用いられるその他の情報を含んでいてもよい。生体情報は、例えば、患者に装着された少なくとも一つのセンサを用いて測定される。当該センサは、例えば、心拍センサ、呼吸数センサ、血圧センサ、体温センサ、血中酸素飽和度センサ、加速度センサ等である。患者は、一つのセンサが搭載されたデバイスを装着していてもよいし、複数のセンサが搭載されたデバイスを装着していてもよい。患者は、複数のデバイスを装着していてもよい。デバイスは、主としてウェアラブルデバイスであり、具体的にはスマートウォッチ、スマートバンド、アクティブトラッカー、衣服センサ、ウェアラブル心拍センサ等が挙げられる。また生体情報は、例えば、患者の病室に設置された撮像装置(カメラ等)により取得された画像情報や、患者の音声及び患者の周囲環境における音情報の一方又は両方から抽出されてもよい。
【0017】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態における学習装置10の構成について説明する。本実施形態における学習装置10は、不穏判定モデルを生成する。
【0018】
図1は、本実施形態における学習装置10の構成を示すブロック図である。
図1に示す学習装置10は、取得部11と、選択部12と、モデル生成部13と、を備える。
【0019】
取得部11は、患者の生体情報と当該患者のカルテ情報とを取得する取得手段である。
【0020】
生体情報は、一例として、当該生体情報が測定された時間を示す時間情報と対応付けて、患者を識別する患者IDと紐づけて図示しない記憶装置等に記憶されている。取得部11は、当該記憶装置から患者の生体情報を取得してよい。また、取得部11は、無線又は有線などの通信ネットワークを介して学習装置10と通信可能なように接続されたセンサやデバイスから、当該時間情報と対応付けられた患者の生体情報を取得してもよい。
【0021】
カルテ情報は、当該患者のカルテに記載された情報である。カルテ情報は、患者基本情報、容態に関する情報、療養行為に関する情報、の少なくとも一つを含む。患者基本情報は、例えば、患者の健康保険証に紐づけられた情報や問診票より得られる当該患者に関する情報である。患者基本情報は、より詳細な一例としては、患者氏名、年齢、性別、既往歴、家族歴、社会歴、等であるが、これ以外の情報が含まれてもよい。
【0022】
容態に関する情報は、患者の中長期的な状態を示す情報である。容態に関する情報は、例えば、患者の認知機能、身体機能、及び運動機能の少なくとも一つの状態に関する情報を含む。容態に関する情報は、例えば、患者の病名、病状、GCS(Glasgow Coma Scale)スコア、JCS(Japan Coma Scale)スコア、MMT(Manual Muscle Test)スコア、等の少なくとも一つを含む。容態に関する情報は、医療従事者が当該患者の容態を判断する指標となる情報であれば、これに限らない。容態に関する情報は、例えば、要介護度、FIM(Functional Independence Measure)、SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)、BBS(Berg Balance Scale)、の少なくとも一つのスコアを含んでもよい。
【0023】
療養行為に関する情報は、当該患者に対して行われた療養行為を記録した情報である。療養行為は、例えば、医師による行われる診療行為、看護師により行われる行為である療養上の世話および診療の補助を含む。療養行為に関する情報は、以下一例として療養記録と記載するが、これに限られない。療養記録は、服薬記録、処置記録、抑制記録、飲食記録、等の少なくとも一つを含む。服薬記録は、患者の服薬に関する記録である。服薬記録は、例えば、患者が服用した薬の種類及び量、患者が薬を服用した時間、等を含む。処置記録は、患者及び患者の周囲環境の一方又は両方に対して行われた処置に関する記録である。処置記録は、例えば、処置の種類、処置が行われた時間、等を含む。処置は、具体的には、着替え、おむつ替え、床ずれ防止のための姿勢変更、ベッドメイキング、体重測定、点滴の抜き差し、等である。抑制記録は、患者に対して行われた抑制に関する記録である。ここで、抑制は患者の身体的拘束を含む。抑制記録は、抑制の種類、抑制部位、抑制が行われた時間、等を含む。飲食記録は、患者が行った飲食に関する記録である。飲食記録は、食事内容、飲食時間、飲食量、等を含む。
【0024】
