(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】透湿防水布帛
(51)【国際特許分類】
D06M 15/564 20060101AFI20250218BHJP
D06M 13/17 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
D06M15/564
D06M13/17
(21)【出願番号】P 2021506357
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048976
(87)【国際公開番号】W WO2021132657
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2019237455
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591086407
【氏名又は名称】東レコーテックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】奥村 香織
(72)【発明者】
【氏名】中屋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】植田 健弘
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-001475(JP,A)
【文献】国際公開第2011/105595(WO,A1)
【文献】特開2016-027114(JP,A)
【文献】特開2009-144313(JP,A)
【文献】特開2009-161898(JP,A)
【文献】国際公開第2017/111033(WO,A1)
【文献】特開2018-127758(JP,A)
【文献】韓国特許第10-1714640(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00-15/715
B32B 1/00-43/00
C08G 18/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛の少なくとも片面に、多孔質の透湿防水膜を有する透湿防水布帛であって、
前記透湿防水膜を形成するポリウレタンが、植物由来の成分を有するポリカーボネートジオールを含むポリオールを用いて合成され
、
前記ポリカーボネートジオールは、植物由来の1,10-デカンジオールに由来する成分と、1,4-ブタンジオールに由来する成分とを含み、前記1,10-デカンジオールと前記1,4-ブタンジオールのモル比は1/9~8/2である透湿防水布帛。
【請求項2】
前記1,10-デカンジオールと
前記1,4-ブタンジオールのモル比は、1/9~5/5である請求項
1に記載の透湿防水布帛。
【請求項3】
前記ポリオールが、前記ポリカーボネートジオールと、エーテル系ポリオールの少なくとも2種の混合物である請求項1
または2に記載の透湿防水布帛。
【請求項4】
前記ポリウレタンが、鎖伸長剤として、植物由来の1,3-プロパンジオール、および1,4-ブタンジオールの少なくとも一種を使用する請求項1~
3のいずれか一つに記載の透湿防水布帛。
【請求項5】
前記透湿防水膜の耐水圧が10kPa以上である請求項1~
4のいずれか一つに記載の透湿防水布帛。
【請求項6】
前記透湿防水膜の耐水圧が100kPa以上である請求項1~
4のいずれか一つに記載の透湿防水布帛。
【請求項7】
前記透湿防水膜の耐水圧が150kPa以上である請求項1~
4のいずれか一つに記載の透湿防水布帛。
【請求項8】
温度70℃、湿度95%における加水分解性評価試験において、10週間経過後の耐水圧の保持率が60%以上である、請求項1~
7のいずれか一つに記載の透湿防水布帛。
【請求項9】
温度70℃、湿度95%における加水分解性評価試験において、20週間経過後の耐水圧の保持率が60%以上である、請求項1~
7のいずれか一つに記載の透湿防水布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンからなる透湿防水膜を有する透湿防水布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、スポーツ衣料、アウトドア製品等の用途において、透湿、防水性に優れたポリウレタンの透湿防水膜を有する透湿防水布帛が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、炭素数4~6のジオール成分を構成要素に含むポリカーボネートジオールとイソシアネートからなるポリウレタン樹脂の多孔性構造体が開示され、該多孔性構構造体は、透湿度と耐水性のバランスに優れる旨記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、植物由来のひまし油系ポリオールポリエステルジオールから得られるポリウレタン樹脂からなる防水層を有する防水加工布帛が開示され、該防水加工布帛は、植物由来成分を有しながら耐加水分解性に優れる旨記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、植物由来のセバシン酸と、ジオールから得られるエステル系ウレタンからなる多孔質の樹脂膜を備えた透湿防水布帛が開示され、該透湿防水布帛は、石油由来のポリウレタン使用時と同等以上の性能を有する旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5―186631号公報
