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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20250218BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F17/00 C
H01F17/04 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024530396
(86)(22)【出願日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2023019918
(87)【国際公開番号】W WO2024004484
(87)【国際公開日】2024-01-04
【審査請求日】2024-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2022102909
(32)【優先日】2022-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】小澤 怜治
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-247577(JP,A)
【文献】特開2021-174817(JP,A)
【文献】特開2001-267127(JP,A)
【文献】特開2004-193512(JP,A)
【文献】特開2005-216942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層と複数のコイル導体層が積層された積層体と、
前記積層体の表面に設けられ、前記コイル導体層と電気的に接続された外部電極と
を含む積層コイル部品であって、
前記複数の絶縁体層は磁性体であり、
前記複数のコイル導体層は、電気的に接続されコイルを形成し、
前記コイルの軸は、実装面に対して略平行であり、
前記積層体の長手方向の寸法は、1.8mm以上2.2mm以下であり、幅方向の寸法は、1.05mm以上1.45mm以下であり、
前記コイルのターン数をx、前記コイル導体層間の距離をy(mm)とした場合に、(x、y)は、A1(54,0.005)、B1(54,0.01)、C1(42,0.01)、D1(42,0.02)、E1(36,0.02)、F1(36,0.03)、G1(30,0.03)、H1(30,0.04)、I1(24,0.04)、J1(24,0.05)、K1(18,0.05)、L1(18,0.01)、M1(12,0.01)、N1(12,0.005)で囲まれる領域以内にある、
積層コイル部品。
【請求項2】
前記(x、y)は、A1(54,0.005)、B1(54,0.01)、C1(42,0.01)、D1(42,0.02)、E1(36,0.02)、F1(36,0.03)、H1(30,0.04)、O1(24,0.03)、P1(24,0.01)、L1(18,0.01)、Q1(18,0.005)で囲まれる領域以内にある、請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項3】
前記積層体の高さ方向の寸法は、1.05mm以上1.45mm以下である、請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項4】
10MHz以上1GHz以下の周波数帯でのインピーダンスが300Ω以上である、請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項5】
複数の絶縁体層と複数のコイル導体層が積層された積層体と、
前記積層体の表面に設けられ、前記コイル導体層と電気的に接続された外部電極と
を含む積層コイル部品であって、
前記複数の絶縁体層は磁性体であり、
前記複数のコイル導体層は、電気的に接続されコイルを形成し、
前記コイルの軸は、実装面に対して略平行であり、
前記積層体の長手方向の寸法は、3.0mm以上3.4mm以下であり、幅方向の寸法は、1.4mm以上1.8mm以下であり、
前記コイルのターン数をx、前記コイル導体層間の距離をy(mm)とした場合に、(x、y)は、A2(84,0.005)、B2(84,0.01)、C2(75,0.01)、D2(75,0.02)、E2(54,0.02)、F2(54,0.03)、G2(42,0.03)、H2(42,0.04)、I2(36,0.04)、J2(36,0.05)、K2(30,0.05)、L2(30,0.06)、M2(18,0.06)、N2(18,0.03)、O2(12,0.03)、P2(12,0.01)、Q2(18,0.01)、R2(18,0.005)で囲まれる領域以内にある、
積層コイル部品。
【請求項6】
前記(x、y)は、A2(84,0.005)、B2(84,0.01)、C2(75,0.01)、D2(75,0.02)、E2(54,0.02)、F2(54,0.03)、G2(42,0.03)、H2(42,0.04)、I2(36,0.04)、J2(36,0.05)、K2(30,0.05)、L2(30,0.06)、S2(24,0.06)、T2(24,0.04)、U2(18,0.03)、V2(24,0.02)、W2(36,0.02)、X2(36,0.01)、Y2(54,0.01)、Z2(54,0.005)で囲まれる領域以内にある、請求項5に記載の積層コイル部品。
【請求項7】
前記積層体の高さ方向の寸法は、1.4mm以上1.8mm以下である、請求項5に記載の積層コイル部品。
【請求項8】