カルテ情報は、例えば、医療従事者が患者のカルテに記録することで取得される。なお、カルテ情報は、医療従事者が当該患者に関してカルテ以外に記録した情報を含んでもよい。また、カルテ情報は、例えば、患者の病室に設置されたカメラにより取得された画像情報や、患者の音声及び患者の周囲環境における音情報の一方又は両方から抽出され取得されてもよい。
【0025】
カルテ情報は、患者IDと紐づけて図示しない記憶装置等に記憶されている。取得部11は、当該記憶装置から患者のカルテ情報を取得してもよいし、無線通信や有線などを用いて学習装置10と通信可能なように接続された、医療従事者によってカルテ情報が入力される入力装置から患者のカルテ情報を直接取得してもよい。
【0026】
取得部11は、カルテ情報が更新されるたびに、カルテ情報を取得してよい。例えば、患者の容態は数週間から数カ月の期間にわたり変化しないことがあり、この場合には、更新されない可能性がある。この場合に、取得部11は、数週間から数カ月に1回のペースで患者の容態に関する情報を取得する。また、療養行為に関する情報は、医療従事者がカルテに記録されるたびに更新されることが考えられるため、取得部11は、カルテが更新されるたびに療養行為に関する情報を取得する。すなわち、取得部11は、カルテ情報のうち更新された情報のみを取得してもよい。
【0027】
選択部12は、カルテ情報に基づいて、患者が不穏状態であるか否かが判別可能な生体情報を選択する選択手段である。具体的には、選択部12は、取得部11が取得したカルテ情報に含まれる情報が第一条件及び第二条件の一方又は両方を満たす患者の生体情報を、不穏状態であるか否かが判別可能な患者の生体情報として選択する。
【0028】
選択部12で選択された患者の生体情報には、後述する、不穏状態または非不穏状態のラベル付けがなされる。選択部12では、当該ラベル付けにおいて不穏状態であるか否かが判別可能な患者の生体情報を選択される。すなわち、選択部12が選択する患者の生体情報は、不穏状態であるか否かのラベル付けが比較的に容易な生体情報であってよい。
【0029】
選択部12は、患者の容態に関する情報が患者の容態に関する第一条件を満たす患者の生体情報を、不穏状態であるか否かを判別可能な患者の前記生体情報として選択する。なお、上述のように、容態に関する情報は、カルテ情報に含まれる情報である。第一条件は、患者の容態の程度に関する条件である。
【0030】
例えば、選択部12は、第一条件に基づいて、例えば、容態の重症度が低い患者に対応する生体情報を選択する。また、第一条件に基づいて選択される生体情報は、例えば、GCSスコアが9以上、JCSスコアが11以下、MMTスコアが2以上、等の患者に対応する生体情報である。GCSスコアは、脳外科患者の意識レベルを判定した指標であり、一般的には軽症、中等症、及び重症の3段階に分類される。GCSスコアは、E(開眼)、V(言語反応)、及びM(運動反応)の3つの項目における観察結果に基づき判断される。GCSスコアが9以上の患者は、軽症または中等症に分類される患者である。JCSスコアは、覚醒の程度によって分類したもので、分類の仕方から3-3-9度方式とも呼ばれ、数値が大きくなるほど意識障害が重いことを示す。JCSスコアは、刺激しないでも覚醒している状態は一桁の数字で表現され、刺激すると覚醒する状態は二桁の数字で表現され、刺激しても覚醒しない状態は三桁の数字で表現される。JCSスコアが11以下の患者は、呼びかけで容易に覚醒する状態、または刺激しないでもだいたい意識清明だが今一つはっきりしない状態を示す患者を含む。MMTスコアは、脳外科患者の四肢の麻痺の程度を判定した指標であり、スコア0から5の6段階で評価される。MMTスコアが2以上の患者は、正常な患者から、重力を除去すれば完全に運動が可能な患者が該当する。
【0031】
また、選択部12は、第一条件に基づいて、意識的な動作または発話が可能な患者に対応する生体情報を選択してもよい。
【0032】
前述のように、選択部12は、第一条件に基づく選択を行う場合、カルテ情報に含まれる患者の容態に関する情報を用いる。選択部12は、取得部11が取得したカルテ情報に含まれる患者の容態に関する情報のうち、定められた第一条件に対応する情報を用いて、患者の生体情報を選択する。
【0033】
また、選択部12は、療養行為に関する情報が療養行為に関する第二条件を満たす患者の生体情報を、不穏状態であるか否かを判別可能な患者の前記生体情報として選択する。なお、上述のように、療養行為に関する情報はカルテ情報に含まれる情報である。第二条件は、前記療養行為に起因する前記患者の生体情報の変動の程度に関する条件である。また、第二条件に基づいて選択される生体情報は、例えば、患者に療養行為が行われている時間以外の時間における生体情報である。
