(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】スケール除去剤および金属材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23G 1/26 20060101AFI20250218BHJP
C02F 5/08 20230101ALI20250218BHJP
C02F 5/12 20230101ALI20250218BHJP
C02F 5/10 20230101ALI20250218BHJP
【FI】
C23G1/26
C02F5/08 A
C02F5/12
C02F5/10 610Z
(21)【出願番号】P 2020215225
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】315006377
【氏名又は名称】日本ペイント・サーフケミカルズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】菊池 剣斗
(72)【発明者】
【氏名】上野 峻之
(72)【発明者】
【氏名】石谷 正道
(72)【発明者】
【氏名】浅田 照朗
(72)【発明者】
【氏名】重永 勉
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-123830(JP,A)
【文献】特表2016-530398(JP,A)
【文献】国際公開第2020/071372(WO,A1)
【文献】特表2014-518752(JP,A)
【文献】特開2012-117116(JP,A)
【文献】特表平10-501028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0260938(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103562144(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23G 1/00-5/06
C02F 5/00-5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キレート剤と、有機酸と、フッ素化合物と、界面活性剤と、を含み、
前記キレート剤は、アミノカルボン酸型キレート剤を含み、
前記アミノカルボン酸型キレート剤は、分子内に、窒素原子に結合する2以上のカルボキシアルキル基を有し、
前記カルボキシアルキル基は、直鎖のアルキレン基により構成されており、
前記カルボキシアルキル基の2以上は、カルボキシメチル基であ
り、
前記有機酸は、2以上のカルボキシ基を有するアルキルカルボン酸を含み、
メッキ被膜を有する金属材用である、スケール除去剤。
【請求項2】
前記アミノカルボン酸型キレート剤は、分子内に、窒素原子に結合する3以上のカルボキシメチル基を有する、請求項1に記載のスケール除去剤。
【請求項3】
前記アミノカルボン酸型キレート剤は、ニトリロ三酢酸を含む、請求項1または2に記載のスケール除去剤。
【請求項4】
前記アミノカルボン酸型キレート剤の含有量CC1と前記有機酸との含有量CAとの質量比:CC1/CAは、10/90から90/10である、請求項1~3のいずれか一項に記載のスケール除去剤。
【請求項5】
前記アミノカルボン酸型キレート剤の含有量CC1は、3,000質量ppm以上60,000質量ppm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のスケール除去剤。
【請求項6】
前記有機酸の含有量CAは、3,000質量ppm以上60,000質量ppm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のスケール除去剤。
【請求項7】
スケール除去剤を、
メッキ被膜を有する金属材に接触させる工程を備え、
前記スケール除去剤は、キレート剤と、有機酸と、フッ素化合物と、界面活性剤と、を含み、
前記キレート剤は、アミノカルボン酸型キレート剤を含み、
前記アミノカルボン酸型キレート剤は、分子内に、窒素原子に結合する2以上のカルボキシアルキル基を有し、
前記カルボキシアルキル基は、直鎖のアルキレン基により構成されており、
前記カルボキシアルキル基の2以上は、カルボキシメチル基であ
り、
前記有機酸は、2以上のカルボキシ基を有するアルキルカルボン酸を含む、金属材の製造方法。
【請求項8】
前記接触させる工程において、前記金属材は前記スケール除去剤に浸漬される、請求項
7に記載の金属材の製造方法。
【請求項9】
前記金属材は、40℃以上70℃以下の前記スケール除去剤に、1分以上50分以内で浸漬される、請求項
8に記載の金属材の製造方法。
【請求項10】
前記メッキ被膜を有する金属材は、亜鉛メッキ鋼板を含む、請求項
