(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】木材チップ材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B27L 11/00 20060101AFI20250218BHJP
B27N 9/00 20060101ALI20250218BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
B27L11/00 Z
B27N9/00
C09K21/02
(21)【出願番号】P 2022506599
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(86)【国際出願番号】 CZ2020000026
(87)【国際公開番号】W WO2021023319
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-05-30
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】522006650
【氏名又は名称】ファースト ポイント エー.エス.
【氏名又は名称原語表記】FIRST POINT A.S.
【住所又は居所原語表記】Brnenska 4404/65a, 69501 Hodonin (CZ)
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】チャンドヴァ,ガブリエラ
(72)【発明者】
【氏名】スパニエル,ペトル
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/193398(WO,A1)
【文献】特開2014-062003(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108911688(CN,A)
【文献】特開2014-162807(JP,A)
【文献】登録実用新案第3015773(JP,U)
【文献】特開2012-051262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27L 11/00
B27N 9/00
C09K 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
30~43重量%の木材チップと、53~61.9重量%のケイ酸ナトリウム水溶液と、2~5重量%の水酸化アルミニウムと、1~3重量%の水と、0.1~1重量%の
親水性アルコキシルアルキルアンモニア塩と、純粋なケイ酸ナトリウム水溶液に対して0.5~5重量%の濃度のケイ酸ナトリウム水溶液の硬化剤とを含む混合物からなる材料であり、常にケイ酸ナトリウム水溶液の密度が1370~1400kg/m
3の範囲であり、ケイ酸ナトリウム水溶液中のNa
2Oに対するSiO
2のモル比が3.2~3.4の範囲であることを特徴とする木材チップ材料。
【請求項2】
前記木材チップがトウヒチップ及び/又はマツチップであることを特徴とする請求項1に記載の木材チップ材料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の木材チップ材料の製造方法であって、
前記水酸化アルミニウムを水と混合し、
次いで木材チップを前記
水酸化アルミニウムと水とを混合してなる混合物に添加し
撹拌して、木材チップ混合物を形成し、
次いで前記ケイ酸ナトリウム水溶
液に前記
親水性アルコキシルアルキルアンモニア塩を添加し
てから、前記ケイ酸ナトリウム水溶液の前記硬化剤を混合し
、1~10分間撹拌し
て結合溶液を形成し、
次いで前記木材チップ混合物を連続的に撹拌しながら前記結合溶液に注ぎ、全てを再び撹拌し、
前記木材チップ混合物と前記結合溶液とを撹拌して得られた混合物を適用箇所に注ぐことを特徴とする
木材チップ材料の製造方法。
【請求項4】
前記木材チップ混合物と前記結合溶液とを撹拌して得られた前記混合物
が硬化するまで静置されることを特徴とする請求項
