IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -電池セルの電極タブ断線検査装置 図1
  • -電池セルの電極タブ断線検査装置 図2
  • -電池セルの電極タブ断線検査装置 図3
  • -電池セルの電極タブ断線検査装置 図4
  • -電池セルの電極タブ断線検査装置 図5
  • -電池セルの電極タブ断線検査装置 図6
  • -電池セルの電極タブ断線検査装置 図7
  • -電池セルの電極タブ断線検査装置 図8
  • -電池セルの電極タブ断線検査装置 図9
  • -電池セルの電極タブ断線検査装置 図10
  • -電池セルの電極タブ断線検査装置 図11
  • -電池セルの電極タブ断線検査装置 図12
  • -電池セルの電極タブ断線検査装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】電池セルの電極タブ断線検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/54 20200101AFI20250218BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20250218BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20250218BHJP
【FI】
G01R31/54
G01R31/389
G01R31/396
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023544476
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 KR2022015899
(87)【国際公開番号】W WO2023075273
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0142779
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジュ ミ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュ ヨウン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、イン フワン
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特許第7501831(JP,B2)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0035594(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0107997(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0020506(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0028267(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0169787(KR,A)
【文献】特表2023-550095(JP,A)
【文献】特表2024-500140(JP,A)
【文献】特表2024-510340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42-10/48
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象電池セルの電極リードに連結されて、周波数に応じたインピーダンス値を測定するインピーダンス測定部と、
前記インピーダンス測定部により取得した前記検査対象電池セルの周波数に応じたインピーダンス値データと、電極タブが断線されない正常電池セルまたは前記電極タブが断線されたタブ断線電池セルの周波数に応じた所定のインピーダンス値データ群とを対比して、検査対象電池セルの断線の有無を判定する判定部と、を含み、
前記判定部は、選択された特定の周波数範囲における前記検査対象電池セルのインピーダンス値データと近正常電池セルおよび/またはタブ断線電池セルの、3以上の奇数個のインピーダンス値データを選択し、前記選択されたデータのうち、正常電池セルのデータがより多くの個数を占めるか、タブ断線電池セルのデータがより多くの個数を占めるかに応じて、前記検査対象電池セルの電極タブ断線の有無を判定する電極タブ断線検査装置。
【請求項2】
前記選択された特定の周波数範囲は、前記正常電池セルおよび前記タブ断線電池セルのインピーダンス値データが互いにオーバーラップされないか、またはオーバーラップされる領域が最も小さい周波数範囲である、請求項に記載の電極タブ断線検査装置。
【請求項3】
前記選択されたデータのうち、正常電池セルのデータがより多くの個数を占めると、前記検査対象電池セルを正常電池セルとして判定し、
前記選択されたデータのうち、タブ断線電池セルのデータがより多くの個数を占めると、前記検査対象電池セルをタブ断線電池セルとして判定する、請求項1または2に記載の電極タブ断線検査装置。
【請求項4】
前記正常電池セルおよびタブ断線電池セルの周波数に応じた所定のインピーダンス値データ群は、K-近傍アルゴリズムによって反復学習されたデータ群である、請求項1または2に記載の電極タブ断線検査装置。
【請求項5】
検査対象電池セルに備えられた電極リードの複数の測定箇所に対応される複数個のプローブを備え、それぞれのプローブは各測定箇所と交代で電気的に連結されるマルチプローブ部と、
前記マルチプローブ部の各プローブに連結されて、前記電極リードの各測定箇所に対して周波数に応じたインピーダンス値を測定するインピーダンス測定部と、
前記インピーダンス測定部により取得した前記検査対象電池セルの周波数に応じたインピーダンス値データと、電極タブが断線されない良品電池セルまたは断線された不良電池セルの周波数に応じた所定のインピーダンス値データ群とを対比して検査対象電池セルの断線の有無を判定する判定部と、を含み、
前記判定部は、前記電極リードのそれぞれの測定箇所に対して、選択された特定の周波数範囲における前記検査対象電池セルのインピーダンス値データと近傍の正常電池セルおよび/またはタブ断線電池セルの、3以上の奇数個のインピーダンス値データを選択し、前記選択されたデータのうち、正常電池セルのデータがより多くの個数を占めるか、タブ断線電池セルのデータがより多くの個数を占めるかに応じて、前記電極リードの各測定箇所と連結された電極タブの断線の有無を判定する電極タブ断線検査装置。
【請求項6】
前記選択された特定の周波数範囲は、前記正常電池セルおよび前記タブ断線電池セルのインピーダンス値データが互いにオーバーラップされないか、またはオーバーラップされる領域が最も小さい周波数範囲である、請求項に記載の電極タブ断線検査装置。
【請求項7】