7~9のいずれか一項に記載の金属材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケール除去剤および金属材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材の溶接は、一般に高温で行われる。そのため溶接部表面の周辺は、酸化して変色する。この変色はスケールと言われる。スケールは、金属材の外観変化をもたらすとともに、化成被膜の形成を阻害する。そのため、金属材の耐食性が低下し易い。
【0003】
そこで、特許文献1は、有機ホスホン酸またはその塩を含むスケール除去剤を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、メッキ被膜を有する金属材に有機ホスホン酸等を含むスケール除去剤を適用すると、メッキ被膜が溶解することが判明した。
【0006】
本発明の目的は、メッキ被膜を維持しながらスケールを除去できるスケール除去剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
キレート剤と、有機酸と、フッ素化合物と、界面活性剤と、を含み、
前記キレート剤は、アミノカルボン酸型キレート剤を含み、
前記アミノカルボン酸型キレート剤は、分子内に、窒素原子に結合する2以上のカルボキシアルキル基を有し、
前記カルボキシアルキル基は、直鎖のアルキレン基により構成されており、
前記カルボキシアルキル基の2以上は、カルボキシメチル基である、スケール除去剤。
【0008】
[2]
前記アミノカルボン酸型キレート剤は、分子内に、窒素原子に結合する3以上のカルボキシメチル基を有する、上記[1]に記載のスケール除去剤。
【0009】
[3]
前記アミノカルボン酸型キレート剤は、ニトリロ三酢酸を含む、上記[1]または[2]に記載のスケール除去剤。
【0010】
[4]
前記アミノカルボン酸型キレート剤の含有量CC1と前記有機酸との含有量CAとの質量比:CC1/CAは、10/90から90/10である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のスケール除去剤。
【0011】
[5]
前記アミノカルボン酸型キレート剤の含有量CC1は、3,000質量ppm以上60,000質量ppm以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のスケール除去剤。
【0012】
[6]
前記有機酸の含有量CAは、3,000質量ppm以上60,000質量ppm以下である、上記[1]~[5]のいずれかに記載のスケール除去剤。
【0013】
[7]
前記有機酸は、アルキルカルボン酸を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載のスケール除去剤。
【0014】
[8]
前記アルキルカルボン酸は、2以上のカルボキシ基を有する、上記[7]に記載のスケール除去剤。
【0015】
[9]
メッキ被膜を有する金属材用である、上記[1]~[8]のいずれかに記載のスケール除去剤。
【0016】
[10]
スケール除去剤を、金属材に接触させる工程を備え、
前記スケール除去剤は、キレート剤と、有機酸と、フッ素化合物と、界面活性剤と、を含み、
前記キレート剤は、アミノカルボン酸型キレート剤を含み、
前記アミノカルボン酸型キレート剤は、分子内に、窒素原子に結合する2以上のカルボキシアルキル基を有し、
前記カルボキシアルキル基は、直鎖のアルキレン基により構成されており、
前記カルボキシアルキル基の2以上は、カルボキシメチル基である、金属材の製造方法。
【0017】
[11]
前記接触させる工程において、前記金属材は前記スケール除去剤に浸漬される、上記[10]に記載の金属材の製造方法。
【0018】
[12]
前記金属材は、40℃以上70℃以下の前記スケール除去剤に、1分以上50分以内で浸漬される、上記[11]に記載の金属材の製造方法。
【0019】
[13]
前記金属材は、メッキ被膜を有する金属材を含む、上記[10]~[12]のいずれかに記載の金属材の製造方法。
【0020】
[14]
前記メッキ被膜を有する金属材は、亜鉛メッキ鋼板を含む、上記[13]に記載の金属材の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、メッキ被膜を維持しながらスケールを除去できるスケール除去剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】実施例1で準備された試験片の溶接ビード部周辺を、拡大鏡を通して撮影した画像(倍率5倍)である。
【
図1B】スケール除去剤で処理された後の
図1Aに対応する部分を、拡大鏡を通して撮影した画像(倍率5倍)である。
【
図2】実施例1で準備された試験片の、化成処理後の溶接ビード部周辺の走査電子顕微鏡(SEM)画像(倍率1,500倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
