(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】内装用表皮材及び内装用表皮材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/12 20060101AFI20250218BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20250218BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20250218BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20250218BHJP
D04H 1/46 20120101ALI20250218BHJP
D06N 7/00 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
B32B27/12
B32B5/24 101
B32B5/26
B32B27/30 A
D04H1/46
D06N7/00
(21)【出願番号】P 2021167947
(22)【出願日】2021-10-13
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000149446
【氏名又は名称】株式会社オーツカ
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】藤江 秀彰
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-189757(JP,U)
【文献】特開平06-171003(JP,A)
【文献】特開2021-084500(JP,A)
【文献】実開昭59-024330(JP,U)
【文献】特開昭61-141542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00、
D04H1/00-18/04、
D06N1/00-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太さが0.5~20dtexの合成樹脂繊維から形成され、目付量が100~300g/m
2のウェブが、ニードルパンチ加工されたニードルパンチ不織布を母材とする表皮基材と、
該表皮基材が、該ニードルパンチ不織布の下側に浸透防止不織布を備え、該ニードルパンチ不織布と該浸透防止不織布とがニードルパンチ加工されたものであり、
該表皮基材の下側に備えられた、塗布量が不揮発分換算で20~100g/m
2の合成樹脂多孔層と、を有し、
該合成樹脂多孔層が該表皮基材内に含浸し、
該合成樹脂多孔層に、熱膨張性カプセルが混入されていることを特徴とする内装用表皮材。
【請求項2】
前記浸透防止不織布が、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、又は、湿式不織布、であることを特徴とする請求項
1に記載の内装用表皮材。
【請求項3】
前記合成樹脂多孔層を形成する合成樹脂エマルジョンがアクリル系樹脂エマルジョンであることを特徴とする請求項1
又は2に記載の内装用表皮材。
【請求項4】
前記合成樹脂エマルジョンがアクリロニトリルとスチレンを含有するアクリル系樹脂エマルジョンであることを特徴とする請求項
3に記載の内装用表皮材。
【請求項5】
前記合成樹脂エマルジョンを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)が10~20℃であることを特徴とする請求項
3又は
4に記載の内装用表皮材。
【請求項6】
前記表皮基材の上側が加熱されて平滑処理が施されたものであることを特徴とする請求項1~
5のいずれかに記載の内装用表皮材。
【請求項7】
請求項
1に記載の内装用表皮材の製造方法であって、
太さが0.5~20dtexの前記合成樹脂繊維から形成され、目付量が100~300g/m
2の前記ウェブを形成するカード工程と、
形成された該ウェブに針の微小な突起で繊維同士を絡ませて結合させてニードルパンチ不織布を形成するニードルパンチ工程と、
該ニードルパンチ不織布と前記浸透防止不織布とをニードルパンチによって貼り合わせて前記表皮基材を形成する貼合工程と、
該表皮基材に、前記熱膨張性カプセルが混入された合成樹脂エマルジョンを塗布することにより前記合成樹脂多孔層を形成する塗布工程と、
を有することを特徴とする内装用表皮材の製造方法。
【請求項8】
前記貼合工程と前記塗布工程との間に、前記表皮基材の上側に加熱されたローラを押し当て該表皮基材の上側を加熱して平滑にする平滑処理工程、を有することを特徴とする請求項
7に記載の内装用表皮材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布を母材とする内装用表皮材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内装用表皮材として不織布を使用し、裏面側に発泡樹脂層を備えるフロアカーペットが知られている(たとえば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-177056号公報
