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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】魚介類用水分除去装置
(51)【国際特許分類】
   A22C 25/00 20060101AFI20250218BHJP
【FI】
A22C25/00 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021139777
(22)【出願日】2021-08-30
(65)【公開番号】P2023029134
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2021134811
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】597175868
【氏名又は名称】フィレスタ販売株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】平口 克美
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-130479(JP,U)
【文献】特開2000-300167(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0215189(US,A1)
【文献】特開平08-296968(JP,A)
【文献】特開平05-049387(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0050872(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 5/00-29/04
A23B 4/00- 5/22
F26B 1/00-25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚介類を移送するコンベア機構と、
前記コンベア機構によって移送される魚介類に対して空気を吹き付けて当該魚介類表面の水分を吹き飛ばすエア噴霧機構と、
を具備し、
前記エア噴霧機構は、
前記コンベア機構によって移送される魚介類の下側に設置されて当該移送される魚介類に下側からエアを吹き付ける下側エアノズルと、当該下側エアノズルを前記コンベア機構の前記魚介類を移送する方向に交差する方向に揺動させる下側揺動機構とを有する下側エア噴霧部と、
前記コンベア機構によって移送される魚介類の上側に設置されて当該移送される魚介類に上側からエアを吹き付ける上側エアノズルと、当該上側エアノズルを前記コンベア機構の前記魚介類を移送する方向に交差する方向に揺動させる上側揺動機構とを有する上側エア噴霧部と、
を有して構成され、
前記コンベア機構は、
無端帯状で多数の通気孔を有し、上面に前記魚介類を載置して移送する下側コンベアベルトを有する下側コンベア部と、
無端帯状で多数の通気孔を有し、前記下側コンベアベルトの上部に設置されて下面が前記魚介類の移送方向に移動する上側コンベアベルトを有する上側コンベア部と、
を有して構成され、
前記エア噴霧機構の下側エアノズルは、前記魚介類の移送方向に移動する前記下側コンベアベルトの下側に設置されて当該下側コンベアベルト上に載置されて移送される魚介類に揺動しながら下側からエアを吹き付け、
前記エア噴霧機構の上側エアノズルは、前記魚介類の移送方向に移動する前記上側コンベアベルトの上側に設置されて前記下側コンベアベルト上に載置されて移送される魚介類に揺動しながら上側からエアを吹き付け、
且つ前記下側エアノズルから噴出させるエアの風量又は風力を、前記上側エアノズルから噴出させるエアの風量又は風力よりも多く又は強くし、
さらに前記上側コンベア部を上下動させて、対向する前記上側コンベアベルトと前記下側コンベアベルト間の間隔を、前記下側コンベアベルト上に載置された魚介類の上面から前記上側コンベアベルトの下面が少し離れた位置と、弱く当接する位置と、強く当接する位置と、に調整する上下動機構を設置し、
当該上下動機構は、前記上側コンベア部を、荷重に応じて伸縮する弾性体を介して吊り下げて上下動する吊下げ機構を有することで、当該上部コンベアベルトの下面を前記下側ベルトコンベア上に載置された魚介類に当接させる位置に設置した際の押圧力を一定の押圧力に自動調節する