前記選択されたデータのうち、正常電池セルのデータがより多くの個数を占めると、前記電極リードの当該測定箇所と連結された電極タブは断線されないこととして判定し、
前記選択されたデータのうち、断線電池セルのデータがより多くの個数を占めると、前記電極リードの当該測定箇所と連結された電極タブは断線されたこととして判定する、請求項に記載の電極タブ断線検査装置。
【請求項8】
前記正常電池セルおよびタブ断線電池セルの周波数に応じた所定のインピーダンス値データ群は、K-近傍アルゴリズムによって反復学習されたデータ群である、請求項に記載の電極タブ断線検査装置。
【請求項9】
前記マルチプローブ部のプローブを交代で各測定箇所と電気的に連結するスイッチングリレーボックスと、
前記スイッチングリレーボックスを制御する制御部とをさらに含む、請求項5から8のいずれか一項に記載の電極タブ断線検査装置。
【請求項10】
前記検査対象電池セルの極性が異なる正極リードおよび負極リードのうち、少なくとも1つに前記マルチプローブ部が連結されて、
前記正極リードおよび前記負極リードのうち、1つのリードの1つの測定箇所にプローブを連結した状態で、前記正極リードおよび前記負極リードのうち、他の1つのリードの複数個の測定箇所に対して交代で前記インピーダンス値を測定する、請求項に記載の電極タブ断線検査装置。
【請求項11】
前記正極リードおよび前記負極リードの各測定箇所は、各リードの終端または前記検査対象電池セルのケースから等間隔に位置される、請求項10に記載の電極タブ断線検査装置。
【請求項12】
前記電極リードのうち、正極リードおよび負極リードのうち、1つのリードの複数個の測定箇所に関する電極タブの断線の有無の判定結果と、
前記電極リードのうち、前記正極リードおよび前記負極リードのうち、他の1つのリードの複数個の測定箇所に関する電極タブの断線の有無の判定結果とを組み合わせて、検査対象電池セルの電極タブ断線の有無を判定する、請求項5から8のいずれか一項に記載の電極タブ断線検査装置。
【請求項13】
前記判定部は、前記電極リードの各測定箇所に応じたインピーダンス値の変化率に基づいて前記検査対象電池セルの電極タブ断線の有無を追加で判定し、前記追加の判定結果と前記組み合わされた断線の有無の判定結果とを対比して、検査対象電池セルの電極タブ断線の有無を判定する、請求項12に記載の電極タブ断線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セルの電極タブの断線を非破壊的に検査するための電極タブ断線検査装置に関するものである。
【0002】
本出願は、2021年10月25日付の韓国特許出願第10-2021-0142779号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、充放電が可能な二次電池は、ワイヤレスモバイル機器のエネルギー源として広く使用されている。また、二次電池は、化石燃料を使用する既存のガソリン車、ディーゼル車などに起因する大気汚染などを解決するための対策として提示されている電気自動車、ハイブリッド電気自動車などのエネルギー源としても注目されている。したがって、二次電池を使用するアプリケーションの種類は、二次電池の長所により非常に多様化しており、今後は今より多くの分野と製品に二次電池が適用されると予想される。
【0004】
このような二次電池は、電極と電解液の構成によってリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、リチウムポリマー電池などに分類されることもあり、そのうち電解液の漏液の可能性が少なく、製造が容易なリチウムイオンポリマー電池の使用量が増えている。一般的に、二次電池は、電池ケースの形状に応じて、電極組立体が円筒形または角型の金属缶に内蔵されている円筒形電池および角型電池と、電極組立体がアルミニウムラミネートシートのパウチ型ケースに内蔵されているパウチ型電池に分類される。電池ケースに内蔵される電極組立体は、正極、負極、および上記正極と上記負極との間に介在された分離膜構造からなる充放電が可能な発電素子であって、活物質が塗布された長いシート状の正極と負極との間に分離膜を介在して巻取したジェリーロール型と、所定のサイズの多数の正極と負極を分離膜が介在された状態で順次に積層したスタック型に分類される。
【0005】
図1は、パウチ型電池セル10の電極タブ13に断線が発生する箇所を示した概略図である。
【0006】
図示されたように、パウチ型電池セル10の電池ケース11内には電極組立体12が内蔵されており、この電極組立体12から電極タブ13が導出されて電極リード14と溶接される。電極タブとタブの溶接部、電極タブと電極リードの上記溶接部は、電池セルの製造過程で多様な方向に力を受けるため、溶接箇所のうち1つまたは様々な箇所で断線15が発生し得る。断線が発生すると、低電圧などの不良を誘発し得る。
【0007】
電極タブの断線を検出するために、従来には特許文献1のように電池セルを加圧して加圧による電池セルのインピーダンス変化を測定するか、またはCT撮影で溶接箇所を物理的に検査する方法が使用された。
【0008】
特許文献1の技術では、インピーダンス変化を測定するために電池セルを別途に加圧する加圧器具が必要であるため、量産水準の検査を適用することが困難であった。
【0009】
また、CT撮影の場合、電池セル1個当たりの検査に1分30秒程度かかるため、やはり量産水準の検査が不可能であった。
【0010】
上記問題を克服するために、本出願人は、図2のような電極タブ断線方法を開発した。すなわち、特定の周波数領域(例えば共振周波数領域)で測定された検査対象電池セルのインピーダンス値あるいはインピーダンスの実数部抵抗値と、タブ断線がない正常電池セルおよびタブ断線電池セルの同一周波数領域のインピーダンス値あるいはインピーダンスの実数部抵抗値を対比してタブ断線電池セルを検出した。
【0011】
しかしながら、上記方法の場合にも、正常(良品)電池セルのインピーダンス値の変化領域とタブ断線(不良)電池セルのインピーダンス値の変化領域とがオーバーラップされる領域が発生し、このオーバーラップ領域に検査対象電池セルのインピーダンス値または実数部抵抗値が属する場合には、これを正常として判定するかタブ断線として判定するかを判断することが困難であった。
【0012】
また、電極リードのインピーダンス測定位置によってタブ断線の判定結果が異なるなどの問題があった。
【0013】
したがって、電池セルの電極タブ断線の有無をより正確に判定し得る電極タブ断線検査技術の開発が要望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0035594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記のような課題を解決するために案出されたものであり、いわゆるK-近傍法(近傍アルゴリズム)に基づいて、電池セルの電極タブ断線の有無をより正確に検出し得る電池セルの電極タブ断線検査装置を提供することを目的とする。
【0016】