【文献】特開2004-027466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内装用表皮材の裏面側に発泡樹脂層を備えるフロアカーペットは、成形型内で、内装用表皮材としての不織布と、その裏面側に充填された発泡性樹脂とが加熱され、発泡性樹脂を発泡させることによって形成される。しかし、内装用表皮材は、吸音性を確保するため、通気性を有していることが求められる。このため、従来の内装用表皮材は、成形型内で、発泡性樹脂が充填されてから加熱される際に、発泡性樹脂が不織布を浸透して表面側まで到達してしまうおそれがあるという課題があった。
【0005】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、上述の点に鑑みてなされたものであり、発泡性樹脂の浸透を抑制することができる、不織布を母材とする内装用表皮材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の実施形態に係る内装用表皮材は、太さが0.5~20dtexの合成樹脂繊維から形成され、目付量が100~300g/m2のウェブが、ニードルパンチ加工されたニードルパンチ不織布を母材とする表皮基材と、
該表皮基材の下側に備えられた、塗布量が不揮発分換算で20~100g/m2の合成樹脂多孔層と、
を有することを特徴とする。
【0007】
本明細書の実施形態に係る内装用表皮材によれば、太さが0.5~20dtexの合成樹脂繊維から形成され、目付量が100~300g/m2のウェブが、ニードルパンチ加工されたニードルパンチ不織布を母材とする表皮基材と、その下側に備えられた、不揮発分換算で20~100g/m2の合成樹脂多孔層が形成されている。これにより、実施形態に係る内装用表皮材は、不織布の隙間を埋めるように、合成樹脂の多孔層が形成されるため、成形型内で、その裏面側に発泡性樹脂が充填されてから加熱される際に、発泡性樹脂の浸透を抑制することができる。
【0008】
ここで、上記内装用表皮材において、前記合成樹脂多孔層が前記表皮基材内に含浸しているものとすることができる。
【0009】
これによれば、表皮基材内に合成樹脂多孔層が含浸しているため、成形型内で、表皮基材の裏面側に発泡性樹脂が充填されてから加熱される際に、内装用表皮材が発泡性樹脂の浸透を抑制することができる。
【0010】
また、上記内装用表皮材において、前記合成樹脂多孔層が、フォームラバー状に形成されているものとすることができる。
【0011】
これによれば、表皮基材の下側にフォームラバー状の合成樹脂多孔層が形成されているため、成形型内で、表皮基材の裏面側に発泡性樹脂が充填されてから加熱される際に、内装用表皮材が発泡性樹脂の浸透を抑制することができる。
【0012】
また、上記内装用表皮材において、前記表皮基材が、前記ニードルパンチ不織布の下側に浸透防止不織布を備え、該ニードルパンチ不織布と該浸透防止不織布とがニードルパンチ加工されたもの、とすることができる。
【0013】
これによれば、浸透防止不織布によって、表皮基材の裏面側に充填された発泡性樹脂の浸透を抑制することができる。
【0014】
また、上記内装用表皮材において、前記浸透防止不織布が、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、又は、湿式不織布、であるものとすることができる。
【0015】
これによれば、好適に、内装用表皮材が発泡性樹脂の浸透を抑制することができる。
【0016】
また、上記内装用表皮材において、前記合成樹脂多孔層を形成する合成樹脂がアクリル系樹脂であるものとすることができる。
【0017】
これによれば、内装用表皮材を耐久性に優れるものとすることができる。
【0018】
また、上記内装用表皮材において、前記合成樹脂多孔層に、熱膨張性カプセルが混入されているものとすることができる。
【0019】
これによれば、内装用表皮材の通気量を抑制することができる。
【0020】
ここで、実施形態に係る内装用表皮材は、上層表皮基材と下層表皮基材とがニードルパンチ加工された内装用表皮材であって、
該上層表皮基材は、太さが0.5~20dtexの合成樹脂繊維から形成され、目付量が50~200g/m2のウェブが、ニードルパンチ加工によって接合された不織布であり、
該下層表皮基材は、太さが0.5~20dtexの合成樹脂繊維から形成され、目付量が50~200g/m2のウェブが、ニードルパンチ加工された不織布である、ことを特徴とする。
【0021】
