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特許7636143施工部材測定方法およびそのための測定システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】施工部材測定方法およびそのための測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20250218BHJP
   G01B 11/08 20060101ALI20250218BHJP
   G01B 11/14 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
G01C15/00 103E
G01B11/08 Z
G01B11/14 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020126978
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024410
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-05-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0233083(US,A1)
【文献】特開2017-009546(JP,A)
【文献】特開2018-173346(JP,A)
【文献】特開2010-014693(JP,A)
【文献】特開2020-076624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
G01B 11/00 - 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定点までの距離および角度をノンプリズム測定する測距部を有し、測距光が前記測定点を往復する時間を計測することでノンプリズム測距を行い、かつ前記測距光の出射方向を基準光軸に対して偏向する偏向部を備えるスキャナ装置によって、
測定対象に対し三次元空間上に指定された2以上の指定点の三次元座標を直線で結んだ三次元測定ラインに沿って、前記指定点の二点を結ぶ直線上のみを、一方の指定点から他方の指定点に向けて連続してノンプリズム測定するラインスキャンを行い、
前記三次元測定ライン付近で測定された測定点の三次元座標から、前記測定対象の部材間隔および/または部材太さの測定結果を算出し、表示部に表示することを特徴とする測定システム。
【請求項2】
前記測定システムは、三次元空間上で前記三次元測定ラインから所定距離範囲内の測定点のみを抽出し、これらを前記三次元測定ライン付近で測定された測定点として前記測定結果を算出することを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記測定システムは、前記三次元測定ラインの測定を繰り返し継続し、前記測定結果を常に更新して表示することを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項4】
前記測定システムは、前記三次元測定ラインを複数設定し、各前記三次元測定ラインを順に測定することを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項5】
前記測定システムは、前記指定点を3点以上指定し、前記指定点らからなる三次元空間上の断面を測定エリアとして算出し、該測定エリアを前記ノンプリズム測定で、一筆書きにラインスキャンすることを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項6】
前記測定システムは、三次元任意直線方向に沿って既知の距離延長すると前記指定点となる仮指定点を測定し、前記仮指定点の座標を前記延長直線方向の方向余弦と前記既知の距離で補正した座標を前記指定点の前記三次元座標とすることを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項7】
前記測定システムは、前記指定点から高さ方向だけ異なる仮指定点を測定し、前記仮指定点の全てまたは少なくとも一つの高さを前記指定点に合わせて変更した座標を前記指定点の前記三次元座標とすることを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項8】
前記測定システムは、前記スキャナ装置の測定間隔を、前記三次元測定ライン上の実空間で等間隔になるように設定することを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項9】
前記測定システムは、前記測定結果が設計値に対し異常であるときは、アラームを表示することを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項10】
前記指定点は、前記指定点に対しオフセット観測が可能なターゲットにより指定されることを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項11】
測定点までの距離および角度をノンプリズム測定する測距部を有し、測距光が前記測定点を往復する時間を計測することでノンプリズム測距を行い、かつ前記測距光の出射方向を基準光軸に対して偏向する偏向部を備えるスキャナ装置を用いて、
