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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10D 30/87 20250101AFI20250218BHJP
   H10D 30/47 20250101ALI20250218BHJP
   H10D 30/80 20250101ALI20250218BHJP
   H10D 10/80 20250101ALI20250218BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
H10D30/87 F
H10D30/47 201
H10D30/80 Z
H10D10/80
H01L21/205
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023510134
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2021014314
(87)【国際公開番号】W WO2022208868
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】星 拓也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】吉屋 佑樹
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-319593(JP,A)
【文献】国際公開第2003/071607(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 29/80
H01L 21/331
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体から構成されたトランジスタ構造と、
前記トランジスタ構造に接続される電極と、
Alを含まない窒化物半導体から構成され、前記電極が配置される箇所における前記トランジスタ構造の最上層と、前記電極との間に配置され、厚さ方向の前記最上層の一部をAs化することで形成されたIII-V族化合物半導体から構成されたAs化層と、
前記As化層と前記電極との間に配置され、V族元素としてP、As、Sbの少なくとも1つを含むIII-V族化合物半導体から構成されたコンタクト層と
を備え、
前記トランジスタ構造は、窒化物半導体から構成されたコレクタ層、ベース層、エミッタ層を備えるヘテロ接合バイポーラトランジスタであり、
前記電極は、ベース電極である半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記最上層と前記As化層とは、III族元素が同一とされていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
基板の上に窒化物半導体から構成されたトランジスタ構造を形成する第1工程と、
Alを含まない窒化物半導体から構成され、電極が配置される箇所における前記トランジスタ構造の最上層の厚さ方向の一部をAs化してAs化層を形成する第2工程と、
前記As化層の上にV族元素としてP、As、Sbの少なくとも1つを含むIII-V族化合物半導体から構成されたコンタクト層を形成する第3工程と、
前記コンタクト層の上に電極を形成する第4工程と
を備え
前記第2工程は、Asを含む原料ガスの雰囲気で加熱することで、前記最上層を表面の側からAs化することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の半導体装置の製造方法において、
前記コンタクト層は、InAs、InGaAs、GaAs、GaAsSb、InGaAsSb、AlGaAs、InAsSb,AlAs、AsAsSbのいずれかから構成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3または4記載の半導体装置の製造方法において、
As化によってAlを含まない窒化物半導体に形成されるAs化の層の最大の厚さをもとに、前記最上層の形成時の厚さを決定する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体を用いた半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaNチャネルHEMTは、高速・高耐圧の電子デバイスであり、高出力な無線通信用のデバイスとしてすでに実用化され利用されている。GaNチャネルHEMTをさらに高性能化(高周波特性を向上)させるために、デバイスの低抵抗化は必須である。高周波用途に用いられるGaNチャネルHEMTのデバイス構造を図11Aに示す。
【0003】
一般的には、まずSiCやサファイア、Siなどの基板301の上に、バッファ層(核形成層)302を介して、デバイス構造を結晶成長法によって積層することで作製する。デバイス構造は、典型的には、バッファ層302、バックバリア層303、GaNチャネル層304、AlGaNまたはAlNバリア層305、GaNキャップ層306によって構成される。バッファ層302は、高抵抗化されている場合もある。また、バックバリア層303は、設けない場合もある。
【0004】
ソース電極309およびドレイン電極310は、Ti/Al/Ni/Auなどの材料を電子線蒸着などによって堆積することで形成する。またソース電極309、ドレイン電極310は、アニール処理によってチャネル層305と接触(接続)するように合金化される。ゲート電極311は、Ni/Auなどによってショットキー電極として形成される。ゲート電極311とデバイス構造(キャップ層306、バリア層305、チャネル層304)との間には、誘電率の高い酸化膜あるいは窒化膜などが堆積される場合もある。
【0005】