これによれば、実施形態に係る内装用表皮材は、太さが0.5~20dtexの合成樹脂繊維から形成され、目付量が50~200g/m2のウェブが、ニードルパンチ加工された上層表皮基材と、太さが0.5~20dtexの合成樹脂繊維から形成され、目付量が50~200g/m2のウェブが、ニードルパンチ加工された下層表皮基材とが、ニードルパンチ加工されたものである。2層のニードルパンチ不織布がニードルパンチ加工されているため、実施形態に係る内装用表皮材は、2層のニードルパンチ不織布によって、発泡性樹脂が充填されてから加熱される際の、発泡性樹脂の浸透を抑制することができる。
【0022】
また、上記内装用表皮材において、前記上層表皮基材と前記下層表皮基材との間に、中間フィルム層が介入されているものとすることができる。
【0023】
これによれば、中間フィルム層によって、発泡性樹脂の浸透を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
実施形態の内装用表皮材によれば、成形型内で、その裏面側に発泡性樹脂が充填されてから加熱される際の、発泡性樹脂の浸透を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態の内装用表皮材のイメージ断面図である。
【
図2】第2実施形態の内装用表皮材のイメージ断面図である。
【
図3】実施例3(第1実施形態)の内装用表皮材の裏面の拡大写真である。
【
図4】実施例4(第1実施形態)の内装用表皮材の裏面の拡大写真である。
【
図5】実施例3と4の内装用表皮材を用いたフロアカーペットの垂直入射吸音率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、本明細書の第1実施形態に係る内装用表皮材101について、図面に基づいて説明する。なお、本発明の範囲は、実施形態で開示される範囲に限定されるものではない。第1実施形態に係る内装用表皮材101は、成形型内で、その裏面側に充填された発泡性樹脂とともに加熱され、発泡性樹脂を発泡させることによって、裏面側に発泡樹脂層Fを備えさせ、自動車内装材のフロアカーペットを形成するものである。第1実施形態に係る内装用表皮材101は、
図1に示すように、ニードルパンチ加工されたニードルパンチ不織布5を母材とする表皮基材10と、表皮基材10の下側に備えられた、塗布量が不揮発分換算で20~100g/m
2の合成樹脂多孔層60と、を有している。これにより、第1実施形態に係る内装用表皮材101は、撥油剤を使用しなくても、成形型内で、その裏面側に発泡性樹脂が充填されてから加熱される際の、発泡性樹脂の浸透を抑制することができる。
【0027】
表皮基材10の母材となるニードルパンチ不織布5は、合成樹脂繊維1からなるウェブがニードルパンチ加工されたものである。合成樹脂繊維1は、単一の樹脂構成からなる全融タイプの合成樹脂繊維1、芯の高融点樹脂と鞘の低融点樹脂が芯鞘構造となる複合繊維である芯鞘タイプの合成樹脂繊維1を使用することができる。なお、これら合成樹脂繊維1は、複数種類を組み合わせて使用することもできる。
【0028】
単一の樹脂構成からなる全融タイプの合成樹脂繊維1として、実施形態では、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維(PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)など)、PA(ポリアミド)繊維、アクリル樹脂繊維、ポリビニルアルコール繊維などを使用することができる。別の実施形態として、全融タイプの合成樹脂繊維1は、強度や耐水性に優れるポリエステル繊維を使用することができ、さらに別の実施形態として、ポリエステル繊維のPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維を使用することができる。
【0029】
芯鞘の複合繊維からなる芯鞘タイプの合成樹脂繊維1として、実施形態では、芯/鞘の表現で、PET/低融点PET、PET/PE、PET/PP、PET/PA、PP/PE、PA/PAなどを使用することができる。別の実施形態として、芯鞘タイプの合成樹脂繊維1は、強度に優れるPET/低融点PET、PET/PE、PET/PPを使用することができ、さらに別の実施形態として、PET/低融点PETを使用することができる。
【0030】
合成樹脂繊維1の太さは、実施形態では、繊維10,000mの重量である繊度(dtex)換算で、0.5~20dtexとすることができる。合成樹脂繊維1から形成されるニードルパンチ不織布5を容易に形成することができるとともに、内装用表皮材101が形成され、成形型内で、その裏面側に発泡性樹脂が充填されてから加熱される際に、内装用表皮材101が発泡性樹脂の浸透を抑制することができるためである。合成樹脂繊維1の繊度が0.5dtex未満である場合には、細いため生産効率が劣るおそれがある。一方、合成樹脂繊維1の繊度が20dtexを超える場合には、太いため、内装用表皮材101が形成され、発泡性樹脂が充填されてから加熱される際の、内装用表皮材101が発泡性樹脂の浸透を抑制することができないおそれがある。別の実施形態として、合成樹脂繊維1の繊度は、1~10dtexとすることができ、さらに別の実施形態として、合成樹脂繊維1の繊度は、2~5dtexとすることができる。