測定対象に対し三次元空間上に2以上の指定点を指定するステップと、
前記指定点のそれぞれの三次元座標を測定するステップと、
前記指定点の前記三次元座標を直線で結んだ三次元測定ラインを算出し、前記三次元測定ラインに沿って、前記指定点の二点を結ぶ直線上のみを、一方の指定点から他方の指定点に向けて連続して複数の測定点をノンプリズム測定するラインスキャンを行うステップと、
前記三次元測定ライン付近の前記測定点のみを抽出するステップと、
抽出された前記測定点の三次元座標から、前記測定対象の部材間隔および/または部材太さの測定結果を算出するステップと、
前記測定結果を表示部に表示するステップと、
を有することを特徴とする測定方法。
【請求項12】
請求項11に記載の測定方法を、コンピュータプログラムで記載し、それを実行可能にしたことを特徴とする測定プログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事現場の施工部材について、部材間隔や部材太さを測定する方法およびそのための測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設工事において、構造体の性能確保のために、施工部材の施工管理は極めて重要である。例えば構造体の鉄筋の施工管理であれば、鉄筋間隔や鉄筋太さが設計通りとなっているか等を確認する。
【0003】
特許文献1では、パルスレーザを鉛直方向および水平方向にドーム走査する三次元レーザスキャナを用いて、少しずつスキャナの計測位置をずらし、構造体について取得した多数の点群データを解析することで鉄筋間隔や鉄筋太さを計算することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-261772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、パルスレーザが捉えた鉄筋以外の要素も点群データとして取得されるため、鉄筋以外の要素のデータを削除する後処理が必要となり、施工管理の対象となる鉄筋の測定結果を現場ですぐに確認できないという課題があった。また、計測位置をずらす際のスキャナ設置に手間がかかることや、スキャン時間が長いという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであって、施工管理の対象となる部材だけをスキャンすることを可能にし、設置と測定時間の問題を解消するとともに、現場で即時に測定結果が得られる測定方法およびそのための測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の測定システムは、測定点までの距離および角度をノンプリズム測定する測距部を有する測定装置によって、測定対象に対し三次元空間上に指定された2以上の指定点の三次元座標を直線で結んだ三次元測定ラインに沿ってノンプリズム測定し、前記三次元測定ライン付近で測定された測定点の三次元座標から、前記測定対象の部材間隔および/または部材太さの測定結果を算出し、表示部に表示することを特徴とする。
【0008】
上記態様において、前記測定システムは、三次元空間上で前記三次元測定ラインから所定距離範囲内の測定点のみを抽出し、これらを前記三次元測定ライン付近で測定された測定点として前記測定結果を算出するのも好ましい。
【0009】
上記態様において、前記測定システムは、前記測定ラインの測定を繰り返し継続し、前記測定結果を常に更新して表示するのも好ましい。
【0010】
上記態様において、前記測定ラインを複数設定し、各測定ラインを順に測定するのも好ましい。
【0011】
上記態様において、前記測定システムは、前記指定点を3点以上指定し、前記指定点らからなる三次元空間上の断面を測定エリアとして算出し、該測定エリアをノンプリズム測距するのも好ましい。
【0012】
上記態様において、前記測定システムは、三次元任意直線方向に沿って既知の距離延長すると前記指定点となる仮指定点を測定し、前記仮指定点の座標を前記延長直線方向の方向余弦と前記既知の距離で補正した座標を前記指定点の前記三次元座標とするのも好ましい。
【0013】
上記態様において、前記指定点から高さ方向だけ異なる仮指定点を測定し、前記仮指定点の全てまたは少なくとも一つの高さを前記指定点に合わせて変更した座標を前記指定点の前記三次元座標とするのも好ましい。
【0014】
上記態様において、前記測定装置の測定間隔を、前記測定ライン上の実空間で等間隔になるように設定するのも好ましい。
【0015】
上記態様において、前記測定結果が設計値に対し異常であるときは、アラームを表示するのも好ましい。
【0016】
上記態様において、前記測定装置は、測距光が前記測定点を往復する時間を計測することでノンプリズム測距を行い、かつ前記測距光の出射方向を基準光軸に対して偏向する偏向部を備えるスキャナ装置であるのも好ましい。
【0017】
上記態様において、前記測定点から反射した反射測距光と参照光の位相差からノンプリズム測距が行える測量機であるのも好ましい。
【0018】