【文献】特許第5855722号公報
【文献】特許第5680052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、耐水性、透湿性が不充分であるとともに、石油由来の材料を使用しているため、環境に与える影響が大きいものである。
【0008】
また、特許文献2の技術では、特許文献2の実施例1~3に示すように耐水圧が低いため、実用上に必要な耐水圧を得るためにはトップコートをする必要があった。しかしながら、トップコートをすると実施例4に示されるように透湿度が著しく低下する問題があった。また、ひまし油からポリエーテルポリエステルジオールを精製する過程で、不純物としてひまし油が混入するため、製品からひまし油の不快な臭気が発生し、衣料として好ましくなかった。さらに不純物であるひまし油の混入によりポリウレタンの重合が安定しない問題があった。
【0009】
さらに、特許文献3の技術では、エステル系ポリウレタンを使用するため、加水分解により透湿防水膜が早期に劣化してしまうという問題を有していた。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、植物由来成分を有するポリカーボネート系ウレタン樹脂から透湿防水膜を形成することにより、カーボンニュートラルおよび製品の長寿命化により環境負荷低減を図ることができ、防水、透湿性に優れる透湿防水布帛を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、布帛の少なくとも片面に、多孔質の透湿防水膜を有する透湿防水布帛であって、前記透湿防水膜を形成するポリウレタンが、植物由来の成分を有するポリカーボネートジオールを含むポリオールを使用して合成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カーボンニュートラルおよび製品の長寿命化により環境負荷低減を図るとともに、防水、透湿性に優れる透湿防水布帛を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の透湿防水布帛について詳細に説明する。
本発明の透湿防水布帛は、布帛の少なくとも片面に、多孔質の透湿防水膜を有する透湿防水布帛であって、透湿防水膜を形成するポリウレタンが、植物由来の成分を有するポリカーボネートジオールを含むポリオールを使用して合成される。
【0014】
(布帛)
本発明の透湿防水布帛に用いる布帛としては、使用目的等に適したものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されないが、例としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の合成繊維;アセテート繊維等の半合成繊維;綿、麻、羊毛等の天然繊維が挙げられる、これら各種の繊維は単独で用いてもよく、2種類以上混合して用いることもできる。またその組織も特に限定されず、織物、編物、不織布等を適宜用いることができる。また、布帛にリサイクルポリエステル糸やリサイクルナイロン糸、植物由来の成分を含んだ糸を使用することが、環境負荷の低減の観点から好ましい。
【0015】
(透湿防水膜)
本発明の透湿防水布帛の透湿防水膜は、植物由来の成分を有するポリカーボネートジオールを含むポリオールを用いたポリウレタンからなる。
【0016】
本発明に係る植物由来成分を有するポリカーボネートジオールは、耐薬品性、低温特性、および耐加水分解性の観点から、少なくとも2種類のジオールを含むポリカーボネートジオールを使用するものであることが好ましく、2種類のジオールのうちの少なくとも1種が、植物由来の成分であることが好ましい。2種類のジオールを含むポリカーボネートジオールは、2種類のジオールと、カーボネート化合物とを、エステル交換反応により重縮合することにより製造することができる。
【0017】
2種類のジオールを含むポリカーボネートジオールは、例えば、炭素数が3~5のアルキレン基を有するジオールと、炭素数が8~20のアルキレン基を有するジオールと、を構成要素に含むポリカーボネートジオールを好ましく使用することができる。
【0018】
炭素数が3~5のアルキレン基を有するジオールとしては、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール等が挙げられる。中でもポリウレタンとしたときの耐薬品性、低温特性のバランスが優れることより1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオールが好ましく、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールがより好ましい。
