(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】変形検出センサ
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20250218BHJP
G06F 3/047 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
G06F3/041 600
G06F3/047 C
(21)【出願番号】P 2024526360
(86)(22)【出願日】2023-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2023019516
(87)【国際公開番号】W WO2023238682
(87)【国際公開日】2023-12-14
【審査請求日】2024-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2022094572
(32)【優先日】2022-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大寺 昭三
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-118015(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129829(WO,A1)
【文献】特開2006-107140(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143528(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/177268(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/137266(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/213477(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/005922(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/079837(WO,A1)
【文献】特開2014-006751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の押し込み操作を受け付ける操作パネルに接続され、前記操作パネルを保持する保持部と、
前記保持部に接続されて、前記保持部の変形を検出する圧電フィルムと、
を備え、
前記保持部は、
筐体に接続される第1部分と、
前記操作パネルに接続される第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分とを接続し、弾性を有する梁部と、を有し、
前記圧電フィルムは、前記第1部分及び前記第2部分に跨って接続され、
前記圧電フィルムは、互いに積層された第1圧電フィルムと、第2圧電フィルムとを有し、
前記第1圧電フィルム及び前記第2圧電フィルムは、積層方向に曲げられた時に互いに異なる極性で同等の電位に分極する、
変形検出センサ。
【請求項2】
前記第1圧電フィルム及び前記第2圧電フィルムは、平面視して同じ形状及び同じ大きさである、
請求項1に記載の変形検出センサ。
【請求項3】
前記積層方向における前記第1圧電フィルムの長さを、前記第1圧電フィルムの厚みとし、
前記積層方向における前記第2圧電フィルムの長さを、前記第2圧電フィルムの厚みとし、
前記第1圧電フィルムの厚みと前記第1圧電フィルムの誘電率との比率である第1の比と、前記第2圧電フィルムの厚みと前記第2圧電フィルムの誘電率との比率である第2の比と、が同じである、
請求項2に記載の変形検出センサ。
【請求項4】
前記第1圧電フィルムの圧電定数と前記第2圧電フィルムの圧電定数とが同じである、
請求項1乃至3の何れかに記載の変形検出センサ。
【請求項5】
前記第1圧電フィルムの圧電定数と前記第1圧電フィルムの厚みとの積は、前記第2圧電フィルムの圧電定数と前記第2圧電フィルムの厚みとの積と同じである、
請求項1乃至3の何れかに記載の変形検出センサ。
【請求項6】
利用者の押し込み操作を受け付ける操作パネルに接続され、前記操作パネルを保持する保持部と、
前記保持部に接続されて、前記保持部の変形を検出する圧電フィルムと、
を備え、
前記保持部は、
筐体に接続される第1部分と、
前記操作パネルに接続される第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分とを接続し、弾性を有する複数の梁部と、を有し、
前記圧電フィルムは、前記第1部分及び前記第2部分に跨って接続され、
前記第1部分と前記圧電フィルムとの第1接続位置から前記第2部分と前記圧電フィルムとの第2接続位置に向かう方向を第1方向とし、
前記複数の梁部は、前記第1方向に沿って前記第2接続位置に近い位置に設けられる第1梁部と、前記第2接続位置から、前記第1梁部の位置よりも遠い位置に設けられる第2梁部とを有し、
前記操作パネルに接続する前記保持部の接続面の法線方向を厚み方向とした場合、前記第1梁部は、前記第2梁部よりも、前記厚み方向に変形しにくい、
変形検出センサ。
【請求項7】
前記厚み方向における前記第1梁部の長さである第1の厚みと、前記厚み方向における前記第2梁部の長さである第2の厚みとが同じであって、
前記接続面に並行であって、前記第1方向と直交する方向を第2方向とし、
前記第2方向における前記第1梁部の長さと、前記第2方向における前記第2梁部の長さとが同じであって、
前記第1方向における前記第1梁部の長さを前記第1梁部の第1幅とし、
前記第1方向における前記第2梁部の長さを前記第2梁部の第2幅とした場合、
前記第1幅は、前記第2幅よりも大きい、
請求項6に記載の変形検出センサ。
【請求項8】
前記厚み方向における前記第1梁部の長さである第1の厚みと、前記厚み方向における前記第2梁部の長さである第2の厚みとが同じであって、
前記接続面に並行であって、前記第1方向と直交する方向を第2方向とし、
前記第2方向における前記第1梁部の長さと、前記第2方向における前記第2梁部の長さとが異なり、