上記態様において、前記指定点は、前記指定点に対しオフセット観測が可能なターゲットにより指定されるのも好ましい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明のある態様の測定方法は、測定対象に対し三次元空間上に2以上の指定点を指定するステップと、前記指定点のそれぞれの三次元座標を測定するステップと、前記指定点の前記三次元座標を直線で結んだ三次元測定ラインを算出し、前記三次元測定ラインに沿って複数の測定点をノンプリズム測定するステップと、前記三次元測定ライン付近の前記測定点のみを抽出するステップと、抽出された前記測定点の三次元座標から、前記測定対象の部材間隔および/または部材太さの測定結果を算出するステップと、前記測定結果を表示部に表示するステップと、を有することを特徴とする。
【0020】
上記態様の測定方法を、コンピュータプログラムで記載し、それを実行可能にした測定プログラムも好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の施工部材測定方法および測定システムによれば、施工管理の対象となる部材だけをスキャンし、現場で即時に測定結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る現場での使用イメージ図である。
図2】第1の実施形態に係る測定システムの構成図である。
図3】第1の実施形態に係る測定装置の構成ブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る測距部の構成ブロック図である。
図5】第1の実施形態に係る測定装置によるスキャンのイメージ図である。
図6】第1の実施形態に係る測定装置によるターゲットサーチのイメージ図である。
図7】第1の実施形態に係る施工部材測定方法を示すフロー図である。
図8A】同測定方法の作業前半のイメージ図である。
図8B】同測定方法の作業後半のイメージ図である。
図9】第2の実施形態に係る測定システムの構成図である。
図10】第2の実施形態に係る測定装置の構成ブロック図である。
図11】実施形態に係る変形例(1)によるスキャンのイメージ図である。
図12】変形例(1)による測定結果の表示例である。
図13】実施形態に係る変形例(2)によるスキャンのイメージ図である。
図14】変形例(2)による測定結果の表示例である。
図15】実施形態に係る変形例(3)によるスキャンのイメージ図である。
図16】実施の形態に係る変形例(4)に係る測定システムの現場でのある使用イメージ図である。
図17】実施形態に係る変形例(5)に係る測定システムの構成ブロック図である。
図18】実施形態に係る変形例(5)の測定システムの現場でのある使用イメージ図である。
図19】変形例(5)の測定システムの現場での別の使用イメージ図である。
図20】実施形態に係る変形例(6)の測定システムの現場での使用イメージ図である。
図21】変形例(6)によるスキャンのイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、以下に説明する複数の実施形態や変形例において共通する、測定システム1の現場での使用イメージ図である。図1に示すように、測定システム1は、建設現場において、測定装置2を用いて、施工管理の対象となる施工部材(測定対象)の三次元空間上の「2点」の間を直線で結ぶような計測を行う。上記の三次元空間上の2点を指定点T1,T2と称し、上記の三次元空間上の直線を三次元測定ラインMLと称する。測定システム1は、指定点T1、T2を結ぶ三次元測定ラインML付近の測定点のデータから測定対象の部材間隔や部材太さを算出し、即時に測定結果を数値で表示する。
【0025】
(第1の実施形態の測定システム)
図2は第1の実施形態に係る測定システム1の構成図である。測定システム1は、スキャナ装置2と、ターゲット3を備える。スキャナ装置2が本形態における「測定装置」である。先にスキャナ装置2について説明し、ターゲット3については後述する。
【0026】
(スキャナ装置)
図2に示すように、スキャナ装置2は、フレネルスキャナ21と、表示部22を備える。フレネルスキャナ21は、後述するように、測距光270を基準光軸から偏向させて出射することができる。フレネルスキャナ21が本形態における「測距部」である。
【0027】
スキャナ装置2は、少なくとも上記構成要素を備えていれば、装置形態は問わない。図2では、一例として、スキャナ装置2は三脚によって設置されているが、設置は任意であり、作業員に手持ちされるハンディタイプの装置形態であっても、自律飛行可能なUAV(Unmanned Air Vehicle)タイプの装置形態であっても良い。本形態では、スキャナ装置2は回転台5を備え、回転台5に配置された2つのエンコーダにより、スキャナ装置2の水平方向回転角および垂直方向回転角が把握されるよう構成されている。
【0028】
図3は第1の実施形態に係るスキャナ装置2(測定装置)の構成ブロック図である。スキャナ装置2は、上記フレネルスキャナ21と、上記表示部22と、演算処理部23と、任意の要素として、カメラ24と通信部25を備えている。
【0029】
図4はスキャナ装置2におけるフレネルスキャナ21(測距部)の構成ブロック図である。フレネルスキャナ21は、パルスレーザ(測距光270)を基準光軸Оから任意の方向に偏向して出射し、測定点を計測するものである。
【0030】