スケールは、鋼板などの金属材を溶接加工する際、金属成分が空気中の酸素と結合して生成した金属酸化物である。スケールには、金属酸化物とともにカーボンも含まれ得る。スケールは、溶接焼けとも言われる。
【0024】
メッキ被膜を有する金属材を溶接する際も同様に、メッキ被膜上にスケールが形成される。このスケールを除去するためにホスホン酸系キレート剤を含むスケール除去剤を用いると、メッキ被膜も溶解してしまう。
【0025】
そこで本実施形態では、特定のアミノカルボン酸型キレート剤を含むスケール除去剤、および、これを用いる金属材の製造方法を提案する。本実施形態に係るスケール除去剤によれば、メッキ被膜を維持しながら、スケールを除去することができる。
【0026】
A.スケール除去剤
本実施形態に係るスケール除去剤は、キレート剤と、有機酸と、フッ素化合物と、界面活性剤と、を含む。キレート剤は、分子内に窒素原子に結合する2以上のカルボキシアルキル基を有する、特定のアミノカルボン酸型キレート剤(以下、第1のキレート剤と称す。)を含む。上記のカルボキシアルキル基は、直鎖のアルキレン基により構成されている。上記のカルボキシアルキル基の2以上は、カルボキシメチル基である。
【0027】
スケール除去剤のpHは、6以上8以下である。このようにほぼ中性のスケール除去剤であっても、キレート剤、有機酸、フッ素化合物および界面活性剤を含むことにより、スケールを効率よく除去することができる。さらに、金属材の変色や、環境に対する負荷が抑制される。
【0028】
スケール除去剤は、上記の各成分を水性溶媒に添加して、混合することによって調製される。水性溶媒としては、例えば、純水、イオン交換水、水道水、工業水などの各種水が挙げられる。スケール除去剤は、必要に応じて、水とともに少量の水混和性有機溶媒(例えば、アルコール類)を含んでもよい。
【0029】
[キレート剤]
本実施形態に係るスケール除去剤は、キレート剤を含む。キレート剤は、金属材の表面からスケールを引き剥がし、捕捉する。
【0030】
キレート剤は、分子内に、窒素原子に結合する2以上のカルボキシアルキル基を有する第1のキレート剤を含む。第1のキレート剤におけるカルボキシアルキル基は、直鎖のアルキレン基により構成されている。さらに、2以上のカルボキシアルキル基は、カルボキシメチル基である。
【0031】
(第1のキレート剤)
第1のキレート剤は、分子内に、窒素原子に結合するカルボキシメチル基(-CH2-COOH)を2以上有している。2以上のカルボキシメチル基は、いずれも同じ窒素原子に結合していてもよいし、それぞれ別の窒素原子に結合していてもよいし、2つのカルボキシメチル基は同じ窒素原子に結合し、他のカルボキシメチル基は別の窒素原子に結合していてもよい。
【0032】
第1のキレート剤は、アミノ基とカルボキシ基とを有する。両者によって、第1のキレート剤は金属材に吸着する。カルボキシ基はエッチング能を有するため、スケールの除去に寄与するが、同時に、メッキ被膜を溶解させてしまう。一方、アミノ基はエッチング作用を示さず、金属材の表面を保護するように作用する。理由は定かではないが、窒素原子に結合するカルボキシアルキル基が分岐構造を有していないことにより、アミノ基が金属材に吸着し易くなって、メッキ被膜の溶解を抑制する効果が発揮され易くなるものと考えられる。
【0033】
窒素原子に結合するカルボキシアルキル基(-R-COOH)のうち、少なくとも2つがカルボキシメチル基であればよく、他は特に限定されない。ただし、窒素原子に結合するカルボキシアルキル基は、いずれも直鎖のアルキレン基(R=CnH2n)により構成されている。上記のカルボキシアルキル基を構成するアルキレン基の炭素数nは、例えば、1以上3以下程度である。
【0034】
第1のキレート剤は、分子内に1以上の窒素原子を有する。窒素原子は2以上であってよい。つまり、第1のキレート剤は、モノアミノポリカルボン酸であってよく、ポリアミノポリカルボン酸であってよい。第1のキレート剤は、モノあるいはポリアミノポリカルボン酸のアルカリ金属塩(代表的には、ナトリウム塩)であってよい。
【0035】
ポリアミノポリカルボン酸において、複数の窒素原子同士は、アルキレン基を介して結合していてもよい。窒素原子同士をつなぐアルキレン基は、直鎖であって、炭素数が1以上3以下程度であることが好ましい。
【0036】
メッキ被膜の溶解抑制の観点から、分子内における窒素原子に結合するカルボキシメチル基の数は、3以上が好ましく、4以上がより好ましい。
【0037】
第1のキレート剤は、さらにヒドロキシ基(-OH)を有していてもよい。ただし、分子内に存在するヒドロキシ基の数は、カルボキシ基(詳細には、カルボキシアルキル基)の数より少ないことが好ましい。これにより、第1のキレート剤の親水性が過度に高まることが抑制される。スケールは、通常、カーボンを含むため、疎水性を示す。第1のキレート剤の親水性が過度に高くないことにより、水性溶媒中への拡散が抑制されるとともに、スケールに接触し易くなる。その結果、スケール除去効果はより向上し得る。