【0031】
合成樹脂繊維1の長さは、実施形態では、20~100mmとすることができる。ニードルパンチ不織布5を容易に形成することができるためである。合成樹脂繊維1の長さが20mm未満である場合には、短いためニードルパンチ不織布5を形成することができないおそれがある。一方、合成樹脂繊維1の長さが100mmを超える場合には、長いためニードルパンチ不織布5の形成が困難となるおそれがある。別の実施形態として、合成樹脂繊維1の長さは、25~90mm、さらに別の実施形態として、30~80mmとすることができる。
【0032】
ウェブの目付量(ニードルパンチ不織布5の目付量)は、実施形態では、100~300g/m2とすることができる。ニードルパンチ不織布5から内装用表皮材101が形成され、成形型内で、その裏面側に発泡性樹脂が充填されてから加熱される際に、内装用表皮材101が発泡性樹脂の浸透を抑制することができるためである。ニードルパンチ不織布5の目付量が100g/m2未満である場合には、ニードルパンチ不織布5から内装用表皮材101が形成され、発泡性樹脂が充填されてから加熱される際の、内装用表皮材101が発泡性樹脂の浸透を抑制することができないおそれがある。一方、ニードルパンチ不織布5の目付量が300g/m2を超える場合には、発泡性樹脂の浸透を抑制することはできるものの、過剰な量となり、不経済となるおそれがある。別の実施形態として、ニードルパンチ不織布5の目付量は、180~290g/m2、さらに別の実施形態として、220~280g/m2とすることができる。
【0033】
実施形態の内装用表皮材101に使用する表皮基材10は、ニードルパンチ不織布5の下側に、浸透防止不織布20を備え、ニードルパンチ不織布5と浸透防止不織布20とがニードルパンチ加工されているものとすることができる。浸透防止不織布20によって、成形型内で、その裏面側に発泡性樹脂が充填されてから加熱される際に、内装用表皮材101が発泡性樹脂の浸透をより抑制することができるためである。浸透防止不織布20として、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、又は、湿式不織布などの不織布を使用することができる。別の実施形態として、浸透防止不織布20はスパンボンド不織布を使用することができる。
【0034】
実施形態の内装用表皮材101は、表皮基材10の下側に、合成樹脂多孔層60を備える。合成樹脂多孔層60は、合成樹脂エマルジョンから形成され、塗布方法によって、含浸層61又はフォームラバー層62の一方が形成される。含浸層61は、ドクターナイフを用いて表皮基材10の裏面に合成樹脂エマルジョンを塗布することにより、合成樹脂エマルジョンが内装用表皮材101に含浸又は半含浸した、合成樹脂多孔層60としての含浸層61が形成される。フォームラバー層62は、発泡させた合成樹脂エマルジョンを表皮基材10の裏面に塗布することにより合成樹脂多孔層60としてのフォームラバー層62が形成される。合成樹脂多孔層60は、含浸層61又はフォームラバー層62の一方が形成されるが、フォームラバー層62が形成された際には、合成樹脂エマルジョンの一部が表皮基材10に含浸した含浸層を備えるものとなる。
【0035】
合成樹脂多孔層60を形成する合成樹脂エマルジョンの塗布量は、含浸層61又はフォームラバー層62の何れであっても、不揮発分換算で、20~100g/m2とすることができる。発泡性樹脂の浸透を抑制することができるとともに、内装用表皮材101に適度な剛性を付与することができるためである。合成樹脂エマルジョンの塗布量(以下、塗布量は、不揮発分換算とする。)が20g/m2未満である場合には、発泡性樹脂の浸透を抑制することができないおそれがあるとともに、内装用表皮材101に適度な剛性を付与することができないおそれがある。一方、合成樹脂エマルジョンの塗布量が100g/m2を超える場合には、過剰な量となり、不経済となるおそれがある。別の実施形態として、合成樹脂エマルジョンの塗布量は、30~80g/m2とすることができ、さらに別の実施形態として、40~60g/m2とすることができる。
【0036】
合成樹脂エマルジョンの組成として、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、バーサチック酸ビニル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合系樹脂、スチレンブタジエン系樹脂などを使用することができる。別の実施形態として、耐候性に優れるアクリル系樹脂エマルジョンを使用することができる。
【0037】