フレネルスキャナ21は、出射部210、受光部220、測距演算部230、出射方向検出部240、モータドライバ250、および偏向部260を有する。
【0031】
出射部210は、出射光軸21aを有し、出射光軸21a上に例えばレーザダイオード(LD)の発光素子21bと、投光レンズ21cを有する。受光部220は、受光光軸22aを有し、受光光軸22a上に結像レンズ22cと例えばフォトダイオード(PD)等の受光素子22bを有する。出射光軸21aは、出射光軸21a上に設けられた第1反射ミラー21dと受光光軸22a上に設けられた第2反射ミラー22dとによって偏向され、受光光軸22aと合致する。出射部210は、発光素子21bから発せられたパルスレーザを測距光270として出射する。受光部220は、測定点からの反射測距光280を受光し、受光信号にして測距演算部230へ出力する。測距演算部230は、上記受光信号に基づき、パルスレーザが測定点を往復した時間を計測することで、測定点までの距離を演算する。
【0032】
偏向された出射光軸21aおよび受光光軸22a上には、偏向部260が配置されている。偏向部260では、中心を透過する真直な光軸が基準光軸Oとなっており、基準光軸Oは、偏向部260によって偏向されなかった時の出射光軸21aおよび受光光軸22aと合致する。偏向部260は、一対の光学プリズム26a,26bを有する。光学プリズム26a,26bはそれぞれ、複数のリズレープリズム(円形ウェッジプリズム)が連なって形成されている。複数のリズレープリズムは受光光軸22aと直交する方向に連なっており、中央位置に配置されたリズレープリズムは測距光270を偏向し、その他の位置に配置されたリズレープリズムは反射測距光280を偏向する。
【0033】
光学プリズム26aはモータ26cにより、光学プリズム26bはモータ26dにより、受光光軸22aを中心にしてそれぞれ独立に回転可能である。光学プリズム26a,26bは、角度を独立して制御されることで、測距光270を基準光軸Оから任意の特定方向に偏向し、反射測距光280を受光光軸22aと平行に偏向する。
【0034】
出射方向検出部240は、モータ26c,26dを駆動するモータドライバ250に入力する駆動パルスをカウントすることで、または、エンコーダを使用して、光学プリズム26a,26bの回転位置を演算し、光学プリズム26a,26bの屈折率と回転位置に基づき、測距光270の出射方向を演算する。
【0035】
図5は、スキャナ装置2(測定装置)によるスキャン(ノンプリズム測距)のイメージ図である。スキャナ装置2では、各光学プリズム26a,26bの角度を制御することで、測距光270を任意の直線上に走査することができる。
【0036】
演算処理部23は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を集積回路に実装したマイクロコントローラである。演算処理部23は、出射方向検出部240から得た測距光270の出射方向から、各測定点について基準光軸Oに対する水平角および鉛直角を演算し、該水平角鉛直角を測距演算部230の測距のデータに関連付けることで、各測定点の三次元座標を計測する。そして、本形態ではさらに、演算処理部23は、指定点座標取得部231と、測定ラインスキャン部232と、スキャン間隔設定部233と、測定ライン点群抽出部234と、測定結果出力部235と、を有する。これらにより、演算処理部23は、指定点T1、T2を結ぶ三次元測定ラインML付近の点群データから測定対象の部材間隔と部材太さを算出し、即時に測定結果を数値として出力する。詳細は後述する。
【0037】
表示部22は、例えばタッチパネル操作が可能な液晶画面であり、測定の設定、指示、および測定結果の確認が行える。
【0038】
通信部25は、任意の要素であるが、演算処理部23が出力した測定結果を、外部端末にデータ転送する。この通信は、現場に応じて、例えばインターネット通信,無線LAN,ブルートゥース(登録商標)通信、有線通信等を用いることができる。
【0039】
カメラ24は、任意の要素であるが、演算処理部23が出力した測定結果を、現場の画像に重畳して出力する時に用いられる。カメラ24は、一例として、図4に示すようにフレネルスキャナ21に組み込まれる。カメラ24は、撮像素子24bと撮像制御部24cを備える。撮像素子24bはCCDまたはCMOSセンサであり、各画素は撮像光軸24aを原点とした座標系で位置が特定される。撮像制御部24cは、カメラ24の画像取得のタイミングをフレネルスキャナ21のスキャンタイミングと同期する。演算処理部23は、カメラ24が取得した画像データに測定結果を重ね合わせる画像処理等を行う。演算処理部23が生成した画像は、表示部22に表示される。
【0040】
(ターゲット)
次に、ターゲット3について説明する。但し、ターゲット3は、指定点T1、T2の三次元座標の計測を容易とし、またその測定精度を上げるために用いられるものであって、本形態において必須の構成とはしない。図2に示すように、本形態におけるターゲット3は、支持用の円柱状のポール31と、基準点36を備える円盤状の基準反射部32と、ポール31の倒れを測定するための補助反射部33とを有するオフセット観測用ターゲットを用いるのが好適である。但し、上記形態に限るものではなく、指定点T1、T2をオフセット観測(指定点から既知の長さおよび方向にオフセットされた基準点を測定することで指定点の座標を求める観測)が可能なターゲットであれば使用可能である。