GaNチャネルHEMTの高速化においては、ゲート長の短縮(スケーリング)によるデバイスの微細化、これに伴うバリア層の薄層化と高Al組成化、加えて、ソース・ドレイン電極のコンタクト抵抗の低減化が必要である。図10Aを用いて説明した一般的なデバイス構造においては、ソース電極309,ドレイン電極310のコンタクトを合金化によって形成する際に、AlGaNバリア層305を介している。しかし、AlGaNは高抵抗であるがゆえに、このような技術によるコンタクト抵抗の低減化には一定の制限がある。
【0006】
上述したコンタクト抵抗を低減化するためには、図11Bに示すような、高濃度ドープしたGaNによるソースコンタクト307a,ドレインコンタクト307bを、再成長によってチャネル層304’の上に形成する手法が提案されている(非特許文献1)。本構造は、まずドライエッチングなどによって、チャネル層304’のソース・ドレイン形成領域をエッチングし、この後、MBE法などにより高濃度にn型ドープしたGaNを再成長することで形成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】K. Shinohara et al., "Scaling of GaN HEMTs and Schottky Diodes for Submillimeter-Wave MMIC Applications", IEEE Transactions on Electron Devices, vol. 60, no. 10, pp. 2982-2996, 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術では、以下に示すような課題がある。第1に、ソース・ドレイン形成領域に再成長したGaNの低抵抗化が極めて難しいことである。ワイドギャップ半導体材料は、高濃度ドーピングが極めて難しく、また、ドーピングしたとしても、ドーパントの活性化率は高くない。
【0009】
第2に、低抵抗化するためにオーミックコンタクトを形成する電極とGaN層の合金化が必要な点である。この合金化は、N2雰囲気などで高温熱処理することによって実施する。しかし、金属の合金化工程によって、電極のモフォロジは悪化するとともに、合金化は不均一に形成されるため、コンタクト抵抗のばらつきが発生する。このように、従来の技術では、窒化物半導体を用いた半導体装置では、電極のコンタクト抵抗を低くすることが容易ではないという問題があった。
【0010】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、窒化物半導体を用いた半導体装置の、電極のコンタクト抵抗を低くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る半導体装置は、窒化物半導体から構成されたトランジスタ構造と、トランジスタ構造に接続される電極と、Alを含まない窒化物半導体から構成され、電極が配置される箇所におけるトランジスタ構造の最上層と、電極との間に配置され、厚さ方向の最上層の一部をAs化することで形成されたAs化層と、As化層と電極との間に配置され、V族元素としてP、As、Sbの少なくとも1つを含むIII-V族化合物半導体から構成されたコンタクト層とを備える。
【0012】
また、半導体装置の製造方法は、基板の上に窒化物半導体から構成されたトランジスタ構造を形成する第1工程と、Alを含まない窒化物半導体から構成され、電極が配置される箇所におけるトランジスタ構造の最上層の厚さ方向の一部をAs化してAs化層を形成する第2工程と、As化層の上にV族元素としてP、As、Sbの少なくとも1つを含むIII-V族化合物半導体から構成されたコンタクト層を形成する第3工程と、コンタクト層の上に電極を形成する第4工程とを備える。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、電極が配置される箇所におけるトランジスタ構造の最上層に、最上層の一部をAs化することで形成したAs化層を備えるので、窒化物半導体を用いた半導体装置の、電極のコンタクト抵抗を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る半導体装置の構成を示す構成図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の構成を示す構成図である。
図3A図3Aは、本発明の実施の形態に係る半導体装置の概念を説明するための素子の製造方法を説明するための途中工程の半導体装置の状態を示す断面図である。
図3B図3Bは、本発明の実施の形態に係る半導体装置の概念を説明するための素子の製造方法を説明するための途中工程の半導体装置の状態を示す断面図である。
図3C図3Cは、本発明の実施の形態に係る半導体装置の概念を説明するための素子の製造方法を説明するための途中工程の半導体装置の状態を示す断面図である。
図4A図4Aは、本発明の実施の形態に係る半導体装置の概念を説明するための素子の特性を示す特性図である。
図4B図4Bは、本発明の実施の形態に係る半導体装置の概念を説明するための素子の特性を示す特性図である。
図5A図5Aは、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の半導体装置の状態を示す断面図である。
図5B図5Bは、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の半導体装置の状態を示す断面図である。
図5C図5Cは、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の半導体装置の状態を示す断面図である。
図5D図5Dは、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の半導体装置の状態を示す断面図である。
図5E図5Eは、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の半導体装置の状態を示す断面図である。
図5F図5Fは、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の半導体装置の状態を示す断面図である。