【0034】
選択部12は、第二条件に基づく選択を行う場合、カルテ情報に含まれる患者の療養行為に関する情報を用いる。選択部12は、取得部11が取得したカルテ情報に含まれる患者の療養行為に関する情報のうち、定められた第二条件に対応する情報を用いて、患者の生体情報を選択する。
【0035】
ここで、第二条件に基づいて選択される生体情報の例について説明する。一例として、第二条件に基づいて選択される生体情報は、薬の服用から所定時間後の生体情報、が含まれる。当該所定時間は、例えば、服用した薬の効果維持時間、等である。これは、薬の効果が維持されている時間では、当該薬を服用した患者の生体情報が薬の作用により不自然に変動または安定する可能性があるためである。薬の効果維持時間は、例えば、療養記録に含まれる患者が服用した薬の種類及び量を、薬の種類及び量と効果維持時間とを少なくとも含むデータベース等と照合することにより特定される。この場合、選択部12は療養行為に関する情報に含まれる服薬に関する情報を参照する。選択部12は、生体情報が測定された時間を示す時間情報を参照し、服薬に関する情報に含まれる薬を服用した時間から、患者が服用した薬の種類及び量から特定される効果維持時間が経過した時間の生体情報を選択する。
【0036】
また、一例として、第二条件に基づいて選択される生体情報は、処置が行われた時間以外の時間における生体情報、抑制が行われた時間以外の時間における生体情報、等が含まれる。これは、患者に対して処置または抑制が行われている時間や患者の周囲環境に対して処置が行われている時間は、当該処置や抑制により、患者の意思とは無関係な動きが発生したり、患者の自発的な動きが制限されたりすることで、当該患者の生体情報が不自然に変動する可能性があるためである。この場合、選択部12は、例えば、第二条件に応じて、療養行為に関する情報に含まれる処置に関する情報を参照する。選択部12は、処置に関する情報に代えて、または処置に関する情報と共に、抑制に関する情報を参照してもよい。選択部12は、生体情報が測定された時間を示す時間情報を参照し、処置が行われた時間に該当しない時間の生体情報を選択する。また、選択部12は、生体情報が測定された時間を示す時間情報を参照し、抑制が行われた時間に該当しない時間の生体情報を選択する。
【0037】
さらに、一例として、第二条件に基づいて選択される生体情報は、飲食から所定時間後の生体情報、が挙げられる。これは、飲食中及び飲食終了後所定時間内は、当該患者が飲食に伴う動きを行ったり、消化に伴う生体反応がみられたりすることで、当該患者の生体情報が不自然に変動する可能性があるためである。この場合、選択部12は療養行為に関する情報に含まれる飲食に関する情報を参照する。選択部12は、生体情報が測定された時間を示す時間情報を参照し、療養記録に含まれる飲食時間から、所定時間が経過している時間の生体情報を選択する。なお、上述した所定時間は、例えば30分であるが、これに限られず、適宜定められればよい。
【0038】
選択部12は、第一条件及び第二条件のどちらか一方に基づいて不穏判定モデルの学習に用いる患者の生体情報を選択してもよいし、第一条件及び第二条件の両方に基づいて生体情報を選択してもよい。第一条件及び第二条件の両方に基づいて生体情報を選択する場合、選択部12は、第一条件を適用して選択された生体情報に対して、第二条件を適用することで、不穏状態であるか否かが判別可能な生体情報を選択してもよい。
【0039】
モデル生成部13は、選択された生体情報を用いて、不穏判定モデルを生成するモデル生成手段である。ここで、不穏判定モデルは、患者の生体情報に基づいて、患者が不穏状態であるか否かを判定するモデルである。なお、以下、不穏判定の対象となる患者を対象患者と表記する場合がある。モデル生成部13は、不穏状態または非不穏状態のラベル付けがされた当該生体情報を学習データとして機械学習を行い、不穏判定モデルを生成する。
【0040】