前記第1方向における前記第1梁部の長さを第1梁部の第1幅とし、
前記第1方向における前記第2梁部の長さを第2梁部の第2幅とした場合、
以下の式1を満たす、
請求項6に記載の変形検出センサ。
式1
(W
1
3×t)/ L
1
3 =(W
2
3×t)/ L
2
3
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の変形を検出する変形検出に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の入力装置は、筐体等によって周辺が保持される入力パッドを備えている。該入力装置は、入力パッドに力が加えられることでユーザからの操作を受け付ける。入力装置は、複数のセンサによって、入力パッドに加えられた力の位置及び大きさを検出及び測定する。
【0003】
特許文献1の入力装置は、矩形の平板状に形成された入力パッドの各角に近接するように、複数のセンサを配置している。複数のセンサは、入力パッドに加えられた力に応じて歪む。特許文献1の入力装置は、複数のセンサの出力に基づいて、入力パッドに加えられた力の大きさ及び位置を測定する。
【0004】
また、特許文献2の振動装置は、振動ユニットと、タッチパネルとを備えている。利用者がタッチパネルに対して押し込み操作を行った際に、振動ユニットが利用者に振動を伝える。振動ユニットは、平板状の振動部、枠状の枠部材、及び振動部と枠状部材とを接続する梁(支持部)を備えている。枠状部材と振動部は、圧電フィルムを介して接続される。特許文献2の振動装置は、圧電フィルムに電圧を印加することで該圧電フィルムを伸縮させ、振動部を振動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2008-546113号公報
【文献】再表2020/213477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構造では、複数のセンサで入力パッド(タッチパネル)に加えられた力の位置及び大きさを検出するために、少なくとも2つのセンサが必要である。
【0007】
一方、仮に、特許文献2の圧電フィルムに生じる電圧を検知すれば、振動部の変形を検出することができ、押し込み対象のタッチパネルの変形を検出する変形検出センサとして機能させることができると考えられる。
【0008】
しかし、特許文献2の構造では、1つのセンサで振動部と枠状部材とに接続されていることから、入力パッドに対して、平面視して力が加えられる位置に応じて圧電フィルムに生じる変形が異なる。すなわち、利用者が圧電フィルムと振動部との接続位置に近いところを押すと、当該接続位置から離れたところ押す場合に比べて当該接続位置における振動部の垂直方向の変位が大きくなり、圧電フィルムの曲げが大きくなってしまう。
【0009】
このように、タッチパネルに対する垂直方向の押し込みによって生じる圧電フィルムの変形は、平面視した押し込み位置に応じて変化する。したがって、同じ押し込み量であっても押し込み位置の違いにより変形検出センサが異なる出力値を出力してしまう。
【0010】
本発明は、押し込み位置が違う場合でも均一な出力値を出力することを実現する変形検出センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
変形検出センサは、利用者の押し込み操作を受け付ける操作パネルに接続され、前記操作パネルを保持する保持部と、前記保持部に接続されて、前記保持部の変形を検出する圧電フィルムと、を備える。前記保持部は、筐体に接続される第1部分と、前記操作パネルに接続される第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを接続し、弾性を有する梁部と、を有する。前記圧電フィルムは、前記第1部分及び前記第2部分に跨って接続される。前記圧電フィルムは、互いに積層された第1圧電フィルムと、第2圧電フィルムとを有する。前記第1圧電フィルム及び前記第2圧電フィルムは、積層方向に曲げられた時に互いに異なる極性で同等の電位に分極する。
【0012】
また、変形検出センサは、利用者の押し込み操作を受け付ける操作パネルに接続され、前記操作パネルを保持する保持部と、前記保持部に接続されて、前記保持部の変形を検出する圧電フィルムと、を備える。前記保持部は、筐体に接続される第1部分と、前記操作パネルに接続される第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを接続し、弾性を有する複数の梁部と、を有する。前記圧電フィルムは、前記第1部分及び前記第2部分に跨って接続される。前記第1部分と前記圧電フィルムとの第1接続位置から前記第2部分と前記圧電フィルムとの第2接続位置に向かう方向を第1方向とする。前記複数の梁部は、前記第1方向に沿って前記第2接続位置に近い位置に設けられる第1梁部と、前記第2接続位置から、前記第1梁部の位置よりも遠い位置に設けられる第2梁部とを有する。前記操作パネルに接続する前記保持部の接続面の法線方向を厚み方向とした場合、前記第1梁部は、前記第2梁部よりも、前記厚み方向に変形しにくい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態の変形検出センサは、押し込み位置が違う場合でも均一な出力値を出力できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1の変形検出センサ10を備える電子機器100の分解斜視図である。
【
図3】実施形態1の変形検出センサ10の下面図である。
【
図4】実施形態1の前後方向から視た圧電フィルム4の側面図である。
【
図6】前後方向Z1から視たタッチパネル1の押下位置の例を示す断面図である。
【
図7】A点押下時の変形検出部の変形の一例を示す断面図である。
【
図8】B点押下時の変形検出部の変形の一例を示す断面図である。
【
図9】圧電フィルム4の出力値の一例を示す参考図である。
【
図10】参考例の圧電フィルムの出力値の一例を示す参考図である。
【
図11】実施形態2の変形検出センサ10Aを備える電子機器100Aの分解斜視図である。
【
図12】実施形態2の前後方向Z1から視た圧電フィルム4Aの側面図である。
【
図13】実施形態2の変形検出センサ10Aの下面図である。
【