【0019】
炭素数が8~20のアルキレン基を有するジオールとしては、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール等が挙げられる。中でもポリウレタンとしたときの耐薬品性、低温特性のバランスが優れることより、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましく、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールがより好ましく、1,10-デカンジオールがさらに好ましい。
【0020】
炭素数が3~5のアルキレン基を有するジオールと、炭素数が8~20のアルキレン基を有するジオールと、を構成成分として含むポリカーボネートジオールは、炭素数が3~5のアルキレン基を有するジオール、および炭素数が8~20のアルキレン基を有するジオール以外のジオール化合物(他のジオール化合物と称する場合がある)を用いてもよい。ただし、他のジオール化合物を用いる場合、本発明の効果を有効に得るために、ポリカーボネートジオールの全構造単位に対して、他のジオール化合物に由来する構造単位の割合は50モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましく、20モル%以下がさらに好ましく、10モル%以下が最も好ましい。
【0021】
炭素数が3~5のアルキレン基を有するジオールは、植物由来であることが、環境負荷低減の観点から好ましい。植物由来として適用可能な炭素数が3~5のアルキレン基を有するジオールとしては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール等が挙げられる。
【0022】
炭素数が8~20のアルキレン基を有するジオールは、植物由来であることが、環境負荷低減の観点から好ましい。植物由来として適用可能な炭素数が8~20のアルキレン基を有するジオールとしては、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール等が挙げられる。
【0023】
本発明に係る透湿防水膜に使用する植物由来の成分を有するポリカーボネートジオールは、植物由来成分として1,10-デカンジオールに由来する成分を含むことが好ましい。
【0024】
本発明に係る透湿防水膜に使用する植物由来の成分を有するポリカーボネートジオールは、1,10-デカンジオールに由来する成分と、1,4-ブタンジオールに由来する成分とを含み、1,10-デカンジオールと1,4-ブタンジオールのモル比は1/9~8/2であることが好ましい。1,10-デカンジオールと1,4-ブタンジオールのモル比は1/9~5/5とすることにより、耐水圧および透湿度に優れた透湿防水布帛を得ることができるので、さらに好ましい。
【0025】
ポリカーボネートジオールの製造に使用可能なカーボネート化合物としては、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、またはアルキレンカーボネートが挙げられる。カーボネート化合物の具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられ、ジフェニルカーボネートが好ましい。
【0026】
本発明に係る透湿防水膜に使用するポリウレタンは、植物由来の成分を有するポリカーボネートジオールを含むポリオールと、ポリイソシアネートと、鎖伸長剤との反応により製造することができる。
【0027】
本発明に係るポリウレタンを製造するのに使用されるポリイソシアネートとしては、脂肪族、脂環族又は芳香族のポリイソシアネート化合物が挙げられる。例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート及びダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1-メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、フェニレンジイソシアネート及びm-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、植物由来の1,5-ペンタメチレンジイソシアネート等の植物由来成分を有するイソシアネートを用いることが、環境負荷の低減の観点から好ましい。
【0028】