アクリル系樹脂エマルジョンとは、いいかえると、変性アクリル酸エステルを含む共重合体エマルジョンである。アクリル酸エステルの共重合体となる構造単位として、(メタ)アクリル酸、ジ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、及び、これらの混合物、並びに、これらとスチレンの混合物を用いることができる。変性させる樹脂としては、ウレタン変性、シリコン変性、塩化ビニル変性などとすることができる。もちろん、変性させていないアクリル酸エステル共重合体エマルジョンも用いることができる。別の実施形態として、アクリル酸エステルの共重合体となる構造単位に、アクリロニトリルを含有するアクリル系樹脂エマルジョンを使用することができる。さらに別の実施形態として、アクリル酸エステルの共重合体となる構造単位に、アクリロニトリルとスチレンを含有するアクリル系樹脂エマルジョンを使用することができ、例えば、アクリロニトリル・スチレン・アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、アクリロニトリル・アクリル酸エステル共重合体エマルジョンの混合物を使用することができる。
【0038】
アクリル系樹脂エマルジョンを構成するアクリル樹脂(変性アクリル酸エステル共重合体)は、樹脂のガラス転移温度(Tg)が0~50℃とすることができる。内装用表皮材101に適度な剛性を付与することができるためである。アクリル樹脂のTgが0℃未満である場合には、樹脂が柔らかく、内装用表皮材101に適度な剛性を付与することができないおそれがある。一方、アクリル樹脂のTgが50℃を超えると、成膜温度(≒Tg)が高く、アクリル樹脂の成膜が困難となるおそれがある。別の実施形態として、樹脂のガラス転移温度(Tg)は5~30℃、さらに別の実施形態として、10~20℃とすることができる。
【0039】
アクリル樹脂のTgの調整は、使用するモノマー(アクリル酸エステルの共重合体となる構造単位)の種類と量とを調整することによって行うことができる。Tgは、フォックス(FOX)の計算式(下記(1)式)から求めることができる。Wiは単量体iの質量分率を示し、Tgiは単量体iのTg(℃)を示し、単量体のTgは、ポリマーハンドブック(John Willey & Sons)に記載されている値などの既知の値を用いることができる。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))・・・(1)
アクリル系樹脂エマルジョンは、重合反応が進行する反応器に、界面活性剤などを含む水溶液を入れ、水溶液を80~90℃に調整した反応器中に、プレ乳化エマルション(モノマー成分、乳界面活性剤及び水などを予め乳化させたもの)と重合開始剤を2時間程度かけて滴下させることによって、モノマー成分を重合させた合成樹脂エマルジョンとすることができる。なお、プレ乳化エマルションを2種類以上用意し、順に滴下させることによって、コア・シェル構造のエマルジョンとすることができる。
【0040】
合成樹脂多孔層60(含浸層61、フォームラバー層62)には、熱膨張性カプセル70を混入させることができる。合成樹脂多孔層60に熱膨張性カプセル70を混入させることにより、内装用表皮材101は、通気量(織物及び編物の生地試験方法(JIS L 1096:2010)8.26通気性A法(フラジール形法))を抑制することができ、成形型内で、その裏面側に発泡性樹脂が充填されてから加熱される際に、内装用表皮材101の発泡性樹脂の浸透を抑制することができるとともに、内装用表皮材101に適度な剛性を付与することができるものとなる。熱膨張性カプセル70は、膨張前の粒子径が10~50μmであるのに対し、加熱されることによって、粒子径が30~200μmに膨張するものである。別の実施形態として、熱膨張性カプセル70は、膨張前の粒子径が15~40μmであり、加熱されることによって、粒子径が50~180μmに膨張するもの、とすることができる。
【0041】
熱膨張性カプセル70は、実施形態として市販品を使用することができ、市販品の例として、クレハマイクロスフェアー(株式会社クレハ製)、アドバンセルEM(積水化学工業株式会社製)、エクスパンセル(日本フェライト株式会社製)などを使用することができる。
【0042】
次に、本明細書の第1実施形態に係る内装用表皮材101の製造方法について説明する。第1実施形態に係る内装用表皮材101の製造方法は、ニードルパンチ不織布5に使用する合成樹脂繊維1を解しウェブ(繊維状のシート)を形成するカード(カーディング(carding))工程と、形成されたウェブに針の微小な突起で繊維同士を絡ませて結合させてニードルパンチ不織布5を形成するニードルパンチ工程と、ニードルパンチ不織布5と浸透防止不織布20とをニードルパンチによって貼り合わせて表皮基材10を形成する貼合工程と、加熱されたローラを用いて表皮基材10を平滑にする平滑処理工程と、表皮基材10に、熱膨張性カプセル70が混入された合成樹脂エマルジョンを塗布することにより合成樹脂多孔層60を形成する塗布工程と、の順に行われる。なお、貼合工程と平滑処理工程は、必要により組み入れる工程であり、省略することができる工程である。
【0043】
