IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニューロライテックの特許一覧

<>
  • 特許-焼灼装置、焼灼システム 図1
  • 特許-焼灼装置、焼灼システム 図2
  • 特許-焼灼装置、焼灼システム 図3
  • 特許-焼灼装置、焼灼システム 図4
  • 特許-焼灼装置、焼灼システム 図5
  • 特許-焼灼装置、焼灼システム 図6
  • 特許-焼灼装置、焼灼システム 図7
  • 特許-焼灼装置、焼灼システム 図8
  • 特許-焼灼装置、焼灼システム 図9
  • 特許-焼灼装置、焼灼システム 図10
  • 特許-焼灼装置、焼灼システム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】焼灼装置、焼灼システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/24 20060101AFI20250218BHJP
【FI】
A61B18/24
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021076649
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022170494
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】521031567
【氏名又は名称】株式会社ニューロライテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三池 信也
(72)【発明者】
【氏名】清水 一夫
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-514269(JP,A)
【文献】特開平06-205789(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0214151(US,A1)
【文献】米国特許第06530919(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/18-18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内に挿入され、生体組織を焼灼するための光を出射するヘッド部を有するプローブと、
前記プローブとの間に前記生体組織を挟むことにより前記生体組織を支持する長尺のカテーテルと、
を備えた生体組織の焼灼装置であって、
前記プローブのヘッド部は、第1の固定具と、第2の固定具と、前記第1の固定具と、前記第2の固定具との間に配置され、前記光を出射させる出射口とを有し、
前記カテーテルは、第3の固定具と、第4の固定具とを有し、
前記プローブと前記カテーテルとの間に前記生体組織を挟んだ状態で、
前記第1の固定具と前記第3の固定具との位置を互いに固定可能であり、
前記第2の固定具と前記第4の固定具との位置を互いに固定可能である、
焼灼装置。
【請求項2】
前記第1の固定具と前記第の固定具とは、磁力で引き合い、前記第2の固定具と前記第4の固定具とは、磁力で引き合うことを特徴とする
請求項1に記載の焼灼装置。
【請求項3】
前記カテーテルは、前記第3の固定具と前記第4の固定具との間に配置され、前記出射口から出射した光を前記生体組織に向けて反射させる反射部を更に有する
請求項1又は2に記載の焼灼装置。
【請求項4】
前記カテーテルは、前記出射口から出射した光を検出する光センサを更に有する
請求項1~3のいずれか一に記載の焼灼装置。
【請求項5】
請求項に記載の焼灼装置と、
前記出射口から出射する光を生成する光源装置と、
前記光センサが検出した光の照度に応じて、前記光源装置が生成する光の照度を制御する制御装置と、
を備えた生体組織の焼灼システム。
【請求項6】
請求項に記載の焼灼装置と、
前記出射口から出射する光を生成する光源装置と、
前記光センサが検出した光の分光特性に応じて、前記光源装置が生成する光の分光特性を制御する制御装置と、