3に記載の木材チップ材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材チップ材料、特に耐火性耐水性木材チップ材料、特に配向ストランドボード(OSB)を製造するための耐火性耐水性木材チップ材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面層のチップがボードのより長いエッジに平行に配向され、同時にボードの強度の主方向を決定する、いわゆる配向ストランドボード(OSB)を含むチップボードの広範囲の技術設計が存在する。中間層のチップは主軸に垂直に配向しており、これによりボードの主方向におけるより高い剛性と強度が達成されている。チップは、添加剤、例えばチオ硫酸塩で含浸される。結合剤としては、例えば、ポリウレタンまたは人工(例えば、フェノールホルムアルデヒドまたは尿素ホルムアルデヒド)樹脂が使用される。耐湿性ボードでは、パラフィン系エマルジョンの形態の流動パラフィンも使用される。
【0003】
欧州特許文献EP 2125311は、有機ポリマーが結合剤として使用される、混合粉砕ポリウレタンと種々の繊維とを有する配向ストランドボードを記載している。その欠点は、その高い可燃性である。
【0004】
別の中国特許文献CN 108559151は、ポリウレタンとともに結合された木材チップおよびゴム粉末からなるボードを記載している。このボードの欠点は、その引火性と、断熱能が限られていることである。
【0005】
欧州特許文献EP 2078599は、尿素ホルムアルデヒド樹脂が結合剤として使用される微小チップを有するボードの設計を記載している。その欠点は、その高い可燃性である。
【0006】
チップおよびエーロゲルからそれらをプレスすることによる配向ストランドボード(OSB)の製造は、欧州特許文献EP 2864087から公知である。ここでは、結合剤としてフェノールホルムアルデヒド樹脂を用いる。このボードの欠点は、再びその可燃性であり、それに加えて、エーロゲルの価格が高く、製造技術が非常に複雑であることである。この特定の場合、別の大きな問題は、ボードの吸収性である。
【0007】
また、パラフィンを結合剤として使用するチェコ特許文献CZ PV 1990-1594から知られている配向ストランドボード(OSB)も、高可燃性である。
【0008】
チェコ実用意匠CZ 31399から公知の配向ストランドボードも可燃性である。その別の欠点は、それが非常に硬く、本質的に全く可撓性がなく、その適用範囲を実質的に制限するという事実である。この実用意匠に記載されたOSBの別の欠点は、チップの非常に正確に規定された形状を考慮すると、実際には生産可能でさえないという事実である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許第EP 2125311号公報
【文献】中国特許第CN 108559151942号公報
【文献】欧州特許第EP 2078599号公報
【文献】欧州特許第EP 2864087号公報
【文献】チェコ共和国特許出願明細書第CZ PV 1990-1594号公報
【文献】チェコ共和国実用意匠第CZ 31399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の技術水準から、前記文献から知られているチップボードの主な欠点は、それらがほとんど常に可燃性であるか、または非常に可燃性でさえあるという事実であることが明らかである。別の問題はそれらの低い耐水性であり、さらに別の問題はまた、塗布後に材料から遊離し始める揮発性物質を用いることである。それらには、ホルムアルデヒドまでのアルデヒドが含まれる。他の有機物質は、チップボードに使用される結合剤から遊離される。それらは、例えば、フェノールホルムアルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒドまたはタンニンホルムアルデヒド樹脂およびそれらの相互の組み合わせを含む。
【0011】
本発明の目的は高い耐火性があり、同時に耐水性がある木材チップ材料を処方または設計することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の欠点は大幅に取り除かれ、本発明の目的は、30~43重量%の木材チップと、53~61.9重量%のケイ酸ナトリウム水溶液と、2~5重量%の水酸化アルミニウムと、1~3重量%の水と、0.1~1重量%の親水性アルコキシルアルキルアンモニア塩と、純粋なケイ酸ナトリウム水溶液に対して0.5~5重量%の濃度のケイ酸ナトリウム水溶液の硬化剤とを含む混合物からなる材料であり、常にケイ酸ナトリウム水溶液の密度が1370~1400kg/m