鎖伸長剤としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖ジオール類、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ヘプタンジオール、1,4-ジメチロールヘキサン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ダイマージオール等の分岐鎖を有するジオール類、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のエーテル基を有するジオール類、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン等のヒドロキシアミン類、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、メチレンビス(o-クロロアニリン)、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、トリレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、N,N’-ジアミノピペラジン等のポリアミン類を例示することができる。鎖伸長剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
鎖伸長剤としては、植物由来の1,3-プロパンジオール、および1,4-ブタンジオールの少なくとも1種を使用することが環境負荷の低減の観点から好ましい。
【0030】
本発明に係る透湿防水膜に使用するポリウレタンは、ポリオール成分として、植物由来の成分を有するポリカーボネートジオールと、エーテル系ポリオールの少なくとも2種の混合物を使用することもできる。エーテル系ポリオールとしては例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)などや共重合ポリエーテルポリオール(EO/PO)を例示することができ、PTMGを用いることが耐水圧の向上の観点から好ましい。
【0031】
本発明の透湿防水布帛の透湿防水膜に使用されるポリウレタン中の植物由来成分の割合は、環境負荷の軽減の点からは多い方が好ましいが、透湿防水膜の性能向上の観点から鑑みて、10質量%以上、65質量%以下とすることが好ましく、10質量%以上、40質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0032】
本発明の透湿防水布帛の透湿防水膜に使用されるポリウレタンを得るための方法としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)等に代表される極性溶剤や、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、キシレン等の溶剤に、ポリオールを溶解し、ここに2価のイソシアネートを添加し、充分に反応させ、末端にイソシアネートまたは、水酸基を有するプレポリマーを調製したのち、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のジオール、又は2価のイソシアネートを添加し、鎖長延長反応で重合度を上げる方法を用いることができる。但し、本発明で用いるポリウレタンの合成方法は上記方法に限定されるものではない。
【0033】
(透湿防水布帛)
本発明に係る透湿防水布帛は、実用上の防水の観点から、JIS-L1092(2009)により測定された耐水圧が100kPa以上であることが好ましく、さらに好ましくは150kPa以上である。
【0034】
本発明に係る透湿防水布帛は、透湿度としてJIS-L1099(2012)のA-1法で104g/m2・hr以上であることが好ましく、さらに好ましくは300g/m2・hr以上である。
【0035】
ポリウレタン膜への透湿性の付与は、ポリウレタン膜を湿式法により多孔質膜とすることにより付与することができる。
【0036】
本発明に係る透湿防水布帛の孔径や孔分布は、相反する性能である耐水圧と透湿度の性能両立を満たす範囲で自由に設計することができる。
【0037】
また、実用上の耐久性の観点から、70℃、相対湿度95%の高温高湿槽で10週間、加水分解性評価試験(ジャングル試験)後の耐水圧の保持率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。さらにまた、70℃、相対湿度95%の高温高湿槽で20週間、加水分解性評価試験(ジャングル試験)後の耐水圧の保持率が、60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。
【0038】
本発明に係る透湿防水布帛は、布帛にポリウレタンの透湿防水層を積層することにより製造する。透湿防水膜の積層方法としては、布帛にダイレクトにコーティングをする方法(コーティング法)や、透湿防水膜を単独で形成した後に、これを接着剤で布帛に積層する方法(接合法)がある。
【0039】
コーティング方法では、ナイフコーティング、ナイフオーバーロールコーティング、リバースロールコーティングなどの各種のコーティング方法が使用可能である。
【0040】
接合法としては、例えば離型紙にコーティング等で形成した透湿防水膜を接着剤でドットもしくは全面接着で布帛に積層したのち離型紙を剥離する方法が用いられるが、これに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る透湿防水布帛は、フィッシングウェアや登山衣等のアウトドアウェア、スキー関連ウェア、ウィンドブレーカー、アスレチックウェア、ゴルフウェア、テニスウェア、レインウェア、カジュアルコート、屋内外作業衣、手袋や靴等の衣料材料として好適に利用可能である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