【0041】
基準反射部32はポール31の途中に設けられ、全周に反射シートが巻設されている。ポール31の軸方向にも断続的に反射シートが巻設されており、該反射シートが巻設された部分が補助反射部33を構成する。ポール31の下端部35は、指定点T1,T2を指示できる様に尖端となっている。ポール31の直径は基準反射部32を境に変わるように構成されており、ターゲット3の上下は補助反射部33のサイズで判別がつくようになっている。
【0042】
基準反射部32と補助反射部33は、スキャナ装置2からの測距光270を反射する。基準反射部25の軸方向中心は基準点36となっており、基準点36はポール31の下端部35からのオフセット距離Lが既知となっている。
【0043】
図6は、スキャナ装置2によるターゲット3のサーチのイメージ図である。スキャナ装置2は、偏向部260の光学プリズム26a,26bの回転比率を1:2とすることで、スキャン往路とスキャン復路がスキャンパターンの中心(交点37)で交差する「8」の字形状(2次元閉ループ)のスキャンパターン38を形成することができる。スキャンパターンの交点37がターゲット3の基準点36近傍になると、スキャンパターン38はスキャンの往路および復路で基準反射部32のエッジを通過する。このエッジのターゲット点Q3,Q4,Q5,Q6の測定によって、スキャナ装置2は、スキャンパターンの交点37を基準点36に合わせることができる。また、スキャナ装置2は、補助反射部33にあるターゲット点Q1,Q2の測定によって、ターゲット3の前後左右の倒れが測定できる。スキャンパターンの交点37がターゲット3の基準反射部32上にあると判断されると、スキャナ装置2は、基準点36を測定し、ターゲット3の倒れとオフセット距離Lを考慮することで、オフセット観測により指定点T1,T2の三次元座標を計測する。
【0044】
(測定方法)
以上の測定システム1を使用した施工部材測定方法を説明する。図7は第1の実施形態に係る施工部材測定方法を示すフロー図、図8Aおよび図8Bは同測定方法の作業イメージ図である。
【0045】
測定を開始すると、ステップS101に移行して、第1の測定者は、施工管理の対象となる部材(構造物を構成する施工部材であり、一つの施工部材であっても複数の施工部材群であってもよい。以下、測定対象と称する)の三次元空間上の「2点」、指定点T1、T2に、ターゲット3の下端部35を当てる。
【0046】
次にステップS102に移行して、第2の測定者は、スキャナ装置2の測定を開始する。スキャナ装置2の指定点座標取得部231は、ターゲット3の基準点36を検出し、指定点T1の三次元座標を計測する(図8A参照)。なお、スキャナ装置2がカメラ24を備えていれば、カメラ画像に写っているターゲット3がタップされることで、指定点の検出時間が短縮されるよう構成するのも好ましい。
【0047】
続いてステップS103に移行して、スキャナ装置2の指定点座標取得部231は、指定点T2の三次元座標を計測する(図8A参照)。
【0048】
次に、ステップS104に移行して、スキャナ装置2の測定ラインスキャン部232は、三次元空間上で指定点T1、T2を結ぶ三次元測定ラインMLを算出し、指定点T2からT1に向けて(または指定点T1からT2に向けて)、偏向部260を制御しながら測距光270を出射し、三次元測定ラインMLをラインスキャンする(図8A参照)。この時、スキャン間隔設定部233は、スキャンが測定対象となる部材を捉えられるように、施工部材の太さよりもスキャン間隔が狭くなるように設定するのが好ましい。例えば測定対象の鉄筋の直径が設計値で2cmである場合、測定者が設計値を入力すると、スキャン間隔設定部233はスキャン間隔が例えば設計値の50%以下となるように設定する。スキャン間隔は、部材に測定点が少なくとも1点当たる間隔であれば良く、スキャン速度と測距光270のパルス発光周期との関係を制御することで所望の値に設定できる。
【0049】
次に、ステップS105に移行して、スキャナ装置2の測定ライン点群抽出部234は、ステップS104で得られた点群から、三次元測定ラインMLから三次元空間的で所定距離範囲内の点群のみを抽出する解析を行う。例えば図8Bに示すように、現場を上から俯瞰した時に、測定点pが図のように取得された場合、スキャナ装置2の座標系(スキャナ座標系)で三次元測定ラインMLからXYZの各方向に所定距離範囲内(所定距離範囲内となる三次元空間を所定範囲空間qとして示す。所定距離の値は任意に設定可能である)の点群は鉄筋のものであると推定して残し、その他の点群(所定範囲空間q外の点群)は鉄筋より手前または奥にある別の要素のものであるとして削除する。
【0050】
次に、ステップS106に移行して、スキャナ装置2の測定結果出力部235は、ステップS105で残した点群に対し、それぞれ、スキャン方向(すなわち三次元測定ラインML方向)の点間隔を算出し、点群が離間しているところは測定対象の部材間隔であり、点群が密集しているところは測定対象の部材太さであるとして、測定対象の部材間隔および/または部材太さの「数値」を算出する(図8B参照)。
【0051】