3
の範囲であり、ケイ酸ナトリウム水溶液中のNa
2
Oに対するSiO
2
のモル比が3.2~3.4の範囲である。この木材チップ材料の利点は、熱安定性が高く、耐火性に優れ、耐水性も高いことである。これらの両方の特性は、ケイ酸ナトリウム水溶液の高い割合によって提供される。本発明による木材チップ材料はまた、優れた抗真菌性によって、および環境に優しく、健康に害がないという事実によって、それ自体を特徴付ける。それに加えて、それは燃焼物体からの熱に抵抗することができ、それはかなりの遅延を伴って、限られた範囲で熱を放出する。材料中に使用される水酸化アルミニウムは、有利には燃焼遅延剤として作用する。ケイ酸ナトリウムと水酸化アルミニウムの水溶液の混合物が木材中に深く、しっかりと、かつ安定に固定されるという事実は、非常に有利である。ケイ酸ナトリウム水溶液の密度が1370~1400kg/m3の範囲であり、Na2Oに対するSiO2のモル比が3.2~3.4の範囲であれば、このようなケイ酸ナトリウム水溶液が乾燥後に部分的に弾性となるので、さらに好都合である。
【0013】
木材チップがトウヒチップおよび/またはマツチップであると有利である。
【0015】
上記の欠点はさらに大幅に取り除かれ、本発明の目的は、請求項1または2に記載の木材チップ材料の製造方法であって、
前記水酸化アルミニウムを水と混合し、
次いで木材チップを前記水酸化アルミニウムと水とを混合してなる混合物に添加し撹拌して、木材チップ混合物を形成し、
次いで前記ケイ酸ナトリウム水溶液に前記親水性アルコキシルアルキルアンモニア塩を添加してから、前記ケイ酸ナトリウム水溶液の前記硬化剤を混合し、1~10分間撹拌して結合溶液を形成し、
次いで前記木材チップ混合物を連続的に撹拌しながら前記結合溶液に注ぎ、全てを再び撹拌する。次いで、得られた混合物を適用箇所に注ぐ。
【0016】
得られた混合物を、硬化するまで静置すると有利である。
【0017】
本発明による木材チップ材料およびその製造方法の主な利点は、材料が高度に耐火性であるという事実である。非常に有利なことは、ケイ酸ナトリウム水溶液が結合剤として使用され、これが乾燥した後にその組成および特性に関して古典的なガラスに似ている、という事実でもある。この結合剤は非常に硬く、耐摩耗性であり、耐水性であり、1000℃までの温度に対して耐熱性である。同時に、結合剤は環境に優しく、健康に害がなく、UV放射を良好に反射する。それは毒性有機物質を遊離しない。結合剤は、非常に良好な粘着および接着効果、ならびに普通の表面への良好な接着性を有する。木材チップの表面がこの結合剤で全体的にかつ完全に覆われ、したがって水、火炎および紫外線から保護されるので、この結合剤は木材チップを非常に良好にかつ効率的に結合する。これは、木材の分解を遅らせ、木材からの有機物質の放出を減少させる。この結合剤を有するチップボードは、非常に硬く、強く、耐摩耗性、耐火性、耐熱性を備え、環境に優しく、有機物質を放出することなく健康に害がない。木材チップ材料の非常に有利な特性は、ケイ酸ナトリウム水溶液の含有量が高いためにまた水酸化アルミニウムの含有量のために高温に対する優れた耐性がある点と、木材チップの含有量のために非常に良好な断熱能力の点である。同時に、ケイ酸ナトリウム水溶液のパラメーターは、全体として優れた工業的利用性を意味する非常に良好な弾力性を保証する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施例1
【0019】
耐火性耐水性木材チップ材料は、36重量%のトウヒチップと、58.5重量%のケイ酸ナトリウム水溶液と、3重量%の水酸化アルミニウムと、2重量%の水と、0.5重量%のケイ酸ナトリウム水溶液の安定剤とを含有する混合物からなる。
【0020】
N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの98%水溶液の形態の親水性アルコキシルアルキルアンモニア塩が、ケイ酸ナトリウム水溶液の安定剤として使用される。
【0021】
ケイ酸ナトリウム水溶液の密度は1380kg/m3であり、そのNa2Oに対するSiO2のモル比は3.3である。
【0022】
木材チップ材料は、純粋なケイ酸ナトリウム水溶液に対して0.5~5重量%の濃度で、7:3の体積部の比で純グリセロールジアセテート/トリアセテートの混合物であるケイ酸ナトリウム水溶液の硬化剤をさらに含有する。