また、電極リードのインピーダンス測定位置に応じた電極タブ断線の有無まで正確に判定し得る電池セルの電極タブ断線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る電池セルの電極タブ断線検査装置は、検査対象電池セルの電極リードに連結されて、周波数に応じたインピーダンス値を測定するインピーダンス測定部と、
上記インピーダンス測定部により取得した上記検査対象電池セルの周波数に応じたインピーダンス値データと電極タブが断線されない正常電池セルまたは電極タブが断線されたタブ断線電池セルの周波数に応じた所定のインピーダンス値データ群とを対比して、検査対象電池セルの断線の有無を判定する判定部と、を含み、上記判定部は、選択された特定の周波数範囲における上記検査対象電池セルのインピーダンス値データと近傍の(nearest neighboring)正常電池セルおよび/またはタブ断線電池セルの所定の個数のインピーダンス値データを選択し、上記選択されたデータのうち、より多くの個数を占める電池セルの種類に応じて、上記検査対象電池セルの電極タブ断線の有無を判定することを特徴とする。
【0018】
一例として、上記選択された所定の個数のインピーダンス値データは、3以上の奇数である
【0019】
他の例として、上記選択された特定の周波数範囲は、上記正常およびタブ断線電池セルのインピーダンス値データが互いにオーバーラップされないか、またはオーバーラップされる領域が最も小さい周波数範囲であり得る。
【0020】
具体的には、上記選択されたデータのうち、正常電池セルのデータがより多くの個数を占めると、上記検査対象電池セルを正常電池セルとして判定し、上記選択されたデータのうち、タブ断線電池セルのデータがより多くの個数を占めると、上記検査対象電池セルをタブ断線電池セルとして判定する。
【0021】
また、上記正常電池セルおよびタブ断線電池セルの周波数に応じた所定のインピーダンス値データ群は、K-近傍アルゴリズム(K-nearest neighbor algorism)によって反復学習されたデータ群であり得る。
【0022】
本発明の他の例として、上記電極タブ断線検査装置は、検査対象電池セルに備えられた電極リードの複数の測定箇所に対応される複数個のプローブを備え、それぞれのプローブは各測定箇所と交代で電気的に連結されるマルチプローブ部と、上記マルチプローブ部の各プローブに連結されて、上記電極リードの各測定箇所に対して周波数に応じたインピーダンス値を測定するインピーダンス測定部と、上記インピーダンス測定部により取得した上記検査対象電池セルの周波数に応じたインピーダンス値データと、電極タブが断線されない良品電池セルおよび断線された不良電池セルの周波数に応じた所定のインピーダンス値データ群とを対比して、検査対象電池セルの断線の有無を判定する判定部と、を含み、上記判定部は、上記電極リードのそれぞれの測定箇所に対して、選択された特定の周波数範囲における上記検査対象電池セルのインピーダンス値データと近傍の正常電池セルおよび/またはタブ断線電池セルの所定の個数のインピーダンス値データを選択し、上記選択されたデータのうち、より多くの個数を占める電池セルの種類に応じて、上記電極リードの各測定箇所と連結された電極タブの断線の有無を判定することを特徴とする。
【0023】
一例として、上記選択された所定の個数のインピーダンス値データは、3以上の奇数である。
【0024】
他の例として、上記選択された特定の周波数範囲は、上記正常およびタブ断線電池セルのインピーダンス値データが互いにオーバーラップされないか、またはオーバーラップされる領域が最も小さい周波数範囲であり得る。
【0025】
具体的には、上記選択されたデータのうち、正常電池セルのデータがより多くの個数を占めると、上記電極リードの当該測定箇所と連結された電極タブは断線されないこととして判定し、上記選択されたデータのうち、断線電池セルのデータがより多くの個数を占めると、上記電極リードの当該測定箇所と連結された電極タブは断線されたこととして判定する。
【0026】
一例として、上記正常電池セルおよびタブ断線電池セルの周波数に応じた所定のインピーダンス値データ群は、K-近傍アルゴリズム(K-nearest neighbor algorism)によって反復学習されたデータ群であり得る。
【0027】
一例として、上記電極タブ断線検査装置は、上記マルチプローブ部のプローブを交代で各測定箇所と電気的に連結するスイッチングリレーボックスと、上記スイッチングリレーボックスを制御する制御部とをさらに含み得る。
【0028】
具体的には、上記電池セルの極性が異なる正極リードおよび負極リードのうち、少なくとも1つに上記マルチプローブ部が連結されて、上記正極リードおよび負極リードのうち、1つのリードの1つの測定箇所にプローブを連結した状態で、上記正極リードおよび負極リードのうち、他の1つのリードの複数個の測定箇所に対して交代で上記インピーダンス値を測定し得る。
【0029】
一例として、上記正極リードおよび負極リードの各測定箇所は、上記各リードの終端または上記電池セルのケースから等間隔に位置され得る。
【0030】
上記電極タブ断線検査装置は、上記電極リードのうち、正極リードおよび負極リードのうち、1つのリードの複数個の測定箇所に関する電極タブの断線の有無の判定結果と、上記電極リードのうち、正極リードおよび負極リードのうち、他の1つのリードの複数個の測定箇所に関する電極タブの断線の有無の判定結果とを組み合わせて、全体検査対象電池セルの電極タブ断線の有無を判定し得る。
【0031】
別の例として、上記判定部は、上記電極リードの各測定箇所に応じたインピーダンス値の変化率に基づいて上記検査対象電池セルの電極タブ断線の有無を追加で判定し、上記追加判定結果と上記 組み合わされた断線の有無の判定結果とを対比して、検査対象電池セルの電極タブの最終断線の有無を判定し得る。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、正常電池セルであるかタブ断線電池セルであるかが明確でない場合にも、K-近傍アルゴリズムを適用して電池セルの電極タブ断線を正確に検出し得る。
【0033】
また、電極リードのインピーダンス測定位置に応じた電極タブ断線の有無まで検出することにより、全体電池セルの電極タブ断線の有無をより正確に判断し得る。
【0034】
また、本発明によると、電池セル製造段階における迅速かつ正確な検査が可能であるのみならず、完成品の電池セルを一定の期間を使用した後に再利用するリサイクル段階またはリユース(reuse)段階における電池セルの欠陥(電極タブ断線の有無)を迅速かつ正確に検査し得る。したがって、電池セルのリサイクル時に正確に電池セルの欠陥を把握して再使用するかどうかを簡便に決定し得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】パウチ型電池セルの電極タブに断線が発生する箇所を示した概略図である。
図2】本出願人が提案したインピーダンス値または実数部抵抗値を用いた電池セルの電極タブ断線の検出原理を示したグラフである。
