(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】蓄電セル冷却構造
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6557 20140101AFI20250218BHJP
H01M 10/6567 20140101ALI20250218BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20250218BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20250218BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20250218BHJP
【FI】
H01M10/6557
H01M10/6567
H01M10/647
H01M10/625
H01M10/613
(21)【出願番号】P 2020134694
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】神谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】後藤 光晴
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-010939(JP,A)
【文献】特開2010-040345(JP,A)
【文献】特開2006-228580(JP,A)
【文献】特表2022-531359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6557
H01M 10/6567
H01M 10/647
H01M 10/625
H01M 10/613
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔を隔てて対向するように配列された複数の蓄電セルと、
前記蓄電セルの間に位置する一対の弾性体と、
前記一対の弾性体の間に位置し、互いに接離可能に相対する一対の内側面を有し、前記一対の内側面が相互に相対する当接部と前記当接部より凹んだ相互に相対する溝とを有する
仕切り板と、を備え、
前記仕切り板は、前記相対する一対の内側面の前記相互に相対する当接部が互いに接触して前記溝に冷却水が流れる第1の状態と、前記内側面が互いに離間して前記溝および前記当接部に冷却水が流れる第2の状態をとる、蓄電セル冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電セル冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から各種の蓄電セル冷却構造が提案されている。特許文献1(特開2015-69845号公報)に記載された蓄電セル冷却構造は、一方向に配列された複数の蓄電セルと、蓄電セル間に配置された蓄電セルを冷却するための冷却装置を備えている。冷却装置は循環配管を有し、循環配管には冷媒が流れている。循環配管を流れる冷媒により隣接して配置された蓄電セルを冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電セルは、経年変化や使用条件等によってその厚みが増加するように膨張することが知られている。この従来の蓄電セル冷却構造によると、蓄電セルの初期状態(未膨張状態)と膨張状態とで蓄電セルの厚みが異なることから、冷却装置と蓄電セルとの接触状態が変化する。特に、蓄電セルが未膨張の状態においては、蓄電セルと冷却装置との接触圧が不足し、蓄電セルを安定して冷却することができない。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、蓄電セルが未膨張の状態から膨張状態に変化することによる蓄電セルの厚みの変化の影響を受けにくく、安定して蓄電セルを冷却することができる蓄電セル冷却構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る蓄電セル冷却構造は、互いに間隔を隔てて対向するように配列された複数の蓄電セルと、上記蓄電セルの間に位置する一対の弾性体と、上記一対の弾性体の間に位置し互いに接離可能に相対する内側面を有し上記内側面に溝を有する仕切り板とを備えている。上記仕切り板は、上記相対する内側面の上記溝以外の部分が互いに接触して上記溝に冷却水が流れる第1の状態と、上記内側面が互いに離間して上記溝および上記溝以外の部分に冷却水が流れる第2の状態をとる。