10MHz以上1GHz以下の周波数帯でのインピーダンスが300Ω以上である、請求項5に記載の積層コイル部品。
【請求項9】
複数の絶縁体層と複数のコイル導体層が積層された積層体と、
前記積層体の表面に設けられ、前記コイル導体層と電気的に接続された外部電極と
を含む積層コイル部品であって、
前記複数の絶縁体層は磁性体であり、
前記複数のコイル導体層は、電気的に接続されコイルを形成し、
前記コイルの軸は、実装面に対して略平行であり、
前記積層体の長手方向の寸法は、3.0mm以上3.4mm以下であり、幅方向の寸法は、2.3mm以上2.7mm以下であり、
前記コイルのターン数をx、前記コイル導体層間の距離をy(mm)とした場合に、(x、y)は、A3(84,0.005)、B3(84,0.01)、C3(75,0.01)、D3(75,0.02)、E3(54,0.02)、F3(54,0.03)、G3(42,0.03)、H3(42,0.04)、I3(36,0.04)、J3(36,0.05)、K3(30,0.05)、L3(30,0.06)、M3(12,0.06)、N3(18,0.05)、O3(18,0.04)、P3(24,0.04)、Q3(24,0.03)、R3(36,0.03)、S3(36,0.02)、E3(54,0.02)、T3(54,0.01)、C3(75,0.01)、U3(75,0.005)で囲まれる領域以内にある、
積層コイル部品。
【請求項10】
10MHz以上1GHz以下の周波数帯でのインピーダンスが300Ω以上である、請求項9に記載の積層コイル部品。
【請求項11】
前記コイル導体層の厚みは、10μm以上25μm以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の積層コイル部品。
【請求項12】
前記コイルは、引出部により、前記外部電極に電気的に接続される、請求項1~10のいずれか1項に記載の積層コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大電流を流すことができるコイル部品への注目が高まっている。例えば、特許文献1では、巻芯部ならびにかかる巻芯部の端部に設けられた鍔部を有する、ドラム状コアと、巻芯部に巻回された、ワイヤと、前記ワイヤの端部が接続される、端子電極と、を備えたコイル部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-109789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような積層コイル部品では、コイル部が磁性体で覆われていないため、磁束の漏れが大きく、他の部品と一緒に基板に実装すると他の部品に磁束が干渉するおそれがある。したがって、大電流を流しても広い周波数帯でインピーダンスを取得することが難しい。一方、磁性体中にコイルが配置された積層コイル部品は、磁束の漏れが小さいため好ましい。
【0005】
本開示の目的は、大電流を流すことができ、広い周波数帯でインピーダンスが取得することができる積層コイル部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を含む。
[1] 複数の絶縁体層と複数のコイル導体層が積層された積層体と、
前記積層体の表面に設けられ、前記コイル導体層と電気的に接続された外部電極と
を含む積層コイル部品であって、
前記複数の絶縁体層は磁性体であり、
前記複数のコイル導体層は、電気的に接続されコイルを形成し、
前記コイルの軸は、実装面に対して略平行であり、
前記積層体の長手方向の寸法は、1.8mm以上2.2mm以下であり、幅方向の寸法は、1.05mm以上1.45mm以下であり、
前記コイルのターン数をx、前記コイル導体層間の距離をy(mm)とした場合に、(x、y)は、A1(54,0.005)、B1(54,0.01)、C1(42,0.01)、D1(42,0.02)、E1(36,0.02)、F1(36,0.03)、G1(30,0.03)、H1(30,0.04)、I1(24,0.04)、J1(24,0.05)、K1(18,0.05)、L1(18,0.01)、M1(12,0.01)、N1(12,0.005)で囲まれる領域以内にある、
積層コイル部品。
[2] 前記(x、y)は、A1(54,0.005)、B1(54,0.01)、C1(42,0.01)、D1(42,0.02)、E1(36,0.02)、F1(36,0.03)、H1(30,0.04)、O1(24,0.03)、P1(24,0.01)、L1(18,0.01)、Q1(18,0.005)で囲まれる領域以内にある、上記[1]に記載の積層コイル部品。
[3] 前記積層体の高さ方向の寸法は、1.05mm以上1.45mm以下である、上記[1]または[2]に記載の積層コイル部品。
[4] 10MHz以上1GHz以下の周波数帯でのインピーダンスが300Ω以上である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の積層コイル部品。
[5] 複数の絶縁体層と複数のコイル導体層が積層された積層体と、
前記積層体の表面に設けられ、前記コイル導体層と電気的に接続された外部電極と
を含む積層コイル部品であって、
前記複数の絶縁体層は磁性体であり、
前記複数のコイル導体層は、電気的に接続されコイルを形成し、
前記コイルの軸は、実装面に対して略平行であり、
前記積層体の長手方向の寸法は、3.0mm以上3.4mm以下であり、幅方向の寸法は、1.4mm以上1.8mm以下であり、