ことを特徴とする魚介類用水分除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚や軟体動物などの魚介類の表面に付着する水分を除去する魚介類用水分除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば三枚下ろし機によって3枚に下ろした魚の切り身を、合成樹脂フィルムによって真空包装(真空パック)する前に、当該切り身の表面に付着している水分(血液を含む)を除去しておく必要があるが、これは以下の理由などによる。即ち、真空包装は、2枚の合成樹脂フィルムの間に魚の切り身を挟み込み、両フィルム間を真空にしながらその周囲を密封することで行われるが、このときもしも切り身表面に水分が付着したまま真空包装を行うと、前記切り身に付着していた水分や血液が切り身の周囲の両フィルムを密着した部分に引き出され、例えば当該密着面に生じる皺の部分に血液が残って外方から見えて見た目が良くなくなったり、両フィルム間の密着が阻害されたり、切り身に残った水分や血液が鮮度保持に悪影響を与える虞が生じたりするからである。
【0003】
このため従来は、真空包装する前の魚の切り身の表面を、布タオルやペーパータオルを用いて1つずつ手作業によって拭き取っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-109971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、手作業による拭き取り作業は、処理できる切り身の数が制限されて効率的とは言えず、また人件費もかさんでしまう。
【0006】
また布タオルを用いて魚の切り身表面の水分を拭き取る作業を繰り返し行うと、布タオルに付着した雑菌が切り身に付着し、衛生上問題が生じる虞があり、また水分などを含んで切り身を拭けなくなると新しい布タオルに交換するため多数枚の布タオルが必要になり、また使用済みの布タオルはこれを洗って乾かさなければならないのでそのための工数も増加してしまうという問題もあった。上記衛生上の問題は、食品衛生法に基づいて施行されたHACCP(ハサップ)上からも解決が求められる。
【0007】
一方、ペーパータオルを用いて魚の切り身表面の水分を拭き取る作業を行うと、ペーパータオルは使い捨てのため、多数枚のペーパータオルが必要となり、コストが高くなってしまうという問題もあった。
【0008】
そこで上記魚の切り身をベルトコンベア上に載せ、当該切り身を移動しながらエアノズルを用いて切り身表面の水分などを吹き飛ばす水分除去装置も使用されている。
【0009】
しかし従来の水分除去装置は、切り身に対して満遍なくエアを吹き付けにくく、また満遍なくエアを吹き付けようとすると多数のエアノズルを設置しなければならず、使用するエアの量も多くなってしまう。また魚の切り身には、大きいものから小さいものまで種々あるが、このような種々の大きさや厚みの切り身それぞれに対して、容易に、最適な状態でエアを吹き付けできる水分除去装置はなかった。
【0010】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、魚や軟体動物などの魚介類の表面に付着する水分を、効率的且つ容易に除去することができる魚介類用水分除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる魚介類用水分除去装置は、魚介類を移送するコンベア機構と、前記コンベア機構によって移送される魚介類に対して空気を吹き付けて当該魚介類表面の水分を吹き飛ばすエア噴霧機構と、を具備し、前記エア噴霧機構は、前記コンベア機構によって移送される魚介類の下側に設置されて当該移送される魚介類に下側からエアを吹き付ける下側エアノズルと、当該下側エアノズルを前記コンベア機構の前記魚介類を移送する方向に交差する方向に揺動させる下側揺動機構とを有する下側エア噴霧部と、前記コンベア機構によって移送される魚介類の上側に設置されて当該移送される魚介類に上側からエアを吹き付ける上側エアノズルと、当該上側エアノズルを前記コンベア機構の前記魚介類を移送する方向に交差する方向に揺動させる上側揺動機構とを有する上側エア噴霧部と、を有して構成され、前記コンベア機構は、無端帯状で多数の通気孔を有し、上面に前