尚、以下の実施例を含む本願明細書等における諸性能の測定方法としては以下のものを用いた。
【0043】
(測定方法)
(1)耐水圧:JIS-L1092(2009)に従って測定した。
(2)透湿度:JIS-L1099(2012)のA-1法に従って測定した。
(3)風合い:手触りにより2段階の官能評価をおこなった。
〇:やわらかい、×:硬い
(4)加水分解試験(ジャングルテスト):70℃、相対湿度95%の高温高湿槽において、10週間加水分解を促進させ、耐水圧の保持率(テスト前の耐水圧に対するテスト後の耐水圧の割合、単位%)を調べた。また、70℃、相対湿度95%の高温高湿槽において、20週間の加水分解の後の、耐水圧の保持率(テスト前の耐水圧に対するテスト後の耐水圧の割合、単位%)も調べた。
(5)ウレタン溶液安定性:得られたポリウレタン樹脂を10℃まで冷却し、そのときの流動性により判定した。
流動性無し(凍結・ゲル化):×、流動性有り:〇
【0044】
<ポリウレタン樹脂溶液(1)の重合>
植物由来ポリエステルポリオール(セバシン酸系ポリエステルポリオール、水酸基価55.1mgKOH/g、伊藤製油株式会社製 “ユーリック”(登録商標)SE-1903)162g、及びジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と称する。)250gを2リットルのセパラブルコルベンに入れて溶解させ、50℃に調温しながらジフェニルメタンジイソシアネート101gを添加し、50℃で約1時間反応させ、プレポリマーとした。この後、温度を60℃に昇温し、エチレングリコール16gとDMF60gを添加し、60℃で鎖長延長反応をさせ、粘度上昇に合せてDMF420gを分割添加しながら重合を行った。所定の粘度まで上昇した時点で1,2-プロピレングリコール9gとDMF115gを添加した。おおよそ6~8時間で反応が終わり、ウレタン樹脂濃度25.0%、粘度55,000mPa・s(30℃)、植物由来比率45.9%のウレタン樹脂溶液(1)が得られた。
【0045】
<ポリウレタン樹脂溶液(2)の重合>
ポリカーボネートポリオール(ヘキサメチレンカーボネートジオール、水酸基価56.5mgKOH/g、東ソー(株)製、“ニッポラン”(登録商標)980R)130g、ポリエーテルポリオール(ポリテトラメチレングリコール、水酸基価56.1mgKOH/g、三洋化成工業(株)製、PTMG―2000M)32g、及びDMF250gを2リットルのセパラブルコルベンに入れて溶解させ、50℃に調温しながらジフェニルメタンジイソシアネート87gを添加し、50℃で約1時間反応させ、プレポリマーとした。この後、温度を60℃に昇温し、エチレングリコール19.4gとDMF40gを添加し、60℃で鎖長延長反応をさせ、粘度上昇に合せてDMF400gを分割添加しながら重合を行った。所定の粘度まで上昇した時点で1,2-プロピレングリコール9gとDMF110gを添加した。おおよそ6~8時間で反応が終わり、ウレタン樹脂濃度25.0%、粘度85,000mPa・s(30℃)のウレタン樹脂溶液(2)が得られた。
【0046】
<ポリウレタン樹脂溶液(3)の重合>
ポリカーボネートポリオール(1,4-ブタンジオール/1,10-デカンジオール=1/9モル比共重合カーボネートジオール、水酸基価56.5mgKOH/g、三菱ケミカル(株)製、“ベネビオール”(登録商標)NL2090DB、1,10-デカンジオールが植物由来)162g、及びDMF250gを2リットルのセパラブルコルベンに入れて溶解させ、50℃に調温しながらジフェニルメタンジイソシアネート87gを添加し、50℃で約1時間反応させ、プレポリマーとした。この後、温度を60℃に昇温し、エチレングリコール16gとDMF40gを添加し、60℃で鎖長延長反応をさせ、粘度上昇に合せてDMF400gを分割添加しながら重合を行った。所定の粘度まで上昇した時点で1,2-プロピレングリコール9gとDMF110gを添加した。おおよそ6~8時間で反応が終わり、ウレタン樹脂濃度25.0%、粘度83,000mPa・s(30℃)、植物由来比率53.2%のウレタン樹脂溶液(3)が得られた。
【0047】
<ポリウレタン樹脂溶液(4)の重合>
ポリカーボネートポリオール(1,4-ブタンジオール/1,10-デカンジオール=5/5モル比共重合カーボネートジオール、水酸基価56.5mgKOH/g、三菱ケミカル(株)製、“ベネビオール”(登録商標)NL2050DB、1,10-デカンジオールが植物由来)162g、及びDMF250gを2リットルのセパラブルコルベンに入れて溶解させ、50℃に調温しながらジフェニルメタンジイソシアネート87gを添加し、50℃で約1時間反応させ、プレポリマーとした。この後、温度を60℃に昇温し、エチレングリコール16gとDMF40gを添加し、60℃で鎖長延長反応をさせ、粘度上昇に合せてDMF400gを分割添加しながら重合を行った。所定の粘度まで上昇した時点で1,2-プロピレングリコール9gとDMF110gを添加した。おおよそ6~8時間で反応が終わり、ウレタン樹脂濃度25.0%、粘度81,000mPa・s(30℃)、植物由来比率38.4%のウレタン樹脂溶液(4)が得られた。