図15】A点を押された場合とB点を押された場合の圧電フィルム4Aの出力値を示す参考図である。
【
図16】部材のたわみの一例を示す部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態1]
[変形検出センサの構造]
以下、本発明の一実施形態に係る変形検出センサ10の構造について図面を参照して説明する。
図1は、実施形態1の変形検出センサ10を備える電子機器100の分解斜視図である。
図2は、
図1のA-A線における断面図である。
図3は、実施形態1の変形検出センサ10の下面図である。
【0016】
電子機器100は、タッチパネル1と、筐体2と、変形検出センサ10と、アクチュエータ5とを備えている。この例でいうタッチパネル1は、本願発明の操作パネルの一例である。
【0017】
本明細書において、方向を以下のように定義する。平板状に形成されたタッチパネル1の法線方向を上下方向Y1と定義する。また、タッチパネル1は、平面視して長方形状を有している。タッチパネル1を平面視して長手方向を左右方向X1と定義する、さらにタッチパネル1を上下方向Y1から見て短手方向を前後方向Z1と定義する。上下方向Y1、左右方向X1及び前後方向Z1は、互いに直交している。また、垂直方向とは、上下方向Y1において、上から下に向かう方向である。また、水平方向とは、垂直方向に対して、直交する方向である。平面視とは、上から下に向かって視ることをいう。この例でいう、左右方向X1は、この発明の第1方向に相当する。また、この例でいう、上下方向Y1は、この発明の第2方向に相当する。また、図面において、「B」は後ろを示す。図面において、「F」は前を示す。図面において、「D」は、下を示す。図面において、「U」は上を示す。
【0018】
なお、本明細書における方向の定義は、一例である。したがって、変形検出センサ10及び変形検出センサ10を備える電子機器100の実使用時における方向と本明細書における方向とが一致している必要はない。また、
図1において、上下方向Y1が反転してもよい。同様に、
図1において、左右方向X1が反転してもよい。さらに、
図1において、前後方向Z1が反転していてもよい。
【0019】
電子機器100は、
図1に示すように、変形検出センサ10を備えている。また、電子機器100は、例えば、スマートフォン又はラップトップ型パーソナルコンピュータなどであって、タッチパネル1を備えるものである。電子機器100は、利用者によってタッチパネル1に力が加えられた場合、利用者に触覚フィードバックを与える。この例でいう、タッチパネル1に加えられた力は、タッチパネル1を押す力である。
【0020】
タッチパネル1は、例えば、静電容量式のタッチセンサを含む。静電容量式のタッチセンサは、利用者のタッチパネル1に対する接触を検出する。また、タッチパネル1は、利用者からの押し込み操作を受け付ける。変形検出センサ10は、利用者の押し込み操作を検出する。
【0021】
筐体2は、剛体であって、平板の枠形状を有している。筐体2は、例えば、SUS(Steel Use Stainless)により形成されている。筐体2は、左右方向X1において長尺に形成されている。筐体2は、平面視して、左右方向X1に長尺な開口Op1が形成されている。開口Op1は、平面視したときにタッチパネル1よりも大きい。タッチパネル1は、開口Op1を介して、筐体2から露出している。
【0022】
変形検出センサ10は、保持部3と、圧電フィルム4とを備えている。
【0023】
保持部3は、平板の形状を有している。保持部3は、例えば、一枚板の金属板によって形成されている。保持部3は、例えば、SUS(Steel Use Stainless)により形成されている。保持部3は、タッチパネル1に接続され、タッチパネル1を保持する。より詳細には、保持部3は、平面視して、外側の枠部分である第1部分31と、内側の枠部分である第2部分32と、第1部分31と第2部分32とを接続する複数(
図1では4つ)の梁部33とを備えている。第1部分31と第2部分32と複数の梁部33は、例えば1枚のSUSの板を打ち抜くことにより一体形成されている。
【0024】
第1部分31は、
図2に示すように、上下方向Y1において、筐体2の下面と接続する。
【0025】
第2部分32は、上下方向Y1において、タッチパネル1の下面と接続する。
【0026】
4つの梁部33は、弾性を有している。4つの梁部33は、それぞれ、保持部3を平面視した場合に、矩形状を有している(
図1参照)。4つの梁部33は、それぞれ、第2部分32の各角の近くに設けられている。4つの梁部33のそれぞれが弾性変形することで、タッチパネル1に力が加えられた場合、第2部分32が第1部分31に対して、例えば、少なくとも上下方向Y1に変形する。梁部33の上下方向Y1の変形及び左右方向X1の変形に関しては後述する。
【0027】
なお、4つの梁部33は、タッチパネル1に力が加えられた場合、第2部分32が第1部分31に対して、上下方向Y1及び左右方向X1に変形してもよい。
【0028】
圧電フィルム4は、
図3に示すように、平面視して左右方向X1に長尺であって、フィルム形状を有している。圧電フィルム4は、保持部3の下に配置されている。圧電フィルム4は、保持部3の第1部分31の右端及び第2部分32の右端に跨って接続されている。より具体的には、
図2及び
図3に示すように、圧電フィルム4の右端である第1接続位置43は、保持部3の第1部分31の部分31Aに接続されている。また、圧電フィルム4の左端である第2接続位置44は、保持部3の第2部分32の部分32Aに接続されている。圧電フィルム4は、利用者によってタッチパネル1に加えられた力に応じて変形する。圧電フィルム4の詳細については、下記で説明する。
【0029】
なお、この例でいう、部分31Aは、左右方向X1における第1部分31の右端側である。また部分32Aは、左右方向X1における第2部分32の右端側である。さらに、部分32Bは、左右方向X1における第2部分32の左端側である。
【0030】
アクチュエータ5は、
図1に示すように、平面視して左右方向X1において長尺であって、フィルム形状を有している。アクチュエータ5は、保持部3の第1部分31及び第2部分32に接続されている。より詳細には、