記魚介類を載置して移送する下側コンベアベルトを有する下側コンベア部と、無端帯状で多数の通気孔を有し、前記下側コンベアベルトの上部に設置されて下面が前記魚介類の移送方向に移動する上側コンベアベルトを有する上側コンベア部と、を有して構成され、前記エア噴霧機構の下側エアノズルは、前記魚介類の移送方向に移動する前記下側コンベアベルトの下側に設置されて当該下側コンベアベルト上に載置されて移送される魚介類に揺動しながら下側からエアを吹き付け、前記エア噴霧機構の上側エアノズルは、前記魚介類の移送方向に移動する前記上側コンベアベルトの上側に設置されて前記下側コンベアベルト上に載置されて移送される魚介類に揺動しながら上側からエアを吹き付け、且つ前記下側エアノズルから噴出させるエアの風量又は風力を、前記上側エアノズルから噴出させるエアの風量又は風力よりも多く又は強くし、さらに前記上側コンベア部を上下動させて、対向する前記上側コンベアベルトと前記下側コンベアベルト間の間隔を、前記下側コンベアベルト上に載置された魚介類の上面から前記上側コンベアベルトの下面が少し離れた位置と、弱く当接する位置と、強く当接する位置と、に調整する上下動機構を設置し、当該上下動機構は、前記上側コンベア部を、荷重に応じて伸縮する弾性体を介して吊り下げて上下動する吊下げ機構を有することで、当該上部コンベアベルトの下面を前記下側ベルトコンベア上に載置された魚介類に当接させる位置に設置した際の押圧力を一定の押圧力に自動調節することを特徴としている。
魚介類としては、ブリ、カツオ、アジ、イワシなどの大型から小型までの各種の魚、イカ、タコなどの軟体動物など、種々の魚介類が含まれる。
本発明によれば、上側エアノズルと下側エアノズルを揺動させながら魚介類の表面の水分を吹き飛ばして除去するので、少ないノズルの数で、魚介類を移送する方向に交差するコンベア機構の幅方向全体にわたって、満遍なくエアを噴射することができ、これによって、少ない本数のエアノズルによって、前記幅方向にばらついて位置している何れの魚介類に対しても、均等且つ確実にこれら魚介類表面の水分(血液を含む)を満遍なく除去(脱水)することができる。またエアノズルの本数が少なくて済むので、使用するエアの量も削減でき、エアを供給するコンプレッサなどのエア供給装置の小型化を図ることも出来る。
【0012】
本発明によれば、下側コンベアベルトと上側コンベアベルトの間に魚介類を挟んで移送できるので、小さくて軽い魚介類の場合でも、上側エアノズルと下側エアノズルから吹き付けられるエアによって当該魚介類が吹き飛んだり、バタついたりすることを防止でき、スムーズに水分の除去を行うことができる。
なお上側コンベアベルトは必ずしも魚介類の上面に触れさせる必要はなく、場合によっては魚介類の上面から少し離して設置しても良い。重量の重い魚介類の場合、エアが噴き付けられても吹き飛んだりしないので、そのような魚介類に対しては上側コンベアベルトを離しておいてもよく、その場合魚介類に上側コンベアベルトの跡がついたりすることもなく、より好適である。
【0013】
本発明によれば、上側コンベアベルトと下側コンベアベルト間の間隔を調整できるので、魚介類の大きさや厚みや重さや肉質や表面状態(例えば皮側か身側か)に応じて、上側コンベアベルトを魚介類から離したり、弱く当接させたり、強く当接させたりすることができる。
【0014】
本発明によれば、上側コンベア部に弾性体を設けたので、上側コンベアベルトが魚介類に当接して移送する際の押圧力を一定の押圧力に自動的に調節でき、魚介類の表面を傷めることなく挟持して移送することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、魚介類の表面に付着する水分を、効率的且つ容易、確実、均等に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】魚介類用水分除去装置1-1を示す概略構成図である。
図2】下側エアノズル80-1(上側エアノズル80-2)の揺動動作説明図である。
図3】魚介類用水分除去装置1-1の動作説明図である。
図4図1に示す魚介類用水分除去装置1-1の詳細構成図である。
図5】下側エア噴霧部80-1の拡大斜視図である。
図6】上側エア噴霧部80-2(但しモータ98-2の記載省略)の拡大斜視図である。