【0048】
<ポリウレタン樹脂溶液(5)の重合>
ポリカーボネートポリオール(1,4-ブタンジオール/1,10-デカンジオール=7/3モル比共重合カーボネートジオール、水酸基価56.5mgKOH/g、三菱ケミカル(株)製、“ベネビオール”(登録商標)NL2030DB、1,10-デカンジオールが植物由来)162g、及びDMF250gを2リットルのセパラブルコルベンに入れて溶解させ、50℃に調温しながらジフェニルメタンジイソシアネート87gを添加し、50℃で約1時間反応させ、プレポリマーとした。この後、温度を60℃に昇温し、エチレングリコール16gとDMF40gを添加し、60℃で鎖長延長反応をさせ、粘度上昇に合せてDMF400gを分割添加しながら重合を行った。所定の粘度まで上昇した時点で1,2-プロピレングリコール9gとDMF110gを添加した。おおよそ6~8時間で反応が終わり、ウレタン樹脂濃度25.0%、粘度86,000mPa・s(30℃)、植物由来比率27.4%のウレタン樹脂溶液(5)が得られた。
【0049】
<ポリウレタン樹脂溶液(6)の重合>
ポリカーボネートポリオール(1,4-ブタンジオール/1,10-デカンジオール=9/1モル比共重合カーボネートジオール、水酸基価55.5mgKOH/g、三菱ケミカル(株)製、“ベネビオール”(登録商標)NL2010DB、1,10-デカンジオールが植物由来)162g、及びDMF250gを2リットルのセパラブルコルベンに入れて溶解させ、50℃に調温しながらジフェニルメタンジイソシアネート87gを添加し、50℃で約1時間反応させ、プレポリマーとした。この後、温度を60℃に昇温し、エチレングリコール16gとDMF40gを添加し、60℃で鎖長延長反応をさせ、粘度上昇に合せてDMF400gを分割添加しながら重合を行った。所定の粘度まで上昇した時点で1,2-プロピレングリコール9gとDMF110gを添加した。おおよそ6~8時間で反応が終わり、ウレタン樹脂濃度25.0%、粘度85,000mPa・s(30℃)、植物由来比率13.4%のウレタン樹脂溶液(6)が得られた。
【0050】
<ポリウレタン樹脂溶液(7)の重合>
ポリカーボネートポリオール(1,4-ブタンジオール/1,10-デカンジオール=9/1モル比共重合カーボネートジオール、水酸基価54.5mgKOH/g、三菱ケミカル(株)製、“ベネビオール”(登録商標)NL2010DB、1,10-デカンジオールが植物由来)130g、ポリエーテルポリオール(ポリテトラメチレングリコール、水酸基価56.1mgKOH/g、三洋化成工業(株)製、PTMG―2000M)32g、及びDMF250gを2リットルのセパラブルコルベンに入れて溶解させ、50℃に調温しながらジフェニルメタンジイソシアネート87gを添加し、50℃で約1時間反応させ、プレポリマーとした。この後、温度を60℃に昇温し、エチレングリコール16gとDMF40gを添加し、60℃で鎖長延長反応をさせ、粘度上昇に合せてDMF400gを分割添加しながら重合を行った。所定の粘度まで上昇した時点で1,2-プロピレングリコール9gとDMF110gを添加した。おおよそ6~8時間で反応が終わり、ウレタン樹脂濃度25.0%、粘度86,000mPa・s(30℃)、植物由来比率9.4%のウレタン樹脂溶液(7)が得られた。
【0051】
<ポリウレタン樹脂溶液(8)の重合>
ポリカーボネートポリオール(1,4-ブタンジオール/1,10-デカンジオール=9/1モル比共重合カーボネートジオール、水酸基価55.5mgKOH/g、三菱ケミカル(株)製、“ベネビオール”(登録商標)NL2010DB、1,10-デカンジオールが植物由来)162g、及びDMF250gを2リットルのセパラブルコルベンに入れて溶解させ、50℃に調温しながらジフェニルメタンジイソシアネート87gを添加し、50℃で約1時間反応させ、プレポリマーとした。この後、温度を60℃に昇温し、植物由来1,3-プロピレングリコール19.6gとDMF50gを添加し、60℃で鎖長延長反応をさせ、粘度上昇に合せてDMF400gを分割添加しながら重合を行った。所定の粘度まで上昇した時点で1,2-プロピレングリコール9gとDMF110gを添加した。おおよそ6~8時間で反応が終わり、ウレタン樹脂濃度25.0%、粘度92,000mPa・s(30℃)、植物由来比率20.6%のウレタン樹脂溶液(8)が得られた。
【0052】
[比較例1]
50デニールのナイロンフィラメントヤーンで構成されたナイロンリップタフタを、フッ素系撥水剤(日華化学株式会社、“NKガード”(登録商標)S-07)の30g/lの希釈液に浸漬し、絞り率40%となるようにマングルで絞った後、120℃で乾燥し、160℃で30秒間熱処理し、撥水処理を行った。
つぎに、<ポリウレタン樹脂溶液(1)の重合>で調製したポリウレタン樹脂溶液(1)100質量部にシリカ微粉末(日本アエロジル株式会社、“AEROSIL”(登録商標)R-972)6質量部、フッ素撥水剤(東レコーテックス株式会社、SF-1011)1質量部、架橋剤(東ソー株式会社“コロネート”(登録商標)HX)1質量部を添加し、DMF50質量部で充分に混合し、ホモミキサーで約15分間分散攪拌した後、攪拌し、ポリウレタン樹脂組成物の液状組成物を得た。