前記コイルのターン数をx、前記コイル導体層間の距離をy(mm)とした場合に、(x、y)は、A2(84,0.005)、B2(84,0.01)、C2(75,0.01)、D2(75,0.02)、E2(54,0.02)、F2(54,0.03)、G2(42,0.03)、H2(42,0.04)、I2(36,0.04)、J2(36,0.05)、K2(30,0.05)、L2(30,0.06)、M2(18,0.06)、N2(18,0.03)、O2(12,0.03)、P2(12,0.01)、Q2(18,0.01)、R2(18,0.005)で囲まれる領域以内にある、
積層コイル部品。
[6] 前記(x、y)は、A2(84,0.005)、B2(84,0.01)、C2(75,0.01)、D2(75,0.02)、E2(54,0.02)、F2(54,0.03)、G2(42,0.03)、H2(42,0.04)、I2(36,0.04)、J2(36,0.05)、K2(30,0.05)、L2(30,0.06)、S2(24,0.06)、T2(24,0.04)、U2(18,0.03)、V2(24,0.02)、W2(36,0.02)、X2(36,0.01)、Y2(54,0.01)、Z2(54,0.005)で囲まれる領域以内にある、上記[5]に記載の積層コイル部品。
[7] 前記積層体の高さ方向の寸法は、1.4mm以上1.8mm以下である、上記[5]または[6]に記載の積層コイル部品。
[8] 10MHz以上1GHz以下の周波数帯でのインピーダンスが300Ω以上である、上記[5]~[7]のいずれか1項に記載の積層コイル部品。
[9] 複数の絶縁体層と複数のコイル導体層が積層された積層体と、
前記積層体の表面に設けられ、前記コイル導体層と電気的に接続された外部電極と
を含む積層コイル部品であって、
前記複数の絶縁体層は磁性体であり、
前記複数のコイル導体層は、電気的に接続されコイルを形成し、
前記コイルの軸は、実装面に対して略平行であり、
前記積層体の長手方向の寸法は、3.0mm以上3.4mm以下であり、幅方向の寸法は、2.3mm以上2.7mm以下であり、
前記コイルのターン数をx、前記コイル導体層間の距離をy(mm)とした場合に、(x、y)は、A3(84,0.005)、B3(84,0.01)、C3(75,0.01)、D3(75,0.02)、E3(54,0.02)、F3(54,0.03)、G3(42,0.03)、H3(42,0.04)、I3(36,0.04)、J3(36,0.05)、K3(30,0.05)、L3(30,0.06)、M3(12,0.06)、N3(18,0.05)、O3(18,0.04)、P3(24,0.04)、Q3(24,0.03)、R3(36,0.03)、S3(36,0.02)、E3(54,0.02)、T3(54,0.01)、C3(75,0.01)、U3(75,0.005)で囲まれる領域以内にある、
積層コイル部品。
[10] 10MHz以上1GHz以下の周波数帯でのインピーダンスが300Ω以上である、上記[9]に記載の積層コイル部品。
[11] 前記コイル導体層の厚みは、10μm以上25μm以下である、上記[1]~[10]のいずれか1項に記載の積層コイル部品。
[12] 前記コイルは、引出部により、前記外部電極に電気的に接続される、上記[1]~[11]のいずれか1項に記載のコイル部品。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、大電流を流すことができ、広い周波数帯でインピーダンスが取得することができる積層コイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の積層コイル部品1を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す積層コイル部品1のII-IIに沿った切断面を示す断面図である。
図3図3は、本開示の積層コイル部品1の製造方法を説明するための図である。
図4図4は、実施例における積層コイル部品Aが300Ω以上のインピーダンスを与える領域を示す図である。
図5図5は、実施例における積層コイル部品Aが500Ω以上のインピーダンスを与える領域を示す図である。
図6図6は、実施例における積層コイル部品Bが300Ω以上のインピーダンスを与える領域を示す図である。
図7図7は、実施例における積層コイル部品Bが500Ω以上のインピーダンスを与える領域を示す図である。
図8図8は、実施例における積層コイル部品Cが300Ω以上のインピーダンスを与える領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、積層コイル部品および各構成要素の形状および配置等は、図示する例に限定されない。
【0010】
本実施形態の積層コイル部品1の斜視図を図1に、断面図を図2に示す。但し、下記実施形態の積層コイル部品および各構成要素の形状および配置等は、図示する例に限定されない。各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0011】
図1および図2に示されるように、本実施形態の積層コイル部品1は、略直方体形状を有する積層コイル部品である。積層コイル部品1において、図1のL軸に垂直な面を「端面」と称し、W軸に垂直な面を「側面」と称し、T軸に垂直な面を「上面」および「下面」と称する。積層コイル部品1は、下面において基板等の他の電子部品に実装される。即ち、積層コイル部品1の下面は、実装面である。積層コイル部品1は、概略的には、複数の絶縁体層と複数のコイル導体層が積層された積層体2と、積層体2の表面に設けられた外部電極4,5とを含む。積層体2は、絶縁体部6と、絶縁体部6に埋設されたコイル7を含む。絶縁体部6は、複数の絶縁体層が積層されて形成される。コイル7は、複数のコイル導体層8が積層され、積層方向に隣接するコイル導体層同士が接続導体により接続されて形成される。外部電極4,5は、それぞれ、積層体2の一方の端面と4つの側面の一部に連続して設けられる。コイル7のコイルの軸は、積層体2の積層方向、即ち、上記絶縁体層およびコイル導体層8の積層方向は、実装面、即ち積層コイル部品の下面に対して略平行である。