図7】魚介類用水分除去装置1-2の概略構成図(動作説明図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる魚介類用水分除去装置1-1の概略構成図である。同図に示すように魚介類用水分除去装置1-1は、魚介類を移送するコンベア機構10(下側コンベア部10-1と上側コンベア部10-2)と、コンベア機構10によって移送される魚介類に対して空気を吹き付けて当該魚介類表面の水分を吹き飛ばすエア噴霧機構80(下側エア噴霧部80-1と上側エア噴霧部80-2)とを具備して構成されている。なお以下の説明において、「上」とは下側コンベア部10-1から上側コンベア部10-2を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0018】
前記コンベア機構10は、無端帯状で多数の通気孔を有し上面に前記魚介類を載置して移送する下側コンベアベルト11-1と、当該下側メッシュコンベアベルト11-1の上面を前記魚介類の移送方向に駆動する下側駆動機構21-1を有する下側コンベア部10-1と、無端帯状で多数の通気孔を有し前記下側コンベアベルト11-1の上部に設置される上側コンベアベルト11-2と、当該上側コンベアベルト11-2の下面を前記魚介類の移送方向に駆動する上側駆動機構21-2を有する上側コンベア部10-2と、を有して構成されている。下側コンベアベルト11-1及び上側コンベアベルト11-2として本実施形態では、メッシュコンベアベルトを使用している。
【0019】
前記エア噴霧機構80は、前記下側コンベア部10-1側に設置される下側エア噴霧部80-1と、前記上側コンベア部10-2側に設置される上側エア噴霧部80-2とを有して構成されている。
【0020】
下側エア噴霧部80-1は、前記下側コンベア部10-1の上面によって移送される魚介類の下側に設置されて当該移送される魚介類に下側から下側コンベアベルト11-1(その上面)を介してエアを吹き付ける下側エアノズル81-1と、当該下側エアノズル81-1を前記魚介類を移送する方向に交差する方向に揺動させる下側揺動機構91-1とを有している。
【0021】
上側エア噴霧部80-2は、前記移送される魚介類の上側に設置されて当該移送される魚介類に上側から上側コンベアベルト11-2(その下面)を介してエアを吹き付ける上側エアノズル81-2と、当該上側エアノズル81-2を前記魚介類を移送する方向に交差する方向に揺動させる上側揺動機構91-2とを有している。
【0022】
下側揺動機構91-1(上側揺動機構91-2)による下側エアノズル81-1(上側エアノズル81-2)の揺動は、図2に示すように、下側エアノズル81-1(上側エアノズル81-2)が下側コンベアベルト11-1の上面(上側コンベアベルト11-2の下面)の幅方向に揺動するように行われる。
【0023】
図1に戻って、上側コンベア部10-2には、この上側コンベア部10-2を上下動させて、上側コンベアベルト11-2と下側コンベアベルト11-1の対向面間の間隔を調整する上下動機構15が設置されている。上下動機構15は、上側コンベア部10-2を、荷重に応じて伸縮する弾性体(この実施形態ではコイルばね)17を介して吊り下げて上下動する吊下げ機構19を有している。
【0024】
次に魚介類用水分除去装置1-1の動作を説明する。図3は魚介類用水分除去装置1-1の動作説明図である。同図に示すように、まず上下動機構15によって上側コンベア部10-2を所定の位置まで下降して、対向する下側コンベアベルト11-1と上側コンベアベルト11-2の隙間を、これから水分除去しようとする魚介類F1を所望の力で挟持できる位置に設置する。
【0025】
そして下側駆動機構21-1と上側駆動機構21-2の両者を駆動し、これによって下側コンベアベルト11-1と上側コンベアベルト11-2を、同一速度で、両者が対向する面が同一方向に移動するように駆動する。また下側エアノズル81-1と上側エアノズル81-2の両者からエアを噴射させると同時に、下側揺動機構91-1と上側揺動機構91-2によって両者を揺動させる。
【0026】