上述のように、不穏判定モデルは、患者の生体情報に基づいて、患者が不穏状態であるか否かを判定するモデルである。不穏判定モデルは、患者の生体情報を入力として、不穏スコアを出力する。不穏スコアは、不穏状態または非不穏状態を示す指標となる値である。不穏スコアは、例えば、0以上1以下の値である。この場合、不穏スコアは、1に近いほど不穏状態である可能性が高いことを示し、0に近いほど非不穏状態である可能性が高いことを示す。例えば、予め定められた0以上1以下の値を閾値として、当該閾値を基準として不穏状態または非不穏状態が判断される。また、不穏スコアは、0または1の2値で表現される値であってもよい。この場合、不穏スコアは、不穏状態であれば1、非不穏状態であれば0を示す。
【0041】
モデル生成部13は、不穏状態または非不穏状態のラベルが付けされた生体情報を学習データとして、例えば、サポートベクターマシン(SVM)、ニューラルネットワーク、その他公知の機械学習の手法等を用いて学習を行う。
【0042】
なお、選択部12で選択された生体情報への不穏状態または非不穏状態のラベル付けは、モデル生成部13が行ってもよいし、図示しない他の装置やユーザによって行われてもよい。
【0043】
続いて、学習装置10が行う動作について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、学習装置10が行う動作の一例を示すフローチャートである。
【0044】
取得部11は、患者の生体情報及び当該患者のカルテ情報を取得する(ステップS101)。
【0045】
選択部12は、ステップS102からステップS103にかけて、カルテ情報を用いて、不穏状態であるか否かが判別可能な患者の生体情報を選択する。選択部12は、まず、カルテ情報に含まれる患者の容態に関する情報を用いて、患者の容態に関する第一条件を満たす患者の生体情報を選択する(ステップS102)。取得した生体情報が第一条件を満たす場合(ステップS102:Yes)、選択部12は、さらにカルテ情報に含まれる患者の療養記録を用いて、療養記録に関する第二条件を満たす患者の生体情報を選択する(ステップS103)。ステップS103において、取得した生体情報が第一条件を満たさない場合(ステップS102:No)、または取得した生体情報が第二条件を満たさない場合(ステップS103:No)は、学習装置10は、当該生体情報を学習データとせず、処理を終了する。取得した生体情報が第二条件を満たす場合(ステップS103:Yes)、モデル生成部は、選択部12によって選択された生体情報を用いて不穏判定モデルを生成する(ステップS104)。
【0046】
なお、上述した学習装置10の動作は、選択部12において、第一条件に基づく生体情報の選択及び第二条件に基づく生体情報の選択の両方が行われる場合における一例を示している。この場合、第一条件に基づく生体情報の選択(ステップS102)及び第二条件に基づく生体情報の選択(ステップS103)の順序を入れ替えてもよい。また、第一条件に基づく生体情報の選択及び第二条件に基づく生体情報の選択のどちらか一方が行われない場合、それぞれステップS103またはステップS102のどちらか一方の動作が省略される。また、上述した学習装置10の動作は、例えば、生体情報が図示しない記憶装置等に所定数以上蓄積されたときに行われてもよい。
【0047】
不穏判定モデルにおいては、収集された患者の生体情報に対して、不穏状態であるか否かが精度良くラベル付けされた学習データを用いて学習が行われることが、精度向上につながる。しかしながら、収集された患者の生体情報には、例えば、様々な重症度の患者の生体情報や、患者が療養行為を受けているときの生体情報などが含まれている可能性がある。このような患者の状態や状況に関わらずに生体情報を収集すると、収集した生体情報に対して不穏状態であるか否かを精度良くラベル付けすることが困難である場合がある。そのため、不穏状態であるか否かが不明瞭な生体情報にラベル付けがされた学習データを用いて不穏判定モデルが学習されてしまう可能性があり、高精度の不穏判定モデルを生成することが難しい場合がある。本実施形態における学習装置10は、選択部12において、カルテ情報に基づいて、不穏状態であるか否かを判別可能な患者の生体情報を選択する。これにより、学習装置10は、当該生体情報に不穏状態または非不穏状態のラベル付けを行う際に、不穏状態または非不穏状態の判別が容易である可能性が高い学習データを抽出することができる。そして、学習装置10は、モデル生成部13において、選択部12により選択された生体情報を用いて不穏判定モデルを生成する。このような構成により、学習装置10は、精度よくラベル付けがされた生体情報のみを学習データとして用いて学習を行うことが可能となり、精度の良い不穏判定モデルを生成することができる。
【0048】