カード工程では、ニードルパンチ不織布5の原材料となる合成樹脂繊維1を特定の比率で混合し、カード処理機によって、混合された繊維を解して整え、シート状の塊とし、ウェブを形成した。
【0044】
ニードルパンチ工程では、カード工程で形成されたウェブに、ニードル(平板の片面に無数の針を略直角に林立させたもの)の針を高速で幾度となく押し当て、針の微小な突起で繊維同士を絡ませて結合させてニードルパンチ不織布5を形成した。実施形態では、ウェブの片方の面のみにニードルパンチを施した。
【0045】
貼合工程では、ニードルパンチ不織布5と浸透防止不織布20とをニードルパンチによって貼り合わせることによって表皮基材10を形成した。実施形態では、上側(ニードルパンチ不織布5側)からニードルパンチを施した。なお、浸透防止不織布20を備えていない実施形態では、貼合工程は省略され、ニードルパンチ不織布5そのものが表皮基材10となる。
【0046】
平滑処理工程では、表皮基材10の上側に、加熱されたローラを押し当て、表皮基材10の上側を加熱して平滑にした。このとき、ローラの設定温度は、表皮基材10(ニードルパンチ不織布5)を形成する合成樹脂繊維1が、軟化して、合成樹脂繊維1同士が溶着する温度、に調節する。合成樹脂繊維1がPET/低融点PETの場合、ローラの設定温度は、190~200℃とした。なお、平滑処理工程は、必要により組み入れる工程であり、省略することができる。
【0047】
塗布工程では、表皮基材10の裏面(下側)に、熱膨張性カプセル70が混入された合成樹脂エマルジョンを塗布し、加熱乾燥させて、合成樹脂多孔層60を形成した。塗布方法は、2種類あり、ドクターナイフを用いて表皮基材10の裏面に合成樹脂エマルジョンを塗布することにより含浸層61が形成される方法と、発泡させた合成樹脂エマルジョンを表皮基材10の裏面に塗布することによりフォームラバー層62が形成される方法とが、ある。塗布工程では、含浸層61が形成される方法、フォームラバー層62が形成される方法、どちらか一方が行われる。なお、熱膨張性カプセル70は、必要により配合されるものであり、実施形態によっては、省略することができる。また、熱膨張性カプセル70は、合成樹脂エマルジョンの塗布後の加熱乾燥により、熱膨張する。
【0048】
このようにして製造された内装用表皮材101は、太さが0.5~20dtexの合成樹脂繊維1から形成され、目付量が100~300g/m2のニードルパンチ不織布5を母材とする表皮基材10と、その下側に形成された、塗布量が不揮発分換算で20~100g/m2の合成樹脂多孔層60と、から形成されている。内装用表皮材101は、表皮基材10(ニードルパンチ不織布5)の隙間を埋めるように、合成樹脂の多孔層(合成樹脂多孔層60)が形成されているため、撥油剤を有していなくても、成形型内で、その裏面側に発泡性樹脂が充填されてから加熱される際に、発泡性樹脂の浸透を抑制することができる。
【0049】
また、このようにして製造された内装用表皮材101は、通気量が10~100cc/cm2/secであるものとすることができ、これにより、剛性と耐樹脂染み出し性とを両立することができる。別の実施形態として、通気量は、20~80cc/cm2/secとすることができ、さらに別の実施形態として、25~55cc/cm2/secとすることができる。
【0050】
(第2実施形態)
以下、本明細書の第2実施形態に係る内装用表皮材102について、図面に基づいて説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同じ構成であるものは、同じ符号を用いて、その説明を省略する。
【0051】
第2実施形態に係る内装用表皮材102は、
図2に示すように、上層表皮基材10Aと、下層表皮基材10Bとが、ニードルパンチ加工によって接合されたものである。2層のニードルパンチ不織布がニードルパンチ加工によって接合されているため、実施形態に係る内装用表皮材102は、2層のニードルパンチ不織布によって、成形型内で、その裏面側に発泡性樹脂が充填されてから加熱される際に、撥油剤を有していなくても、発泡性樹脂の浸透を抑制することができる。なお、第2実施形態に係る内装用表皮材102では、上層表皮基材10Aと下層表皮基材10Bとの間に、発泡性樹脂の浸透を抑制する合成樹脂フィルムからなる中間フィルム層30を介入させることができる。
【0052】
上層表皮基材10Aは、太さが0.5~20dtexの合成樹脂繊維1から形成され、目付量が50~200g/m2のウェブが、ニードルパンチ加工された不織布であり、下層表皮基材10Bは、太さが0.5~20dtexの合成樹脂繊維1から形成され、目付量が50~200g/m2のウェブが、ニードルパンチ加工された不織布である。上層表皮基材10Aと下層表皮基材10Bに使用される合成樹脂繊維1は、第1実施形態のニードルパンチ不織布5に使用した合成樹脂繊維1と同じものを使用することができる。
【0053】