を備えた生体組織の焼灼システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焼灼装置及び焼灼システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光照射により生体組織を焼灼するための装置が知られている。例えば特許文献1に記載された装置は、棒状の導光体の一端に光源からの光を入射し、他端から出射される光によって生体組織を焼灼することができる。また、特許文献2に記載されたカテーテルシステムは、複数の電極が設けられた焼灼カテーテルを含み、複数の電極が生体組織に焼灼エネルギーを印加することによって生体組織を焼灼することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第6530919号明細書
【文献】特許第6301926号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生体組織の所定範囲を均一に焼灼したい場合、特許文献1に記載された装置や特許文献2に記載されたシステムでは困難である。例えば、焼灼したい生体組織の所定範囲の厚さが部分的に異なる場合、他の部分と比べて厚い部分は、内部まで光が到達しにくく、焼灼できない場合がある。また、血管内を流れる血液によって焼灼温度が十分に上がらないため、焼灼が十分にできない場合がある。
【0005】
本発明の目的は、生体組織の所定範囲を均一に焼灼することが可能な焼灼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための発明は、生体内に挿入され、生体組織を焼灼するための光を出射するヘッド部を有するプローブと、 前記プローブとの間に前記生体組織を挟むことにより前記生体組織を支持する長尺のカテーテルと、を備えた生体組織の焼灼装置であって、前記プローブのヘッド部は、第1の固定具と、第2の固定具と、前記第1の固定具と、前記第2の固定具との間に配置され、前記光を出射させる出射口とを有し、前記カテーテルは、第3の固定具と、第4の固定具とを有し、前記プローブと前記カテーテルとの間に前記生体組織を挟んだ状態で、前記第1の固定具と前記第3の固定具との位置を互いに固定可能であり、前記第2の固定具と前記第4の固定具との位置を互いに固定可能である、焼灼装置である。本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、生体組織の所定範囲を均一に焼灼することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の焼灼システムの構成を説明するためのブロック図である。
図2】第1実施形態の焼灼装置の構成を説明するための図である。
図3】第1実施形態のプローブの構成を説明するための断面図である。
図4】第1実施形態のプローブの構成を説明するための断面図である。
図5】第1実施形態のプローブの構成を説明するための断面図である。
図6】第1実施形態のカテーテルの構成を説明するための断面図である。
図7】第1実施形態の焼灼装置の位置合わせをする方法を説明するための図である。
図8】第1実施形態の焼灼装置の位置合わせをする方法を説明するための図である。
図9】第1実施形態の焼灼装置の位置合わせをする方法を説明するための図である。
図10】第2実施形態の焼灼システムの構成を説明するためのブロック図である。
図11】第2実施形態のカテーテルの構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
==焼灼システム==
図1は、本実施形態の焼灼システム1の構成を説明するためのブロック図である。焼灼システム1は、光源装置2と、焼灼装置3とを備える。
【0010】
[光源装置]
光源装置2は、生体組織を焼灼するための光を生成する装置である。光源装置2は、焼灼する組織の光吸収/散乱特性に合わせた波長領域の光を生成する光源を有する。具体的に光源は、レーザ光源、LED光源、ハロゲンランプ、キセノンランプ等が用いられる。
【0011】
[焼灼装置]
焼灼装置3は、光源装置2からの光を集光し、生体組織に対して光を出射する装置である。出射された光により、生体組織が焼灼される。焼灼装置3は、プローブ30と、カテーテル31とを備えている。以下、図2図6を参照してプローブ30及びカテーテル31について説明する。図2は、本実施形態の焼灼装置3の構成を説明するための図であり、図3図5は、本実施形態のプローブ30の構成を説明するための断面図であり、図6は、本実施形態のカテーテル31の構成を説明するための断面図である。なお、以下の説明においては、図2~6に示す互いに直交するx軸、y軸及びz軸からなる直交座標系を用いる。