【0012】
上記した本実施形態の積層コイル部品1を以下に説明する。本実施形態では、絶縁体部6がフェライト材料から形成される態様について説明する。
【0013】
本実施形態の積層コイル部品1において、積層体2は、絶縁体部6とコイル7から構成される。
【0014】
絶縁体部6は、複数の絶縁体層を積層することにより形成される。
【0015】
絶縁体部6は、好ましくは磁性体、さらに好ましくは焼結フェライトから構成される。上記焼結フェライトは、主成分として、少なくともFe、Ni、およびZnを含む。焼結フェライトは、さらにCuを含んでいてもよい。
【0016】
一の態様において、上記焼結フェライトは、主成分として、少なくともFe、Ni、ZnおよびCuを含む。好ましくは、上記焼結フェライトは、Ni-Cu-Zn系フェライトである。
【0017】
上記焼結フェライトにおいて、Fe含有量は、Feに換算して、好ましくは40.0モル%以上49.5モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは45.0モル%以上49.5モル%以下であり得る。
【0018】
上記焼結フェライトにおいて、Zn含有量は、ZnOに換算して、好ましくは2.0モル%以上35.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは10.0モル%以上30.0モル%以下であり得る。
【0019】
上記焼結フェライトにおいて、Cu含有量は、CuOに換算して、好ましくは6.0モル%以上13.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは7.0モル%以上10.0モル%以下である。
【0020】
上記焼結フェライトにおいて、Ni含有量は、特に限定されず、上記した他の主成分であるFe、ZnおよびCuの残部とし得る。例えば、Ni含有量は、NiOに換算して、好ましくは10.0モル%以上45.0モル%以下である。
【0021】
一の態様において、上記焼結フェライトは、Feは、Feに換算して40.0モル%以上49.5モル%以下、Znは、ZnOに換算して2.0モル%以上35.0モル%以下、Cuは、CuOに換算して6.0モル%以上13.0モル%以下、Niは、NiOに換算して、10.0モル%以上45.0モル%以下である。
【0022】
本開示において、上記焼結フェライトは、さらに添加成分を含んでいてもよい。焼結フェライトにおける添加成分としては、例えばMn、Co、Sn、Bi、Si等が挙げられるが、これに限定されるものではない。Mn、Co、Sn、BiおよびSiの含有量(添加量)は、主成分(Fe(Fe換算)、Zn(ZnO換算)、Cu(CuO換算)およびNi(NiO換算))の合計100重量部に対して、それぞれ、Mn、Co、SnO、Bi、およびSiOに換算して、0.1重量部以上1重量部以下であることが好ましい。また、上記焼結フェライトは、さらに製造上不可避な不純物を含んでいてもよい。
【0023】
絶縁体部6の比透磁率は、好ましくは3以上800以下、より好ましくは100以上400以下、さらに好ましくは100以上200以下であり得る。
【0024】
上記したように、上記コイル7は、コイル導体層8がコイル状に相互に電気的に接続されることにより構成されている。積層方向に互いに隣接するコイル導体層8は、絶縁体部6を貫通する接続導体(例えば、ビア導体)により接続されている。上記コイル7は、引出部により、外部電極4,5に電気的に接続される。
【0025】
コイル導体層8を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、Au、Ag、Cu、Pd、Ni等が挙げられる。上記コイル導体層8を構成する材料は、好ましくはAgまたはCu、より好ましくはAgである。導電性材料は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0026】
コイル導体層8の厚みは、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上25μm以下であり得る。コイル導体層8の厚みを大きくすることにより、コイル導体層8の抵抗値がより小さくなり、より大電流に対応できる積層コイル部品を得ることができる。ここにコイル導体層の厚みとは、積層方向(図2ではL方向)に沿ったコイル導体層の厚みをいう。
【0027】
コイル導体層8の幅は、好ましくは100μm以上600μm以下、より好ましくは200μm以上400μm以下であり得る。コイル導体層8の幅を大きくすることにより、コイル導体層8の抵抗値がより小さくなり、より大電流に対応できる積層コイル部品を得ることができる。ここにコイル導体層の幅とは、コイルの巻き方向および積層方向に垂直なコイル導体層の幅をいう。
【0028】
上記コイル導体層の厚みは、以下のようにして測定することができる。