中間フィルム層30は、合成樹脂フィルムからなり、内装用表皮材102の裏面に発泡性樹脂が充填されてから加熱される際に、発泡性樹脂の浸透をより抑制するために備えることができるフィルムである。中間フィルム層30の材質として、実施形態では、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム(PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)など)、PA(ポリアミド)フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリビニルアルコールフィルムなどを使用することができる。また、中間フィルム層30は、これらフィルムを積層した多層フィルムも使用することができ、延伸フィルム、未延伸フィルムを問わず使用することができる。
【0054】
次に、本明細書の第2実施形態に係る内装用表皮材102の製造方法について説明する。第2実施形態に係る内装用表皮材102の製造方法は、上層表皮基材10A(下層表皮基材10B)に使用する合成樹脂繊維1からウェブを形成するカード工程と、形成されたウェブから上層表皮基材10A(下層表皮基材10B)を形成するニードルパンチ工程と、上層表皮基材10Aと、下層表皮基材10Bと、その間に介入させた合成樹脂フィルム(中間フィルム層30)と、をニードルパンチによって貼り合わせる貼合工程と、貼り合わされた多層表皮基材10Cに、加熱されたローラを用いて、その表面を平滑にする平滑処理工程と、の順に行われる。なお、合成樹脂フィルム(中間フィルム層30)は、必要により用いるものであり、省略することができる。
【0055】
カード工程とニードルパンチ工程は、第1実施形態のカード工程とニードルパンチ工程と同じである。
【0056】
貼合工程では、上層表皮基材10Aと、下層表皮基材10Bと、その間に介入させた合成樹脂フィルム(中間フィルム層30)と、をニードルパンチによって貼り合わせた。なお、中間フィルム層30を備えていない実施形態では、合成樹脂フィルムの介入は、省略される。
【0057】
平滑処理工程では、貼り合わされた多層表皮基材10Cの上側、又は、上側及び下側に、加熱されたローラを押し当て、多層表皮基材10Cの表面を加熱して平滑にした。多層表皮基材10Cは、平滑処理工程を経ることによって、内装用表皮材102となる。なお、ローラの設定温度は、第1実施形態のローラの設定温度と同じである。
【0058】
このようにして製造された内装用表皮材102は、太さが0.5~20dtexの合成樹脂繊維1から形成され、目付量が50~200g/m2のウェブが、ニードルパンチ加工された上層表皮基材10Aと、必要に応じて介入させる合成樹脂フィルム(中間フィルム層30)と、太さが0.5~20dtexの合成樹脂繊維1から形成され、目付量が50~200g/m2のウェブが、ニードルパンチ加工された下層表皮基材10Bとが、ニードルパンチ加工されたものである。2層のニードルパンチ不織布がニードルパンチ加工されているため、実施形態に係る内装用表皮材は、撥油剤を有していなくても、2層のニードルパンチ不織布によって、成形型内で、その裏面側に発泡性樹脂が充填されてから加熱される際に、発泡性樹脂の浸透を抑制することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。使用した、合成樹脂繊維1の特性を表1に、浸透防止不織布20の特性を表2に、合成樹脂多孔層60を形成する合成樹脂エマルジョンの特性を表3に、熱膨張性カプセル70の特性を表4に、中間フィルム層30の特性を表5に、それぞれ記載する。なお、表3の合成樹脂エマルジョンNは、アクリロニトリル・スチレン・アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、アクリロニトリル・アクリル酸エステル共重合体エマルジョンの混合物である。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
実施例の内装用表皮材101、102は、その性能として、垂直入射吸音率、通気量、剛性、耐樹脂染み出し性を評価した。以下に、これら評価方法を記載する。
【0066】
(垂直入射吸音率)
垂直入射吸音率は、音響管による吸音率及びインピーダンスの測定-第2部:伝達関数法(JIS A 1405-2:2007(ISO 10534-2:1998))に従って測定した。そして、比較例(表6)より優れるものを○、比較例と同等であるものを△、比較例より劣るものを×、として評価した。
【0067】
(通気量)
通気量は、織物及び編物の生地試験方法(JIS L 1096:2010)8.26通気性A法(フラジール形法)に従って測定した。通気量は、その値が低い方が良い結果となる。
【0068】
(剛性)
剛性は、比較例(表6)と比較することによって評価した。そして、比較例(表6)より優れるものを○、比較例と同等であるものを△、比較例より劣るものを×、として評価した。
【0069】
(耐樹脂染み出し性)