【0007】
上記の蓄電セル冷却構造によれば、上記蓄電セルが膨張した状態においては、上記蓄電セル間の間隔が狭くなり、上記蓄電セルが未膨張の状態においては、上記蓄電セル間の間隔が広くなる。上記蓄電セルの間隔が狭い状態においては、上記弾性体を介して蓄電セルに上記仕切り板が圧迫される。このとき上記仕切り板は、上記相対する内側面の上記溝以外の部分が互いに接触して上記溝に冷却水が流れる第1の状態となる。上記蓄電セル間の間隔が広がった状態においては、冷却水の圧力により、上記内側面が互いに離間して上記溝および上記溝以外の部分に冷却水が流れる第2の状態となる。第2の状態においては、上記仕切り板の内側面が互いに離間して仕切り板の厚みが増すことで、冷却水と蓄電セルとの距離が近くなる。上記仕切り板が第1の状態と第2の状態をとることにより、蓄電セルの膨張および未膨張による影響を緩和し、安定して蓄電セルを冷却することができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る蓄電セル冷却構造によれば、蓄電セルが未膨張の状態から膨張状態に変化することによる蓄電セルの厚みの変化の影響を受けにくく、安定して蓄電セルを冷却することができる蓄電セル冷却構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】比較例における蓄電セルが未膨張状態の蓄電セル冷却構造を模式的に示す側面図である。
【
図2】比較例における蓄電セルが膨張状態の蓄電セル冷却構造を模式的に示す側面図である。
【
図3】本実施の形態における蓄電セルが未膨張状態の蓄電セル冷却構造を模式的に示す側面図である。
【
図4】本実施の形態における蓄電セルが膨張状態の蓄電セル冷却構造を模式的に示す側面図である。
【
図5】本実施の形態の仕切り板の構造を示す図である。
【
図6】本実施の形態の弾性体および仕切り板の構造を示す斜視図である。
【
図7】本実施の形態の弾性体および仕切り板の構造を示す、
図6におけるVII-VII矢視断面図である。
【
図8】本実施の形態の弾性体および膨張した仕切り板を模式的に示す側面図である。
【
図9】本実施の形態の弾性体および膨張した仕切り板を模式的に示す、
図6におけるVII-VII矢視断面図である。
【
図10】蓄電セルの膨張と仕切り板の膨張との関係を示す図である。
【
図11】蓄電セルと冷却水との距離と、時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から
図11を用いて、本実施の形態に係る蓄電セル冷却構造について説明する。
図1から
図11に示す構成のうち、同一または実質的に同一の構成については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0011】
図1および
図2は、本実施の形態の課題を説明するための比較例を示す図である。
図1は、蓄電セルが未膨張の状態を示し、
図2は、蓄電セルが膨張状態を示す。
【0012】
図1および
図2に示すように、比較例の蓄電セル冷却構造は互いに間隔を隔てて対向するように配列された複数の蓄電セル5と、蓄電セル5,5の間に位置する一対の弾性体150,150と、一対の弾性体150,150の間に位置する仕切り板120と、を備えている。
【0013】
図1および
図2においては右端および左端に仕切り板120,120が示されているが、この外側にも蓄電セル5と、仕切り板120および弾性体150とが交互に配列されていてもよい。仕切り板120は、蓄電セル5の厚み方向(
図1および
図2における左右方向)に位置ずれしないように構成されている。
【0014】
比較例の仕切り板120には、複数個の孔130が設けられている。複数個の孔130は、蓄電セル5を冷却する冷却水が流れる流路となる。仕切り板120は比較的硬質の樹脂成型品などで構成されており、その厚みS2は一定である。
【0015】
仕切り板120と蓄電セル5との間には弾性体150が配置されている。弾性体150は蓄電セル5と仕切り板120とに接触するように設けられている。弾性体150は比較的軟質の樹脂成型品などで構成されており、蓄電セル5および仕切り板120に加圧されることにより厚みが減少するように変形する。
【0016】
図1に示すように、蓄電セル5が初期状態(未膨張状態)においては、蓄電セル5の厚みT1は比較的小さい。