図6A図6Aは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図6B図6Bは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図6C図6Cは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図6D図6Dは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図6E図6Eは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図7A図7Aは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図7B図7Bは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図7C図7Cは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図7D図7Dは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図7E図7Eは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図7F図7Fは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図8A図8Aは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図8B図8Bは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図8C図8Cは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図8D図8Dは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図8E図8Eは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図9A図9Aは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図9B図9Bは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図9C図9Cは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図10A図10Aは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図10B図10Bは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図10C図10Cは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図10D図10Dは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図10E図10Eは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図10F図10Fは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図10G図10Gは、本発明の実施の形態に係る他の半導体装置の製造方法を説明するための途中工程の他の半導体装置の状態を示す断面図である。
図11A図11Aは、従来の半導体装置の構成を示す断面図である。
図11B図11Bは、従来の半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る半導体装置について説明する。この半導体装置は、窒化物半導体から構成されたトランジスタ構造(素子構造)と、トランジスタ構造に接続される電極とを備える。また、この半導体装置は、電極が配置される箇所におけるトランジスタ構造の最上層と電極との間に配置されたAs化層と、As化層と電極との間に配置されたコンタクト層とを備える。電極は、コンタクト層に接触(接続)して形成される。電極は、コンタクト層-As化層-最上層の経路で、窒化物半導体からなる最上層に電気的に接続する。
【0016】
最上層は、Alを含まない窒化物半導体から構成されている。As化層は、厚さ方向の最上層の一部をAs化することで形成されたものであり、Nを含むことなく、V族元素としてAsを含むIII-V族化合物半導体から構成されている。コンタクト層は、Nを含むことなく、V族元素としてP、As、Sbの少なくとも1つを含むIII-V族化合物半導体から構成されている。
【0017】
上述したように、窒化物半導体による層(最上層)の表面をAs化してAs化層とし、As化層の上にコンタクト層を形成し、コンタクト層に電極を接続させるので、電極のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0018】
トランジスタ構造は、例えば、図1に示すように、窒化物半導体から構成されたチャネル層104を備える電界効果トランジスタであり、電極は、チャネル層104に電気的に接続するソース電極109およびドレイン電極110である。
【0019】
この電界効果トランジスタは、いわゆる高電子移動度トランジスタ(HEMT)であり、基板101と、基板101の上に形成されたバッファ層102と、バッファ層102の上に形成されたバックバリア層103と、バックバリア層103の上に形成されたチャネル層104と、チャネル層104の上に形成されたバリア層105と、バリア層105の上に形成されたキャップ層106とを備える。この例では、チャネル層104、バリア層105,キャップ層106によりトランジスタ構造が構成されている。また、この例では、キャップ層106が、最上層となる。
【0020】