そして、魚介類投入口100側から魚介類F1を順番に投入して行くと、投入された魚介類F1は、対向する下側コンベアベルト11-1と上側コンベアベルト11-2の間に適度な力で挟持されながら、下流側に移送されて行き、その移送途中において、揺動する下側エアノズル81-1から魚介類F1の下面に下側からエアを吹き付け、同時に、揺動する上側エアノズル80-2から移送される魚介類F1の上面に上側からエアを吹き付け、魚介類F1の表面に付着する水分(水滴や血液など)を吹き飛ばして除去、即ち表面の水分除去を行う。水分除去が行われた魚介類F1は、魚介類排出口105から装置外部に排出される。なお干物のように魚介類を乾燥させないため、前記吹き付けるエアは、常温(室温、乾燥させない温度、例えば15℃)のエアを用いる。
【0027】
以上のように、魚介類用水分除去装置1-1によれば、下側エアノズル81-1と上側エアノズル81-2を揺動させながら魚介類F1の表面の水分を吹き飛ばして除去するので、少ないノズルの数で、下側コンベアベルト11-1と上側コンベアベルト11-2の幅方向全体にわたって、満遍なくエアを噴射することができ、これによって、少ない本数のエアノズルによって、前記幅方向にばらついて位置している何れの魚介類F1に対しても、均等且つ確実にこれら魚介類F1表面(上下面)の水分(血液を含む)を満遍なく除去(脱水)することができる。
【0028】
また下側コンベアベルト11-1と上側コンベアベルト11-2の対向面間に魚介類F1を挟んで移送できるので、小さくて軽い魚介類F1の場合でも、下側エアノズル81-1と上側エアノズル81-2から吹き付けられるエアによって当該魚介類F1が吹き飛んだり、バタついたりすることを防止でき、スムーズに水分除去を行うことができる。
【0029】
なお上側コンベアベルト11-2は必ずしも魚介類F1の上面に触れさせる必要はなく、魚介類F1の上面から少し離して設置しても良い。即ち、上下動機構15によって下側コンベアベルト11-1と上側コンベアベルト11-2の対向面間の間隔を調整することで、魚介類F1の大きさや厚みや重さや肉質や表面状態(例えば皮側か身側か)に応じて、上側コンベアベルト11-2の下面を魚介類F1から離したり、弱く当接させたり、強く当接させたりする。また上側コンベアベルト11-2の下面を魚介類F1に当接した際、弾性体17によって上側コンベアベルト11-2が魚介類F1に当接して移送される際の押圧力を一定の押圧力に自動的に調節でき、魚介類F1の表面を傷めることなく挟持して移送することができる。
【0030】
図4は、図1に示す魚介類用水分除去装置1-1の詳細構成図である。図4に示す魚介類用水分除去装置1-1において、前記図1に示す魚介類用水分除去装置1-1について説明した部分は、その説明を省略する。
【0031】
図4に示すように、魚介類用水分除去装置1-1は、その全体が矩形状に組まれた枠体110によって囲まれており、各構成部品は枠体110内に設置されている。
【0032】
下側コンベア部10-1は、1つの駆動ローラ21-1と、3つの従動ローラ23-1,25-1,27-1とを、側面から見て上辺が下辺よりも長い台形状に配置し、これら各ローラ21-1~27-1に1枚の無端帯状の下側コンベアベルト11-1を巻き回し、駆動ローラ21-1を図示しない下側ベルト駆動モータ(枠体110に固定)によって回転駆動することで、下側コンベアベルト11-1を矢印A1方向に移動させるように構成されている。
【0033】
下側エア噴霧部80-1は、回転する下側コンベアベルト11-1の上側のベルトの下側(回転するベルトの内側)に設置されている。図5は下側エア噴霧部80-1の拡大斜視図である。同図に示すように、下側エア噴霧部80-1を構成する下側エアノズル81-1の先端部83-1は、下側コンベアベルト11-1の幅方向(ベルト移動方向に交差する方向)B1に広がる扁平形状を有しており、当該先端部83-1にはその幅方向B1に向けて多数のエア噴出孔が設けられている。下側エアノズル81-1の根元部85-1には配管87-1が接続され、配管87-1のもう一方の端部には可撓性を有する図示しないエアホースが接続されている。当該エアホースは図示しないエアコンプレッサに接続される。
【0034】