【0023】
耐火性耐水性木材チップ材料の製造方法は以下の通りである:第1工程として、水酸化アルミニウムを水と混合する。次いで、トウヒチップを混合物に添加し、次いで、木材チップ混合物が形成されるように、全てを十分に撹拌する。次いで、ケイ酸ナトリウム水溶液の安定剤をケイ酸塩水溶液に添加し、その後、ケイ酸ナトリウム水溶液の硬化剤をこの溶液に混合する。次いで、この溶液を、結合溶液が形成されるまで5分間撹拌する。次いで、木材チップ混合物を、連続的に撹拌しながら結合溶液に注ぎ、全てを再び完全に撹拌する。次いで、得られた混合物を、ボード状シリコーン型である適用箇所に注ぐ。
【0024】
最後に、得られた混合物を、それが硬化するまで静置する。
【0025】
実施例2
【0026】
耐火性耐水性木材チップ材料は、30重量%のマツチップと、61.9重量%のケイ酸ナトリウム水溶液と、5重量%の水酸化アルミニウムと、3重量%の水と、0.1重量%のケイ酸ナトリウム水溶液の安定剤とを含有する混合物からなる。
【0027】
N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの98%水溶液の形態の親水性アルコキシルアルキルアンモニア塩が、ケイ酸ナトリウム水溶液の安定剤として使用される。
【0028】
ケイ酸ナトリウム水溶液の密度は1370kg/m3であり、そのNa2Oに対するSiO2のモル比は3.2である。
【0029】
木材チップ材料は、純粋なケイ酸ナトリウム水溶液に対して0.5~5重量%の濃度で、7:3の体積部の比で純グリセロールジアセテート/トリアセテートの混合物であるケイ酸ナトリウム水溶液の硬化剤をさらに含有する。
【0030】
耐火性耐水性木材チップ材料の製造方法は以下の通りである:第1工程として、水酸化アルミニウムを水と混合する。次いで、マツチップを混合物に添加し、次いで、木材チップ混合物が形成されるように、全てを十分に撹拌する。次いで、ケイ酸ナトリウム水溶液の安定剤をケイ酸塩水溶液に添加し、その後、ケイ酸ナトリウム水溶液の硬化剤をこの溶液に混合する。次いで、この溶液を、結合溶液が形成されるまで1分間撹拌する。次いで、木材チップ混合物を、連続的に撹拌しながら結合溶液に注ぎ、全てを再び完全に撹拌する。次いで、得られた混合物を、ボード状シリコーン型である適用箇所に注ぐ。
【0031】
最後に、得られた混合物を、それが硬化するまで静置する。
【0032】
実施例3
【0033】
耐火性耐水性木材チップ材料は、43重量%のトウヒチップとマツチップとの混合物と、53重量%のケイ酸ナトリウム水溶液と、2重量%の水酸化アルミニウムと、1重量%の水と、1重量%のケイ酸ナトリウム水溶液の安定剤とを含有する混合物からなる。
【0034】
N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの98%水溶液の形態の親水性アルコキシルアルキルアンモニア塩が、ケイ酸ナトリウム水溶液の安定剤として使用される。
【0035】
ケイ酸ナトリウム水溶液の密度は1400kg/m3であり、そのNa2Oに対するSiO2のモル比は3.4である。
【0036】
木材チップ材料は、純粋なケイ酸ナトリウム水溶液に対して0.5~5重量%の濃度で、7:3の体積部の比で純グリセロールジアセテート/トリアセテートの混合物であるケイ酸ナトリウム水溶液の硬化剤をさらに含有する。
【0037】
耐火性耐水性木材チップ材料の製造方法は以下の通りである:第1工程として、水酸化アルミニウムを水と混合する。次いで、トウヒおよびマツチップを混合物に添加し、次いで、木材チップ混合物が形成されるように、全てを十分に撹拌する。次いで、ケイ酸ナトリウム水溶液の安定剤をケイ酸塩水溶液に添加し、その後、ケイ酸ナトリウム水溶液の硬化剤をこの溶液に混合する。次いで、この溶液を、結合溶液が形成されるまで10分間撹拌する。次いで、木材チップ混合物を、連続的に撹拌しながら結合溶液に注ぎ、全てを再び完全に撹拌する。次いで、得られた混合物を、3D形状片用のシリコーン型である適用箇所に注ぐ。
【0038】
最後に、得られた混合物を、それが硬化するまで静置する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明による木材チップ材料は、特に建築産業における用途のための成形片またはボードを製造するために使用することができる。