図3】本発明の一実施形態に係る電池セルの電極タブ検査装置の概略図である。
図4K-近傍アルゴリズムの原理を説明する概略図である。
図5K-近傍アルゴリズムによるデータ学習過程を示すフローチャートである。
図6】本発明の他の実施形態に係る電池セルの電極タブ検査装置の概略図である。
図7】電池セルの電極リードの測定箇所に応じてインピーダンス値を測定する一例を示した概略図である。
図8図6の実施形態の電池セルの電極タブ検査装置で電池セルの断線の有無を検出する過程の一例を示したフローチャートである。
図9】負極リードのインピーダンス値の測定箇所を固定し、正極リードの測定箇所を異にしてインピーダンス値を測定したときの断線の有無の判定結果を示したグラフである。
図10】負極リードのインピーダンス値の測定箇所を固定し、正極リードの測定箇所を異にしてインピーダンス値を測定したときの断線の有無の判定結果を示したグラフである。
図11】正常電池セルとタブ断線電池セルの測定箇所に応じたインピーダンス値の変化率を示した概略図である。
図12図6の実施形態の電池セルの電極タブ検査装置で電池セルの断線の有無を検出する他の例を示したフローチャートである。
図13】正常電池セルとタブ断線電池セルの測定箇所に応じたインピーダンス値の変化率を示した他の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明について詳細に説明する。その前に、本明細書および特許請求の範囲に使用された用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者が彼自身の発明を最善の方法により説明するために、用語の概念を適切に定義し得るという原則に基づいて、本発明の技術的な思想に合致する意味と概念として解釈されるべきである。
【0037】
本出願において使用される「含む」や「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとする場合、これは他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あるとする場合、それは他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるということは、上部のみならず下部に配置される場合も含むものであり得る。
【0038】
一方、本出願において「長手方向」とは、電池セルの電極リードが突出された方向を意味する。
【0039】
電池セルの電極タブが図1のように断線されると、電池セルのインピーダンス値に変化があると推定される。これに基づいて、特許文献1は、電池セルを加圧してインピーダンス変化を測定して断線の有無を検出する方式を採択した。
【0040】
しかしながら、上述したように、本発明は加圧をせずにインピーダンス値に基づいて断線の有無を検出しようとしたものである。
【0041】
また、正常電池セルとタブ断線電池セルのインピーダンス値がオーバーラップされる場合にも、正確にタブ断線の有無を検出するためのものである。
【0042】
(第1実施形態)
本実施形態の電極タブ断線検査装置100は、検査対象電池セル10の電極リード14、14'に連結されて周波数に応じたインピーダンス値を測定するインピーダンス測定部110と、上記インピーダンス測定部110により取得した上記検査対象電池セル10の周波数に応じたインピーダンス値データと、電極タブが断線されない正常電池セルまたは電極タブが断線されたタブ断線電池セルの周波数に応じた所定のインピーダンス値データ群とを対比して、検査対象電池セル10の断線の有無を判定する判定部120と、を含み、上記判定部120は、選択された特定の周波数範囲における上記検査対象電池セル10のインピーダンス値データと近傍の(nearest neighboring)正常電池セルおよび/またはタブ断線電池セルの所定の個数のインピーダンス値データを選択し、上記選択されたデータのうち、より多く個数を占める電池セルの種類に応じて、上記検査対象電池セル10の電極タブ断線の有無を判定することを特徴とする。
【0043】
図3は、本発明の一実施形態に係る電池セルの電極タブ検査装置100の概略図である。
【0044】
上記電池セル10は、パウチ型セルであって、電池セルの長手方向の両端部からそれぞれ異なる極性の電極リードが導出される、いわゆる両方向電池セルである。しかしながら、これに限るものではなく、異なる極性の電極リードが電池セルの同一端部から導出される単方向電池セルで電極タブ断線の有無を判定し得る。
【0045】
本発明は、検査対象電池セル10の電極リードに連結されるインピーダンス測定部110を含む。上記インピーダンス測定部110は、所定の連結ケーブルおよび接続端子によって電池セル10の電極リードに接続され得る。図3では、プローブPおよび導線によって電極リード14、14'とインピーダンス測定部110とが連結されている。上記インピーダンス測定部110は、周波数に応じて電池セル10のインピーダンス値を測定し得る。インピーダンス測定部110として、例えばEIS(Electochemical Impedance Spectroscopy)測定器で周波数が異なる微小な交流信号を加えると、周波数に応じたインピーダンス値を得うる。 EIS測定器は、インピーダンス値の他に、インピーダンスの位相角、所定の演算を通じて実数部抵抗値、虚数部抵抗値など、インピーダンスに関連された各種パラメータを周波数に応じて求め得る。
【0046】
本発明の電極タブ断線検査装置100は、上記インピーダンス測定器110により取得した検査対象電池セル10の周波数に応じたインピーダンス値データを所定の正常電池セルおよびタブ断線電池セルの周波数に応じたインピーダンス値データ群と対比して検査対象電池セル10の断線の有無を判定する。
【0047】
本発明の検査装置100は、従来、本出願人が提案した特定の周波数範囲におけるインピーダンス値の対比によって断線の有無を判定する技術と軌を一にする。しかしながら、図2に示されたように、従来の方法は、正常電池セルとタブ断線電池セルのインピーダンス値が重畳されるオーバーラップ領域に該当する検査対象電池セル10に対しては正確に断線の有無を判定することができなかった。または、正常電池セルのインピーダンス値の範囲に属するか、それともタブ断線電池セルのインピーダンス値の範囲に属するかが明確でない場合にも、断線の有無を判定することは困難であった。
【0048】
本発明は、いわゆるK-近傍法(K-近傍アルゴリズム(K-nearest neighbor algorism,略してK-NNアルゴリズム))を用いて上記問題点を解消したものである。
【0049】
図4は、K-NNアルゴリズムの原理を説明する概略図である。
【0050】