【0012】
(プローブ)
プローブ30は、ヘッド部300と、導光部301とを有する(図2、3、5)。
【0013】
導光部301は、例えば光ファイバーのような、光源装置2からの光を伝搬させる長尺の部材である。導光部301の一端は、光源装置2に接続される(図示せず)。導光部301の他端は、ヘッド部300に接続される(図2~5)。光源装置2から導光部301の一端に入射した光は、導光部301を伝搬し、ヘッド部300の内部に入射する。
【0014】
以下の説明では、導光部301の一端を「導光部301の先端部」という。また、導光部301の先端部において光源装置2からの光が出射する面を「端面301a」という。本実施形態では、導光部301の端面301aは、平坦である。
【0015】
ヘッド部300は、生体内に挿入され、生体組織O(図2参照)の所定範囲を焼灼するための光を出射する部材である。本実施形態のヘッド部300は、中心軸Xを有し、中心軸Xに対して略回転対称である。図2~5において、ヘッド部300は、中心軸Xがx軸に平行になるように示されている。
【0016】
ヘッド部300は、中心軸Xの方向に長さ方向を有し、中心軸Xの方向に互いに離れた2つの端部を有する筒状である。ヘッド部300の一方の端部は閉じている。
【0017】
ヘッド部300の一方の端部は、凸状であって、半楕円体の形状を有する。ヘッド部300の他方の端部には、後述する入射口300aが設けられている。ヘッド部300の本体部分は、中心軸Xに対して回転対称な円筒状である。
【0018】
以下の説明では、ヘッド部300の端部のうち、閉じている方の端部を、「ヘッド部300の先端部」という。また、後述する入射口300aが設けられる方の端部を、「ヘッド部300の基端部」という。
【0019】
ヘッド部300は、入射口300aと、出射口300bと、第1の反射部300cと、第1の被固定具32aと、第2の被固定具32bとを有する。
【0020】
入射口300aは、ヘッド部300に設けられた開口である。入射口300aに導光部301の端部を挿入することにより、ヘッド部300と、導光部301とが接続される。これによって、導光部301の端面301aから出射された光は、ヘッド部300の内部に入射する。
【0021】
本実施形態において、入射口300aの形状は、所定の半径を有する円である。入射口300aは、中心軸Xが入射口300aの中心を通るように配置されている。本実施形態では、所定の半径とは、導光部301の半径に等しい。
【0022】
出射口300bは、ヘッド部300の側面に設けられた開口である。本実施形態では、出射口300bは、ヘッド部300の本体部分の側面に設けられている。出射口300bは、ヘッド部300の内部に入射した光を、外部に出射させる。ヘッド部300の内部に入射した光は、導光部301の端面301aから出射した、光源装置2からの光である。本実施形態では、出射口300bの形状は、中心軸Xに平行な長辺を有する長方形である(図4)。
【0023】
第1の反射部300cは、ヘッド部300内に入射した光を反射する。第1の反射部300cは、ヘッド部300の内周面に亘って設けられている(図3、5)。第1の反射部300cは、光を反射する材料で形成される。光源装置2で生成される光が可視光の波長域である場合、光を反射する材料としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)等の金属材料が用いられる。光源装置2で生成される光が赤外光の波長域である場合、光を反射する材料としては、金(Au)等の金属材料が用いられる。
【0024】
ヘッド部300の内部に入射した光は、第1の反射部300cにおいて反射を繰り返しながら伝搬する。ヘッド部300の内部を伝搬する光の一部は、出射口300bに到達し、出射口300bから外部に出射する。出射口300bから出射した光によって、生体組織Oが焼灼される。
【0025】
第1の被固定具32aは、カテーテル31の、後述する第1の固定具33aに対して固定される部材である。
【0026】
第1の被固定具32aは、ヘッド部300の、先端部近傍に設けられている。本実施形態において、第1の被固定具32aは、環状である。第1の被固定具32aは、ヘッド部300の中心軸Xに対して回転対称となるように、ヘッド部300の外周面に配置されている。