本実施形態における学習装置10は、上述したように、選択部12において、第一条件に基づいて、容態の重症度が低い患者に対応する生体情報を選択する。患者の容態の重症度が高いと、当該患者の生体情報に異常が現れ、当該生体情報に不穏状態または非不穏状態のラベル付けを行う際に、不穏状態または非不穏状態の判別が困難となる可能性が高い。そのため、選択部12が、第一条件に基づいて容態の重症度が低い患者に対応する生体情報を選択することにより、学習装置10は不穏状態または非不穏状態の判別が可能な患者の生体情報を抽出することができる。これにより、学習装置10は、当該生体情報への不穏状態または非不穏状態のラベル付けが精度よく行われた学習データを用いることができる。さらに、学習装置10は、精度よくラベル付けがされた生体情報を学習データとして用いて学習を行うことにより、精度の良い不穏判定モデルを生成することができる。
【0049】
本実施形態における学習装置10は、上述したように、選択部12において、第一条件に基づいて、意識的な動作または発話が可能な患者に対応する生体情報を選択する。患者が意識的な動作や発話が不可能であると、当該患者が不穏状態であっても行動や言動に表出せず、当該患者が不穏状態であるか否かを判別困難である可能性が高い。そのため、選択部12が、第一条件に基づいて意識的な動作または発話が可能な患者に対応する生体情報を選択することにより、学習装置10は不穏状態または非不穏状態の判別が可能な患者の生体情報を抽出することができる。これにより、学習装置10は、当該生体情報への不穏状態または非不穏状態のラベル付けが精度よく行われた学習データを用いることができる。さらに、学習装置10は、精度よくラベル付けがされた生体情報を学習データとして用いて学習を行うことにより、精度の良い不穏判定モデルを生成することができる。
【0050】
本実施形態における学習装置10は、上述したように、選択部12において、第二条件に基づいて、患者に療養行為が行われている時間以外の時間における生体情報を選択する。患者に対し療養行為が行われているまたは患者に行われた療養行為の影響が持続している間には、当該患者の生体情報は当該療養行為の影響を受け不自然に変動するため、不穏状態または非不穏状態の判別が困難となる可能性が高い。そのため、選択部12が、第二条件に基づいて患者に療養行為が行われている時間以外の時間における生体情報を選択することにより、学習装置10は不穏状態または非不穏状態の判別が可能な患者の生体情報を抽出することができる。これにより、学習装置10は、当該生体情報への不穏状態または非不穏状態のラベル付けが精度よく行われた学習データを用いることができる。さらに、学習装置10は、精度よくラベル付けがされた生体情報を学習データとして用いて学習を行うことにより、精度の良い不穏判定モデルを生成することができる。
【0051】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態における不穏判定システム200の構成について説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態における不穏判定システム200の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、第2の実施形態における不穏判定システム200は、判定装置220と、生体情報取得装置230と、判定結果出力装置240と、を備える。判定装置220と生体情報取得装置230、及び判定装置220と判定結果出力装置240は、Wi-fi、Bluetooth(登録商標)等の無線通信や有線などを用いて、互いに通信可能なように接続されている。
【0052】
判定装置220は、不穏判定モデルを用いて対象患者の不穏状態を判定する。判定装置220は、対象患者情報取得部221と、判定部222と、出力部223と、を備える。判定装置220は、例えば、医療機関に備えられたコンピュータ等の情報端末内で実現される。判定装置220は、例えば、クラウドサーバ上で実現されてもよい。
【0053】
対象患者情報取得部221は、不穏状態を判定する対象である対象患者の生体情報を取得する。対象患者情報取得部221は、後述する生体情報取得装置230により取得された、対象患者の不穏状態の判定に用いる生体情報を受信することで、当該対象患者の生体情報を取得する。
【0054】