【0038】
第1のキレート剤の分子量は特に限定されない。少量で効果が得られ易い点で、第1のキレート剤の分子量は、350以下が好ましく、300以下がより好ましく、250以下が特に好ましい。
【0039】
第1のキレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、1,3-プロパンジアミン四酢酸(PDTA)、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸(DPTA-OH)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、Lグルタミン酸二酢酸(GLDA)が挙げられる。第1のキレート剤のいくつかの構造式を以下に示す。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
第1のキレート剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、メッキ被膜の溶解が抑制され易い点で、NTA、EDTA、PDTAが好ましい。特に、NTAが好ましい。NTA、EDTAおよびPDTAは、分子量が比較的小さいため、金属材への吸着性が高い。よって、これらは、より高いメッキ被膜の溶解抑制効果を示す。
【0049】
第1のキレート剤の含有量CC1は、3,000質量ppm以上60,000質量ppm以下が好ましい。これにより、メッキ被膜の溶解抑制効果およびスケールの除去効果が、より発揮され易くなる。含有量CC1は、5,000質量ppm以上がより好ましく、7,000質量ppm以上が特に好ましい。含有量CC1は、50,000質量ppm以下がより好ましく、30,000質量ppm以下が特に好ましい。
【0050】
(第2のキレート剤)
第1のキレート剤以外のアミノカルボン酸型キレート剤(以下、第2のキレート剤と称する。)が含まれてもよい。この場合にも、メッキ被膜の溶解抑制効果およびスケールの除去効果は、発揮され得る。
【0051】
メッキ被膜の溶解抑制およびスケール除去の観点から、第2のキレート剤の含有量CC2は、第1のキレート剤の含有量CC1の30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0052】
第2のキレート剤の含有量CC2は、18,000質量ppm以下が好ましい。これにより、メッキ被膜の溶解を抑制しながら、スケールの除去効果が得られ易い。含有量CC2は、15,000質量ppm以下がより好ましく、9,000質量ppm以下が特に好ましい。
【0053】
第2のキレート剤としては、例えば、分岐構造のアルキレン基を有するアミノカルボン酸型キレート剤、および、窒素原子に結合するカルボキシアルキル基を1つだけ有するアミノカルボン酸型キレート剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0054】
分岐構造のアルキレン基を有するアミノカルボン酸型キレート剤としては、例えば、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、(S,S)-エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、グルタミン酸二酢酸(CMGA)が挙げられる。MGDA、EDDSおよびCMGAの構造式を以下に示す。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
分子内に、窒素原子に結合するカルボキシアルキル基を1つだけ有するアミノカルボン酸型キレート剤としては、例えば、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)が挙げられる。DHEGの構造式を以下に示す。
【0059】
【0060】
(第3のキレート剤)
アミノカルボン酸型キレート剤以外のキレート剤(以下、第3のキレート剤と称する。)が含まれてもよい。これにより、スケール除去効果が向上し得る。
【0061】
ただし、メッキ被膜の溶解抑制の観点から、第3のキレート剤の含有量CC3は、第1のキレート剤の含有量CC1の30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が特に好ましい。
【0062】
第3のキレート剤の含有量CC3は、5,000質量ppm以下が好ましく、2,000質量ppm以下がより好ましく、1,500質量ppm以下が特に好ましい。スケール除去の観点から、第3のキレート剤の含有量CC3は、600質量ppm以上であってよく、1,000質量ppm以上であってよい。