図3に示すように、アクチュエータ5は、左右方向X1における右端で第1部分31の部分31Aに接続している。また、アクチュエータ5は、左右方向X1における左端で第2部分32の部分32Bに接続している。
【0031】
アクチュエータ5は、圧電体を含む。より具体的には、アクチュエータ5は、圧電フィルムと当該圧電フィルムの両主面(上面及び下面)に配置された第1電極部51と第2電極部52とを有している。第1電極部51及び第2電極部52のそれぞれは、例えば蒸着によるCu、Al、Niなどの金属皮膜である。
【0032】
アクチュエータ5は、例えば、駆動回路(図示せず)に接続されている。駆動回路は、変形検出センサ10によってタッチパネル1に対する押し込み操作を検出すると、アクチュエータ5の圧電フィルムの第1電極部51及び第2電極部52に交流電圧を印加する。アクチュエータ5の圧電フィルムは、第1電極部51及び第2電極部52に交流電圧が印加されることにより、左右方向X1に伸縮する。アクチュエータ5は、例えば、正の電圧が印加されることにより、左右方向X1に伸長する。一方、アクチュエータ5は、例えば、負の電圧が印加されることにより、左右方向X1に収縮する。アクチュエータ5は、第2部分32に接続されているので、第2部分32を振動させる。保持部3は、第2部分32が振動することにより、タッチパネル1に振動を伝える。これにより、電子機器100は、利用者に触覚フィードバックを与える。
【0033】
[圧電フィルム4の詳細な説明]
圧電フィルム4について、
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は、実施形態1の前後方向から視た圧電フィルム4の側面図である。
図5は、屈曲した圧電フィルム4の側面図である。
【0034】
圧電フィルム4は、
図4に示すように、上下方向Y1に沿って、互いに積層された第1圧電フィルム41と、第2圧電フィルム42とを備えている。第1圧電フィルム41及び第2圧電フィルム42は、積層方向に曲げられた(屈曲した)時に互いに異なる極性で同等の電位で分極するように構成されている。言い換えると、第1圧電フィルム41及び第2圧電フィルム42は、互いに逆電荷を発生し、積層方向に逆電位が生じるように構成されている。また、第1圧電フィルム41と第2圧電フィルム42とは、互いに逆の電荷を発生し、第1圧電フィルム41の電荷容量及び第2圧電フィルム42の電荷容量が同じ又は略同じである場合は、逆の電位を発生する。なお、積層方向は、この例でいう上下方向Y1と同じである。
【0035】
第1圧電フィルム41と第2圧電フィルム42について詳細に説明する。
【0036】
第1圧電フィルム41と第2圧電フィルム42とは、同じ圧電体のフィルムである。第1圧電フィルム41及び第2圧電フィルム42は、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)から形成された矩形状のフィルムである。PVDFは、圧電性を有している。第1圧電フィルム41及び第2圧電フィルム42は、d31の圧電定数を有している。
【0037】
この例では、第1圧電フィルム41の厚みts1と第2圧電フィルム42の厚みts2とは同じ長さである。第1圧電フィルム41の厚みts1及び第2圧電フィルム42の厚みts2は、例えば、30μmである。また、第1圧電フィルム41と第2圧電フィルム42とは、平面視して同じ形状及び同じ大きさである。この例では、第1圧電フィルム41及び第2圧電フィルム42は、平面視して左右方向X1に沿って長尺な長方形状である。
【0038】
第1圧電フィルム41及び第2圧電フィルム42のそれぞれは、表裏(
図4では、上面及び下面)に、電極部が形成されている。第1圧電フィルム41は、上面に第1電極部P11が形成されている。また、第1圧電フィルム41は、下面に第2電極部P12が形成されている。さらに、第2圧電フィルム42は、上面に第1電極部P21が形成されている。また、第2圧電フィルム42は、下面に第2電極部P22が形成されている。第1電極部P11、第2電極部P12、第1電極部P21及び第2電極部P22のそれぞれは、例えば蒸着によるCu、Al、Niなどの金属皮膜である。
【0039】
図4で示される点線の矢印は、伸長方向を示している。この例でいう伸長するとは、長手方向(この例では、左右方向X1)に引っ張られることである。
【0040】
第1圧電フィルム41及び第2圧電フィルム42を左右方向X1に伸長したとき、第1圧電フィルム41及び第2圧電フィルム42において、正の電位が生じる面を表面とし、反対側を裏面とする。第1圧電フィルム41及び第2圧電フィルム42は、表同士又は裏同士を例えば両面粘着の導電性テープで接続する。この例では、第1圧電フィルム41の第2電極部P12と第2圧電フィルム42の第1電極部P21とが接続されている。また、第2電極部P12及び第2電極21は、例えばグランドに接続される。
【0041】
この例では、第1圧電フィルム41を左右方向X1に伸長したとき、第2電極部P12に対して第1電極部P11には、正の電位が生じる。また、第2圧電フィルム42を左右方向X1に伸長したとき、第1電極部P21に対して第2電極部P22には、正の電位が生じる。
【0042】
第1電極部P11と第2電極部P12との電位の差を第1電位差V1とする。また、第1電極部P21と第2電極部P22との電位の差を第2電位差V2とする。
【0043】
第1圧電フィルム41と第2圧電フィルム42とが、同じ力で左右方向X1に伸長した場合、第1電位差V1と第2電位差V2とが同じ大きさになる。
【0044】
圧電フィルム4に接続される演算回路(図示せず)は、第1電位差V1と第2電位差V2との合計に基づく出力値を出力する。
【0045】
一方で、例えば、圧電フィルム4は、
図5に示すように、垂直方向の力によって上下方向Y1に屈曲する場合がある。
【0046】
第1圧電フィルム41及び第2圧電フィルム42が、垂直方向(上下方向Y1)の力によって屈曲した場合、第1圧電フィルム41及び第2圧電フィルム42の間の位置に応力の中立線があると仮定する。この場合、第1圧電フィルム41は、長手方向(左右方向X1)に伸長する。一方、第2圧電フィルム42は、長手方向(左右方向X1)に収縮する。なお、
図5で示される点線矢印は、第1圧電フィルム41の伸長方向を示す。また、
図5で示される一点鎖線の矢印は第2圧電フィルム42の収縮方向を示す。
【0047】