基板101は、例えば、サファイア、炭化ケイ素、シリコン、GaNなどから構成することができる。バッファ層102は、例えば、GaNから構成することができる。バックバリア層103は、例えば、AlGaNから構成することができる。チャネル層104は、例えば、GaNから構成することができる。バリア層105は、例えば、AlGaNから構成することができる。キャップ層106は、例えば、GaNから構成することができる。キャップ層106は、GaNに限らず、InGaN、InNなどのAlを含まない窒化物半導体から構成することができる。この理由については後述する。
【0021】
基板101が、サファイア、炭化ケイ素、シリコンなど異種材料から構成されている場合、ヘテロエピタキシャル成長により基板101の上にバッファ層102を形成し、この上に、上述した各層をエピタキシャル成長により形成することができる。また、基板101が、単結晶GaNから構成されている場合、エピタキシャル成長により上述した各層を形成することができる。これらの成長は、有機金属化学気相堆積法、分子線エピタキシ法などの気相成長法によって実施することができる。
【0022】
また、この電界効果トランジスタは、V族元素としてAsを含むIII-V族化合物半導体から構成された第1As化層107a,第2As化層107bを備える。第1As化層107a,第2As化層107bは、キャップ層106の上で、ゲート電極形成領域を挟むように配置される。第1As化層107a,第2As化層107bは、例えば、GaAsから構成することができる。第1As化層107a,第2As化層107bは、後述するようにキャップ層106を、As化することで形成したものである。従って、第1As化層107a,第2As化層107bが接する窒化物半導体から構成されたキャップ層106と第1As化層107a,第2As化層107bとは、III族元素が同一とされたものとなる。
【0023】
また、第1As化層107a,第2As化層107bの上には、第1コンタクト層108a,第2コンタクト層108bが形成され、第1コンタクト層108aの上にはソース電極109が形成され、第2コンタクト層108bの上にはドレイン電極110が形成されている。第1コンタクト層108a,第2コンタクト層108bは、例えば、InGaAsから構成することができる。また、ソース電極109とドレイン電極110との間の、ゲート形成領域のキャップ層106の上には、ゲート電極111が形成されている。ゲート電極111は、例えば、ショットキー接続している。
【0024】
この例では、ソース電極109,ドレイン電極110配置される箇所におけるトランジスタ構造の最上層となるキャップ層106と、ソース電極109,ドレイン電極110との間に、第1As化層107a,第2As化層107bが配置されている。また、第1As化層107a,第2As化層107bと、ソース電極109,ドレイン電極110との間に、第1コンタクト層108a,第2コンタクト層108bが形成されている。第1コンタクト層108a,第2コンタクト層108bに、ソース電極109,ドレイン電極110が接して形成されている。
【0025】
また、トランジスタ構造は、例えば、図2に示すように、窒化物半導体から構成されたコレクタ層124、ベース層125、エミッタ層126を備えるヘテロ接合バイポーラトランジスタであり、電極は、ベース電極131である。
【0026】
このヘテロ接合バイポーラトランジスタは、基板121と、基板121の上に形成されたバッファ層122と、バッファ層122の上に形成されたサブコレクタ層123と、サブコレクタ層123の上に形成されたコレクタ層124と、コレクタ層124上に形成されたベース層125と、ベース層125の上に形成されたエミッタ層126と、エミッタ層126の上に形成されたエミッタコンタクト層127とを備える。この例では、コレクタ層124、ベース層125、エミッタ層126によりトランジスタ構造が構成されている。また、この例では、ベース電極131が接続されるベース層125が最上層となる。
【0027】
基板121は、例えば、n型のGaNから構成することができる。バッファ層122は、例えば、n型のGaNから構成することができる。サブコレクタ層123は、例えば、n型のGaNから構成することができる。コレクタ層124は、例えば、n型のGaNから構成することができる。ベース層125は、例えば、p型のGaNから構成することができる。エミッタ層126は、例えば、n型のAlGaNから構成することができる。エミッタコンタクト層127は、例えば、n型のGaNから構成することができる。エミッタコンタクト層127の上には、エミッタ電極128が形成されている。
【0028】
上述した窒化物半導体からなる各層は、有機金属化学気相堆積法、分子線エピタキシ法などの気相成長法によって、基板121の上にエピタキシャル成長することで形成できる。また、各層は、-c軸方向に結晶成長することで、主表面を-c面としたN極性(V族極性)として形成することができる。このように作製することで、エミッタ層126とベース層125との界面に、c軸方向に形成されている窒化物半導体のヘテロ構造におけるビルトインポテンシャルによる2次元正孔ガスが形成され、ベース抵抗を低減化することができる。
【0029】
また、このヘテロ接合バイポーラトランジスタは、族元素としてAsを含むIII-V族化合物半導体から構成されたAs化層129を備える。As化層129は、エミッタ層126によるメサ構造の周囲のベース層125の上に形成されている。As化層129は、例えば、GaAsから構成することができる。As化層129は、ベース層125をAs化することで形成したものである。従って、As化層129が接する窒化物半導体から構成されたベース層125と、As化層129とは、III族元素が同一とされたものとなる。
【0030】
また、As化層129の上には、コンタクト層130が形成され、コンタクト層130の上には、ベース電極131が形成されている。また、基板121の裏面には、コレクタ電極132が接続して形成されている。この例では、ベース電極131が配置される箇所におけるトランジスタ構造の最上層となるベース層125とベース電極131との間に、As化層129が配置されている。また、As化層129とベース電極131との間に、コンタクト層130が配置されている。コンタクト層130にベース電極131が接して形成されている。