【0063】
ホスホン酸系キレート剤としては、例えば、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)、ニトリロトリスメチレンホスホン酸(NTMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)が挙げられる。HEDP、NTMP、PBTCおよびEDTMPの構造式を以下に示す。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
[有機酸]
有機酸は、スケールの溶解性を向上させて、キレート剤がスケールを引き剥がすのを助ける。一方で、スケール除去剤のpHを過度に低下させない。
【0069】
有機酸は特に限定されない。スケール除去効果の観点から、芳香環を有さない、アルキルカルボン酸が好ましい。アルキルカルボン酸における炭化水素基は、鎖式であってよく、脂環式であってよい。鎖式の炭化水素基は、直鎖であってよく、分岐していてもよい。上記炭化水素基は、飽和していてよく、不飽和であってもよい。上記炭化水素基における炭素数は、1以上20以下であってよく、2以上10以下であってよい。有機酸は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0070】
飽和脂肪族カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の1価のカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の2価のカルボン酸が挙げられる。不飽和脂肪族カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸等の1価のカルボン酸;フマル酸、マレイン酸等の2価のカルボン酸;アコニット酸等の3価のカルボン酸が挙げられる。脂環式カルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。なかでも、2以上のカルボキシ基を有する(2価以上の)アルキルカルボン酸が好ましい。カルボキシ基の数は、4以下であってよい。
【0071】
有機酸は、さらにヒドロキシ基を有していてよい。これにより、スケール除去効果はさらに高まり易い。ただし、ヒドロキシ基の数は、分子内のカルボキシ基より少ないことが好ましい。上記の通り、スケールは疎水性を示す。ヒドロキシ基の数が少ないことにより、有機酸の親水性が過度に高くならず、水性溶媒中への拡散が抑制されるとともに、スケールに接触し易くなる。その結果、スケール除去効果はより向上し得る。ヒドロキシ基の数は、1または2であってよい。
【0072】
ヒドロキシ基を有するアルキルカルボン酸(アルキルヒドロキシカルボン酸)としては、例えば、乳酸、リンゴ酸、クエン酸が挙げられる。なかでも、2価以上のアルキルヒドロキシカルボン酸である、リンゴ酸およびクエン酸がより好ましい。
【0073】
有機酸の含有量CAは、3,000質量ppm以上60,000質量ppm以下が好ましい。これにより、スケールがさらに効率よく除去されるとともに、メッキ被膜の溶解が抑制され易くなる。含有量CAは、5,000質量ppm以上がより好ましく、7,000質量ppm以上が特に好ましい。含有量CC1は、50,000質量ppm以下がより好ましく、30,000質量ppm以下が特に好ましい。
【0074】
第1のキレート剤の含有量CC1と有機酸との含有量CAとの質量比:CC1/CAは、10/90から90/10の範囲が好ましい。これにより、スケールがさらに効率よく除去されるとともに、メッキ被膜の溶解が抑制され易くなる。CC1/CAは、30/70から70/30の範囲がより好ましく、45/55から55/45の範囲が特に好ましい。
【0075】
有機酸以外の酸(無機酸)が含まれてもよい。ただし、メッキ被膜の溶解抑制の観点から、フッ化水素酸以外の無機酸の含有量は、少ないほど望ましい。無機酸の含有量は、200質量ppm以下が好ましく、100質量ppm以下がより好ましく、検出限界以下が特に好ましい。フッ化水素酸以外の無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0076】
[フッ素化合物]
フッ素含有化合物は、フッ素イオンの供給源である。フッ素イオンは、スケールに含まれていた金属イオンをスケール除去剤中で安定化させる。これにより、金属材の表面からスケールが溶解し易くなって、スケールは効率よく除去される。
【0077】
フッ素含有化合物は、フッ素イオンを遊離するものであれば特に限定されない。フッ素含有化合物としては、例えば、フッ化水素酸、酸性フッ化ナトリウム、酸性フッ化アンモニウム、フルオロチタン酸、フルオロジルコニウム酸、フルオロ珪酸、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、二フッ化水素カリウムが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0078】