【0027】
本実施形態では、第1の被固定具32aの材質は、磁性体である。磁性体としては、常磁性体であっても強磁性体であってもよいが、後述する第1の固定具33aの材質に応じて選択される。本実施形態では、第1の被固定具32aの材質は、常磁性体である。
【0028】
第2の被固定具32bは、カテーテル31の、後述する第2の固定具33bに対して固定される部材である。
【0029】
第2の被固定具32bは、ヘッド部300の、基端部近傍に設けられている。第2の被固定具32bは、直方体の形状である。
【0030】
本実施形態では、第2の被固定具32bの材質は、磁性体である。磁性体としては、常磁性体であっても強磁性体であってもよいが、後述する第2の固定具33bの材質に応じて選択される。本実施形態では、第2の被固定具32bの材質は、自発磁化を持つ強磁性体である。図2等には、第2の被固定具32bに起因する磁力線の一部が示されている。
【0031】
ここで、出射口300bと、第1の被固定具32aと、第2の被固定具32bとの位置関係について説明する。出射口300bは、第1の被固定具32aと、第2の被固定具32bとの間に配置されている(図2、3)。出射口300bと、第2の被固定具32bとは、中心軸Xに対する方位角が同じになるように配置されている。
【0032】
以上、本実施形態のプローブ30について説明したが、上記は一例であって、これに限るものではない。例えば、本実施形態のヘッド部300は、円筒状の部分を有するが、円筒状に限らず、多角柱状の部分を有していてもよい。また、本実施形態の出射口300bの形状は長方形であるが、これに限らず、焼灼したい生体組織の範囲に応じて、適宜設計されればよい。また、出射口300bの数は1に限らず、複数であってもよい。
【0033】
(カテーテル)
カテーテル31は、本体部310と、第1の固定具33aと、第2の固定具33bと、第2の反射部311とを有する。
【0034】
本体部310は、長尺な管状の部材である。本体部310は、可撓性を有する樹脂材料等によって形成される。本実施形態では、本体部310は、透明な材料によって形成される。本体部310の端部のうち、生体内に挿入される側の端部を「カテーテル31の先端部」といい、術者が把持する側の端部を「カテーテル31の基端部」という。
【0035】
第1の固定具33aは、本体部310の先端部の開口部分に埋め込まれている。本実施形態では、第1の固定具33aの材質は、磁性体である。磁性体としては、常磁性体であっても強磁性体であってもよいが、第1の被固定具32aと引き合う磁性体が選択される。
【0036】
本実施形態では、第1の固定具33aの材質は、自発磁化を持つ強磁性体である。図2等には、第1の固定具33aに起因する磁力線の一部が示されている。これによって、第1の固定具33aは、第1の被固定具32aと磁力で引き合い、第1の被固定具32aの位置が固定される。
【0037】
第2の固定具33bは、カテーテル31上において、第1の固定具33aと間隔を置いて設けられている。第1の固定具33aと、第2の固定具33bとの間隔は、第1の被固定具32aと、第2の被固定具32bとの間隔に略等しくなるように決定される。
【0038】
第2の固定具33bは、環状の形状を有しており、カテーテル31の外周面に設けられている。本実施形態では、第2の固定具33bの材質は、磁性体である。磁性体としては、常磁性体であっても強磁性体であってもよいが、第2の被固定具32bと引き合う磁性体が選択される。本実施形態では、第2の固定具33bの材質は、常磁性体である。これによって、第2の固定具33bは、自発磁化を持つ第2の被固定具32bと磁力で引き合い、第2の被固定具32bの位置が固定される。
【0039】
なお、「被固定具」と、「固定具」とは、入れ替わる可能性がある。本明細書において、第1の被固定具32aは、「第1の固定具」の一例であり、第2の被固定具32bは、「第2の固定具」の一例であり、第1の固定具33aは、「第3の固定具」の一例であり、第2の固定具33bは、「第4の固定具」の一例である。
【0040】
なお、本実施形態では、第1の被固定具32aと、第1の固定具33aとが磁性体である態様を示した。しかし、第1の被固定具32aと、第1の固定具33aとの位置を互いに固定することができる手段であれば、磁力以外の手段であってもよい。第2の被固定具32bと、第2の固定具33bとについても同様である。