下側エア噴霧部80-1を構成する下側揺動機構91-1は、図5に示すように、4節リンク機構93-1と、4節リンク機構93-1を揺動させるロッド95-1と、ロッド95-1を駆動するロッド駆動機構97-1とを具備している。4節リンク機構93-1は平行リンク機構であり、4つのリンク93a-1,93b-1,93c-1,93d-1の対向するリンクの長さがそれぞれ等しく、短い側の一方のリンク93a-1を固定用のリンクとし、短い側のもう一方のリンク93c-1を下側エアノズル取付用のリンクとし、長い側の一方のリンク93b-1をロッド95-1連結用のリンクとしている。即ち、リンク93b-1の中間位置に上方向に向かって突出するように設けたロッド取付部931-1に、ロッド95-1の一端が回動自在に取り付けられる。リンク93a-1は、図4に示すように、枠体110の一部を構成する下側揺動機構取付枠101に固定される。リンク93c-1には、前記下側エアノズル81-1の配管87-1がノズル位置調節機構88-1を介して取り付けられる。ノズル位置調節機構88-1は、これに取り付けた配管87-1を上下方向に回動して所望の位置に固定する機能を有する。
【0035】
ロッド駆動機構97-1は、モータ971-1と、モータ971-1によって回転される円板状アーム部973-1と、モータ971-1を枠体110に固定するステー975-1とを具備している。ステー975-1は、図示しない枠体110の所定位置に固定される。板状のアーム部973-1の外周近傍上面には、上方向に突出するロッド取付部977-1が突設され、前記ロッド95-1の一端に回動自在に取り付けられている。
【0036】
以上のように構成された下側揺動機構91-1において、モータ971-1を駆動すると、アーム部973-1が回転し、これによってロッド95-1がその長手方向に移動し、これによって4節リンク機構93-1が固定されたリンク93a-1に対して矢印B1方向に揺動し、下側エアノズル81-1が矢印B1方向に確実に揺動する。
【0037】
図4に示すように、上側コンベア部10-2は、1つの駆動ローラ21-2と、3つの従動ローラ23-2,25-2,27-2とを、側面から見て上辺が下辺よりも長い台形状に配置してこれらを支持部材29-2に回転自在に取り付け、各ローラ21-1~27-2に1枚の無端帯状の上側コンベアベルト11-2を巻き回し、駆動ローラ21-2を図示しない上側ベルト駆動モータ(支持部材29-2に固定)によって回転駆動することで、上側コンベアベルト11-2を矢印A2方向に移動させるように構成されている。
【0038】
上側エア噴霧部80-2は、回転する上側コンベアベルト11-2の下側のベルトの上側(回転するベルトの内側)に設置されている。図6は上側エア噴霧部80-2(但し図4に示すモータ971-2の記載を省略)の拡大斜視図である。同図に示すように、上側エア噴霧部80-2を構成する上側エアノズル81-2の先端部83-2は、上側コンベアベルト11-2の幅方向(ベルト移動方向に交差する方向)B2に広がる扁平形状を有しており、当該先端部83-2にはその幅方向B2に向けて多数のエア噴出孔が設けられている。上側エアノズル81-2の根元部には配管87-2が接続され、配管87-2のもう一方の端部には可撓性を有する図示しないエアホースが接続されている。当該エアホースは図示しない前記エアコンプレッサに接続される。
【0039】
上側エア噴霧部80-2を構成する上側揺動機構91-2は、前記図5に示す下側揺動機構91-1と同様、図6に示すように、4節リンク機構93-2と、4節リンク機構93-2を揺動させるロッド95-2と、ロッド95-2を駆動するロッド駆動機構97-2とを具備している。その構成は、上記下側揺動機構91-1と同様なので、同一の符号(但し「-1」の代わりに「-2」とする)を付し、その詳細な説明は省略する。この場合も、短い側の一方のリンク93a-2を固定用のリンクとし、短い側のもう一方のリンク93c-2を上側ノズル取付用のリンクとし、長い側の一方のリンク93b-2をロッド95-2連結用のリンクとしている。リンク93a-2は、図4に示すように、支持部材29-2に固定される。
【0040】
以上のように構成された上側揺動機構91-2において、モータ971-2を駆動すると、アーム部973-2が回転し、これによってロッド95-2がその長手方向に移動し、これによって4節リンク機構93-2が、支持部材29-2に固定されたリンク93a-2に対して矢印B2方向に揺動し、上側エアノズル81-2が矢印B2方向に確実に揺動する。
【0041】