図2に示すように蓄電セル5が膨張した状態においては、蓄電セル5の厚みT2は未膨張状態の厚みT1より大きくなる。
【0017】
配列された仕切り板120は位置ずれしないので、蓄電セル5の厚みがT1からT2に増加するとその増加分は、弾性体150が圧縮されて厚みa1(
図1)から厚みb1(
図2)に減少することにより吸収される。弾性体150は蓄電セル5を位置ずれしないように拘束する。
【0018】
図1と
図2の状態を比較すると、蓄電セル5が膨張した
図2の状態においては、弾性体150が圧縮されて厚みb1が比較的小さい。これにより冷却水流路である孔130と、蓄電セル5との距離が比較的小さく(蓄電セル5と孔130との間の熱抵抗が比較的小さく)、蓄電セル5を冷却水により十分に冷却することができる。
【0019】
その一方、蓄電セル5が未膨張の状態の
図1の状態においては、弾性体150の厚みa1が比較的大きい。これにより孔130と蓄電セル5との距離が比較的大きく(蓄電セル5と孔130との間の熱抵抗が比較的大きく)、蓄電セル5を冷却水により十分に冷却することができない。
【0020】
このように比較例の蓄電セル冷却構造においては、蓄電セル5が膨張状態においては蓄電セル5を十分に冷却できるのに対し、蓄電セル5が未膨張の状態においては蓄電セル5を十分に冷却することができず、蓄電セル5の状態によって冷却性能にばらつきが生じるという問題がある。以下に説明する実施の形態は、比較例のこのような問題点を解決するものである。
【0021】
図3および
図4は、本実施の形態の蓄電セル冷却構造を模式的に示す側面図であり、
図3は蓄電セル5が未膨張の状態、
図4は蓄電セル5が膨張した状態を示す。
【0022】
図3および
図4に示すとおり、本開示に係る蓄電セル冷却構造は、互いに間隔を隔てて対向するように配列された複数の蓄電セル5と、蓄電セル5,5の間に位置する一対の弾性体50,50と、一対の弾性体50,50の間に位置し互いに接離可能に相対する内側面を有し内側面に溝30を有する仕切り板20とを備えている。
【0023】
仕切り板20は、相対する内側面の溝30以外の部分が互いに接触して溝30に冷却水が流れる第1の状態(
図4)と、内側面が互いに離間して溝30および溝30以外の部分に冷却水が流れる第2の状態(
図3)をとる。この蓄電セル冷却構造について以下に詳述する。
【0024】
図3および
図4に示す実施の形態においては、2つの蓄電セル5と、3つの仕切り板20とそれらの間に設けられた弾性体50とで蓄電モジュールを構成している。蓄電セル5は一対の弾性体50に挟まれることにより拘束される。
【0025】
図3および
図4においては右端および左端に仕切り板20,20が示されている。仕切り板20の外側にもさらに蓄電セル5と、仕切り板20および弾性体50とが交互に配列されていてもよい。
【0026】
両方の最外端に位置する蓄電セル5または仕切り板20は、拘束部材により蓄電セル5の厚み方向(
図3および
図4における左右方向)に位置ずれしないように拘束されていてもよい。本実施の形態の蓄電モジュールはたとえば車両に搭載される。
【0027】
蓄電セル5は、互いに外側を向く主表面を有する。主表面は平坦に形成されている。蓄電セル5は一例として全体として略板状である。蓄電セル5を構成する二次電池としてはたとえばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池が挙げられる。複数の蓄電セル5が、それらの主表面が互いに対向するように互いに間隔を隔てて配列されている。
【0028】
蓄電セル5,5の間には、一対の弾性体50,50と弾性体50,50に挟まれた仕切り板20が配置されている。仕切り板20は底板60に固定されている。これにより仕切り板20は、蓄電セル5の配列方向(
図3および
図4の左右方向)に位置ずれしない。なお仕切り板20は、底板60に固定せずに他の構造体により保持してもよい。たとえば、上記のように拘束部材で蓄電モジュールを拘束することで仕切り板20を保持してもよい。
【0029】
図5は仕切り板20の構造を示す図であり、(a)は仕切り板20の分解図、(b)は仕切り板20の接合箇所を示す図である。仕切り板20は、弾性体50よりも硬質の樹脂材料で構成されている。
【0030】
図5(a)に示すように、仕切り板20は、仕切り板構成部材20Aと仕切り板構成部材20Bの二枚の板状部材からなる。
【0031】