チップのLT面を研磨紙に向けた状態で研磨を行い、コイル導体層のW寸中央部で研磨を停止する。その後、マイクロスコープで観察を行い、コイル導体層の厚みを、マイクロスコープに付属している測定機能にて測定する。コイル導体層の厚みは、LT断面におけるコイル導体層幅方向(図2ではT方向)のコイル導体層中央部において測定する。
【0029】
上記コイル導体層の幅は、以下のようにして測定することができる。
チップのTW面を研磨紙に向けた状態で研磨を行い、コイル導体層のL寸中央部で研磨を停止する。その後、マイクロスコープで観察を行い、コイル導体層の幅を、マイクロスコープに付属している測定機能にて測定する。
【0030】
上記接続導体は、上記絶縁体層を貫通するように設けられる。接続導体を構成する材料は、コイル導体層8に関して記載した材料であり得る。上記接続導体を構成する材料は、コイル導体層8を構成する材料と同じであっても異なっていてもよい。好ましい態様において、上記接続導体を構成する材料は、コイル導体層8を構成する材料と同じである。好ましい態様において、上記接続導体を構成する材料は、Agである。
【0031】
積層体2の長手方向の寸法(L方向の長さ)は、好ましくは、1.8mm以上3.4mm以下、幅方向の寸法(W方向の長さ)は、1.05mm以上2.7mm以下であり得る。
【0032】
一の態様において、積層体2の長手方向の寸法は、1.8mm以上2.2mm以下であり、幅方向の寸法は、1.05mm以上1.45mm以下であり得る。
【0033】
別の態様において、積層体2の長手方向の寸法は、3.0mm以上3.4mm以下であり、幅方向の寸法は、1.4mm以上1.8mm以下であり得る。
【0034】
別の態様において、積層体2の長手方向の寸法は、3.0mm以上3.4mm以下であり、幅方向の寸法は、2.3mm以上2.7mm以下であり得る。
【0035】
積層体2の高さ方向の寸法は、一の態様において1.05mm以上1.45mm以下であり、別の態様において1.4mm以上1.8mm以下、さらに別の態様において2.3mm以上2.7mm以下であり得る。
【0036】
コイル7のターン数は、好ましくは12以上84以下であり得る。
【0037】
上記コイルのターン数は、いわゆるコイルの巻き数を意味する。即ち、ターン数は、コイルが360°巻回する度に1増加する。
【0038】
積層体2におけるコイル導体層間の距離は、好ましくは0.005mm以上0.06mm以下、より好ましくは0.005mm以上0.04mm以下である。
【0039】
上記コイル導体層間の距離は、以下のようにして測定することができる。
チップのLT面を研磨紙に向けた状態で研磨を行い、コイル導体層のW寸中央部で研磨を停止する。その後、マイクロスコープで観察を行い、コイル導体層同士の最短距離(図2における「d」)を、マイクロスコープに付属している測定機能にて測定する。断面におけるすべてのコイル導体層同士の最短距離を測定し、その平均を「コイル導体層間の距離」とする。
【0040】
一の態様において、積層体2の長手方向の寸法は、1.8mm以上2.2mm以下であり、幅方向の寸法は、1.05mm以上1.45mm以下であり、積層体2のコイル7のターン数をx、コイル導体層間の距離をy(mm)とした場合に、(x、y)は、図4に示すように、A1(54,0.005)、B1(54,0.01)、C1(42,0.01)、D1(42,0.02)、E1(36,0.02)、F1(36,0.03)、G1(30,0.03)、H1(30,0.04)、I1(24,0.04)、J1(24,0.05)、K1(18,0.05)、L1(18,0.01)、M1(12,0.01)、N1(12,0.005)で囲まれる領域以内にある。
【0041】
好ましい態様において、積層体2の長手方向の寸法は、1.8mm以上2.2mm以下であり、幅方向の寸法は、1.05mm以上1.45mm以下であり、積層体2のコイル7のターン数をx、コイル導体層間の距離をy(mm)とした場合に、(x、y)は、図5に示すように、A1(54,0.005)、B1(54,0.01)、C1(42,0.01)、D1(42,0.02)、E1(36,0.02)、F1(36,0.03)、H1(30,0.04)、O1(24,0.03)、P1(24,0.01)、L1(18,0.01)、Q1(18,0.005)で囲まれる領域以内にある。
【0042】
一の態様において、積層体2の長手方向の寸法は、3.0mm以上3.4mm以下であり、幅方向の寸法は、1.4mm以上1.8mm以下であり、積層体2のコイル7のターン数をx、コイル導体層間の距離をy(mm)とした場合に、(x、y)は、図6に示すように、A2(84,0.005)、B2(84,0.01)、C2(75,0.01)、D2(75,0.02)、E2(54,0.02)、F2(54,0.03)、G2(42,0.03)、H2(42,0.04)、I2(36,0.04)、J2(36,0.05)、K2(30,0.05)、L2(30,0.06)、M2(18,0.06)、N2(18,0.03)、O2(12,0.03)、P2(12,0.01)、Q2(18,0.01)、R2(18,0.005)で囲まれる領域以内にある。
【0043】
好ましい態様において、積層体2の長手方向の寸法は、3.0mm以上3.4mm以下であり、幅方向の寸法は、1.4mm以上1.8mm以下であり、積層体2のコイル7のターン数をx、コイル導体層間の距離をy(mm)とした場合に、(x、y)は、図7に示すように、A2(84,0.005)、B2(84,0.01)、C2(75,0.01)、D2(75,0.02)、E2(54,0.02)、F2(54,0.03)、G2(42,0.03)、H2(42,0.04)、I2(36,0.04)、J2(36,0.05)、K2(30,0.05)、L2(30,0.06)、S2(24,0.06)、T2(24,0.04)、U2(18,0.03)、V2(24,0.02)、W2(36,0.02)、X2(36,0.01)、Y2(54,0.01)、Z2(54,0.005)で囲まれる領域以内にある。