【0031】
次に、本発明の原理について、図3A図3Cを参照して説明する。まず、GaNに対して低抵抗なIII-V族化合物半導体の層の形成について説明する。まず、図3Aに示すように、基板141の上に、GaNのバッファ層142を形成し、バッファ層142の上に、GaNからなる半導体層143を形成した試料を作製する。例えば、サファイアや炭化ケイ素、シリコンなどの様々な基板141上に、ヘテロエピタキシャル成長によってバッファ層142,半導体層143を形成することができる。また、基板141とし、GaN単結晶基板を用いることもできる。各層の作製は、有機金属化学気相堆積や分子線エピタキシといった気相成長法を用いることができる。なお、この説明では、最上層となる半導体層143を、GaNとしているが、InGaNとすることもできる。半導体層143は、GaN、InGaN、InNなどのAlを含まない窒化物半導体であればよい。
【0032】
次に、図3Bに示すよう、作製した試料を、減圧下(760Torrより低い圧力範囲)で、As雰囲気にさらして加熱することにより、半導体層143を表面の側からAs化して、GaAsによるAs化層144を形成する。As化は、表面の側から層の内部の方向に進行する。雰囲気にも依存するが、GaNは、減圧下において、加熱温度700℃前後でも最表面が熱分解されて、ダングリングボンドが形成される。この状態で、雰囲気にヒ素が存在すれば、半導体層143を構成しているV族元素であるNが、雰囲気中のAsがと置き換わり、Ga-Asが形成される。熱による結晶の分解の速度は、減圧下ほど増大する。上述したような窒化物半導体のNをAsで置換する工程は、所定のエネルギーが必要となり、分解を加速するためには、雰囲気を常圧(760Torr)より低い減圧環境とすることが重要となる。
【0033】
上述したAs化の実施は、例えば、よく知られた有機金属化学気相堆積が実施できる、キャリアガスとしてH2,N2,Arなどを用いる一般的な成長装置であれば実施可能である。キャリアガスの種類や圧力を変化させることで、表面の側から層の内部の方向に進行するAs化の速度を制御することができる。例えば,H2をキャリアガスに用いれば、As化速度は増大し、N2を用いれば減少する。また、As化を実施するときの加熱の温度の上昇に伴いAs化速度は増大する。
【0034】
As化の実験的な変化を図4Aに示す。図4Aは、As化を実施する熱処理工程における、As化をしている半導体層表面の反射率の時間変化を測定したものである。光源には白色LED(light emitting diode)を用いており、反射率の測定には、波長405nm,633nmを用いた。As化処理を実施する雰囲気は、設定圧力で12500パスカル程度以上、キャリアガスにはH2を用い、AsH3を原料ガスとして用いてAs雰囲気とした。
【0035】
図4Aにおいて、(a)および(b)が反射率の処理時間経過による変化を示している。As化をしている半導体層の表面の設定温度が、規定温度(熱処理温度)に到達する前後から反射率が増大し、規定時間経過の後、反射率がほぼ変化しなくなる飽和状態へと移行した。この飽和状態では、GaNからなる半導体層の表面はAsによって置換され、ほぼGaAsとなっている。
【0036】
上述したように、半導体層143の表面をAs化することで、As化層144を形成した後、処理温度を適切な条件へと変更し、III族原料およびV族原料を適切な流量、温度、圧力下で供給することで、図3Cに示すように、InGaAsを成長してコンタクト層145を形成する。
【0037】
次に、半導体層143の材料として、Alを含まない窒化物半導体を用いることについて、図4Bを参照して説明する。図4Bは、半導体層の材料をAlGaNから構成し、この半導体層の表面に対し、上述同様のAs化処理を実施した場合の反射率測定結果である。図4Bに示すように、AlGaNによる半導体層の表面に対してAs化処理を実施しても、ほとんど反射率が変化していないことが明らかとなった。これは、AlをIII族元素としている窒化物半導体におけるAl-Nの結合が強固であり、700℃前後での熱処理温度では、Al-Nほとんど分解されないことを示唆するものである。このため、As化処理の対象とする半導体層を構成する材料は、III族元素とNとの結合エネルギーが、GaNか、これよりも小さい材料であるInGaN、InNであることが望ましい。
【0038】
なお、As化層は、窒化物半導体をAs化することで形成されるものである。As化層を形成することで、窒素を構成元素としないIII-V族化合物半導体のコンタクト層が結晶性良く形成され、電極のコンタクト抵抗を低くすることができる。
【0039】
ここで、As化層にAsが含まれていることや厚さなどは、断面TEMによる観察やEDX分析などにより計測することが可能である。しかしながら、同一の組成の半導体層を、他の結晶成長方法で成長させた場合に、本発明と同様の作用効果が得られるものとはいえない。従って、As化層について、本発明の効果に寄与する構造などを明確に特定することは、およそ実際的ではないと考えられる。
【0040】
次に、図1を用いて説明したHEMTの製造方法について、図5A図5Fを参照して説明する。まず、図5Aに示すように、基板101の上に、バッファ層102、バックバリア層103、チャネル層104、バリア層105、キャップ層106をこれらの順に成長することで、基板101の上に、窒化物半導体から構成されたトランジスタ構造を形成する(第1工程)。この種のトランジスタにおいて、キャップ層106は、例えば、厚さ数nm程度に形成される。
【0041】
次に、図5Bに示すように、キャップ層106の厚さ方向の一部をAs化してAs化層107を形成する(第2工程)。前述したように、As雰囲気にさらして加熱することにより表面の側からAs化する。キャップ層106は、Alを含まない窒化物半導体から構成され、電極が配置される箇所におけるトランジスタ構造の最上層である。
【0042】