これを先の撥水加工ナイロンリップタフタにナイフオーバーロールコーターで150g/m2の塗布量でコーティングし、DMFを20質量%含有する水溶液をゲル化浴とする浴槽に2分間浸漬して湿式凝固法による製膜をおこなった後、10分間水洗し、140℃にて熱風乾燥し、多孔構造を有する透湿防水加工布帛を得た。
得られた透湿防水布帛について、耐水圧、透湿度、風合いを評価した。また、ジャングルテスト(温度70℃、湿度95%、10週間、20週間)を行った後、耐水圧を測定し、その保持率を求めた。結果を表1に示す。
【0053】
[比較例2]
50デニールのナイロンフィラメントヤーンで構成されたナイロンリップタフタを、フッ素系撥水剤(日華化学株式会社、“NKガード”(登録商標。以下同じ。)S-07)の30g/lの希釈液に浸漬し、絞り率40%となるようにマングルで絞った後、120℃で乾燥し、160℃で30秒間熱処理し、撥水処理を行った。
つぎに、<ポリウレタン樹脂溶液(2)の重合>で調製したポリウレタン樹脂溶液(2)100質量部にシリカ微粉末(日本アエロジル株式会社、“AEROSIL”(登録商標)R-972)6質量部、フッ素撥水剤(東レコーテックス株式会社、SF-1011)1質量部、架橋剤(東ソー株式会社“コロネート”(登録商標)HX)1質量部を添加し、DMF50質量部で充分に混合し、ホモミキサーで約15分間分散攪拌した後、攪拌し、ポリウレタン樹脂組成物の液状組成物を得た。
これを先の撥水加工ナイロンリップタフタにナイフオーバーロールコーターで150g/m2の塗布量でコーティングし、DMFを20質量%含有する水溶液をゲル化浴とする浴槽に2分間浸漬して湿式凝固法による製膜をおこなった後、10分間水洗し、140℃にて熱風乾燥し、多孔構造を有する透湿防水加工布帛を得た。
得られた透湿防水布帛について、耐水圧、透湿度、風合いを評価した。また、ジャングルテスト(温度70℃、湿度95%、10週間、20週間)を行った後、耐水圧を測定し、その保持率を求めた。結果を表1に示す。
【0054】
[実施例1]
50デニールのナイロンフィラメントヤーンで構成されたナイロンリップタフタを、フッ素系撥水剤(日華化学株式会社、“NKガード”(登録商標)S-07)の30g/lの希釈液に浸漬し、絞り率40%となるようにマングルで絞った後、120℃で乾燥し、160℃で30秒間熱処理し、撥水処理を行った。
つぎに、<ポリウレタン樹脂溶液(4)の重合>で調製したポリウレタン樹脂溶液(4)100質量部にシリカ微粉末(日本アエロジル株式会社、“AEROSIL”(登録商標)R-972)6質量部、フッ素撥水剤(東レコーテックス株式会社、SF-1011)1質量部、架橋剤(東ソー株式会社“コロネート”(登録商標)HX)1質量部を添加し、DMF50質量部で充分に混合し、ホモミキサーで約15分間分散攪拌した後、攪拌し、ポリウレタン樹脂組成物の液状組成物を得た。
これを先の撥水加工ナイロンリップタフタにナイフオーバーロールコーターで150g/m2の塗布量でコーティングし、DMFを20質量%含有する水溶液をゲル化浴槽に2分間浸漬して湿式凝固法による製膜をおこなった後、10分間水洗し、140℃にて熱風乾燥し、多孔構造を有する透湿防水加工布帛を得た。
得られた透湿防水布帛について、耐水圧、透湿度、風合いを評価した。また、ジャングルテスト(温度70℃、湿度95%、10週間、20週間)を行った後、耐水圧を測定し、その保持率を求めた。結果を表1に示す。
【0055】
[実施例2]
50デニールのナイロンフィラメントヤーンで構成されたナイロンリップタフタを、フッ素系撥水剤(日華化学株式会社、“NKガード”(登録商標)S-07)の30g/lの希釈液に浸漬し、絞り率40%となるようにマングルで絞った後、120℃で乾燥し、160℃で30秒間熱処理し、撥水処理を行った。
つぎに、<ポリウレタン樹脂溶液(5)の重合>で調製したポリウレタン樹脂溶液(5)100質量部にシリカ微粉末(日本アエロジル株式会社、“AEROSIL”(登録商標)R-972)6質量部、フッ素撥水剤(東レコーテックス株式会社、SF-1011)1質量部、架橋剤(東ソー株式会社“コロネート”(登録商標)HX)1質量部を添加し、DMF50質量部で充分に混合し、ホモミキサーで約15分間分散攪拌した後、攪拌し、ポリウレタン樹脂組成物の液状組成物を得た。
これを先の撥水加工ナイロンリップタフタにナイフオーバーロールコーターで150g/m2の塗布量でコーティングし、DMFを20質量%含有する水溶液をゲル化浴槽に2分間浸漬して湿式凝固法による製膜をおこなった後、10分間水洗し、140℃にて熱風乾燥し、多孔構造を有する透湿防水加工布帛を得た。
得られた透湿防水布帛について、耐水圧、透湿度、風合いを評価した。また、ジャングルテスト(温度70℃、湿度95%、10週間、20週間)を行った後、耐水圧を測定し、その保持率を求めた。結果を表1に示す。
【0056】
[実施例3]