第1圧電フィルム41には、第2電極部P12に対して、第1電極部P11に、正の電位(+V1)が生じる。また、第1圧電フィルム41と第2圧電フィルム42は、左右方向X1に伸長するときに裏面同士となるように接続されているので、垂直方向に屈曲した場合、第2圧電フィルム42の第1電極部P21に対して、第2電極部P22には、負の電位(-V2)が生じる。
【0048】
圧電フィルム4が垂直方向の力によって屈曲した場合、第1電位差V1の絶対値と第2電位差V2の絶対値とが同じであれば、変形検出回路から出力される出力値は、ゼロ又はゼロに近い値になる。
【0049】
したがって、変形検出センサ10は、水平方向(長手方向を含む)の伸縮変形に対しては高い出力値を出力し、垂直方向の屈曲変形に対してはゼロ又はゼロに近い出力値を出力する。
【0050】
[変形検出センサの動作]
タッチパネル1に対する押し込みによって生じる圧電フィルム4の変形について、
図6、
図7及び
図8を参照して説明する。
図6は、前後方向Z1から視たタッチパネル1の押下位置の例を示す断面図である。
図7は、A点押下時の変形検出部の変形の一例を示す断面図である。
図8は、B点押下時の変形検出部の変形の一例を示す断面図である。
【0051】
タッチパネル1が利用者によって押された場合(このとき水平方向に働く力をPd1、及び垂直方向に働く力をPd2とする(
図6参照))。梁部33には、垂直方向の力Pd1、及び、水平方向の力Pd2が働く。この例では、垂直方向の力Pd1による、梁部33の変形について詳しく説明する。タッチパネル1が利用者によって押されると、梁部33が垂直方向の力によって弾性変形する。また、
図7及び
図8に示すように、保持部3の第2部分32は、斜め(水平方向及び垂直方向)に沿って変位する。この場合、圧電フィルム4は、水平方向の力Pd1によって、水平方向(左右方向X1)に引っ張られるように変形する。言い換えると、圧電フィルム4は、水平方向の力Pd1によって、左右方向X1に伸長する。また、圧電フィルム4は、垂直方向の力Pd2によって、垂直方向に屈曲する。この場合、圧電フィルム4は、第1接続位置43で第1部分31の部分31Aに接続し、第2接続位置44で第2部分32に接続しているため、第1接続位置43を支点に屈曲する。
【0052】
A点及びB点のそれぞれで、タッチパネル1が利用者によって押された場合について説明する。
【0053】
A点は、
図6に示すように、左右方向X1において、タッチパネル1の左端側である。また、B点は、左右方向X1において、タッチパネル1の右端側である。すなわち、A点は、圧電フィルム4と保持部3との第2接続位置44からB点よりも遠い位置である。なお、利用者がタッチパネル1のA点及びB点のそれぞれを押したときの力は、同じであるとする。
【0054】
利用者によって押された時の力が同じであれば、A点で押された場合であっても、B点で押された場合であっても、水平方向における伸長の変形量は、同じである。しかしながら、利用者によってA点及びB点で押された時の力が同じであっても、圧電フィルム4の垂直方向における屈曲の変形量は、
図7及び
図8に示すように、A点で押された場合と、B点とで押された場合とでは、異なる。
【0055】
B点で押された場合、A点で押された場合よりも、垂直方向の力Pd2による圧電フィルム4の屈曲変形への影響が大きい。利用者がタッチパネル1のA点及びB点のそれぞれを押したときの力が同じであれば、B点で押された場合のほうが、圧電フィルム4の垂直方向の屈曲の変形量は大きくなる。
【0056】
タッチパネル1を平面視して、押された位置が第1接続位置43である支点から近いほど、圧電フィルム4の垂直方向の屈曲の変形量が大きくなる。このように、タッチパネル1に対する押し込みによって生じる圧電フィルム4の屈曲の変形量は、タッチパネル1を平面視した押し込み位置に応じて変化する。
【0057】
[作用・効果]
タッチパネル1の押し込み量は、圧電フィルム4の伸長及び屈曲の変形量に対応し、出力値(第1電位差V1+第2電位差V2)によって検出される。本実施形態では、垂直方向の変化に対する第1電位差V1と第2電位差V2とが逆極性となり互いに相殺されるため、変形検出センサ10は、垂直方向の屈曲による出力値を出力しない又はほとんど出力しない。
【0058】
本実施形態の圧電フィルム4の出力値と、参考例の圧電フィルムの出力値とを比較した場合について
図9及び
図10を参照して説明する。ここでいう参考例は、本願発明の特徴を有さない圧電フィルムである。具体的には、参考例の圧電フィルムは、積層方向に曲げられた時に互いに異なる電荷を発生し、結果として、逆電位が発生する2枚の圧電フィルムを有していない。
図9は、圧電フィルム4の出力値の一例を示す参考図である。
図9で示される横軸は、時間を示す。また、
図9で示される縦軸は、圧電フィルム4の出力値である。
図10は、参考例の圧電フィルムの出力値の一例を示す参考図である。
図10で示される横軸は、時間を示す。また、
図10で示される縦軸は、圧電フィルムの出力値である。なお、
図9及び
図10で示される点線Oa1及びOa2は、A点での出力値を示し、実線Ob1及びOb2は、B点での出力値を示す。
【0059】
図9に示すように、A点とB点とでは、圧電フィルム4からの出力値が略同じである。すなわち、本実施形態の圧電フィルム4の出力値は、垂直方向の屈曲による影響をほとんど受けていない。一方、参考例の圧電フィルムでは、
図10に示すように、A点とB点とで出力値が大きく異なる。参考例の圧電フィルムの出力値は、B点で押された場合、水平方向の力による伸長の変形量だけでなく、垂直方向の力による屈曲の変形量を検出している。すなわち、参考例の圧電フィルムは、タッチパネル1を押す位置に応じて、垂直方向の力による屈曲に影響された出力値を出力している。
【0060】
実施形態1の変形検出センサ10は、積層方向に曲げられた時に互いに異なる電荷を発生し、結果として、逆電位が発生する第1圧電フィルム41及び第2圧電フィルム42を備えることで、圧電フィルム4に対する垂直方向に働く力による影響を軽減することができる。すなわち、変形検出センサ10は、タッチパネル1の全面に亘って、押す位置に関係なく、水平方向の変形だけを検出し、タッチパネル1のどこが押されても、変形検出センサ10の出力値が変化しないようにすることができる。したがって、本発明の一実施形態の変形検出センサ10は、タッチパネル1の押し込み位置が違う場合でも、押し込み量が均一であれば均一な出力値を出力することができる。