図4に示すように、上下動機構15は、一対の上下動ロッド151,151と、上下動ロッド151,151の位置調節機構153とを有する吊下げ機構19と、上記一対の上下動ロッド151,151のそれぞれの下端と支持部材29-2間に取り付けられるコイルばねからなる弾性体17とを有して構成され、さらに上側コンベア部10-2の両側部(図4の紙面手前側と奥側)に上下方向に向けて一対ずつ設置されて枠体110に固定される上下動ガイドロッド111と、上下動ガイドロッド111を上下動自在に挿通して前記支持部材29-2に固定されるロッドガイド部材113とを有している。
【0042】
位置調節機構153は、上下動ロッド151を貫通してその上下方向の位置決めを行い固定するロッド位置決め部155と、両方のロッド位置決め部155による上下動ロッド151の位置決めを同時に行う位置決め手段157とを有している。位置決め手段157は、位置決め用ハンドル159と、位置決め用ハンドル159の回転に連動して回転して前記両ロッド位置決め部155による両上下動ロッド151の上下動を同時に同一寸法行わせる駆動用ロッド161を有する。位置決め用ハンドル159と駆動用ロッド161の間には、ギアを噛合わせてなる変速機構163が介在している。
【0043】
この位置調節機構153によれば、位置決め用ハンドル159を回動することで、両上下動ロッド151を上下方向の同一位置に同時に移動でき、これによって上側コンベア部10-2を上下動ガイドロッド111とロッドガイド部材113によって水平状態を保ちながら確実に上下方向に平行移動でき、その微調整も容易に行える。
【0044】
即ち、位置決め用ハンドル159を回動することで、上側コンベア部10-2を正確に平行移動させながら所望の位置まで下降して下側コンベアベルト11-1と上側コンベアベルト11―2の対向面間の離間距離を容易に精度よく設定し、次に図示しない下側ベルト駆動モータと図示しない上側ベルト駆動モータを同時に駆動することで、下側コンベアベルト11-1と上側コンベアベルト11-2を、それぞれ矢印A1方向と矢印A2方向に同時に同一速度で移動させる。同時にモータ971-1とモータ971-2を駆動して下側エアノズル81-1と上側エアノズル81-2を矢印B1方向(図5参照)と矢印B2方向(図6参照)に同時に揺動させ、同時に図示しない前記エアコンプレッサを駆動することで下側エアノズル81-1と上側エアノズル81-2からエアを噴出する。
【0045】
そして前述したように、図3に示す魚介類投入口100側から魚介類F1を順番に投入して行くことで、投入された魚介類F1の表面に付着する水分(水滴や血液など)を効果的に吹き飛ばして除去する。
【0046】
なお下側エアノズル81-1から噴出させるエアの風量または風力を、上側エアノズル81-2から噴出させるエアの風量または風力よりも多く又は強くすることが好ましい。これは、搬送される魚介類F1からは下方向に向かって水が落ちていくので、魚介類F1の下面の方が上面よりも水分が多く、また落下する水滴に抗してエアを噴き上げる方が噴き下げるよりも風量又は風力が必要だからである。これによって魚介類F1の上下面に噴き付ける風量と風力を適正に保つことが可能になる。このため例えば下側エアノズル81-1に設ける幅方向B1に並べられる多数のエア噴出孔を2列とすることで、当該エア噴出孔の数を、上側エアノズル81-2のエア噴出孔(1列)の数の2倍としても良い。またこの実施形態においては、下側エアノズル81-1のエア噴出孔と上側エアノズル81-2のエア噴出孔をB1,B2方向に多数設けて構成しているので、噴出されるエアがB1,B2方向に向けて幅を有する平板状の面になり、下側コンベアベルト11-1及び上側コンベアベルト11の幅方向に、より均一にエアを噴出することができる。
【0047】
ところで上記魚介類用水分除去装置1-1では、下側コンベアベルト11-1及び上側コンベアベルト11としてメッシュコンベアベルトを使用したが、無端帯状で多数の通気孔を有し、これによってベルトコンベアを介してエアを通過させることができるコンベアベルトであれば、どのような構成のものであっても良い。例えば平ベルトに多数の開口(通気孔)を設けた構成のものなどであっても良い。
【0048】
さらに、コンベアベルトには通気孔を設けず、下側コンベアベルトと上側コンベアベルトの組を複数組設けてそれらの組の間にエアノズルを設置する構成としても良い。図7はこの種の魚介類用水分除去装置1-2の概略構成図である。同図において、上記魚介類用水分除去装置1-1と同一部分には同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0049】