次に、ステップS107に移行して、測定結果出力部235は、ステップS106で算出した「測定結果」、すなわち測定対象の部材間隔および/または部材太さの「数値」を、表示部22に表示する(図8B参照)。この時、スキャナ装置2がカメラ24を備えていれば、カメラ画像に上記の数値を重畳させて表示してもよい。また、スキャナ装置2が通信部25を備えていれば、外部端末に上記の数値をデータ転送してもよい。また、測定結果(数値)が設計値に対し許容誤差範囲を超えていた場合、表示部22にアラームを表示するのも好ましい。
【0052】
(作用効果)
以上、本形態の測量システム1によれば、測定対象に対し三次元空間上の2点を指定しその2点間を直線で結ぶようなスキャン計測を行うことで、施工管理の対象となる部材だけをスキャンすることができる。そのため、データを現場から一度持ち帰って測定対象以外のデータを削除する後処理が不要となり、測定対象に関する測定結果(数値)を現場で即時に確認することができる。
【0053】
また、本形態の測量システム1によれば、スキャナ装置2は指定点T1,T2を結ぶ直線上のみをスキャンするから、装置の計測位置をずらしながら広範囲のスキャンをする場合に比べて、測定時間が圧倒的に短くなる。また、スキャナ座標系の三次元空間で数値を算出するものであるから、スキャナ座標系を地上座標系に合わせる必要がないため、器械設置は任意であり、設置の手間は省くことができる。
【0054】
(第2の実施形態の測定システム)
図9は第2の実施形態に係る測定システム1´の構成図である。測定システム1は、測量機2´と、ターゲット3´とを備える。測量機2´が本形態における「測定装置」である。測定システム1´の現場での使用イメージは、図1と同じである。第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を引用して説明を割愛する。
【0055】
(測量装置)
測量機2´はトータルステーションである。測量機2´は、三脚を用いて器械設置される。測量機2´は、整準器の上に設けられた基盤部と、基盤部上を水平回転する托架部2bと、托架部2bの中央で鉛直回転する望遠鏡2cを有する。
【0056】
図10は第2の実施形態に係る測量機2´(測定装置)の構成ブロック図である。測量機2´は、測距部21´と、測角部26と、托架部2bの水平方向回転駆動部27と、望遠鏡2cの鉛直方向回転駆動部28と、記憶部29と、前述の表示部22と、前述の演算処理部23と、任意の要素として、前述のカメラ24と通信部25を備えている。
【0057】
水平方向回転駆動部27と鉛直方向回転駆動部28はモータであり、演算処理部23によって制御される。測角部26は、托架部2bの回転軸と望遠鏡2cの回転軸にそれぞれ設けられたエンコーダである。測距部21´は、発光素子と、送光光学系と、受光光学系と、受光素子を有する。測距部21´は、測定点に向けて赤外レーザ等の測距光270´を出射し、受光素子で測定点からの反射測距光を受光する。演算処理部23は、上記反射測距光と上記光学系内に設けられた参照光路を進んだ参照光との位相差から、測定点までの測距値を算出する。また、測距時の測角部26の検出値から、測定点の測角値を算出する。記憶部29は、例えば、メモリーカード、HDD等によって構成される。記憶部29には、演算処理部23が行う測量プログラムが格納されている。また、演算処理部23が取得した各種情報が記録される。
【0058】
測量機2´は、プリズムをターゲットとするプリズム測距と、プリズム以外の測定点をターゲットとするノンプリズム測距の両方を行うことができる。
【0059】
(ターゲット)
本形態におけるターゲット3´は、指定点T1、T2の三次元座標の測定を容易とし、またその測定精度を上げるために用いられるものであって、本形態において必須の構成とはしない。ターゲット3´は、図2に示したオフセット観測用ターゲット3を使用してもよいし、その他のオフセット観測が可能なターゲットであれば使用されてよい。一例として、本形態のターゲット3´は、図9に示すように、反射体32´を備えた支持棒31´を有する。反射体32´は、再帰反射プリズムであっても、反射シートであってもよい。支持棒31´の先端部35´は、指定点T1,T2を指示できる様に尖端となっている。先端部35´と反射体32´の反射中心との距離Lは既知とされ、支持棒31´の前後左右の倒れは傾きセンサ33´(例えば三軸加速度センサや視線方向に対する傾斜角を画像解析できる傾斜計シート)により測定される。
【0060】
(測定方法)
以上の測定システム1´を使用した施工部材測定方法を説明する。本形態の施工部材測定方法を示すフロー、同測定方法の作業イメージは、図7と同様である。図7のフローを引用して説明する。
【0061】
測定を開始すると、ステップS101に移行して、第1の測定者は、施工管理の対象となる部材(測定対象)の三次元空間上の「2点」、指定点T1、T2に、ターゲット3´の先端35´を当てる。
【0062】
次にステップS102に移行して、第2の測定者は、測量機2´を指定点T1に向ける。測量機2´の指定点座標取得部231は、ターゲット3´をプリズム測距またはノンプリズム測距し、指定点T1の三次元座標を計測する。同様に、ステップS103で、指定点T2の三次元座標を計測する。
【0063】