50デニールのナイロンフィラメントヤーンで構成されたナイロンリップタフタを、フッ素系撥水剤(日華化学株式会社、“NKガード”(登録商標)S-07)の30g/lの希釈液に浸漬し、絞り率40%となるようにマングルで絞った後、120℃で乾燥し、160℃で30秒間熱処理し、撥水処理を行った。
つぎに、<ポリウレタン樹脂溶液(6)の重合>で調製したポリウレタン樹脂溶液(6)100質量部にシリカ微粉末(日本アエロジル株式会社、“AEROSIL”(登録商標)R-972)6質量部、フッ素撥水剤(東レコーテックス株式会社、SF-1011)1質量部、架橋剤(東ソー株式会社“コロネート”(登録商標)HX)1質量部を添加し、DMF50質量部で充分に混合し、ホモミキサーで約15分間分散攪拌した後、攪拌し、ポリウレタン樹脂組成物の液状組成物を得た。
これを先の撥水加工ナイロンリップタフタにナイフオーバーロールコーターで150g/m2の塗布量でコーティングし、DMFを20質量%含有する水溶液をゲル化浴槽に2分間浸漬して湿式凝固法による製膜をおこなった後、10分間水洗し、140℃にて熱風乾燥し、多孔構造を有する透湿防水加工布帛を得た。
得られた透湿防水布帛について、耐水圧、透湿度、風合いを評価した。また、ジャングルテスト(温度70℃、湿度95%、10週間、20週間)を行った後、耐水圧を測定し、その保持率を求めた。結果を表1に示す。
【0057】
[実施例4]
50デニールのナイロンフィラメントヤーンで構成されたナイロンリップタフタを、フッ素系撥水剤(日華化学株式会社、“NKガード”(登録商標)S-07)の30g/lの希釈液に浸漬し、絞り率40%となるようにマングルで絞った後、120℃で乾燥し、160℃で30秒間熱処理し、撥水処理を行った。
つぎに、<ポリウレタン樹脂溶液(7)の重合>で調製したポリウレタン樹脂溶液(7)100質量部にシリカ微粉末(日本アエロジル株式会社、“AEROSIL”(登録商標)R-972)6質量部、フッ素撥水剤(東レコーテックス株式会社、SF-1011)1質量部、架橋剤(東ソー株式会社“コロネート”(登録商標)HX)1質量部を添加し、DMF50質量部で充分に混合し、ホモミキサーで約15分間分散攪拌した後、攪拌し、ポリウレタン樹脂組成物の液状組成物を得た。
これを先の撥水加工ナイロンリップタフタにナイフオーバーロールコーターで150g/m2の塗布量でコーティングし、DMFを20質量%含有する水溶液をゲル化浴とする浴槽に2分間浸漬して湿式凝固法による製膜をおこなった後、10分間水洗し、140℃にて熱風乾燥し、均質で微細な多孔構造を有する透湿防水加工布帛を得た。
得られた透湿防水布帛について、耐水圧、透湿度、風合いを評価した。また、ジャングルテスト(温度70℃、湿度95%、10週間、20週間)を行った後、耐水圧を測定し、その保持率を求めた。結果を表1に示す。
【0058】
[実施例5]
50デニールのナイロンフィラメントヤーンで構成されたナイロンリップタフタを、フッ素系撥水剤(日華化学株式会社、“NKガード”(登録商標)S-07)の30g/lの希釈液に浸漬し、絞り率40%となるようにマングルで絞った後、120℃で乾燥し、160℃で30秒間熱処理し、撥水処理を行った。
つぎに、<ポリウレタン樹脂溶液(8)の重合>で調製したポリウレタン樹脂溶液(8)100質量部にシリカ微粉末(日本アエロジル株式会社、“AEROSIL”(登録商標)R-972)6質量部、フッ素撥水剤(東レコーテックス株式会社、SF-1011)1質量部、架橋剤(東ソー株式会社“コロネート”(登録商標)HX)1質量部を添加し、DMF50質量部で充分に混合し、ホモミキサーで約15分間分散攪拌した後、攪拌し、ポリウレタン樹脂組成物の液状組成物を得た。
これを先の撥水加工ナイロンリップタフタにナイフオーバーロールコーターで150g/m2の塗布量でコーティングし、DMFを20質量%含有する水溶液をゲル化浴とする浴槽に2分間浸漬して湿式凝固法による製膜をおこなった後、10分間水洗し、140℃にて熱風乾燥し、多孔構造を有する透湿防水加工布帛を得た。
得られた透湿防水布帛について、耐水圧、透湿度、風合いを評価した。また、ジャングルテスト(温度70℃、湿度95%、10週間、20週間)を行った後、耐水圧を測定し、その保持率を求めた。結果を表1に示す。
【0059】
【0060】
表1の比較例1に示したような植物由来成分を持つが耐加水分解性が低いものや、比較例2で示したような耐加水分解性が高いが植物由来成分を持たない透湿防水布帛はこれまでの技術に存在したが、植物由来成分を有しながら耐加水分解性に優れた量産性のある製品は存在しなかった。
実施例1、2、3、4、5に示したように、植物由来成分を有することでカーボンニュートラルによる環境負荷の低減に貢献しつつ、ポリカーボネート系ウレタンの特長である高い耐加水分解性により長期間の実用に耐える製品の生産が可能となる。
さらに、実施例4で示したように植物由来のポリカーボネート系ポリオールとPTMGを共重合することで、より高い耐水圧を有する有用な透湿防水布帛が得られる。
また、実施例5で示したようにポリウレタン重合時に植物由来の鎖伸長剤を用いることで、高い耐加水分解性を維持しながら植物由来比率をさらに上げることが可能であり、より環境負荷の低減に貢献することが可能である。