図7に示す魚介類用水分除去装置1-2において、上記魚介類用水分除去装置1-1と相違する点は、下側コンベア部10-1と上側コンベア部10-2の構造である。即ち、下側コンベア部10-1は、魚介類F1の移送方向に対して上流側と下流側に並べて2つの下側コンベア部10-1A,10-1Bを設置して構成されている。当該下側コンベア部10-1A,10-1Bは、それぞれ下側コンベアベルト11-1A,11-1Bと、下側コンベアベルト11-1A,11-1Bを魚介類F1の移送方向に駆動する下側駆動機構21-1A,21-1Bを有している。一方、上側コンベア部10-2は、上流側と下流側に並べて2つの上側コンベア部10-2A,10-2Bを設置して構成されている。当該上側コンベア部10-2A,10-2Bは、それぞれ上側コンベアベルト11-2A,11-2Bと、魚介類F1の移送方向に駆動する上側駆動機構21-2A,21-2Bを有している。また下側コンベアベルト11-1A,11-1Bと、上側コンベアベルト11-2A,11-2Bは、何れも、通気孔を有さない平ベルトで構成されている。
【0050】
上流側の下側コンベアベルト11-1Aと上側コンベアベルト11-2Aが1組となって、魚介類投入口100から投入された魚介類F1を搬送し、次に、下流側の下側コンベアベルト11-1Bと上側コンベアベルト11-2Bが1組となって、上流側から搬送されてきた魚介類F1を引き続き搬送し、魚介類排出口105に導く。
【0051】
上流側の下側コンベアベルト11-1Aと上側コンベアベルト11-2Aの組と、下流側の下側コンベアベルト11-1Bと上側コンベアベルト11-2Bの組の間に、エア吹付け用隙間部103を設け、当該エア吹付け用隙間部103の下側に下側エア噴霧部80-1の下側エアノズル81-1を設置すると共に、当該エア吹付け用隙間部103の上側に上側エア噴霧部80-2の上側エアノズル81-2を設置する。
【0052】
そして、魚介類投入口100側から魚介類F1を順番に投入して行くと、投入された魚介類F1は、上流側の組の下側コンベアベルト11-1Aと上側コンベアベルト11-2Aの間で適度な力で挟持されながら下流側に移送されて行き、エア吹付け用隙間部103において、揺動する下側エアノズル81-1から魚介類F1の下面に下側からエアを吹き付け、同時に、揺動する上側エアノズル80-2から魚介類F1の上面に上側からエアを吹き付け、魚介類F1の表面に付着する水分(水滴や血液など)を吹き飛ばして除去、即ち表面の水分除去を行う。表面の水分が除去された魚介類F1は、下流側の組の下側コンベアベルト11-1Bと上側コンベアベルト11-2Bの間で適度な力で挟持されながら下流側に移送されて行き、魚介類排出口105から装置外部に排出される。
【0053】
この魚介類用水分除去装置1-2の場合、下側コンベアベルト11-1と上側コンベアベルト11-2の組を複数組設けることで、エア吹付け用隙間部103を形成したので、下側コンベアベルト11-1A,11-1Bと、上側コンベアベルト11-2A,11-2Bを、通気孔を有さないベルトで構成することができる(もちろん通気孔を有する構成としても良い)。なお下側コンベアベルト11-1と上側コンベアベルト11-2の組は、2組に限られず、3組以上で構成しても良い。
【0054】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば弾性体17はコイルばねに限られず、板ばねなどの他のばねやゴム状弾性体など、荷重に応じて伸縮するものであればどのような機構の弾性体を用いても良い。また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
1 魚介類用水分除去装置
10 コンベア機構
10-1 下側コンベア部
10-2 上側コンベア部
11-1 下側コンベアベルト
11-2 上側コンベアベルト
15 上下動機構
17 弾性体
19 吊下げ機構
21-1 下側駆動機構
21-2 上側駆動機構
80 エア噴霧機構
80-1 下側エア噴霧部
80-2 上側エア噴霧部
81-1 下側エアノズル
81-2 上側エアノズル
91-1 下側揺動機構
91-2 上側揺動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7