図5において、仕切り板構成部材20Aの左側面は平坦に構成され、仕切り板構成部材20Bと相対する仕切り板構成部材20Aの右側面には複数の溝30が設けられている。仕切り板構成部材20Bの右側面は平坦に構成され、仕切り板構成部材20Aと相対する仕切り板構成部材20Bの左側面には複数の溝30が設けられている。
【0032】
仕切り板構成部材20Aと仕切り板構成部材20Bとは、
図5(b)に示すように相互に貼り合わされる。そのとき仕切り板構成部材20Aと仕切り板構成部材20Bとは接合箇所22および当接部24において相互に接触する。
【0033】
図5(b)に示すように、接合箇所22において仕切り板構成部材20Aと仕切り板構成部材20Bとは接合されている。この接合は、たとえば両者を溶着または接着することにより行なう。本実施の形態の仕切り板構成部材20A,20Bにおいては、これらが相対する面の上下端に接合箇所22が設けられている。仕切り板構成部材20Aと仕切り板構成部材20Bとはそれらの上下端において接合されている。
【0034】
仕切り板構成部材20A,20Bの相対する面の接合箇所22以外の部分は接合されていない。したがって、貼り合わされた仕切り板構成部材20A,20Bは、上下端以外の部分においては互いに離間することができる。仕切り板構成部材20A,20Bが貼り合わされて仕切り板20が形成された状態において、複数の溝30および複数の当接部24が仕切り板20の内側面を構成する。上記のとおり相対する内側面は互いに接離可能である。
【0035】
仕切り板構成部材20A,20Bの溝30,30は互いに対応する箇所に設けられている。仕切り板構成部材20A,20Bが貼り合わされることで、それぞれの溝30,30がつながり、一つの冷却水流路となる孔を構成する。仕切り板20においては、複数対の溝30,30により複数の孔が形成される。
【0036】
本実施の形態においては仕切り板20を二枚の板状部材で構成したが、一体の板状部材の厚み方向の略中央部を上下端を残して切断することで、互いに接離可能に相対する内側面を有する仕切り板20を形成してもよい。また、仕切り板20は、冷却水流路となる複数の孔および孔の間をつなぐ切れ目が予め形成された、互いに離間可能な内側面を有する一体の部材を樹脂成型することで形成してもよい。
【0037】
図6は、本実施の形態の弾性体50および仕切り板20の構造を示す斜視図である。仕切り板20の両主表面には板状の弾性体50,50が配置されている。本実施の形態においては、弾性体50は、仕切り板20の側面の中央部に配置されている。言い換えると、仕切り板20の主表面の外周部には弾性体50は設けられていない。必要に応じて弾性体50を仕切り板20の主表面の全面に設けてもよい。
【0038】
弾性体50は比較的軟質の樹脂材料で構成された樹脂成型品である。弾性体50を構成する樹脂材料は、仕切り板20を構成する樹脂材料よりも軟質である。弾性体50は、蓄電セル5および仕切り板20に加圧されることにより厚みが減少するように変形する。
【0039】
図7は、本実施の形態の弾性体および仕切り板の構造を示す、
図6におけるVII-VII矢視断面図である。
図7に示すように、弾性体50は、板状の弾性体本体53と弾性体本体53から延びる弾性体脚部55とを有している。弾性体脚部55は、弾性体50の幅方向(
図7における紙面に垂直な方向)に連続して延びるようにしてもよいし、弾性体50の幅方向に断続的に設けてもよい。弾性体本体53と弾性体脚部55とは一体に成型してもよいし、別々に成型して相互に接合してもよい。
【0040】
弾性体本体53と弾性体脚部55とは相互に接合されまたは連続しており、両者間で熱伝導が行われる。弾性体脚部55の弾性体本体53とは反対側の端部は、仕切り板20の内側面に露出している。
【0041】
図8は、本実施の形態の弾性体および仕切り板の膨張した状態を模式的に示す側面図である。
図9は、本実施の形態の弾性体および仕切り板の膨張した状態を模式的に示す、
図6におけるVII-VII矢視断面図である。
【0042】
仕切り板20は互いに接離可能に相対する内側面を有している。仕切り板20および弾性体50,50に対する圧力が小さい状態(蓄電セル5,5間の距離が大きい状態)においては、冷却水の圧力により、仕切り板20の内側面間が押し広げられる。これにより一対の溝30,30で形成される孔だけでなく、溝30の間がつながり相対する内側面間の全体が冷却水流路となる。
【0043】
図9に示すように、内側面に露出した弾性体脚部55の先端は冷却水により直接冷却される。これにより冷却水により弾性体脚部55を介して弾性体50を効率的に冷却することができる。