耐樹脂染み出し性は、成形型内で、内装用表皮材101、102の裏面側に、発泡性樹脂を充填し、加熱させ、内装用表皮材101、102の表面側への染み出し具合を確認して評価した。そして、染み出しが確認されないものを○、染み出しが確認できるものの、表面の風合いが損なわれるほどではないものを△、染み出しが確認でき、表面の風合いが損なわれているものを×、として評価した。
【0070】
表6は、第1実施形態の実施例と比較例について、処方と物性評価を記載したものである。比較例は、従来の内装用表皮材である。実施例3と4がベストモードとなる実施例である。実施例3の内装用表皮材101の裏面の拡大写真を
図3に、実施例4の内装用表皮材101の裏面の拡大写真を
図4に示す。また、実施例3と4のフロアカーペット(内装用表皮材101の裏面側に発泡樹脂層Fを備えたもの)の垂直入射吸音率のグラフを
図5に示す。実線が実施例3であり、点線が実施例4である。
【0071】
【0072】
実施例1は、比較例から、ニードルパンチ不織布5の目付量を増やし、合成樹脂多孔層60を形成する合成樹脂エマルジョンの塗布量を増やしたものである。実施例1は、耐樹脂染み出し性が、染み出しが確認できるものの、表面の風合いが損なわれるほどではない、ものとすることができた。
【0073】
実施例2は、合成樹脂エマルジョンに熱膨張性カプセル70を配合することにより、合成樹脂エマルジョンの塗布量を減らしても、耐樹脂染み出し性が、染み出しが確認されないものとすることができたものである。また、熱膨張性カプセル70を用いることにより、熱膨張性カプセル70が、スパンボンド不織布(浸透防止不織布20)の繊維と繊維の空間を埋め、通気性を下げる効果があることが確認された。
【0074】
実施例3は、合成樹脂エマルジョンを、アクリロニトリルとスチレンを含有するアクリル系合成樹脂エマルジョンに変更することにより、高い剛性が得られることが確認できたものである。また、熱膨張性カプセル70を増量することにより、耐樹脂染み出し性が、よりよい結果となることが確認できた。
【0075】
実施例4は、熱膨張性カプセル70の配合を無くしても、
図4に示すように、合成樹脂エマルジョンからフォームラバー層62(合成樹脂多孔層60)を形成させることにより、耐樹脂染み出し性が、染み出しが確認されないものとすることができたものである。
【0076】
実施例5は、合成樹脂エマルジョンを、アクリロニトリルとスチレンを含有するアクリル系合成樹脂エマルジョンからアクリル系合成樹脂エマルジョンに変更し、実施例4同様に、合成樹脂エマルジョンからフォームラバー層62を形成させたものである。耐樹脂染み出し性は良好だったものの、アクリル系合成樹脂エマルジョンが表皮基材10に十分に含浸せず、剛性が劣るものとなった。
【0077】
実施例6は、浸透防止不織布20をパルプとレーヨンからなる湿式不織布に変更したものである。性能に優れた内装用表皮材101とすることができた。
【0078】
実施例7は、浸透防止不織布20をメルトブロー不織布に変更したものである。性能に優れた内装用表皮材101とすることができた。
【0079】
表7は、第2実施形態の実施例の処方と物性評価を記載したものである。
【0080】
【0081】
実施例8は、上層表皮基材10Aと下層表皮基材10Bとがニードルパンチ加工されたものである。表裏面ともに、加熱されたローラで平滑処理が施されているため、実施例8の内装用表皮材102は、耐樹脂染み出し性に優れ、剛性も優れるものであった。
【0082】
実施例9は、実施例8の下層表皮基材10Bの合成樹脂繊維1のPP(ポリプロピレン)繊維をPET(ポリエステル)繊維に変更したものである。平滑処理において、PET繊維の融点が高く熱融着しないため、耐樹脂染み出し性が劣るものとなった。
【0083】
実施例10は、実施例9から、上層表皮基材10Aと下層表皮基材10Bとの間に、中間フィルム層30(ポリウレタン単層)を追加したものである。中間フィルム層30によって、耐樹脂染み出し性は向上されたが、中間フィルム層30によって、吸音性が劣るものとなった。また、ニードルパンチによって貼り合わせる貼合工程において、多量のフィルム片がニードルのバーブに付着したため、作業効率が悪いものであった。
【0084】
実施例11は、実施例10から、中間フィルム層30のポリウレタン単層を3層フィルムに変更した。結果は、実施例10と同じで、中間フィルム層30によって、耐樹脂染み出し性は向上されたが、吸音性が劣るものとなった。なお、中間フィルム層30を3層フィルムに変更したことによって、ニードルパンチによって貼り合わせる貼合工程において、フィルム片がニードルのバーブに付着するのが軽減され、実用的なものとなった。
【符号の説明】
【0085】
1…合成樹脂繊維、5…ニードルパンチ不織布、10…表皮基材、10A…上層表皮基材、10B…下層表皮基材、10C…多層表皮基材、20…浸透防止不織布、30…中間フィルム層、60…合成樹脂多孔層、61…含浸層、62…フォームラバー層、70…熱膨張性カプセル、101…内装用表皮材、102…内装用表皮材、F…発泡樹脂層。