【0061】
[実施形態1の変形例]
圧電フィルム4の構成において、上記実施形態1以外の構成について、以下に説明する。実施形態1の変形例では、左右方向X1における第1圧電フィルム41のフィルム長と第2圧電フィルム42のフィルム長が同じであり、且つ、前後方向Z1における第1圧電フィルム41のフィルム幅と第2圧電フィルム42のフィルム幅が同じである。
【0062】
第1圧電フィルム41が左右方向X1において伸長し、第2圧電フィルム42が左右方向X1において収縮した場合、第1電位差V1と第2電位差V2とが同じになるための条件を、以下の数式[式1]~[式3]を使用して説明する。
【0063】
なお、圧電フィルムに生じる応力はσ、圧電フィルムに生じる歪みはs、圧電フィルムのヤング率はY、圧電フィルムに生じる電界をE、圧電フィルムの第1主面及び第2主面の電位差(電圧)をV、圧電フィルムの圧電定数をd31、圧電フィルムの左右方向X1における屈曲の変形量をΔ、左右方向X1における圧電フィルムのフィルム長をL、圧電フィルムの誘電率をε及び圧電フィルムの厚みをtsとする。
【0064】
応力σは以下の[式1]で求められる。
【0065】
[式1]
σ=Y×s=Y×Δ/L
電界Eは、以下の[式2]で求められる。
【0066】
[式2]
E=d31/ε×σ=d31/ε×Y×Δ/L
電位差(電圧)Vは以下の[式3]で求められる。
【0067】
[式3]
V=t×E=t/ε×Δ/L×d31×Y
第1圧電フィルム41の厚みをts1、第2圧電フィルム42の厚みをts2とし、第1圧電フィルムの誘電率をε1、第2圧電フィルムの誘電率をε2とすると、第1圧電フィルム41の厚みts1と第1圧電フィルム41の誘電率ε1との比率である第1の比ts1/ε1と、第2圧電フィルム42の厚みts2と第2圧電フィルム42の誘電率ε2との比率である第2の比ts2/ε2と、が同じ(ts1/ε1=ts2/ε2)であり、第1圧電フィルム41の圧電定数と第2圧電フィルム42の圧電定数とが同じd31であれば、第1圧電フィルム41と第2圧電フィルム42のそれぞれが発生する第1電位差V1及び第2電位差V2は等しくなる。
【0068】
また、上述とは別に、[式3]から、第1圧電フィルムの圧電定数(d311)と第1圧電フィルム41の厚みts1との積(d311)×ts1と、第2圧電フィルム42の圧電定数(d312)と第2圧電フィルム42の厚みts2との積(d312)×ts2とが同じ(d311×ts1=d312×ts2)であり、第1圧電フィルム41の誘電率ε1と第2圧電フィルム42の誘電率ε2とが同じであれば、第1圧電フィルム41と第2圧電フィルム42のそれぞれが発生する第1電位差V1及び第2電位差V2は等しくなる。
【0069】
[実施形態2]
実施形態2の変形検出センサ10Aについて、
図11、
図12、
図13、
図14及び
図15を参照して説明する。
図11は、実施形態2の変形検出センサ10Aを備える電子機器100Aの分解斜視図である。
図12は、実施形態2の前後方向Z1から視た圧電フィルム4Aの側面図である。
図13は、実施形態2の変形検出センサ10Aの下面図である。
図14は、
図13のB-B線における断面図である。
図15は、A点を押された場合とB点を押された場合の圧電フィルム4Aの出力値を示す参考図である。
図15の横軸は、第2接続位置44からの距離を示す。また、
図15の縦軸は、変形検出センサ10Aの出力値を示す。なお、実施形態1と同じ構成については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0070】
この例では、タッチパネル1に対する押し込みによる保持部3Aの第2部分32の変位量を制御する。
【0071】
また、この例では、変形検出センサ10Aは、
図11に示すように、圧電フィルム4Aを備えている。圧電フィルム4Aは、
図11及び
図12に示すように、左右方向X1に長尺なフィルム形状を有している。また、圧電フィルム4Aは、
図12に示すように、上面に第1電極部P31と、下面に第2電極部P32とを有する。さらに、圧電フィルム4Aは、電極部間に、圧電体を有している。圧電フィルム4Aは、演算回路(図示せず)と接続されている。この例では、圧電フィルム4Aが1枚のフィルムで構成されている例で説明する。なお、圧電フィルム4Aは、1枚でもよいし、複数のフィルタが積層されて構成されていてもよい。
【0072】
圧電フィルム4Aは、タッチパネル1が押されると、水平方向(例えば、左右方向X1)に伸長する。また、圧電フィルム4Aは、タッチパネル1が押されると、垂直方向(上下方向Y1)に屈曲する。演算回路(図示せず)は、圧電フィルム4Aから出力される出力値に基づいて、電位差を計算する。
【0073】
保持部3Aは、
図13に示すように、複数(
図13では2つ)の第1梁部33Aと、複数(
図13では2つ)の第2梁部33Bとを備えている。
【0074】
[保持部の構造]
複数の第1梁部33Aは、左右方向X1に沿って第2接続位置44に近い位置に設けられている。また、複数の第2梁部33Bは、第2接続位置44から第1梁部33Aの位置よりも遠い位置に設けられている。なお、第1梁部33Aは、1つであってもよい。また、第2梁部33Bは1つであってもよい。
【0075】
この例では、保持部3の上面(接続面)の法線方向(上下方向Y1)を厚み方向とした場合、第1梁部33Aは、第2梁部33Bよりも、厚み方向に変形しにくく形成されている。
【0076】
以下、第1梁部33A及び第2梁部33Bの構造についてより詳細に説明する。
【0077】
複数の第1梁部33Aは、
図14に示すように、平面視した場合に、矩形状を有している。同様に、複数の第2梁部33Bは、平面視した場合に、矩形状を有している。この例では、上下方向Y1における第1梁部33Aの長さである第1の厚みtf1と、上下方向Y1における第2梁部33Bの長さである第2の厚みtf2とは、同じである。なお、第1の厚みtf1及び第2の厚みtf2は、0.3mm~10mmであるのが好ましい。
【0078】
また、
図13に示すように、前後方向Z1における第1梁部33Aの長さである第1の長さL1と、前後方向Z1における第2梁部33Bの長さである第2の長さL2とは同じである。なお、第1の長さL1と第2の長さL2は、5mm~30mmであるのが好ましい。