次に、図5Cに示すように、As化層107の上に、InGaAsを成長することでコンタクト層108を形成する(第3工程)。コンタクト層108は、V族元素としてAsを含むIII-V族化合物半導体から構成された層である。コンタクト層108は、例えば、InAs、InGaAs、GaAs、GaAsSb、InGaAsSb、AlGaAs、InAsSb,AlAs、AsAsSbのいずれかから構成することができる。
【0043】
次に、図5Dに示すように、コンタクト層108の上に、ソース電極109、ドレイン電極110を形成する(第4工程)。ソース電極109、ドレイン電極110は、ゲート形成領域を挟んで配置されるように形成する。ソース電極109、ドレイン電極110は、InGaAsなどのV族元素としてP、As、Sbの少なくとも1つを含むIII-V族化合物半導体に対して、コンタクト抵抗の低い金属から構成する。このような金属は数多く存在しており、かつ、これら金属は、コンタクト層108との間で合金化処理を実施することなく、低いコンタクト抵抗を得ることが可能である。このような金属として、例えばTi/Pt/Au、Pt/Ti/Pt/Auなどが挙げられる。コンタクト抵抗を重視するか、耐熱性を重視するかに応じて、適切な金属積層構造を選択することができる。素子特性に大きな影響を及ぼさない範囲で、合金化アニール処理を実施することもできる。
【0044】
次に、形成したソース電極109、ドレイン電極110をマスクとすることなどにより、コンタクト層108およびAs化層107を選択的にエッチングすることで、図5Eに示すように、第1As化層107a,第2As化層107b、および第1コンタクト層108a,第2コンタクト層108bを形成し、ゲート形成領域のキャップ層106を露出させる。
【0045】
上述したエッチングは、例えば、ウェットエッチングにより実施することができる。例えば、塩酸系、硫酸系、クエン酸系などのエッチング液を用いたエッチング処理を用いることができる。これらのエッチング液に対し、GaNはほとんどエッチングされない。一方、これらのエッチング液に対し、InGaAsやGaAsはエッチング可能であり、上述した選択的なエッチングが可能である。
【0046】
次に、図5Fに示すように、露出させたゲート形成領域のキャップ層106の上に、ショットキー接続するゲート電極111を形成する。
【0047】
ここで、As化処理の対象となるキャップ層106の厚さについて説明する。キャップ層106の厚は以下のようにして決定することができる。前述した反射率測定の結果からも示されるよう、キャップ層106の表面近傍のAs化は、十分なAs化時間の後、反射率は飽和状態に移行しており、As化はほぼ進行しなくなる。従って、キャップ層106が十分に厚い場合、キャップ層106の表面から厚さ方向に一部(表面近傍)のみが、As化されるものとなる。
【0048】
ゲート形成領域のキャップ層106を露出させるためのエッチング工程において、As化されたAs化層107は除去され、残ったAs化されていないキャップ層106が、ゲート電極111の直下に残存し、デバイス特性に影響を及ぼす。従って、デバイスを設計する際に、エッチングによって除去されるAs化層の厚さを考慮して、キャップ層106の初期の厚さ(形成時の厚さ)を設定することが重要となる。
【0049】
例えば、As化処理をする前のキャップ層が薄い場合、As化処理を実施すると、厚さ方向にキャップ層のほぼ全域がAs化する。このAs化において、Alを構成元素とする窒化物半導体から構成されるバリア層105は、As化されない。従って、As化処理によってAs化層が形成される最大の厚さよりキャップ層106を薄くしておくことで、As化層の厚さを制御することができる。
【0050】
このように、キャップ層を全てAs化してAs化層とした後、この上に、V族元素としてAsを含むIII-V族化合物半導体から構成されコンタクト層を形成すると、前述したエッチング処理において、ゲート形成領域には、キャップ層が残存しないことになる。このため、As化によってAlを含まない窒化物半導体に形成されるAs化の層の最大の厚さをもとに、キャップ層(最上層)の形成時の厚さを決定することが重要となる。例えば、断面TEM像の観察におけるEDX分析により、As化層の厚さを確認することができ、作製した様々な条件の試料を観察することで、As化により形成されるAs化の層の最大の厚さを求めることができる。また、このように、全てが窒化されるような厚さのキャップ層とした場合、酸化されやすいAlGaNの層が露出するため、これらのケアも必要である。
【0051】
次に、HEMTの他の製造方法について、図6A図6Eを参照して説明する。まず、図6Aに示すように、基板101の上に、バッファ層102、バックバリア層103、チャネル層104、バリア層105、キャップ層106をこれらの順に成長する。次いで、マスクパターン201を形成する。次いで、形成したマスクパターン201をマスクとしたエッチング処理により、キャップ層106、バリア層105、および厚さ方向に一部のチャネル層104をパターニングする。このパターニングにおいては、チャネル層104に、ソース電極、ドレイン電極を形成するための領域を形成する。
【0052】
次に、マスクパターン201を除去し、この後、As化処理を実施し、露出しているキャップ層106の表面、およびチャネル層104の表面をAs化して、図6Bに示すように、As化層107’を形成する。
【0053】
次いで、n型不純物が高濃度に導入されたInGaAsなどのIIIーV族化合物半導体を成長することで、図6Cに示すように、コンタクト層108’を形成する。この例では、コンタクト層108’は、n++-InGaAsから構成されたものとなる。
【0054】
次に、コンタクト層108’の上に、ゲート形成領域を挟んでソース電極109、ドレイン電極110を形成し、ソース電極109、ドレイン電極110をマスクとすることでコンタクト層108’およびAs化層107’を選択的にエッチングし、図6Dに示すように、ゲート形成領域のキャップ層106を露出させる。これにより、第1As化層107’a,第2As化層107’bが形成され、第1コンタクト層108’a,第2コンタクト層108’bが形成される。この後、図6Eに示すように、露出させたゲート形成領域のキャップ層106の上に、ショットキー接続するゲート電極111を形成する。