次に、ステップS104に移行して、測量機2´の測定ラインスキャン部232は、三次元空間上で指定点T1、T2を結ぶ三次元測定ラインMLを算出し、水平方向回転駆動部27,鉛直方向回転駆動部28の角度を制御しながら測距光270´を出射し、三次元測定ラインML上を複数回ノンプリズム測距する。この時、スキャン間隔設定部233は、ノンプリズム測距が測定対象となる部材を捉えられるように、施工部材の太さよりも測距光270´の測定間隔が狭くなるように、水平方向回転駆動部27,鉛直方向回転駆動部28の角度を設定するのが好ましい。
【0064】
次に、ステップS105に移行して、測量機2´の測定ライン点群抽出部234は、ステップS104で得られた点群から、三次元空間上で三次元測定ラインMLから所定距離範囲内の点群のみを抽出する解析を行う。
【0065】
次に、ステップS106に移行して、測量機2´の測定結果出力部235は、ステップS105で残した点群に対し、それぞれ、スキャン方向(すなわち三次元測定ラインML方向)の点間隔を算出し、測定対象の部材間隔および/または部材太さの「数値」を算出する。
【0066】
次に、ステップS107に移行して、測量機2´の測定結果出力部235は、ステップS106で算出した「測定結果」、すなわち測定対象の部材間隔および/または部材太さの「数値」を、表示部22に表示する。この時、測量機2´がカメラ24を備えていれば、カメラ画像に上記の数値を重畳させて表示してもよい。また、測量機2´が通信部25を備えていれば、外部端末に上記の数値をデータ転送してもよい。また、測定結果(数値)が設計値に対し許容誤差範囲を超えている場合、表示部22にアラームを表示するのも好ましい。
【0067】
(作用効果)
以上、本形態の測量システム1´によれば、スキャン装置2を測量機2´に置き換えても、施工管理の対象となる部材だけをスキャンすることができる。このため、測定対象に関する測定結果(数値)を現場で即時に確認することができる。
【0068】
(好ましい変形例)
次に、上記第1および第2の実施形態に適用できる好ましい変形例を複数示す。以下、代表して第1の実施形態に適用する例を示す。第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を用いて説明を割愛する。
【0069】
図11は実施形態の変形例(1)によるスキャンのイメージ図、図12は変形例(1)による測定結果の表示例である。変形例(1)に係る測定システム1は、三次元測定ラインMLを、複数回、往復スキャンする。この往復スキャンは、反復走査でも、1方向走査の繰り返しでもよい。変形例(1)は、特に、施工中の部材位置決めに有効である。変形例(1)によれば、往復スキャンでスキャンを継続することで、施工中の部材について、部材間隔が表示部22に瞬時に出力される。このため、表示された数値を見れば、施工中の部材が設計値通りの部材間隔となっている/設計値よりも間が長くなっている/設計値よりも間が短くなっている、ことがリアルタイムで分かる。従って、測定結果の数値を見て調整しながら施工することが可能となる。また、往復スキャンで得られた測定結果を平均化すれば、測定精度が向上する利点もある。変形例(1)においては、施工作業者の持つ端末にデータ転送することも好ましい。また、設計値からの乖離の程度で測定結果の表示を色分け等してアラームすることも好ましい。
【0070】
図13は実施形態に係る変形例(2)によるスキャンのイメージ図、図14は変形例(2)による測定結果の表示例である。変形例(2)に係る測定システム1は、複数の三次元測定ラインML1,ML2,・・・を設定し、それらを順にスキャンする。変形例(2)に係る測定システム1も、施工中の部材位置決めに有効である。図13に一例を示す。作業者Aと作業者Bは、XY平面に格子状に鉄筋を設置する施工作業において、Y方向に渡す鉄筋Cを施工中である。この場合、X方向に沿って、作業者A側に測定ラインML1を設定し、作業者B側に測定ラインML2を設定し、測定ラインML1,ML2を交互に測定して、作業者Aの端末PAと作業者Bの端末PBに測定ラインML1,ML2の測定結果を表示する。変形例(2)によれば、複数人による施工作業が容易となる。
【0071】
図15は実施形態に係る変形例(3)によるスキャンのイメージ図である。変形例(3)に係る測定システム1は、指定点を「3点以上」指定してエリアスキャンを行う。図15では、指定点T1、T2、T3、T4の4点を指定した場合を示している。変形例(3)においては、スキャン装置2の測定ラインスキャン部232は、図7のステップS104で、三次元空間上で指定点T1、T2、T3、T4からなる断面を測定エリアMAとして算出し、測定エリアMA内を一筆書き走査する。続いて、測定ライン点群抽出部234は、図7のステップS105で、ステップS104で得られた点群から、三次元空間上で測定エリアMAから所定距離範囲内の点群のみを抽出する解析を行う。変形例(3)によれば、測定をラインからエリアに拡張させることができ、かつ、その測定結果を現場で即時に確認することができる。
【0072】