【0044】
一の態様において、積層体2の長手方向の寸法は、3.0mm以上3.4mm以下であり、幅方向の寸法は、2.3mm以上2.7mm以下であり、積層体2のコイル7のターン数をx、コイル導体層間の距離をy(mm)とした場合に、(x、y)は、図8に示すように、A3(84,0.005)、B3(84,0.01)、C3(75,0.01)、D3(75,0.02)、E3(54,0.02)、F3(54,0.03)、G3(42,0.03)、H3(42,0.04)、I3(36,0.04)、J3(36,0.05)、K3(30,0.05)、L3(30,0.06)、M3(12,0.06)、N3(18,0.05)、O3(18,0.04)、P3(24,0.04)、Q3(24,0.03)、R3(36,0.03)、S3(36,0.02)、E3(54,0.02)、T3(54,0.01)、C3(75,0.01)、U3(75,0.005)で囲まれる領域以内にある。
【0045】
本開示の積層コイル部品は、上記の積層体の寸法、および(x、y)を満たすことにより、大電流を流すことができ、広い周波数帯でインピーダンスが取得することができる。
【0046】
外部電極4,5は、積層体2の両端面を覆うように設けられる。上記外部電極は、導電性材料、好ましくはAu、Ag、Pd、Ni、SnおよびCuから選択される1種またはそれ以上の金属材料から構成される。
【0047】
外部電極4,5は、単層であっても、多層であってもよい。一の態様において、上記外部電極は、多層、好ましくは2層以上4層以下、例えば3層であり得る。
【0048】
一の態様において、外部電極4,5は多層であり、AgまたはPdを含む層、Niを含む層、またはSnを含む層を含み得る。好ましい態様において、外部電極4,5は、AgまたはPdを含む層、Niを含む層、およびSnを含む層からなる。好ましくは、上記の各層は、コイル導体層側から、AgまたはPd、好ましくはAgを含む層、Niを含む層、Snを含む層の順で設けられる。好ましくは、上記AgまたはPdを含む層はAgペーストまたはPdペーストを焼き付けた層であり、上記Niを含む層およびSnを含む層は、めっき層であり得る。
【0049】
本開示の積層コイル部品は、10MHz以上1GHz以下の周波数帯でのインピーダンスは、好ましくは300Ω以上、より好ましくは500Ω以上であり得る。
【0050】
本開示の積層コイル部品は、好ましくは500mA以上、より好ましくは1.0A以上以下の電流を流すことができる。本開示の積層コイル部品に電流を流すことができる電流値の上限は、特に限定されないが、例えば6A以下である。
【0051】
上記した本実施形態の積層コイル部品1の製造方法を以下に説明する。本実施形態では、絶縁体部6がフェライト材料から形成される態様について説明する。但し、積層コイル部品1の製造方法は、下記する例に限定されない。
【0052】
(1)磁性材料の調製
【0053】
まず、フェライト材料を準備する。フェライト材料は、例えば、主成分としてFe、Zn、Cu、およびNiを含む。通常、上記フェライト材料の主成分は、実質的にFe、Zn、CuおよびNiの酸化物(理想的には、Fe、ZnO、NiOおよびCuO)から成る。
【0054】
フェライト材料として、Fe、ZnO、CuO、NiO、および必要に応じて添加成分を所定の組成になるように秤量し、混合および粉砕する。例えば、所定の組成の配合原料を、純水およびPSZ(部分安定化ジルコニア)ボールと共にボールミルに入れ、湿式で4~8時間混合粉砕する。粉砕したフェライト材料を乾燥し、仮焼し、仮焼粉末を得る。例えば、水分を蒸発乾燥させた後、700℃以上800℃以下の温度で2時間以上5時間以下仮焼することにより、仮焼粉末を得る。
【0055】
上記フェライト材料において、Fe含有量は、Feに換算して、好ましくは40.0モル%以上49.5モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは45.0モル%以上49.5モル%以下であり得る。
【0056】
上記フェライト材料において、Zn含有量は、ZnOに換算して、好ましくは2.0モル%以上35.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは10.0モル%以上30.0モル%以下であり得る。
【0057】
上記フェライト材料において、Cu含有量は、CuOに換算して、好ましくは6.0モル%以上13.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは7.0モル%以上10.0モル%以下である。
【0058】
上記フェライト材料において、Ni含有量は、特に限定されず、上記した他の主成分であるFe、ZnおよびCuの残部とし得る。例えば、Ni含有量は、NiOに換算して、好ましくは10.0モル%以上45.0モル%以下である。
【0059】
一の態様において、上記フェライト材料は、Feは、Feに換算して40.0モル%以上49.5モル%以下、Znは、ZnOに換算して2.0モル%以上35.0モル%以下、Cuは、CuOに換算して6.0モル%以上13.0モル%以下、Niは、NiOに換算して、10.0モル%以上45.0モル%以下である。
【0060】