【0041】
また、本実施形態では、第1の被固定具32aが常磁性体であり、第1の固定具33aが強磁性体である態様を示した。しかし、第1の被固定具32aと、第1の固定具33aとが磁力で引き合う構成であれば、この例に限られるものではない。
【0042】
例えば、第1の被固定具32aが強磁性体であり、第1の固定具33aが常磁性体であってもよい。または、第1の被固定具32aと、第1の固定具33aとがいずれも強磁性体であってもよい。この場合、第1の被固定具32aと、第1の固定具33aとが互いに引き合うように互いの向きを決定すればよい。第2の被固定具32bと、第2の固定具33bとについても同様である。
【0043】
第2の反射部311は、出射口300bから出射し、生体組織Oを透過した光を生体組織Oに向けて反射させる。第2の反射部311は、第1の固定具33aと、第2の固定具33bとの間に配置されている。なお、第2の反射部311は、第1の固定具33aと、第2の固定具33bとがそれぞれ、第1の被固定具32aと、第2の被固定具32bとの位置を固定した状態で(図2)、少なくとも出射口300bと対向する位置に設けられればよい。
【0044】
本実施形態の第2の反射部311は、第1の固定具33aと、第2の固定具33bとの間の範囲において、本体部310の内周面に亘って形成されている。第2の反射部311は、第1の反射部300cと同様の材料で形成される。なお、第2の反射部311は、本体部310の内周面のみではなく、本体部310の中空部に第1の反射部300cと同様の材料が充填されることによって形成されてもよい。また、本体部310が光を遮断する材料で形成されている場合、第2の反射部311は、本体部310の内周面に亘って形成されればよい。
【0045】
==位置合わせについて==
本実施形態の焼灼システム1を用いた生体組織Oの焼灼は、図2に示した焼灼装置3の状態において実行される。以下では、図2に示した焼灼装置3の状態を「位置合わせがされた状態」と呼ぶ。また、生体組織Oの面のうち、焼灼の際にヘッド部300が配置される側の面を「表面」と呼び、カテーテルが配置される側の面を「裏面」と呼ぶ。図2図7~9を参照して、位置合わせがされた状態を実現するための手順の一例について説明する。
【0046】
先ず、カテーテル31がたとえば、大腿動脈から挿入され、焼灼したい生体組織O(たとえば、左心室の内側)配置される(図7)。このとき、第2の反射部311が、焼灼したい生体組織Oの範囲に対向するように、カテーテル31が配置される。
【0047】
次いで、プローブ30が生体内に挿入され、焼灼したい生体組織O(たとえば、左心室の外側)に配置される。そして、プローブ30のヘッド部300の第1の被固定具32aの位置が第1の固定具33aに近づくと、第1の固定具33aに引き合う力を受け、第1の固定具33aに対して固定される(図8)。
【0048】
なお、本実施形態では、第1の被固定具32aと、第2の固定具33bとは共に常磁性体であって磁化を帯びていない。よって、第1の被固定具32aが、誤って第2の固定具33bに対して固定されることはない。
【0049】
次いで、プローブ30のヘッド部300の第2の被固定具32bの位置が、第2の固定具33bに対して固定される。具体的には、図8の状態から、ヘッド部300は、ヘッド部300の中心軸Xが生体組織Oの表面に対して平行になるよう、第1の固定具33aの位置が固定されたまま姿勢が変更される。(図9)。
【0050】
次いで、第2の被固定具32bが、第2の固定具33bに対向する位置に移動するまで、ヘッド部300が、ヘッド部300の中心軸Xを回転軸として回転される。これによって、第2の被固定具32bの位置は、第2の固定具33bに対して固定される。
【0051】
なお、本実施形態の第1の被固定具32aは、環状である。従って、ヘッド部300が、図9の状態から中心軸Xを回転軸として回転しても、第1の被固定具32aと、第1の固定具33aとは、互いに外れずに固定された状態を維持する。
【0052】
以上の手順によって、図2に示す位置合わせがされた状態となる。図2に示した焼灼装置3の状態は、第1の被固定具32aが第1の固定具33aに対して固定され、第2の被固定具32bが第2の固定具33bに対して固定された状態である。つまり、ヘッド部300と、カテーテル31とが、生体組織Oを挟んだ状態で、2点において互いに固定された状態である。