図16は実施形態に係る変形例(4)に係る測定システム1の現場でのある使用イメージ図である。変形例(4)に係る測定システム1は、指定点T1、T2の両方または一方の位置を三次元任意直線方向に延長して測定したい場合に有効である。図16では一例として、本来指定点T2として指定したい点に物理的障害があり、ターゲット3を当てられない場合である。この場合は、図7のステップS101で、第1の測定者は、三次元任意直線SLの方向に既知の距離Hだけ位置をずらすと指定点T2となる位置に仮指定点T2´にターゲット3を当てる。そして、スキャン装置2の指定点座標取得部231は、ステップS103において仮指定点T2´の三次元座標(X2,Y2,Z2)を取得し、三次元任意直線SLの方向余弦(Vx,Vy,Vz)を用いて、(Vx×H+X2,Vy×H+Y2,Vz×H+Z2)を指定点T2の三次元座標として計測する。変形例(4)によれば、三次元測定ラインMLの設定に自由度が増し、よりデータが欲しい部分について容易に計測を行うことができる。なお、距離Hは指定しても良いし、スキャナ装置2の測定限界まで延長してもよい。
【0073】
図17は実施形態に係る変形例(5)に係る測定システム1の構成ブロック図である。変形例(5)に係る測定システム1は、スキャナ装置2の場合はさらにチルトセンサ6を備える。変形例(5)では、スキャナ装置2は三脚等によって設置する必要があり、チルトセンサ6は、回転台5上に配置される(なお、測量機2´であれば、元々チルトセンサを備えているものが多い)。スキャナ装置2の指定点座標取得部231は、チルトセンサ6の傾斜姿勢情報に基づいてスキャナ装置2の鉛直を把握し、スキャナ座標系の高さ(Z)を測定する。変形例(5)に係る測定システム1は、指定点T1、T2の両方または一方の高さを変えたい場合に有効である。変形例(5)によれば、三次元測定ラインMLの設定に自由度が増し、よりデータが欲しい部分について容易に計測を行うことができる。
【0074】
図18は実施の形態に係る変形例(5)の測定システム1の現場でのある使用イメージ図である。図18では一例として、本来指定点T2として指定したい点に物理的障害があり、ターゲット3を当てられない場合である。この場合は、図7のステップS101で、第1の測定者は、指定点T2から高さ方向(Z方向)に位置をずらした仮指定点T2´にターゲット3を当てる。そして、スキャン装置2の指定点座標取得部231は、ステップS103において仮指定点T2´の三次元座標(X2,Y2,Z2)を取得し、仮指定点T2´のZ座標を指定点T1のZ座標(Z1)に合わせ、三次元座標(X2,Y2,“Z1”)を指定点T2として計測する。なお、後述の変形例(5)を変形例(4)に組み合わせ、仮指定点T2´から高さDだけずれた位置にターゲット3を当て、変形例(5)の方法で変形例(4)の仮指定点T2´の座標を取得してもよい。
【0075】
図19は変形例(5)の測定システム1の現場での別の使用イメージ図である。図19では一例として、本来指定点T1,T2として指定したい位置にターゲット3を当てるのが困難である場合である。この場合は、図7のステップS101で、第1の測定者は、指定点T1、T2から既知の高さDだけ位置をずらした仮指定点T1´、T2´にターゲット3を当てる。そして、スキャン装置2の指定点座標取得部231は、ステップS102、S103で、仮指定点T1´の三次元座標(X1,Y1,Z1)と、仮指定点T2´の三次元座標(X2,Y2,Z2)を取得して、仮指定点T1´のZ座標に高さDを加え、三次元座標(X1,Y1,“Z1+D”)を指定点T1の三次元座標として計測し、同様に、三次元座標(X2,Y2,“Z2+D”)を指定点T2の三次元座標として計測する。なお、高さDは加えるだけでなく引くことも可能である。
【0076】
図20は実施形態に係る変形例(6)の測定システム1の現場での使用イメージ図、図21は変形例(6)によるスキャンのイメージ図である。変形例(6)に係る測定システム1は、特に、図20に示すように、三次元測定ラインMLをスキャン装置2から遠近方向に設定する場合に有効である。スキャン間隔を一定にしてスキャンすると、すなわち光出射角度を一定間隔で制御すると、三次元測定ラインMLの手前から奥に向かうにつれて、奥の点群間隔が手前の点群間隔よりも広く取得されてしまう。従って、変形例(6)では、スキャナ装置2のスキャン間隔設定部233は、測定間隔の数値が「d」と指定された場合、指定点T1、T2の間を間隔dで割りつけた位置が測定点となるようにスキャン間隔を変更し、図21に示すように、三次元測定ラインML上の実空間で間隔dで測定点が取れるように光出射角度を制御する。変形例(6)によれば、三次元測定ラインML上の点群がスキャナ装置2からの見かけ角度に左右されずに得られるので、測定結果の数値に誤差が生じるのを防ぐことができる。
【0077】
以上、本発明の好ましい測定方法および測定システムについて、実施の形態および変形例を述べたが、各形態および各変形を当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。また、実施の形態および変形例では施工管理をする対象となる部材として、鉄筋を例にして説明したが、鉄骨や軽量鉄骨等の他の施工部材を測定対象にすることも勿論可能である。
【符号の説明】
【0078】
1、1´ 測定システム
2 スキャナ装置(測定装置)
2´ 測量機(測定装置、測距部)
21 フレネルスキャナ(測距部)
260 偏向部
270 測距光
280 反射測距光
22 表示部
23 演算処理部
24 カメラ
25 通信部
3 ターゲット
36 基準点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21