判定部222は、対象患者の生体情報と、不穏判定モデルとを用いて対象患者が不穏状態であるか否かを判定する判定手段である。具体的には、判定部222は、対象患者の生体情報を不穏判定モデルに入力し、不穏スコアを得る。そして、判定部222は、不穏スコアに基づいて対象患者の不穏状態または非不穏状態を判定する。
【0055】
ここで、不穏判定モデルは、第1の実施形態における学習装置10により生成されたモデルである。すなわち、本実施形態における不穏判定モデルは、カルテ情報に基づいて選択された患者の生体情報を用いて予め生成された学習済みモデルである。判定部222は、図示しない記憶装置等に記憶された不穏判定モデルを取得し、対象患者の不穏状態を判定する。
【0056】
出力部223は、判定部222による対象患者の不穏状態の判定結果を出力する。出力部223は、当該判定結果を後述する判定結果出力装置240に出力する。出力部223は、当該判定結果を、判定結果出力装置240において出力可能な形式で出力する。例えば、判定結果出力装置240が、判定結果を出力するディスプレイ等の表示手段を備える場合、出力部223は、当該表示手段を制御する表示制御部としての機能を有する。このように、出力部223は、判定結果出力装置240における判定結果出力の形式に応じて、判定結果出力装置240を制御する手段として機能する。
【0057】
生体情報取得装置230は、患者の生体情報を取得する装置である。生体情報取得装置230は、例えば、ウェアラブルデバイス、等である。生体情報取得装置230は、例えば、患者に装着することで当該患者の生体情報を取得する少なくとも一つのセンサを含む装置である。生体情報及びセンサは上述した通りである。また、生体情報取得装置230は、例えば、患者の病室に設置された撮像装置や、患者の音声及び患者の周囲環境における音情報を取得する装置であってもよい。この場合、生体情報取得装置230は、取得した画像情報や音情報に基づき患者の生体情報を抽出する処理を行う。
【0058】
判定結果出力装置240は、判定装置220から取得した対象患者の不穏状態の判定結果を出力する。判定結果出力装置240は、例えば、医療機関に備えられたコンピュータ等の情報端末である。判定結果出力装置240は、医療従事者が保有するタブレット端末、スマートフォン等の情報端末であってもよい。判定結果出力装置240は、例えば、ディスプレイ等の文字や画像を表示可能な表示手段、スピーカ等の音を出力可能な音出力手段、等の少なくとも一つを含む。判定結果出力装置240は、当該表示手段、音出力手段等の少なくとも一つを用いて、医療従事者に対象患者の不穏状態の判定結果を提示する。
【0059】
判定結果出力装置240は、対象患者の不穏状態の判定結果に加えて、生体情報取得装置230が取得した対象患者の生体情報を併せて出力してもよい。この場合、生体情報取得装置230と判定結果出力装置240とは、例えば、上述したような無線通信や有線などを用いて互いに通信可能なように接続されている。
【0060】
続いて、不穏判定システム200が行う動作について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、不穏判定システム200が行う動作の一例を示すフローチャートである。
【0061】
生体情報取得装置230は、対象患者の生体情報を取得する (ステップS201) 。そして、生体情報取得装置230は、取得した対象者の生体情報を判定装置220に送信する(ステップS202)。
【0062】
判定装置220の対象患者情報取得部221は、生体情報取得装置230から対象患者の生体情報を受信する(ステップS203)。判定部222は、対象患者の生体情報と、不穏判定モデルとを用いて対象患者の不穏状態を判定する(ステップS204)。出力部223は、判定部222による対象患者の不穏状態の判定結果を、判定結果出力装置240に送信する(ステップS205)。
【0063】
判定結果出力装置240は、判定装置220から対象患者の不穏状態の判定結果を受信する(ステップS206)。そして、判定結果出力装置240は、表示手段、音出力手段等の少なくとも一つを用いて、医療従事者等に対象患者の不穏状態の判定結果を出力する(ステップS207)。
【0064】
本実施形態における不穏判定システム200は、判定装置220において、対象患者の生体情報と、不穏判定モデルとを用いて、対象患者の不穏状態を判定する。不穏判定モデルは、第1の実施形態における学習装置10により生成されたモデルである。判定装置220は、当該不穏判定モデルを用いることにより、対象患者の不穏状態を精度よく判定することができる。対象患者の不穏状態が精度よく判定された判定結果が、判定結果出力装置240に出力されることで、医療従事者等が患者は不穏状態を効率よく把握することができる。このように、不穏判定システム200は、医療従事者等の業務効率化に寄与する。