【0053】
なお、前述のように、出射口300bと、第2の被固定具32bとは、中心軸Xに対して方位角が同じになるように配置されている。従って、位置合わせがされた状態において、出射口300bは、焼灼したい生体組織Oの範囲に位置している。つまり、位置合わせがされた状態になれば、出射口300bは、自ずと焼灼したい生体組織Oの範囲に位置する。
【0054】
この状態で、出射口300bから光を出射させることにより、生体組織Oが焼灼される。更に、この状態において、焼灼したい生体組織Oの範囲は、プローブ30と、カテーテル31との間に挟持されることによって、厚さが均一になる。これによって、焼灼したい生体組織Oの範囲を、均一に焼灼することが可能となる。
【0055】
なお、上の例では、カテーテル31が生体組織Oに対する所定の位置に配置され、その後にヘッド部300の位置合わせがされる態様を示したが、これに限られるものではない。これとは逆に、ヘッド部300が生体組織Oに対する所定の位置に配置され、その後にカテーテル31の位置合わせがされてもよい。
【0056】
<第2実施形態>
図10は、本実施形態の焼灼システム4の構成を説明するブロック図である。本実施形態の焼灼システム4は、第1実施形態と比べると、制御装置6を更に備える。更に、本実施形態の焼灼装置5は、カテーテル51の構成が異なっている。
【0057】
(カテーテル)
図11は、本実施形態のカテーテル51の構成を説明するための断面図である。本実施形態のカテーテル51は、光センサ510を更に有する。光センサ510は、出射口300bから出射した光を検出する。光センサ510は、検出した光の照度に応じた信号を、制御装置6に出力する。
【0058】
光センサ510は、本体部310の中空部の内部において、第2の反射部311と第2の固定具33bとの間に設けられている。なお、光センサ510の配置はこれに限定されるものではなく、出射口300bから出射した光を検出することができる配置であればよい。
【0059】
[制御装置]
制御装置6は、光センサ510が検出した光の照度の出力結果に応じて、光源装置2が生成する光の照度を制御する。光センサ510による出力結果が予め設定された照度よりも低ければ、制御装置6は、光源装置2が生成する光の照度を上げるよう、光源装置2を制御する。一方、光センサ510による出力結果が予め設定された照度よりも高ければ、制御装置6は、光源装置2が生成する光の照度を下げるよう、光源装置2を制御する。これによって、焼灼したい生体組織Oの範囲を、更に均一に焼灼することができる。
【0060】
<第3実施形態>
本実施形態の焼灼システムは、第2実施形態と比べると、制御装置の処理が異なっている。
【0061】
本実施形態の制御装置は、光センサ510が検出した光の分光特性の出力結果に応じて、光源装置2が生成する光の分光特性を制御する。具体的に、光センサ510が検出した光の分光特性が予め設定された分光特性と異なる場合、制御装置は、予め設定された分光特性となるよう光源装置2を制御する。
【0062】
例えば、光センサ510が検出した光のある波長帯の照度が、予め設定された照度に対して不足している場合、制御装置は、照度が不足している波長帯の光の照度を上げるよう、光源装置2を制御する。一方、光センサ510が検出した光のある波長帯の照度が、予め設定された照度に対して過剰である場合、制御装置は、照度が過剰である波長帯の光の照度を下げるよう、光源装置2を制御する。
【0063】
このように光源装置2を制御することにより、生体組織に対して最適な分光特性を有する光を照射することができる。最適な分光特性を有する光を用いることにより、組織の焼灼温度を安定化させ、組織表面を焦がすことなく、均一に焼灼することができる。
【0064】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【0065】
<まとめ>
以上、第1実施形態の焼灼システム1において、焼灼装置3は、生体内に挿入され、生体組織Oを焼灼するための光を出射するヘッド部300を有するプローブ30と、プローブ30との間に生体組織Oを挟むことにより生体組織Oを支持する長尺のカテーテル31と、を備えた生体組織Oの焼灼装置3であって、プローブ30のヘッド部300は、第1の被固定具32aと、第2の被固定具32bと、第1の被固定具32aと、第2の被固定具32bとの間に配置され、光を出射させる出射口300bとを有し、カテーテル31は、第1の被固定具32aを固定する第1の固定具33aと、第2の被固定具32bを固定する第2の固定具33bとを有する。第2実施形態についても同様である。