K-近傍アルゴリズム、略してK-NNアルゴリズムは、マシンラーニングの一種である指導学習(supervised learning)の1つの種類で、距離基盤の分類分析モデルといえる。K-NNアルゴリズムは、データから距離が近い「K」個の異なるデータのラベルを参照して分類するものであって、アルゴリズムが簡単で具現することが容易であるという長所がある。具体的には、図4のように所定の座標平面に三角形データと四角形データが位置する場合、円形データをどちらのデータに属するものに分類すべきかを決定し得る。円形データに最も近接したデータの個数を3つに決定すると(すなわち、K=3)、上記円形データは三角形データに属するものに分類される。しかしながら、最も近接したデータの個数を5つに決定すると(K=5)、上記円形データは四角形データに属するものに分類される。したがって、適切な数のKを設定すれば、どの種類のデータに属するかが明確でない場合にも、当該データの種類を決定し得るようになる。
【0051】
本発明の判定部120は、上記検査対象電池セルのインピーダンス値データと近傍の正常電池セルおよび/またはタブ断線電池セルの所定の個数のインピーダンス値を選択し、上記選択されたデータのうち、より多くの個数を占める電池セルの種類に応じて、検査対象電池セル10の電極タブ断線の有無を判定する。本明細書において「近傍」ということは、必ずしも最も近接する1個のデータを意味するものではない。すなわち、本発明において「近傍」という意味は、K-NNアルゴリズムの「近傍」の概念に該当するものであり、特定のデータの周囲にK個のデータが選択されるとき、特定のデータに「近傍複数個(K個)のデータが選択されるという意味である。
【0052】
図4の例を基準に説明すると、例えば、三角形データがタブ断線電池セルのインピーダンス値データであり、四角形データが正常電池セルのインピーダンス値データとみなし得る。検査対象電池セル10の特定の周波数のインピーダンス値データを円形データとみなすと、図4の点線または実線円の範疇に属するかによって検査対象電池セル10のタブ断線の有無を判定し得る。すなわち、Kを5とする場合、上記検査対象電池セル10のインピーダンス値データ(円形データ)は、正常電池セルのインピーダンス値データ(四角形データ)とみなし得、したがって上記検査対象電池セル10は、断線されない正常電池セルとして判定されるものである。付言すると、近傍するものとして選択されたデータのうち、正常電池セルのデータがより多くの個数を占めると、検査対象電池セル10は正常電池セルとして判定する。すなわち、K=5であり、検査対象電池セル10のインピーダンス値データに近傍のデータのうち、3個が正常電池セルであり、2個がタブ断線電池セルであれば、当該検査対象電池セル10は正常電池セルとして判定される。
【0053】
逆に、選択された近傍データのうち、タブ断線電池セルのデータがより多くの個数を占めると、上記検査対象電池セル10はタブ断線電池セルとして判定される。すなわち、K=5であり、検査対象電池セル10のインピーダンス値データに近傍のデータのうち、3個がタブ断線電池セルであり、2個が正常電池セルであれば、当該検査対象電池セル10はタブ断線電池セルとして判定される。
【0054】
このように、K-NNアルゴリズムに従って、インピーダンス値を比較すれば、図2のように正常およびタブ断線電池セルのインピーダンス値がオーバーラップされる場合にも断線の有無を判定し得る。すなわち、K-NNアルゴリズムに従って適切なK値を選定して所定の個数のインピーダンス値データを選択すれば、どのデータでもその最近接データの個数を定め得る。したがって、図2のように全体的にインピーダンス値がオーバーラップされる場合にも、該当電池セルに関して、より多くの個数のインピーダンス値データを占める隣接電池セルの種類を決定し得る。
【0055】
一方、本発明においてインピーダンス値とは、実数部と虚数部の成分を有する全体インピーダンス値はもちろん、実数部抵抗値(Rs)も含む概念である。すなわち、R=Z COSθの関係に応じてインピーダンス位相角とインピーダンス値を知れば実数部抵抗値を求め得、実数部抵抗値もインピーダンス値で表現され得るため、実数部成分の抵抗値でも断線の有無を検出し得る。したがって、本発明のK-NNアルゴリズムが適用されるインピーダンス値データには、上記実数部抵抗値データも含まれる。
【0056】
また、電極タブ断線の有無を判定するために選択される所定の個数のインピーダンス値データ、すなわちK値は3以上の奇数であることが好ましい。Kが1であれば弁別力が低下し、K値が偶数であれば、最近接データの個数が例えば2対2と同一である場合、検査対象電池セル10がどこに属するかを判定することが困難である。したがって、K値は3、5、7、9などの奇数であることが好ましい。ただし、K値が大きすぎると、やはり判定の弁別力が低下するため、大きすぎないK値を選択しなければならない。好ましくは、3または5のK値が良い。
【0057】
また、電極タブ断線の有無を判定するために対比されるインピーダンス値データは、特定の周波数範囲における値であり得る。
【0058】
図2を参照すると、周波数に応じて正常電池セルのインピーダンス領域(良品Zone)とタブ断線電池セルのインピーダンス領域(不良Zone)が比較的明確に区分される領域もあるが、オーバーラップゾーンが大きすぎて検査対象電池セル10のデータと比較しにくい領域もある。主に、低周波数の領域でこのような広範囲なオーバーラップゾーンが発生する。また、オーバーラップゾーンの位置や大きさは、電池セルの種類、物性、内部状態によって変わり得るため、電池セルによって適切な周波数範囲を選択しなければならない。
【0059】
したがって、電極タブ断線の有無を判定するために選択される特定の周波数範囲とは、上記正常およびタブ断線電池セルのインピーダンス値データが互いにオーバーラップされないか、あるいはオーバーラップされる領域が最も小さい周波数範囲を指す。
【0060】
図3を再び参照すると、本発明の判定部120は、上述したように、K-NNアルゴリズムによって検査対象電池セル10のタブ断線の有無を判定することが分かる。一方、検査対象電池セル10のインピーダンス値データと対比される正常およびタブ断線電池セルの所定のインピーダンス値データ群も、上記K-NNアルゴリズムにより反復学習されて得られたデータ群である。このようなデータ群は、所定のデータベースなどの貯蔵部130に貯蔵されており、判定部120は、このような貯蔵部130のデータ群と対比して電池セルのタブ断線の有無を判定し得る。図3に図示されたように、上記貯蔵部130は、判定部120とは別途のサーバやDBの形態で備えられ得る。あるいは、判定部120にメモリ形態の貯蔵部として含まれることもできる。上記判定部120は、K-NNアルゴリズムが具現されたソフトウェアが内蔵された所定のコンピューティング装置であり得る。
【0061】
図5は、K-近傍アルゴリズムによるデータ学習過程の一例を示すフローチャートである。
【0062】
例えば、人為的に正極または負極のタブを断線させた電池セルを所定の個数を作製し、このタブ断線電池セルと同一種類の正常電池セルとを混じて所定の個数(例えば100個)のデータ群作成用母集団の電池セルを準備し得る。この母集団電池セルのうち、80%(例えば80個)の電池セルをランダムに選択し、その選択された電池セルのインピーダンス値データを測定し、正常電池セルとタブ断線電池セルの周波数に応じたインピーダンス値データを学習して比較対象の所定のデータ群とする(S1)。