フッ素イオンの含有量CFは、フッ素原子量として、500質量ppm以上10,000質量ppm以下が好ましい。これにより、スケール中に含まれていた金属イオンのスケール除去剤中における安定性がより高まる。含有量CFは、1,000質量ppm以上がより好ましく、3,000質量ppm以上が特に好ましい。含有量CFは、8,000質量ppm以下がより好ましく、7,000質量ppm以下が特に好ましい。
【0079】
[界面活性剤]
界面活性剤は、スケール除去性能をさらに高める。界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤の少なくとも1種が挙げられる。
【0080】
陰イオン系界面活性剤は特に限定されず、公知のものを用いることができる。陰イオン系界面活性剤としては、例えば、リン酸エステル型界面活性剤、カルボン酸型界面活性剤、スルホン酸型界面活性剤(スルホコハク酸系界面活性剤を含む)および硫酸エステル型界面活性剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0081】
陰イオン系界面活性剤の市販品としては、例えば、DOW TRITON H66(登録商標)(ダウケミカル日本社製、リン酸カリウム型界面活性剤)、ネオゲンAS-20(第一工業製薬社製、スルホン酸型界面活性剤)、サンモリンOT-70(三洋化成社製、スルホコハク酸系界面活性剤)、ノイゲンES-99(第一工業製薬社製)、サンスパールPDN-173(三洋化成工業社製、カルボン酸型界面活性剤)が挙げられる。
【0082】
ノニオン系界面活性剤は特に限定されず、公知のものを用いることができる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル類、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル類、およびポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が挙げられる。
【0083】
ノニオン系界面活性剤の市販品としては、例えば、アデカノールUAシリーズ(ADEKA社製)、Genapol EP 2564(クラリアントジャパン社製)、ノイゲンXL100(第一工業製薬社製)、Genagen C 100(クラリアントジャパン社製)が挙げられる。
【0084】
界面活性剤の含有量CSは、300質量ppm以上3,000質量ppm以下が好ましい。これにより、スケール除去性能はさらに高まり易い。含有量CSは、400質量ppm以上がより好ましい。含有量CSは、2,000質量ppm以下がより好ましい。
【0085】
[防錆剤]
スケール除去剤は、防錆剤を含んでもよい。これにより、スケール除去後、化成処理が行われるまでの金属材の防錆性が高まる。
【0086】
防錆剤としては、例えば、いわゆるP系、N系、S系、およびアセチレン系の防錆剤が挙げられる。P系の防錆剤としては、例えば、リン酸塩が挙げられる。N系の有機酸としては、例えば、アルキルアミン、イミダゾール、トリアゾールが挙げられる。S系の防錆剤としては、例えば、サンチオール、チオ尿素が挙げられる。アセチレン系の防錆剤としては、例えば、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオールおよび3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオールが挙げられる。防錆剤の市販品としては、例えば、KORANTIN PM(BASFジャパン社製)が挙げられる。
【0087】
防錆剤の含有量CRは、50質量ppm以上300質量ppm以下が好ましい。これにより、金属材の防錆性はさらに高まり易い。
【0088】
[他の成分]
スケール除去剤は、効果を損なわない範囲で他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、pH調整剤、保存安定剤、消泡剤、凍結防止剤、防腐剤、防カビ剤が挙げられる。
【0089】
[金属材]
スケール除去剤は、金属材に用いられる。スケール除去剤は、特に、溶接部を有する金属材の溶接スケールの除去に用いられる。金属材は特に限定されず、例えば、鉄材、冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、アルミ合金材等が挙げられる。
【0090】
本実施形態に係るスケール除去剤によれば、メッキ被膜の溶解を抑制しながら、スケールを効率よく除去できる。そのため、本実施形態に係るスケール除去剤は、メッキ被膜を有する金属材(代表的には、亜鉛メッキ鋼板)や、メッキ被膜を有する金属材とメッキ被膜を有さない金属材とが溶接された材料のスケール除去に特に適している。