【0055】
このHEMTによれば、チャネル層104の上に、As化層およびコンタクト層を介して、ソース電極109、ドレイン電極110が形成されるので、バリア層105の上に形成される場合に比較して、コンタクト抵抗を下げることができる。
【0056】
次に、HEMTの他の製造方法について、図7A図7Fを参照して説明する。まず、図7Aに示すように、基板101の上に、バッファ層102、バックバリア層103、チャネル層104、バリア層105、キャップ層106をこれらの順に成長する。次いで、マスクパターン201を形成する。
【0057】
次いで、形成したマスクパターン201をマスクとしたエッチング処理により、キャップ層106、バリア層105、および厚さ方向に一部のチャネル層104をパターニングする。このパターニングにおいては、チャネル層104に、ソース電極、ドレイン電極を形成するための領域を形成する。さらに、パターニングによって形成されたバリア層105およびキャップ層106のメサの周囲のチャネル層104の上に、高濃度にn型不純物が導入されたn+-GaNを再成長することで、第1再成長層114a、第2再成長層114bを形成する。第1再成長層114a、第2再成長層114bは、バリア層105およびキャップ層106の側面を覆う状態に形成する。
【0058】
次に、マスクパターン201を除去し、図7Bに示すように、第1再成長層114a、第2再成長層114bの間に溝が形成され、この溝の底部にキャップ層106の上面が露出した状態とする。
【0059】
次に、As化処理を実施することで、図7Cに示すように、第1再成長層114a、第2再成長層114bの表面、およびキャップ層106の表面(上面)にかけて、As化層107”を形成する。
【0060】
次いで、n型不純物が高濃度に導入されたGaAsなどのIIIーV族化合物半導体を成長することで、図7Dに示すように、コンタクト層108”を形成する。この例では、コンタクト層108”は、n++-GaAsから構成されたものとする。
【0061】
次に、コンタクト層108”およびAs化層107”を選択的にエッチングし、ゲート形成領域のキャップ層106を露出させる。これにより、図7Eに示すように、第1As化層107”a,第2As化層107”bが形成され、第1コンタクト層108”a,第2コンタクト層108”bが形成される。第1コンタクト層108”aの上にソース電極109を形成し,第2コンタクト層108”bの上にドレイン電極110を形成する。この後、図7Eに示すように、露出させたゲート形成領域のキャップ層106の上に、ショットキー接続するゲート電極111を形成する。
【0062】
このHEMTによれば、As化の処理において、バリア層105が露出していないので(図7E)、結晶品質の悪い領域が形成されることがない。
【0063】
次に、HEMTの他の製造方法について、図8A図8Eを参照して説明する。上述では、基板101の上に、各窒化物半導体層を+c軸方向に成長させる製造方法について説明したが、-c軸方向に成長させることもできる。-c軸方向に成長させることで、各窒化物半導体層の主表面は、III族極性面ではなく、V族極性面となる。
【0064】
N極性面が主面方位となるように結晶成長を実施することは、一般的に公知となっている技術によって実現可能である。一例としては、例えば、窒化したサファイア基板をバッファ層として用いる結晶成長方法、C面を主面方位とするSiC基板を使用した成長方法、またはN極性面を主面方位とするGaN基板を用いる方法などがある。あるいは、Ga極性面を主面方位として成長した後に、基板転写によってエピタキシャル層構造を反転させることで、N極性面を得ることも可能である。
【0065】
まず、図8Aに示すように、基板101の上に、バッファ層102、バックバリア層103、チャネル層104、バリア層105をこれらの順に-c軸方向に成長する。この場合、バックバリア層103とチャネル層104との分極効果によって、高濃度の2次元電子ガスが形成される。
【0066】
次いで、マスクパターンをマスクとしたエッチング処理により、図8Bに示すように、バリア層105および厚さ方向に一部のチャネル層104をパターニングする。このパターニングにおいては、チャネル層104に、ソース電極、ドレイン電極を形成するための領域を形成する。この例では、バリア層105をパターニングしても、2次元電子ガスが失われることが無い。
【0067】
次に、マスクパターンを除去し、この後、As化処理を実施し、露出しているチャネル層104の表面をAs化して、図8Cに示すように、AlGaNからなるバリア層105を挾んで、第1As化層117a、第2As化層117bを形成する。Alを構成元素とするバリア層105には、As化層が形成されない。
【0068】
次いで、InGaAsなどのIIIーV族化合物半導体を成長することで、図8Dに示すように、第1コンタクト層118a、第2コンタクト層118b、およびアモルファス層118cを形成する。バリア層105が露出した領域においては、表面のAs化が行われていないため、アモルファス状態のInGaAsが堆積してアモルファス層118cが形成される。
【0069】
この後、第1コンタクト層118a、第2コンタクト層118bの上に、ソース電極、ドレイン電極を形成し、露出しているバリア層105の上に、ショットキー接続するゲート電極を形成すれば、HEMTが得られる。
【0070】
ところで、上述した製造方法では、As化処理において、バリア層105が露出しているため、As化されることなく加熱処理がされ、この上に成長する層の結晶品質を低下させる懸念がある。これに対し、以下に示すように製造することで、As化処理において、バリア層105が露出することがない。
【0071】