【0065】
不穏判定システム200は、第1の実施形態における学習装置10を備えていてもよい。すなわち、不穏判定システム200は、学習装置を含むシステムであってもよい。この場合、判定装置220は、学習装置10により生成された不穏判定モデルを用いて、対象患者の不穏状態を判定する。不穏判定システム200は、再学習の機能を備えていてもよい。対象患者情報取得部221が取得した対象患者の生体情報と、図示しない記憶装置等から取得した対象患者のカルテ情報とを学習装置10がさらに用いることで、不穏判定システム200は不穏判定モデルを生成する。不穏判定システム200は、判定装置220が出力した対象患者の不穏状態の判定結果が予め定められた所定の精度に達しない場合、再学習を行うようにしてもよい。なお、不穏判定システム200における判定装置220が、学習装置10が備える構成を含んでいてもよい。
【0066】
<実施形態の各構成要素を実現するハードウェアの構成>
【0067】
本発明の各実施形態において、各装置及びシステムの各構成要素は、機能単位のブロックを示している。各装置及びシステムの各構成要素の一部又は全部は、例えば
図5に示すような情報処理装置300とプログラムとの任意の組み合わせにより実現される。情報処理装置300は、一例として、以下のような構成を含む。
・CPU(Central Processing Unit)301
・ROM(Read Only Memory)302
・RAM(Random Access Memory)303
・RAM303にロードされるプログラム304
・プログラム304を格納する記憶装置305
・記録媒体306の読み書きを行うドライブ装置307
・通信ネットワーク309と接続する通信インターフェース308
・データの入出力を行う入出力インターフェース310
・各構成要素を接続するバス311
【0068】
各実施形態における各装置の各構成要素は、これらの機能を実現するプログラム304をCPU301が取得して実行することで実現される。各装置の各構成要素の機能を実現するプログラム304は、例えば、予め記憶装置305やRAM303に格納されており、必要に応じてCPU301が読み出す。なお、プログラム304は、通信ネットワーク309を介してCPU301に供給されてもよいし、予め記録媒体306に格納されており、ドライブ装置307が当該プログラムを読み出してCPU301に供給してもよい。
【0069】
各装置の実現方法には、様々な変形例がある。例えば、各装置は、構成要素毎にそれぞれ別個の情報処理装置300とプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。また、各装置が備える複数の構成要素が、一つの情報処理装置300とプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。
【0070】
また、各装置の各構成要素の一部又は全部は、プロセッサ等を含む汎用または専用の回路や、これらの組み合わせによって実現される。これらは、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各装置の各構成要素の一部又は全部は、上述した回路等とプログラムとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0071】
各装置の各構成要素の一部又は全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は、集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントアンドサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。
【0072】
なお、上記の説明では、患者の不穏状態を判定するモデルを生成する例を示したが、本願発明は、不穏状態を判定するモデルに限らず、患者等の対象者の状態を判定するモデルを生成するあらゆる場面において適用可能である。
【0073】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、前述の実施形態の構成は、組み合わせたり或いは一部の構成部分を入れ替えたりしてもよい。