【0091】
B.金属材の製造方法
本実施形態に係るスケール除去剤を用いて、スケールが除去された金属材を製造することができる。金属材は、本実施形態に係るスケール除去剤を、金属材に接触させる工程を備える方法により製造される。
【0092】
(1)接触工程
スケール除去剤を金属材に接触させる方法は特に限定されない。接触方法としては、例えば、噴霧、浸漬が挙げられる。なかでも、接触効率が高い点で、浸漬が好ましい。浸漬法は、比較的短時間でスケール除去効果が得られるため、金属材を連続的に加工する方法として適している。
【0093】
噴霧法において、噴霧圧力は0.08MPa以上2MPa以下であってよく、0.1MPa以上1.5MPa以下であってよい。
【0094】
浸漬法では、金属材をスケール除去剤の浴に浸漬した状態で、金属材の表面に超音波を付与してもよい。超音波の周波数は、25kHz以上100kHz以下であってよく、30kHz以上50kHz以下であってよい。
【0095】
浸漬法では、また、金属材をスケール除去剤の浴に浸漬した状態で、スケール除去剤を攪拌してもよい。これにより、スケール除去剤が流動する。金属材の表面におけるスケール除去剤の流速は、10cm/秒以上40cm/秒以下であってよく、15cm/秒以上35cm/秒以下であってよい。表面流速は、市販の表面流速計(例えばJFEアドバンテック社製、三軸電磁流速センサー、ACM3-RSなど)を用いて測定することができる。
【0096】
スケール除去剤の温度は、40℃以上70℃以下であってよい。これにより、スケールの除去効果が発揮され易くなるとともに、設備の負担が軽減される。スケール除去剤の温度は、50℃以上70℃以下が好ましく、55℃以上65℃以下が特に好ましい。
【0097】
スケール除去剤と金属材との接触時間は、接触方法に応じて適宜設定すればよい。噴霧法における接触時間は、例えば、3分以上30分以内であってよく、5分以上20分以内であってよい。浸漬法における接触時間は、例えば、1分以上50分以内であってよく、1分以上30分以内であってよく、1分以上15分以内であってよい。
【0098】
(2)化成工程
スケール除去剤の接触工程の後、金属材の表面を化成処理してもよい。本実施形態に係るスケール除去剤はスケールを効率よく除去するため、得られる金属材には、化成被膜が形成され易い。化成処理の方法としては、例えば、リン酸亜鉛化成処理、ジルコニウム化成処理が挙げられる。
【0099】
リン酸亜鉛化成処理では、リン酸亜鉛を含む化成処理剤が用いられる。リン酸亜鉛を含む化成処理剤は特に限定されず、従来公知のものが使用できる。好ましい化成処理剤は、亜鉛イオンを0.5g/L以上2g/L以下(より好ましくは0.7g/L以上1.2g/L以下)、リン酸イオンを5g/L以上30g/L以下(より好ましくは10g/L以上20g/L以下)、マンガンイオンを0.2g/L以上2g/L以下(より好ましくは0.3g/L以上1.2g/L以下)含む。
【0100】
リン酸亜鉛化成処理に先立って、金属材に対して表面調整処理を行ってもよい。これにより、金属材の表面にリン酸亜鉛皮膜の結晶が形成され易くなって、均一で緻密な化成被膜が得られ易くなる。表面処理剤は、例えば、分散するチタンコロイドを含む弱アルカリ溶液である。チタンコロイドが結晶の核となる。結晶は、チタンコロイドを起点として生成し、成長する。
【0101】
ジルコニウム化成処理では、ジルコニウムイオンを含む化成処理剤(ジルコニウム化成処理剤)が用いられる。ジルコニウム化成処理剤のジルコニウムイオンの濃度は、10ppm以上10,000ppm以下が好ましい。
【0102】
スケール除去および化成処理された金属材は、特に、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体およびその部品の製造に好適に用いられる。
【実施例】
【0103】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0104】
[実施例1]
(a)スケール剤の調製
NTA(キレート剤)、アデカノールUA90N(ノニオン系界面活性剤、ADEKA社製、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類)、クエン酸(有機酸)、酸性フッ化アンモニウム(フッ素化合物)およびKORANTIN PM(防錆剤、BASFジャパン社製)を、水に混合した。次いで、NaOH水溶液(40%)を用いてpHを6に調整し、スケール除去剤を得た。キレート剤の含有量は10,000ppm、界面活性剤の含有量は300ppm、有機酸の含有量は10,000ppm、フッ素化合物の含有量は5,000ppm、防錆剤の含有量は300ppmであった。
【0105】
(b)金属材の準備
2つの亜鉛メッキ鋼板を準備し、これらを溶接した。溶接ビード部付近に、スケールが生成していた。このスケールが生成した溶接物を、試験片とした。