本開示において、上記フェライト材料は、さらに添加成分を含んでいてもよい。フェライト材料における添加成分としては、例えばMn、Co、Sn、Bi、Si等が挙げられるが、これに限定されるものではない。Mn、Co、Sn、BiおよびSiの含有量(添加量)は、主成分(Fe(Fe換算)、Zn(ZnO換算)、Cu(CuO換算)およびNi(NiO換算))の合計100重量部に対して、それぞれ、Mn、Co、SnO、Bi、およびSiOに換算して、0.1重量部以上1重量部以下であることが好ましい。また、上記フェライト材料は、さらに製造上不可避な不純物を含んでいてもよい。
【0061】
なお、上記焼結フェライトにおけるFe含有量(Fe換算)、Mn含有量(Mn換算)、Cu含有量(CuO換算)、Zn含有量(ZnO換算)およびNi含有量(NiO換算)は、焼成前のフェライト材料におけるFe含有量(Fe換算)、Mn含有量(Mn換算)、Cu含有量(CuO換算)、Zn含有量(ZnO換算)およびNi含有量(NiO換算)と実質的に相違ないと考えて差し支えない。
【0062】
(2)フェライトシートの調製
作製した仮焼粉末をPSZメディアとともにボールミルに入れ、さらにポリビニルブチラール系等の有機バインダ、エタノール、トルエン等の有機溶剤、及び可塑剤を入れ、混合する。次に、ドクターブレード法等で、膜厚が20μm以上50μm以下のシート状に成形加工し、これを矩形状に打ち抜きグリーンシートを作製する。
【0063】
(3)コイル導体層用導電性ペーストの調製
【0064】
まず、導電性材料を準備する。導電性材料としては、例えば、Au、Ag、Cu、Pd、Ni等が挙げられ、好ましくはAgまたはCu、より好ましくはAgである。所定量の導電性材料の粉末を秤量し、所定量の溶剤(オイゲノールなど)、樹脂(エチルセルロースなど)、および分散剤と、プラネタリーミキサー等で混錬した後、3本ロールミル等で分散することで、コイル導体層用導電性ペーストを作製することができる。
【0065】
(4)コイルパターンの作製
上記で得られたグリーンシートに、レーザー照射を行い所定箇所にビアホールを形成する。導電性ペーストをスクリーン印刷することで、ビアホールに導電性ペーストを充填するとともに、コイル導体層のパターンを形成する。例えば、図3(a)~(l)に示すにように、グリーンシート21a~21lに、ビアホールを形成し、ビア導体パターン31a~31l、コイル導体層パターン32c~32jを形成する。
【0066】
(5)未焼成積層体の作製
上記で得られたコイルパターンを形成したグリーンシートを所定の順番で積み重ねる。具体的には、図3(a)~(b)に示すように、ビア導体パターンを形成したグリーンシートを積層する。積層するグリーンシートは、積層コイル部品の外装を形成し、ビア導体パターンは、引出部を形成する。なお、かかる工程において、積層するグリーンシートの数は、所望の外装の厚みに応じて適宜選択できる。ついで、図3(c)~(j)に示すにように、ビア導体パターンおよびコイル導体パターンを形成したグリーンシートを積層する。図3(c)~(f)のグリーンシートにより形成されるコイルパターンは、ターン数が3である。なお、かかる工程において、積層するグリーンシートの数は、所望のターン数に応じて適宜選択できる。ついで、図3(k)~(l)に示すように、ビア導体パターンを形成したグリーンシートを積層する。積層するグリーンシートは、積層コイル部品の外装を形成し、ビア導体パターンは、引出部を形成する。なお、かかる工程において、積層するグリーンシートの数は、所望の外装の厚みに応じて適宜選択できる。このようにして積層したグリーンシートを熱圧着して、未焼成の積層ブロックを作製する。
【0067】
(6)焼成
次に、上記で得られた未焼成積層体ブロックを、ダイサーなどで切断して、各素体に個片化する。
【0068】
ついで、例えば900℃以上920℃以下の温度で2~4時間、未焼成素体を焼成し、積層コイル部品1の積層体2を得る。
【0069】
ついで、得られた積層体2を、バレル処理することにより、素体の角を削り、丸みを形成してもよい。なお、バレル処理は、未焼成の積層体に対して行ってもよく、焼成後の積層体に対して行ってもよい。また、バレル処理は、乾式または湿式のどちらであってもよい。バレル処理は、素子同士を共擦する方法であってもよく、メディアと一緒にバレル処理する方法であってもよい。
【0070】
(7)外部電極の形成
次に、積層体2の端面にAgおよびガラスを含む外部電極形成用Agペーストを塗布し、800℃以上820℃以下で焼き付けすることで下地電極を形成する。下地電極の厚みは、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは3μm以上6μm以下であり得る。次に、電解めっきで下地電極の上に、Ni被膜、Sn被膜を順次形成することにより、外部電極を形成し、図1に示すような積層コイル部品1が得られる。
【0071】
以上、本発明の1つの実施形態について説明したが、本実施形態は種々の改変が可能である。
【0072】
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【実施例
【0073】
実施例
ムラタソフトウェア株式会社の解析シミュレーションソフトウェアFemtet(登録商標)を用いて、ターン数とコイル導体層間距離を変化させて、10MHz以上1GHz以下の周波数領域において、300Ω以上および500Ω以上のインピーダンスが得られる領域を求めた。シミュレーションは、下記積層コイル部品A、B及びCについて行った。
積層コイル部品A:長手方向の寸法=2.0mm,幅方向の寸法=1.2mm