【0074】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0075】
(付記1)
患者の生体情報と前記患者のカルテ情報とを取得する取得手段と、
前記カルテ情報に基づいて、前記患者が不穏状態であるか否かを判別可能な前記生体情報を選択する選択手段と、
選択された前記生体情報を用いて、対象患者の前記生体情報に基づいて前記対象患者が不穏状態であるか否かを判定する不穏判定モデルを生成するモデル生成手段と、
を備える学習装置。
(付記2)
前記選択手段は、前記カルテ情報に含まれる前記患者の容態に関する情報が前記患者の容態に関する第一条件を満たす患者の前記生体情報を、前記不穏状態であるか否かを判別可能な前記生体情報として選択する、付記1に記載の学習装置。
(付記3)
前記患者の容態に関する情報は、前記患者の認知機能または身体機能の状態に関する情報を含む、付記2に記載の学習装置。
(付記4)
前記患者の容態に関する情報は、病名、病状、GCS(Glasgow Coma Scale)スコア、JCS(Japan Coma Scale)スコア、MMT(Manual Muscle Test)スコア、の少なくともいずれか一つを含む、付記2または3に記載の学習装置。
(付記5)
前記第一条件は、前記患者の容態の程度に関する条件である、付記2から4の何れか一に記載の学習装置。
(付記6)
前記不穏状態であるか否かを判別可能な前記生体情報は、前記容態の重症度が低い患者に対応する前記生体情報である、付記2から5の何れか一に記載の学習装置。
(付記7)
前記不穏状態であるか否かが判別可能な前記生体情報は、意識的な動作または発話が可能な患者に対応する前記生体情報である、付記2から6の何れか一に記載の学習装置。
(付記8)
前記選択手段は、前記カルテ情報に含まれる前記患者に行われた療養行為に関する情報が前記療養行為に関する第二条件を満たす前記患者の生体情報を、前記不穏状態であるか否かを判別可能な前記生体情報として選択する、付記1から7の何れか一に記載の学習装置。
(付記9)
前記療養行為は、服薬、処置、抑制、飲食の少なくともいずれか一つを含む、付記8に記載の学習装置。
(付記10)
前記第二条件は、前記療養行為に起因する前記生体情報の変動の程度に関する条件である、付記8または9に記載の学習装置。
(付記11)
前記不穏状態であるか否かを判別可能な前記生体情報は、前記患者に前記療養行為が行われている時間以外の時間における前記生体情報である、付記8から10の何れか一に記載の学習装置。
(付記12)
前記選択手段は、前記カルテ情報に対して前記第一条件を適用して選択された前記生体情報に対して、前記第二条件を適用することで、前記不穏状態であるか否かを判別可能な前記生体情報を選択する、付記8から10の何れか一に記載の学習装置。
(付記13)
前記対象患者の前記生体情報と前記不穏判定モデルとを用いて前記対象患者が前記不穏状態であるか否かを判定する判定手段を備え、前記不穏判定モデルは、付記1から12の何れか一に記載の学習装置によって生成されたモデルである判定装置。
(付記14)
コンピュータが、
患者の生体情報と前記患者のカルテ情報とを取得し、
前記カルテ情報を用いて、前記患者が不穏状態であるか否かを判別可能な前記生体情報を選択し、
選択された前記生体情報を用いて、対象患者の前記生体情報に基づいて前記対象患者が不穏状態であるか否かを判定する不穏判定モデルを生成する、学習済みモデル生成方法。
(付記15)
患者の生体情報と前記患者のカルテ情報とを取得し、
前記カルテ情報を用いて、前記患者が不穏状態であるか否かを判別可能な前記生体情報を選択し、
選択された前記生体情報を用いて、対象患者の前記生体情報に基づいて前記対象患者が不穏状態であるか否かを判定する不穏判定モデルを生成する処理をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録媒体。
【符号の説明】
【0076】
10 学習装置
11 取得部
12 選択部
13 モデル生成部
200 不穏判定システム
220 判定装置
221 対象患者情報取得部
222 判定部
223 出力部
230 生体情報取得装置
240 判定結果出力装置
300 情報処理装置
301 CPU
302 ROM
303 RAM
304 プログラム
305 記憶装置
306 記録媒体
307 ドライブ装置
308 通信インターフェース
309 通信ネットワーク
310 入出力インターフェース
311 バス