【0106】
(c)スケール除去剤の接触
上記より得られたスケール除去剤を10Lの処理浴に入れて、温度を60℃に調整した。処理浴中に、上記試験片を10分間浸漬した。その後、試験片を取り出して十分に洗浄した。洗浄後、40℃で10分程度の乾燥を行った。
【0107】
(d)脱脂処理、表面調整および化成処理
処理(c)の後、pHを11に調製したサーフクリーナーEC90(日本ペイント・サーフケミカルズ社製)を用いて、試験片の脱脂処理を行った。処理温度は45℃、処理時間は120秒とした。脱脂処理後、試験片を水洗した。
続いて、pHを10に調製したサーフファイン7(日本ペイント・サーフケミカルズ社製)を用いて、試験片の表面調整を行った。処理温度は室温、処理時間は30秒とした。
最後に、サーフダインSD5300(リン酸亜鉛化成処理剤、日本ペイント・サーフケミカルズ社製)を用いて、試験片のリン酸亜鉛化成処理を行った。処理温度は35℃、処理時間は120秒とした。
【0108】
[評価]
処理(c)または処理(d)後の試験片について、以下の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0109】
(i)メッキ保持性
処理(c)前のメッキ厚(Mi)、および処理(c)後であって処理(d)前のメッキ厚(Mt)を、膜厚計(フィッシャー・インストルメンツ社製、DELTASCOPE MP30ES)により測定した。この測定値から、下記式に従ってメッキ残存率を算出した。
メッキ残存率(%)=100×処理後のメッキ厚(Mt)/処理前のメッキ厚(Mi)
【0110】
メッキ残存率を、以下の基準に従って評価した。
最良:メッキ残存率が90%以上
良:メッキ残存率が70%以上90%未満
可:メッキ残存率が50%以上70%未満
不良:メッキ残存率が50%未満
【0111】
(ii)スケール除去性
処理(c)前のスケール幅(bi)、および処理(c)後であって処理(d)前のスケール幅(bt)を、ノギスを用いて測定した。この測定値から、下記式に従ってスケール残存率を算出した。スケール幅は、溶接ビード部の周囲に生成したスケールの最も広い部分の幅である。
スケール残存率(%)=100×処理後のスケール幅(bt)/処理前のスケール幅(bi)
【0112】
スケール残存率を、以下の基準に従って評価した。
最良:スケール残存率が30%未満
良:スケール残存率が30%以上40%未満
可:スケール残存率が40%以上50%未満
不良:スケール残存率が50%以上
【0113】
図1Aは、実施例1で準備された試験片の溶接ビード部周辺を、拡大鏡を通して撮影した画像(倍率5倍)である。濃い黒の部分がスケールである。
図1Bは、スケール除去剤で処理された後の
図1Aに対応する部分を、拡大鏡を通して撮影した画像(倍率5倍)である。
図1Bからわかるように、スケールの大半が除去されている。
【0114】
(iii)化成性
処理(d)後の溶接ビード部の周辺を、SEM(日本電子製、JSM6510A)を用いて観察した(倍率1,500倍)。観察視野内の溶接ビード周辺部の面積を100%として、そのうち化成被膜が形成されている部分の面積割合(化成率)を算出した。
【0115】
化成率を、以下の基準に従って評価した。
最良:化成率が90%以上
良:化成率が70%以上90%未満
可:化成率が50%以上70%未満
不良:化成率が50%未満
【0116】
図2は、実施例1で準備された試験片の、処理(d)後の溶接ビード部周辺のSEM画像(倍率1,500倍)である。
図2からわかるように、溶接ビード部周辺全体に化成被膜が形成されている。
【0117】
[実施例2-3、比較例1-4]
キレート剤を表1に記載した通りに変更した以外は、実施例1と同様にしてスケール除去剤を調製し、処理(c)および処理(d)を行い、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0118】
【0119】
[実施例4-8]
有機酸を表2に記載した通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてスケール除去剤を調製し、処理(c)および処理(d)を行い、評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0120】
【0121】
[実施例9-13]
第1のキレート剤と第3のキレート剤(HEDP)とを、表3に記載した通りに配合したこと以外は、実施例1と同様にしてスケール除去剤を調製し、処理(c)および処理(d)を行い、評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0122】
【産業上の利用可能性】
【0123】
本実施形態に係るスケール除去剤は、メッキ被膜を維持しながらスケールを除去できるため、メッキ被膜を有する金属材に好ましく適用される。