【0063】
残りの20%(例えば20個)の電池セルのインピーダンス値を測定し、上記比較対象のデータ群とK-NNアルゴリズムで対比して、20%の各電池セルの断線の有無を所定の回数だけ予測する(S3)。
【0064】
次に、予測された結果と実際の正常およびタブ断線電池セルであるかどうかを検証する(S3)。
【0065】
【表1】
【0066】
上記表1から、母集団の選択された80%の電池セルのインピーダンス値データ群により、K-NNアルゴリズムで特定のセルIDの電池セルの正常または断線の有無を予測した場合、タブ断線の有無を100%正確に予測し得ることがわかる。もちろん、どのデータ群を選択するかによって、予測結果は100%ではなく、90%、95%などの他の正確度を有し得る。このように、正確度が検証されたデータは、タブ断線の予測のための学習データとしてアップデートする。
【0067】
また、データ群の正確度を高めるために、このようなデータ学習過程を例えば100回反復して、より信憑性があって正確なK-NNアルゴリズムのための対照データ群を取得し得る(S4)。
【0068】
(第2実施形態)
本実施形態の電極タブ断線検査装置200は、検査対象電池セル10に備えられた電極リード14、14'の複数の測定箇所に対応される複数個のプローブP1、P2、P3を備え、それぞれのプローブP1、P2、P3は、各測定箇所と交代で電気的に連結されるマルチプローブ部240と、上記マルチプローブ部240の各プローブP1、P2、P3に連結されて、上記電極リードの各測定箇所に対して周波数に応じたインピーダンス値を測定するインピーダンス測定部210と、上記インピーダンス測定部210により取得した上記検査対象電池セル10の周波数に応じたインピーダンス値データと、電極タブが断線されない良品電池セルおよび断線された不良電池セルの周波数に応じた所定のインピーダンス値データ群とを対比して、検査対象電池セル10の断線の有無を判定する判定部220と、を含み、上記判定部220は、上記電極リードのそれぞれの測定箇所に対して、選択された特定の周波数範囲における上記検査対象電池セル10のインピーダンス値データと近傍の正常電池セルまたはタブ断線電池セルまたは正常およびタブ断線電池セルの所定の個数のインピーダンス値データを選択し、上記選択されたデータのうち、より多くの個数を占める電池セルの種類に応じて、上記電極リードの各測定箇所と連結された電極タブの断線の有無を判定することを特徴とする。
【0069】
図6は、上記第2実施形態に係る電池セルの電極タブ検査装置200の概略図である。
【0070】
本実施形態の電極タブ検査装置200は、マルチプローブ部240を備えている。上記マルチプローブ部240は、パウチ型電池セルの長手方向の両端に備えられた電極リードの複数の測定箇所に対応される位置に複数個のプローブP1、P2、P3を備えている。図1に図示されたように、電極リードは複数個のタブ束に連結されている。もし特定のタブに断線が発生しても、他の位置のタブは正常であり得、このような正常のタブと連結された電極リードの位置でインピーダンス値を測定すると、その値は正常電池セルのインピーダンス値として測定され得る。したがって、電極リードの1つの測定箇所でのみインピーダンス値を測定すると、不良電池セルが市場に出荷される場合が発生し得る。
【0071】
本実施形態の発明は、上記のような場合を防止するために、複数個のプローブP1、P2、P3で電極リードの複数の位置でインピーダンス値を測定し得るようにマルチプローブ部240を備えている。ただし、複数個のプローブP1、P2、P3で一度にインピーダンスを測定するものではなく、それぞれのプローブP1、P2、P3を各測定箇所と交代で電気的に連結することにより、特定の位置のインピーダンス値を順次測定し得るようにした。
【0072】
また、本発明の検査装置200は、上記マルチプローブ部240の各プローブP1、P2、P3に連結されて、上記電極リード14、14'の各測定箇所に対して周波数に応じたインピーダンス値を測定するインピーダンス測定部210を含む。上記インピーダンス測定部210としてEIS測定器210を使用し得る。インピーダンス測定部210については第1実施形態で十分に説明したため、本実施形態ではそれに関する具体的な説明は省略する。
【0073】
本実施形態の判定部220も、第1実施形態と同様に、K-NNアルゴリズムにより電極リード14、14'のそれぞれの測定箇所に対して電極タブの断線の有無を判定し得る。第1実施形態と異なり、本実施形態は、各測定箇所と交代で電気的に連結される複数個のプローブP1、P2、P3を備えているため、各測定箇所に対してそれぞれK-NNアルゴリズムを適用し得る。したがって、本実施形態は、電極リードの各測定箇所に対して、正常またはタブ断線電池セルの周波数に応じた所定のインピーダンス値データ群と対比して、正常または断線の有無を判定し得る。この場合、同等の比較のために、上記電極リード14、14'の特定の位置で測定されたインピーダンス値と対照される上記所定のインピーダンス値データ群も、当該電極リードの特定の位置と同一の位置で測定されたものでなければならない。
【0074】
また、近傍を判断するために選択される所定の個数のインピーダンス値データが3以上の奇数であることは、第1実施形態と同一である。そして、それぞれの測定箇所に対して検査対象のインピーダンス値データと対照されるインピーダンス値データ群の周波数も、第1実施形態と同様に、正常およびタブ断線電池セルのインピーダンス値データが可能な限りオーバーラップされない範囲で選択されるべきである点も同一である。
【0075】
K-NNアルゴリズムにより、本実施形態の各測定箇所の電極タブ断線の有無の判定は、次の通りに行う。
【0076】
各測定箇所で測定されたインピーダンス値に対して選択された近傍データのうち、正常電池セルのデータがより多くの個数を占めると、上記電極リードの当該測定箇所と連結された電極タブは断線されないこととして判定する。
【0077】
各測定箇所で測定されたインピーダンス値に対して選択された近傍データのうち、タブ断線電池セルのデータがより多くの個数を占めると、上記電極リードの当該測定箇所と連結された電極タブは断線されたこととして判定する。
【0078】
この場合、上記対照される正常電池セルおよびタブ断線電池セルの周波数に応じた所定のインピーダンス値データ群も、図5のようにK-NNアルゴリズムによって反復学習されたデータ群である。
【0079】
このようなデータ群は、所定のデータベースなどの貯蔵部230に貯蔵されており、判定部220は、このような貯蔵部230のデータ群と対比して電池セルのタブ断線の有無を判定し得る。図6に図示されたように、上記貯蔵部230は、判定部220とは別途のサーバやDBの形態で備えられ得る。あるいは、判定部220にメモリ形態の貯蔵部として含まれることもできる。上記判定部220は、K‐NNアルゴリズムが具現されたソフトウェアが内蔵された所定のコンピューティング装置であり得る。