【0066】
このような構成によれば、焼灼したい生体組織をプローブ30とカテーテル31の間に挟むことができる。よって、焼灼したい生体組織Oの範囲の厚さが部分的に異なる場合であっても、焼灼したい生体組織Oの厚さを略均一、かつ、挟み込むことで、組織が圧迫され、組織の厚みが薄くなることで、プローブからの光が透過しやすくすることができる。この状態で、焼灼装置3が、生体組織Oに対して光を照射することにより、焼灼したい生体組織Oの範囲を、均一かつ、組織の断面を貫通して焼灼することが可能となる。
【0067】
また、第1の被固定具32aと第1の固定具33aとは、磁力で引き合い、第2の被固定具32bと第2の固定具33bとは、磁力で引き合う。これにより、生体内へ挿入したカテーテルの位置が判らなくても、磁石の吸着力により、確実な位置合わせが可能となる。
【0068】
また、カテーテル31は、第1の固定具33aと、第2の固定具33bとの間に配置され、出射口300bから出射した光を生体組織Oに向けて反射させる第2の反射部311を更に有する。このような構成によれば、生体組織Oの両面から、焼灼のための光を照射することができる。従って、焼灼したい生体組織Oの範囲の厚さが部分的に異なる場合に、他の部分と比べて厚い部分も第2の反射部311の光が再び生体組織へ戻ることにより、生体組織の内側の光量が増加する。これによって、照射効率が向上し、生体組織Oの厚さ方向に更に均一に焼灼することができる。
【0069】
第2実施形態の焼灼システム4において、カテーテル51は、出射口300bから出射した光を検出する光センサ510を更に有する。このような構成によれば、光センサ510から出力された光の照度に基づいて、カテーテル51の近傍の光の照度が所定の値になるように、出射口300bから出射する光の照度を調整することができる。これによって、焼灼したい生体組織Oの範囲を、最適な照射光量で、組織の焼灼温度を安定化させ、組織表面を焦がすことなく、均一に焼灼することができる。
【0070】
第2実施形態の焼灼システム4において、上記焼灼装置5と、出射口300bから出射する光を生成する光源装置2と、光センサ510が検出した光の照度の出力結果に応じて、光源装置2が生成する光の照度を制御する制御装置6とを備える。このような構成によれば、光センサ510から出力された光の照度に基づいて、カテーテル51の近傍の光の照度が所定の値になるように、出射口300bから出射する光の照度を自動的に調整することができる。これによって、焼灼したい生体組織Oの範囲を、最適な照射光量で、組織の焼灼温度を安定化させ、組織表面を焦がすことなく、均一に焼灼することができる。更に、焼灼システム4の利便性が向上する。
【0071】
第3実施形態の焼灼システムにおいて、上記焼灼装置5と、出射口300bから出射する光を生成する光源装置2と、光センサ510が検出した光の分光特性の出力結果に応じて、光源装置2が生成する光の分光特性を制御する制御装置とを備える。このような構成によれば、光センサ510から出力された光の分光特性に基づいて、カテーテル51の近傍において波長帯に応じた光量が所定の値になるように、出射口300bから出射する光の分光特性を自動的に調整することができる。よって、生体組織に対して最適な分光特性を有する光を照射することができる。最適な分光特性を有する光を用いることにより、組織の焼灼温度を安定化させ、組織表面を焦がすことなく、均一に焼灼することができる。
【符号の説明】
【0072】
1:焼灼システム
2:光源装置
3:焼灼装置
30:プローブ
300:ヘッド部
300a:入射口
300b:出射口
300c:第1の反射部
301:導光部
301a:端面
31:カテーテル
310:本体部
311:第2の反射部
32a:第1の被固定具
32b:第2の被固定具
33a:第1の固定具
33b:第2の固定具
4:焼灼システム
5:焼灼装置
51:カテーテル
510:光センサ
6:制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11