【0079】
第1梁部33Aは、左右方向X1の長さである第1幅W1が、第2梁部33Bの左右方向X1の長さである第2幅W2よりも長い。第1梁部33Aの第1幅W1及び第2梁部33Bの第2幅W2は、0.5mm~2mmであるのが好ましい。
【0080】
第1幅W1が第2幅W2よりも長いことで、第1梁部33Aは、上下方向Y1に対して、第2梁部33Bよりも曲がりにくい。また、第1幅W1よりも短い第2幅W2を有する第2梁部33Bは、第1梁部33Aよりも上下方向Y1に曲がりやすい。
【0081】
ここで、B点が押された場合の圧電フィルム4Aの出力値を「1」として、A点が押された時の圧電フィルム4Aの出力値を説明する。
図15で示される直線Cp1は、第1梁部33Aの第1幅W1と第2梁部33Bの第2幅W2との比が「1」対「1」のときの傾きを示す。
図15で示される直線Cp2は、第1梁部33Aの第1幅W1と第2梁部33Bの第2幅W2との比が「2」対「1」のときの傾きを示す。
図15で示される直線Cp3は、第1梁部33Aの第1幅W1と第2梁部33Bの第2幅W2との比が「3」対「1」のときの傾きを示す。なお、
図15において、A点、B点において、タッチパネル1に対して押された力は同じである。
【0082】
また、直線Cp1、直線Cp2及び直線Cp3の傾きを比較すると、直線Cp1の傾きが最も大きい。一方、直線Cp3の傾きは最も小さい。すなわち、第1幅W1と第2幅W2との比が「1」対「1」の場合、押される位置が第2接続位置44から離れるにつれて、B点が押された場合の圧電フィルム4Aの変形量と差とが大きくなる。
【0083】
また、直線Cp1において、
図15に示すように、A点が押されたときの圧電フィルム4Aの相対値としての出力値は、直線Cp2及び直線Cp3と比較して、最も小さい。
【0084】
一方、直線Cp3は、直線Cp1及び直線Cp2と比較して、A点が押されたときの圧電フィルム4Aの出力値が最も「1」に近い。このように、第1幅W1と第2幅W2との比が「3」対「1」であれば、A点が押された場合とB点が押された場合とでは、圧電フィルム4Aの変形量は、実用上は差異がないとみなせる。
【0085】
[作用・効果]
圧電フィルム4Aは、B点でタッチパネル1を押した場合、A点でタッチパネル1を押した場合より上下方向Y1に変形しにくくなる。また、圧電フィルム4Aは、A点が押された場合、B点で押された場合よりも上下方向Y1に変形しやすくなる。
【0086】
例えば、第1梁部33Aの第1幅W1が第2梁部33Bの第2幅W2の3倍程度であれば、A点が押されたときの圧電フィルムの上下方向Y1に対する変形量が同等になる。言い換えると、第1梁部33Aの第1幅W1が第2梁部33Bの第2幅W2の3倍程度であれば、圧電フィルム4Aの出力値は、B点が押されたときの圧電フィルム4Aの出力値と同じになる。
【0087】
このように、第1幅W1を第2幅W2よりも大きくすることで、圧電フィルム4Aに対する垂直方向に働く力による影響を軽減することができる。したがって、実施形態2の変形検出センサ10Aは、タッチパネル1の押し込み位置が違う場合でも、押し込み量が均一であれば均一な出力値を出力することができる。
【0088】
[断面二次モーメントに基づく曲がりやすさの定義]
断面二次モーメントに基づく曲がりやすさについて、
図16及び
図17を参照して、説明する。断面二次モーメントに基づく曲がりやすさについて、
図16及び
図17で示される部材6を例にして説明する。
図16は、以下の説明で使用する部材のたわみの一例を示す部材の側面図である。
図16は、部材6の側面図である。
図16で示されるLは、部材6の長さ方向における部材6の長さを示す。
図16で示されるPは、部材6に対して垂直方向に加えられる力を示す。また、
図17で示される力Pの向きは矢印で示されている。
図16で示されるδは、部材6のたわみの大きさを示す。
図17は、
図16のC-C線における断面図である。
図17で示されるhは、部材6が力Pによって屈曲する方向における部材6の長さ(厚み)を示す。また、
図17で示されるbは、力Pが加えられる方向に対して直交する方向における部材6の長さ(幅)を示す。
【0089】
部材6は、
図16に示すように、一端(
図16では、左端)が固定された長尺な部材である。また、部材6は、例えば、
図17に示すように、断面が矩形状を有している。
【0090】
部材6の他端(自由端)(
図16では右端)は、垂直方向の力Pが加えられると、下向きにたわむ。部材6の断面は、幅b及び厚みhとからなる矩形状である。部材6の断面二次モーメントlは、以下の[式4]で計算される。
【0091】
[式4]
l=bh3/12
垂直方向の力Pが加えられたときの部材6のたわみδは、以下の[式5]で計算される。なお、部材6の縦弾性係数(ヤング率)をYとする。
【0092】
[式5]
δ=(PL3)/3Yl
部材6に加えられる力Pは、部材6を弾性体と仮定したとき、該弾性体としての部材6のばね定数をKとすれば、以下の[式6]ように計算することができる。
【0093】
[式6]
P=K×δ
[式6]のδに[式5]を代入し、且つ、断面二次モーメントlに[式4]を代入した場合、ばね定数は、以下の[式7]のように表すことができる。
【0094】
[式7]
K=3Yl/L3∝(3Y×bh3)/(12L3)∝bh3/L3
本実施形態では、[式7]で示されるばね定数Kを、部材6の曲がりやすさと定義する。
【0095】
垂直方向(上下方向Y1)に対する第1梁部33Aの曲がりやすさK1を、上記[式7]を使用して計算する。この場合、垂直方向の力を力Pとしたときに、
図17で示される厚みhは、第1梁部33Aの第1の厚みtf1に相当する。また、
図17で示される幅bは、第1梁部33Aの第1幅W1に相当する。また、
図16で示されるLは、第1梁部33Aの第1の長さL1に相当する。
【0096】
したがって、第1梁部33Aの垂直方向の曲がりやすさK1は、以下の[式8]で表される。
【0097】
[式8]
K1=(W1×(tf1)3)/(L1)3 =(tf1)3(W1)/(L1)3
また、垂直方向(上下方向Y1)に対する第2梁部33Bの曲がりやすさK2は、以下の[式9]で表される。
【0098】
[式9]