【0080】
上記複数個積層のプローブP1、P2、P3を交代で各測定箇所と電気的に連結するために、本実施形態の電極タブ断線検査装置200は、スイッチングリレーボックス250を備え得る。上記スイッチングリレーボックス250は、マルチプローブ部240の各プローブP1、P2、P3と回路によって連結されて、各プローブP1、P2、P3を電気的にスイッチングして電気的に連結するスイッチまたはリレーSWを備えている。このような電気的なリレー器具は通常公知されているため、それに関する説明は省略する。上記マルチプローブ部240を電池セルの極性が異なる正極リードおよび負極リード14、14'のうち、少なくとも1つに連結すると、各リードで複数の測定箇所に関するインピーダンス値をEIS測定器210でそれぞれ測定し得る。
【0081】
また、上記各プローブP1、P2、P3が各測定箇所と交代で連結されるように上記スイッチングリレーボックス250を制御する制御部が備えられ得る。上記制御部は、判定部220とは別個または図6のように判定部220を含む形態であり得る。後者の場合には、上記制御部が、K-NNアルゴリズムが具現されたソフトウェアが内蔵された判定部220を備えた制御コンピュータであり得る。
【0082】
図6では、各電極リードの3つの測定箇所に対してインピーダンス値を測定するようになっている。しかしながら、必要に応じて、上記測定箇所は2個、4個、5個、またはそれ以上になり得る。図6でR、Lは電極リードの右側、左側を指すものである。特に、電極リードの両側部に隣接したタブ部に断線が多く発生する。図6の実施形態は、これに鑑みて、電極リードの両側部であるR、L部分でインピーダンス値を測定することを示している。上記測定箇所は同一の基準に設定されることが好ましい。例えば、各リード14、14'の終端または電池セルのケースを基準に同一の間隔に並んで測定箇所を設定すれば、各測定箇所に対して比較的同等の条件でインピーダンスを測定して比較し得る。
【0083】
図6のスイッチングリレーボックス250で、点線で表示された線はスイッチSWが連結されていないことを、実線で表示された線はスイッチSWが連結されたことを示す。したがって、図6は、正極リードおよび負極リード14、14'のいずれもR位置の測定箇所におけるインピーダンス値を測定することを示している。リレーボックス250のスイッチングにより、他の測定箇所におけるインピーダンス値も測定し得る。
【0084】
1つの電極リードの複数箇所に対してインピーダンス値を測定する場合、他の電極リードの測定箇所は固定される必要がある。それでこそ、1つの電極リードの複数箇所に対するタブ断線の有無を客観的に比較し得るからである。図7は、このような測定の様子を示した概略図である。図7を参照すると、右側の電極リード14'(例えば負極リード)の測定箇所は中央の1箇所に固定し、左側の電極リード14(例えば正極リード)の測定箇所をRとLの2箇所にして交代でインピーダンス値を測定している。これにより、正極リード14のR箇所のタブ断線の有無とL箇所のタブ断線の有無とを客観的に比較し得、いずれの1箇所でも断線と感知されると、上記電池セルはタブ断線電池セルと判定する。図7では、図示の便宜のために右側の電極リード14'の測定箇所が1箇所に固定されるという意味でプローブを1個のみ表示した。しかしながら、図6のように、スイッチングによって1個のプローブのみを当該測定箇所と電気的に連結し得ることはもちろんである。図7とは逆に、左側の正極リード14の測定箇所を中央の1箇所に固定し、右側の負極リード14'のRとLの2箇所に対してインピーダンス値を測定して負極リードに連結されたタブの断線の有無も検出し得る。このように、マルチプローブ部240のプローブP1、P2、P3を交代で電極リードの各測定箇所と電気的に連結してインピーダンスを測定し、各測定箇所のインピーダンス値が全て正常電池セルのインピーダンス値に該当する場合にのみ当該検査対象電池セル10を正常電池セルと判定し、いずれかの1箇所のインピーダンス値がタブ断線電池セルのインピーダンス値に属する場合にはタブ断線電池セルと判定する。
【0085】
図8は、図6の実施形態の電池セルの電極タブ検査装置で電池セルの断線の有無を検出するする過程の一例を示したフローチャートである。
【0086】
まず、電極リードの複数箇所のインピーダンス値データを上記インピーダンス測定部210により取得する。
【0087】
例えば、図7のように、負極リード14'の測定位置を固定し、正極リード14のLとR箇所のインピーダンス値データを取得する。次に、正極リード14の測定位置を固定し、負極リード14'のLとR箇所のインピーダンス値データを取得する(A1)。
【0088】
次に、各箇所に対するインピーダンス値データと、例えばK-NNアルゴリズムにより学習された同一の箇所における対照インピーダンス値データ群とを近傍アルゴリズムにより比較して、当該箇所におけるタブ断線を検出する(A2)。
【0089】
この場合、特定の箇所で断線が検出されなかった場合でも、他の箇所では断線が検出され得る。したがって、複数の箇所の断線検出結果を組み合わせると、タブ断線が未検出される場合を減らし得るため、測定された各箇所の検出結果を組み合わせて断線を検出する(A3)。
【0090】
最後に、 組み合わされた検出結果に基づいて全体電池セルの断線の有無を判定し得る(A4)。
【0091】
下の表2は、正極リード14の複数個の測定箇所R、Lに関する電極タブの断線の有無の判定結果と、負極リード14'の複数個の測定箇所R、Lに関する電極タブの断線の有無の判定結果を組み合わせて全体検査対象電池セル10の電極タブ断線を検出したことを示したものである。
【0092】
【表2】
選択周波数範囲:160~100Hz(2個測定箇所分析)/K=5
【0093】
図9および図10は、負極リード14'のインピーダンス値の測定箇所を固定し、正極リード14の測定箇所を異にしてインピーダンス値を測定したときの断線の有無の判定結果を示したグラフである。すなわち、図9および図10は、表2の1.および2.の場合の判定結果の組み合わせにより、未検出個数を減らしたことを示している。
【0094】
図9は、正常品(良品)電池セル27個と正極リード14のL箇所が断線された電池セル27個に対して、1kHz~0.1Hzの周波数範囲内で総21個のポイントの周波数で実数部抵抗Rを測定した結果を示したものである。図示されたように、高周波数と低周波数領域では正常品と断線電池セルのインピーダンス値データ群が重畳されて検査対象電池セル10の良否判定のための対照データ群になりにくい。図9で、160~100Hzの間では比較的オーバーラップが少ないため、この周波数範囲でK-NNアルゴリズムにより断線の有無を検出した。図示の便宜のために周波数f-実数部抵抗Rの座標データを線で連結したが、上述したように実際にはEIS測定器210でそれぞれ21個のポイントの周波数-実数部抵抗データを取得してK-NNアルゴリズムで対比した。本実験は、事前に正常/タブ断線電池セルであるかどうかを知っている電池セルを用いてインピーダンス値データを取得(学習)して行ったものであるため、上記検出方式によっても検出されないタブ断線電池セルを把握し得た。図9に示されたように、セルID12672、12684、12710の3個の断線電池セルが良品と判定されて未検出された。