まず、図8A図8Bと同様にすることで、バリア層105および厚さ方向に一部のチャネル層104をパターニングし、チャネル層104に、ソース電極、ドレイン電極を形成するための領域を形成する。次に、GaNを再成長することで、図9Aに示すように、キャップ層106’を形成する。
【0072】
次に、As化処理を実施し、キャップ層106’の表面をAs化して、図9Bに示すように、As化層107’を形成する。次いで、InGaAsなどのIIIーV族化合物半導体を成長することで、コンタクト層108’を形成する。
【0073】
次に、コンタクト層108’の上に、ゲート形成領域を挟んでソース電極109、ドレイン電極110を形成し、ソース電極109、ドレイン電極110をマスクとすることでコンタクト層108’およびAs化層107’を選択的にエッチングし、図9Cに示すように、ゲート形成領域のキャップ層106’を露出させる。これにより、第1As化層107’a,第2As化層107’bが形成され、第1コンタクト層108’a,第2コンタクト層108’bが形成される。この後、露出させたゲート形成領域のキャップ層106’の上に、ショットキー接続するゲート電極111を形成する。
【0074】
ところで、上述では、コンタクト層として、n型不純物が高濃度に導入されたInGaAsを用いる場合を説明したが、これに限るものではない。コンタクト層は、p型のIII-V族化合物半導体から構成することができる。例えば、CまたはZnまたはBeをドープした、GaAs、AlGaAs、InGaAs、GaAsSb、InAsAsSb、InAsSb、InGaSb、GaSb、InAsからコンタクト層を形成することができる。このようにすることで、極めて低いp型のコンタクト抵抗を有する層を、窒化物半導体の層の上に形成することができる。
【0075】
次に、図2を用いて説明したヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法について、図10A図10Fを参照して説明する。まず、図10Aに示すように、基板121の上に、バッファ層122、サブコレクタ層123、コレクタ層124、ベース層125、エミッタ層126、およびエミッタコンタクト層127をこれらの順に成長することで、基板121の上に、窒化物半導体から構成されたトランジスタ構造を形成する(第1工程)。
【0076】
次に、エミッタコンタクト層127の上にエミッタ電極128を形成し、形成したエミッタ電極128をマスクとしてエミッタコンタクト層127をエッチングすることで、図10Bに示すように、エミッタコンタクト層127を第1メサ形状に加工する。エミッタ電極128は、後工程における700℃程度の高温での熱処理に耐えることができる電極材料から構成することが望ましい。また、エミッタ電極128は、エミッタコンタクト層127との間で、オーミックコンタクトを形成する電極材料とすることが望ましい。
【0077】
次に、メサ形状に形成したエミッタコンタクト層127およびエミッタ電極128を覆うマスク層202を形成する。次いで、形成したマスク層202をマスクとして、エミッタ層126をエッチングすることで、図10Cに示すように、エミッタ層126を第2メサ形状に加工する。第2メサ形状は、第1メサ形状に比較して、平面視で広い面積とされている。この加工により、第2メサ形状とされたエミッタ層126の周囲のベース層125の主表面を露出させる。
【0078】
次に、As化処理をすることで、エミッタ層126の周囲のベース層125の主表面をAs化し、図10Dに示すように、As化層129を形成する(第2工程)。前述したように、As雰囲気にさらして加熱することにより表面の側からAs化する。エミッタ層126の周囲のベース層125は、電極(ベース電極)が配置される箇所におけるトランジスタ構造の最上層である。
【0079】
次に、図10Eに示すように、As化層107の上に、高濃度にp型ドープされたIII-V族化合物半導体を成長することでコンタクト層108を形成する(第3工程)。
例えば、炭素をドーパントして高濃度にドーピングされたGaAsSbを成長することで、コンタクト層108とすることができる。コンタクト層108は、V族元素としてAsを含むIII-V族化合物半導体から構成された層である。
【0080】
次に、図10Fに示すように、コンタクト層108の上に、ベース電極131を形成する(第4工程)。ベース電極131は、GaAsSbからなるコンタクト層108とオーミックコンタクトが形成可能な電極材料から構成することができる。例えば、ベース電極131は、TiやPt、Auなどを用いた積層電極とすることができる。
【0081】
次に、図10Gに示すように、基板121の裏面に、コレクタ電極132を形成すれば、ヘテロ接合バイポーラトランジスタが得られる。エミッタ接地での動作を想定した場合、コレクタ側は逆バイアスで使用するため、コレクタ電極132はオーミック接触を形成していなくともよい。コレクタ電極132は、基板121に対してショットキー接続した構成とすることができる。
【0082】
以上に説明したように、本発明によれば、電極が配置される箇所におけるトランジスタ構造の最上層に、最上層の一部をAs化することで形成したAs化層を備えるので、窒化物半導体を用いた半導体装置の、電極のコンタクト抵抗を低くすることができるようになる。
【0083】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0084】
101…基板、102…バッファ層、103…バックバリア層、104…チャネル層、105…バリア層、106…キャップ層、107a…第1As化層、107b…第2As化層、108a…第1コンタクト層、108b…第2コンタクト層、109…ソース電極、110…ドレイン電極、111…ゲート電極、121…基板、122…バッファ層、123…サブコレクタ層、124…コレクタ層、125…ベース層、126…エミッタ層、127…エミッタコンタクト層、128…エミッタ電極、129…As化層、130…コンタクト層、131…ベース電極、132…コレクタ電極。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図11A
図11B