【0044】
図3,4,10および11を参照して、本実施の形態の蓄電セル冷却構造により蓄電セル5を冷却する作用について説明する。
【0045】
図3に示すように、蓄電セル5が初期状態(未膨張状態)においては、その厚みT1は比較的小さい。
図4に示すように蓄電セル5が膨張した状態においては、その厚みT2は未膨張状態の厚みT1より大きくなる。
【0046】
上記の通り配列された仕切り板20は底板60に固定されているので、仕切り板20は位置ずれしない。蓄電セル5も、仕切り板20および弾性体50に拘束されているので殆ど位置ずれしない。そのため、蓄電セル5の厚みがT1からT2に増加すると、蓄電セル5,5間の距離が小さくなり、仕切り板20および弾性体50に対する圧力が大きくなる。
【0047】
本実施の形態においては、蓄電セル5,5の距離が比較的大きい状態(
図3)においては、仕切り板20は比較的大きい厚みS2を有し、蓄電セル5,5の距離が比較的小さい状態においては、仕切り板20は比較的小さい厚みS1を有している。これらの関係を
図10に示す。
図10に示すように蓄電セルの膨張状態変化(これに伴う蓄電セル5,5間の距離の変化)に対応して、仕切り板20は膨張および収縮することができる。
【0048】
たとえば、蓄電セル5が経年変化により徐々に膨張した場合、仕切り板20は膨張した状態からその厚みを徐々に減らすように収縮することができる。
【0049】
このように本実施の形態の蓄電セル冷却構造によれば、蓄電セル5,5の間隔が狭い状態においては、弾性体50を介して仕切り板20が圧迫される。このとき仕切り板20は、相対する内側面の溝30以外の部分(当接部24)が互いに接触して溝30のみに冷却水が流れる第1の状態となる。
【0050】
蓄電セル5,5の間隔が広がった状態においては、冷却水の圧力により、内側面が互いに離間して溝30および溝30以外の部分(当接部24)に冷却水が流れる第2の状態となる。第2の状態においては、仕切り板20の内側面が互いに離間して仕切り板20の厚みが増す。
【0051】
図3から明らかなように、仕切り板20の内側面が互いに離間して仕切り板20の厚みが増す(仕切り板20が膨張する)ことにより、
図1に示す比較例の場合よりも、冷却水と蓄電セル5との距離が近づき、冷却水と蓄電セル5との間の熱抵抗が小さくなる。言い換えると、
図1における弾性部材の厚みa1よりも、
図3における弾性部材の厚みa2が小さくなる。これにより、蓄電セル5が未膨張で蓄電セル5,5間の距離が比較的大きい場合でも、蓄電セル5を冷却水により効果的に冷却することができる。
【0052】
図4に示すように蓄電セル5が膨張して蓄電セル5,5の距離が小さくなった場合には、仕切り板20が
図3の場合よりも収縮する。これにより、
図3に示す蓄電セル5の未膨張状態(厚みT1)における弾性体50の厚みa2と、
図4に示す蓄電セル5の膨張状態(厚みT2)における弾性体50の厚みb2とが等しく(または略等しく)なる。これにより
図3に示す蓄電セル5の未膨張状態と
図4に示す蓄電セル5の膨張状態とで、蓄電セル5と冷却水との間の熱抵抗が略等しくなる。
【0053】
このように、本実施の形態の蓄電セル冷却構造においては、仕切り板20が上記の第1の状態と第2の状態をとることにより、蓄電セルの膨張および未膨張による影響を緩和し、安定して蓄電セルを冷却することができる。
【0054】
図11に示すように、たとえば経年変化により蓄電セル5が徐々に膨張した(厚みが増した)場合でも、蓄電セル5と冷却水との距離を一定に保つことができる(蓄電セル5と冷却水との間の熱抵抗を一定に保つことができる)。これにより、蓄電セル5が未膨張の状態から膨張した状態に徐々に変化しても、安定して蓄電セルを冷却することができる。
【0055】
上記実施の形態においては、仕切り板20の幅方向端部(
図3における紙面垂直方向の端部)も、仕切り板20の中間部と同じように離間可能としたが、仕切り板20の幅方向端部を相互に接合して離間しないようにしてもよい。この場合には、仕切り板20の端部で厚みが変化しないので、仕切り板20に冷却水を供給する冷却水供給チャンバなどの接続が容易となる。
【0056】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
5 蓄電セル、20,120 仕切り板、20A,20B 仕切り板構成部材、22 接合箇所、24 当接部、30 溝、50,150 弾性体、53 弾性体本体、55 弾性体脚部、60 底板、130 孔。