積層コイル部品B:長手方向の寸法=3.2mm,幅方向の寸法=1.6mm
積層コイル部品C:長手方向の寸法=3.2mm,幅方向の寸法=2.5mm
【0074】
シミュレーション条件
CAE(Computer Aided Engineering)ソフトウェアFemtet(ムラタソフトウェア株式会社 登録商標)を用いてシミュレーションを実施した。はじめに、図1、2及び3に示される積層コイル部品の3Dモデルを作成した。積層コイル部品の長手方向の寸法を3.100mmに、幅方向および高さ方向の寸法を1.520mmに、コイル内径を0.450mmに、コイル導体層の幅を0.210mmに、コイル導体層の厚みを0.018mmに、ランド半径を0.125mmに、ビア半径を0.060mmに、外部電極の積層コイル部品長手方向の寸法を0.775mmに、コイル導体層間厚を0.005mmから0.060mmの範囲に、コイルの総ターン数を18.00ターンから84.00ターンの範囲に設定した。コイル導体部および外部電極の材料は銀とした。このとき、銀の比誘電率を1.0に、導電率を6.289×10S/mとして、チップコイル部品の素体部はフェライトとした。このとき、フェライトの比誘電率を15に、10MHzにおける比透磁率及びtanδをそれぞれ125及び0.0116に、100MHzにおける比透磁率及びtanδをそれぞれ42及び1.4980に、1GHzにおける比透磁率及びtanδをそれぞれ1.42及び8.0975に設定した。解析条件は電場解析の調和解析に設定し、10MHz、100MHzおよび1GHzにおけるインピーダンス(|Z|値)を求めた。(各比誘電率、導電率、比透磁率、tanδは実測値である。)
【0075】
得られた結果を、下記表1~表3に示す。
【0076】
表1:積層コイル部品Aにおけるシミュレーション結果
【表1】
【0077】
表2:積層コイル部品Bにおけるシミュレーション結果
【表2】
【0078】
表3:積層コイル部品Cにおけるシミュレーション結果
【表3】
【0079】
上記の結果から、積層コイル部品A~Cについて、300Ω以上および500Ω以上のインピーダンスが得られる領域は、下記通りであった。なお、コイルのターン数をx、前記コイル導体層間の距離をy(mm)とする。
【0080】
積層コイル部品A、300Ω以上
A1(54,0.005)、B1(54,0.01)、C1(42,0.01)、D1(42,0.02)、E1(36,0.02)、F1(36,0.03)、G1(30,0.03)、H1(30,0.04)、I1(24,0.04)、J1(24,0.05)、K1(18,0.05)、L1(18,0.01)、M1(12,0.01)、N1(12,0.005)で囲まれる領域(図4に示す領域)
【0081】
積層コイル部品A、500Ω以上
A1(54,0.005)、B1(54,0.01)、C1(42,0.01)、D1(42,0.02)、E1(36,0.02)、F1(36,0.03)、H1(30,0.04)、O1(24,0.03)、P1(24,0.01)、L1(18,0.01)、Q1(18,0.005)で囲まれる領域(図5に示す領域)
【0082】
積層コイル部品B、300Ω以上
A2(84,0.005)、B2(84,0.01)、C2(75,0.01)、D2(75,0.02)、E2(54,0.02)、F2(54,0.03)、G2(42,0.03)、H2(42,0.04)、I2(36,0.04)、J2(36,0.05)、K2(30,0.05)、L2(30,0.06)、M2(18,0.06)、N2(18,0.03)、O2(12,0.03)、P2(12,0.01)、Q2(18,0.01)、R2(18,0.005)で囲まれる領域(図6に示す領域)
【0083】
積層コイル部品B、500Ω以上
A2(84,0.005)、B2(84,0.01)、C2(75,0.01)、D2(75,0.02)、E2(54,0.02)、F2(54,0.03)、G2(42,0.03)、H2(42,0.04)、I2(36,0.04)、J2(36,0.05)、K2(30,0.05)、L2(30,0.06)、S2(24,0.06)、T2(24,0.04)、U2(18,0.03)、V2(24,0.02)、W2(36,0.02)、X2(36,0.01)、Y2(54,0.01)、Z2(54,0.005)で囲まれる領域(図7に示す領域)
【0084】
積層コイル部品C、300Ω以上
A3(84,0.005)、B3(84,0.01)、C3(75,0.01)、D3(75,0.02)、E3(54,0.02)、F3(54,0.03)、G3(42,0.03)、H3(42,0.04)、I3(36,0.04)、J3(36,0.05)、K3(30,0.05)、L3(30,0.06)、M3(12,0.06)、N3(18,0.05)、O3(18,0.04)、P3(24,0.04)、Q3(24,0.03)、R3(36,0.03)、S3(36,0.02)、E3(54,0.02)、T3(54,0.01)、C3(75,0.01)、U3(75,0.005)で囲まれる領域(図8に示す領域)
【産業上の利用可能性】
【0085】
本開示の積層コイル部品は、インダクタなどとして幅広く様々な用途に使用され得る。
【符号の説明】
【0086】
1…積層コイル部品
2…積層体
4,5…外部電極
6…絶縁体部
7…コイル
8…コイル導体層
21a~21l…グリーンシート
31a~31l…ビア導体パターン
32c~32j…コイル導体パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8