K2=(W2×(tf2)3)/(L2)3 =(tf2)3(W2)/(L2)3
第1の長さL1と第2の長さL2とが同じであって、第1の厚みtf1と第2の厚みtf2とが同じであると仮定する。この場合、垂直方向の力Pによる第1梁部33Aの曲がりやすさK1と第2梁部33Bの曲がりやすさK2との比(K1:K2)は、上記式から、第1幅W1と第2幅W2の比(W1:W2)となる。したがって、第1幅W1及び第2幅W2により、直方向の力Pによる第1梁部33Aの曲がりやすさK1と第2梁部33Bの曲がりやすさK2の比を制御することができる。
【0099】
[実施形態2の変形例]
上記実施形態2の変形例に係る構成について説明する。この例では、第1の長さL1及び第2の長さL2が異なる場合における、第1幅W1、第2幅W2、第1の長さL1及び第2の長さL2を計算する。
【0100】
なお、この例では、以下の条件を前提にする。第1梁部33A及び第2梁部33Bは、同じ材料で形成されている。上下方向Y1(厚み方向)における第1梁部33Aの長さである第1の厚みtf1と、上下方向Y1における第2梁部33Bの長さである第2の厚みtf2とは同じである(
図14参照)。水平方向(左右方向X1)に対する第1梁部33Aの曲がりやすさと水平方向(左右方向X1)に対する第2梁部33Bの曲がりやすさは同じKである。
【0101】
上述の[式7]を使用することで、垂直方向の力Pd2(
図6参照)による、第1梁部33Aの曲がりやすさK1、及び第2梁部33Bの曲がりやすさK2が計算される。
【0102】
第1梁部33Aについて、左右方向X1の力Pd1を
図17で示される力Pとした場合、
図17で示される厚みhは、第1梁部33Aの第1幅W1に相当する。また、
図17で示される幅bは、第1梁部33Aの第1の厚みtf1に相当する。さらに、第2梁部33Bについて、左右方向X1の力Pd1を
図17で示される力Pとした場合、
図17で示される厚みhは、第2梁部33Bの第2幅W2に相当する。また、
図17で示される幅bは、第2梁部33Bの第2の厚みtf2に相当する。
【0103】
第1梁部33A及び第2梁部33Bの左右方向X1に対する曲がりやすさKは、式7から、以下の[式10]になる。
【0104】
[式10]
((W1)3×tf1)/(L1)3 =((W2)3×tf2)/(L2)3 =K
[式10]を制約条件とした場合、垂直方向に対する第1梁部33Aの曲がりやすさK1は以下のように計算される。
【0105】
K1=(W1×(tf1)3)/(L1)3 =K(tf1)2/(W1)2
また、[式10]を制約条件とした場合、垂直方向に対する第2梁部33Bの曲がりやすさK2は以下のように計算される。
【0106】
K2=(W2×(tf2)3)/(L2)3 =K(tf2)2/(W2)2
垂直方向に対する第1梁部33Aの曲がりやすさK1と垂直方向に対する第2梁部33Bの曲がりやすさK2との比をUとする。この場合、(W2/W1)2により、曲がりやすさの比Uは、制御される。さらに、決定した(W2/W1)2に対して[式10]を満たすように、第1の長さL1及び第2の長さL2は選択される。
【0107】
例えば、第1の長さL1が第2の長さL2よりも長くなるように、第1梁部33A及び第2梁部33Bが形成されていてもよい。
【0108】
これにより、タッチパネル1の押し込み位置に関わらず、圧電フィルム4Aの垂直方向の変形量が実用上に差異がないとみなせる。したがって、変形検出センサ10Aは、タッチパネル1に対して、平面視したときの押し込み位置に関わらず、圧電フィルム4Aに対する垂直方向に働く力による影響を軽減することができる。
【0109】
最後に、前記各実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0110】
なお、筐体2を形成する金属板は、ポリイミド等の樹脂によりコーティングされていてもよい。さらに、筐体2は、金属板以外の材料(例えば、アクリル樹脂、PET、ポリカーボネイト、ガラスエポキシ、FRP、金属、又はガラス等)により形成されてもよい。
【0111】
保持部3、3Aを形成する金属板は、ポリイミド等の樹脂によりコーティングされていてもよい。さらに、保持部3、3Aは、金属板以外の材料(例えば、アクリル樹脂、PET、ポリカーボネイト、ガラスエポキシ、FRP、金属、又はガラス等)により形成されてもよい。
【0112】
第1部分31、第2部分32及び複数の梁部33は、単一の部材で形成されていなくてもよい。第1部分31、第2部分32、第1梁部33A及び第2梁部33Bは、単一の部材で形成されていなくてもよい。
【0113】
第1圧電フィルム41の下面の電極及び第2圧電フィルム42の上面の電極はグランド電位(基準電位)でなくてもよい。この場合第1圧電フィルム41の上面の電極及び第2圧電フィルム42の下面の電極がグランド電位であってもよい。
【0114】
第1圧電フィルム41の厚みts1と第2圧電フィルム42の厚みts2は同じでなくてもよい。例えば、第1圧電フィルム41の誘電率を誘電率ε1とし、第1圧電フィルム41の圧電定数を圧電定数d311とし、第1圧電フィルム41の厚みを厚みts1とする。また、例えば、第2圧電フィルム42の誘電率をε2とし、第2圧電フィルム42の圧電定数をd312とし、第2圧電フィルム42の厚みをts2とする。この場合、以下の[式11]及び[式12]の式が成り立つ。
【0115】
[式11]
ts1×ε2=ts2×ε1
[式12]
ts1×d311=ts2×d312
[式11]及び[式12]を満たす、ts1及びts2を選択する。この場合、ts1及びts2は異なる値に選択されてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1…タッチパネル(操作パネル)
2…筐体
3、3A…保持部
4、4A…圧電フィルム
5…アクチュエータ
10、10A…変形検出センサ
31…第1部分
32…第2部分
33…梁部
33A…第1梁部
33B…第2梁部
41…第1圧電フィルム
42…第2圧電フィルム
43…第1接続位置
44…第2接続位置
d31…圧電定数
L1…第1の長さ
L2…第2の長さ
tf1…第1の厚み
tf2…第2の厚み
ts1…第1圧電フィルムの厚み
ts2…第2圧電フィルムの厚み
W1…第1幅
W2…第2幅
X1…左右方向(第1の方向)
Y1…上下方向(第2の方向)
ε…誘電率