【0095】
図10は、正常品(良品)電池セル27個と正極リード14のR箇所が断線された電池セル27個に対して、1kHz~0.1Hzの周波数範囲内で総21個のポイントの周波数で実数部抵抗Rを測定した結果を示したものである。また、160~100Hzの周波数範囲でK-NNアルゴリズムにより断線の有無を検出した。検出結果、セルID12710、12705、12664、12671の4個の断線電池セルが良品と判定されて未検出された。
【0096】
図9および図10の判定結果を組み合わせると、セルID12710の断線電池セルのみ未検出された。すなわち、表2のように上記1および2の試験結果を組み合わせると、未検出された断線電池セルは54個のうち1個となるため、断線検出の正確度または効率を大きく増加させ得る。
【0097】
また、正極リード14の位置を固定し、負極リード14'の測定箇所をLとRに区分してタブ断線の有無を検出し、これを組み合わせて判定した結果、上記図9および図10と類似に1個の電池セルのみが未検出されて、検出正確度がやはり改善された。
【0098】
一方、本実施形態のようにマルチポイント方式で複数の測定箇所のインピーダンス値を測定する場合、正常電池セルとタブ断線電池セルのインピーダンス値の変化率は測定箇所に応じて異なる。
【0099】
図11は、正常電池セルとタブ断線電池セルの測定箇所に応じたインピーダンス値の変化率を示した概略図である。
【0100】
図11は、正極リードP:14の測定箇所は固定し、負極リードN:14'の測定箇所を5箇所に変更しながら、各箇所ごとに周波数に応じたインピーダンス値の変化率を示したものである。
【0101】
図示されたように、正常電池セルの場合、5箇所におけるインピーダンス値の変化率がほぼ類似であることがわかる。しかしながら、タブ断線電池セルの場合、全般的に正常電池セルに比べてインピーダンス値が大きく、その変化率もそれぞれ異なることがわかる。特に、タブ断線が発生した4番位置のインピーダンス値の変化率は、残りの箇所のインピーダンス値の変化率と大きく差があることがわかる。
【0102】
これより、電極リードの複数箇所のインピーダンス値でタブ断線の有無を判定する本実施形態の発明において、このようなマルチポイント測定によるインピーダンス値の変化率で電極タブ断線の有無を追加で判定し、この追加判定結果と上記K-NN方式により判定された断線の有無の判定結果とを組み合わせると、タブ断線の検出結果をさらに高め得ると判断される。
【0103】
図12は、図6の実施形態の電池セルの電極タブ検査装置で電池セルの断線の有無を検出する他の例を示したフローチャートである。
【0104】
まず、図6に図示された電極タブ検査装置で電極リードの複数箇所のインピーダンス値データをそれぞれ取得する(B1)。
【0105】
次に、上記インピーダンス値データを、正常電池セルとタブ断線電池セルの所定のインピーダンス値データ群とK-NNアルゴリズムで対比して、1次的に各測定箇所の断線の有無を検出する(B2)。この場合、図8のように、複数箇所の断線の有無の判定結果を組み合わせて検出正確度を高め得る。
【0106】
次に、当該電極リードにおいて、各測定箇所に応じて、複数箇所のインピーダンス値データの変化率を対比して、2次的に各電池セルの断線の有無を検出する(B3 )。すなわち、B3の検出結果でB2の検出結果を検証し得る。
【0107】
最後に、上記1次および2次検出結果を総合して最終的な断線電池セルを検出し得る。測定箇所に応じたインピーダンス値の変化率に基づいた断線の有無の判断は、上記したK-NNアルゴリズムによる断線の有無の判断とは接近方式が多少異なるため、1、2次検出結果は一致することも、一部が異なることもある。一部が異なると、未検出された電池セルを追加で発見し得るため、検出正確度を高め得る。
【0108】
図13は、正常電池セルとタブ断線電池セルの測定箇所に応じたインピーダンス値の変化率を示した別の概略図である。
【0109】
図13の各グラフに図示された2本の線は、正極リードのLとR箇所に対して、それぞれ周波数に応じた実数部抵抗値を測定したものである。
【0110】
図示されたように、上の8個の正常電池セルは測定箇所に応じたインピーダンス値の変化率がほとんど差がない反面、下のタブ断線電池セルは測定箇所に応じてインピーダンス値の変化率が大きな差を示す。これより、マルチポイントプルービング方式で測定箇所を異にしてインピーダンス値を測定し、その変化率からタブ断線電池セルを検出する方式も相当な正確性を示すことが分かる。
【0111】
したがって、図12のようなフローにより電池セルのタブ断線の有無を検査することにより、検出正確度をより高め得る。
【0112】
本発明によると、電池セル製造段階における迅速かつ正確な検査が可能であるのみならず、完成品の電池セルを一定の期間を使用した後に再利用するリサイクル段階またはリユース(reuse)段階における電池セルの欠陥(電極タブ断線の有無)を迅速かつ正確に検査し得る。したがって、電池セルのリサイクル時に迅速に電池セルの欠陥を把握して再使用するかどうかを簡便に決定し得る。
【0113】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で多様な修正および変形が可能であろう。したがって、本発明に開示された図面は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであり、このような図面によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にあるすべての技術思想は本発明の範囲に含まれるものとして解釈されるべきである。
【0114】
なお、本明細書では上、下、左、右、前、後のような方向を示す用語が用いられているが、これらの用語は説明の便宜のためのものであり、対象となる物体の位置や観察者の位置などによって変わり得ることは自明である。
【符号の説明】
【0115】
10:電池セル
11:電池ケース
12:電極組立体
13:電極タブ
14:電極リード
15:断線
100:電極タブ断線検査装置
110:インピーダンス測定部
120:判定部
130:貯蔵部
P:プローブ
14、14':電極リード
200:電極タブ断線検査装置
210: インピーダンス測定部
220:制御部(判定部)
230:貯蔵部
240:マルチプローブ部
250:スイッチングリレーボックス
SW:スイッチまたはリレー
P1、P2、P3:測定箇所によるプローブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13